特許第6579587号(P6579587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579587
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   H05H1/24
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-180128(P2017-180128)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-57381(P2019-57381A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】笹井 建典
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩孝
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−050010(JP,A)
【文献】 特開2010−129327(JP,A)
【文献】 特開2012−142150(JP,A)
【文献】 特表2013−519503(JP,A)
【文献】 特開2010−188228(JP,A)
【文献】 特開2008−178870(JP,A)
【文献】 米国特許第5908539(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
H05H 1/46
B01J 19/08
C02F 1/30
A61L 2/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体と、前記内導体の外側に位置するとともに第1の端部を備える第1の外導体と、前記内導体の外側に位置するとともに第2の端部を備える第2の外導体と、を備える同軸導波管と、
前記同軸導波管に伝播させるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、
前記第1の外導体および前記第2の外導体の外側に位置するとともに前記第1の外導体および前記第2の外導体とともに液体を流すための流路を形成する外部管と、
プラズマを発生させるプラズマ発生領域と、
を有し、
前記内導体の中心軸と前記第1の外導体の中心軸と前記第2の外導体の中心軸とは共通であり、
前記第1の外導体の前記第1の端部と前記第2の外導体の前記第2の端部とは、
非接触状態で対面してスリットを構成しており、
前記プラズマ発生領域は、
前記スリットに沿う領域であること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1の外導体は、
前記第1の端部から前記第2の外導体に向かって突出する第1の凸部を有し、
前記第2の外導体は、
前記第2の端部から前記第1の外導体に向かって突出する第2の凸部を有し、
前記第1の凸部と前記第2の凸部とは、
非接触状態で対面していること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1の外導体は、
前記第1の外導体の外周部に前記第1の端部に近づくほど前記流路が狭くなる第1の傾斜面を有すること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、
前記第2の外導体は、
前記第2の外導体の外周部に前記第2の端部に近づくほど前記流路が狭くなる第2の傾斜面を有すること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1の外導体の前記第1の端部と前記第2の外導体の前記第2の端部との対面箇所とに沿うとともに前記対面箇所より内側の領域に、誘電体を有すること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置において、
前記誘電体は、
前記第1の外導体および前記第2の外導体から前記内導体までにわたって配置されていること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、
前記第2の外導体と前記内導体との間にプランジャーを有すること
を特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、液体にプラズマを照射するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ技術は、電気、化学、材料の各分野に応用されている。プラズマは、電子、陽イオンの他に、化学反応性の高いラジカルや紫外線を発生させる。ラジカルは、例えば、成膜や半導体のエッチングに用いられる。紫外線は、例えば、殺菌に用いられる。このように豊富なプラズマ生成物が、プラズマ技術の応用分野の裾野を広げている。
【0003】
プラズマを発生させるためにマイクロ波を用いる装置がある。例えば、特許文献1には、マイクロ波プラズマを排水等の液体へのプラズマ処理に用いる技術が開示されている。特許文献1では、処理する液体の流れる方向に対して直交する方向からマイクロ波を入射させる技術が開示されている。そして、環状である流路の断面の周囲にプラズマを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−050010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、環状の流路に対して、マイクロ波を入射する0°方向の位置ではプラズマが立ちやすく、マイクロ波が出射する180°方向の位置ではプラズマが立ちにくい。つまり、流路の周囲の環状の領域に円環状のプラズマを発生させたいにもかかわらず、半円状のプラズマが発生するおそれがある。仮に、円環状のプラズマを発生させたとしても、プラズマの強さがマイクロ波の入射方向(0°方向)で強くなるという現象が生じる。特許文献1の技術では、液体に均一なプラズマ処理を実施することは困難である。
【0006】
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、液体に均一なプラズマ処理を実施することを図ったプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様におけるプラズマ処理装置は、内導体と、内導体の外側に位置するとともに第1の端部を備える第1の外導体と、内導体の外側に位置するとともに第2の端部を備える第2の外導体と、を備える同軸導波管と、同軸導波管に伝播させるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、第1の外導体および第2の外導体の外側に位置するとともに第1の外導体および第2の外導体とともに液体を流すための流路を形成する外部管と、プラズマを発生させるプラズマ発生領域と、を有する。内導体の中心軸と第1の外導体の中心軸と第2の外導体の中心軸とは共通である。第1の外導体の第1の端部と第2の外導体の第2の端部とは、非接触状態で対面してスリットを構成している。プラズマ発生領域は、スリットに沿う領域である。
【0008】
このプラズマ処理装置は、均一な環状のプラズマを発生させることができる。環状とは、円環状と、多角形の断面形状を有するリング形状と、を含む。均一なプラズマを発生させることができるため、流路に流す液体に対して均一にプラズマ処理を実施することができる。また、液体をバッチ処理ではなく、インラインで連続的にプラズマ処理することができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書では、液体に均一なプラズマ処理を実施することを図ったプラズマ処理装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態のプラズマ処理装置の概略構成図である。
図2】第1の実施形態のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図である。
図3】第1の実施形態の変形例のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図(その1)である。
図4】第1の実施形態の変形例のプラズマ処理装置における第1の外導体および第2の外導体の対面箇所の周辺を示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について、液体にプラズマを照射するプラズマ処理装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
1.プラズマ処理装置
図1は、第1の実施形態のプラズマ処理装置100の概略構成図である。プラズマ処理装置100は、マイクロ波を導波する導波管を用いてプラズマを発生させる。プラズマ処理装置100は、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130と、外部管140と、マイクロ波発生部150と、誘電体160と、ショートプランジャー170と、を有する。
【0013】
プラズマ処理装置100は、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130と、を備える同軸導波管を有する。そのため、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130との中心軸は、共通である。マイクロ波は、図1に示すように、内導体110と、第1の外導体120および第2の外導体130と、の間の空間MP1を伝播する。
【0014】
内導体110は、同軸導波管における内側の導波管である。そのため、内導体110は、第1の外導体120および第2の外導体130の内側に配置されている。内導体110の形状は、円筒形状である。内導体110の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、内導体110の表面にメッキが施されていてもよい。
【0015】
第1の外導体120は、同軸導波管における外側の導波管である。そのため、第1の外導体120は、内導体110の外側に配置されている。第1の外導体120は、第1の端部E1を有する。第1の端部E1は、第1の外導体120の長さ方向の2つの端部のうちの一方の端部である。第1の外導体120は、円筒形状に近い形状をしている。第1の外導体120の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、第1の外導体120の表面にはメッキが施されていてもよい。
【0016】
第2の外導体130は、同軸導波管における外側の導波管である。そのため、第2の外導体130は、内導体110の外側に配置されている。第2の外導体130は、第2の端部E2を有する。第2の端部E2は、第2の外導体130の長さ方向の2つの端部のうちの一方の端部である。第2の外導体130は、円筒形状に近い形状をしている。第2の外導体130の材質は、銅、黄銅、またはその他の金属である。また、第2の外導体130の表面にはメッキが施されていてもよい。
【0017】
外部管140は、第1の外導体120および第2の外導体130の外側に配置されている。外部管140は、第1の外導体120および第2の外導体130とともに液体を流すための流路LP1を形成している。外部管140の形状は、円筒形状である。外部管140の中心軸は、内導体110、第1の外導体120、第2の外導体130の中心軸と共通である。外部管140の材質は、例えばガラスである。
【0018】
マイクロ波発生部150は、マイクロ波を発生させるための装置である。このマイクロ波は、同軸導波管に伝播させるためのものである。マイクロ波発生部150は、例えば、マグネトロンである。また、マイクロ波発生部150は、アイソレーター等の装置を適宜有していてもよい。マイクロ波発生部150が発生するマイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。もちろん、これ以外の周波数であってもよい。これらは例示であり、マイクロ波発生部150の構成は、上記と異なっていてもよい。
【0019】
誘電体160は、マイクロ波の一部を透過するとともに、残部を反射させる。誘電体160は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所とに沿うとともに対面箇所より内側の領域に配置されている。誘電体160は、第1の外導体120および第2の外導体130から内導体110までにわたって、これらの間に挟まれた状態で配置されている。誘電体160の材質は、例えば、石英管、アルミナである。もちろん、その他の材質を用いてもよい。
【0020】
ショートプランジャー170は、マイクロ波を反射させる。ショートプランジャー170は、内導体110と、第2の外導体130との間に挟まれた状態で配置されている。誘電体160の材質と、誘電体160からショートプランジャー170までの距離と、を選択することにより、誘電体160からショートプランジャー170までの間の空間に定在波を発生させることができる。定在波を発生させることにより、プラズマをより励起させやすくなる。また、励起されたプラズマが安定する。なお、ショートプランジャー170は、マイクロ波の一部をわずかに吸収してもよい。
【0021】
2.第1の外導体および第2の外導体の対面箇所
図2は、第1の外導体120および第2の外導体130の対面箇所の周辺を示す断面図である。第1の外導体120と第2の外導体130とは別体である。そして、第1の外導体120と第2の外導体130とは非接触状態で対面している。第1の外導体120の中心軸および第2の外導体130の中心軸は、内導体110の中心軸と共通である。また、第1の外導体120の内径および第2の外導体130の内径は同じである。そして、第1の外導体120の内面120aを延長すると、第2の外導体130の内面130aと一致するように、第1の外導体120および第2の外導体130は配置されている。ただし、場合によっては、第1の外導体120の内径と第2の外導体130の内径とは多少異なっていてもよい。
【0022】
2−1.凸部およびスリット
図2に示すように、第1の外導体120の第1の端部E1と第2の外導体130の第2の端部E2とは、非接触状態で対面している。
【0023】
第1の外導体120は、第1の凸部121を有している。第1の凸部121は、第1の外導体120の一方の端面である第1の端部E1に形成されている。第1の凸部121は、第1の端部E1から第2の外導体130に向かって突出している。第1の凸部121の形状は、円環状である。その円環の中心は、第1の外導体120の中心軸と一致する。
【0024】
第2の外導体130は、第2の凸部131を有している。第2の凸部131は、第2の外導体130の一方の端面である第2の端部E2に形成されている。第2の凸部131は、第2の端部E2から第1の外導体120に向かって突出している。第2の凸部131の形状は、円環状である。その円環の中心は、第2の外導体130の中心軸と一致する。
【0025】
第1の凸部121および第2の凸部131は、非接触状態で対面している。そのため、第1の凸部121と第2の凸部131とは、スリットS1を構成している。スリットS1の幅は0.05mm以上1mm以下の程度である。第1の凸部121の円環状の直径と第2の凸部131の円環状の直径とは同じである。
【0026】
2−2.プラズマ発生領域
図2に示すように、プラズマ処理装置100は、プラズマを発生させるプラズマ発生領域PG1を有する。プラズマ発生領域PG1は、スリットS1に沿う領域である。つまり、プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所に沿う領域である。
【0027】
プラズマ発生領域PG1は、第1の凸部121および第2の凸部131の幅より広くてもよい。プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所であってその対面箇所より外側の領域を含んでいてもよい。プラズマ発生領域PG1は、第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所であってその対面箇所より内側の領域を含んでいてもよい。
【0028】
したがって、プラズマ発生領域PG1である「第1の外導体120の第1の凸部121と第2の外導体130の第2の凸部131との対面箇所に沿う領域」とは、第1の凸部121と第2の凸部131との間の第1の領域と、その第1の領域から第1の外導体120および第2の外導体130の半径方向より内側の領域および外側の領域と、を含む領域である。つまり、第1の外導体120の第1の端部E1と第2の外導体130の第2の端部E2との対面箇所に沿う領域である。
【0029】
前述のように、第1の凸部121および第2の凸部131は円環状である。したがって、プラズマ発生領域PG1も、円環状である。なお、プラズマ発生領域PG1は、流路LP1を流れる液体により浸されるおそれはない。そのため、プラズマ処理装置100は、液体をプラズマ処理している間、安定してプラズマを発生させることができる。
【0030】
2−3.傾斜面
第1の外導体120は、第1の傾斜面122を有する。第1の傾斜面122は、第1の外導体120の外周から外部管140に向かって突出している。第1の傾斜面122は、第1の凸部121に近くなるほど外部管140に突出している。そのため、流路LP1は、第1の端部E1に近づくほど狭くなっている。第1の傾斜面122は、第1の外導体120の外周を周回するように形成されている。
【0031】
第2の外導体130は、第2の傾斜面132を有する。第2の傾斜面132は、第2の外導体130の外周から外部管140に向かって突出している。第2の傾斜面132は、第2の凸部131に近くなるほど外部管140に突出している。そのため、流路LP1は、第2の端部E2に近づくほど狭くなっている。第2の傾斜面132は、第2の外導体130の外周を周回するように形成されている。
【0032】
このように、プラズマ発生領域PG1に近い位置ほど流路LP1は狭くなっている。そのため、流路LP1を流れる液体の流速は、プラズマ発生領域PG1の周辺で非常に大きい。その結果、プラズマ発生領域PG1に対面する箇所では、液体の圧力は非常に小さくなる。具体的には、1気圧下の液体を0.1気圧程度まで下降させることができる。第1の傾斜面122の傾きおよび第2の傾斜面132の傾きおよびプラズマ発生領域PG1の周辺での流路LP1の幅を調整することにより、プラズマ発生領域PG1の圧力を0.1気圧以上1気圧以下とすることができる。さらには、より低い圧力を実現することも可能である。このように、プラズマ処理装置100は、ベンチュリ効果を応用している。
【0033】
3.プラズマ処理装置の動作
図2の矢印L1の向きに液体を流路PL1に流す。この段階では、プラズマ発生領域PG1にはプラズマが発生していないが、プラズマ発生領域PG1の周辺の気圧が低下する。
【0034】
次に、マイクロ波発生部150が、マイクロ波を発生させるとともにマイクロ波を同軸導波管に伝播させる。これにより、マイクロ波は、第1の外導体120と内導体110との間に図2の矢印M1の向きに伝播する。マイクロ波の一部は、誘電体160を透過し、ショートプランジャー170に向かう。そして、誘電体160とショートプランジャー170との間の空間K1に定在波を発生させる。
【0035】
そして、内導体110と、第1の外導体120と、第2の外導体130とに、表面電流を誘起する。その結果、第1の凸部121と第2の凸部131との間に比較的強い電界が加わる。これにより、第1の凸部121と第2の凸部131との間で放電が生じるとともにプラズマ発生領域PG1にプラズマが発生する。
【0036】
プラズマ発生領域PG1で発生したプラズマは、流路LP1を流れる液体にプラズマ生成物を照射する。ここで、プラズマ生成物とは、電子と、陽イオンと、ラジカルと、紫外線と、を含む。これにより、流路LP1を流れる液体は、プラズマ処理される。
【0037】
4.本実施形態の効果
本実施形態のプラズマ処理装置100は、均一な円環状のプラズマを発生させることができる。そのため、流路LP1に流す液体に対して均一にプラズマ処理を実施することができる。また、本実施形態では、減圧ポンプ等を用いずに、減圧下でプラズマを発生させることができる。また、液体をバッチ処理ではなく、インラインで連続的にプラズマ処理することができる。
【0038】
このプラズマ処理装置100におけるプラズマ発生領域PG1の径は十分に大きい。それにともなって、流路LP1の径も十分に大きい。したがって、このプラズマ処理装置100が単位時間当たりに処理する液体の流量は、従来に比べて非常に大きい。また、流路LP1を構成する外部管140が透明であるため、作業者等がプラズマを目視で確認することができる。また、カメラ等を用いることにより、プラズマ処理の状態をモニタリングすることもできる。
【0039】
5.変形例
5−1.誘電体
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘電体160を有する。しかし、プラズマ処理装置は、誘電体160を有さなくてもよい。
【0040】
5−2.誘電体の形状(絶縁体)
図3に示すように、誘電体160の代わりに、第1の外導体120と第2の外導体130とを絶縁する絶縁体260を設けてもよい。その絶縁体260は、第1の外導体120と第2の外導体130とを絶縁するとともに、第1の外導体120および第2の外導体130の内部からプラズマ発生領域にガスが漏れることを抑制することができる。そして、その絶縁体260は、マイクロ波の伝播領域に重ならない位置に配置するとよい。
【0041】
5−3.外部管の形状
外部管140は、必ずしも円筒形状である必要はない。また、外部管140の内径は、上記のように一定でなくともよい。液体の流路LP1は、プラズマ発生領域PG1の箇所だけ通過すればよい。ただし、第1の外導体120および第2の外導体130の少なくとも一方の中心軸の方向と、外部管140の中心軸の方向と、が平行であるとよい。
【0042】
図4は、第1の外導体320および第2の外導体330の代わりに、外部管340が、第1の傾斜面341および第2の傾斜面342を有するプラズマ処理装置300を説明するための図である。この場合には、プラズマ発生領域PG1の周辺の液体の流れに注意する必要がある。
【0043】
また、第1の外導体および第2の外導体と、外部管との両方に、傾斜面を設けてもよい。この場合には、液体の流路は、導波管の側と外部管の側との双方から、狭められる形状になっている。
【0044】
5−4.外部管の材質
本実施形態では、外部管140の材質は、例えばガラスである。しかし、ガラスの代わりに、ガラス以外の金属および絶縁体を用いてもよい。ただし、プラズマ発生領域PG1の周辺では、第1の外導体120および第2の外導体130と、外部管140との間の距離が比較的小さい。そのため、外部管140は、絶縁体であることが好ましい。また、外部管140が透明材料であるとよい。外部からプラズマを観察しやすいからである。
【0045】
5−5.導波管の形状
内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とは、ほぼ円筒形状である。しかし、内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とはテーパ形状であってもよい。また、内導体110と第1の外導体120と第2の外導体130とは、多角形の断面を有する筒形状であってもよい。この場合、外部管の形状を導波管の形状と合わせることが好ましい。
【0046】
5−6.ポンプ
本実施形態では、液体は流路LP1を自然に流れる。しかし、プラズマ処理装置は、液体を送出するポンプを有していてもよい。これにより、液体の流速を上げることができる。つまり、一度に処理する液体の量が増える。また、プラズマ発生領域PG1の周辺をさらに低圧にすることができる。
【0047】
5−7.プラズマ処理装置の動作順序
本実施形態では、液体を流路LP1に流した後にマイクロ波を空間MP1に伝播させる。しかし、液体を流路LP1に流す前にマイクロ波を空間MP1に流してもよい。プラズマ処理装置100は、大気圧下でも、プラズマ発生領域PG1にプラズマを発生させることができるからである。また、何らかのダミー液体を流路LP1に流した後にマイクロ波を伝播させ、プラズマを発生させた後に、処理したい液体を流路LP1に流してもよい。このときダミー液体は、プラズマ処理されずに、プラズマ発生領域PG1に減圧状態を発生させるためだけに用いられる。
【0048】
5−8.定在波
本実施形態では、誘電体160とショートプランジャー170との間の空間K1に定在波を発生させる。その際に、第1の凸部121および第2の凸部131の間に強い電界が加わるように、誘電体160の材質と、誘電体160およびショートプランジャー170の間の距離と、を選定するとよい。
【0049】
5−9.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0050】
6.本実施形態のまとめ
以上説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置100は、均一な円環状のプラズマを発生させることができる。そのため、流路LP1に流す液体に対して均一にプラズマ処理を実施することができる。また、本実施形態では、減圧ポンプ等を用いずに、減圧下でプラズマを発生させることができる。また、液体をバッチ処理ではなく、インラインで連続的にプラズマ処理することができる。
【0051】
A.付記
第1の態様におけるプラズマ処理装置は、内導体と、内導体の外側に位置するとともに第1の端部を備える第1の外導体と、内導体の外側に位置するとともに第2の端部を備える第2の外導体と、を備える同軸導波管と、同軸導波管に伝播させるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、第1の外導体および第2の外導体の外側に位置するとともに第1の外導体および第2の外導体とともに液体を流すための流路を形成する外部管と、プラズマを発生させるプラズマ発生領域と、を有する。第1の外導体の第1の端部と第2の外導体の第2の端部とは、非接触状態で対面している。プラズマ発生領域は、第1の外導体の第1の端部と第2の外導体の第2の端部との対面箇所に沿う領域である。
【0052】
第2の態様におけるプラズマ処理装置においては、第1の外導体は、第1の端部から第2の外導体に向かって突出する第1の凸部を有する。第2の外導体は、第2の端部から第1の外導体に向かって突出する第2の凸部を有する。第1の凸部と第2の凸部とは、非接触状態で対面している。
【0053】
第3の態様におけるプラズマ処理装置においては、第1の外導体は、第1の外導体の外周部に第1の端部に近づくほど流路が狭くなる第1の傾斜面を有する。
【0054】
第4の態様におけるプラズマ処理装置においては、第2の外導体は、第2の外導体の外周部に第2の端部に近づくほど流路が狭くなる第2の傾斜面を有する。
【0055】
第5の態様におけるプラズマ処理装置は、第1の外導体の第1の端部と第2の外導体の第2の端部との対面箇所とに沿うとともに対面箇所より内側の領域に、誘電体を有する。
【0056】
第6の態様におけるプラズマ処理装置においては、誘電体は、第1の外導体および第2の外導体から内導体までにわたって配置されている。
【0057】
第7の態様におけるプラズマ処理装置は、第2の外導体と内導体との間にプランジャーを有する。
【0058】
第8の態様におけるプラズマ処理装置においては、第1の外導体および第2の外導体の少なくとも一方の中心軸の方向と、外部管の中心軸の方向と、が平行である。
【符号の説明】
【0059】
100…プラズマ処理装置
110…内導体
120…第1の外導体
121…第1の凸部
122…第1の傾斜面
130…第2の外導体
131…第2の凸部
132…第2の傾斜面
140…外部管
150…マイクロ波発生部
160…誘電体
170…ショートプランジャー
E1…第1の端部
E2…第2の端部
S1…スリット
LP1…流路
PG1…プラズマ発生領域
図1
図2
図3
図4