(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[従来の受信装置:
図8]
従来の受信装置について
図8を参照しながら説明する。
図8は、従来の受信装置の構成ブロック図である。
従来の受信装置は、
図8に示すように、複数のアンテナ10と、各アンテナに接続する受信部11と、各受信部11に接続するアナログ・デジタル変換器(ADC:Analog Digital Converter)12と、ADC12からの信号データに振幅と位相の調整を行う振幅・位相調整部13と、振幅と位相を制御するデータを振幅・位相調整部13に出力する振幅・位相制御部14と、振幅と位相が制御された各信号データを合成する信号合成部15とを備えている。
【0003】
従来の受信装置では、アンテナ10で無線信号を取り込み、受信部11で無線信号をアナログ信号としてADC12に出力する。ADC12では、アナログ信号をデジタル信号に変換して振幅・位相調整部13に出力する。
振幅・位相制御部14は、ADC12からの各信号データの振幅と位相を制御するデータ(係数)を振幅・位相調整部13に出力する。
【0004】
振幅・位相調整部13は、ADC12からの各信号データに振幅・位相制御部14からの係数を乗算し、振幅と位相が制御された受信信号のデータを信号合成部15に出力する。
信号合成部15は、振幅・位相調整部13からの信号データを合成して出力する。信号合成部15から出力された合成された信号データは、図示していない装置で信号処理が為されるものである。
【0005】
特に、
図8における受信装置では、特定方向の利得を稼ぐために、複数のアンテナ10の振幅と位相を振幅・位相制御部14にて制御している。これにより、特定方向に指向性を向けて希望波信号を受信したり、振幅と位相を制御して特定方向にヌル点を向けて、その方向の干渉波を除去する機能がある。
【0006】
[従来のアンテナ放射パターン:
図9]
従来の複数アンテナを用いたときの放射パターンの例について
図9を参照しながら説明する。
図9は、従来のアンテナ放射パターンの例を示す図である。
アンテナ放射パターンは、例えば、
図9に示すように、指向性はゆるやかにローブ(先端が丸く突出した形状)を形成するのに比べて、ヌル点(ローブとローブの谷間の点)は狭小になる。
この特性を活用して、ヌル点をスキャンしていくことで、信号の到来方向を推定する機能として用いることが実施されている。
【0007】
[従来の干渉抑圧制御]
一方、従来の干渉抑圧制御は、干渉波と希望波を分離するために、干渉波の参照信号を予め内蔵(記憶)して準備するか、外部から入力して準備しておく。
また、受信信号の特徴から干渉成分のみを抽出するためのフィルタ等の信号制御技術を用いることで参照信号を生成することもある。
【0008】
そして、干渉波の参照信号を、信号処理において受信信号と合成(受信信号から干渉波の参照信号を除去)することで、干渉波成分を抑圧するものである。
また、近年、複数のアンテナを用いて放射パターンを生成し、干渉波到来方向にヌル点を向ける調整を行うことで、干渉波を抑圧する技術もある。
【0009】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2004−048753号公報「セクタアンテナ装置」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]がある。
特許文献1には、指向性を有するセクタを形成して当該セクタの移動局と無線通信を行うセクタアンテナ装置において、移動局との通信状況に応じてセクタの指向性を変化させることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る受信装置は、第1の振幅・位相制御部で複数のアンテナから入力された各々の信号について所望の信号が得られる指向性となるよう振幅と位相を制御し、第2の振幅・位相制御部で複数のアンテナから入力された各々の信号について所望の信号の到来方向をヌル点として所望の信号以外の信号が得られる指向性となるよう振幅と位相を制御し、第1の合成部で第1の振幅・位相制御部で制御された各々の信号を合成し、第2の合成部で第2の振幅・位相制御部で制御された各々の信号を合成し、所望信号生成部で第1の合成部から出力された信号から、第2の合成部から出力された信号を除去するものであり、これにより、アンテナ数を少なくして小型化を図りつつ消費電力を抑制し、通信品質を向上させることができるものである。
【0025】
本発明の実施の形態に係る送受信装置は、上記受信装置と、送信装置とを備え、送信装置が、送信側の第1の振幅・位相制御部で分岐された送信信号の一方の信号について受信装置での第1の振幅・位相制御部で行った制御を行い、送信側の第2の振幅・位相制御部で分岐された送信信号の他方の信号について受信装置での第2の振幅・位相制御部で行った制御を行い、送信側の第1の合成部と第2の合成部で送信側の第1及び第2の振幅・位相制御部からの送信信号を合成し、正規化部で第1の合成部と第2の合成部からの送信信号の正規化を行い、複数の送信部で正規化部からの出力信号を送信し、アンテナが送信部に各々接続するものとしているので、これにより、アンテナ数を少なくして小型化を図りつつ消費電力を抑制し、通信品質を向上させることができるものである。
【0026】
[本受信装置:
図1]
本発明の実施の形態に係る受信装置について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る受信装置の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る受信装置(本受信装置:第1の受信装置)は、
図1に示すように、アンテナ20,30と、受信部(1)21、受信部(2)31と、ADC(1)22、ADC(2)32と、振幅・位相調整部(1)23、振幅・位相調整部(2)33と、振幅・位相制御部(1)24、振幅・位相制御部(2)34と、信号合成部(1)25、信号合成部(2)35と、利得・位相調整部(1)26、利得・位相調整部(2)36と、利得・位相制御部(1)27、利得・位相制御部(2)37と、所望信号生成部100とを基本的に有している。
【0027】
[本受信装置の各部]
本受信装置の各部について具体的に説明する。
アンテナ20は、受信部(1)21に接続し、受信部(1)21は、ADC(1)22に接続している。
アンテナ30は、受信部(2)31に接続し、受信部(2)31は、ADC(2)32に接続している。
【0028】
ADC(1)22からの出力は分岐され、振幅・位相調整部(1)23、振幅・位相調整部(2)33に出力される。
ADC(2)32からの出力は分岐され、振幅・位相調整部(1)23、振幅・位相調整部(2)33に出力される。
【0029】
振幅・位相調整部(1)23は、ADC(1)22とADC(2)32からの信号データに振幅・位相制御部(1)24からの振幅と位相を制御するデータ(係数)を乗算し、信号合成部(1)25に出力する。
振幅・位相調整部(2)33は、ADC(1)22とADC(2)32からの信号データに振幅・位相制御部(2)34からの振幅と位相を制御するデータ(係数)を乗算し、信号合成部(2)35に出力する。
【0030】
振幅・位相制御部(1)24は、ADC(1)22からの信号データとADC(2)32からの信号データに対する振幅と位相を制御する係数を振幅・位相調整部(1)23に出力する。
振幅・位相調整部(1)23と振幅・位相制御部(1)24の動作により、所望の信号(希望波又は干渉波)を取得するための指向性パターンが形成されるよう制御・調整される。
請求項における「第1の振幅・位相制御部」は、振幅・位相調整部(1)23と振幅・位相制御部(1)2とを含むものである。
【0031】
振幅・位相制御部(2)34は、ADC(1)22からの信号データとADC(2)32からの信号データに対する振幅と位相を制御する係数を振幅・位相調整部(2)33に出力する。
振幅・位相調整部(2)33と振幅・位相制御部(2)34の動作により、所望の信号の到来方向をヌルとして、所望の信号以外の信号を取得するための指向性パターンが形成されるよう制御・調整される。
請求項における「第2の振幅・位相制御部」は、振幅・位相調整部(2)33と振幅・位相制御部(2)34とを含むものである。
【0032】
信号合成部(1)25は、振幅・位相調整部(1)23から入力される2つの信号データを合成して、所望信号の到来方向に指向性パターンを有する信号データを利得・位相調整部(1)26に出力する。
信号合成部(2)35は、振幅・位相調整部(2)33から入力される2つの信号データを合成して、所望信号の到来方向をヌルとして所望の信号以外の到来方向に指向性パターンを有する信号データを利得・位相調整部(2)36に出力する。
【0033】
利得・位相調整部(1)26は、信号合成部(1)25からの信号データに利得・位相制御部(1)27からの利得と位相を制御するデータ(係数)を乗算して所望信号生成部100に出力する。
利得・位相調整部(1)26と利得・位相制御部(1)27の動作により、所望の信号を取得するための指向性パターンを所望信号生成部100で所望信号を取得するのに最適となるよう制御・調整される。例えば、信号データにオフセット信号が乗っているような場合に、そのオフセット信号を除去する補正を行う。
【0034】
利得・位相調整部(2)36は、信号合成部(2)35からの信号データに利得・位相制御部(2)37からの利得と位相を制御するデータ(係数)を乗算して所望信号生成部100に出力する。
利得・位相調整部(2)36と利得・位相制御部(2)37の動作により、所望信号以外の信号を取得するための指向性パターンを所望信号生成部100で所望信号を取得するのに最適となるよう制御・調整される。
【0035】
例えば、所望信号が希望波信号で、所望信号以外の信号が干渉波信号である場合、希望波信号に対応する利得・位相制御部(1)27における利得は1倍で、位相はそのままとし、干渉波信号に対応する利得・位相制御部(2)37における利得は1以下として、位相は干渉波信号が最も抑圧されるよう制御する。
【0036】
所望信号生成部100は、利得・位相調整部(1)26からの信号データ(第1の信号データ)と利得・位相調整部(2)36からの信号データ(第2の信号データ)とを合成(第1の信号データから第2の信号データを除去)して出力する。
【0037】
[本受信装置の動作]
アンテナ20に到来した無線信号は、受信部(1)21で受信され、ADC(1)22でデジタル信号に変換される。
同様に、アンテナ30に到来した無線信号は、受信部(2)31で受信され、ADC(2)32でデジタル信号に変換される。
【0038】
ADC(1)22とADC(2)32で変換されたデジタル信号は、振幅・位相制御部(1)24からの係数を振幅・位相調整部(1)23で乗算され、信号合成部(1)25に出力される。ここで、所望信号の到来方向に指向性パターンが形成されるよう制御・調整される。
同様に、ADC(1)22とADC(2)32で変換されたデジタル信号は、振幅・位相制御部(2)34からの係数を振幅・位相調整部(2)33で乗算され、信号合成部(2)35に出力される。ここで、所望信号以外の信号の到来方向に指向性パターンが形成されるよう制御・調整される。
【0039】
信号合成部(1)25からの信号は、利得・位相制御部(1)27からの利得・位相を制御する係数が利得・位相調整部(1)26で乗算され、所望信号生成部100に出力される。
同様に、信号合成部(2)35からの信号は、利得・位相制御部(2)37からの利得・位相を制御する係数が利得・位相調整部(2)36で乗算され、所望信号生成部100に出力される。
【0040】
所望信号生成部100は、利得・位相調整部(1)26からの信号(第1の信号)と利得・位相調整部(2)36からの信号(第2の信号)と合成(第1の信号から第2の信号を除去)して出力する。所望信号生成部100の信号処理により、所望信号が得られる。
【0041】
尚、所望信号を希望波信号としてもよく、また、干渉波信号としてもよい。希望波信号の場合は、本来受信すべき無線信号を抽出するものであり、干渉波信号の場合は、抑圧する干渉波信号を抽出するものである。
【0042】
[指向性パターン:
図2〜4]
次に、本受信装置における指向性のパターンについて
図2〜4を参照しながら説明する。
図2は、信号合成部(1)で形成される指向性パターンの例を示す図であり、
図3は、信号合成部(2)で形成される指向性パターンの例を示す図であり、
図4は、所望信号生成部で形成される指向性パターンを示す図である。
【0043】
振幅・位相調整部(1)23と振幅・位相制御部(1)24での信号処理により、信号合成部(1)25で得られる指向性パターンは、
図2に示すように、所望信号の到来方向に大きな指向性を持つパターンが形成される。
また、振幅・位相調整部(2)33と振幅・位相制御部(2)34での信号処理により、信号合成部(2)35で得られる指向性パターンは、
図3に示すように、所望信号の到来方向をヌル点としたパターンが形成される。
【0044】
所望信号生成部100で形成される指向性パターンは、
図4に示すように、
図2のパターンと
図3のパターンを合成(
図2のパターンから
図3のパターンを除去)したものとなる。
【0045】
[本受信装置の効果]
本受信装置によれば、所望信号生成部100からの出力は、所望信号の到来方向に対して狭く鋭い指向性を有するものとなる。つまり、2本の少ないアンテナであっても所望信号に対する鋭い指向性パターンを得ることができ、品質の高い受信信号を得ることができる。
【0046】
また、本受信装置は、少ないアンテナとそれに接続する信号処理の回路で構成するようにしているので、小型化を実現すると共に消費電力を抑え、装置のコストを低減できる。
【0047】
尚、信号合成部(2)35では、所望信号の到来方向をヌル点とした指向性パターンを形成するようにしたが、所望信号の到来方向をヌル点としつつ所望信号とは別の信号の到来方向となる指向性パターンを形成するようにしてもよい。
例えば、所望信号を希望波信号とした場合に、特定方向からの干渉波信号を捉える指向性パターンを形成することができる。
これは、所望信号を希望波信号とし、所望信号以外の信号を干渉波信号とした場合に、希望波信号の指向性パターンから干渉波信号の指向性パターンを効率的に除去できるものとなる。
【0048】
所望信号を希望波信号とした場合に、希望波信号の到来方向は、無線中継局のように到来方向が特定の方向に定まっている場合の他、トンネル内やストリーセルであれば特定の一方向に定まりやすく、また、モバイルの基地局の受信信号においても、単一ユーザからの到来方向は変動するものの、一方向が支配的になる。
従って、それ以外の方向から入って来る干渉波群の抑圧には本受信装置を用いることで、希望波信号の到来方向に狭小な指向性を生成したことと同等の特性を実現できる。
【0049】
よって、同時に受信する所望信号の到来方向が一方向のみで済む場合は、ヌル点は1つで済むため、アンテナが2つあれば実現可能である。
所望信号の到来方向が2つ以上の場合、または、ヌル点制御の範囲を広げる場合には、到来方向の数又はヌル点の数に応じてアンテナ数を増やすことで実現できる。
【0050】
[所望信号を干渉波信号とする場合]
次に、所望信号を干渉波信号とした場合について説明する。
干渉波信号が一方向から到来し、希望波信号の到来方向がばらついている通信環境においては、干渉波信号の参照信号を生成するのに、本受信装置を用いることができる。
具体的には、干渉波信号の到来方向に対してメインローブを向けて利得改善を図った干渉波参照信号とし、その他の方向から来る希望波群に対しては干渉波信号の到来方向にヌル点を向けた信号を希望波信号とし、両者の信号を合成(干渉波信号から希望波信号を除去)する信号処理により、希望波信号を抑圧して干渉波信号を高利得とした高品質な干渉波参照信号を抽出することができる。
【0051】
つまり、メインローブを向けて抽出した干渉波参照信号をキャンセラ用に用いるものである。
そして、干渉波参照信号を抽出する場合においても、同時に受信する干渉波信号の到来方向が2つ以上の場合、または、ヌル点制御の範囲を広げる場合には、到来方向の数又はヌル点の数に応じてアンテナ数を増やすことで実現できる。
【0052】
[第2の受信装置:
図5]
本発明の実施の形態に係る第2の受信装置(第2の受信装置)について
図5を参照しながら説明する。
図5は、第2の受信装置の構成ブロック図である。
第2の受信装置は、アンテナを3本にして、その3本のアンテナから得られる受信信号からよりローブが鋭い指向性パターンを形成して、所望信号を出力するものである。
【0053】
本受信装置(第1の受信装置)との相違点は、
図5に示すように、3本目のアンテナ20a、受信部(3)21a、ADC(3)22aを設け、ADC(3)22aからの出力を分岐させて、一方を振幅・位相調整部(1)23に、他方を振幅・位相調整部(2)33に出力させている。
【0054】
また、振幅・位相制御部(1)24は、ADC(3)22aからの信号に対して振幅と位相を制御するための係数を振幅・位相調整部(1)23に出力し、振幅・位相調整部(1)23は、ADC(3)22aからの信号に振幅・位相制御部(1)24からの係数を乗算して信号合成部(1)25に出力する。
【0055】
また、振幅・位相制御部(2)34は、ADC(3)22aからの信号に対して振幅と位相を制御するための係数を振幅・位相調整部(2)33に出力し、振幅・位相調整部(2)33は、ADC(3)22aからの信号に振幅・位相制御部(2)34からの係数を乗算して信号合成部(2)35に出力する。
【0056】
第2の受信装置によれば、アンテナが2本から3本に増えることにより、
図2、
図3に示した指向性パターンについて第1の受信装置に比べてローブが更に鋭くなり、所望信号生成部100で得られる指向性パターンは、所望信号の到来方向をより適正に狭小に形成した指向性パターンとすることができ、信号品質を向上させることができる効果がある。
【0057】
[第3の受信装置:
図6]
次に、本発明の実施の形態に係る第3の受信装置について
図6を参照しながら説明する。
図6は、第3の受信装置の構成ブロック図である。
第3の受信装置は、アンテナの数を3本以上とし、所望信号を希望波信号とした場合に、複数の方向からの干渉波信号を適正に除去できるようにしたものである。
【0058】
第3の受信装置が第1の受信装置と相違する点は、
図6に示すように、アンテナ30a、受信部(3)31a、ADC(3)32a、振幅・位相調整部(3)33a、振幅・位相制御部(3)34a、信号合成部(3)35a、利得・位相調整部(3)36a、利得・位相制御部(3)37aが設けられている。
【0059】
アンテナ30aに入力された無線信号が受信部(3)31aで受信され、ADC(3)32aでアナログからデジタル信号に変換される。
ADC(3)32aからの信号が分岐され、振幅・位相調整部(1)23、振幅・位相調整部(2)33及び振幅・位相調整部(3)33aに出力される。
【0060】
振幅・位相調整部(1)23は、ADC(1)22、ADC(2)32、ADC(3)32aからの信号に対して振幅・位相制御部(1)24から出力される係数を乗算して信号合成部(1)25に出力する。
振幅・位相調整部(2)33は、ADC(1)22、ADC(2)32、ADC(3)32aからの信号に対して振幅・位相制御部(2)34から出力される係数を乗算して信号合成部(2)35に出力する。
振幅・位相調整部(3)33aは、ADC(1)22、ADC(2)32、ADC(3)32aからの信号に対して振幅・位相制御部(3)34aから出力される係数を乗算して信号合成部(3)35aに出力する。
【0061】
振幅・位相調整部(2)33、振幅・位相制御部(2)34及び信号合成部(2)35では、所望信号の到来方向をヌル点としつつ、所望信号以外の第1の信号の到来方向となる指向性パターンを形成している。
これに対して、振幅・位相調整部(3)33a、振幅・位相制御部(3)34a及び信号合成部(3)35aでは、所望信号の到来方向をヌル点としつつ、所望信号以外の第2の信号の到来方向となる指向性パターンを形成している。
つまり、信号合成部(2)35と信号合成部(3)35aでは、所望信号以外で異なる信号波の到来方向に指向性パターンを形成している。
【0062】
そして、利得・位相調整部(3)36aは、信号合成部(3)35aからの信号に利得・位相制御部(3)37aからの係数を乗算し、最適化して所望信号生成部100に出力する。
所望信号生成部100は、利得・位相調整部(1)26、利得・位相調整部(2)36、利得・位相調整部(3)36aからの信号を合成する。
つまり、所望信号生成部100は、利得・位相調整部(1)26からの所望信号から利得・位相調整部(2)36と利得・位相調整部(3)36aとからの信号を除去して出力する。
【0063】
例えば、所望信号を希望波信号とし、信号生成部(2)35で形成される指向性パターンを第1の干渉波の到来方向の指向性パターンとし、信号生成部(3)35aで形成される指向性パターンを第2の干渉波の到来方向の指向性パターンとする。
そして、所望信号生成部100では、希望波信号の指向性パターンで得られた希望波信号から第1の干渉波の指向性パターンで得られた第1の干渉波信号と第2の干渉波の指向性パターンで得られた第2の干渉波信号を除去した信号が生成されることになる。
【0064】
[送受信装置:
図7]
次に、本発明の実施の形態に係る送受信装置(本送受信装置)について
図7を参照しながら説明する。
図7は、本送受信装置における送信装置の構成ブロック図である。
本送受信装置における送信装置(本送信装置)は、
図7に示すように、アンテナ40,50と、送信部(1)41、送信部(2)51と、DAC(デジタル・アナログ変換器:Digital Analog Converter)(1)42、DAC(2)52と、正規化調整部(1)43、正規化調整部(2)53と、正規化制御部200と、信号合成部(1)44、信号合成部(2)54と、振幅・位相調整部(1)45、振幅・位相調整部(2)55と、振幅・位相制御部(1)24、振幅・位相制御部(2)34と、利得・位相調整部(1)46、利得・位相調整部(2)56と、利得・位相制御部(1)27、利得・位相制御部(2)37とを基本的に有している。
【0065】
送信信号(デジタル信号)は、分岐されて、利得・位相調整部(1)46と利得・位相調整部(2)56に入力される。
利得・位相調整部(1)46は、送信信号に利得・位相制御部(1)27からの利得と位相を制御するための係数を乗算して振幅・位相調整部(1)45に出力する。
利得・位相調整部(2)56は、送信信号に利得・位相制御部(2)37からの利得と位相を制御するための係数を乗算して振幅・位相調整部(2)55に出力する。
【0066】
利得・位相制御部(1)27は、本受信装置のものと共有で、係数も同じ係数を用いる。また、利得・位相制御部(2)37は、本受信装置のものと共有で、係数も同じ係数を用いる。
これは、本受信装置の受信処理で利得と位相を制御するための係数と同じ係数を用いることで、受信信号の指向性パターンと同様の送信信号の指向性を実現するものである。
【0067】
振幅・位相調整部(1)45は、46からの信号が分岐して入力され、その信号に振幅・位相制御部(1)24からの振幅と位相を制御するための係数を乗算して信号合成部(1)44と信号合成部(2)54に出力する。
振幅・位相調整部(2)55は、利得・位相調整部(2)56からの信号が分岐して入力され、その信号に振幅・位相制御部(2)34からの振幅と位相を制御するための係数を乗算して信号合成部(1)44と信号合成部(2)54に出力する。
【0068】
振幅・位相制御部(1)24は、本受信装置のものと共有で、係数も同じ係数を用いる。また、振幅・位相制御部(2)34は、本受信装置のものと共有で、係数も同じ係数を用いる。
これは、本受信装置の受信処理で振幅と位相を制御するための係数と同じ係数を用いることで、受信信号の指向性パターンと同様の送信信号の指向性を実現するものである。
【0069】
信号合成部(1)44は、振幅・位相調整部(1)45と振幅・位相調整部(2)55からの信号を入力して合成し、正規化調整部(1)43に出力する。
信号合成部(2)54は、振幅・位相調整部(1)45と振幅・位相調整部(2)55からの信号を入力して合成し、正規化調整部(2)53に出力する。
【0070】
正規化制御部200は、正規化調整部(1)43と正規化調整部(2)53における正規化を制御するための係数を正規化調整部(1)43と正規化調整部(2)53に出力する。
正規化調整部(1)43は、信号合成部(1)44からの信号に正規化制御部200からの係数を乗算し、DAC(1)42に出力する。
正規化調整部(2)53は、信号合成部(2)54からの信号に正規化制御部200からの係数を乗算し、DAC(2)52に出力する。
【0071】
DAC(1)42は、正規化調整部(1)43からの信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、送信部(1)41を介してアンテナ40から出力される。
DAC(2)52は、正規化調整部(2)53からの信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、送信部(2)51を介してアンテナ50から出力される。
【0072】
尚、利得・位相調整部(1)46、利得・位相調整部(2)56、振幅・位相調整部(1)45、振幅・位相調整部(2)55での係数の乗算では、複素信号を扱っている場合には、第1〜3の受信装置(受信系)で用いた係数の複素共役で演算されるものとする。
【0073】
所望信号を希望波信号とした場合に、受信の振幅調整の係数値が、干渉波信号の抑圧のために1倍より小さくなっている場合は、正規化制御部200にて1倍になるよう調整し、正規化調整部(1)43と正規化調整部(2)53でそれぞれ正規化される。
【0074】
[送受信装置の効果]
本送受信装置によれば、受信装置の振幅・位相制御部(1)24、振幅・位相制御部(2)34、利得・位相制御部(1)27、利得・位相制御部(2)37を送信装置でも用い、受信装置において受信処理で用いた係数を送信処理でも利用することで、受信において形成した所望信号の指向性パターンを送信においても同じ指向性パターンとすることができ、送信信号を所望の方向に発信できる効果がある。
【0075】
つまり、第1〜3の受信装置の受信信号で特定した所望信号にメインローブを向けて取得した信号とヌル点を向けて取得した信号とを生成するために用いた振幅・位相制御の係数を、送信信号に対しても適用することで、送信信号においても、受信信号で形成した狭小な指向性と同等の指向性を実現できる効果がある。
【0076】
所望信号の到来方向を推定できる通信環境において、第1〜3の受信装置を用いることにより、規模の小さいアンテナと無線機を用いて、無線品質を改善することができる効果がある。
【0077】
送受信装置によれば、必要な送信電力を抑えることができるため、収容ユーザ数を増やすことが期待でき、カバーエリアの拡張や、スループットの向上等が期待でき、総じて無線品質の改善と消費電力の低減を図ることができる効果がある。
【0078】
この出願は、2016年3月4日に出願された日本出願特願2016−042254を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。