(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579603
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】アレルギー疾患の予防改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/20 20060101AFI20190912BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20190912BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20190912BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20190912BHJP
A23C 9/12 20060101ALI20190912BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20190912BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
A61K35/20
A61P11/02
A61P17/00
A61P37/08
A23C9/12
A23L33/10
A23L2/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-102934(P2015-102934)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-216393(P2016-216393A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】515135918
【氏名又は名称】再生ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】乾 利夫
【審査官】
名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/077383(WO,A1)
【文献】
米国特許第06426109(US,B1)
【文献】
国際公開第2015/087981(WO,A1)
【文献】
Milk Science, 2013.08.08, Vol.62, No.2, pp.41-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ初乳をβ−ガラクトシダーゼと緩衝液中接触させる工程によりウシ初乳酵素処理物として得ることを特徴とする、当該ウシ初乳酵素処理物を含有する少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防改善剤の製造方法。
【請求項2】
ウシ初乳酵素処理物を得るに際して、シアリダーゼと接触させる工程をさらに含む請求項1記載の予防改善剤の製造方法。
【請求項3】
1回の投与用として、0.02μg〜40mg/kgの範囲の量のタンパク質を含むウシ初乳酵素処理物である請求項1または2記載の予防改善剤の製造方法。
【請求項4】
ウシ初乳酵素処理物が、消化管内から吸収させる剤形である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の予防改善剤の製造方法。
【請求項5】
少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患が、アトピー性皮膚炎または花粉症である請求項1〜4のいずれか1項に記載の予防改善剤の製造方法。
【請求項6】
ウシ初乳をβ−ガラクトシダーゼと緩衝液中接触させる工程によりウシ初乳酵素処理物として得ることを特徴とする、当該ウシ初乳酵素処理物を含有する、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または改善のための飲食品または医薬品の製造方法。
【請求項7】
ウシ初乳酵素処理物を得るに際して、シアリダーゼと接触させる工程をさらに含む請求項6記載の飲食品または医薬品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー疾患、より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または改善に有用な、ウシ初乳酵素処理物を含んでなる予防改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎やアレルギー喘息のようなI型アレルギーに起因する疾患の患者数は、世界的に増加する傾向にある。アレルギー性疾患の治療は、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド等を用いた薬物療法が一般的であるが、最近では、予防医学の観点から、代替医療としてアレルギーに効果のある機能性食品やサプリメントの研究開発もさかんに行われている。例えば、腸管免疫に作用する乳酸菌が、アレルギー疾患の予防および治療に効果があるとして注目されている(例えば、特許文献1〜3参照)。腸管免疫とは、経口的に取り込まれた病原微生物等を排除する免疫機構であり、過剰反応する腸管免疫を抑制できれば、アレルギー性疾患の予防および治療に貢献できると考えられている。
【0003】
ヒト血清の酵素処理物(β−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼとシアリダーゼ)がマクロファージ活性化作用を有することは、特許文献4に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−309178号公報
【特許文献2】特開2000−095697号公報
【特許文献3】特開2005−139160号公報
【特許文献4】国際公開第2013/038997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または改善に有用な、ウシ初乳酵素処理物を含んでなる予防改善剤、それを含んでなる飲食品および医薬品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、ウシ初乳を特定の酵素、すなわち、β−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる製造方法により得られるウシ初乳酵素処理物が、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防、改善または治療に優れた効果を奏することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防改善剤であって、
ウシ初乳をβ−ガラクトシダーゼと接触させる工程を含んでなる製造方法により得られるウシ初乳酵素処理物を含んでなる予防改善剤、
[2]ウシ初乳酵素処理物の製造方法が、シアリダーゼと接触させる工程をさらに含む上記[1]記載の予防改善剤、
[3]1回の投与用として、0.02μg〜40mgの範囲の量のタンパク質を含む上記[1]または[2]記載の予防改善剤、
[4]消化管内から吸収させる剤形である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の予防改善剤、
[5]少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患が、アトピー性皮膚炎または花粉症である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の予防改善剤、
[6]少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または改善のための飲食品であって、
上記[1]〜[5]のいずれかに記載の予防改善剤を含んでなる飲食品、
[7]少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または治療のための医薬品であって、
上記[1]〜[5]のいずれかに記載の予防改善剤を含んでなる医薬品、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウシ初乳酵素処理物は、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防、改善または治療に優れた効果を奏するので、当該疾患の予防、改善または治療に有用である。したがって、該ウシ初乳酵素処理物を用いれば、これら疾患の予防または改善に有用な飲食品、および、これら疾患の予防または治療に有用な医薬品を提供することができる。
【0009】
さらに、本発明に係るウシ初乳酵素処理物は、ウシ初乳をβ−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理することによって調製できるため、簡便かつ低コストであるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】アトピー性皮膚炎の20歳の女性にウシ初乳酵素処理物を投与した際の、投与開始日(DAY1)、36日後(DAY36)および71日後(DAY71)における腕の裏関節部を写した図面代用写真(それぞれ、
図1A、
図1B、および
図1C)である。
【
図2】アトピー性皮膚炎の20歳の女性にウシ初乳酵素処理物を投与した際の、投与開始日(DAY1)、36日後(DAY36)および71日後(DAY71)における肩部を写した図面代用写真(それぞれ、
図2A、
図2B、および
図2C)である。
【
図3】アトピー性皮膚炎の20歳の女性にウシ初乳酵素処理物を投与した際の、投与開始日(DAY1)、36日後(DAY36)および71日後(DAY71)における上腕裏部を写した図面代用写真(それぞれ、
図3A、
図3B、および
図3C)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ウシ初乳>
本発明で使用するウシ初乳とは、子牛の分娩後、母牛が10日目までに分泌する乳汁をいい、好ましくは7日目まで、より好ましくは5日目までに分泌する乳汁である。本発明において、ウシ初乳は、ホルスタイン種、黒毛和種などのウシの種類にかかわらず、いずれの種のものをも使用することができる。
【0012】
<酵素>
本発明で使用するβ−ガラクトシダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。そのようなものとしては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)由来のもの、ウシ肝臓(bovine liver)由来のものなどが挙げられる。市販されたものとしては、例えば、和光純薬工業(株)のカタログNo.072−04141、SIGMA−ALDRICH社のG1875などが挙げられる。本発明において、β−ガラクトシダーゼは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明で使用するシアリダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。そのようなものとしては、例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringenes)由来のもの、レンサ球菌(Streptococcus 6646K)由来のもの、コレラ菌(Vibrio cholerae)由来のもの、アースロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来のものなどが挙げられる。市販されたものとしては、例えば、SIGMA−ALDRICH社の製品番号(Sigma Prod. Nos.)N2876、N2133、N2904、N3001、N5631、生化学バイオビジネス社のコード番号(Code Number)120052、BioLabs社のカタログ番号(Catalog#)P0720L、P0720Sなどが挙げられる。本発明において、シアリダーゼは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
<酵素処理>
本発明において、ウシ初乳と、β−ガラクトシダーゼ若しくはシアリダーゼとの接触(酵素処理)は、それぞれ、十分な量の酵素を用いて十分な時間接触させることにより、それ以上実質的に酵素反応が進行しない程度まで行うのが好ましい。このような目的には、酵素の種類にもよるが、例えば、β−ガラクトシダーゼとして和光純薬工業(株)のカタログNo.072−04141を用いる場合、ウシ初乳100μlに対して、酵素を65mU使用すれば十分である。また、例えば、シアリダーゼとしてSIGMA−ALDRICH社の製品番号(N2876)を用いる場合、ウシ初乳100μlに対して、酵素を65mU使用すれば十分である。この場合の酵素処理の時間としては、3時間行えば十分である。
【0015】
酵素処理は、任意の容器中で、これら酵素を、ウシ初乳に添加して実施することができるが、所望により、ウシ初乳中の総タンパク質濃度を調整するために、この分野で通常用いられる緩衝液を加えてもよい。そのような緩衝液としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(SPB)、リンゲル液などが挙げられる。酵素処理の温度は、酵素が活性を示す温度であれば特に限定はないが、通常酵素が高い活性を示す37℃付近の温度である。
【0016】
酵素処理は、加熱(熱処理)により、酵素を失活させることにより終了する。かかる熱処理は、酵素を失活させることができる限り特に限定されないが、例えば、60℃付近の温度で、約10分間加熱することにより、実施することができる。熱処理後の検体は、所望により、濃縮してもよい。当該濃縮は、市販の機器、例えば遠心濃縮器(例えば、MILLIPORE社製の10000MWCO YM−10)を用いて行うことができる。
【0017】
また、酵素処理は、固相に固定した酵素(固定化酵素)を用いて行うこともできる。酵素を固相に固定させる方法は、当業者に知られており、例えば、β−ガラクトシダーゼおよび/またはシアリダーゼを、シアンブロマイドの如きカップリング剤により、アガロースビーズに固定することができる。そのような固定化酵素としては、例えば、イモビライズド β−ガラクトシダーゼ G3M(Mo Bi Tec社、#A3102)、ノイラミニダーゼアガロース Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)由来(SIGMA−ALDRICH社製、製品番号(Product Number):N5254)などが市販されている。固定化酵素を用いる利点は、酵素処理後、酵素を熱処理により失活させることなく回収することが可能なこと、および、そのような回収により夾雑物(熱処理により失活した酵素などのタンパク質等)の存在を減じることができることである。
【0018】
<ウシ初乳酵素処理物>
こうして得られる本発明のウシ初乳酵素処理物は、さらに、凍結乾燥して、固体ないし粉体状としてもよい。このようなウシ初乳酵素処理物は、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防、改善または治療に有用な新規組成物である。
【0019】
<予防改善剤>
該ウシ初乳酵素処理物は、食品分野または薬学分野で許容される補助剤(担体)を、所望により配合することにより、予防改善剤とすることができる。そして、該予防改善剤は、これを含んでなる飲食品または医薬品とすることができる。
【0020】
<医薬品>
本発明のウシ初乳酵素処理物は、そのまま、もしくは、適宜、薬学的に許容しうる補助剤(担体)を配合することにより、医薬組成物として調製することができる。このような薬学的に許容し得る補助剤としては、この分野で通常用いられるものをいずれも好適に使用することができ、具体例としては、例えば、希釈剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤等が挙げられる。これら補助剤は、医薬組成物の剤型に応じて、適宜配合される。
【0021】
上記医薬組成物は、適当な剤型に製剤化して、医薬品とすることができる。本発明の医薬組成物や医薬品は、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防、治療等に効果を奏する。医薬品の剤型としては特に制限されず、経口製剤であっても非経口製剤であってもよい。非経口製剤としては、注射剤、輸液剤、点鼻剤、点耳剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。例えば、注射剤としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射などの投与形態のものが挙げられ、このうち、筋肉内注射が好ましい。一方、経口製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤(舌下錠などを含む)、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、内用液剤(懸濁剤、乳剤、シロップ剤などを含む)、吸入剤などが挙げられる。
【0022】
本発明に係るウシ初乳酵素処理物の投与量は、投与対象の年齢、性別、体重および症状、投与方法などにより異なるが、典型的な例としては、例えば、本ウシ初乳酵素処理物に含まれるタンパク質の総量として、成人に対し、1回の投与あたり、約0.02μg以上、好ましくは約0.2μg以上、より好ましくは約2μg以上、より好ましくは約20μg以上、より好ましくは約50μg以上であり、かつ、約40mg以下、好ましくは約20mg以下、より好ましくは約13mg以下、より好ましくは約10mg以下、より好ましくは2mg以下である。好ましい投与量の範囲としては、例えば、約0.02μg〜約40mg、好ましくは約0.2μg〜約20mg、より好ましくは約2μg〜約13mg、より好ましくは約20μg〜約10mg、より好ましくは約50μg〜約2mgの範囲にあるのがよい。なお、本明細書において、タンパク質の量は、波長570nmでの吸光度により決定したタンパク質濃度をもとに、算定するものである。
【0023】
本発明に係るウシ初乳酵素処理物を、上記の如き1回あたりの投与量で投与する場合の、典型的な投与間隔および投与回数は、1〜2回/日である。なお、投与量および投与間隔は、医薬組成物中に含まれるタンパク質の総量を指標として、投与されるタンパク質の総量が同等となるような範囲内で、適宜変更することができる。また、予防目的での投与は、改善ないし治療目的の投与の場合と同じ投与量で行ってもよいし、あるいは、概ね半量程度を目安として行ってもよい。
【0024】
本発明に係るウシ初乳酵素処理物は、他のアレルギー疾患の予防改善剤とともに併用することができる。併用する場合には、当該他の予防改善剤の効能、効果、投与量を考慮の上、本発明に係るウシ初乳酵素処理物の投与量を適宜調節する。
【0025】
<医薬部外品>
本発明に係るウシ初乳酵素処理物は、必要に応じて、上記補助剤を配合することにより、医薬部外品用組成物とすることができ、さらには、該医薬部外品用組成物をさらに加工して、これを含んでなる医薬部外品とすることができる。該医薬部外品用組成物または医薬部外品は、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状等の種々の形態をとり得るものであり、必要に応じ、所望の形状に成形することもできる。医薬部外品用組成物および医薬部外品の調製はいずれも常法にのっとり実施することができる。本発明の医薬部外品用組成物または医薬部外品におけるウシ初乳酵素処理物の使用量は、特に限定されるものではないが、上記医薬品の場合の投与量と同じもの、あるいは、上記を参考にして適宜設定したものを採用することができる。
【0026】
<飲食品>
本発明に係るウシ初乳酵素処理物は、必要に応じて、上記補助剤や、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの飲食品に通常用いられる各種添加剤を適宜配合することにより飲食品用組成物とすることができ、さらには、該飲食品用組成物をさらに加工して、これを含んでなる飲食品とすることができる。該飲食品用組成物または飲食品は、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状等の種々の形態をとり得るものであり、必要に応じ、所望の形状に成形することもできる。また、該飲食品は、パン、麺、菓子、飲料、スープ、加工食品など様々な形態をとることができる。飲食品用組成物および飲食品の調製はいずれも常法にのっとり実施することができる。
【0027】
本発明のウシ初乳酵素処理物は、上記疾患の予防、治療等に効果を奏するものであるので、本発明の飲食品用組成物や飲食品は、該疾患の予防、改善等に効果を奏する。この場合において、本発明の飲食品用組成物または飲食品におけるウシ初乳酵素処理物の使用量は、特に限定されるものではないが、上記医薬品の場合の投与量と同じもの、あるいは、上記を参考にして適宜設定したものを採用することができる。
【0028】
かかる本発明の飲食品は、いわゆる健康食品、健康飲料、機能性食品、栄養機能食品、健康補助食品、栄養補助食品(サプリメント)、特別用途食品、特定保健用食品等の経口投与可能なものであったり、その他ヒト以外の動物(作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物)に対する飼料であり得る。
【0029】
このような本発明の医薬品、医薬部外品、および飲食品は、活性成分であるウシ初乳酵素処理物を、消化管内、好ましくは口腔内または腸管内から吸収させる剤形(例えば、上述の舌下錠や腸溶剤の形態)であることが好ましい。
【0030】
<少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患>
本発明において、I型アレルギーとは、クームス分類によるものをいい、「少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患」としては、例えば、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、好酸球性肺炎、食物アレルギー、アナフィラキシーショックなどが挙げられる。このうち、花粉症、アトピー性皮膚炎が好ましい。
【実施例】
【0031】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0032】
<ウシ初乳酵素処理物の調製>
固体のウシ初乳(colostruMune2550)1gを、100mlの50mM SPB(15.601gのNaH
2PO
4・2H
2Oおよび35.814gのNa
2HPO
4・12H
2Oを、500mlの蒸留水に溶解して、200mM SPB(pH7.0)を調製し、これを希釈して、50mM SPBとした。)で撹拌溶解し、1%溶液を調製した。その初乳液を8,000rpm、4℃で1時間遠心した。上清を、G2膜、8μm、5μm、1.2μm、0.2μm(ミリポア社、ニトロセルロースフィルター)で順次、ろ過処理した。ろ液を中空糸膜(旭化成ケミカルズ社、ペンシル型モジュールSEP−0013)で透析処理した。
【0033】
初乳1mgあたり、ホルミル樹脂(TOYOPEARL社、AF−Formy−650M)で固定化したβ−ガラクトシダーゼ(和光純薬工業(株)製、カタログNo.072−04141)を1U添加し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、反応液をG2膜でろ過し、反応液中の固定化した酵素を除去した。ろ液は、0.2μmでフィルター処理を行った。タンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定したところ(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)、ウシ初乳1gから0.747gのタンパク質が回収されていた(検体1)。
【0034】
かかる検体1を、冷却メタノールで急速凍結した後、−80℃で静置して完全に凍結させた。これを真空乾燥して粉末化し、ウシ初乳酵素処理物とした。その一部を再溶解し、タンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定したところ(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)、ウシ初乳1gから0.628gのタンパク質が回収されていた。
【0035】
<試験例>
上記で調製したウシ初乳酵素処理物を用いて、その中に含まれるタンパク質の量が1.0mgとなるよう調整した腸溶性カプセルを、常法により調製した。該腸溶性カプセルを朝、晩の1日2回、被験者に投与した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患の予防または改善に有用な、ウシ初乳酵素処理物を含んでなる予防改善剤、それを含んでなる飲食品および医薬品を提供することができる。