【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
「エポキシ基のアミノ化」
ゲル容量1mLのCIM(登録商標) epoxy(商品名)−1mL(BIA Separations d.o.o株式会社製)を出発基材とした。CIM(登録商標) epoxyは、グリシジルメタクリレートを単量体、エチレングリコールジメタクリレートを架橋剤とした共重合体である。CIM(登録商標) epoxyは、エポキシ基を1.8mmol/mLの密度で含有する平均流路径600nm〜750nmの多孔質モノリス型有機高分子担体である。
多孔質モノリス型有機高分子担体をペリスタティックポンプに接続し、0.5mL/minの流速で25%NH
3水溶液を3時間送液した後、水を送液し、多孔質モノリス型有機高分子担体を洗浄した。これにより、アミノ化した多孔質モノリス型有機高分子担体(担体α)を得た。
多孔質モノリス型有機高分子担体へのアミノ基の導入量を、以下の手順で定量した。
まず、反応後の多孔質モノリス型有機高分子担体を20CVの0.1mol/L塩酸で洗浄し、続いて、多孔質モノリス型有機高分子担体を30CVの水で洗浄した。
その後、水で洗浄した多孔質モノリス型有機高分子担体を20CVの0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、その洗液を回収し、洗液中に含まれる塩化物イオンをイオンクロマトグラフィーで測定した。イオンクロマトグラフィカラムとしてはSI−50(商品名、昭和電工株式会社製)、検出器としてはCDD−10A(商品名、島津製作所株式会社製) を用いた。
【0051】
「カルボキシル基の導入」
アミノ化を終了した後、多孔質モノリス型有機高分子担体に、20mL以上のジメチルホルムアミドをペリスタティックポンプで送液し、無水コハク酸2.0gおよび4−ジメチルアミノピリジン122mgをジメチルホルムアミド10mLに溶解させた反応液を、ペリスタティックポンプで0.5mL/minの流速で約20時間循環させた。
反応終了後、多孔質モノリス型有機高分子担体に対して、ジメチルホルムアミドによる洗浄、水による洗浄をこの順に行った。
多孔質モノリス型有機高分子担体へのカルボキシル基の導入量を、以下の手順で算出した。
アミノ基の導入量の定量法と同様にして、アミノ基の残存量を測定した。測定値より、反応前後のアミノ基消費量を算出し、カルボキシル基の導入量とした。
多孔質モノリス型有機高分子担体には、カルボキシル基が150μmol/mLの密度で導入されていることを確認した。
【0052】
「残存エポキシ基のジオール化」
カルボキシル基を導入した多孔質モノリス型有機高分子担体に対し、0.5mol/L硫酸水溶液をペリスタティックポンプで0.5mL/minの流速で4時間循環させ、残存エポキシ基をジオール化させた。
反応終了後、多孔質モノリス型有機高分子担体に対して、水による洗浄、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、水による洗浄をこの順に行った。それぞれの洗浄において、水および水酸化ナトリウム水溶液を20mL以上送液した。
【0053】
「カルボキシル基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル化」
カルボキシル基を導入し、残存エポキシ基をジオール化した多孔質モノリス型有機高分子担体に対し、水、0.1mol/L塩酸、水、ジメチルホルムアミドをそれぞれこの順に20mL以上送液した。
多孔質モノリス型有機高分子担体、および、N−ヒドロキシスクシンイミド1.15gを溶解させたジメチルホルムアミド20mLを50℃に加熱した。
50℃に加熱したN−ヒドロキシスクシンイミドのジメチルホルムアミド溶液に、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド1.4mLを溶解させ、その溶液を50℃のまま多孔質モノリス型有機高分子担体に3mL/minの流速で15mL送液した。
その後、多孔質モノリス型有機高分子担体を50℃で10時間静置した。反応後、多孔質モノリス型有機高分子担体を室温にし、ジメチルホルムアミドで洗浄した。
【0054】
「末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化」
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル化した多孔質モノリス型有機高分子担体に、水、0.2mol/LNaHCO
3− 0.5mol/LNaCl水溶液を送液した。
Protein A(Lyophilized)(Bio Vision株式会社製)18mgを2mLの0.2mol/LNaHCO
3− 0.5mol/LNaCl水溶液に溶解した反応溶液を、0.2mL/minの流速で多孔質モノリス型有機高分子担体に送液した後、多孔質モノリス型有機高分子担体を4℃に保った。
24時間経過後、2mLの0.2mol/LNaHCO
3− 0.5mol/LNaCl(pH7.8)水溶液を10mL送液し、未反応のプロテインAの洗浄および回収を行なった。
多孔質モノリス型有機高分子担体へのプロテインAの固定化量を、以下の手法で定量した。
プロテインAの固定化反応終了後、洗浄液中に含まれるプロテインAの量はHPLCおよびUV検出器により算出した。
例えば、昭和電工株式会社製のKW−402.5(商品名)で洗浄液を分析し、プロテインAのUVピーク面積を測定することにより、洗浄液中のプロテインAの含有量が算出した。算出したプロテインAの含有量を、反応開始前のプロテイン量から差し引くことで、多孔質モノリス型有機高分子担体に固定化されたプロテインAの量を算出した。
【0055】
「未反応N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのアミド基への変換」
プロテインAを固定化した多孔質モノリス型有機高分子担体に対し、水を10mL送液した後、0.5mol/L 2−アミノエタノール−20mMトリス緩衝液を10mL送液し、10分間静置することで、残存したN−ヒドロキシスクシンイミドエステルをアミド基へと変換した。
反応後、水、20%エタノール−20mMトリス緩衝液の順にそれぞれ20mL以上送液した後、多孔質モノリス型有機高分子担体を4℃に保った。
以上により、実施例1のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0056】
「プロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体のDBC測定」
クロマトグラフィーシステム(AKTA avant150、GEヘルスケア・ジャパン社製)を用いて、実施例1のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGヒト血清由来(Aldrich株式会社製、以下、「IgG」と略す。)の吸着・溶出試験を行なった。
IgGの吸着および溶出を、以下の条件で行なった。
【0057】
「DBC測定」
<吸着ステップ>
・IgG濃度:0.4mg/mL〜0.5mg/mL
・吸着緩衝液:1×PBS
・流速:6.9CV/min
<洗浄ステップ1>
・洗浄緩衝液:1×PBS
・流速:6.9CV/min
・送液量:5CV
<洗浄ステップ2>
・洗浄緩衝液:1×PBS+0.4mol/LNaCl
・流速:6.9CV/min
・送液量:5CV
<溶出ステップ>
・溶出液:0.1mol/Lグリシン塩酸塩水溶液(pH2.0)
・流速:6.9CV/min
・送液量:7CV
【0058】
吸着ステップで、溶液に含まれるIgGの10%がカラムから漏出してきた時点、および、溶液に含まれるIgGの50%がカラムから漏出してきた時点において、実施例1のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体に吸着されたIgGの容量(DBC10およびDBC50)をそれぞれ算出した。DBC10およびDBC50は、下記式により算出した。
DBC10(mg/mL)=10%漏出時点での送液量×IgG濃度/プロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体の体積
DBC50(mg/mL)=50%漏出時点での送液量×IgG濃度/プロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体の体積
ここで、10%漏出時点および50%漏出時点とは、カラム未装着時にIgG溶液を送液した際のUV吸収値を100%漏出とし、その吸収値の10%の吸収値が観測された時点を10%漏出時点、50%の吸収値が観測された時点を50%漏出時点とした。
【0059】
「結果」
IgGのDBC10は18mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は20mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAを用いることでプロテインAの固定化効率が向上し、IgGの吸着容量を向上したことが分かった。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
カルボキシル基の導入を、無水コハク酸2.0gの代わりに、メチルコハク酸無水物2.3gを用いて行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0061】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、実施例2のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は13mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は16mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAを用いることでプロテインAの固定化効率が向上し、IgGの吸着容量を向上したことが分かった。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
25%NH
3水溶液の送液時間を6時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0063】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、実施例3のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は18mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は19mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAを用いることでプロテインAの固定化効率が向上し、IgGの吸着容量を向上したことが分かった。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4]
エポキシのアミノ化に用いるアミノ化試薬をH2O−25%NH
3水溶液=3:1(v/v)としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0065】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、実施例4のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は14mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は16mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAを用いることでプロテインAの固定化効率が向上し、IgGの吸着容量を向上したことが分かった。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例5]
25%NH
3水溶液の送液時間を15時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。カルボキシル基は600μmol/mL−ゲルの密度で導入されていることが確認された。
【0067】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、実施例5のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は9mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は10mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、カルボキシル基の密度を600μmol/mL−ゲルとすると、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化効率が若干低下した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
カルボキシル基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル化の反応温度を25℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0069】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、実施例6のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は12mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は13mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、カルボキシル基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル化の反応温度を25℃とすると、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化効率が若干低下した。結果を表1に示す。
【0070】
[比較例1]
CIM(登録商標) r−Protein A(商品名)を用いて、実施例1と同様にして、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は8.3mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は11mg/mL−ゲルであった。結果を表2に示す。
【0071】
[比較例2]
多孔質モノリス型有機高分子担体に固定化するプロテインAとして、ヒスチジンタグを含まないrSPA(商品名、Repligen株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0072】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、比較例2のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は3.5mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は4.6mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、ヒスチジンタグを含まないプロテインAは固定化効率が低く、DBC向上効果がないことが分かった。結果を表2に示す。
【0073】
[比較例3]
末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化反応を、酸性溶液(50mmol/L酢酸−1.35mol/LNaCl水溶液(pH3.0))中で行なった。詳細を以下に示す。
【0074】
「末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化」
実施例1と同様にして、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル化した多孔質モノリス型有機高分子担体に、Protein A(Lyophilized)(Bio Vision株式会社製)を酸性溶液(50mmol/L酢酸−1.35mol/LNaCl水溶液)に0.6mg/mLに溶解した反応溶液15mLを、0.3mL/minの流速で送液した。
多孔質モノリス型有機高分子担体からプロテインAが破過するまで溶液を送液した後、多孔質モノリス型有機高分子担体を30℃で24時間静置し、プロテインAを固定化した。
反応後、反応溶液、水の順にそれぞれ20mL以上送液し、多孔質モノリス型有機高分子担体を洗浄した。
プロテインAの固定化量を、実施例1と同様の手法で算出した。
【0075】
「未反応N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのアミド基への変換」
プロテインAを固定化した多孔質モノリス型有機高分子担体に対し、水を10mL送液した後、0.5mol/L エタノールアミン−20mMトリス緩衝液を10mL送液し、10分間静置することで、残存したN−ヒドロキシスクシンイミドエステルをアミド基へと変換した。
反応後、水、20%エタノール−20mMトリス緩衝液の順にそれぞれ20mL以上送液した後、多孔質モノリス型有機高分子担体を4℃に保った。
以上により、比較例3のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体を得た。
【0076】
「DBC測定、結果」
実施例1と同様にして、比較例3のプロテインA固定化多孔質モノリス型有機高分子担体について、IgGの吸着・溶出試験を行なった。
その結果、IgGのDBC10は5.4mg/mL−ゲル、IgGのDBC50は6.3mg/mL−ゲルであった。
以上の結果から、プロテインAの固定化反応時の反応溶液を酸性にすると、末端にヒスチジンタグを有するプロテインAの固定化効率が低下し、DBC向上効果がないことが分かった。結果を表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】