(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤとの間にタイヤ主気室を区画するリム外周面において、前記タイヤのビードを保持する車両外側のビードシートと車両内側のビードシートとの間にホイール径方向内側に凹み且つホイール周方向に延びるウェル部を有するホイールリムと、
ホイール周方向に沿って湾曲しながら延在すると共に前記タイヤ主気室に連通するタイヤ副気室を内部に有する樹脂製の副気室部材と、
前記副気室部材を前記ウェル部に固定する固定部材と、
を備えた自動車用ホイールであって、
前記ウェル部は、
ホイール周方向に延びると共にホイール軸方向に対向する一対の壁面を有し、前記一対の壁面のそれぞれには第1係止部が設けられ、
前記固定部材は、
底面部と、前記底面部から立ち上がる一対の側面部と、を備え、
前記固定部材が、前記底面部が前記副気室部材のホイール径方向内側面と対向し且つ前記一対の側面部が前記副気室部材の両側面と対向するように、前記副気室部材に装着され、
前記固定部材が装着された前記副気室部材が、前記底面部が前記ウェル部の底面と対向し且つ前記一対の側面部が前記一対の壁面と対向するように、前記一対の壁面の間に配置され、
前記一対の側面部のそれぞれの外側面には、前記第1係止部と当接することで前記固定部材の前記一対の壁面に対するホイール径方向外側への移動を規制する第2係止部が設けられ、
前記一対の側面部のそれぞれの内側面には、前記副気室部材の一部と当接することで前記副気室部材の前記固定部材に対するホイール径方向外側への移動を規制する第3係止部が設けられた、自動車用ホイール。
【発明の概要】
【0008】
本発明に係る自動車用ホイールは、タイヤとの間にタイヤ主気室を区画するリム外周面において、前記タイヤのビードを保持する車両外側のビードシートと車両内側のビードシートとの間にホイール径方向内側に凹み且つホイール周方向に延びるウェル部を有するホイールリムと、ホイール周方向に沿って湾曲しながら延在すると共に前記タイヤ主気室に連通するタイヤ副気室を内部に有する樹脂製の副気室部材と、前記副気室部材を前記ウェル部に固定する固定部材と、を備える。前記固定部材は、金属製であることが好ましいが、例えば、樹脂製であってもよい。
【0009】
本発明に係る自動車用ホイールの特徴は、前記ウェル部が、ホイール周方向に延びると共にホイール軸方向に対向する一対の壁面を有し、前記一対の壁面のそれぞれには第1係止部が設けられ、前記固定部材が、底面部と、前記底面部から立ち上がる一対の側面部と、を備え、前記固定部材が、前記底面部が前記副気室部材のホイール径方向内側面と対向し且つ前記一対の側面部が前記副気室部材の両側面と対向するように、前記副気室部材に装着され、前記固定部材が装着された前記副気室部材が、前記底面部が前記ウェル部の底面と対向し且つ前記一対の側面部が前記一対の壁面と対向するように、前記一対の壁面の間に配置され、前記一対の側面部のそれぞれの外側面には、前記第1係止部と当接することで前記固定部材の前記一対の壁面に対するホイール径方向外側への移動を規制する第2係止部が設けられ、前記一対の側面部のそれぞれの内側面には、前記副気室部材の一部と当接することで前記副気室部材の前記固定部材に対するホイール径方向外側への移動を規制する第3係止部が設けられた、ことにある。
【0010】
これによれば、固定部材が副気室部材に装着された状態では、副気室部材の固定部材に対するホイール径方向内側への移動は固定部材の底面部そのものによって規制され、副気室部材の固定部材に対するホイール径方向外側への移動は固定部材に設けられた第3係止部によって規制される。従って、固定部材が副気室部材に装着された状態では、固定部材が副気室部材から脱落することがない。換言すれば、副気室部材及び固定部材がサブアッセンブリ化される。このサブアッセンブリがウェル部に設けられた一対の壁面の間に挿入されると、一対の壁面に設けられた第1係止部と、固定部材に設けられた第2係止部とが当接することによって、このサブアッセンブリ(従って、副気室部材)がウェル部に固定され得る。
【0011】
このように、本発明に係る自動車用ホイールによれば、副気室部材及び固定部材からなるサブアッセンブリをウェル部に取り付けるだけで(ワンタッチで)、副気室部材がウェル部に固定される。換言すれば、何らかの部材をウェル部に取り付ける工程が1つの工程のみとなる。このため、上述した文献に記載の自動車用ホイールと比べて、副気室部材をウェル部に取り付ける作業が容易になる。
【0012】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記固定部材の底面部には、前記副気室部材のホイール径方向内側面をホイール径方向外側に向けて押圧する弾性力を発生する第1弾性部が設けられることが好適である。
【0013】
これによれば、固定部材が副気室部材に装着された状態では、第1弾性部の弾性力によって、副気室部材の一部が固定部材の第3係止部に当接した状態が維持され得る。従って、車両走行中等において、副気室部材の一部が固定部材の第3係止部へ衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0014】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記固定部材の底面部には、前記ウェル部の底面をホイール径方向内側に向けて押圧する弾性力を発生する第2弾性部が設けられることが好適である。
【0015】
これによれば、第2弾性部の弾性力の反力によって、固定部材がホイール径方向外側に向けて押圧される。従って、サブアッセンブリがウェル部の一対の壁面の間に配置された状態では、第2弾性部の弾性力の反力によって、固定部材の第2係止部が一対の壁面の第1係止部に当接した状態が維持され得る。従って、車両走行中等において、固定部材の第2係止部が一対の壁面の第1係止部に衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0016】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記固定部材は、金属製の板状部材によって一体に構成されることが好適である。ここにおいて、前記底面部は平板状の部分であり、前記第1弾性部は、前記底面部から一体的に延びると共に前記底面部の平面に対してホイール径方向外側に位置する板状部分であることが好ましい。また、前記第2弾性部は、前記底面部から一体的に延びると共に前記底面部の平面に対してホイール径方向内側に位置する板状部分であることが好ましい。
【0017】
これによれば、固定部材が金属製の板状部材によって一体に構成されるので、固定部材を薄くでき、搭載スペースの制約下、副気室部材の大きさ(従って、タイヤ副気室の容積)を大きくできる。また、固定部材が樹脂製の場合と比べて、温度変化及び経年変化等に起因して弾性力が低下し難いので、長期間に亘って安定した弾性力を発揮することができる。更には、固定部材が樹脂製の場合と比べて、固定部材そのものの製造が容易となり、固定部材の製造コストを低減することができる。
【0018】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記第1係止部は、ホイール周方向に延びる溝部であり、前記一対の側面部は、平板状の前記底面部から屈曲して立ち上がる一対の平板状の部分であり、前記第2係止部は、前記側面部からホイール軸方向外側且つホイール径方向外側に向けて傾斜して一体的に延びる平板状の第1爪部であり、前記溝部に前記第1爪部の先端が嵌ることで前記固定部材の前記一対の壁面に対するホイール径方向外側への移動が規制されることが好適である。
【0019】
これによれば、第2係止部が、側面部からホイール軸方向外側且つホイール径方向外側に向けて傾斜して延びる平板状の第1爪部で構成されるので、比較的小さい力で、サブアッセンブリをウェル部の一対の壁面の間に挿入することができる。加えて、サブアッセンブリが一対の壁面の間に挿入された後は、第1爪部の先端が、一対の壁面に設けられた溝に嵌ることによって、サブアッセンブリ(従って、副気室部材)がウェル部に強固に固定され得る。
【0020】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記一対の側面部は、平板状の前記底面部から屈曲して立ち上がる一対の平板状の部分であり、前記第3係止部は、前記側面部のホイール径方向外側の先端部からホイール軸方向内側に向けて一体的に延びる平板状の第2爪部であり、前記第2爪部に前記副気室部材におけるホイール径方向外側面が当接することで前記副気室部材の前記固定部材に対するホイール径方向外側への移動が規制されることが好適である。
【0021】
これによれば、車両走行中等にて副気室部材に作用する遠心力によって副気室部材が固定部材に対してホイール径方向外側へ移動しようとすると、副気室部材の一部と当接している第2爪部が受ける力によって、固定部材の一対の側面部がホイール軸方向外側に変形しようとする。しかしながら、この一対の側面部の変形が、一対の側面部と対向している一対の壁面そのものによって規制される。このため、第2爪部と副気室部材との係合が外れ難い。
【0022】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記副気室部材の表面における前記固定部材が装着される部位には、前記底面部及び前記一対の側面部が嵌る凹部が形成されることが好適である。これによれば、サブアッセンブリの状態にて、固定部材の副気室部材に対するホイール周方向の移動が規制されるので、係る凹部がない場合と比べて、固定部材と副気室部材とがより一層強固に一体化され得る。
【0023】
上記本発明に係る自動車用ホイールでは、前記一対の壁面の一部には、ホイール径方向外側に開口する切欠部が設けられ、前記副気室部材の表面における前記固定部材が装着されない部位には、ホイール軸方向外側に突出すると共に前記切欠部に嵌る突起が設けられることが好適である。これによれば、副気室部材のホイールリムに対するホイール周方向の移動が確実に規制され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る自動車用ホイールの実施形態(以下、「本実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(ホイールの全体構成)
図1及び
図2に示すように、本実施形態は、円環状のタイヤT(
図2を参照)が取り付けられる円筒状のホイールリム(以下、単に「リム」ともいう)10と、リム10の車両外側の筒端部に接合された円盤状のホイールディスク20と、を備える。リム10及びホイールディスク20は、例えば、アルミニウム合金製であり、鋳造等によって製造される。
【0027】
リム10の外周面は、タイヤTとの間にタイヤ主気室TS(
図2を参照)を区画する。リム10の外周面には、タイヤのビードを保持する車両外側及び車両内側の一対のビードシート11の間にて、ウェル部12が形成されている。ウェル部12は、ホイール径方向内側に凹み且つホイール周方向に沿って環状に延びる溝部分である。
【0028】
ウェル部12には、ホイール周方向に延びると共にホイール軸方向に対向する一対の壁面13が形成されている。
図1に示す例では、一対の壁面13の一方(
図1にて左側の壁面13)は、ウェル部12の底面からホイール径方向外側に突出し且つホイール周方向に沿って環状に延びる縦壁の側面で構成され、一対の壁面13の他方(
図1にて右側の壁面13)は、ウェル部12の側面そのもので構成されている。なお、一対の壁面13の双方が、ホイール軸方向に対向する一対の前記縦壁の側面で構成されていても、ホイール軸方向に対向するウェル部12の一対の側面で構成されていてもよい。
【0029】
図1及び
図2に示すように、ウェル部12の一対の壁面13の間には、副気室部材30が設けられている。副気室部材30は、ホイール周方向に沿って湾曲しながら延びる樹脂製の管状部材であり、その内部に、タイヤ主気室TSと連通するタイヤ副気室35(後述する
図4及び
図5を参照)を有している。副気室部材30のホイール周方向に直交する断面形状は、典型的には四角形であるが、円形、楕円形などであってもよいし、このような形状を、ウェル部12の形状やタイヤTのリム10への組み付け性を考慮して変形させた形状であってもよい。副気室部材30は、軽量且つ強度に優れるポリプロピレン製であることが好ましい。副気室部材30は、例えば、ブロー成形によって形成される。
【0030】
副気室部材30は、金属製の固定部材40によってウェル部12に固定されている。固定部材40を利用した副気室部材30のウェル部12への固定構造について後に詳述する。
図1及び
図2に示す例では、リム10には、3つの副気室部材30がホイール周方向において概ね等間隔で配置されており、各副気室部材30は、そのホイール周方向の両端部近傍に装着された2つの固定部材40によってウェル部12に固定されている。リム10に設けられる副気室部材30の個数は、1つであってもよく、また、3つ以外の複数であってもよい。各副気室部材30に装着される固定部材40の個数は、1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0031】
図3に示すように、副気室部材30の表面における固定部材40が装着される部位(ホイール周方向の両端部近傍)には、固定部材40の対応部分(具体的には、後述する底面部41及び一対の側面部42)が嵌る凹部31がそれぞれ形成されている。これにより、固定部材40の副気室部材30に対するホイール周方向の移動が確実に規制される。
【0032】
また、
図3に示すように、副気室部材30の表面における固定部材40が装着されない部位(
図1及び
図3に示す例では、ホイール周方向の中央部)には、ホイール軸方向外側に突出する突起32が設けられている。
図1に示すように、この突起32は、一対の壁面13の一部に設けられたホイール径方向外側に開口する切欠部14に嵌っている。これにより、副気室部材30のリム10に対するホイール周方向の移動が確実に規制される。
【0033】
図4に示すように、副気室部材30として、そのホイール周方向両端のうち一方の端部が端壁33により塞がれ、他方の端部が開口する態様が採用され得る。この場合、タイヤ副気室35は、この開口36を通じてタイヤ主気室TSと連通する。この場合、副気室部材30は、車両走行時の路面入力によってタイヤ主気室TS内で生じたタイヤ空洞共鳴音を吸収する吸音器としての所謂「サイドブランチ管」を構成する。タイヤ副気室35のホイール周方向の長さは、タイヤ主気室TSにおける空洞共鳴波長の4分の1に相当する基準長さに近似した長さに設定される。これにより、タイヤ主気室TSにおける音波と、開口36を通じてタイヤ副気室35に導入され端壁33に衝突した後に開口36を通じて再びタイヤ主気室TSへと戻る音波とが、互いに逆位相で合成されて音を打ち消すように作用する。この結果、タイヤ主気室TSにおける特定周波数(典型的には、200〜250Hz付近の周波数)の振動を吸収することができ、車両走行時の車内騒音が低減され得る。
【0034】
或いは、
図5に示すように、副気室部材30として、そのホイール周方向両端の双方の端部が端壁33により塞がれ且つその一部に貫通する連通孔34が形成された態様が採用され得る。この場合、タイヤ副気室35は、連通孔34を通じてタイヤ主気室TSと連通する。この場合、副気室部材30は、前記吸音器としての所謂「ヘルムホルツレゾネータ」を構成する。タイヤ副気室35の容積と、連通孔34の孔径及び孔長を適宜調整することによって、タイヤ主気室TSにおける特定周波数(典型的には、200〜250Hz付近の周波数)の振動を吸収することができ、車両走行時の車内騒音が低減され得る。
【0035】
(固定部材を利用した副気室部材のウェル部への固定構造)
次に、固定部材40を利用した副気室部材30のウェル部12への固定構造について
図6〜
図9を参照しながら説明する。
【0036】
先ず、
図6及び
図7を参照しながら、金属製の固定部材40の構成について説明する。
図6は、ホイール周方向から視たときの固定部材40を示す。
図6に示す固定部材40は、例えば、
図7に示す金属製の平板における図中の一点鎖線で示す箇所をプレス成形等によって屈曲させることによって形成される。従って、固定部材40の全体が弾性体を構成している。固定部材40は、耐食性に優れたステンレス鋼(典型的には、SUS304)製であることが好ましい。なお、固定部材40は、プレス成形以外の公知の手法によって形成されてもよい。
【0037】
以下、説明の便宜上、
図6における上方向及び下方向(ホイールに組付後は、ホイール径方向外側及び内側)をそれぞれ「上方向」及び「下方向」と呼び、
図6における左右方向(ホイールに組付後は、ホイール軸方向)を「幅方向」と呼び、
図6における紙面に直交する方向(ホイールに組付後は、ホイール周方向)を「奥行方向」と呼ぶ。
【0038】
図6に示すように、固定部材40は、平板状の底面部41と、底面部41の両端部から屈曲して上方向に立ち上がる対向する一対の平板状の側面部42と、を備える。
【0039】
底面部41には、第1弾性部43、及び、第2弾性部44が設けられている。
図6及び
図7から理解できるように、第1弾性部43は、底面部41の幅方向両端部から上方に突出する円弧状に湾曲しながら幅方向に延びる両持ち梁状の板状部分である。換言すれば、第1弾性部43は、底面部41から一体的に延びると共に底面部41の平面(仮想平面)に対してホイール径方向外側に位置する板状部分である。
【0040】
後述するように、第1弾性部43は、固定部材40を副気室部材30に装着した状態において、副気室部材30の下面(ホイール径方向内側面)を上側(ホイール径方向外側)に向けて押圧する弾性力F1を発生する機能を有する。
図6及び
図7に示す例では、第1弾性部43は、奥行方向に関して2箇所に設けられているが、奥行方向に関して1箇所にのみ設けられていてもよいし、奥行方向に関して3箇所以上に設けられていてもよい。
【0041】
図6及び
図7から理解できるように、第2弾性部44は、底面部41の幅方向両端部から下方に突出する円弧状に湾曲しながら幅方向に延びる両持ち梁状の板状部分である。換言すれば、第2弾性部44は、底面部41から一体的に延びると共に底面部41の平面(仮想平面)に対してホイール径方向内側に位置する板状部分である。
【0042】
後述するように、第2弾性部44は、固定部材40が装着された副気室部材30(サブアッセンブリ)をウェル部12の一対の壁面13の間に挿入した状態において、ウェル部12の底面を下側(ホイール径方向内側)に向けて押圧する弾性力F2を発生する機能を有する。
図6及び
図7に示す例では、第2弾性部44は、奥行方向に関して2箇所に設けられているが、奥行方向に関して1箇所にのみ設けられていてもよいし、奥行方向に関して3箇所以上に設けられていてもよい。
【0043】
一対の側面部42のそれぞれの外側面には、第1爪部45が設けられている。
図6及び
図7から理解できるように、各第1爪部45は、対応する側面部42から上方且つ幅方向外側に向けて傾斜して一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分である。後述するように、第1爪部45は、固定部材40が装着された副気室部材30(サブアッセンブリ)をウェル部12の一対の壁面13の間に挿入した状態において、壁面13に設けられた溝部15に嵌る機能を有する。
図6及び
図7に示す例では、第1爪部45は、奥行方向に関して2箇所に設けられているが、奥行方向に関して1箇所にのみ設けられていてもよいし、奥行方向に関して3箇所以上に設けられていてもよい。第1爪部45は、本発明の「第2係止部」に対応している。
【0044】
一対の側面部42のそれぞれの内側面には、第2爪部46が設けられている。
図6及び
図7から理解できるように、各第2爪部46は、対応する側面部42の上端部から幅方向内側に向けて一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分である。後述するように、第2爪部46は、固定部材40を副気室部材30に装着した状態において、副気室部材30における上面の幅方向端部と当接する機能を有する。
図6及び
図7に示す例では、第2爪部46は、奥行方向の全域に亘って連続して設けられているが、奥行方向に関して複数箇所に分かれて設けられていてもよい。第2爪部46は、本発明の「第3係止部」に対応している。
【0045】
以下、
図8を参照しながら、先ず、固定部材40を副気室部材30に装着する際の手順について説明する。この例では、副気室部材30のホイール周方向に直交する断面形状が四角形とされている。
【0046】
図8(a)に示すように、先ず、一対の側面部42に対して幅方向外側の力を加えて、一対の第2爪部46の先端同士の幅方向の間隔が副気室部材30の幅方向の寸法より大きくなるように一対の側面部42を幅方向外側に弾性変形させた状態で、太い矢印に示すように、副気室部材30を固定部材40の内部に収容して、底面部41を副気室部材30の下面に近づけていく。
【0047】
図8(b)に示すように、副気室部材30の下面が底面部41の第1弾性部43に当接した後も、第1弾性部43の弾性力F1に対抗して第1弾性部43をほぼ平坦になるまで弾性変形させながら底面部41を副気室部材30の下面に更に押し付ける。このように第1弾性部43を弾性変形させることで、第2爪部46と副気室部材30の上面との間に隙間a(>0)が確保される。この状態で、前記幅方向外側の力の付与を終了することで、一対の側面部42の位置を元の位置に戻す。これにより、一対の第2爪部46の幅方向の間隔が副気室部材30の幅方向の寸法より小さくなる。このように、隙間aが確保され得る寸法関係となっていることにより、一対の側面部42の位置を元の位置に確実に戻すことができる。
【0048】
そして、
図8(c)に示すように、底面部41の副気室部材30の下面への押し付けを終了する。これにより、第1弾性部43の弾性力F1によって副気室部材30が上方に押圧される。この結果、副気室部材30が固定部材40に対して相対的に上方へ移動し、副気室部材30の上面の幅方向両端部が一対の第2爪部46と当接した(押圧された)状態が維持される。
【0049】
このようにして、固定部材40の副気室部材30への装着が完了する。固定部材40が副気室部材30に装着された状態では、副気室部材30の固定部材40に対する下側への移動は固定部材40の底面部41そのものによって規制され、副気室部材30の固定部材40に対する上側への移動は固定部材40の第2爪部46によって規制される。従って、固定部材40が副気室部材30に装着された状態では、固定部材40が副気室部材30から脱落することがない。換言すれば、副気室部材30及び固定部材40がサブアッセンブリ化される。
【0050】
次に、
図9を参照しながら、このサブアッセンブリをリム10のウェル部12へ取り付ける際の手順について説明する。
図9に示すように、この例では、リム10のウェル部12に設けられた一対の壁面13のそれぞれに、溝部15が設けられている。溝部15は、本発明の「第1係止部」に対応している。
【0051】
図9(a)に示すように、このサブアッセンブリを、太い矢印に示すように、リム10一対の壁面13の間に挿入して、底面部41をウェル部12の底面12aに近づけていく。
図9(b)に示すように、第1爪部45の先端が壁面13に接触した後は、第1爪部45が壁面13によって押圧されて幅方向内側に弾性変形した状態で、底面部41をウェル部12の底面12aに更に近づけていく。
【0052】
図9(c)に示すように、ウェル部12の底面12aが底面部41の第2弾性部44に当接した後も、第2弾性部44の弾性力F2に対抗して第2弾性部44をほぼ平坦になるまで弾性変形させながらサブアッセンブリをウェル部12の底面12aに更に押し付ける。その過程の途中の段階で、第1爪部45の先端が溝15を通過することで、壁面13の第1爪部45への押圧が終了して、第1爪部45の先端の位置が元の位置に戻る。
【0053】
これにより、第1爪部45の先端が溝部15に自然に嵌る。このように第2弾性部44をほぼ平坦になるまで弾性変形させることで、第1爪部45の先端と溝部15の上面との間に隙間b(>0)が確保される。このように、隙間bが確保され得る寸法関係となっていることにより、第1爪部45の先端を溝部15に確実に嵌めることができる。
【0054】
そして、
図9(d)に示すように、サブアッセンブリのウェル部12の底面12aへの押し付けを終了する。これにより、第2弾性部44の弾性力F2の反力により、固定部材40が上方に押圧される。この結果、固定部材40(従って、サブアッセンブリ)が一対の壁面13に対して相対的に上方へ移動し、第1爪部45の先端が爪部15と当接した(押圧された)状態が維持される。このようにして、サブアッセンブリがウェル部12へ取り付けられることによって、副気室部材30がウェル部12に固定される。
【0055】
(作用・効果)
以上、本実施形態によれば、副気室部材30及び固定部材40からなるサブアッセンブリをリム10のウェル部12に取り付けるだけで(ワンタッチで)、副気室部材30がウェル部12に固定される。換言すれば、何らかの部材をウェル部12に取り付ける工程が1つの工程のみとなる。このため、上述した文献に記載の自動車用ホイールと比べて、副気室部材30をウェル部12に取り付ける作業が容易になる。
【0056】
また、本実施形態によれば、固定部材40が副気室部材30に装着された状態では、
図10に示すように、第1弾性部43の弾性力F1によって、副気室部材30の上面の幅方向両端部が固定部材40の一対の第2爪部46に当接した(押圧された)状態が維持され得る。従って、車両走行中等において、副気室部材30の一部が固定部材40の第2爪部46へ衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0057】
また、本実施形態によれば、
図10に示すように、第2弾性部44の弾性力F2の反力によって、固定部材40がホイール径方向外側に向けて押圧される。従って、サブアッセンブリがウェル部12の一対の壁面13の間に配置された状態では、第2弾性部44の弾性力F2の反力によって、固定部材40の第1爪部45の先端が一対の壁面13の溝部15に当接した(押圧された)状態が維持され得る。従って、車両走行中等において、固定部材40の第1爪部45の先端が一対の壁面13の溝部15に衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0058】
また、本実施形態によれば、固定部材40は、金属製の板状部材によって一体に構成されている。従って、固定部材40を薄くできるので、搭載スペースの制約下、副気室部材30の大きさ(従って、タイヤ副気室35の容積)を大きくできる。また、固定部材が樹脂製の場合と比べて、温度変化及び経年変化等に起因して弾性力が低下し難いので、長期間に亘って安定した弾性力を発揮することができる。更には、固定部材が樹脂製の場合と比べて、固定部材40そのものの製造が容易となり、固定部材40の製造コストを低減することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、第1爪部45が、側面部42からホイール軸方向外側且つホイール径方向外側に向けて傾斜して延びる平板状の爪部で構成されるので、比較的小さい力で、サブアッセンブリをウェル部12の一対の壁面13の間に挿入することができる。加えて、サブアッセンブリが一対の壁面13の間に挿入された後は、第1爪部45の先端が、一対の壁面13に設けられた溝15に嵌ることによって、サブアッセンブリ(従って、副気室部材)がウェル部12に強固に固定され得る。
【0060】
また、本実施形態によれば、
図10に示すように、車両走行中等にて副気室部材30がホイール径方向外側に遠心力を受けると、副気室部材30が固定部材40の一対の第2爪部46(従って、固定部材40)を力F3でホイール径方向外側に押圧する。この力F3を受けると、固定部材40の第1爪部45が一対の壁面13の溝部15を力F4でホイール径方向外側に押圧する。このようにそれぞれの力が作用する状態にて、固定部材40の一対の第2爪部46が力F3を受けることによって、固定部材40の一対の側面部42がホイール軸方向外側に変形しようとする。しかしながら、この一対の側面部42の変形が、一対の側面部42と対向している一対の壁面13そのものによって規制される。このため、一対の第2爪部46と副気室部材30との係合が外れ難い。
【0061】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0062】
上記実施形態では、
図6に示すように、リム10のウェル部12の底面12aがホイール軸方向に対して平行であった。これに対して、
図11に示すように、リム10のウェル部12の底面12aがホイール軸方向に対して傾斜している場合にも本発明の構成は適用され得る。
【0063】
また、上記実施形態では、
図6及び
図7に示すように、第1弾性部43は、底面部41の幅方向両端部から上方に突出する円弧状に湾曲しながら幅方向に延びる両持ち梁状の板状部分であり、第2弾性部44は、底面部41の幅方向両端部から下方に突出する円弧状に湾曲しながら幅方向に延びる両持ち梁状の平板状部分であった。これに対し、
図12及び
図13に示すように、第1弾性部43は、底面部41の幅方向端部から上方且つ幅方向内側に向けて傾斜して一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分であり、第2弾性部44は、底面部41の幅方向端部から下方且つ幅方向内側に向けて傾斜して一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分であってもよい。
【0064】
同様に、
図14及び
図15に示すように、第1弾性部43は、底面部41の幅方向中央部から上方且つ幅方向端側に向けて傾斜して一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分であり、第2弾性部44は、底面部41の幅方向中央部から下方且つ幅方向端側に向けて傾斜して一体的に延びる片持ち梁状の平板状部分であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、
図6〜
図9に示すように、「第3係止部」が、側面部42の上端部から幅方向内側に向けて一体的に延びる片持ち梁状の第2爪部46であり、この第2爪部46が、副気室部材30における上面の幅方向端部と当接していた。これに対し、
図6〜
図9にそれぞれ対応する
図16〜
図19に示すように、「第3係止部」が、側面部42からホイール軸方向内側且つホイール径方向内側に向けて傾斜して一体的に延びる平板状の第2爪部47であり、この第2爪部47が、副気室部材30の側面からホイール軸方向外側に延在する縁部37と当接する構成が採用されてもよい。以下、この構成について、上記実施形態と異なる点のみを説明する。
【0066】
この構成では、固定部材40を副気室部材30に装着する際、上記実施形態と異なり、
図18に示すように、一対の側面部42を幅方向外側に弾性変形させることなく、第1弾性部43がほぼ平坦になるまで底面部41を副気室部材30の下面に押し付け、その後にその押圧を終了するだけで、固定部材40の副気室部材30への装着が完了する。
【0067】
また、この構成では、
図20に示すように、車両走行中等にて副気室部材30がホイール径方向外側に遠心力を受けると、副気室部材30の縁部37が固定部材40の第2爪部47(従って、固定部材40)を力F3でホイール径方向外側に押圧する。この力F3を受けると、固定部材40の第1爪部45が一対の壁面13の溝部15を力F4でホイール径方向外側に押圧する。
【0068】
また、この構成では、
図16に示すように、リム10のウェル部12の底面12aがホイール軸方向に対して平行であった。これに対して、
図21に示すように、リム10のウェル部12の底面12aがホイール軸方向に対して傾斜している場合にも本発明の構成は適用され得る。
【0069】
また、上記実施形態では、固定部材40が金属製の板状部材によって一体に構成されているが、固定部材40が樹脂によって一体に構成されていてもよい。