(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属製又は熱硬化性樹脂製の構造物と、前記構造物の表面に両面テープによって貼り付けられた樹脂板と、前記構造物と前記樹脂板との間に配置された、ガラス転移温度が−20℃以下の非発泡の樹脂シート(A)、及びガラス転移温度が−20℃以下の非発泡のゴムシート(B)のいずれか一方もしくは両方と、を備える、構造体。
樹脂シート又は金属製の薄板からなる基材と、前記基材上にシート状に形成された未加硫ゴムからなるゴムシート(B)とを備える積層体が、前記構造物と前記樹脂板との間にて、前記構造物又は前記樹脂板に貼り付けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「樹脂シート」には、押出成形等によって樹脂がシート状に成形されたシートに加えて、樹脂系接着材が基材上にシート状に形成されたものも含むものとする。
「ゴムシート」には、押出成形等によってゴムがシート状に成形されたシートに加えて、ゴム系接着材が基材上にシート状に形成されたものも含むものとする。
樹脂板の「裏面」とは、樹脂板における構造物側の面を意味する。
【0011】
[構造体]
本発明の構造体は、金属製又は熱硬化性樹脂製の構造物と、構造物の表面に両面テープによって貼り付けられる樹脂板と、構造物と樹脂板との間に配置された、後述する樹脂シート(A)及びゴムシート(B)のいずれか一方もしくは両方と、を備える。
【0012】
両面テープは、樹脂シート(A)やゴムシート(B)を配置する面積がより大きくなる点から、樹脂板の周縁部に貼り付けられていることが好ましい。なお、樹脂シート(A)やゴムシート(B)が構造物と樹脂板との間に配置された状態で、樹脂板を構造物にしっかりと貼り付けられる範囲であれば、両面テープは必ずしも樹脂板の周縁部に全周にわたって貼り付けられていなくてもよい。例えば、樹脂板が長方形状等の長尺な形状の場合、該樹脂板の幅方向の両側の側縁部のみに両面テープが貼り付けられてもよい。
【0013】
樹脂シート(A)及びゴムシート(B)は、構造物に貼り付けられるか、又は樹脂板に貼り付けられることが好ましい。なお、樹脂シート(A)及びゴムシート(B)は、構造物と樹脂板の間に配置されていれば、構造物と樹脂板のいずれにも貼り付けられていなくてもよい。
【0014】
樹脂シート(A)とゴムシート(B)とは、いずれか一方のみを構造物と樹脂板の間に配置してもよく、両方を構造物と樹脂板の間に配置してもよい。樹脂シート(A)とゴムシート(B)の両方を用いる場合、樹脂シート(A)とゴムシート(B)の積層体として配置してもよい。
樹脂シート(A)を用いる場合、ゴムシート(B)以外の基材と樹脂シート(A)との積層体として配置してもよい。同様に、ゴムシート(B)を用いる場合、樹脂シート(A)以外の基材とゴムシート(B)との積層体として配置してもよい。
【0015】
本発明の構造体の一例を、
図1〜4に基づいて説明する。
構造体1は、
図1に示すように、構造物10と、構造物10の表面10aに両面テープ12によって貼り付けられた樹脂板14と、構造物10と樹脂板14との間に配置された樹脂シート(A)16と、を備えている。両面テープ12は、樹脂板14の周縁部に貼り付けられている。樹脂シート(A)16は、平面視で構造物10の表面10aにおける両面テープ12よりも内側に配置されている。樹脂シート(A)16の厚みは両面テープ12の厚みよりも薄く、樹脂シート(A)16と樹脂板14との間には空間が形成されている。
【0016】
構造体2は、
図2に示すように、構造物10と、構造物10の表面10aに両面テープ12によって貼り付けられた樹脂板14と、構造物10と樹脂板14との間に配置されたゴムシート(B)18と、を備えている。構造体2は、樹脂シート(A)16の代わりにゴムシート(B)18を備える以外は構造体1と同じである。
【0017】
構造体3は、
図3に示すように、構造物10と、構造物10の表面10aに両面テープ12によって貼り付けられた樹脂板14と、構造物10と樹脂板14との間に配置された積層体20と、を備えている。積層体20は、基材22と樹脂シート(A)16との積層体である。樹脂板14の周縁部に両面テープ12が貼り付けられ、樹脂板14の裏面における両面テープ12よりも内側に、樹脂シート(A)16が樹脂板14側を向くように積層体20が貼り付けられている。積層体20の厚みは両面テープ12の厚みよりも薄く、積層体20と構造物10との間には空間が形成されている。
【0018】
構造体4は、
図4に示すように、構造物10と、構造物10の表面10aに両面テープ12によって貼り付けられた樹脂板14と、構造物10と樹脂板14との間に配置された積層体24と、を備えている。構造体4は、積層体20の代わりに積層体24を備える以外は構造体3と同じである。積層体24は、基材26とゴムシート(B)18との積層体である。積層体24は、ゴムシート(B)18が樹脂板14側を向くように樹脂板14に貼り付けられている。
【0019】
(構造物)
構造物としては、金属製又は熱硬化性樹脂製のものであればよく、例えば、自動車や二輪車の車体、冷蔵庫の筐体等が挙げられる。
構造物の形状及び大きさは、その表面に両面テープで樹脂板を貼り付けられるものであれば、特に限定されない。
【0020】
(樹脂板)
本発明は、樹脂板が自動車のアウターピラーである場合に特に有効である。なお、樹脂板は、アウターピラーには限定されず、例えば、フロントグリル等であってもよい。
【0021】
樹脂板を形成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が挙げられる。本発明は、アクリル樹脂板、ポリスチレン板等の耐衝撃性が低い樹脂板を用いる場合により有効である。また、アウターピラーにはアクリル樹脂板が用いられることが多いことから、特に樹脂板がアクリル樹脂板の場合に有効である。
樹脂板を形成する樹脂は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0022】
樹脂板には、必要に応じて、顔料、染料、老化防止剤等の添加剤が配合されていてもよい。
添加剤は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0023】
樹脂板の厚みは、用途に応じて適宜設定できる。
樹脂板がアウターピラーである場合、樹脂板の厚みは、1.0〜3.5mmが好ましく、1.5〜2.0mmがより好ましい。樹脂板の厚みが下限値以上であれば、実用上必要とされる剛性が確保できると同時に、優れた耐衝撃性が得られやすくなる。樹脂板の厚みが上限値以下であれば、アウターピラーのガラス面からの飛び出し量が少なくなり、ガラス面との一体感が向上する。
【0024】
(両面テープ)
両面テープとしては、特に限定されず、公知の両面テープを採用できる。両面テープとしては、例えば、自動車のアウターピラーの貼り付けに使用される公知の両面テープが挙げられる。
【0025】
(樹脂シート(A))
樹脂シート(A)は、ガラス転移温度(以下、Tgともいう。)が−20℃以下で非発泡の樹脂シートである。
樹脂シート(A)のTgが−20℃以下であることで、−20℃超の環境において樹脂シート(A)が良好なクッション性を発現する。そのため、−20℃超の環境において、樹脂板に加わった衝撃を緩和して樹脂板に破損が生じることを抑制することができる。また、樹脂シート(A)が非発泡であることで、発泡体である場合に比べて、樹脂シート(A)が局所的に変形しにくい。そのため、樹脂板に衝撃が加わった際に、樹脂板に破断伸びを超えるような局所的な変形が生じることを抑制できる。これらのことから、樹脂板と構造物の間に樹脂シート(A)を配置することで、樹脂板に衝撃が加わった際に樹脂板に損傷が生じることを抑制できる。
【0026】
樹脂シート(A)のTgは、−20℃以下であり、−30℃以下が好ましく、−50℃以下がさらに好ましい。樹脂シート(A)のTgが低いほど、より低い温度環境下において樹脂板に損傷が生じることを抑制できる。
なお、本発明におけるTgは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した中間点ガラス転移温度を意味するものとする。
【0027】
樹脂シート(A)としては、Tgが−20℃以下の樹脂シートであればよく、例えば、ポリエチレンシート(Tg:−120℃)、ポリオキシメチレンシート(Tg:−50℃)等が挙げられる。なかでも、価格が安く入手が簡単であるとともに、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい点から、ポリエチレンシートが好ましい。
【0028】
樹脂シート(A)は、押出成形等の公知の方法で成形されたシートを使用することができる。なお、樹脂シート(A)としては、Tgが−20℃以下の樹脂からなる接着材を基材上にシート状に形成してなるものを使用してもよい。すなわち、基材と、Tgが−20℃以下の樹脂からなる接着材がシート状に形成されてなる樹脂シート(A)との積層体(以下、積層体(α)ともいう。)を使用してもよい。
【0029】
積層体(α)における基材としては、例えば、押出成形等による成形シートからなる樹脂シート(A)、樹脂シート(A)以外の樹脂シート(軟質塩化ビニルシート等)、ゴムシート(B)、ゴムシート(B)以外のゴムシート、金属製の薄板等が挙げられる。
基材として金属製の薄板を使用する場合、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい点から、積層体(α)は、樹脂シート(A)が樹脂板側を向くように構造物と樹脂板の間に配置することが好ましい。
【0030】
樹脂シート(A)の厚みは、両面テープの厚みよりも薄いことが好ましい。これにより、樹脂板を構造物に貼り付ける際に両面テープの部分に力が加わりやすく、樹脂板を構造物にしっかりと貼り付けることが容易になる。積層体(α)を用いる場合は、積層体(α)の厚みを両面テープの厚みよりも薄くすることが好ましい。
【0031】
樹脂シート(A)の厚みは、両面テープの厚みよりも薄い範囲内で、0.01〜0.4mmが好ましく、0.02〜0.2mmがより好ましい。樹脂シート(A)の厚みが下限値以上であれば、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。樹脂シート(A)の厚みが上限値以下であれば、樹脂板を構造物に貼り付けることが容易になる。
【0032】
両面テープの厚みに対する樹脂シート(A)の厚みの割合は、1.25〜50%が好ましく、2.5〜25%がより好ましい。前記割合が下限値以上であれば、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。前記割合が上限値以下であれば、樹脂板を構造物に貼り付けることが容易になる。
積層体(α)を用いる場合は、両面テープの厚みに対する積層体(α)の厚みの割合が、前記範囲内であることが好ましい。
【0033】
構造物と樹脂板の間に樹脂シート(A)又は積層体(α)を配置する場合、平面視において、樹脂板の面積に対する樹脂シート(A)が占める割合は、40〜99%が好ましく、50〜90%がより好ましい。樹脂シート(A)が占める割合が前記下限値以上であれば、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。樹脂シート(A)が占める割合が前記上限値以下であれば、樹脂板における両面テープを貼り付ける領域を確保しやすいため、両面テープによって樹脂板を構造物にしっかりと貼り付けやすい。
【0034】
樹脂シート(A)を使用する場合、構造物と樹脂板の間に配置する樹脂シート(A)の数は、作業性の点から1つが好ましい。なお、構造物と樹脂板の間に配置する樹脂シート(A)の数は、2つ以上であってもよい。
【0035】
(ゴムシート(B))
ゴムシート(B)は、ガラス転移温度(以下、Tgともいう。)が−20℃以下で非発泡のゴムシートである。
ゴムシート(B)が、Tgが−20℃以下で、かつ非発泡あることで、樹脂シート(A)と同様の理由で、樹脂板に衝撃が加わった際に樹脂板に損傷が生じることが抑制される。
【0036】
ゴムシート(B)のTgは、−20℃以下であり、−30℃以下が好ましく、−40℃以下がさらに好ましい。ゴムシート(B)のTgが低いほど、より低い温度環境下において樹脂板が損傷することを抑制できる。
【0037】
ゴムシート(B)としては、Tgが−20℃以下のゴムシートであればよく、Tgが−20℃以下の未加硫ゴムが基材上にシート状に形成されてなるゴムシートが好ましい。すなわち、基材と、Tgが−20℃以下の未加硫ゴムがシート状に形成されてなるゴムシート(B)との積層体(以下、積層体(β)ともいう。)を使用してもよい。
【0038】
未加硫ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム系接着材(Tg:−73℃)、ポリブタジエンゴム(Tg:−90℃)等が挙げられる。
積層体(β)における基材としては、樹脂シート又は金属製の薄板が好ましい。基材として用いる樹脂シートとしては、樹脂シート(A)であってもよく、軟質塩化ビニルシート等の樹脂シート(A)以外の樹脂シートであってもよい。基材として金属製の薄板を使用する場合、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい点から、積層体(β)は、ゴムシート(B)が樹脂板側を向くように構造物と樹脂板の間に配置することが好ましい。
積層体(β)としては、ビニールテープが好ましい。
【0039】
なお、ゴムシート(B)は、Tgが−20℃以下のゴムを押出成形等により成形した成形シートであってもよい。
【0040】
ゴムシート(B)の厚みは、両面テープの厚みよりも薄いことが好ましい。これにより、樹脂板を構造物に貼り付ける際に両面テープの部分に力が加わりやすく、樹脂板を構造物にしっかりと貼り付けることが容易になる。積層体(β)を用いる場合は、積層体(β)の厚みを両面テープの厚みよりも薄くすることが好ましい。
【0041】
ゴムシート(B)の厚みは、両面テープの厚みよりも薄い範囲内で、0.01〜0.4mmが好ましく、0.01〜0.2mmがより好ましい。ゴムシート(B)の厚みが下限値以上であれば、シートを製造することが容易であるとともに、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。ゴムシート(B)の厚みが上限値以下であれば、樹脂板を構造物に貼り付けることが容易になる。
【0042】
両面テープの厚みに対するゴムシート(B)の厚みの割合は、1.25〜50%が好ましく、1.25〜25%がより好ましい。前記割合が下限値以上であれば、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。前記割合が上限値以下であれば、樹脂板を構造物に貼り付けることが容易になる。
積層体(β)を用いる場合は、両面テープの厚みに対する積層体(β)の厚みの割合が、前記範囲内であることが好ましい。
【0043】
構造物と樹脂板の間にゴムシート(B)又は積層体(β)を配置する場合、平面視において、樹脂板の面積に対するゴムシート(B)が占める割合は、40〜99%が好ましく、50〜90%がより好ましい。ゴムシート(B)が占める割合が前記下限値以上であれば、樹脂板が損傷することを抑制する効果が得られやすい。ゴムシート(B)が占める割合が前記上限値以下であれば、樹脂板における両面テープを貼り付ける領域を確保しやすいため、両面テープによって樹脂板を構造物にしっかりと貼り付けやすい。
【0044】
ゴムシート(B)を使用する場合、構造物と樹脂板の間に配置するゴムシート(B)の数は、作業性の点から1つが好ましい。なお、構造物と樹脂板の間に配置するゴムシート(B)の数は、2つ以上であってもよい。
【0045】
以上説明した本発明の構造体においては、構造物と樹脂板との間に、樹脂シート(A)やゴムシート(B)が配置されることで、樹脂板に衝撃が加わった際に樹脂板が構造物にぶつかることが防止される。そして、樹脂シート(A)やゴムシート(B)のクッション性によって、樹脂板が損傷することが抑制される。そのため、耐衝撃性に劣るアクリル樹脂やポリスチレン等から樹脂板であっても、ABS樹脂等の耐衝撃性の高い樹脂を積層しなくても、衝撃が加わった際に樹脂板に損傷が生じることを抑制できる。
【0046】
また、本発明の構造体では、耐衝撃性に劣る樹脂を用いる樹脂板であっても耐衝撃性の高い樹脂を積層する必要がないため、樹脂板が厚くなりすぎたり、重くなりすぎたりすることも抑制できる。また、2色成形等を行う特殊な装置も必要ないため、コスト面でも有利である。
【0047】
また、本発明では、両面テープによって樹脂板を構造物に貼り付ける。自動車のアウターピラーの貼り付け等の強力な接着力が必要な用途においては、強力な接着力を有する高価な接着材を使用する必要がある。両面テープは樹脂板の周縁部に貼り付ければ充分であるため、樹脂シート(A)やゴムシート(B)の全面に接着材を塗工し、それを介して樹脂板を構造物に貼り付ける態様に比べて、コスト面で有利である。
【0048】
なお、本発明の構造体は、前記した構造体1〜4には限定されない。
例えば、本発明の構造体は、樹脂シート(A)又はゴムシート(B)が樹脂板に貼り付けられた構造体であってもよい。また、本発明の構造体は、積層体(α)や積層体(β)が構造物に貼り付けられたものであってもよい。
【0049】
[構造体の製造方法]
本発明の構造体の製造方法は、前述した本発明の構造体を製造する方法である。
本発明の構造体の製造方法では、構造物の表面に樹脂板を貼り付ける際に、構造物と樹脂板との間に、樹脂シート(A)及びゴムシート(B)のいずれか一方又は両方を配置する。
【0050】
構造物と樹脂板との間に樹脂シート(A)やゴムシート(B)を配置する方法としては、特に限定されない。例えば、樹脂シート(A)単体を用いる場合、樹脂板の裏面に樹脂シート(A)を貼り付けてもよく、構造物の表面に樹脂シート(A)を貼り付けてもよい。積層体(α)、ゴムシート(B)単体、積層体(β)を用いる場合も同様である。
【0051】
また、樹脂シート(A)やゴムシート(B)を構造物や樹脂板に貼り付ける方法としては、特に限定されず、例えば、接着材を用いて貼り付ける方法が挙げられる。樹脂シート(A)やゴムシート(B)が接着性を有する場合は、そのまま貼り付ければよい。
なお、樹脂シート(A)やゴムシート(B)は、必ずしも構造物や樹脂板に貼り付けなくてもよい。
【0052】
以上説明した本発明の構造体の製造方法によれば、構造物と樹脂板との間に、樹脂シート(A)やゴムシート(B)が配置されるため、得られる構造体の耐衝撃性が向上し、樹脂板に衝撃が加わっても該樹脂板に破損が生じることが抑制される。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(樹脂シート(A))
A−1:ポリエチレンシート(厚み:0.09mm、Tg:−120℃)。
A−2:ポリエチレンシート(厚み:0.02mm、Tg:−120℃)。
【0054】
(ゴムシート(B))
B−1:ポリイソプレン系接着材(Tg:−73℃)が基材上にシート状に形成されてなるゴムシート(厚み:0.01mm)。
【0055】
(基材)
C−1:軟質塩化ビニルシート(厚み0.14mm)。
C−2:離型紙(厚み:0.11mm)。
【0056】
(シート(X))
X−1:アクリル系接着材(Tg:−15℃)が基材上にシート状に形成されてなるゴムシート(厚み:0.09mm)。
X−2:ポリエチレンテレフタレートシート(厚み:0.02mm、Tg:69℃)。
X−3:ポリプロピレンシート(厚み:0.25mm、Tg:−18℃)。
X−4:6ナイロンシート(厚み:0.25mm、Tg:50℃)。
X−5:ポリエチレン製発泡シート(商品名「ミラマット」、JSP社製、厚み:1mm)。
【0057】
(樹脂板)
D−1:ポリメチルメタクリレート(商品名「FT8」、ダイセルエボニック社製)を板厚1.5mmとなるように成形したアクリル樹脂板。
D−2:ポリメチルメタクリレート(商品名「FT8」、ダイセルエボニック社製)を板厚2.0mmとなるように成形したアクリル樹脂板。
D−3:厚み2mmのポリスチレン板。
【0058】
[落球試験]
各例で得た構造体について、−30℃の環境下において、樹脂板の上方から直径63.5mm、重さ1kgの鋼球を自由落下させたときの樹脂板の状態を目視にて確認し、以下の基準で評価した。落球試験における鋼球を落下させる高さは、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmとした。
○:樹脂板に破損が見られない。
×:樹脂板に破損が見られる。
【0059】
[実施例1]
厚み20mmの表面が平らなアルミニウム板上に樹脂シートA−1を配置し、樹脂板D−1を、樹脂シートA−1がアルミニウム板と樹脂板D−1で挟まれるように、厚み0.8mmの両面テープによってアルミニウム板に貼り付けて構造体を得た。樹脂シートA−1を挟んだ両面テープ同士の間隔は70mmであった。
【0060】
[実施例2]
樹脂シートA−1の代わりに樹脂シートA−2を用いた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0061】
[実施例3]
基材C−2上にゴムシートX−1が形成された事務用両面テープ(ニチバン社製、商品名「ナイスタック」)を樹脂板D−2の裏面に貼り付け、基材C−2を剥がした後、樹脂シートA−1を貼り付けた。次いで、それら積層体を、厚み20mmの表面が平らなアルミニウム板に、ゴムシートX−1及び樹脂シートA−1がアルミニウム板と樹脂板D−2で挟まれるように厚み0.8mmの両面テープによって貼り付けて構造体を得た。
【0062】
[実施例4]
基材C−1上にゴムシートB−1が形成されたビニールテープ(ホクセツコーポレーション社製)を樹脂板D−1の裏面に貼り付けた。次いで、それら積層体を、厚み20mmの表面が平らなアルミニウム板に、ゴムシートB−1及び基材C−1がアルミニウム板と樹脂板D−1で挟まれるように厚み0.8mmの両面テープによって貼り付けて構造体を得た。
【0063】
[実施例5]
基材C−1上にゴムシートB−1が形成されたビニールテープ(ホクセツコーポレーション社製)を、厚み20mmの表面が平らなアルミニウム板に貼り付けた。次いで、樹脂板D−1を、基材C−1及びゴムシートB−1がアルミニウム板と樹脂板D−1で挟まれるように、厚み0.8mmの両面テープによって貼り付けて構造体を得た。
【0064】
[実施例6]
樹脂板D−1の代わりに樹脂板D−3を用い、樹脂シートA−1の代わりに樹脂シートA−2を用いた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0065】
[実施例7]
樹脂板D−1の代わりに樹脂板D−3を用いた以外は、実施例4と同様にして構造体を得た。
【0066】
[比較例1]
樹脂シートA−1を用いなかった以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0067】
[比較例2]
樹脂シートA−1を用いず、樹脂板D−1の代わりに樹脂板D−2を用いた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0068】
[比較例3]
基材C−2上にゴムシートX−1が形成された事務用両面テープ(ニチバン社製、商品名「ナイスタック」)を樹脂板D−2の裏面に貼り付けた後に、基材C−2を剥がさずに樹脂シートA−1を貼り付けなかった以外は、実施例3と同様にして構造体を得た。
【0069】
[比較例4]
樹脂シートA−1を用いず、樹脂板D−2の裏面に樹脂シートX−2を貼り付けた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0070】
[比較例5]
樹脂シートA−1を用いず、樹脂板D−2の裏面に樹脂シートX−3を貼り付けた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0071】
[比較例6]
樹脂シートA−1を用いず、樹脂板D−2の裏面に樹脂シートX−4を貼り付けた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0072】
[比較例7]
樹脂シートA−1の代わりにシートX−5を用い、樹脂板D−1の代わりに樹脂板D−2を用いた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0073】
[比較例8]
樹脂シートA−1を用いず、樹脂板D−1の代わりに樹脂板D−3を用いた以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。
【0074】
実施例及び比較例の構造体の構成及び評価結果を表1に示す。
なお、表1においては、「PMMA」はポリメチルメタクリレートを意味し、「PS」はポリスチレンを意味する。「X−1/A−2」とは、樹脂板側からシートX−1とシートA−2とがこの順に配置されていることを意味し、「B−1/C−1」等の他の記載も同様である。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、樹脂板とアルミニウム板の間に樹脂シート(A)又はゴムシート(B)が配置されている実施例1〜7では、鋼球を落とす高さが30cmでも樹脂板に破損が見られず、耐衝撃性に優れていた。
一方、樹脂板とアルミニウム板の間に何も配置されていない比較例1、2、8、及び、樹脂板とアルミニウム板の間にTgが−20℃を超えるシートを配置した比較例3〜6では、鋼球を落とす高さが10cmでも樹脂板に破損が見られた。また、樹脂板とアルミニウム板の間にシートX−5(ポリエチレン製発泡シート)を配置した比較例7においても、鋼球を落とす高さが10cmでも樹脂板に破損が見られた。
【0077】
実施例1〜7で耐衝撃性が向上した要因の一つとしては、樹脂シート(A)及びゴムシート(B)のクッション性が寄与していることが考えられる。
また、比較例7の発泡シートを用いた場合に耐衝撃性が向上しない原因は、以下のように考えられる。発泡シートはクッション性があるものの、圧力が加わった際に局所的に圧縮されて変形しやすい。そのため、鋼球が落下した際の樹脂板の局所的な変形を抑制しきれないことで、樹脂板に破損が生じると考えられる。このことから、樹脂シート(A)及びゴムシート(B)が非発泡で、樹脂板の局所的な変形を抑制できることも、耐衝撃性が向上する要因であると考えられる。