(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記待機制御部は、前記監視処理において、所定時間内における前記工具交換アームの移動量が、当該所定時間を基準として設定された移動量閾値を超えた場合に、前記工具交換アームの移動量が前記許容範囲を超えると予想するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工具交換装置。
前記原位置にある工具交換アームに直接係合し、又は該工具交換アームと結合される他の部材を介して該工具交換アームと間接的に係合して、該工具交換アームが前記主軸軸線に沿った方向に移動するのを制止する制止部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の工具交換装置。
【背景技術】
【0002】
上記工具交換装置として、従来、各種のものが知られているが、その中で、現在一般的に採用されているのが所謂Wアーム型の工具交換装置である。この工具交換装置は、中心軸が前記主軸の軸線と平行に配設され、この中心軸を中心として回転可能、且つ前記主軸の軸線に沿った方向に移動可能に設けられた保持部材と、前記保持部材を、その前記中心軸を中心として正逆に回転させる回転機構と、前記保持部材を前記主軸軸線に沿った方向に進退させる進退機構と、前記保持部材の中心軸を中心とした半径方向にそれぞれ延出して一直線となるように該保持部材に配設されるとともに、該保持部材の正回転方向の一方の側面に開口した工具保持部をそれぞれ備え、前記工具をその軸線が前記保持部材の中心軸と平行になるように該工具保持部に保持するアーム部を二つ備えた工具交換アーム(Wアーム)と、前記回転機構及び進退機構を制御する制御装置とを備えて構成される。
【0003】
そして、上記構成の工具交換装置において、従来、更に、前記回転機構及び進退機構の駆動源に油圧を用いた油圧式のものや、カム機構をACモータで駆動する方式(カム駆動方式)のものの他、特開2000−193062号公報(下記特許文献1)や実公平8−4990号公報(下記特許文献2)に開示されるような、サーボモータを用いた駆動方式(サーボモータ駆動方式)のものが知られている。油圧式の工具交換装置は、開発初期段階のものであり、その後、交換時間の短縮化を図るべくカム駆動方式のものが開発された。そして、近年では、サーボモータの高速化など、その駆動機構の技術進歩により、カム駆動方式を超えるような短時間での工具交換が可能になってきたことから、サーボモータ駆動方式が採用されるようになってきている。
【0004】
このサーボモータ駆動方式の工具交換装置では、前記回転機構を構成するサーボモータ(回転駆動用サーボモータ)及び前記進退機構を構成するサーボモータ(進退駆動用サーボモータ)がそれぞれ前記制御装置によって制御されるようになっており、前記工具交換アームの角度位置は、前記回転駆動用サーボモータに付設されたエンコーダ(回転エンコーダ)によって検出され、同様に、前記工具交換アームの進退位置は、前記進退サーボモータに付設されたエンコーダ(進退エンコーダ)によって検出されるようになっている。
【0005】
より具体的には、前記工具交換アームの角度位置は、前記回転エンコーダにより絶対値(相対値ではないという意味、以下同様)として検出される回転サーボモータの現在回転数及び回転角(回転位置データ)と、この回転サーボモータの動力を前記保持部材に伝達して回転させる伝達機構の、前記回転サーボモータに対する減速比とから算出される。
【0006】
また、前記工具交換アームの進退位置は、前記進退エンコーダにより絶対値として検出される進退サーボモータの現在回転数及び回転角(回転位置データ)と、この進退サーボモータの動力を保持部材に伝達して進退させるボールねじ機構のリードとから算出される。
【0007】
そして、前記工具交換アームは、前記制御装置により、上記のようにして検出される回転サーボモータの回転位置データと、この回転位置データから適宜設定される回転原点とを基に、その回転動作が制御され、同様に、進退サーボモータの回転位置データと、この回転位置データから適宜設定される進退原点とを基に、その進退動作が制御される。
【0008】
尚、前記回転エンコーダには、メモリが内蔵されており、当該回転エンコーダによって検出されるデータが回転位置データとしてこのメモリに保持される。同様に、前記進退エンコーダにもメモリが内蔵され、当該進退エンコーダによって検出されるデータが回転位置データとしてこのメモリに保持される。そして、これらメモリ内におけるデータ保持は、適宜ケーブルを用いて、前記制御装置やバックアップ電池から供給される電力によって実現される。また、前記回転原点及び進退原点に係るデータは、前記制御装置内に記憶される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記工作機械を用いた加工において、前記工具交換装置は常時動作しているわけではなく、一連の交換動作を終了すると、次の工具交換動作を開始するまで、その動作を停止した状態となる。そして、このような停止状態において、工具交換アームを定められた原位置に維持するには、前記回転駆動用サーボモータ及び進退駆動用サーボモータにそれぞれ電力を供給して、その位置を維持する必要がある。
【0011】
しかしながら、このような停止状態にある工具交換装置の前記回転駆動用サーボモータ及び進退駆動用サーボモータに電力を供給し続けるのは、明らかなエネルギーの無駄遣いであり、その改善が求められる。
【0012】
このため、従来、前記回転駆動用サーボモータ及び進退駆動用サーボモータにそれぞれブレーキ機構を付設して、工具交換装置が停止状態となった場合には、各サーボモータへの電力供給を停止する一方、前記各ブレーキ機構によって各サーボモータを制動して、工具交換アームを原位置に維持することが提案されている。
【0013】
ところが、このようなブレーキ機構を設けると、その部品コストによって当該工具交換装置の製造コストが上昇するため、あまり好ましい解決策とは言えない。この他に、工具交換アームに係合する部材を設けて、この係合部材によって停止中の工具交換アームの移動を抑制する提案もなされているが、加工中には、工作機械各部の動作によって生じる振動等の外乱が多く存在するため、停止中の工具交換アームを安定して制動することは困難な状況にある。
【0014】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、安価な費用で、動作停止中の工具交換アームを定められた安全な領域内に維持させることができるとともに、サーボモータへの電力供給を可能な限り停止した状態にすることができる工具交換装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、工作機械の主軸に装着された工具を待機位置にある次工具と交換する工具交換装置であって、
中心軸が前記主軸の軸線と平行に配設され、該中心軸を中心として回転可能、且つ前記主軸の軸線に沿った方向に移動可能に設けられた保持部材と、
前記保持部材を、その前記中心軸を中心として正逆に回転させる回転機構と、
前記保持部材を前記主軸軸線に沿った方向に進退させる進退機構と、
前記保持部材の中心軸を中心とした半径方向に延出するように該保持部材に配設されるとともに、該保持部材の正回転方向の側面に開口した工具保持部を備え、且つ前記工具を、その軸線が前記保持部材の中心軸と平行になるように該工具保持部に保持するアーム部を、少なくとも一つ備えた工具交換アームと、
前記回転機構及び進退機構を制御する制御装置とを備えて成り、
前記回転機構及び進退機構の少なくとも一方は、エンコーダを有
し、且つブレーキ機構有しないサーボモータを備え、該サーボモータの動力によって、前記保持部材及び工具交換アームを動作させるように構成された工具交換装置において、
前記制御装置は、前記工具交換アームを動作させない待機中に待機処理を実行する待機制御部を備え、
前記待機制御部は、前記工具交換アームを動作させない待機中に、前記サーボモータへの電力の供給を中断する電力中断処理と、
前記サーボモータへの電力の供給を中断している間、
常時、前記エンコーダからの出力を受信して、該サーボモータに対応した動作における前記工具交換アームの現在位置を監視するとともに、該現在位置を基に、対応する原位置からの移動量を監視し、該移動量が対応する動作において予め定めた許容範囲内にあるかどうか、又は前記許容範囲を超えると予想されるかどうかを監視する監視処理と、
前記工具交換アームの移動量が前記許容範囲を超えたとき、又は前記許容範囲を超えると予想されたとき、対応する前記サーボモータに電力を供給して前記工具交換アームを前記原位置に復帰させた後、再度、該サーボモータへの電力の供給を中断する原位置復帰処理とを実行するように構成された工具交換装置に係る。
【0016】
この工具交換装置によれば、前記工具交換アームを動作させる必要がない待機状態となるときには、前記制御装置の待機制御部によって、電力中断処理、監視処理及び原位置復帰処理から構成される待機処理が実行される。
【0017】
前記電力中断処理は、前記サーボモータへの電力供給を中断する処理であり、前記待機制御部は、まず、この電力中断処理を実行する。斯くして、このようにサーボモータへの電力供給を中断することで、無駄な電力の消費が抑えられる。
【0018】
一方、これに伴い
、当該サーボモータは
、ブレーキ機構が設けられていないので、その回転が自由とな
り、このため、工作機械が加工中の場合は、加工動作によって生じる振動が外乱となって当該サーボモータが回転し、これにより工具交換アームが原位置から逸脱して、当該工具交換アームやこれに保持される工具(以下、工具交換アーム等という)が他の構成物と干渉するといった不都合を生じかねない。
【0019】
そこで、前記待機制御部は、前記サーボモータへの電力供給を中断している間、
常時、サーボモータに付設される前記エンコーダからの出力を受信して、当該サーボモータに対応した動作に係る前記工具交換アームの現在位置を監視するとともに、該現在位置を基に、対応する原位置からの移動量を監視し、該移動量が対応する動作において予め定めた許容範囲内、即ち、前記工具交換アーム等が他の構成物と干渉しない安全な領域内に位置しているかどうか、又は前記許容範囲を超えると予想されるかどうかを監視する監視処理を実行する。
【0020】
そして、前記待機制御部は、前記工具交換アームの移動量が前記許容範囲を超えたとき、又は前記許容範囲を超えると予想されたとき、対応する前記サーボモータへの電力供給を再開して前記工具交換アームを前記原位置に復帰させた後、再度、該サーボモータへの電力の供給を中断する原位置復帰処理とを実行する。
【0021】
このように、本発明に係る工具交換装置によれば、前記工具交換アームを動作させる必要がない待機状態となるときには、前記サーボモータへの電力供給を中断するようにしているので、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0022】
また、サーボモータへの電力供給を中断している間、このサーボモータによって動作される工具交換アームの現在位置を監視して、その位置が原位置から設定される予め定めた許容範囲を逸脱するとき、又は前記許容範囲を逸脱すると予想されるときに、前記サーボモータへの電力供給を再開して当該工具交換アームを前記原位置に復帰させるようにしているので、当該工具交換アーム等が原位置から許容範囲を超えて逸脱して、他の構造物と干渉するといった不都合が生じるのを未然に防止することができる。
【0023】
そして、本発明に係る工具交換装置によれば、工具交換アームが原位置から許容範囲を超えて逸脱するのを防止する機能、即ち、前記待機制御部における電力中断処理、監視処理及び原位置復帰処理をソフトウエアによって実現することができるので、その製造コストを安価なものとすることができる。
【0024】
尚、前記待機制御部は、前記監視処理において、所定時間内における前記工具交換アームの移動量が、当該所定時間を基準として設定された移動量閾値を超えた場合に、前記工具交換アームの移動量が前記許容範囲を超えると予想することができる。
【0025】
また、本発明に係る工具交換装置では、前記原位置にある工具交換アームに直接係合し、又は該工具交換アームと結合される他の部材を介して該工具交換アームと間接的に係合して、該工具交換アームが前記主軸軸線に沿った方向に移動するのを制止する制止部材を備えても良い。
【0026】
また、この場合において、当該工具交換装置の前記保持部材はその中心軸が鉛直方向に沿って配設されていても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、前記工具交換アームを動作させる必要がない待機状態となるときには、前記サーボモータへの電力供給を中断するようにしているので、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0028】
また、サーボモータへの電力供給を中断している間、このサーボモータによって動作される工具交換アームの現在位置を監視して、その位置が原位置から設定される予め定めた許容範囲を逸脱するとき、又は前記許容範囲を逸脱すると予想されるときに、前記サーボモータへの電力供給を再開して当該工具交換アームを前記原位置に復帰させるようにしているので、当該工具交換アームが原位置から許容範囲を超えて逸脱して、他の構造物と干渉するといった不都合が生じるのを未然に防止することができる。
【0029】
そして、本発明に係る工具交換装置によれば、工具交換アームが原位置から許容範囲を超えて逸脱するのを防止する機能、即ち、前記待機制御部における電力中断処理、監視処理及び原位置復帰処理をソフトウエアによって実現することができるので、その製造コストを安価なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る工具交換装置について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の工具交換装置10は、工作機械1に付設されるもので、この工作機械1には、更に、工具マガジン70が設けられている。尚、本発明に係る工具交換装置10を適用し得る工作機械には、何ら制限はなく、
図1に示すような所謂立形のマシニングセンタの他、横形のマシニングセンタや、旋削加工及びミーリング加工が可能な複合型の旋盤など、工具交換を必要とする各種の工作機械に適用することができる。
【0032】
[工作機械の概要]
図1に示した工作機械1は、従来周知であり、多くを説明するまでもないが、その構成を簡単に説明すると、当該工作機械1は、ベッド2、このベッド2上に立設されたコラム3、このコラム3に、垂直方向に移動可能に配設された主軸頭4、この主軸頭4に回転自在に支持された主軸5、水平な直交2軸方向に移動可能に、前記ベッド2上に配設され、適宜ワークが載置,固定されるテーブル6などを備える。
【0033】
前記主軸頭4は、適宜送り装置(図示せず)によって、前記上下方向に移動するように構成され、テーブル6は、同じく適宜送り装置(図示せず)によって、水平な直交2軸方向に移動するように構成される。また、前記主軸5は、適宜主軸モータ(図示せず)によって、その軸中心に回転する。そして、前記主軸頭4を移動させる送り装置(図示せず)、前記テーブル6を移動させる送り装置(図示せず)、前記主軸5を駆動する主軸モータ(図示せず)は、それぞれ、
図5に示すNC装置81及びPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)82によって、その作動が制御される。
【0034】
[工具マガジンの概要]
前記工具マガジン70は、工具Tを保持する複数の工具ポット72と、円形をした板状の部材からなり、その外周部に、前記工具ポット72を環状に配置した状態で保持する保持プレート73と、この保持プレート73を回転させる駆動モータ(図示せず)と、下端位置の工具ポット72を矢示A方向に移動させて待機位置に位置決めする一方、待機位置にある工具ポット72を矢示B方向に移動させて、保持プレート73に保持させる呼び出し機構(図示せず)とを備えている。尚、
図1中の符号71は、カバーである。この工具マガジン70も、
図5に示すPLC82によって、その作動が制御される。
【0035】
[工具交換装置]
前記工具交換装置10は、待機位置に位置決めされた工具ポット72に保持される工具(次工具)Tと、主軸5に装着された工具(現工具)Tとを交換する装置であって、
図2〜
図4に示した工具交換アーム40、ハウジング11、第1支持軸17、第2支持軸18、進退機構12及び回転機構24と、
図5に示したATC動作制御装置83とから構成される。
【0036】
前記ハウジング11は、内部に適宜収納室を有する角柱状をした部材からなり、前記第1支持軸17、前記進退機構12及び回転機構24が取り付けられる。前記第1支持軸17は、前記ハウジング11を上下に貫通するように当該ハウジング11に取り付けられ、その下側に同軸上に配置された第2支持軸18と連結されている。尚、以下の
図2〜
図4の説明では、
図1における上下関係を基準とする。また、ハウジング11の下面には、制止部材60が設けられている。
【0037】
前記進退機構12は、前記第1支持軸17の上端部に固設され、
図5に示したATC動作制御装置83によってその作動が制御される進退サーボモータ13と、進退サーボモータ13の出力軸13aにカップリング16を介して連結されたボールねじ14と、ボールねじ14に螺合するボールナット15とから構成される。ボールねじ14は、前記第1支持軸17及び第2支持軸18に形成された、その軸方向に沿った貫通穴に挿通され、前記第2支持軸18の貫通穴内に配設されたベアリング23,23によって、回転自在に支持されるとともに、その上端部が、上記の如く、カップリング16を介して進退サーボモータ13の出力軸13aに連結されている。また、第2支持軸18には、その下端面に開口するように形成された収納穴18aが形成されており、前記ボールナット15は、その上部側がこの収納穴18aに進入可能となっている。
【0038】
前記第2支持軸18の上端部には、当該第2支持軸18が貫通した状態で工具交換アーム40が外嵌され、この工具交換アーム40の下側には、前記第2支持軸18に外嵌された保持部材19が配設され、当該保持部材19はその上端部が前記工具交換アーム40の下面に固着されている。また、前記ボールナット15は、保持部材19を貫通した状態で、当該保持部材19の下面に固着され、上述したように、ボールナット15の上部側が、第2支持軸18の収納穴18aに進入可能となっている。また、ボールナット15の下面には、前記ボールねじ14をカバーする円筒状のカバー21が固設されている。
【0039】
斯くして、前記ATC動作制御装置83により前記進退サーボモータ13を駆動して、その出力軸13aに連結されるボールねじ14を正逆方向に回転させると、これに螺合したボールナット15、このボールナット15に連結される保持部材19及びカバー21、並びに保持部材19に連結される工具交換アーム40が、ボールねじ14の軸線に沿って、
図2に示す矢示E−F方向に進退する。尚、矢示E方向は前進、矢示F方向は後退であり、
図2〜
図4は、これらボールナット15、保持部材19、カバー21、工具交換アーム40が進退方向の原点位置(進退原点)に位置した状態を示している。
【0040】
前記回転機構24は、回転サーボモータ25、カップリング26、第1かさ歯車27、第2かさ歯車28、連結体29、連結リング34及び2本のガイドバー20を備える。回転サーボモータ25は、取付リング35を介して前記ハウジング11の側面に取り付けられる。また、第1かさ歯車27は、その軸線が前記第1支持軸17の軸線と直交するように、前記ハウジング11の収納室内に配設され、カップリング26を介して回転サーボモータ25の出力軸25aに連結されている。尚、カップリング26は、ハウジング11の収納室内に配設されたベアリング30,30によって回転自在に支持されている。また、回転サーボモータ25は、前記ATC動作制御装置83によって制御される。
【0041】
第2かさ歯車28と連結体29とは、連結体29が下側に配置された同軸状態で連結されており、ベアリング31,31を介して前記第1支持軸17に外嵌され、第2かさ歯車28と第1かさ歯車27とが噛み合った状態になっている。また、連結体29の下端面には連結リング34が固設され、この連結リング34の下端面に、これから下方に、工具交換アーム40及び保持部材19を貫通した状態で延出するように平行に配置された2本のガイドバー20,20が固設され、このガイドバー20,20の下端部に連結プレート22が固設されている。
【0042】
また、連結プレート22には、貫通穴が形成されており、この貫通穴に前記カバー21が挿通可能となっている。また、連結体29の外周面とこれに対応するハウジング11の内周面との間には、シール32が配設され、このシール32によって、連結体29とハウジング11との間が封止されている。同様に、前記第2支持軸18の外周面と連結リング34の内周面との間には、シール33が配設され、このシール33によって、第2支持軸18と連結リング34との間が封止されている。
【0043】
斯くして、前記ATC動作制御装置83により前記回転サーボモータ25を駆動して、その出力軸25aに連結された第1かさ歯車27を正逆方向に回転させると、これと噛み合う第2かさ歯車28、この第2かさ歯車28に直接又は間接的に連結される連結体29、連結リング34、ガイドバー20,20及び連結プレート22、ガイドバー20,20が貫通する工具交換アーム40及び保持部材19、並びに保持部材19に直接又は間接的に連結されるボールナット15及びカバー21が、第1支持軸17及び第2支持軸18の軸心を中心として正逆、即ち、
図2に示す矢示C−D方向に回転する。因みに、本例では、矢示C方向を正転方向、矢示D方向を逆転方向とする。また、
図2及び
図3では工具交換アーム40が回転方向の原点位置(回転原点)に位置した状態を示している。
【0044】
尚、ガイドバー20,20は、工具交換アーム40を回転させる役割の他、工具交換アーム40及び保持部材19が矢示E−F方向に進退する際に、その移動をガイドする役割も担っている。
【0045】
工具交換アーム40は、板状の部材41から構成され、その両端部には、それぞれ、前記工具Tを保持する工具保持部42,52が形成されている。各工具保持部42,52は、一方の回転方向(前記正転方向)側が解放(開口)された円弧状を有し、この解放側から工具Tを受け入れ可能となっている。尚、この工具交換アーム40は、上述したように前記第2支持軸18に外嵌されており、一組のアーム部がそれぞれ当該第2支持軸18から半径方向に延出するように設けられる結果、当該工具交換アーム40は、2つのアーム部が一直線となるように一体的に形成されたものと観念することができる。
【0046】
前記各工具保持部42,52には、その保持空間に対して進退する保持爪43,53が設けられている。この保持爪43,53は、工具Tが工具保持部42,52に挿入される際に、その外周面に当接することで後退して、当該工具Tを工具保持部42,52内に受け入れるとともに、当該工具Tを工具保持部42,52内に保持する。一方、工具Tが工具保持部42,52から抜き取られる際には、保持爪43,53は、後退することで、工具Tの抜き取りを許容する。
【0047】
また、前記制止部材60は、円筒状をした部材からなり、その軸線と直交する方向に形成された係合溝を有する。この制止部材60は、
図2及び
図3に示すように、工具交換アーム40が進退原点にあるときに、これを回転原点に回転させることで、当該工具交換アーム40が前記係合溝に進入(係合)するように、前記ハウジング11の前端面に固設されており、前記進退サーボモータ13に電力が供給されなくなった場合に、前記工具交換アーム40が下方に移動するのを、この係合関係によって防止する役割を担うものである。
【0048】
前記ATC動作制御装置83は、
図5に示すように、交換動作制御部84及び待機制御部85から構成される。
【0049】
前記交換動作制御部84は、工具交換プログラムに従い前記進退サーボモータ13及び回転サーボモータ25を制御して、工具交換アーム40に工具交換動作を行わせる機能部であり、前記NC装置81から前記PLC82を通じて入力される工具交換指令を受信して、工具交換動作を実行する。
【0050】
尚、前記工具交換アーム40の前記E−F方向における位置(進退位置)は、前記進退サーボモータ13に付設されたエンコーダ(進退エンコーダ)からの出力値、即ち現在回転位置データを基に認識される。この進退エンコーダは、進退サーボモータ13の現在の回転数及び回転角(回転位置データ)の絶対値(相対値ではないという意味)を出力するもので、内蔵されたメモリにこの回転位置データを保持している。
【0051】
前記進退原点は、工具交換アーム40を回転させたときに、工具交換位置に在る主軸5に装着された工具Tを工具保持部42,52に保持可能な位置であり、この位置において前記進退エンコーダから出力される回転位置データが進退原点に設定される。そして、進退原点における回転位置データと、現在回転位置データとの差分と、前記ボールねじ14のリードとを基に、前記進退原点からの現在の位置が認識される。
【0052】
また、前記工具交換アーム40の前記C−D方向における位置(角度位置)は、前記回転サーボモータ25に付設されたエンコーダ(回転エンコーダ)からの出力値、即ち現在回転位置データを基に認識される。この回転エンコーダは、回転サーボモータ25の現在回転数及び回転角(回転位置データ)の絶対値を出力するもので、内蔵されたメモリにこの回転位置データを保持している。
【0053】
前記回転原点は、主軸5に装着された工具(現工具)Tが工具保持部42に保持され、待機位置にある工具(次工具)Tが工具保持部52に保持される角度位置から矢示D方向(逆方向)に所定角度回転させた角度位置であって、設計上適宜設定される角度位置であり、この工具交換アーム40がこの角度位置に在るときに前記回転エンコーダから出力される回転位置データが、回転原点に設定される。尚、上述したように、この回転原点に位置したときに、工具交換アーム40が前記制止部材60の係合溝に係合する。
【0054】
そして、前記交換動作制御部84は、具体的には、以下のような工具交換動作を実行する。尚、
図1に示すように、主軸5は工具交換するための位置(工具交換位置)に位置し、次工具Tは、待機位置に位置しているものとし、工具交換アーム40は、
図2及び
図3に示すように、前記進退原点及び回転原点に位置しているものとする。
【0055】
まず、交換動作制御部84は、回転サーボモータ25を駆動して、工具交換アーム40を前記第1支持軸17及び第2支持軸18の軸線を中心として、矢示C方向(正回転方向)に、動作開始前の回転原点である現在の回転原点から前記所定角度回転させる(第1回転動作)。これにより、主軸5に装着された工具(現工具)Tが工具保持部42に保持され、待機位置にある工具(次工具)Tが工具保持部52に保持される。
【0056】
次に、交換動作制御部84は、進退サーボモータ13を駆動して、工具交換アーム40を第1支持軸17及び第2支持軸18に沿って下方の前進端まで進出させる(工具抜取動作)。これにより、主軸5から工具(現工具)Tが抜き取られるとともに、待機位置の工具ポット72から工具(次工具)Tが抜き取られる。
【0057】
ついで、交換動作制御部84は、回転サーボモータ25を駆動して、工具交換アーム40を第1支持軸17及び第2支持軸18の軸線を中心として、180度矢示C方向(正回転方向)に回転させる(第2回転動作)。これにより、工具保持部52に保持された工具(次工具)Tが、主軸5の直下に同軸上に位置し、工具保持部42に保持された工具(現工具)Tが、待機位置の工具ポット72の直下に位置する。
【0058】
次に、交換動作制御部84は、進退サーボモータ13を駆動して、工具交換アーム40を第1支持軸17及び第2支持軸18に沿って上方の進退原点まで後退させる(工具装着動作)。これにより、主軸5に工具(次工具)Tが装着されるとともに、待機位置の工具ポット72に工具(現工具)Tが装着される。
【0059】
最後に、交換動作制御部84は、回転サーボモータ25を駆動して、工具交換アーム40を第1支持軸17及び第2支持軸18の軸線を中心として矢示D方向(逆回転方向)に前記所定角度だけ回転させ、工具交換アーム40を動作完了後の回転原点である次の回転原点に回転させる(第3回転動作)。これにより、工具保持部42,52からそれぞれ工具Tが相対的に抜き取られる。
【0060】
交換動作制御部84は、以上のようにして工具交換動作を実行する。そして、交換動作制御部84は1サイクルの工具交換動作を完了すると、完了時に前記回転エンコーダから出力される回転位置データをもって、前記次の回転原点に設定する。
【0061】
前記待機制御部85は、前記交換動作制御部84から工具交換動作の完了信号を受信して、
図6に示す処理を開始し、前記交換動作制御部84から工具交換動作の開始信号を受信して、処理を終了する機能部である。
【0062】
具体的には、前記待機制御部85は、
図6に示すように、前記交換動作制御部84から工具交換動作の完了信号を受信して処理を開始して、回転サーボモータ25及び進退サーボモータ13への電力の供給を中断する(ステップS1及びS2)。
【0063】
次に、待機制御部85は、前記回転サーボモータ25に付設された前記回転エンコーダからの出力を受信して、当該回転サーボモータ25の回転移動量、言い換えれば前記工具交換アーム40の回転移動量が予め設定した回転許容範囲を超えるかどうか監視する(ステップS3)。
【0064】
そして、前記ステップS3において前記回転移動量が前記回転許容範囲を超えたことが確認されると、待機制御部85は、前記回転サーボモータ25への電力の供給を再開した後(ステップS4)、当該回転サーボモータ25の回転位置、即ち、前記工具交換アーム40の回転位置を回転原点に復帰させる(ステップS5)。そして、この後、再度前記回転サーボモータ25への電力の供給を停止する(ステップS6)。
【0065】
以後、前記交換動作制御部84から工具交換動作の開始信号を受信するまで、前記ステップS3〜S7の処理を繰り返し、前記交換動作制御部84から工具交換動作の開始信号を受信したとき、前記回転サーボモータ25及び進退サーボモータ13への電力供給を再開して、処理を終了する(ステップS8及びS9)。
【0066】
尚、前記回転許容範囲は、前記工具交換アーム40の前記回転原点から、当該工具交換アーム40と前記制止部材60との係合が解除される手前の回転角度位置までの範囲であって、当該工具交換アーム40が前記制止部材60と確実に係合した状態を維持することができる回転角度範囲である。
【0067】
以上の構成を備えた本例の工具交換装置10によれば、前記ATC動作制御装置83の交換動作制御部84によって進退機構12及び回転機構24が制御され、これら進退機構12及び回転機構24により工具交換アーム40が駆動されて、前記第1回転動作、工具抜取動作、第2回転動作、工具装着動作及び第3回転動作が実行され、これらの動作によって、主軸5に装着された工具Tと待機位置にある次工具Tとが交換される。
【0068】
そして、交換動作制御部84による1サイクルの工具交換動作が完了し、当該交換動作制御部84から工具交換動作の終了信号が待機制御部85に入力されると、当該待機制御部85によって、待機処理が実行される。
【0069】
即ち、待機制御部85は、まず、回転サーボモータ25及び進退サーボモータ13への電力の供給を中断した後(ステップS1及びS2)、前記工具交換アーム40の回転移動量が予め設定した回転許容範囲を超えるかどうか、言い換えれば、工具交換アーム40が制止部材60と安定して係合した状態が維持されているかどうかを監視し(ステップS3)、回転移動量が回転許容範囲を超える、即ち、工具交換アーム40と制止部材60との係合が不安定状態になることが確認されると、回転サーボモータ25への電力供給を再開して(ステップS4)、工具交換アーム40を回転原点に復帰させる(ステップS5)。
【0070】
そして、待機制御部85は、前記交換動作制御部84から交換動作開始信号を受信するまで、以上の処理を継続して実行する。
【0071】
斯くして、本例の工具交換装置10によれば、前記工具交換アーム40を動作させる必要がない待機状態となるときには、進退サーボモータ13及び回転サーボモータ25への電力供給を中断するようにしているので、無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0072】
また、進退サーボモータ13及び回転サーボモータ25への電力供給を中断している間、前記工具交換アーム40の回転移動量が予め設定した回転許容範囲を超えるかどうか、言い換えれば、工具交換アーム40が制止部材60と安定して係合した状態が維持されているかどうかを監視し、回転移動量が回転許容範囲を超えて工具交換アーム40と制止部材60との係合が不安定状態になることが確認されると、回転サーボモータ25への電力供給を再開して、工具交換アーム40を回転原点に復帰させるようにしているので、当該工具交換アーム40と制止部材60との係合関係が解除され、これにより当該工具交換アーム40が下方に移動して、当該工具交換アーム40やこれに保持される工具T(以下、これらを工具交換アーム40等という)が、他の構造物と干渉するといった不都合が生じるのを未然に防止することができる。
【0073】
特に、本例の工具交換装置1のように、立形の工作機械1に設けられる場合には、進退サーボモータ13への電力供給を停止すると、工具交換アーム40等がその自重により、ある程度速い速度で下方に移動して他の構造物と干渉する事態に至り、干渉物相互間に大きな損傷が生じるため、当該工具交換アーム40と前記制止部材60との係合関係を確実に維持する必要がある。
【0074】
また、上述した電力中断処理、監視処理及び原位置復帰処理に係る待機制御部85の機能は、これらをソフトウエアによって実現することができるので、これらの機能を実現するための製造コストを安価なものとすることができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0076】
例えば、上例では、工具交換装置10を立形の工作機械1に設けたが、これに限られるものではなく、当該工具交換装置10を横形の工作機械に設けることができる。この場合、前記制止部材60を特に設ける必要はなく、また、前記待機制御部85は、
図7に示した処理を実行するように構成されていても良い。
【0077】
図7に示した処理は、
図6に示した処理に、ステップS3’〜S6’を付加したものである。即ち、この場合、前記待機制御部85は、前記回転サーボモータ25に付設された前記回転エンコーダ及び前記進退サーボモータ13に付設された前記進退エンコーダからの出力をそれぞれ受信して、当該回転サーボモータ25の回転移動量、言い換えれば前記工具交換アーム40の回転移動量が予め設定した回転許容範囲を超えるかどうか(ステップS3)、並びに、進退サーボモータ13の回転移動量、言い換えれば前記工具交換アーム40の進退移動量が予め設定した進退許容範囲を超えるかどうかを監視する(ステップS3’)。
【0078】
そして、前記ステップS3において前記回転移動量が前記回転許容範囲を超えていないことが確認されると、待機制御部85は、更に、工具交換アーム40の進退移動量が予め設定した進退許容範囲を超えるかどうかを確認し(ステップS3’)、進退移動量が前記進退許容範囲を超えている場合には、前記進退サーボモータ13への電力の供給を再開した後(ステップS4’)、当該進退サーボモータ13を駆動して前記工具交換アーム40を進退原点に復帰させる(ステップS5’)。そして、この後、再度進退サーボモータ13への電力の供給を停止する(ステップS6’)。
【0079】
待機制御部85が、このような
図7に示す処理を実行する構成されている場合、前記進退サーボモータ13及び回転サーボモータ25への電力供給を中断している間に、前記工具交換アーム40が回転方向に回転許容範囲を超えて回転することによって、当該工具交換アーム40等が他の構成物と干渉するのを未然に防止することができるとともに、当該工具交換アーム40等が、進退方向に進退許容範囲を超えて回転することによって他の構成物と干渉するのを未然に防止することができる。
【0080】
尚、前記進退許容範囲及び回転許容範囲は、工具交換アーム40等と他の構成物との干渉が確実に生じ得ないような範囲であり、適宜設定される。
【0081】
また、上例のステップS3では、工具交換アーム40の回転移動量が回転許容範囲を超えるかどうかを監視し、ステップS3’では、工具交換アーム40の進退移動量が進退許容範囲を超えるかどうかを監視するように構成したが、これに限られるものではなく、前記ステップS3では、工具交換アーム40の回転移動量が回転許容範囲を超えることが予想されるかどうかを監視するようにしても良く、回転許容範囲を超えることが予想される場合に、上記ステップS4を実行するようにしても良い。
【0082】
同様に、前記ステップS3’では、工具交換アーム40の進退移動量が進退許容範囲を超えることが予想されるかどうかを監視するようにしても良く、進退許容範囲を超えることが予想される場合に、上記ステップS4’を実行するようにしても良い。
【0083】
このように、回転移動量が回転許容範囲を超えることが予想されるかどうか、また、進退移動量が進退許容範囲を超えることが予想されるかどうかを判断することによって、比較的短時間の内に、各許容範囲を逸脱する可能性がある場合でも、工具交換アーム40を回転原点や進退原点に復帰させることができ、このような場合でも、工具交換アーム40等が他の構造物と干渉するのを未然に防止することができる。
【0084】
尚、この場合、前記待機制御部85は、所定時間内における工具交換アーム40の移動量(回転移動量、進退移動量)が、当該所定時間を基準として設定された閾値(移動量閾値)を超えた場合に、当該移動量(回転移動量、進退移動量)が前記許容範囲(回転許容範囲、進退許容範囲)を超えると予想することができる。
【0085】
また、上例では、前記制止部材60は、前記工具交換アーム40と直接係合するように構成されているが、これに限られるものではなく、当該制止部材60は、前記工具交換アーム40と他の部材を介して間接的に係合するように構成されていても良い。
【0086】
また、上例では、2つのアーム部を有する所謂Wアーム型の工具交換アーム40としたが、これに限られるものではなく、工具交換アームは1つ、或いは3つ以上のアーム部を備えたものであっても良い。