(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スリット状の複数の保持溝(23)からなりステータコア(10)のスロット(12)に対応する保持溝(23)群が外周に形成された挿通治具(21)を用い、予め巻線された複数のコイル(16)の辺部(16a,16b)を前記保持溝(23)群にそれぞれ挿入して各コイル(16)を前記挿通治具(21)の円周に沿って配列し、前記挿通治具(21)を前記ステータコア(10)の内周に挿入して前記保持溝(23)が前記ステータコア(10)の対応するスロット(12)に整合するように位置決めした後、先端に向かうほど幅狭となる板状のプッシャ(43)を対応する前記各保持溝(23)に先端から挿入し、前記保持溝(23)に挿入された各コイル(16)の辺部(16a,16b)を外径側に押出して前記ステータコア(10)の対応する前記スロット(12)に挿入してステータを製造する方法において、
前記プッシャ(43)の前記各保持溝(23)への挿入前に前記プッシャ(43)が通過可能なスリット(61b,62b)が形成された成形具(61,62)を前記挿通治具(21)の端縁に対向させて配置し、
前記スリット(61b,62b)を介して前記プッシャ(43)を対応する前記各保持溝(23)に挿入し、
前記プッシャ(43)を前記各保持溝(23)に挿入した状態で、前記辺部(16a,16b)が前記スロット(12)に挿入された前記複数のコイル(16)の前記ステータコア(10)の端縁から突出するコイルエンド部(16c,16d)に前記成形具(61,62)を軸方向から押しつけて前記コイルエンド部(16c,16d)を成形する
ことを特徴とするステータの製造方法。
ステータコア(10)の内周に挿入できると共に前記ステータコア(10)のスロット(12)に対応してスリット状の複数の保持溝(23)が外周に形成された挿通治具(21)と、前記保持溝(23)に対応して配置され先端に向かうほど幅狭となる板状のプッシャ(43)とを備え、前記プッシャ(43)を対応する前記各保持溝(23)に先端から挿入し、前記保持溝(23)に挿入されたコイル(16)の辺部(16a,16b)を外径側に押出してそれぞれ対応する前記スロット(12)に挿入するように構成されたステータを製造する装置において、
前記辺部(16a,16b)がスロット(12)に挿入された前記複数のコイル(16)の前記ステータコア(10)の端縁から突出するコイルエンド部(16c,16d)に対向して設けられ前記プッシャ(43)が挿通可能な複数のスリット(61b,62b)が形成された成形具(61,62)と、
前記プッシャ(43)が対応する前記各保持溝(23)に挿入された状態で前記成形具(61,62)を前記コイルエンド部(16c,16d)に軸方向から押しつけて前記コイルエンド部(16c,16d)を成形する成形具移動手段(63,64)と
を備えたことを特徴とするステータの製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、本説明では駆動手段としてボールネジをモータで駆動するように説明しているが、駆動手段はボールネジに限らず油圧や空気圧でもよく、またはそれらの組合せでもよい。
【0019】
図1において、10はステータコアであり、ステータコア10は、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)11及びその間に開口する複数のスロット12を有する。
【0020】
本発明の製造装置20(
図8及び
図9)は、予め巻線された複数のコイル16の両辺部16a,16bをそれぞれスロット12に挿入して、そのステータコア10及びコイル16から成るステータ9(
図10及び
図11)を得る装置20であって、そのようなステータコア10の内周に挿入される挿通治具21を有する。
【0021】
この挿通治具21は、ステータコア10の全長L1と略等しい全長L2を有し、全体としてほぼ円柱状を成すものとして形成される。この円柱状を成す挿通治具21は、その中央に、中心軸を中心とする貫通孔22が形成され、その外周には複数の保持溝23が放射状に形成される。
【0022】
保持溝23は、ステータコア10のスロット12に対応して形成される。即ち、保持溝23は、ステータコア10のスロット12のピッチと同一のピッチで形成されており、スロット12と同数の保持溝23が外周に形成される。そして、この保持溝23は、保持溝23の内接円から外周に向けて放射状を成し、その長手方向の全長に亘って形成される。
【0023】
図1及び
図7に示すように、コアに装着されるコイル16は、線材を巻線することにより製造され、そのコイル16は、ステータコア10のスロット12に挿入される一対の辺部16a,16bと、その辺部16a,16bの端縁を連結してステータコア10の端縁から軸方向に突出する一対のコイルエンド部16c,16dを有し、その一辺部16a及び他辺部16bの双方を挿通治具21の保持溝23に挿入可能に構成される。
【0024】
即ち、その両辺部16a,16bの長さL3(
図7)は、ステータコア10の全長L1(
図1)より僅かに長く形成され、コイルエンド部16c,16d部の長さL4(
図7)は、一対の辺部16a,16bが挿入されるスロット12の間の長さより僅かに長く形成される。そして、一対の辺部16a,16bの端縁に連結するコイルエンド部16c,16dは山形を成すように巻線される。
【0025】
図1に示すように、保持溝23は、この挿通治具21の周囲に、軸方向に延びて形成され、その深さは、少なくとも、コイル16における辺部16a,16bを収容可能な深さに形成される。そして、
図5に示すように、予め作製された全てのコイル16が、挿通治具21の円周に沿って配列されるように構成される。
【0026】
図8及び
図9に示すように、本発明の製造装置20は、可動台31に支柱32を介して支持されステータコア10を軸心が鉛直になるように支持する第一台座33と、その可動台31に立設され第一台座33に載置されたステータコア10の内側に挿入された挿通治具21を支持する第二台座34を備える。
【0027】
図2〜
図4に示すように、第一台座33は、水平な平板状を成してその中央に、ステータコア10の外径より小さくスロット12に外接する仮想円の直径より大きな直径の丸孔33aが形成される。また、第一台座33の上面における丸孔33aの孔縁には、中心軸を鉛直とするステータコア10の下面周囲が着座する切り欠き33bが全周に亘って形成される。そして、この切り欠き33bにステータコア10の下面周囲を着座させることにより、そのステータコア10を支持するように構成される。
【0028】
一方、第二台座34は、丸孔33aの中心軸にその中心軸が一致するように可動台31に立設された丸棒であって、ステータコア10の内側に挿入された挿通治具21の保持溝23を除く下面中央部分を下方から支持するような円柱状を成して形成され、その上端部には、挿通治具21の貫通孔22に進入する位置決め用のボス34aが形成される。
【0029】
また、本発明の製造装置20は、挿通治具21の保持溝23に挿入保持されたコイル16の両辺部16a,16b(
図7)を、ステータコア10の対応するスロット12に押し込むための押出し手段40を備える。
【0030】
この押出し手段40は、挿通治具21がステータコア10の内側に配置され、コイル16が挿通治具21にセットされた
図6に示す状態から、
図5に示すように、コイル16を挿通治具21からステータコア10側に移動させるために用いるものである。
【0031】
図8及び
図9に示すように、押出し手段40は、基台26に立設された支持棒41に上下動可能に設けられた昇降台42と、その昇降台42の下面に取り付けられた複数枚のプッシャ43と、その昇降台42を複数枚のプッシャ43とともに昇降させる昇降手段とを備える。
【0032】
図1に示すように、各プッシャ43は板状を成して挿通治具21の保持溝23と同数準備され、雌ねじ部材44にその保持溝23と同じピッチで周方向に並んで取付けられる。
図2に示すように、雌ねじ部材44は、複数のプッシャ43が取付けられる円筒状の被取付部44aと、その被取付部44aの中心軸を鉛直として昇降台42に取付けられるフランジ44bを有し、その中央に雌ねじ孔44cが貫通して形成される。
【0033】
一方、昇降台42には被取付部44aが挿通可能な貫通孔42aが形成され、被取付部44aを貫通孔42aに挿通して、フランジ44bを昇降台42にネジ止めし、昇降台42の下方に突出した被取付部44aの周囲に板状の複数枚のプッシャ43の上端が放射状に取付けられる。このようにして、その複数枚のプッシャ43は、ステータコア10のスロット12の全てに入るような数及びピッチで昇降台42に取付けられる。
【0034】
なお、
図2及び
図3における符号46は、被取付部44aに放射状に取付けられた複数枚のプッシャ43の周囲を包囲して締結するバンド46を示す。
【0035】
スロット12の数と同数のプッシャ43は、それぞれ同一構造であり、
図2及び
図3に示すように、その下方部分に先細部43aが形成され、その先細部43aから雌ねじ部材44に向けて次第に幅広となる直線状または比較的大きな曲率を有する形状からなるテーパ部43bが形成され、そのテーパ部43bから雌ねじ部材44までは、同一の幅の幅広部43cが形成される。そして、幅広部43cの幅は保持溝23の深さと略同一あるいは僅かに太く形成され、その幅広部43cの長さは挿通治具21の軸方向L2(
図1)の長さより長く形成される。
【0036】
なお、図示の都合上、
図1において、挿通治具21における保持溝23及びプッシャ43の数はステータコア10のスロット12の数より少なく図示し、コイル16は単一のもののみを示している。
【0037】
図8及び
図9に示すように、その複数枚のプッシャ43とともに昇降台42を昇降させる昇降手段は、雌ねじ部材44に螺合するボールネジ51と、このボールネジ51を回転させるモータ52とを備える。モータ52は支持棒41の上端に設けられた固定台53に設けられ、ボールネジ51はその軸心を鉛直にして固定台53に回転自在であるけれども軸方向に移動不能に支持される。
【0038】
そして、モータ52の回転軸52aに駆動ギヤ54が取付けられ、ボールネジ51にはその駆動ギヤ54に歯合する従動ギヤ55が取付けられる。これにより、モータ52が駆動して回転軸52aが駆動ギヤ54とともに回転すると、従動ギヤ55が取付けられたボールネジ51は回転して、そのボールネジ51が螺合する雌ねじ部材44が昇降台42とともに昇降するように構成される。
【0039】
基台26には一対の平行なレール27が水平方向に延びて設けられ、この一対のレール27には、第一台座33及び第二台座34が設けられた可動台31が移動可能に載置される。そして、この可動台31は、第一台座33及び第二台座34に載置されたステータコア10及び挿通治具21とともに水平方向に移動し、ステータコア10及び挿通治具21が複数のプッシャ43の下方に位置する第一位置と、ステータコア10及び挿通治具21の上方に作業空間が広がる第二位置との間で往復移動可能に構成される。
図9は可動台31が第二位置にある場合を示す。
【0040】
このため、ステータコア10及び挿通治具21を第一位置とし、その状態で昇降台42を下降させると、
図4に示すように複数のプッシャ43が保持溝23に進入し、
図3に示すようにプッシャ43の幅広部43cが対応する各保持溝23に挿入された状態で、その保持溝23に辺部16a,16bが挿入されたコイル16は挿通治具21の外側に押出されることになる。このようにコイル16が外側に押出されると、
図5に示すように、そのコイル16は挿通治具21からステータコア10側に移動し、その一対の辺部16a,16bは保持溝23に対向するステータコア10におけるスロット12にそれぞれ挿入されるように構成される。
【0041】
そして、本発明におけるステータの製造装置20における特徴ある構成は、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入された複数のコイル16のステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dに対向して設けられた成形具61,62と、プッシャ43が対応する各保持溝23に挿入された状態で成形具61,62をコイルエンド部16c,16dに軸方向から押しつけてコイルエンド部16c,16dを成形する成形具移動手段63,64とを備えたところにある。
【0042】
成形具61,62は、軸心を鉛直にするステータコア10の下方に突出するコイルエンド部16dを成形する下側成形具61と、そのステータコア10の上方に突出するコイルエンド部16cを成形する上側成形具62を備える。また、成形具移動手段は、その下側成形具61を移動させる下側移動手段63と、その上側成形具62を移動させる上側移動手段64を備える。
【0043】
図1〜
図4に示すように、下側成形具61及び上側成形具62は略同一構造であって、これらは厚肉の板状を成し、その中央孔61a,62aがそれぞれ形成される。この孔61a,62aから放射状にスリット61b,62bが複数形成され、このスリット61b,62bは複数のプッシャ43がこれら成形具61,62を通過可能に、複数のプッシャ43に対向してそのプッシャ43の数と同数形成される。
【0044】
また、この下側成形具61及び上側成形具62には、複数のコイル16におけるコイルエンド部16c,16dの集合体が描く外周の広がりを制限する環状壁61c,62cが中央孔61a,62aと同心を描いて環状に形成され、この環状壁61c,62cが形成された側の中央孔61a,62a近傍が厚肉になるように複数のスリット61b,62bが形成された部分は円錐形を成して形成される。そして、環状壁61c,62cの内側にある底面が、スロット12に挿入された複数のコイル16のステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dの突出端に当接するように構成される。
【0045】
下側成形具移動手段63は、下側成形具61が上面に取付けられて複数の支柱32に上下動可能に設けられた下側昇降板63aと、その下側昇降板63aの両側に螺合された一対のボールネジ63bと、これらのボールネジ63bを回転させる一対のモータ63cとを備える。
【0046】
モータ63cは支柱32に固定された下側固定板63dにその回転軸を鉛直方向上方に向けて取付けられ、ボールネジ63bはその軸心を鉛直にしてモータ63cの回転軸に取付けられる。これにより、一対のモータ63cの回転軸が同期して回転すると、その回転軸に取付けられたボールネジ63bも同期して回転し、それらのボールネジ63bが螺合する下側昇降板63aが昇降するように構成される。下側昇降板63aにはその中央に複数のプッシャ43が通過可能な丸孔63eが形成され、この丸孔63eと同軸に下側成形具61が下側昇降板63aに取付けられる。
【0047】
そして、下側昇降板63aが上昇すると、その下側昇降板63aの上面に取付けられた下側成形具61も上昇し、プッシャ43が対応する各保持溝23に挿入された状態で、ステータコア10から下方に突出するコイルエンド部16dに下側成形具61が軸方向から押しつけられて、そのコイルエンド部16dを成形するように構成される。
【0048】
一方、上側成形具移動手段64は、上側成形具62が下面に取付けられて複数の支持棒41に上下動可能に設けられた上側昇降板64aと、その上側昇降板64aの両側に螺合された一対のボールネジ64bと、これらのボールネジ64bを回転させる一対のモータ64cとを備える。
【0049】
モータ64cは支持棒41に固定された上側固定板64dにその回転軸を鉛直方向下方に向けて取付けられ、ボールネジ64bはその軸心を鉛直にしてモータ64cの回転軸に取付けられる。これにより、一対のモータ64cの回転軸が同期して回転すると、その回転軸に取付けられたボールネジ64bも同期して回転し、それらのボールネジ64bが螺合する上側昇降板64aが昇降するように構成される。上側昇降板64aにはその中央に複数のプッシャ43が通過可能な丸孔64eが形成され、この丸孔64eと同軸に上側成形具62が上側昇降板64aに取付けられる。
【0050】
上側成形具62には、その中央孔62aから放射状にスリット62bが複数のプッシャ43が通過可能に、複数のプッシャ43に対向してそのプッシャ43の数と同数形成される。このため、その複数のスリット62bにプッシャ43の下部を進入させた状態で上側昇降板64aに取付けられる。これにより、この上側成形具62は、雌ねじ部材44の上端が取付けられた複数のプッシャ43の下端を支持し、それぞれの下端を挿通治具21の保持溝23にそれぞれ対応させるガイド材としての役割りを果たす。
【0051】
そして、上側昇降板64aが下降すると、その上側昇降板64aの下面に取付けられた上側成形具62も下降し、プッシャ43が対応する各保持溝23に挿入された状態で、ステータコア10から上方に突出するコイルエンド部16cに上側成形具62が軸方向から押しつけられて、そのコイルエンド部16cを成形するように構成される。
【0052】
次に、上記製造装置を用いた本発明によるステータの製造方法を示す。
【0053】
本発明のステータの製造方法は、予め巻線された複数のコイル16の一対の辺部16a,16bをステータコア10のそれぞれスロット12に挿入してステータ9を製造する方法である。この製造方法では、スリット状の複数の保持溝23からなりステータコア10のスロット12に対応する保持溝23群が外周に形成された挿通治具21を用いる。
【0054】
ステータコイル16は、線材を巻線することにより予め作製され、この予め作製された複数のステータコイル16の一対の辺部16a,16bを挿通治具21の対応する保持溝23にそれぞれ挿入して、全てのコイル16を挿通治具21の円周に沿って配列する。
図1では単一のコイル16のみ示す。
【0055】
ここで、コイル16は、図示しない市販の巻線機等を用いて、線材を巻回することにより得られる。
【0056】
図1に示すように、そのコイル16は、ステータコア10のスロット12に挿入される一対の辺部16a,16bと、その端縁を連結する一対のコイルエンド部16c,16dを有し、その両辺部16a,16bの長さL3(
図7)は、ステータコア10の全長L1(
図1)より僅かに長く形成される。
【0057】
そして、コイルエンド部16c,16d部の長さL4(
図7)は、両辺部16a,16bが挿入されるスロット12の間の長さより僅かに長く形成され、そのコイルエンド部16c,16dは山形を成すように巻線される。
【0058】
このように作製されたコイル16を挿通治具21外周への配設し、その保持溝23群に複数のコイル16の両辺部16a,16bを保持溝23に挿入させる。この複数のコイル16の一対の辺部16a,16bを保持溝23群に挿入させるには、その辺部16a,16bを図示しない把持具により挟み、その図示しない把持具を辺部16a,16bとともに、図示しないアクチュエータにより移動させて、それらの辺部16a,16bを保持溝23群に挿入させることにより行うことができる。
【0059】
なお、必要であれば、この両辺部16a,16bを予め絶縁紙又はテープ等で被覆し、そのように絶縁処理された両辺部16a,16bを保持溝23に挿入させるようにしても良い。
【0060】
この絶縁紙又はテープ等で被覆することは、コイル16が単体の状態で市販の機械等で可能であるので、絶縁処理された両辺部16a,16bを保持溝23に挿入させる場合であっても、コイル16の挿通治具21外周への配設の自動化は可能になる。
【0061】
次に、複数のコイル16を外周に沿って配列させた挿通治具21は、この状態で、ステータコア10の内周に挿入する。この際、可動台31は、
図9に示すように、第一台座33及び第二台座34の上方に作業空間が広がる第二位置に移動させ、その第一台座33にステータコア10を載置させ、そのステータコア10の内周に挿通治具21を挿入して第二台座34に載置することにより、
図4に示すように、挿通治具21をステータコア10の内周に挿入し、その状態を維持する。
【0062】
ここで、第一台座33は、ステータコア10の下面周囲を支持し、第二台座34は、挿通治具21の保持溝23を除く中央部分を下方から支持するように形成されているので、挿通治具21をステータコア10の内周に挿入すると、挿通治具21の保持溝23に両辺部16a,16bが挿入されたコイルのステータコア10より下方に突出するコイルエンド部16c,16dは、第一台座33の丸孔33aであって第二台座34の外側に形成される空間に、下方に突出した状態で進入することになる。
【0063】
次に、
図4に示すように、前述した押出し手段40を用いて、挿通治具21の保持溝23に保持されたコイル16の両辺部16a,16bを外径側に押出して、ステータコア10の対応するスロット12に挿入する。
【0064】
即ち、モータ52を駆動してボールネジ51が螺合する昇降台42を複数のプッシャ43とともに上昇させ、その状態で、第一台座33及び第二台座34に載置されたステータコア10及び挿通治具21とともに可動台31を水平方向に移動し、ステータコア10及び挿通治具21が複数のプッシャ43の下方に位置する第一位置まで移動させる。
【0065】
その後に、上側昇降板64aを上側成形具62とともに下降させ、その上側成形具62を挿通治具21に近づけ、上側成形具62に形成された放射状にスリット62bに挿通された複数のプッシャ43の先細部43aを挿通治具21の保持溝23にそれぞれ対応させる。そして、モータ52を再び駆動して昇降台42を下降させ、その昇降台42に設けられた複数のプッシャ43をその下端から保持溝23に挿入させていく。
【0066】
図4に示すように、保持溝23には、プッシャ43における先細部43aが先に進入し、その後にテーパ部43bが進入することになる。そして、この先細部43aに続いて保持溝23に進入するテーパ部43bは、保持溝23に挿入されたコイル16の両辺部16a,16bを挿通治具21の半径方向外側に押出す。即ち、保持溝23に挿入された両辺部16a,16bは、プッシャ43のテーパ部43bによって押されて外径側に押出され、その後に幅広部43c43cが進入した状態でステータコア10のスロット12に完全に挿入される。
図3及び
図5に、こうしてコイル16の両辺部16a,16bが、対応するスロット12に完全に挿入された状態を示す。
【0067】
ここで、挿通治具21によって保持されたコイル16の両辺部16a,16bを外径側に押し広げて各スロット12に挿入しているので、
図7(a)に示すように、挿通治具21によって保持されたコイル16の両辺部16a,16bの間隔L4は、各スロット12に挿入された状態で、
図7(b)に示すように、その間隔L4’は広がり、コイル16が円周方向に好適に広げられて挿入される事となる。
【0068】
そして、両辺部16a,16bの端縁を連続させるコイルの各コイルエンド部16c,16dは山形を成して形成されているので、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入された複数のコイルのステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dは、
図10に示すように、それぞれが山形を成して、ステータコア10の端面から突出するようなものとなる。
【0069】
このため、本発明の製造方法では、このようにプッシャ43を対応する各保持溝23に挿入した状態で、次に、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入された複数のコイル16のステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dに成形具61,62を軸方向からそれぞれ押しつけて、それらのコイルエンド部16c,16dを成形する。これらコイルエンド部16c,16dの成形は、成形具移動手段63,64により成形具61,62をそれらのコイルエンド部16c,16dに押しつけることにより行われる。
【0070】
即ち、下側成形具移動手段63にあっては、モータ63cを駆動してボールネジ63bを同期して回転させ、それらのボールネジ63bが螺合する下側昇降板63aを上昇させて、その下側昇降板63aの上面に取付けられた下側成形具61を上昇させる。そして、プッシャ43が対応する各保持溝23に挿入された状態で、ステータコア10から下方に突出するコイルエンド部16dに下側成形具61を軸方向から押しつけて、そのコイルエンド部16dを成形する。
【0071】
一方、上側成形具移動手段64にあっては、モータ64cを駆動してボールネジ64bを同期して回転させ、それらのボールネジ64bが螺合する上側昇降板64aを下降させて、その上側昇降板64aの下面に取付けられた上側成形具62を下降させる。そして、プッシャ43が対応する各保持溝23に挿入された状態で、ステータコア10から上方に突出するコイルエンド部16cに上側成形具62を軸方向から押しつけて、そのコイルエンド部16cを成形する。
【0072】
このように、ステータコア10の端面から突出するそれぞれのコイルエンド部16c,16dに成形具61,62を軸方向から押しつけて、そのコイルエンド部16c,16dを成形すると、
図11に示すように、ステータコア10の端面から突出するコイルエンド部16c,16dの高さは、成形前の高さより小さくなる。従って、本発明では、ステータコア10の両端面から、コイル16が突出した部分であるコイルエンド部16c,16dの高さが比較的小さく、かつ、全周に亘って均一となるステータ9を得ることができる。
【0073】
ここで、コイルエンド部16c,16dの成形は、プッシャ43を対応する各保持溝23に挿入した状態で行われるので、成形具61,62の押しつけによりコイルエンド部16c,16dが成形されても、プッシャ43の存在により、押しつぶされるコイルエンド部16c,16dに連続するコイルの辺部16a,16bが各スロット12から離脱するようなことは無い。依って、本発明では、コイルの辺部16a,16bがスロット12から離脱することを防止しつつ、ステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dを高さを低くすることができるものとなる。
【0074】
このように成形具61,62を押しつけてコイルエンド部16c,16dを成形すると、その成形具61,62を後にコイルエンド部16c,16dから離間させると、そのコイルエンド部16c,16dには、スプリングバックによりステータコア10の端縁から突出しようとする力が生じる。
【0075】
一方、コイルエンド部16c,16dを成形する以前には、スロット12に挿入された一対の辺部16a,16bの一部又は全部に、いわゆるスプリングバックによる元に戻ろうとして、そのスロット12から内径方向に移動して飛び出そうとする力が生じる。
【0076】
けれども、コイルエンド部16c,16dを成形して成形具61,62をコイルエンド部16c,16dから離間させると、コイルエンド部16c,16dに生じるステータコア10の端縁から突出しようとする力により、一対の辺部16a,16bがスロット12から飛び出そうとする力は、ステータコア10の外径側に移動してスロット12に収納されようとする力に変わる。
【0077】
このため、その後に保持溝23からプッシャ43を取り去っても、いわゆるスプリングバックにより、スロット12に挿入された一対の辺部16a,16bの一部又は全部が内径方向に移動してそのスロット12から飛び出してしまうようなことはない。
【0078】
よって、本発明のステータの製造方法及びその製造装置では、スロット12に挿入された辺部16a,16bのスロット12から飛び出しを防止しつつ、ステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dの高さを低くすることが可能になるのである。
【0079】
そして、その後に、コイルエンド部16c,16dを成形した成形具61,62をそれらから離間させ、保持溝23からプッシャ43を取り去るとともに、挿通治具21をスタータコア10の内周から抜き出すことにより、ステータコア10のスロット12にステータコイル16が組み付けられたステータ9を得る。
【0080】
このようにして得られたステータ9は、
図11に示すように、コイルエンド部16c,16dがコンパクトで均一に突出した状態となるので、このステータ9やそれを用いて作られるモータをコンパクトにすることができるものとなる。
【0081】
なお、上述した実施の形態では、プッシャ43を対応する各保持溝23に挿入して、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入された後に、複数のコイル16のステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dに成形具61,62を軸方向から押しつける場合を説明した。
【0082】
けれども、
図2〜
図4に示すように、複数のスリット61b,62bが形成された部分が円錐形を成して形成された各成形具61,62を用いる場合には、そのコイルエンド部16c,16dに成形具61,62を押しつけつつ、プッシャ43を対応する各保持溝23に挿入して、一対の辺部16a,16bをスロット12に挿入するようにしても良い。
【0083】
一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入される以前に、成形具61,62をコイルエンド部16c,16dに接触させると、そのコイルエンド部16c,16dは成形具61,62の複数のスリット61b,62bが形成された部分に接触することになる。そして、このスリット61b,62bが形成された部分が円錐形を成していると、その傾斜により、その部分に接触するコイルエンド部16c,16dは外径方向に導かれることになり、コイル16全体を速やかに外径方向に押し広げることができる。
【0084】
また、コイルエンド部16c,16dに成形具61,62を押しつけつつ、一対の辺部16a,16bをスロット12に挿入するようにすると、一対の辺部16a,16bを外径方向に案内するプッシャ43の軸方向の移動に追随して、コイル16がステータコア10の軸方向に移動するようなことを無くすこともできる。
【0085】
一方、プッシャ43を対応する各保持溝23に挿入して、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入された後に、複数のコイル16のステータコア10の端縁から突出するコイルエンド部16c,16dに成形具61,62を軸方向から押しつける場合、複数のスリット61b,62bが形成された部分を円錐形に形成することを必要としない。
【0086】
例えば、
図12及び
図13に示すように、比較的厚肉の板状を成す下側成形具61及び上側成形具62において、中央孔61a,62aから放射状にスリット61b,62bを形成するけれども、その部分を厚肉のままとし、一対の辺部16a,16bがスロット12に挿入されたコイル16のコイルエンド部16c,16dを成形する部分を周溝M,Nとして形成しても良い。
【0087】
このような成形具61,62をコイルエンド部16c,16dに軸方向から押しつけると、複数のスリット61b,62bが形成された部分が円錐形に形成された成形具61,62に比較して、ステータコア10の端縁のコイルエンド部16c,16dを周溝M,Nの範囲内において確実に成形することが可能となり、そのコイルエンド部16c,16dを外周側に広げて成形することもできるので、その後に、コア10の内周に図示しないロータ等を挿入する後の工程を円滑に行うことが期待できる。