特許第6579730号(P6579730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579730
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】フィット感が改善された眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/12 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   G02C5/12
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-528220(P2013-528220)
(86)(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-537319(P2013-537319A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】US2011049256
(87)【国際公開番号】WO2012033647
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月7日
【審判番号】不服2017-18258(P2017-18258/J1)
【審判請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】12/879,418
(32)【優先日】2010年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー, グレン, イー.
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 河原 正
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−61005(JP,A)
【文献】 特開昭50−108932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの眼鏡であって、
a)少なくとも1つのレンズを支持するためのフレームと、
b)前記フレームに設けられたノーズブリッジであって、ヒトの鼻の第1及び第2の側部に接触するように適応した第1及び第2のノーズパッドを備える、ノーズブリッジと、を備え、
前記フレームを正面から見るときに、前記フレームを左右に分割する矢状面と、前記フレームを上下に分割する横断面と、前記矢状面及び前記横断面の両方に直交する前面が規定され、前記前面と平行に広がる、前記矢状面とノーズパッド面の間の角度が矢状角Aとして規定され、前記横断面と平行に広がる、前記矢状面と前記ノーズパッド面の間の角度が正面角Bとして規定されており、
前記ノーズパッドが、前記矢状角A及び前記正面角Bで前記フレームに対して固定位置で保持されており、前記ノーズパッド及び前記フレームが一体成形品であ
前記矢状角Aが、38度〜43度であり、
前記正面角Bが、25度〜29度である、眼鏡。
【請求項2】
前記矢状角Aが、41度〜43度である、請求項1に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に着用者の鼻に対して改善されたフィット感を示す、ヒトの眼鏡。
【背景技術】
【0002】
ヒトの視力を正常又はほぼ正常に修正することを目的とする眼鏡、及びヒトの目を危害から保護することを目的とする保護眼鏡は、何世紀にもわたって知られている。どちらのタイプの眼鏡も通常、ヒトの鼻の上に、及び各耳の上に置かれる。眼鏡のフィット感がどのくらい優れているかというヒトの感じ方は、恐らくは眼鏡のレンズがヒトの目又は顔に近すぎるかどうか、あるいはその他の要因と共に、主に、鼻及び耳の上で眼鏡のフィット感がどのぐらい優れているかということにより影響される。
【0003】
眼鏡のフィット感を改善するために使用される1つの方法は、それぞれがヒトの鼻の各側に接触する2つのノーズパッドを設け、各ノーズパッドをパッドアームと呼ばれる小さい可撓性のバネ又はワイヤに取り付けることである。次いでパッドアームは、各ノーズパッドがヒトの鼻のその対応する側に許容範囲にある位置で接触するように、光学専門家によって永久的に変形されることができる。ヒトがわずかに異なるやり方で、又はわずかに異なる位置で眼鏡をかけると、パッドアームは使用中に弾性的に変形して、わずかだが自動的に調整されることができる。
【0004】
パッドアーム付きノーズパッドを有する眼鏡は幅広く使用されているが、いくつかの問題点が知られている。まず、それらは、所定の位置にパッドを有する、大量生産できる固定ノーズブリッジの眼鏡よりも高額であることである。第2に、それらは通常、使用者にわたすことができる前に、光学専門家が数分間費やしてパッドアームを手で調整する必要があり、それは光学ビジネスにおける要員条件及びコストを増大させる。第3に、もし眼鏡がぶつかったり潰されたりした場合、ノーズパッドを支持するバネ又はワイヤのパッドアームは、永久的に変形される可能性があり、それは通常、着用者が光学専門家の事務所に戻って眼鏡を修正及び再度フィットさせることを必要とする。
【0005】
固定ノーズブリッジを有する眼鏡も、広い範囲にわたって、特にサングラス又は保護眼鏡として使用されてきた。固定ノーズブリッジは、典型的なヒトの鼻にフィットするように設計されており、フィット感は極めて満足のいくものではないかもしれないが、眼鏡の費用は多くの場合十分低いため、ユーザは、快適さを費用節約に引き換えることに前向きである。しかしながら、眼鏡のコストを増大させずに又は光学専門家の手による調節を必要とすることなしに、改善されたフィット感、特に鼻の領域のフィット感をもたらす眼鏡をヒトに提供することが望ましい。
【0006】
特定タイプの眼鏡のフィット感を改善する試みに関する特定の先行技術は、米国特許第4,762,407号(Angerら)、同第6,074,058号(Anger)、及び同第7,648,235号(Rosenfield)に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのレンズを支持するためのフレームと、フレームに取り付けられたノーズブリッジであって、ヒトの鼻の第1及び第2の側部に接触するように適応した第1及び第2のノーズパッドを備える、ノーズブリッジと、を備え、ノーズパッドが、38度超の矢状角Aでフレームに対して固定位置で保持される、ヒトの眼鏡が開示される。別の実施形態では、矢状角Aは、41度〜43度である。更に別の実施形態では、矢状角Aは、41度超であり、ノーズパッドは、25度超の正面角Bでも固定位置で保持されている。更なる実施形態では、矢状角Aは、41度〜43度であり、ノーズパッドは、27度〜29度の正面角Bでも固定位置で保持されている。
【0008】
本発明の眼鏡は、保護眼鏡、ゴーグル、サングラス、装飾眼鏡、及び/又は視力矯正眼鏡であり得る。眼鏡は、1つのレンズのみを備えてもよいし、2つの別個のレンズを備えてもよい。本発明のこれらの及びその他の特徴が、以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は図を参照して説明されるが、図中、同一の構造は、2つ以上の図において同一の参照番号で特定される。
図1】本発明に関連して使用される材料固定具の立面斜視図。
図2図1に示される材料固定具に位置付けられた固定ノーズブリッジの眼鏡の立面斜視図。
図3】本発明による固定ノーズブリッジの眼鏡の背面図。
図4】本発明による固定ノーズブリッジの眼鏡の底面図。
図5】本発明による固定ノーズブリッジの眼鏡の側面図。
【0010】
本発明の一実施形態では、図に示される眼鏡及びその構成要素は正確な比率ではないが、本発明の他の実施形態では、図に示される眼鏡及びその構成要素は正確な比率であり、図は、特定の角度、相対距離、又はその他の関係をそのまま例示するのに使用されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、特定の臨界パラメーターを、以前に特定されたとは考えられていない範囲内に制御することにより、固定ノーズブリッジの眼鏡が、ユーザが従来の固定ノーズブリッジの眼鏡よりも著しく改善されたと感じるフィット感をもたらすことができると判断した。特に、固定ノーズブリッジが、以下に記載の1つ、2つ又は3つの臨界パラメーターを呈するように設計されているなら、ユーザの鼻の上での眼鏡のフィット感が著しく改善されると考えられている。本発明のこれらの及びその他の態様が、本明細書において詳述される。
【0012】
本発明を十分に理解するのを助けるために、本発明の様々な実施形態の実施を成功させるのに重要だと思われる特定の角度関係に言及するのに、特定の用語が使用される。図1は、図2に示されるようなほとんど全ての眼鏡を置くことができる材料固定具又は治具を示す。このタイプの材料固定具を使用することにより、ほとんど全ての眼鏡の角度、又は距離、又はその他の寸法特性を対等基準で比較することができる。
【0013】
材料固定具10が図1に詳しく図解されている。材料固定具は、基板12と、基板に対して垂直に縦に延びるように基板に取り付けられた裏板14と、を含む。基板12は、幅200ミリメートル(mm)及び深さ125mmであり、裏板は、幅200mm及び高さ70mmである。支持ピン16が裏板の幅に沿って中程に取り付けられ、支持ピンの中心は、裏板の上部から22.8mm下にある。支持ピンは、基板の上方に基板と平行して125mmの総距離だけ延びている。支持ピンの基部16Bは、86.6mmの長さ及び30mmの直径を有し、ノーズパッド支持部16Aは、38.4mmの長さ及び20mmの直径を有する。ノーズパッド支持部16Aと基部16Bとの間の直径の移行は、眼鏡が止め具16Cに接触するまで裏板に向かって押されたときに、評価される眼鏡を位置決めするための止め具として機能する。裏板の上部18は、眼鏡の耳当て部又はつまみのための支持体として機能する。
【0014】
試験材料固定具10に対して画定される3つの基準面が、眼鏡に関連する特定の角度を決定するのに使用される。基板を水平に位置決めし、材料固定具を支持ピンの自由端部から見ると(材料固定具の前側と呼ばれることがある)、矢状面20が、支持ピン16を縦に架空の左半分及び右半分に二等分又は分割する。横断面22は、支持ピン16を水平に架空の上半分及び下半分に二等分する。前面24は、矢状面及び横断面の両方に直交しており、レンズ表面の最も前方の部分に接する。
【0015】
これらの面に対して測定される特定の角度は、図3、4、及び5を参照して以下に更に詳述される。
【0016】
図2は、図1に示されている材料固定具10の上に位置決めされた典型的な眼鏡30を図解する。眼鏡は、止め具16Cに接して押し上げられており、耳当て部又はつまみ32は裏板14の上部18に載っており、これによってヒトが着用したときに取る大体の位置に眼鏡が設置される。眼鏡は、鼻のブリッジの上を延びる単一の構造体を含んで、着用者の鼻の各側にノーズパッドを設けてもよく、又は各側に個々の別々のノーズパッド構造体を含んでもよいが、それらの配置は、本発明の目的に当てはまると考えられる。各眼鏡を図示されるように位置付けると、それらの構造が同じではない場合も、1つの眼鏡で測定される特定の角度を、別の眼鏡で測定される対応する角度と比較することができる。
【0017】
図3、4、及び5は、本発明に従って設計された眼鏡30の関連部分と同様、矢状面20、横断面22及び前面24を図解する。明確にするために、試験材料固定具10は図示されていないが、眼鏡30があたかも図2に示されるように材料固定具上に位置決めされているかのように3つの面が例示されている。矢状角Aが図3に示されているが、これは、前面24と平行に広がる、矢状面20とノーズパッド面50の間の角度として画定されている。正面角Bが図4に示されているが、これは、横断面22と平行に広がる、矢状面20とノーズパッド面50の間の角度として画定されている。前面角Cが図5に示されているが、これは、矢状面20と平行に広がる、前面24とノーズパッド面50の間の角度として画定されている。いずれの場合も、測定の目的で、ノーズパッド面は、ノーズパッドの支え面と接する平らな表面であると見なした。上述の角度は、眼鏡が対称であり、説明した角度の半分のみを測定する必要があることが想定されるが、全角度をそのまま測定する(例えば、矢状角Aの場合は、1つのノーズパッドから反対側のノーズパッドまで測定する)ことも、明らかに本発明の範囲内である。更に、鼻の各側のノーズパッドは対称であることが想定されるが、製造中に典型的に起こる変形が起こる場合がある。
【0018】
上記で指定される角度を使用して、本発明者らは、特定の人口に関する固定ノーズブリッジの眼鏡のノーズパッド面の最適な範囲は、以下であると判断した。
矢状角A:好ましくは38度超、より好ましくは41度超、最も好ましくは41度〜43度。
正面角B:好ましくは25度超、より好ましくは27度超、最も好ましくは27度〜29度。
前面角C:好ましくは12度〜約16度、最も好ましくは約13度〜約14度。
【0019】
上記で特定された角度のそれぞれ、及びこれらの角度の2つ又は3つ全ての各組み合わせは、特許請求される発明の特定の実施形態の性能に重要であると考えられている。具体的に言うと、一実施形態では、矢状角Aが臨界パラメーターである。別の実施形態では、矢状角A及び正面角Bがともに臨界パラメーターである。更なる実施形態では、角度Bが臨界パラメーターである、などである。規定された範囲内の角度を1つ、又は2つ、又は3つ全て有する、固定ノーズブリッジの眼鏡は、アジア系のヒトに典型的であると考えられる顔の特徴を有する特定のヒトに、より優れたフィット感をもたらすことがわかった。それ以上に、これまで「アジア人のフィット」に対して設計されていると言われている固定ノーズブリッジの眼鏡が、本明細書に記述され特許請求されている角度を呈さず、実際、本明細書に記述され特許請求されている発明に近い角度さえも呈していないようである。これは、本発明に従って作製された固定ノーズブリッジの眼鏡の実施例を参照して、以下に詳述される現在公的に入手可能な多くの固定ノーズブリッジの眼鏡と比較して説明される。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明による固定ノーズブリッジの眼鏡の実施例は、光熱可塑性ポリカーボネートポリマーを使用して射出成形された。ノーズパッドは、保護眼鏡としての使用に設計された眼鏡のフレームと一体的に形成された。ノーズパッドは、68.5mmの面積を有する4.6mm×14.9mmの略長方形の支え面を有していた。ノーズパッドは、固定された空間的定位でそれらの中心間が19mm離れた位置で眼鏡のフレームに配置されていた。眼鏡のつまみは、99.1mm離れていた。
【0021】
上述した代表的な眼鏡の矢状角、正面角、及び前面角が測定され、表1に示される。説明されているように眼鏡は、典型的なアジア人の顔にぴったり合っていると考えられており、アジア人の着用者が本発明の本実施形態による眼鏡のフィット感を試験したときに、その眼鏡は主観的によくフィットしているとされた。
【0022】
比較実施例
現在市販されている、固定ノーズパッドを有するいくつかの眼鏡を、上述した3つの角度に対して評価した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
評価結果から明らかなように、本発明の眼鏡は、測定された他の眼鏡とはかなり異なる角度位置で固定位置にあるノーズパッドを有する。更に重要なことには、本発明のノーズパッドの独特な位置決めは、本発明の眼鏡の改善されたフィット感に直接関与していると考えられており、その結果、上記のデータは、本分野における著しい改善を表すと考えられている。
【0025】
いくつかの異なる実施形態を参照して本発明の眼鏡が説明されてきたが、それらの実施形態は、本発明を例示することを目的とし、制限するものではない。例えば、眼鏡は、ユーザの視野全体に延びる1つのレンズのみを備えてもよいし、2つの別個のレンズを備えてもよい。眼鏡は、保護眼鏡、サングラス、視力矯正のための眼鏡、ゴーグル、又はそれらの及びその他のタイプの眼鏡の組み合わせであり得る。
図1
図2
図3
図4
図5