(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1トラックを円周方向に沿って視た場合において、前記第1領域、前記第3領域、前記第2領域、前記第3領域、前記第1領域の順番で形成されている請求項1記載のロータリーエンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各光検出器の半径方向の設置間隔を大きくすることにより、各トラックに対する各光検出器の位置ずれの許容度を大きくすることはできる。しかしながら、このようにすると各光検出器全体の半径方向の設置幅も大きくなってしまうので、例えば1つのLED光源で3つの光検出器に対応するエリアに対して光を照射しようとすると必要となるレンズ径も大きくなってしまう等といったコストアップを招く別の問題が生じてしまう。
【0007】
このように従来の3つのトラックを有したアブソリュート形のロータリーエンコーダでは製造容易性とコストを両立させることが難しい。
【0008】
本発明は上述したような問題を一挙に解決するためになされたものであり、複数の光検出器について半径方向の設置間隔を大きくしてトラック部に対する位置ずれの許容度を高めつつ、各光検出器の半径方向の設置幅は従来と同等にすることができ、製造コストを抑えることができるロータリーエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のロータリーエンコーダは、回転軸と同軸となるように設けられるスケールと、前記スケール上において前記回転軸を中心として円周方向に所定のパターンが形成されたトラック部と、前記トラック部が円周方向に通過する所定のエリアへ光を射出する光源と、前記トラック部を通過した光、又は、前記トラック部で反射された光を検出する光検出機構と、を備え、前記トラック部が、前記回転軸を中心として所定半径上に形成された第1トラックと、前記第1トラックとは異なる半径で当該第1トラックと同心円状に形成された第2トラックと、を少なくとも具備し、前記第1トラックが、前記エリアを通過する間、前記光検出機構によって光が継続して検出される第1領域と、前記エリアを通過する間、前記光検出機構によって前記第1領域よりも少ない量の光が継続して検出される、又は、前記光検出機構によって光が継続して検出されない第2領域と、前記エリアを通過する間、前記光検出機構によって光が不連続に検出される第3領域と、を備え、前記第3領域がスリットにより形成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、「前記トラック部を通過した光」とは、例えばスケールに形成されたスリットや開口を通った光だけでなく、透明な樹脂やガラスで形成されたスケールの内部を透過した光を含む概念である。
【0011】
このようなものであれば、前記第1トラックを構成する3つの領域によって3つの異なる状態を前記光検出機構が検出することができ、前記第2トラックによって2つの異なる状態を検出することができるので、組み合わせで6状態を検出することができる。
【0012】
したがって、2つのトラックによって所定回転角度範囲に対して6つの固有の状態を割り当ててUVW信号を生成することが可能となる。
【0013】
さらに、UVW信号を生成するために2つのトラックしか必要ないので、前記光検出機構の半径方向の設置幅が予め制限されていたとしても、従来のように3つのトラックが必要だった場合と比較して各トラックに対応する光検出器の半径方向の設置間隔を大きくとることができる。
【0014】
このため、前記光検出機構に対する前記スケールの位置ずれの許容度を大きくすることができ、製造性をよくすることができ、大量生産しやすい。また、各トラックに対応する各光検出器の設置範囲は従来と比較してほとんど同じにすることができ、光源で必要となるレンズ等の部材の大型化も招かず、生産コストの上昇も抑えることができる。
【0015】
このように本発明のロータリーエンコーダであれば、製造性と生産コストを両立させることが可能となる。
【0016】
また、前記第3領域がスリットにより形成されているので当該第3領域が前記エリアを通過する際にのみ前記光検出機構からはパルス状又はHigh Lowが繰り返される信号が出力されることになる。一方、前記第1領域及び前記第2領域が前記エリアを通過する際には前記光検出機構からの出力はそれぞれ異なる値で一定となる。したがって、各領域が前記エリアを通過する際に前記光検出機構から出力される波形は全く異なるものになるので、振幅や周波数等を加味しなくてもデジタル的に検知しやすい。このため、3状態について誤検出が発生しにくく、正確に回転角を検出することも可能となる。
【0017】
第1トラックのみで前記光検出機構により3状態を明確に検出できるようにするには、前記第1トラックを円周方向に沿って視た場合において、前記第1領域、前記第3領域、前記第2領域、前記第3領域、前記第1領域の順番で形成されていればよい。
【0018】
前記第1トラックに形成されている前記第3領域の検出において前記第2トラックによる干渉が生じにくくでき、所定の検出精度を有するUVW信号を生成できるようにするには、前記第2トラックが、前記エリアを通過する間、前記光検出機構によって光が継続して検出される第4領域と、前記エリアを通過する間、前記光検出機構によって前記第4領域よりも少ない量の光が継続して検出される、又は、前記光検出機構によって光が継続して検出されない第5領域と、を備えたものであればよい。
【0019】
簡単な論理演算のみで前記第3領域が前記エリアを通過しているかどうかを明確に判別できるようにするには、前記光検出機構が、前記第1トラックを通過した光、又は、前記第1トラックで反射された光を検出する第1光検出部と、前記第2トラックを通過した光、又は、前記第2トラックで反射された光を検出する第2光検出部と、を具備し、前記第1光検出部が、円周方向に並べて設けられたA相光検出器、B相光検出器、及び、C相光検出器を少なくとも具備し、前記第2光検出部が、Z相光検出器を具備するものであればよい。例えば、前記A相光検出器、前記B相光検出器、前記C相光検出器の円周方向の幅寸法が前記スリットの円周方向の幅とほぼ同じ大きさであれば、前記第3領域が前記エリアを通過している間はいずれかの光検出器では出力がほとんどなくなる。一方、第1領域又は第2領域が前記エリアを通過している間は全ての光検出器の出力は同じになる。したがって、論理和や否定論理和を取るだけで、前記第3領域が前記エリアを現在通過しているかどうかを判別する事が可能となる。
【0020】
前記第3領域が前記エリアを通過していることを検出する際に、誤判定が生じにくくなり、出力信号にノイズが発生しにくくするには、前記第1光検出部が、前記A相光検出器、前記B相光検出器、及び、前記C相光検出器がこの順で円周方向に隣接して設けられた主光検出部と、前記主光検出部に対して半径方向にずらして設けられ、前記主光検出器の円周方向の両端まで延びるX相光検出器と、をさらに備え、前記A相光検出器の出力信号と、前記X相光検出器の出力信号を比較し、その大小関係に基づいてA相信号を生成するA相信号出力回路と、前記B相光検出器の出力信号と、前記X相光検出器の出力信号を比較し、その大小関係に基づいてB相信号を生成するB相信号出力回路と、前記C相光検出器の出力信号と、前記X相光検出器の出力信号を比較し、その大小関係に基づいてC相信号を生成するC相信号出力回路と、をさらに備えたものであればよい。
【0021】
前記第2トラックから信号を得る場合についても前記第1トラックからの干渉が生じにくく、外乱光の影響も受けにくくするには、前記第2光検出部が、前記Z相光検出器の円周方向の両側にそれぞれ設けられたz相光検出器をさらに備え、前記Z相光検出器の出力信号と、前記z相光検出器の出力信号をと比較し、その大小関係に基づいてZ相信号を生成するZ相信号出力回路と、をさらに備えたものであればよい。
【0022】
前記光検出機構から出力される各種信号から回転角度に対応したUVW信号を簡単な構成で出力できるようにするには、前記A相信号、前記B相信号、前記C相信号、前記Z相信号からUVW信号へ変換して出力するUVW信号出力回路をさらに備え、前記UVW信号出力回路が、前記A相信号、前記B相信号、前記C相信号を入力とするORゲート又はNORゲートを有するものであればよい。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明のロータリーエンコーダであれば、前記第1トラックが、スリットで形成された第3領域を含む3つの領域を有しているので、前記第1トラックだけで回転角度に応じて3つの状態を検出する事が可能である。さらに前記第2トラックでも少なくとも2状態を検出できるので、回転角度に対して6状態を割り当てることができ、UVW信号を精度よく生成する事が可能となる。さらに6状態を検出するために2つのトラックしか設ける必要がないので、各トラックに対応する光検出器の半径方向の設置間隔を十分に大きく取ることが容易であり、前記スケールと前記光検出機構の半径方向に対する位置ずれの許容度も大きくすることができる。これらのことから製造容易性と製造コストを両立させたロータリーエンコーダとすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態に係るロータリーエンコーダ100について各図を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すロータリーエンコーダ100は、UVW信号を出力可能に構成したアブソリュート形のものである。このロータリーエンコーダ100は、例えば小型電気機器等に用いられるモータにおいてモータの回転角や回転速度を検出し、それらの制御のためのフィードバックループを構成するために用いられる。
【0027】
前記ロータリーエンコーダ100は、透過型のものであり、モータの回転軸AXに取り付けられるスケール1と、前記スケール1の外周部に設けられる光源2及び光検出機構3と、前記光検出機構3から出力される信号を処理する信号処理回路SCと、を備えたものである。
【0029】
前記スケール1は、前記モータの回転軸AXと同軸となるように設けらるものであり、前記回転軸AXが嵌合される嵌合穴が中央に形成された薄型円板である。
図2(a)に示すように前記スケール1の外周部には前記回転軸AX及び前記嵌合穴を中心として円周方向に所定のパターンを形成したトラック部Tが設けてある。前記トラック部Tは、扇状の開口部分、扇状の閉口部分、複数のスリットSLにより格子状に形成された部分を有する。例えば開口部分及びスリットSLは円板に打ち抜き加工を施して形成してもよいし、金型を用いた樹脂射出成型により形成してもよい。
【0030】
図2(a)に示されるように前記トラック部Tは、前記スケール1において内周側に配置された第1トラックT1と、外周側に配置された第2トラックT2とから構成してある。
図2(a)及び
図2(b)から分かるように前記トラック部Tに形成してあるパターンは回転角90度を1周期として4回繰り返して形成してある。
【0031】
前記第1トラックT1は、3つの形状の異なる領域である全入光領域R1、全遮光領域R2、半入光領域R3から構成してある。
【0032】
前記全入光領域R1は、請求項における第1領域に相当するものであり、中心角が30度の扇状をなす開口領域である。前記光源2が光を照射しているエリアを当該全入光領域R1が通過する間は、前記光源2から射出された光が前記全入光領域R1を滞りなく通過し、前記光検出機構3によって光が継続して検出されるように構成してある。
【0033】
前記全遮光領域R2は、請求項における第2領域に相当するものであり、前記全入光領域R1と同じく中心角が30度の扇形板状をなす閉口領域である。当該全遮光領域R2が前記エリアを通過している間は前記光源2から前記光検出機構3へは光がほとんど到達しないように構成してある。すなわち、前記全遮光領域R2が前記エリアを通過している間は前記光検出機構3からの出力は全く無い状態が継続される。
【0034】
前記半入光領域R3は、請求項における第3領域に相当するものであり、中心角が15度の扇形の領域に複数のスリットSLを等間隔で円周方向に継続して形成したものである。第1実施形態では前記半入光領域R3を構成するスリットSLの格子部分と開口部分の円周方向の幅は略同じ幅にしてある。したがって、前記全入光領域R1と比較して通過できる光の量は概略半分程度となる。また、前記半入光領域R3が前記エリアを通過している間には、前記光検出機構3では明状態と暗状態が交互に検出される。言い換えると、前記半入光領域R3が前記エリアを通過している間においては前記光検出機構3からの出力はHighとLowが交互に繰り返される不連続な状態が継続することになる。
【0035】
前記第2トラックT2は、2つの形状の異なる領域である明領域R4と、暗領域R5とから構成してある。すなわち、前記第2トラックT2からは2状態が検出できるように構成してある。
【0036】
前記明領域R4は、請求項における第4領域に相当するものであり、中心角が45度の扇状をなす開口領域である。また、前記案領域は、請求項における第5領域に相当するものであり、中心角が45度の扇状をなす閉口領域である。
【0037】
そして、
図2(b)に示すように前記スケール1の回転角度で90度に相当する領域が6つに分割されたI〜VIの角度領域がそれぞれ固有の状態として検出されるように前記第1トラックT1及び前記第2トラックT2の各領域は配置してある。すなわち、I〜VIの角度領域は
図2(b)の表に示すように前記光検出機構3に対する光の入射状態の組み合わせが重複しないように設定してある。
【0038】
そして、前記第1トラックT1全体を円周方向に沿って見た場合、前記全入光領域R1又は前記全遮光領域R2の両隣は必ず前記半入光領域R3を配置してある。言い換えると、円周方向に沿って前記第1トラックT1を見た場合、前記全入光領域R1、前記半入光領域R3、前記全遮光領域R2、前記半入光領域R3、前記全入光領域R1の順番で周期的に各領域が配置してある。
【0039】
前記光源2及び光検出機構3は、前記スケール1のトラック部Tの表裏を挟むように対向させて設けてある。すなわち、前記光源2は前記トラック部Tが通過する所定の領域である前記エリアに光を照射するように設けてある。
【0040】
前記光検出機構3は、前記光源2から射出され前記トラック部Tを通過した光を検出するように前記光源2に対して前記スケール1を挟んで対向させて配置してある。この光検出機構3は、複数の光検出器からなり、各光検出器は
図3に示すように配置してある。
【0041】
すなわち前記光検出機構3は、前記第1トラックT1と対向するように設けてある第1光検出部31と、前記第2トラックT2と対向するように設けてある第2光検出部32とを備えたものである。前記第1光検出部31は前記第1トラックT1を通過した光によって信号を出力するものであり、前記第2光検出部32は前記第2トラックT2を通過した光によって信号を出力するものである。
【0042】
前記第1光検出部31は、A相光検出器DA、B相光検出器DB、及び、C相光検出器DCがこの順で円周方向に隣接して設けられた主光検出部と、前記主光検出部に対して半径方向外側に隣接して設けられたX相光検出器DXとから構成してある。各光検出器は例えばフォトダイオード(PD)である。これらは1つのフォトダイオードの受光領域を分割してそれぞれ別々の信号として取り出すものであってもよいし、別々のフォトダイオードをそれぞれ設けてもよい。
【0043】
図4に示すように前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCはそれぞれ、円周方向の幅をそれぞれ同じにしてあるとともに、各光検出器の円周方向の幅の和が前記半入光領域R3に形成されているスリットSLの円周方向の幅に対してほぼ2倍程度となるように設定してある。また、前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCの半径方向の幅はそれぞれ同じ長さにしてあり、受光面積が等しくなるようにしてある。このように各光検出器が設けられているので、前記半入光領域R3が前記エリアを通過している間には
図4のグラフのように所定の位相差を保ちながら各アナログ出力が表れることになる。
【0044】
前記X相光検出器DXは、
図3及び
図4に示すように前記主光検出部の円周方向の両端まで円周方向に沿って帯状に設けてある。言い換えると、前記X相光検出器DXの円周方向の幅は、前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCの円周方向の幅の和と等しくしてある。このように前記X相光検出器DXは構成してあるので、前記半入光領域R3が前記エリアを通過している間でも常に一部で前記トラック部Tを通過した光を受光できる。また、X相光検出器DXの受光面積は、前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCのいずれよりも小さくしてある。
【0045】
前記第2光検出部32は、
図3に示すように前記第1光検出部31に対して半径方向に所定離間させて設けてあり、中央部のZ相光検出器DZと、前記Z相光検出器DZの円周方向の両端にそれぞれZ相光検出器DZを設けてある。前記Z相光検出器DZの形状及び受光面積は前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCとほぼ同じにしてある。前記Z相光検出器DZはそれぞれ前記Z相光検出器DZの円周方向の幅の半分程度の大きさを備えたものである。
【0046】
図5に示される前記信号処理回路SCは、前記光検出機構3から出力される各アナログ信号に基づきディスクの回転角度と一対一に対応するUVW信号を生成して出力するものである。
【0047】
より具体的には前記信号処理回路SCは、
図5に示すようにA相信号出力回路4A、B相信号出力回路4B、C相信号出力回路4C、Z相信号出力回路4Z、UVW信号出力回路5からなる。
【0048】
前記A相信号出力回路4A、前記B相信号出力回路4B、前記C相信号出力回路4Cは、それぞれ前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCの出力信号と、前記X相光検出器DXの出力信号を比較し、その大小関係に基づいてデジタルのA相信号、B相信号、C相信号を生成する。第1実施形態では前記A相信号出力回路4A、前記B相信号出力回路4B、前記C相信号出力回路4Cは、前記X相光検出の出力電圧をスレッショルド電圧として前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCのアナログ出力信号をHigh又はLowいずれかを示すデジタル信号に変換して出力するように構成してある。
【0049】
ここで、前記第1光検出部31に対して前記第1トラックT1の各領域が通過していく際にどのようなA相信号、B相信号、C相信号が各信号出力回路から出力されているかについて
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を参照しながら説明する。
【0050】
図6(a)に示すように前記第1光検出部31に対して前記全遮光領域R2、前記半入光領域R3、前記全入光領域R1がこの順番で通過している場合を考える。
図6(b)に各光検出器から出力されるアナログ信号の変化を示す。
【0051】
前記全遮光領域R2が前記第1光検出部31を通過している間は、各光検出器には光が到達しないので各光検出器からはゼロ値が継続して出力され続ける。
【0052】
前記半入光領域R3が前記第1光検出部31を通過している間は前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCからは所定の電圧値とゼロ値が交互に出力される。したがって、前記半入光領域R3では前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCからは不連続な出力が周期的に繰り返される。一方、前記X相光検出器DXは前記半入光領域R3が直上を通過している間は必ず一部分で光を受光するので他の光検出器の最大出力に対して半分程度の一定出力を継続する。
【0053】
前記全入光領域R1が前記第1光検出部31を通過している間は、各光検出器に光が到達するので各光検出器からは最大電圧値の出力が継続して継続される。ここで、前記X相光検出器DXは他の光検出器と比較して受光面積が小さいので出力される最大電圧値は他の光検出器の最大電圧値よりも小さい。
【0054】
前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCから
図6(b)に示されるようなアナログ出力がされるので、前記A相信号出力回路4A、前記B相信号出力回路4B、前記C相信号出力回路4Cから出力されるデジタル信号であるA相信号、B相信号、C相信号は
図6(c)のようになる。
図6(c)から分かるように前記全遮光領域R2では、A相信号、B相信号、C相信号が全てLowを示し、前記全入光領域R1ではA相信号、B相信号、C相信号が全てHighを示す。また、前記半入光領域R3ではA相信号、B相信号、C相信号はLowとHighを交互に出力する。ここで、前記半入光領域R3ではA相信号、B相信号、C相信号のある時点において全てがLow又はHighのいずれか一方で揃うことがないように構成してある。
【0055】
なお、前記Z相信号出力回路4Zは、前記各z相光検出器Dzの出力電圧の和をスレッショルド電圧として前記Z相光検出器DZのアナログ出力信号をHigh又はLowいずれかを示すデジタル信号に変換して出力するように構成してある。
【0056】
前記UVW信号出力回路5は、前記A相信号、前記B相信号、前記C相信号、前記Z相信号からUVW信号へ変換して出力するものである。より具体的には前記UVW信号出力回路5は、前記A相信号、前記B相信号、前記C相信号について論理演算により前記第1トラックT1を構成する前記全入光領域R1、前記全遮光領域R2、前記半入光領域R3のいずれが前記第1光検出部31によって検出されているかを判定する。この判定は、前記A相信号、前記B相信号、前記C相信号の3つを入力とするNORゲートにより行われる。第1実施形態では各信号をそのまま第1NORゲート51に入力した結果と、各信号をインバータに通した後、第2NORゲート52に入力した結果を用いている。例えば前記第1光検出部31において前記全入光領域R1が検出されている場合は、第1NORゲート51と第2NORゲート52の出力はそれぞれLowとHighになる。また前記第1光検出部31において前記全遮光領域R2が検出されている場合には、第1NORゲート51と第2NORゲート52の出力はそれぞれHighとLowになる。一方、前記第1光検出部31が前記半入光領域R3を検出している場合には、A相信号、B相信号、C相信号のいずれかは出力が異なっているので、第1NORゲート51と第2NORゲート52の出力はそれぞれLowとLowになる。したがって、各信号の論理和と、各信号を否定した上で演算した論理和の組み合わせにより前記第1トラックT1の3つの領域を区別して検出でき、3状態を明確に検出することができる。この際、各光検出器から出力されるアナログ信号の振幅等を考慮する必要がないので判定精度を高くしやすい。
【0057】
さらに前記UVW信号出力回路5は、2つのNORゲートの出力と、前記Z相信号との論理演算を行うことでUVW信号を生成する。より具体的には、U相信号はZ相信号をそのまま使用している。V相信号、W相信号については2つのNORゲート51、52の出力とZ相信号との論理演算により生成している。この結果、
図6(c)に示されるようなA相信号、B相信号、C相信号、Z相信号から
図7に示されるようなUVW信号を回転角度に対応させて生成することができる。
【0058】
このように構成されたロータリーエンコーダ100であれば、前記第1トラックT1が前記全入光領域R1、前記半入光領域R3、前記全遮光領域R2の3つの領域で構成されているので、1つのトラックで3つの状態を検出する事が可能となる。また、前記第2トラックT2は前記明領域R4と前記暗領域R5の2つの領域で構成されているので1つのトラックで2つの状態を検出できる。したがって、前記トラック部Tの1周期分の回転角度範囲について6つの状態を割り当て判別する事が可能となる。そして、各回転角度に対して固有の検出状態を6つ割り当てることができるので、前記信号処理回路SCにより前記光検出機構3から出力されるアナログ信号からUVW信号を生成できる。
【0059】
このように第1実施形態のロータリーエンコーダ100はUVW信号を得るために2つのトラックしか必要としてないので、3つのトラックが必要であった従来技術と比較して前記第1トラックT1の検出を行う前記第1光検出部31と前記第2トラックT2の検出を行う前記第2光検出部32は半径方向の設置間隔を大きく設定できる。
【0060】
したがって、所望の角度検出精度を保ちながら前記スケール1に対する前記光検出機構3の半径方向の位置ずれに対する許容度を大きくすることが可能となる。このため、要求される組立精度を低減でき、角度の検出精度を高く保ちながら、製造性を良くすることが可能となる。さらに、前記ロータリーエンコーダ100自体の精度を保ちながら小型に構成する事も容易であるので、材料費等の生産コストの上昇も抑えやすい。
【0061】
また、前記X相光検出器DX、又は、z相光検出器Dzの出力信号をスレッショルド電圧としてA相信号、B相信号、C相信号、及び、Z相信号を検出しているので、対象としないトラックを通過した光の干渉や、その他の外乱光の影響が判定に表れにくくできる。
【0062】
加えて、前記半入光領域R3は周期的な複数のスリットSLにより形成されているので、不連続なパルスとして前記半入光領域R3を検出することができる。したがって、振幅や周波数等を加味しなくても前記全入光領域R1と前記全遮光領域R2とは区別して前記半入光領域R3をデジタル的に検知することができる。このため、トラック数が少なくても正確に回転角度を検出することができる。また、前記全入光領域R1と前記全遮光領域R2の間には必ず前記半入光R3が設けてあるので、
図6に示されるように前記光検出機構3の出力は段階的に変化する。このため、仮に前記全入光領域R1と前記全遮光領域R2を直接隣接させた場合には、領域の切り替わり時に光検出機構3からの出力に大きなノイズが発生しやすいところを、第1実施形態の各領域の順列であればこのような問題が発生するのを防ぐことができる。
【0063】
本発明の第2実施形態に係るロータリーエンコーダ100について
図8及び
図9を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0064】
第2実施形態のロータリーエンコーダ100は第1実施形態と比較して第1光検出部31の構成と、信号処理回路SCの構成が異なっている。第1実施形態では
図6(b)に示されるように前記半入光領域R3にA相光検出器DAが入った時点でのA相信号のデューティと、前記半入光領域R3からC相光検出器DCが出る時点でのC相信号のデューティが他の中央部でのデューティと異なってしまう。これは第1実施形態の第1光検出部31の構成では前記半入光領域R3の検出時にスレッショルド電圧が一定の値にならないことに起因している。第2実施形態のロータリーエンコーダ100では参照用の光検出器から出力される信号をスレッショルド電圧として用いつつ、前記半入光領域R3を検出する際に常に信号交差電位がほぼ一定の値に保たれるようにしている。このようにすることで、誤検出や各種デジタル信号にノイズが乗りにくくすることを意図している。
【0065】
より具体的には、第2実施形態の第1光検出部31は、
図8(a)に示すようにそれぞれが所定の間隔を空けて円周方向に並べて設けられたA相光検出器DA、B相光検出器DB、C相光検出器DCからなる主光検出部と、参照用のa相光検出器Da、ab相光検出器Dab、bc相光検出器Dbc、c相光検出器Dcと、を備えている。前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCの半径方向の幅は前記半入光領域R3のスリットSLの半径方向の幅とほぼ同じにしてある。前記A相光検出器DA、前記B相光検出器DB、前記C相光検出器DCの円周方向の幅は、スリットSLの開口部分の円周方向の幅に対して1/3程度にしてある。
【0066】
前記a相検出器Daは、円周方向に対して前記A相光検出器DAよりも外側に設けてある。また、前記ab相光検出器Dabは、前記A相光検出器DA及び前記B相光検出器DBの間に設けてある。さらに、前記bc相光検出器Dbcは前記B相光検出器DB及び前記C相光検出器DCの間に設けてある。加えて、前記c相光検出器Dcは円周方向に対して前記C相光検出器DCよりも外側に設けてある。これらの参照用の光検出器は前記主光検出部を構成する各光検出器と比較して半径方向の幅が概略半分程度にしてあり、円周方向の幅については前記スリットSLにおける開口部分の円周方向の幅に対して1/3程度にしてある。すなわち、主光検出部を構成する光検出器とその両脇にある参照用の光検出器が固まった状態で前記スリットSLの開口部分に収まるように設定してある。
【0067】
第2実施形態の信号処理回路SCは
図9に示すようにカレントミラー回路を備えており、前記ab相光検出器Dabの出力はコピーされて前記A相光検出器DAの出力との和としてA相信号出力回路4Aに入力され、前記A相光検出器DAの出力と比較されるようにしてある。
【0068】
また、前記ab相光検出器Dabの出力及び前記bc相光検出器Dbcの出力の和はB相信号出力回路4Bに入力され、前記B相光検出器DBの出力と比較されるようにしてある。
【0069】
前記bc相光検出器Dbcの出力もカレントミラー回路によりがコピーされて前記c相光検出器Dcの出力とともにC相信号出力回路4Cに入力されて、前記C相光検出器DCの出力比較されるようにしてある。
【0070】
このようにすることで、前記A相信号出力回路4A、前記B相信号出力回路4B、前記C相信号出力回路4Cは、
図8(b)に示されるように前記半入光了領域が検出される場合にはほぼ一定の信号交差電位を実現することができ、生成されるA相信号、B相信号、C相信号のデューティをほぼ一定に保ち、より外乱に強く前記半入光領域R3について誤検出を発生させないようにできる。
【0072】
前記各実施形態では、透過型のロータリーエンコーダについて説明したが、本発明を反射型のロータリーエンコーダとして構成しても構わない。例えば第1領域は高反射率の領域であり、第2領域はインクがベタ塗されて低反射率の領域となっており、第3領域が高反射率の部分と低反射率の部分が交互に周期的に表れてスリット状をなすものであってもよい。もちろん、前記各実施形態と同様に第3領域については開口を形成することにより複数のスリットを周期的に形成するものであってもよい。
【0073】
また第3領域については複数のスリットにより異なる状態として検出されるものではなく、例えば開口部分に半透明膜を添付して第1領域、第2領域とは異なるアナログ信号が得られるようにしてもよい。この場合はアナログ信号の振幅等まで加味して第1トラックについて3つの状態を検出するようにすればよい。
【0074】
前記各実施形態では、第2トラックについて2つの状態を検出できるように開口部分と閉口部分を形成していたが、例えば第3領域と同様に複数の周期的なスリットを形成し、開口部分又は閉口部分と区別できるようにしてもよい。
【0075】
前記各実施形態では主検出部の近傍に参照用の光検出器をスレッショルド電圧が逐次変化するように構成して外乱の対策を行っていたが、仕様によっては参照用の検出器を設けずに予め定められた一定のスレッショルド電圧を上回っているか、下回っているかに基づいてデジタルのA相信号、B相信号、C相信号を生成するようにしても構わない。加えて、前記UVW信号出力回路においてはNORゲートではなく、ORゲートを用いて前記半入光領域が前記第1光検出部を通過していることを検出するようにしてもよい。
【0076】
また、前記各実施形態では前記第1トラックに対してA相光検出器、B相光検出器、C相光検出器の3つの光検出器を設けていたが、1つのトラックから4相以上の信号を得られるように1つのトラックに対して4つ以上の光検出器を設けてもよい。このようなものであれば、さらに検出精度を向上させることができる。
【0077】
また、スケールは円板のものに限られず、例えば円筒型のものであって円筒側面に前記トラック部が形成してあってもよい。このような場合は例えば透明の樹脂で円筒体を形成しておき、前記スケールの側面に第2領域の全遮光部分、又は、第3領域のスリットを印刷等によって形成してもよい。加えて、円盤状に形成された透明樹脂製又はガラス製のスケールに対してスリットや遮光領域を印刷により形成してロータリーエンコーダを構成してもよい。
【0078】
さらに、前記第1トラックにおける各領域の配列順は各実施形態に示したものに限られない。第1領域、第2領域、第3領域がこの順で循環して第1トラックが構成してあってもよい。また、トラックについては2つの物に限られず3つ以上あってもよい。3つ以上のトラックを設けるとともに、本発明のように少なくとも1トラックについて3つの状態を検出可能とすることで回転角度に対する分割数をより多くすることができる。したがって、各実施形態に記載したものや従来のものよりも分解能がさらに高いロータリーエンコーダを構成する事が可能となる。
【0079】
加えて、前記第1光検出部は3つの光検出器を用いるのではなく、1つ又は2つの光検出器により第1領域、第2領域、第3領域を区別して検出するように構成してもよい。例えば、1つ又は2つの光検出器を用いている場合には、光検出器の平均出力を監視しておき、第1閾値を超える出力がある場合には第1領域内であると判別し、光検出器の出力が第1閾値より小さく、第2閾値より大きい場合には第3領域内であると判別し、光検出器の出力が第2閾値よりも小さい場合には第2領域内であると判別するようにしてもよい。
【0080】
前記スケールは、モータ等の回転軸に対して直接嵌合させるものであってもよいし、回転軸に対して間接的に設けるものであってもよい。すなわち、スケールは回転軸に対して同軸となるように設けてあればよい。
【0081】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。