【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の捕虫器は、
上下方向に延びる仮想軸の周囲に配設され、虫を誘引する複数の光源と、
前記複数の光源の下方に間隔をおいて、前記仮想軸を中心に回転するように配設され、前記虫を吸引する吸引ファンと、
該吸引ファンの外周を覆うように略円筒状に形成されているファンカバーと、
該ファンカバーの下端部の開口を覆うように設けられ、前記虫を捕獲する捕虫ネットとを備え、
前記光源は、指向性光を放射するものであるとともに、該指向性光の光軸が前記ファンカバーの上端部の開口内又は該上端部の開口周囲部を向くように構成されている。
【0007】
前記光源としては、指向性光を放射するものであれば特に限定されないが、発光LEDや、レンズ付き電球等を例示する。前記複数の光源としては、特に限定されないが、1種類の波長の光を放射するもののみで構成してもよいし、互いに異なる種類の波長の光を放射する複数種類のもので構成してもよい。光の波長としては、特に限定されないが、捕獲対象の昆虫の複眼分光感度のピークに応じて設定することが好ましく、具体的には300〜400nmの範囲内で設定(より具体的には350nm付近(紫外域)に設定)したり、500〜600nmの範囲内で設定(より具体的には550nm付近(緑域)に設定)したりすることを例示する。
【0008】
前記光源の指向性光が前記開口周囲部を向くように構成する場合は、該開口周囲部に該指向性光が投射されることによる反射光が、捕虫器の外周側に向かないようにすることが好ましく、特に限定されないが、前記指向性光の光軸が鉛直下方を向くように前記光源を配設するとともに、前記開口周囲部を水平に形成する態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記光源から放射される指向性光の光軸が、前記ファンカバーの上端部の開口内又は該上端部の開口周囲部を向くように構成されているので、次の作用効果が得られる。
(1)捕虫器の周囲に放射される光を従来よりも大幅に低減させることができる。そのため、例えば、栽培対象への光量を制御する必要があるようなハウス栽培において、前記光源の光による周囲への影響を従来よりも大幅に低減させることができ、従来よりも栽培対象の付近に設置することができ、捕獲した虫の処分、捕虫器の掃除・故障の修理等のメンテナンスがし易い。
(2)前記指向性光が前記ファンカバー内の前記吸引ファンや又は該上端部の開口周囲部に投射されることによる反射光により虫を前記ファンカバーの前記開口内や前記開口周囲部に誘引することができる。そのため、前記吸引ファンにより効率的に虫を吸引して前記捕虫ネットに捕獲することができる。
【0010】
前記光源及び前記吸引ファンは、防水性又は防滴性を有するように構成されている態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、栽培対象への給水が降りかかる環境や、高湿度の環境でも使用可能になり、捕虫器を栽培対象の付近に設置することができる。
【0012】
前記吸引ファンは、その回転最大径が、平面視で前記上端部の開口の内側になるように形成されている態様を例示する。
【0013】
この構成によれば、前記上端部の開口を通過して前記ファンカバー内に入ってくる気流を真っすぐに前記吸引ファンに向かわせることができる。さらに前記吸引ファンの前記回転最大径の外側にも気流が起こり、この外側の気流は概ね下方向に流れるため、吸引された虫は前記ファンカバー内面にぶつかり難くなって、前記ファンカバー内面に虫の死骸の付着・堆積が起こり難くなる。また、前記上端部の開口に、網目状又はスリット状の防護カバーを設けた場合でも、該防護カバーに虫が引っかかり難くなり、虫詰まりを防止することができる。特に、栽培対象の付近に捕虫器を設置すると、該栽培対象に供給される水分の影響で前記ファンカバーの内面や前記防護カバー等に、虫が付着し易くなってしまうが、前記構成によれば、それを軽減することができる。
【0014】
仮に前記回転最大径と前記上端部の開口との大きさの関係が逆であると、前記上端部の開口を通過して前記ファンカバー内に入ってくる気流は、該上端部の開口で一旦狭められるため、気流が鼓形になってしまう。こうなると気流が乱流となってエネルギーロスが大きくなり、前記ファンカバー内に入った気流は前記吸引ファンの回転外側方向に力を受けて拡散するような流れが強まり、この気流に乗った虫は前記ファンカバー内面に向かって飛ばされ、該内面にこびりつき易くなってしまう。さらに、前記上端部の開口通過時に気流が狭められるということは速度が一時的に上がるということであり、これによって該開口に、網目状又はスリット状の防護カバーを設けた場合に該防護カバーに虫が引っかかり易くなり、虫詰まりの原因になる。
【0015】
前記ファンカバーは、前記上端部の開口が、平面視で前記下端部の開口の内側になるように形成されている態様を例示する。
【0016】
この構成によれば、ファンカバーの前記下端部の開口から気流を効率よく排出させることができる。また、前記下端部の開口に、網目状又はスリット状の防護カバーを設けた場合でも、該防護カバーに虫が引っかかり難くなり、虫詰まりを防止することができる。特に、栽培対象の付近に捕虫器を設置すると、該栽培対象に供給される水分の影響で前記防護カバーに水分が付着してしまい、該防護カバーに虫が引っかかり易くなってしまうが、前記構成によれば、それを軽減することができる。
【0017】
仮に前記上端部の開口と前記下端部の開口との大きさの関係が逆であると、該下端部の開口通過時の気流が鼓形になるということであり、気流のエネルギーロスの原因になる。また、該下端部の開口に、網目状又はスリット状の防護カバーを設けた場合に該防護カバーに虫が引っかかり易くなり、虫詰まりの原因になる。
【0018】
前記ファンカバーは、前記上端部の開口又は/及び前記下端部の開口に、使用者の指が入らないようにする防護カバーを備えている態様を例示する。
【0019】
前記防護カバーとしては、特に限定されないが、網目状に形成されている態様や、スリット状に形成されている態様を例示する。
【0020】
この構成によれば、前記ファンカバー内に使用者の指が入らないので、前記吸引ファンが作動した状態のままでも、前記捕虫ネットの交換や表面の掃除等のメンテナンスを行うことができる。そのため、捕虫器を、栽培対象の付近に設置して頻繁にメンテナンスを行うようにしても、捕虫器の稼働率が低下せず、しかも、使用者が安心して作業できる。