(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雨水貯留槽と、前記雨水貯留槽内の雨水を取水するためのポンプと、一端が雨水貯留槽内の下部に位置し他端がポンプに接続された取水管とを備えた雨水貯留槽の取水構造であって、
前記取水管の一端は、側壁及び底壁が通水性を有しない容器状部材の内部に挿入されており、
前記容器状部材の上端が開口しており、前記上端が前記雨水貯留槽内に配設され、前記容器状部材の上部から内部に前記雨水貯留槽内の雨水を通水可能であり、
容器状部材の上部に、通水性を有し且つ雨水貯留槽内の雨水に含まれる異物を通過させない異物除去部材が設けられており、
異物除去部材の上端が、雨水貯留槽のオーバーフローラインよりも上に位置していること、
を特徴とする雨水貯留槽の取水構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された雨水貯留槽の取水構造では、電動ポンプを作動させて雨水貯留槽内の雨水を取水管を通じて取水するとき、雨水貯留槽の底面に堆積している異物を取水管の下端開口から雨水と一緒に吸い上げてしまう虞れがあった。そのため、定期的に取水管や電動ポンプのメンテナンスを行わねばならないという煩わしさがあった。
【0005】
ところで、取水管の一端(下端)を雨水貯留槽内の下部に位置させ、取水管の他端(上端)をポンプに接続した取水構造を有する雨水貯留槽を施工するときには、ポンプ機能をすぐに発動できるようにするために、取水管の一端(下端)から他端(上端)のポンプまで水を満たして、所謂、初期のポンプの立上げ(動作確認)を行う必要がある。ポンプを立上げるときは、雨水貯留槽内がまだ空の状態であるので、立上げのための水を雨水貯留槽内に注水することになるが、取水管の一端(下端)が水面下に埋没し、かつ、ポンプ立上げに必要な水を吸い上げた後でも取水管の一端(下端)が水面下に埋没する状態となるのには、かなり多量の水を雨水貯留槽内に注水する必要があるため、注水に時間がかかり、余計な費用もかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする主たる課題は、雨水貯留槽の底部に堆積している異物が取水管の下端開口から吸い上げられることを防止できる雨水貯留槽の取水構造を提供することにある。
そして、少量の注水で初期のポンプの立上げ(動作確認)を容易かつ経済的に行うことが可能な雨水貯留槽の取水構造を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、雨水貯留槽と、雨水貯留槽内の雨水を取水するためのポンプと、一端が雨水貯留槽内の下部に位置し他端がポンプに接続された取水管とを備えた雨水貯留槽の取水構造であって、取水管の一端は、側壁及び底壁が通水性を有しない容器状部材の内部に挿入されていることを特徴とするものである。
【0008】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に係る雨水貯留槽の取水構造において、容器状部材の上部に、通水性を有し且つ雨水貯留槽内の雨水に含まれる異物を通過させない異物除去部材を設けたことを特徴とするものであり、
請求項3に係る発明は、請求項2に係る雨水貯留槽の取水構造において、異物除去部材の上端が、雨水貯留槽のオーバーフローラインよりも上に位置していることを特徴とするものであり、
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のずれかに係る雨水貯留槽の取水構造において、容器状部材が取水管に取付けられていることを特徴とするものであり、
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに係る雨水貯留槽の取水構造において、容器状部材の上部開口又は異物除去部材の上部開口に、取水管を挿通する貫通孔を形成したキャップ部材が取付けられ、キャップ部材と取水管を一体化させることで容器状部材が取水管に取付けられていることを特徴とするものであり、
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに係る雨水貯留槽の取水構造において、取水管の途中に、水を注水するための注水口を備えていることを特徴とするものであり、
請求項7に係る発明は、請求項6に係る雨水貯留槽の取水構造において、注水口が、雨水貯留槽の上部に設けられた点検口の内部に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、取水管の一端を挿入する容器状部材の内部が、通水性を有しない側壁及び底壁によって周囲とは区画された空間を形成しており、雨水貯留槽内に流入した雨水に含まれる異物は容器状部材の周囲に堆積するので、取水管の一端開口から異物を雨水と共に吸い上げることを防止できる。従って、取水管やポンプのメンテナンスを行う必要性が大幅に減少する。
【0010】
請求項2の発明では、容器状部材の上部に設けた異物除去部材によって、雨水に含まれる異物(雨水中に混入している異物)を容器状部材の内部に侵入させないで雨水のみを容器状部材の内部に流入させるので、異物の吸い上げを効果的に防止できる。
【0011】
請求項3の発明では、雨水貯留槽内の雨水に含まれる異物(雨水中に混入している異物)が異物除去部材の上端開口から容器状部材の内部に侵入することもないので、異物の吸い上げをより確実に防止できる。
【0012】
請求項4の発明では、容器状部材が取水管に取付けられており、容器状部材を雨水貯留槽の内部の適所に別途取付ける必要がないので、施工が容易になる。
特に、請求項5の発明のように、容器状部材の上部開口又は異物除去部材の上部開口に、取水管を挿通する貫通孔を形成したキャップ部材を取付け、キャップ部材と取水管を一体化させることで容器状部材を取水管に取付けると、容器状部材の取付けが容易になり、施工性が向上する。
【0013】
請求項6の発明では、取水管の途中の注水口から水を取水管内に通水できるので、取水管などのメンテナンス性が向上する。また、この注水口から取水管に水を注水して容器状部材の内部に貯留すると、容器状部材の内部に貯留された少量の水で初期のポンプの立上げ(動作確認)を容易かつ経済的に行うことができる。
【0014】
請求項7の発明では、注水口が、雨水貯留槽の上部に設けられた点検口の内部に位置しているので、点検口から容易に注水でき、注水作業性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明に係る雨水貯留槽の取水構造を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る雨水貯留槽の取水構造の説明図、
図2は同取水構造の要部側面図、
図3は同取水構造の要部断面図、
図4は同取水構造の要部分解斜視図、
図5は
図3の一部拡大断面図、
図6は注水口を備えた取水管の部分拡大断面図、
図7〜
図11は容器状部材の異なる例を示す斜視図である。
【0018】
図1に示す雨水貯留槽の取水構造は、地下に構築された雨水貯留槽1と、雨水貯留槽1内の雨水を取水するために地上に設置されたポンプ2と、一端(以下、下端という)が雨水貯留槽1内の下部に位置し他端(以下、上端という)がポンプ2に接続された取水管3と、側壁及び底壁が通水性を有しない容器状部材4とを備え、取水管3の下端3aが容器状部材4の内部に上方から挿入されたものである。
【0019】
地下に構築された雨水貯留槽1は、
図9に示すような穴の開いた正方形の水平盤10aと、この水平盤10aの中央部及び四隅部に設けられた複数本(5本)の脚10bとを有する合成樹脂製の貯留槽用充填部材10を使用し、
図1に示すように、地下において、底板11の上に充填部材10を縦横方向に連結して敷き詰めると共に、充填部材10の上下を交互に反転させながら高さ方向に多段に積み重ねて直方体状の雨水貯留構造体を形成し、その四側面と上面に側板12と天板13を取付けて、底板11と側板12と天板13の外側から遮水シート14で被覆したものである。
なお、雨水貯留槽は内部に雨水を貯留できるものであればよく、例えば、内部に貯留槽用充填部材10が存在しない中空のタンク状の槽でもよい。
【0020】
この雨水貯留槽1の片側には、雨水貯留槽1の天面から地表面まで立ち上がる流入口15が設けられ、地表面に露出した流入口15の上端開口には蓋15aが開閉可能に取付けられている。そして、この流入口15の側面には、集めた雨水を流入させる流入管15bが接続されている。
また、この雨水貯留槽1の反対側には、雨水貯留槽1の天面から地表面まで立ち上がる点検口16が設けられ、地表面に露出した点検口16の上端開口には蓋16aが開閉可能に取付けられている。
更に、この雨水貯留槽1の反対側の側面上部にはオーバーフロー管17が接続され、オーバーフローラインOFLを越える余剰の雨水がオーバーフロー管17から流出するようになっている。
【0021】
雨水貯留槽1内の雨水を取水するためのポンプ2は、電動ポンプでも手動ポンプでもよい。この実施形態ではポンプ2を地上に設置しているが、点検口16の内部などに設置してもよい。このように、ポンプ2の設置箇所は、地上からポンプ2の操作やメンテナンスを容易に行えるように、地上又は地表面付近とすることが好ましい。
【0022】
取水管3としては、塩化ビニル管(好ましくはVU管)や鋼管などが使用される。この取水管3は、
図1に示すように、下端3aが雨水貯留槽1内の下部(点検口16の鉛直下方の槽底近傍箇所)に位置し、下端3aから鉛直上方に立ち上がって点検口16の内部で側方(水平方向)に屈曲し、点検口16の側面を貫いて更に上方及び側方に屈曲して、取水管3の上端がポンプ2に接続されている。取水管3を上記のように屈曲させて配管施工するときは、予め点検口16の側面に貫通孔を形成し、この貫通孔に取水管3を挿通して、貫通孔と取水管3の隙間をパッキンやシール材で止水処理することが好ましい。
【0023】
取水管3の下端3aが挿入される容器状部材4は、通水性を有しない側壁と底壁を備えた上端が開口している部材であり、側壁によって、雨水貯留槽1内の雨水に混入している異物が容器状部材4の底部に堆積するのを防止し、異物が取水管3の下端開口から吸い上げられるのを防止するものである。容器状部材4は、たとえ側壁や底壁に孔等があいていても、遮水シート等で覆われて実質的に通水性を有しないものであれば使用可能である。
【0024】
この実施形態における容器状部材4は、
図1〜
図4に示すように、取水管3の外径よりも遥かに大きい内径を有する非通水性の合成樹脂製のキャップ4a(好ましくは塩化ビニル樹脂製のVUキャップ)を上下反転させ、このキャップ4aの内径と同一の外径を有する非通水性の合成樹脂製の立管4b(好ましくは塩化ビニル樹脂製のVU管)の下端部をキャップ4aの上端開口から差込んで水密的に接着一体化したものである。このようにキャップ4aと立管4bを一体化した容器状部材4を使用するのは、立管4bによって容器状部材4の深さを調節し、初期のポンプ2の立上げ(動作確認)に必要な量の水を容器状部材4内に確実に貯留できるようにするためである。
なお、容器状部材はこの実施形態のものに限定されず、
図7〜
図11に示すような種々の容器状部材も使用可能である。これらについては、後で詳しく説明する。
【0025】
容器状部材4を設ける位置は、雨水貯留槽1の流入口15から離れていることが好ましい。流入口15に近い位置に容器状部材4を設けると、雨水が容器状部材4の上部開口から流入し、雨水に含まれている異物が容器状部材4の内部に堆積して取水管3の下端開口から吸い上げられる虞れがあるからである。そこで、この実施形態では、直方体状の雨水貯留槽1の一端側の天面に流入口15を設けると共に、他端側の天面に点検口16を設け、この点検口16の鉛直下方の槽底(底板11の上面)に容器状部材4を載置することで、容器状部材4の位置を流入口15から大きく離し、取水管3の下端3aを容器状部材4に挿入している。なお、容器状部材4は、点検口16の鉛直下方の槽底近傍箇所、即ち、槽底の底板11から少し浮かせた位置に設けてもよい。
【0026】
取水管3の下端3aを容器状部材4に挿入するとは、取水管3の下端開口が容器状部材4の側壁の上端よりも低い位置となるように、取水管3の下端3aを上方から容器状部材4の内部に挿入することをいい、このように取水管3の下端3aを容器状部材4に挿入すると、容器状部材4が上記のように雨水貯留槽1の底板11の上面に非固定状態で載置されていても、取水管3の下端3aによって容器状部材4の水平方向の移動が規制されることになるので、容器状部材4を固定する必要はなくなる。
容器状部材4に挿入された取水管3の下端開口は、容器状部材4内の底面付近に位置していてもよいが、
図2,
図3に示すように容器状部材4内の上部に位置している方が好ましく、このように取水管3の下端開口が容器状部材4内の上部に位置していると、容器状部材4内の底部に堆積した微細な異物を吸い込み難くなるので、よりきれいな雨水を取水できる。
【0027】
この容器状部材4の上端部(立管4bの上端部)には、通水性を有し且つ雨水貯留槽1内の雨水に混入する異物を通過させない異物除去部材として、異物の通過を阻止する細かい網目を備えた合成樹脂製の網筒体5が接続されている。この網筒体5は、
図2〜
図4に示すように、下端に接続用のソケット部5aが一体に形成されたものであって、このソケット部5aを容器状部材4の立管4bの上端部に外嵌合すると共に、その周囲からバンド5bで締め付けることによって、容器状部材4の立管4bに接続固定されている。
【0028】
この実施形態の網筒体5は接着性に乏しいポリエチレン樹脂で成形されたものであるため、バンド5bで締め付けて立管4bに脱着可能に接続固定しているが、網筒体5が接着性の良好な合成樹脂で成形されたものである場合は、接着剤で網筒体5と立管4bを分離不能に接着してもよい。もっとも、脱着可能に接続固定しておく方が、後述するように取水管3ごと容器状部材4と網筒体5を点検口16から取り出したときに、容器状部材4と網筒体5を分離して容器状部材4の内部を容易にメンテナンスできるので好ましい。
なお、この実施形態では、
図4示すようなボルト・ナットで締め付ける開環状のバンド5bを使用しているが、これ以外の公知の合成樹脂製の結束バンドなど、種々の締め付け手段を採用できることは言うまでもない。
【0029】
上記のように、この実施形態では、容器状部材4の立管4bの上部に異物除去部材として網筒体5を設けているが、容器状部材4の立管4bを上方に延長し、その延長部分の管壁に異物の侵入を通過させない小さな貫通孔やスリットを多数形成することによって、この延長部分を異物除去部材としてもよい。
【0030】
上記の網筒体5は、
図1に示すように、上端が雨水貯留槽1のオーバーフローラインOFLよりも上に位置している。このように網筒体5の上端をオーバーフローラインOFLより高くしたのは、網筒体5の上端開口が開放されている場合でも、雨水貯留槽1内の雨水に混入している異物が網筒体5の上端開口から網筒体5の内部に流入、沈下して容器状部材4の底部に堆積し、取水管3の下端開口から吸い上げられることを防止するためである。
オーバーフローラインOFLの高さは、
図1に示すようにオーバーフロー管17が雨水貯留槽1の側面に設けられている場合には、オーバーフロー管17の管底の高さに等しくなるが、網筒体5の上端開口からの異物の侵入をより確実に防止するためには、網筒体5の上端をオーバーフロー管の管頂の高さ以上に位置させればよい。
【0031】
なお、流入口15の側面上部に流入管15bが接続され、点検口16の側面下部にオーバーフロー管17が接続されている場合は、網筒体5の上端を点検口16内のオーバーフローライン(オーバーフロー管17の管底と同じ高さ)よりも上に位置させるか、或いは、オーバーフロー管17の管頂の高さ以上に位置させればよい。従って、この場合は、網筒体5の上端が雨水貯留槽1の天面より上方に突き出すことになる。
【0032】
この実施形態では、上記のように網筒体5を容器状部材4の立管4bの上部に設けることによって、取水側で異物をフィルタリングしているが、流入口15の内部に異物除去部材を設けることによって、流入側で異物をフィルタリングすることも可能である。流入側でフィルタリングする場合は、雨水貯留槽1の底面全体に異物が沈殿しないという利点があるが、流入時の異物が異物除去部材に堆積して目詰まりすると、雨水が流入管15bを逆流する虞れがある。これに対し、この実施形態のように取水側でフィルタリングする場合は、殆どの異物が広い雨水貯留槽1の底面に堆積し、取水側の網筒体2の方にはあまり流れてこないので、網筒体2が目詰まりすることはなく、メンテナンスの頻度が下がるという利点がある。
また、流入側で粗くフィルタリングし、取水側で細かくフィルタリングする場合は、流入側の異物除去部材の目詰まりを防ぎ、取水する雨水がよりきれいなものになるという利点がある。
【0033】
また、雨水貯留槽1の底面に堆積する異物を除去し易いように、雨水貯留槽1の底面に勾配を付けて異物を底面の最深部に集めたり、雨水貯留槽1の底面に仕切りを立設して仕切りの内側(流入側)に異物を集め、仕切りからオーバーフローした雨水が雨水貯留槽全体にいきわたるようにしてもよい。なお、異物を集める箇所は、取水管3の下端開口から離れた箇所とすることが好ましい。
【0034】
図1〜
図5に示すように、網筒体5の上端部には、通水性を有しない合成樹脂製のキャップ部材6(好ましくは塩化ビニル樹脂製のVUキャップ)が被着されており、このキャップ部材6の天面には、上下に分断され且つバルブソケット7Aと水栓ソケット7Bで接続された取水管3の当該接続部分を挿通する貫通孔6aが形成されている。そして、キャップ部材6は、その天面が上記ソケット7A,7Bにより上下から挟持された状態で、取水管3の接続部分に一体的に取付け固定されている。
【0035】
更に詳しく説明すると、
図4,
図5に示すように、分断された下側の取水管3の上端をバルブソケット7Aのソケット部7fに差し込むと共に、上側の取水管3の下端を水栓ソケット7Bのソケット部7gに差込み、バルブソケット7Aの雄ネジ筒部7cをキャップ部材6の貫通孔6aに下方から挿通した状態で、上側の取水管3を回しながら水栓ソケット7Bの雌ネジ筒部7dをバルブソケット7Aの雄ネジ筒部7cに螺合させ、下側の取水管3と上側の取水管3を接続すると同時に、バルブソケット7Aの鍔部7eと水栓ソケット7Bの雌ネジ筒部7dの先端(下端)とでキャップ部材6の貫通孔6aの周縁部を上下から挟持固定させることにより、キャップ部材6を取水管3の接続部分に一体的に取付け固定している。
このとき、バルブソケット7Aと水栓ソケット7Bを上下逆に配置してキャップ部材6を挟持、固定してもよいことは言うまでもない。
【0036】
容器状部材4は、その上部に設けた網筒体5の上端のキャップ部材6を、上記のように取水管3の接続部分に一体的に取付け固定することによって、取水管3に間接的に取付けられており、取水管3の接続部分のバルブソケット7Aと水栓ソケット7Bの螺合を解除すると、下側の取水管3と一緒に容器状部材4、網筒体5、キャップ状部材6を一斉に引き上げて取り出すことができるので、メンテナンスが容易である。また、上記のように容器状部材4が取水管3に取付けられていると、容器状部材4を雨水貯留槽1の内部の適所に別途取付ける必要がなくなり、キャップ部材6の取水管3への固定作業も簡単であるので、施工が容易である。
このように容器状部材4、網筒体5、キャップ部材6が取付けられた取水管3は、点検口16の下方に位置する貯留槽用充填部材10を高さ方向に一列に除去して形成された空洞の内部に配管することが好ましいが、点検口16の下方に位置する貯留槽用充填部材10の水平盤10aの穴に挿通して配管してもよい。
【0037】
この実施形態では、容器状部材4が槽底の底板11の上面に載置されているので、キャップ部材6と網筒体5は接着固定されていなくても、網筒体5がキャップ部材6から外れることはない。従って、キャップ部材6と網筒体5は接着固定しなくてもよいが、容器状部材4を槽底の底板11から浮かせて設置する場合は、キャップ部材6から網筒体5が外れないように両者を接着固定するのがよい。
なお、容器状部材4の立管4bの上部に網筒体5が設けられていない場合は、通水性を有するキャップ部材を立管4bの上端に被着、固定し、このキャップ部材を上記と同様に取水管3の接続部分に取付け固定することによって、容器状部材4を取水管3に取付ければよい。また、取水管3が挿通される貫通孔を備えたキャップ部材の天面に上向きのソケット部を形成し、このソケット部に取水管を挿入・固定(接着)することでキャップ部材を取り付けてもよい。
【0038】
図1,
図6に示すように、取水管3は点検口16の内部でチーズ継手3bを介して側方(水平方向)に屈曲し、点検口16の側面を貫通している。そして、この取水管3の途中の屈曲部分に設けられたチーズ継手3bには、取水管3に水を注水するための注水口3cが点検口16の上端開口に対向して形成されている。
即ち、この注水口3cは、
図6に示すように、チーズ継手3bの上向きの接続口に短管3dを差込み接続すると共に、この短管3dの上端部を水栓ソケット7Bのソケット部7gに差込み接続することによって、注水口3cの上端開口(つまり水栓ソケット7Bの雌ネジ筒部7dの上端開口)が点検口16の上端開口と対向するように形成されている。そして、水栓ソケット7Bの雌ネジ筒部7dに栓部材3eの雄ネジ部3fを螺合することによって、注水口3cが開閉自在に閉塞されている。従って、点検口16の蓋16aを開けると、栓部材3eを脱着して注水口3cの開閉を容易に行えるようになっている。
【0039】
上記の注水口3cは、取水管3や容器状部材4をメンテナンスする際に、栓部材3eを抜いて水を取水管3に注水(必要に応じて勢い良く注水)することにより、取水管3の内部や容器状部材4の内部の異物を除去して詰まりを防止するためのものであり、また、初期のポンプ2の立上げ(動作確認)の際に、必要な量の水を容器状部材4に供給するためのものである。
前述のように、取水管3の下端開口を容器状部材4内の上部に位置させると、容器状部材4内に貯留した水のうち、取水管3の下端開口より下側の水は取水管3によって吸い上げられないで残留するため、容器状部材4内に満たした水だけでは初期のポンプ2の立上げに不足する場合があるが、その場合には、ポンプ2の立上げ動作と注水口3cからの注水を同時に行うことで、ポンプ2の立上げに必要な水量を確保することができる。
【0040】
なお、注水口3cの開閉構造は、上記の水栓ソケット7Bの雌ネジ筒部7dと栓部材3eの雄ネジ部3fとの螺合構造に限定されるものではなく、例えば、開閉弁構造やキャップ被着構造など、種々の開閉構造を採用することができる。
また、チーズ継手3bの上向きの接続口そのものを注水口とし、この接続口に適合する栓部材を脱着自在に詰めるようにしてもよい。その場合、取水管3を点検口16を貫いて地上まで真っ直ぐに延設すると共に、チーズ継手3bを介して取水管3を水平方向に屈曲させて配管し、この地上のチーズ継手3bの上向きの接続口を注水口としてもよい。
また、取水管3の途中に孔を直接あけて栓をすることで注水口としてもよい。
更に、注水口には、必要に応じて地上設置型の雨水タンクを接続してもよい。
【0041】
この実施形態では、取水管3の途中に注水口3cを設けているが、注水口は取水管3とは別に設けてもよい。例えば、取水管3と異なる注水管を用いて、該注水管の下端を容器状部材4の内部に挿入すると共に、該注水管の上端を点検口16の内部上方に位置させ、該注水管の上端開口を注水口として適当な栓部材を脱着自在に装着してもよい。このようにしても、注水管の上端の注水口から水を注入することで容器状部材4の内部の洗浄が可能となり、また、初期のポンプ2の立上げに必要な水量の水を容器状部材4に供給してポンプ2の立上げ(動作確認)を容易かつ経済的に行うことができる。なお、取水管3と異なる注水管を設けない場合は、ホース等を用いて直接容器状部材4内に注水してもよいし、あらかじめ容器状部材4内に水を満たした状態で施工してもよい。
【0042】
また、チーズ継手3bと、キャップ部材6を固定する水栓ソケット7Bとの間において、取水管3の一部にユニオン継手を設け、このユニオン継手のところで取水管3を分離することにより、ユニオン継手から下方の取水管3、キャップ部材6、網筒体5、容器状部材4を点検口16から一斉に引き上げられるようにすると、これら各部材のメンテナンス性が向上するので好ましい。ユニオン継手は、互いに接続する一方の取水管3の管端にユニオンネジを設けると共に、他方の取水管3の管端にユニオン鍔を取付け、両者にまたがって嵌めたユニオンナットを回すことで双方の取水管3の接続や分離を行える継手であるが、このユニオン継手に代えて、前記のバルブソケット7Aと水栓ソケット7Bの組み合わせや、カプラーのようなワンタッチ式のジョイントなど、取水管3の接続、分離を自在に行える種々の手段を採用してもよい。
【0043】
以上のような雨水貯留槽の取水構造では、雨水貯留槽1内に雨水が貯留された状態でポンプ2を駆動すると、雨水貯留槽1内の雨水が網筒体5の周側面を通過して網筒体5の内部を容器状部材4まで流下し、取水管3の下端開口から吸い上げられて外部に取水される。その場合、雨水に混入している異物は網筒体5の周側面を通過する際に除去されて、雨水貯留槽1の底面に堆積するが、取水管3の下端3aが挿入されている容器状部材4は、通水性を有しない側壁及び底壁(立管4b及びキャップ4a)によって周囲とは区画された空間を形成しているため、異物は容器状部材4の周囲の槽底面に堆積することになり、容器状部材4の内部に侵入することはない。しかも、網筒体5の上端開口は雨水貯留槽1のオーバーフローラインOFLよりも上に位置しているので、網筒体5の上端開口を閉塞するキャップ部材6がなくても、雨水に混入している異物が網筒体5の上端開口から容器状部材4の内部に侵入することはない。このように異物は容器状部材4の内部に侵入、堆積しないので、取水管3の下端開口から雨水と共に異物を吸い上げることが防止され、取水管3やポンプ2のメンテナンスを行う必要性が大幅に減少する。
【0044】
また、この雨水貯留槽の取水構造では、容器状部材4の上部に取付けた網筒体5の上部開口に、取水管3(取水管の接続部分)を挿通する貫通孔6aを形成したキャップ部材6を取付け、取水管3の接続部分のバルブソケット7Aと水栓ソケット7Bでキャップ部材6を挟持固定して取水管3と一体化させることで、容器状部材4を取水管3に取付けているので、容器状部材4の取付け作業が容易であり、容器状部材4を雨水貯留槽1の内部の適所に別途取付ける必要もないので施工性が向上する。
【0045】
また、この雨水貯留槽の取水構造では、取水管3の途中(チーズ継手3bを介して水平方向に屈曲する箇所)に設けられた注水口3cから水を取水管3に通水して取水管3や容器状部材4の内部の清掃を行えるので、取水管3や容器状部材4のメンテナンス性が向上する。そして、雨水貯留槽1の施工時に、この注水口3cから初期のポンプ2の立上げに必要な量の水を容器状部材4に供給すれば、初期のポンプ2の立上げ(動作確認)を容易かつ経済的に行うこともできる。さらに、この注水口3cは点検口16の内部に位置して点検口16の上端開口に対向しているので、点検口16の蓋16aを開けて注水口3cから容易に注水することができ、注水作業性が向上する。
【0046】
前記実施形態の雨水貯留槽の取水構造では、雨水貯留槽1を構成する部材とは別に容器状部材4を設けて取水管3に取付けているが、容器状部材は雨水貯留槽1を構成する部材と一体に形成されたものでもよい。ここで、一体に形成するとは、雨水貯留槽1の構成部材と容器状部材を合成樹脂等で一体成形する場合と、雨水貯留槽1の構成部材に容器状部材を一体に結合する場合の双方を含んだ概念である。
【0047】
図7〜
図11は、そのような雨水貯留槽を構成する部材と一体に形成された容器状部材の異なる例を示す斜視図である。
図7に示す容器状部材41は、雨水貯留槽1の底面を構成する最下部の合成樹脂製の底板11(
図1を参照)の上面に、合成樹脂製の筒体41aを一体成形するか、又は、合成樹脂製の筒体41aを接着剤で一体に結合したり、連結して一体化したものであって、筒体41aを容器状部材41の側壁とし、筒体41aが設けられた底板11の一部を容器状部材41の底壁としたものである。底板11には孔や通水部が多数形成されているので、少なくとも容器状部材41を設けた底板11の一部は、孔や通水部が存在しない非通水板とするか、又は、遮水シート等で孔や通水部を被覆して非通水性とする必要がある。
このように容器状部材41が、雨水貯留槽1を構成する最下部の底板11の一部に一体成形されたものであると、雨水貯留槽1の底面から容器状部材41の上端開口までの高さが小さくなるので、この容器状部材41の内部に下端が挿入された取水管3を通じて雨水貯留槽1内の雨水を取水する際、取水されずに雨水貯留槽1内に残留する雨水の量が少なくなり、取水効率が向上する。
【0048】
図8に示す容器状部材42は、雨水貯留槽1の底面を構成する最下部の合成樹脂製の底板11(
図1を参照)の四辺から方形枠状の側板42aを一体成形するか、又は、方形枠状の側板42aを接着剤で底板11の四辺に一体に結合したり連結して一体化したものであって、方形枠状の側板42aを容器状部材42の側壁とし、底板11を容器状部材42の底壁としたものである。なお、
図8の底板11は、孔や通水部を残した状態で表されているが、これらの孔や通水部は埋められて非通水性の平板状の底板とされるか、又は、遮水シートで底板11の全面が覆われて非通水性とされることは言うまでもない。
このような容器状部材42は、底壁の面積が大きいので、側壁(側板42a)の高さを小さくしても、初期のポンプ2の立上げ(動作確認)に必要な量の水を貯留できる。そのため、側壁の高さを小さくした分だけ、雨水貯留槽1の底部に残留する雨水の量が減少するので、取水効率が一層向上する。
【0049】
図9に示す容器状部材43は、雨水貯留槽1を構成する前述の貯留槽用充填部材10の複数本の脚10b(上端が開口し底面に孔がある中空の脚)のうちの一本について、その底面の孔を閉塞することにより容器状部材として兼用したものである。このように脚10bを容器状部材43として兼用する貯留槽用充填部材10は、雨水貯留槽1内の最下段に配置されたものであることが好ましい。最下段の貯留槽用充填部材10の脚10bを容器状部材43として兼用すると、取水されない残留雨水の水面が脚10bの上端開口と同一の高さとなり、残留雨水の量を少なくできる。
この最下段の貯留槽用充填部材10の容器状部材43(脚10b)に取水管3の下端3aを挿入するためには、この貯留槽用充填部材10の上に積み重ねる貯留槽用充填部材の脚の底部に取水管挿通用の貫通孔を形成し、取水管3を最上段の貯留槽用充填部材の脚から最下段の上記貯留槽用充填部材10の容器状部材43(脚10a)まで挿通できるようにする必要がある。
【0050】
図10に示す容器状部材44は、籠状の貯留槽用充填部材18の側壁及び底壁の通水開口部を塞いだものである。このように容器状部材44とする籠状の貯留槽用充填部材18は、雨水貯留槽1内の最下段に配置されるものであることが好ましい。その理由は、上記と同様に取水されない残留雨水の量を少なくするためである。容器状部材44となる最下段の貯留槽用充填部材18の内部には、その上に積み重ねられた籠状の貯留槽用充填部材の通水開口部を貫通させた取水管3の下端が挿入される。
また、最初から側壁及び底壁に通水開口部のない箱状の貯留槽用充填部材を製作して容器状部材44としてもよいし、上記籠状の貯留槽用充填部材18の内面又は外面を遮水シートで覆って容器状部材44としてもよいし、上記籠状の貯留槽用充填部材18の内側に非透水性の側壁と底壁からなる容器状部材を一体成形してもよい。
【0051】
図11に示す容器状部材45は、凸条11aと凹条11bを交互に形成した貯留槽用充填部材19の一つの凹条11bの両端を閉塞片11c,11cで閉塞することによって、貯留槽用充填材19と一体的に形成されたものである。この貯留槽用充填部材19は、雨水貯留槽内において90°水平回転させながら積み重ねるもので、容器状部材45が一体的に形成される貯留槽用充填部材19は、残留雨水の量を少なくするため、雨水貯留槽1内の最下段に配置されるものであることが好ましい。最下段の貯留槽用充填部材19に一体的に形成された容器状部材45に取水管3の下端3aを挿入するためには、この最下段の貯留槽用充填部材19の上に積み重ねられる貯留槽用充填部材に取水管3を挿通するための孔を形成する必要があることは言うまでもない。
【0052】
図7〜
図11に示すように容器状部材を雨水貯留槽1の構成部材と一体に形成したものは、別途製作した容器状部材を雨水貯留槽1の適所に取付け固定することが不要となるので、施工性が向上する。
なお、
図9〜
図11の容器状部材43、44、45については、雨水貯留槽1内の底にたまった異物を吸い込まないようにするために、最下段よりも上の貯留槽用充填部材10、18、19と一体に形成することも可能である。また、
図9、
図10の容器状部材41、42については、筒体41aや方形枠状の側板42aの高さを高くして異物の流入を抑制することも可能である。