(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[歯ブラシ用毛]
本発明の歯ブラシ用毛は、用毛先端部に複数の分岐部が形成されたいわゆる先端分岐毛である。以下、本発明の歯ブラシ用毛の一例を示して説明する。
本実施形態の歯ブラシ用毛10は、
図1及び
図2に示すように、柱状の本体部12と、本体部12の先端部から互いに離間して突出する4本の分岐部14と、を備える。
【0011】
4本の分岐部14のそれぞれは、本体部12内を軸方向に延び、かつ本体部12から突出する4本の柱状の分岐軸部16で形成されている。このように、歯ブラシ用毛10では、本体部12の先端側において分岐軸部16の一部が露出し、それら分岐軸部16の露出した部分によって、本体部12の先端部12aから突出する分岐部14が形成されている。
【0012】
この例の本体部12の断面形状は円形状である。なお、本発明の歯ブラシ用毛の本体部の断面形状は、本発明の効果を損なわない範囲であれば円形状には限定されない。例えば、本発明では、本体部の断面形状は、矩形状、三角形状、不定形状等であってもよい。
本体部12の先端部12aは、先端12bに向かって徐々に細くなるテーパー形状になっている。これにより、本体部12の先端部12aが歯周ポケットに入りやすくなるため、歯周ポケットの清掃力が高くなる。
【0013】
この例の4本の分岐軸部16は、本体部12内において、本体部12の中心軸周りに90度間隔で、かつそれら分岐軸部16のそれぞれの中心軸が平面視で同一円周上に位置するように環状に配置されている。これにより、この例の4本の分岐部14は、平面視で本体部12の先端12bを囲うように90度間隔で環状に位置している。
【0014】
分岐部14の基端から先端までの長さL
1は、分岐部14の基端から本体部12の先端12bまでの長さL
2よりも長くなっている。
歯ブラシ用毛10では、本体部12の先端部12aから突出する4本の分岐部14が形成されているため、毛先での歯磨き剤の保持力が高い。
【0015】
この例の分岐軸部16及び分岐部14の断面形状は円形状である。
なお、本発明の歯ブラシ用毛における分岐軸部及び分岐部の断面形状は、本発明の効果を損なわない範囲であれば円形状には限定されない。例えば、本発明では、分岐軸部及び分岐部の断面形状は、矩形状、三角形状、不定形状等であってもよい。
【0016】
この例の分岐部14は、先端部が先端に向かって徐々に細くなるテーパー形状になっている。本発明では、このように分岐部の先端部が先端に向かって徐々に細くなっていることが好ましい。分岐部の先端部がこのようなテーパー形状になっていれば、当たり心地がより良好となり、使用感がより優れた歯ブラシ用毛となる。
なお、分岐部は、先端部がテーパー形状になっているものには限定されず、断面形状が高さ方向に同一の柱状になっていてもよい。
【0017】
分岐部の先端部がテーパー形状になっている場合、本体部の先端部のテーパー角は分岐部の先端部のテーパー角よりも大きくなる。用毛先端部において、分岐部の基端からの長さ及びテーパー角が異なる、分岐部と本体部の先端部が組み合わせられることにより、歯周ポケットの清掃力、優しい当たり心地、及び歯磨き剤の保持力を兼ね備えた歯ブラシ用毛が得られやすくなる。具体的には、テーパー角が大きく、分岐部の基端からの長さが短い本体部の先端部により、歯周ポケット等の細かな隙間をしっかりと清掃することができる。また、テーパー角が小さく、分岐部の基端からの長さが本体部の先端部よりも長い分岐部により、優しい当たり心地と高い歯磨き剤の保持力が実現される。
【0018】
歯ブラシ用毛10は、本体部12における最も太い部分を軸方向に垂直な方向に切断した切断面において、下式(1)〜(3)の条件を満たす。
0.10≦d
1/d ・・・(1)
0.10≦S
B/S≦0.37 ・・・(2)
0.03≦S
A/S
B≦0.35 ・・・(3)
【0019】
ただし、式(1)〜(3)中、dは本体部12の直径であり、d
1は分岐軸部16の直径である。
S
Aは、本体部12の中心軸を中心とし、かつ4本の分岐軸部16のうち中心軸に最も近い分岐軸部16に外接する仮想円Aの面積である。
S
Bは、本体部12の中心軸を中心とし、かつ4本の分岐軸部16のうち中心軸から最も遠い分岐軸部16が内接する仮想円Bの面積である。
Sは、本体部12の断面積である。
【0020】
この例では、直径が同じ円形状の各々の分岐軸部16が、それぞれの中心軸が平面視で同一円周上に位置するように環状に配置されているため、仮想円Aは全ての分岐軸部16に外接する。また、仮想円Bには全ての分岐軸部16が内接している。
【0021】
歯ブラシ用毛10が式(1)の条件を満たすことで、歯周ポケットの清掃力が高い歯ブラシ用毛10となる。
本体部12の直径dに対する分岐軸部16の直径d
1の比(d
1/d)は、0.10以上であり、0.12〜0.40が好ましく、0.12〜0.30がより好ましい。d
1/dが下限値以上であれば、歯周ポケットの清掃力が高く、毛束耐久性に優れた歯ブラシ用毛となる。d
1/dが上限値以下であれば、歯グキへのあたり心地がやさしく、毛裂け耐久性に優れた歯ブラシ用毛となる。
複数の分岐軸部の直径が互いに異なる場合は、それぞれの分岐軸部についてd
1/dが0.10以上となるようにする。また、全ての分岐軸部について、d
1/dが前記範囲内となることが好ましい。
【0022】
分岐軸部16の直径d
1は、30μm以上が好ましく、30〜70μmがより好ましく、30〜45μmがさらに好ましい。分岐軸部16の直径d
1が下限値以上であれば、本体部12の先端12bが直接歯グキ等に当たることを抑制しやすくなるため、歯グキ等への当たり心地が優しい歯ブラシ用毛が得られやすく、さらに毛束耐久性に優れた歯ブラシ用毛となる。分岐軸部16の直径d
1が上限値以下であれば、歯グキへのあたり心地がやさしく、毛裂け耐久性に優れた歯ブラシ用毛となる。
なお、分岐軸部の直径は、分岐軸部の断面形状が円形状以外の場合は、当該断面形状の外接円の直径を意味するものとする。
複数の分岐軸部の直径d
1は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
本体部12の直径dは、6〜8.5milが好ましく、ハブラシに求められるかたさに応じて選択できる。
なお、1milは0.025mmを意味する。また、本体部の直径は、本体部の断面形状が円形状以外の場合は、当該断面形状の外接円の直径を意味するものとする。
【0024】
歯ブラシ用毛10が式(2)の条件を満たすことで、歯グキ等への当たり心地が優しく、また耐久性に優れ、使用時に用毛が裂けにくい歯ブラシ用毛10となる。
本体部12の断面積Sに対する仮想円Bの面積S
Bの比(S
B/S)は、0.10〜0.37であり、0.15〜0.35が好ましく、0.20〜0.30がより好ましい。S
B/Sが下限値以上であれば、分岐部が細くなりすぎて本体部の先端部が直接歯グキ等に当たることを抑制できるため、歯グキ等への当たり心地が優しくなる。また分岐部が細くなりすぎないために優れた耐久性が得られ、使用時に用毛が裂けにくくなる。さらに、歯周ポケットへの分岐部の進入実感が増すうえ、生産性にも優れる。S
B/Sが上限値以下であれば、分岐軸部から本体部の外側面までの肉厚が充分に確保されるため、使用時に用毛が裂けにくくなる。
【0025】
本体部における最も太い部分を軸方向に垂直な方向に切断した切断面において、分岐軸部と本体部の外側面との距離d
2(肉厚)は、上記の条件を満たせば規定しないが、40μm以上が好ましい。前記距離d
2が40μm以上であれば、使用時に歯ブラシ用毛が分岐部の根元から裂けることが抑制されやすい。
【0026】
歯ブラシ用毛10が式(3)の条件を満たすことで、歯周ポケットの清掃力が高く、歯グキ等への当たり心地が優しいうえ、耐久性に優れ、使用時に用毛が裂けにくい歯ブラシ用毛10となる。
仮想円Bの面積S
Bに対する仮想円Aの面積S
Aの比(S
A/S
B)は、0.03〜0.35であり、0.06〜0.21が好ましく、0.07〜0.13がより好ましい。S
A/S
Bが下限値以上であれば、本体部の先端を囲うように配置された複数の分岐部によって本体部の先端部が歯周ポケットの清掃時に機能しづらくなることを抑制できる。これにより、本体部の先端部による清掃効果が充分に発揮されるため、歯周ポケットの清掃力が高くなる。S
A/S
Bが上限値以下であれば、分岐部が細くなりすぎて本体部の先端部が直接歯グキ等に当たることを抑制できるため、歯グキ等への当たり心地が優しくなる。また分岐部が細くなりすぎないために優れた耐久性が得られ、使用時に用毛が裂けにくくなる。さらに、歯周ポケットへの分岐部の進入実感が増すうえ、生産性にも優れる。
【0027】
歯ブラシ用毛10は、式(1)〜(3)の条件に加えて、下式(4)の条件を満たすことが好ましい。これにより、用毛先端部の平面視において分岐部の密度が高くなることで、使用感が向上する。
d
1>d
A ・・・(4)
ただし、前記式(4)中、d
Aは、仮想円Aの直径であり、d
1は、分岐軸部16の直径である。
本発明では、全ての分岐軸部がそれぞれ式(4)の条件を満たしていることが特に好ましい。
【0028】
分岐部14の長さL
1と、分岐部14の基端から本体部12の先端12bまでの長さL
2は、L
1>L
2が好ましいが、各々の長さ及びその比については特に限定されない。
【0029】
本体部の一方の先端部に形成される分岐部の本数は、分岐軸部の本数と同じになる。
分岐軸部及び本体部の一方の先端部に形成される分岐部の本数は、この例では4本であるが、3本以下であってもよく、5本以上であってもよい。前記本数は、4本以上が好ましく、4〜20本がより好ましく、4〜15本がさらに好ましく、5〜7本が特に好ましい。前記本数が下限値以上であれば、歯グキ等への当たり心地が優しく、毛先での歯磨き剤の保持力が高い歯ブラシ用毛が得られやすい。前記本数が上限値以下であれば、分岐部の毛腰が柔らかくなりすぎることを抑制しやすく、歯周ポケットの清掃力が向上する。また、条件(1)〜(3)を満たすように分岐軸部を配置することが容易になる。
【0030】
本発明の歯ブラシ用毛においては、本体部の一方の先端部のみに複数の分岐部が形成されていてもよく、本体部の長さ方向の両方の先端部にそれぞれ複数の分岐部が形成されていてもよい。
【0031】
本発明の歯ブラシ用毛は、樹脂によって形成される。
歯ブラシ用毛を形成する樹脂としては、溶解処理によって本体部の先端に複数の分岐部を形成できるものであればよく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、歯ブラシ用毛を形成する樹脂としては、ポリエステルが好ましい。
【0032】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、612ナイロン、610ナイロン等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0033】
歯ブラシ用毛を形成する樹脂としては、前記したような樹脂の中から、分岐軸部を形成する樹脂よりも本体部を形成する樹脂の方が、溶解処理に用いる溶解液に対する溶解度が大きくなるように、それぞれの樹脂の組み合わせを選択すればよい。これにより、後述する溶解処理によって、本体部の先端部から突出する分岐部が形成された歯ブラシ用毛が得られる。
【0034】
分岐軸部を形成する樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。同様に、本体部を形成する樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
分岐軸部を形成する樹脂と本体部を形成する樹脂の組み合わせとしては、本体部を形成する樹脂がPBTであり、分岐軸部を形成する樹脂がPBNである組み合わせが好ましい。これにより、先端部が先端に向かって徐々に細くなっている分岐部を備え、歯グキ等への当たり心地が優しい歯ブラシ用毛を容易に得ることができる。
【0035】
本発明の歯ブラシ用毛の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
例えば、分岐軸部を形成する樹脂としてPBN等を用い、本体部を形成する樹脂がPBT等を用いて、前記した式(1)〜(3)の条件を満たすように、分岐軸部が長さ方向に全体的に本体部で覆われた柱状の用毛前駆体を紡糸する。次いで、該用毛前駆体の先端部分を溶解液に浸漬する。これにより、溶解液に対する溶解度が高く、溶解速度が遅い分岐軸部が先端部において露出し、本体部の先端部から突出した複数の分岐部が形成される。
【0036】
溶解液としては、使用する樹脂に応じて適宜選択すればよく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性溶液、硫酸水溶液等の酸性溶液、有機溶媒等が挙げられる。分岐軸部の材質をPBN、本体部の材質をPBTとする場合等、用毛前駆体にポリエステルを用いる場合は、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0037】
溶解処理における溶解液の温度は、樹脂及び溶解液の組み合わせ等によって適宜設定すればよく、例えば溶解液として水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、120〜140℃が好ましい。
溶解処理を行った後の歯ブラシ用毛に対しては、必要に応じて、中和、水洗、乾燥等の処理を行う。
【0038】
以上説明した本発明の歯ブラシ用毛においては、本体部の中心軸回りに環状に配置され、式(1)〜(3)の条件を満たす複数の分岐軸部によって、本体部における先端に向かって徐々に細くなる先端部から、複数の分岐部が突出して形成されている。これにより、本発明の歯ブラシ用毛は、毛先での歯磨き剤の保持力が高く、歯グキ等への当たり心地が優しく、歯周ポケットの清掃力が高いうえ、使用時に用毛が裂けにくい優れた耐久性を有している。
【0039】
なお、本発明の歯ブラシ用毛は、前記した歯ブラシ用毛10には限定されない。
例えば、本発明の歯ブラシ用毛は、
図3に例示した歯ブラシ用毛10Aであってもよい。
図3における
図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
歯ブラシ用毛10Aは、4本の分岐軸部16が本体部12の中心軸回りに環状に配置される代わりに、5本の分岐軸部16が本体部12の中心軸回りに等角度間隔で環状に配置されている以外は、歯ブラシ用毛10と同じである。歯ブラシ用毛10Aにおける5本の分岐軸部16は、歯ブラシ用毛10の場合と同様に、それらの中心軸がそれぞれ平面視で同一円周上に位置するように配置されている。
【0040】
歯ブラシ用毛10Aにおいても、式(1)〜(3)の条件を満たしていることで、毛先での歯磨き剤の高い保持力、歯グキ等への優しい当たり心地、歯周ポケットの高い清掃力、及び使用時に用毛が裂けにくい優れた耐久性が得られる。
【0041】
本発明においては、平面視において、複数の分岐軸部が、それらの中心軸がそれぞれ平面視で同一円周上に位置するように配置されていなくてもよい。例えば、本発明の歯ブラシ用毛は、
図4に例示した歯ブラシ用毛10Bであってもよい。
図4における
図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
歯ブラシ用毛10Bは、環状に配置された4本の分岐軸部16のそれぞれの中心軸が、平面視で同一円周上に位置していない以外は、歯ブラシ用毛10と同じである。歯ブラシ用毛10Bでは、本体部12における最も太い部分を軸方向に垂直な方向に切断した切断面において、仮想円Aが本体部12の中心軸に最も近い分岐軸部16のみと接している。また、仮想円Bが本体部12の中心軸から最も通り分岐軸部16のみと接している。
【0042】
歯ブラシ用毛10Bにおいても、式(1)〜(3)の条件を満たしていることで、毛先での歯磨き剤の高い保持力、歯グキ等への優しい当たり心地、歯周ポケットの高い清掃力、及び使用時に用毛が裂けにくい優れた耐久性が得られる。
【0043】
本発明の歯ブラシは、
図5に例示した歯ブラシ用毛10Cであってもよい。
図5における
図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
歯ブラシ用毛10Cは、直径が異なる5本の分岐軸部16が、それらの中心軸がそれぞれ同一円周上に位置しないように配置されている以外は、歯ブラシ用毛10と同じである。
【0044】
歯ブラシ用毛10Cにおいても、式(1)〜(3)の条件を満たしていることで、毛先での歯磨き剤の高い保持力、歯グキ等への優しい当たり心地、歯周ポケットの高い清掃力、及び使用時に用毛が裂けにくい優れた耐久性が得られる。
【0045】
[歯ブラシ]
本発明の歯ブラシは、本発明の歯ブラシ用毛がヘッド部に植設された歯ブラシである。本発明の歯ブラシは、本発明の歯ブラシ用毛がヘッド部に植設されている以外は、公知の態様を採用することができる。
本発明の歯ブラシにおいては、用毛として本発明の歯ブラシ用毛のみを使用してもよく、本発明の歯ブラシ用毛とそれ以外の公知の用毛とを組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明の歯ブラシとしては、例えば、
図6に例示した歯ブラシ1が挙げられる。
本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2と、ハンドル体2に植設された、歯ブラシ用毛10を含む複数の毛束20とを備える。
ハンドル体2は、棒状のハンドル部3と、ハンドル部3の先端に延設され、ハンドル部3よりも細いネック部4と、ネック部4の先端に設けられ、複数の毛束20が植設されるヘッド部5と、を備えている。
【0047】
ハンドル部3の形状、長さ、太さ等の態様は、特に限定されず、歯ブラシ1を使用する対象者に応じて適宜設計すればよい。ネック部4、ヘッド部5についても同様に、歯ブラシ1を使用する対象者に応じて適宜設計すればよい。
ハンドル体2を形成する材料としては、特に限定されず、公知の樹脂を使用することができる。
【0048】
毛束20は、歯ブラシ用毛10のみを使用して形成してもよく、歯ブラシ用毛10とそれ以外の公知の用毛とを組み合わせて使用して形成してもよい。毛束20の毛丈及び太さは、毛束20に求められる毛腰等を勘案して決定することができる。
【0049】
ヘッド部5の植毛面5aに毛束20を植設する態様は、特に限定されない。この例では、植毛面5aの先端寄りと後端寄りに、それぞれ幅方向に2本の毛束20が植設され、それらの間の領域に幅方向に3本の毛束20が並び、かつ軸方向に4本の毛束20が並ぶように12本の毛束20が植設されている。
【0050】
本発明の歯ブラシの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
ハンドル体を製造する方法としては、例えば、射出成形が挙げられる。
ハンドル体のヘッド部に毛束を植設する方法としては、例えば、平線式植毛法、熱溶着式植毛法、インモールド法等が挙げられる。
【0051】
以上説明した本発明の歯ブラシにおいては、本発明の歯ブラシ用毛を備えているため、毛先での歯磨き剤の保持力が高く、歯グキ等への当たり心地が優しく、歯周ポケットの清掃力が高く、使用時に用毛が裂けにくく耐久性に優れている。
【0052】
なお、本発明の歯ブラシは、前記した歯ブラシ1には限定されない。例えば、本発明の歯ブラシは、本発明の歯ブラシ用毛の2種以上を組み合わせて使用した毛束を備えるものであってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[当たり心地]
10人のモニターが、各例の歯ブラシで口腔内を清掃し、その際の歯肉への当たり心地を下記の評価基準で評価した。モニター10人の平均点が4点以上を「○」、平均点2点以上4点未満を「△」、平均点2点未満を「×」とした。
(評価基準)
5点:歯肉の痛みがなく、当たり心地が非常に優しい。
4点:歯肉の痛みがなく、当たり心地がとても優しい。
3点:歯肉の痛みがなく、当たり心地が優しい。
2点:歯肉に弱い痛みを感じる。
1点:歯肉に強い痛みを感じる。
【0054】
[歯周ポケット清掃力]
10人のモニターが、各例の歯ブラシで口腔内を清掃し、その際の歯周ポケットの清掃効果を下記の評価基準で評価した。モニター10人の平均点が4点以上を「○」、平均点2点以上4点未満を「△」、平均点2点未満を「×」とした。
(評価基準)
5点:歯周ポケットの汚れが落ちた感触を非常に感じる。
4点:歯周ポケットの汚れが落ちた感触を強く感じる。
3点:歯周ポケットの汚れが落ちた感触を感じる。
2点:歯周ポケットの汚れが落ちた感触をあまり感じない。
1点:歯周ポケットの汚れが落ちた感触を感じない。
【0055】
[毛裂け耐久性]
各例の歯ブラシ用毛の毛裂け耐久性は、以下の方法で評価した。10人のモニターが、各例の歯ブラシで1日3回、3分間ずつ口腔内を清掃し、30日間使用した歯ブラシを回収し、植毛面の外周に配置された全ての植毛穴に植設された歯ブラシ用毛について下記の評価基準で評価した。各例について、歯ブラシ10本中、最も評価の悪かった歯ブラシにおける、外周の各植毛穴の歯ブラシ用毛のうちの最も悪い評価結果を、その例の毛裂け耐久性の評価結果とした。
(評価基準)
○:分岐部間の裂け目の最下端から用毛先端までの長さが用毛長の1/3未満である。
△:分岐部間の裂け目の最下端から用毛先端までの長さが用毛長の1/3以上2/3未満である。
×:分岐部間の裂け目の最下端から用毛先端までの長さが用毛長の2/3以上である。
【0056】
[毛束耐久性]
各例の歯ブラシ用毛の耐久性は、以下の方法で評価した。10人のモニターが、各例の歯ブラシで1日3回、3分間ずつ口腔内を清掃し、30日間使用した歯ブラシを回収し、歯ブラシ背面から観察した時の毛束の開き具合を、下記の評価基準で評価した。各例について、歯ブラシ10本中、最も悪い評価結果を、その例の毛束耐久性の評価結果とした。
(評価基準)
○:背面から見てヘッド部からはみ出ている毛束は見られない。
△:背面から見てヘッド部からはみ出ている毛束が1つ以上半分未満である。
×:背面から見てヘッド部からはみ出ている毛束が半分以上である。
【0057】
[実施例1]
図1に例示した歯ブラシ用毛を製造した。
具体的には、分岐軸部を形成する樹脂としてPBNを用い、本体部を形成する樹脂がPBTを用いた紡糸により用毛前駆体を得た。次いで、化学処理を行い、本体部の先端部から突出した4本の分岐部を備える
図1に例示した歯ブラシ用毛を得た。
得られた歯ブラシ用毛における分岐軸部の本数は4本であり、本体部における最も太い部分を軸方向に垂直な方向に切断した切断面において、本体部の直径dは190μm、分岐軸部の直径d
1は30μm、分岐軸部と本体部の外側面との距離d
2(肉厚)は50μm、仮想円Aの直径d
Aは6.2μm、仮想円Aの面積S
Aは30μm
2、仮想円Bの面積S
Bは90μm
2であった。S
B/Sは0.224であり、S
A/S
Bは0.111であった。
次いで、1つの毛束あたりの用毛数が40本になるように、20本の前記歯ブラシ用毛を2つ折りとして、射出成形により成形したハンドル体におけるヘッド部の植毛面に平線式植毛法により植設し、
図6に示す態様の歯ブラシを得た。
【0058】
[実施例2、3及び比較例1〜4]
本体部の直径d、分岐軸部の直径d
1、分岐軸部と本体部の外側面との距離d
2、仮想円Aの直径d
A、仮想円Aの面積S
A、仮想円Bの面積S
B、S
B/S及びS
A/S
Bを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。
各例の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、式(1)〜(3)の条件を満たす歯ブラシ用毛を備える実施例1〜3の歯ブラシでは、歯肉への当たり心地が優しく、歯周ポケットの清掃力が高く、また使用時に用毛が裂けにくく耐久性に優れていた。
歯ブラシ用毛が式(1)〜(3)の条件のいずれか1つ以上を満たさない比較例1〜4の歯ブラシは、歯肉への当たり心地、歯周ポケットの清掃力及び耐久性を兼ね備えていなかった。