(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579750
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】イソソルビドモノエステル及びイソソルビドジエステルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/90 20060101AFI20190912BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20190912BHJP
A01N 43/70 20060101ALI20190912BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20190912BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20190912BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20190912BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20190912BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20190912BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20190912BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190912BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
A01N43/90 101
A01N25/02
A01N43/70
A01P3/00
A01P13/00
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/49
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61Q19/00
C11D1/68
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-523226(P2014-523226)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2014-521667(P2014-521667A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012003250
(87)【国際公開番号】WO2013017261
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月30日
【審判番号】不服2018-9276(P2018-9276/J1)
【審判請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】102011109498.2
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピルツ・モリース・フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】クルーク・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シェール・フランツ−クサーファー
(72)【発明者】
【氏名】グローマン・イェルク
【合議体】
【審判長】
佐々木 秀次
【審判官】
瀬良 聡機
【審判官】
冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第3394009(US,A)
【文献】
特開平2−86837(JP,A)
【文献】
特開平4−218560(JP,A)
【文献】
特開平8−187070(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0117036(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/136121(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/108738(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)の1種以上の化合物及び次式(II)の1種以上の化合物を含む組成物:
【化1】
式中、
R、R
a及びR
bは、それぞれ互いに独立して5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基であり、
該組成物の総重量に基づく式(I)及び(II)の化合物の総量が少なくとも60質量%であり、
前記式(I)及び(II)の化合物の他に、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の他の物質を含み、
前記式(I)及び(II)の化合物、並びにソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の化合物の混合物のヒドロキシル価が250以下であり、
式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、式(II)の1種以上の化合物を0.1〜1.0質量部含み、
式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、イソソルビドを0.05〜0.7質量部含む、上記組成物。
【請求項2】
次式(I)の1種以上の化合物及び次式(II)の1種以上の化合物を含むカビ防止のための組成物:
【化2】
式中、
R、R
a及びR
bは、それぞれ互いに独立して5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基であり、
該組成物の総重量に基づく式(I)及び(II)の化合物の総量が少なくとも60質量%であり、
前記式(I)及び(II)の化合物の他に、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の他の物質を含み、
前記式(I)及び(II)の化合
物、並びにソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の化合物
の混合物のヒドロキシル価が250以下であり、
式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、式(II)の1種以上の化合物を0.1〜1.0質量部含み、
式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、イソソルビドを0.05〜0.7質量部含む、上記組成物。
【請求項3】
前記式(I)及び(II)において基R、Ra及びRbがそれぞれ互いに独立して7〜9個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である、請求項1〜2のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項4】
前記式(I)及び(II)における基R、Ra及びRbが7個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
それぞれの場合において、式(I)及び式(II)の1種以上の化合物と、さらにソルビタンとカルボン酸RCCOOHとの1種以上のソルビタンエステル(ここで、Rcは、5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基である。)とを含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
前記ソルビタンとカルボン酸RCCOOHとの1種以上のソルビタンエステルがソルビタンとカプリル酸とのソルビタンエステルから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物の、化粧組成物、皮膚科学的組成物若しくは医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物若しくはクリーニング組成物又はペイント若しくは塗料を製造するための使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物の、カビに対する抗菌活性作用物質としての使用。
【請求項9】
請求項1および3〜6のいずれか一つに記載の組成物の、酵母に対する抗菌活性作用物質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、イソソルビドモノエステル及びイソソルビドジエステルを含む組成物及びそれらの化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料を製造するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
産業においては、例えば、化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物、ペイント又は塗料などの製品の粘度を所望の値に調節するために使用できる増粘剤について幅広い選択肢がある。
【0003】
それに応じて、微生物の攻撃からこのような製品を保護するために使用できる多数の多数の防腐剤や殺生物剤も知られている。この目的のために、例えば、欧州化粧品規制のAnnex Vからの防腐剤又は欧州殺生物剤規制の殺生物剤を使用することができる。
【0004】
しかしながら、多くの増粘剤及び防腐剤には、しばしば、それらの製造が高価であり、しかも合成原料に基づくという不利益がある。さらに、それらの増粘作用又は防腐作用には改善を要する場合が多く、満足のいく増粘又は防腐には高い使用濃度が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業では、上記特性を既に組み合わせている物質又は組成物、すなわち、有利な増粘剤性能と有利な防腐剤性能との両方を有する物質又は組成物に対する関心がさらに高まっている。
【0006】
したがって、有利な増粘性能を有し、かつ、再生可能な原料に基づくという利点によってさらに区別される物質又は組成物を提供することが本発明の目的であった。有利には、これらの物質又は組成物は、さらに、有利な防腐剤性能も有するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、この目的は、次式(I)の1種以上の化合物及び次式(II)の1種以上の化合物を含む組成物によって達成されることが分かった。
【0008】
【化1】
【0009】
式中、
R、R
a及びR
bは、それぞれ独立に、5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基であり、しかも、該組成物の総重量に基づく該式(I)及び(II)の化合物の総量は、少なくとも60質量%である。
【0010】
したがって、本発明は、次式(I)の1種以上の化合物及び次式(II)の1種以上の化合物を含む組成物を提供する。
【0011】
【化2】
【0012】
式中、
R、R
a及びR
bは、それぞれ独立に、5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基であり、しかも、該組成物の総重量に基づく該式(I)及び(II)の化合物の総量は、少なくとも60質量%である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物は、有利な増粘剤性能及び有利な防腐剤性能、好ましくは酵母及びカビ、特に好ましくはカビに対する防腐剤性能の両方を有し、さらに、これらは、再生可能な原料を基にするという利点も有する。
【0014】
式(I)及び(II)の化合物は、非常に良好な増粘剤性能を有し、かつ、再生可能な原料を基にする。
【0015】
さらに、式(I)の化合物は、特に、非常に良好な防腐剤性能を有し、好ましくは防カビ剤として作用する。本発明において、これは、式(I)の化合物が、好ましくは酵母及びカビに対する抗菌活性作用物質として作用することを意味する。本発明の特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、カビに対する抗菌活性作用物質として作用する。
【0016】
式(I)の化合物は、防腐剤としての有機酸の使用と比較して、幅広いpH範囲にわたって活性であるという利点をさらに有する。有機酸は、3.5〜6のpH範囲内でのみ良好な活性を有する場合が多いのに対し、式(I)の化合物は、有利にはそれよりも高いpHでも使用できる。
【0017】
少なくとも部分的に再生可能な原料を基にし、かつ、例えば、防腐剤又は増粘剤として使用できる組成物は既に知られている。
【0018】
国際公開第2010/108738A2号(Evonik)には、ヒト又は動物の身体部分の浄化及びケアに使用され、かつ、ソルビタンカルボン酸エステルを含む処方物(ここで、このソルビタンカルボン酸エステルのカルボン酸部分は、6〜10個の炭素原子を有するカルボン酸から誘導され、ソルビタンカルボン酸エステルは、350を超えるヒドロキシル価(OH価)を有する)及び上記ソルビタンカルボン酸エステルを洗浄又はケア処方物における粘度調節剤、ケア成分、フォーム増進剤又は安定剤として使用することが記載されている。
【0019】
DE 10 2009 022 444(Clariant)には、ソルビタンモノカプリレートと、例えば、特定の有機酸及びそれらの塩、特定のホルムアルデヒド供与体、特定のイソチアゾリノン、特定のパラベンエステル及びそれらの塩並びに特定のピリドン及びそれらの塩などの抗菌活性化合物とを含む液体組成物が記載され、また、それらを、化粧品、皮膚化学的製品又は医薬品を保存するために使用することも記載されている。
【0020】
DE 10 2009 022 445(Clariant)には、ソルビタンモノカプリレート及びアルコールを含む液体組成物並びにそれらを化粧品、皮膚化学的製品又は医薬品を保存するために使用することが記載されている。
【0021】
特開平8ー187070号公報(ライオン)には、食品又は飲料用の細菌に対する抗菌活性化合物として、C
8〜C
18脂肪酸とソルビトール、1,5−ソルビタン、1,4−ソルビタン及びイソソルビドの中から選ばれる少なくとも1種のポリオールとの脂肪酸モノエステルと、これらの脂肪酸とポリオールとの脂肪酸ジエステルとの、33:7〜9:1のモノエステル:ジエステル重量比の混合物が記載されている。
【0022】
特開平8−173787号公報(ライオン)には、脱水ソルビトールの脂肪エステルを含む界面活性剤を有する組成物が記載されている。組成物は、カプリル酸及び/又はカプリン酸と、1,5−ソルビタン、1,4−ソルビタン及びイソソルビドよりなる群から選択されるポリオールとのモノ又はジエステルを含むことができる。記載されているのは、特に、該組成物の、水中油型乳化剤及び洗浄剤として使用である。
【0023】
式(I)及び(II)の化合物は、例えば、当業者に知られている方法によって製造できる。例えば、式(I)及び(II)の化合物は、イソソルビドを当業者に知られている従来の方法によってエステル化させることによって製造でき、イソソルビド部分と、エステル化のために使用された酸成分との両方は、市販されている。
【0024】
好ましくは、本発明の組成物における式(I)の1種以上の化合物対式(II)の1種以上の化合物の重量比は、5:95〜95:5である。
【0025】
好ましくは、式(I)及び(II)の化合物におけるR、R
a及びR
b基は、それぞれ独立に、7〜9個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である。
【0026】
特に好ましくは、式(I)及び(II)の化合物におけるR、R
a及びR
b基は、7個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、好ましくはイソソルビドモノカプリレートの1.0質量部に基づいて、好ましくはイソソルビドジカプリレートである式(II)の1種以上の化合物を0.1〜1.0、好ましくは0.2〜1.0、特に好ましくは0.4〜0.8質量部含む。
【0028】
上記組成物のなかでは、式(I)の1種以上の化合物の1.0質量部に基づいて、好ましくはイソソルビドモノカプリレートの1.0質量部に基づいて、イソソルビドを0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.6、特に好ましくは0.2〜0.5質量部含むものが好ましい。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、式(II)の1種以上の化合物の1.0質量部を基にして、好ましくはイソソルビドジカプリレートの1.0質量部を基にして、好ましくはイソソルビドモノカプリレートである式(I)の1種以上の化合物を0.001〜0.2、好ましくは0.01〜0.15、特に好ましくは0.05〜0.13質量部含む。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、式(I)の1種以上の化合物及び式(II)の1種以上の化合物の他に、ソルビトール、ソルビトールエステル(ソルビトールエステルはモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ及び/又はヘキサエステルであることができる)、ソルビタン、ソルビタンエステル(ソルビタンエステルは、モノ、ジ、トリ及び/又はテトラエステルであることができる)、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の他の物質を含む。「ソルビタン」は、例えば、1,4−又は1,5−ソルビタンであることができる。カルボン酸自体及び上記エステルの酸成分が主体とするカルボン酸の両方は、式R
cCOOH(式中、R
cはR、R
a及びR
bについて式(I)及び(II)のために与えた意味を有し、好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖飽和アルキル基である。すなわち、カルボン酸R
cCOOHは、好ましくはカプリル酸である。)に相当する。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態では、組成物における式(I)及び(II)の化合物並びにさらにソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド及びカルボン酸よりなる群から選択される1種以上の化合物の混合物のヒドロキシル価は、250以下、好ましくは230以下、特に好ましくは210以下、特に好ましくは100以下である。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、カルボン酸R
cCOOHを含まず、或いは式(I)の1種以上の化合物及び式(II)の1種以上の化合物の総量の1.0質量部を基にして、好ましくはイソソルビドモノカプリレート及びイソソルビドジカプリレートの総量の1.0質量部を基にして、カルボン酸R
cCOOH(ここで、R
cは、R、R
a及びR
bについて式(I)及び(II)のために与えた意味を有し、カルボン酸は、好ましくはカプリル酸である。)を0.1質量部まで、好ましくは0.0001〜0.05質量部、特に好ましくは0.001〜0.01質量部含む。
【0033】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ソルビトール及びソルビトールエステルから選択されるいかなる化合物も含まない。しかし、本発明の組成物がソルビトール及びソルビトールエステル(これらのエステルの酸成分が主体とするカルボン酸が好ましくはカプリル酸の場合)から選択される1種以上の化合物を含む場合、これらの化合物は、共に、好ましくは本発明の組成物中において5.0質量%以下の量で、特に好ましくは3.0質量%以下の量で、特に好ましくは1.0質量%以下の量で、最も好ましくは0.5質量%以下の量で存在し、ここでそれぞれの場合における該質量%は、本発明の最終組成物の総重量に基づく。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ソルビタン及びソルビタンエステルから選択されるいかなる化合物も含まない。しかし、本発明の組成物がソルビタン及びソルビタンエステル(これらのエステルの酸成分が主体とするカルボン酸が好ましくはカプリル酸である場合)から選択される1種以上の化合物を含む場合、これらの化合物は、共に、好ましくは本発明の組成物中において、20.0質量%以下の量で、特に好ましくは10.0質量%以下の量で、特に好ましくは5.0質量%以下の量で、最も好ましくは1.0質量%以下の量で存在し、ここでそれぞれの場合における該質量%は、本発明の最終組成物の総重量に基づく。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、それぞれ、式(I)及び式(II)の1種以上の化合物と、さらにソルビタンとカルボン酸R
CCOOHとの1種以上のソルビタンエステル、好ましくは1,4−及び/又は1,5−ソルビタンとカルボン酸R
cCOOH(ここで、R
cは、5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐飽和アルキル基又は5〜11、好ましくは7〜9、特に好ましくは7個の炭素原子を有する分岐モノ若しくはポリ不飽和アルケニル基である。)とのソルビタンエステルから選択されるものを含み、ここで、式(I)及び(II)の化合物対上記1種以上のソルビタンエステルの重量比は、70:30〜100:0、好ましくは80:20〜100:0、特に好ましくは90:10〜100:0、特に好ましくは95:5〜100:0である。上記「100:0」の重量比は、この本発明の特に好ましい実施形態において、上記本発明の組成物がいかなるソルビタンエステルも含むことを必要としないことを意味する。
【0036】
上記本発明の組成物のなかでは、ソルビタンとカルボン酸R
CCOOHとの1種以上のソルビタンエステルがソルビタンとカプリル酸とのソルビタンエステルから選択される、好ましくは1,4−及び/又は1,5−ソルビタンとカプリル酸とのソルビタンエステルから選択される、特に好ましくはソルビタンモノカプリレート及びソルビタンジカプリレートよりなる群から選択されるものが好ましい。
【0037】
ある物質のヒドロキシル価は、1gの物質をアセチル化する間に結合した酢酸の量に相当するKOHの量(mg)を意味するものと解すべきである。
【0038】
ヒドロキシル価を決定するのに好適な決定方法は、例えば、DGF C−V 17 a(53)、Ph.Eur.2.5.3 Method A及びDIN 53240である。
【0039】
本発明において、ヒドロキシル価は、DIN 53240−2と同様に決定される。ここで、次の手順が適する:測定すべき均質化試料の1g(0.1mgまで正確)を秤量する。20.00mlのアセチル化混合物(アセチル化混合物:50mlの酢酸無水物を1リットルのピリジンに撹拌する)を添加する。この試料を、適宜撹拌及び加熱しながらアセチル化混合物に完全に溶解させる。5mlの触媒溶液(触媒溶液:2gの4−ジメチルアミノピリジンを100mlのピリジンに溶解させる)を添加する。反応器を閉じ、そして55℃に予め加熱しておいたウォーターバスに混合しながら10分間置く。その後、この反応溶液に10mlの完全脱イオン水を添加し、反応器を再度閉じ、そして混合物をもう一度ウォーターバス中において10分間撹拌しながら反応させる。試料を室温(25℃)にまで冷却する。その後、50mlの2−プロパノール及び2滴のフェノールフタレインを添加する。この溶液を、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム水溶液c=0.5mol/l)(Va)で滴定する。同じ条件下であるが、ただし、いかなる試料も添加せずに、アセチル化混合物の有効性を決定する(Vb)。
【0040】
有効性の決定及び試料の滴定で消費した水酸化ナトリウム水溶液から、次式を使用してヒドロキシル価(OHV)を算出する:
【0041】
【数1】
OHV =ヒドロキシル価(mg KOH/g物質)
Va =試料の滴定中に消費された水酸化ナトリウム水溶液(ml)
Vb =有効性の滴定中に消費された水酸化ナトリウム水溶液(ml)
c =水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度(mol/l)
t =水酸化ナトリウム水溶液の力価
M =KOHのモル質量=56.11g/mol
E =秤量された試料(g)
(Vb−Va)は、水酸化ナトリウム水溶液の使用量(ml)であり、これは、測定される試料の上記アセチル化中に結合した酢酸の量に相当する。
【0042】
以下においては、上記ヒドロキシル価を決定するために説明した方法を「方法OHV−A」という。
【0043】
有利な態様では、本発明の組成物は、化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料を製造するのに好適である。
【0044】
したがって、本発明は、さらに、本発明に従う組成物の、化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料を製造するための使用を提供する。
【0045】
本発明の組成物の助けをかりて製造されるこの化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料は、式(I)の1種以上の化合物及び式(II)の1種以上の化合物を共に、それぞれの場合において化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料の総重量を基にして、好ましくは0.01〜10.0質量%の量で、特に好ましくは0.1〜5.0質量%の量で、特に好ましくは0.2〜3.0質量%の量で含む。
【0046】
化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料は、好ましくは50〜200000mPa・sの範囲、特に好ましくは500〜100000mPa・sの範囲、特に好ましくは2000〜50000mPa・sの範囲、最も好ましくは5000〜30000mPa・sの範囲の粘度を有する(20℃、ブルックフィールドRVT、1分当たり20回転で設定されたRV軸)。
【0047】
化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物は、好ましくは流体、ゲル、フォーム、スプレー、ローション又はクリームの形態で存在する。
【0048】
化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料は、好ましくは水性又は水性ーアルコール性ベースで処方され、或いはエマルジョン又は分散液として存在する。特に好ましくは、これらのものはエマルジョンとして存在し、特に好ましくは、これらのものは、水中油型エマルジョンとして存在する。
【0049】
追加の助剤及び添加剤として、化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料は、問題の用途に一般的に使用される全ての物質、例えばオイル、ワックス、乳化剤、共乳化剤、分散剤、界面活性剤、消泡剤、安定剤、電解質、ヒドロキシ酸、安定剤、重合体、塗膜形成剤、追加の増粘剤、ゲル化剤、過脂肪化剤(superfattening agents)、再脂肪化剤(refattening agents)、追加の抗菌活性化合物、生体活性化合物、収斂剤、活性物質、脱臭化合物、太陽光保護フィルター、酸化防止剤、酸化剤、保湿剤、溶剤、着色剤、顔料、パール化剤、香料、乳白剤及び/又はシリコーンを含むことができる。
【0050】
化粧組成物、皮膚科学的組成物又は医薬組成物、作物保護処方物、洗浄組成物又はクリーニング組成物或いはペイント又は塗料は、好ましくは2〜11、特に好ましくは4.5〜8.5、特に好ましくは5.5〜6.5のpHを有する。
【0051】
次の実施例及び用途は、本発明をさらに詳細に例示することを目的とするものであるが、それを限定するものではない。全てのパーセンテージは、特に明記しない限り質量%である。
【実施例】
【0052】
実験例:
(A)イソソルビドカプリレート1の調製
蒸溜ヘッドを有する撹拌装置に、まず190.0g(1.3mol)のイソソルビド(Ecogreen Oleochemicals社製の「ソルボン」)及び187.5g(1.3mol)のオクタン酸(カプリル酸)を80℃で触媒としての0.38gの水酸化ナトリウム水溶液(18質量%濃度、水性)と共に装入する。撹拌しながらかつ窒素流れ(1時間当たり10〜12リットル)下で、この反応混合物を最初に180℃に加熱し、その際、反応水が蒸発し始める。その後、この反応混合物を1時間にわたって190℃に加熱し、そしてさらに2時間にわたって210℃に加熱する。210℃に到達した後、<1mgのKOH/gの酸価に達するまでエステル化を続行する。これにより345.7gの琥珀色イソソルビドカプリレート(理論の97%)が得られる。pH(エタノール/水1:1中5質量%)は5.9である。このpHは、DIN EN 1262に従って測定した。
【0053】
イソソルビドカプリレート1のさらなる分析特性:
酸価:0.9mgのKOH/g、DIN EN ISO2114に従って測定される
ヒドロキシル価:206mgのKOH/g、OHV−A法に従ってDIN53240−2と同様に測定される
鹸化価:204mgのKOH/g、DIN EN ISO3681に従って測定される
イソソルビドカプリレート1は次の組成を有する。
【0054】
【表1】
【0055】
(B)イソソルビドジカプリレートの調製
窒素流下にある撹拌1リットル装置に、219.0g(1.5mol)のイソソルビド及び461.4g(3.2mol)のカプリル酸を撹拌しながら加熱し、そして窒素流下で180℃に加熱する。この反応混合物を、反応の水がもはや蒸発しなくなるまで180℃で加熱した(約28時間)。その後、この温度を210℃まで徐々に上昇させた(全体で約30時間を超える)。<2mgのKOH/gの残留酸価に到達したときに反応を終了した。これにより、透明な赤茶色の溶液が得られた。
反応生成物さらなる分析特性:
酸価:0.8mgのKOH/g、DIN EN ISO2114に従って測定される
ヒドロキシル価:25.2mgのKOH/g、OHV−A法に従ってDIN53240−2と同様に測定される
鹸化価:54.6mgのKOH/g、DIN EN ISO3681に従って測定される
さらなる精製について、この生成物を≦1mbarの圧力及び210℃〜240℃の底部温度で蒸留した。これにより、251.6gの透明な黄色の液体が得られた。
【0056】
イソソルビドジカプリレートは次の組成を有する。
【0057】
【表2】
【0058】
(C)増粘剤性能の決定
Genapol(登録商標)LRO(ナトリウムラウレス−2スルフェート、水中27質量%)及びGenagen(登録商標)KB(ココベタイン、水中30質量%)及びさらに水を使用して、該2種類の界面活性剤を8:2の重量比で含む水への15質量%混合物(以下、「混合物A」という)を得る。混合物Aにおけるイソソルビドカプリレート1、イソソルビドジカプリレート及びイソソルビドの増粘剤性能を決定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表1.測定した粘度
表1の結果から明らかなように、イソソルビドの増粘剤性能は言及するほどのものではないのに対し、イソソルビドカプリレート1及びイソソルビドジカプリレートは、有意な増粘を生じさせる。
【0061】
(D)イソソルビドカプリレート1の抗微生物効果の決定
以下、細菌、カビ及び酵母に対する、ブチルポリグリコール中でのイソソルビドカプリレート1の抗微生物効果を試験する。細菌での試験については、イソソルビドカプリレート1をブチルポリグリコールで希釈し、続いてpH7(±0.2)に緩衝化された液体CASO寒天(カゼイン・ペプトース寒天)に様々な濃度で添加した(以下、組成物B1、B2などという)。カビ及び酵母での試験については、イソソルビドカプリレート1をブチルポリグリコールで希釈し、続いてpH5.6(±0.2)に干渉化された液体サブロー4%デキストロース寒天に様々な濃度で添加した(以下、組成物PH1、PH2などという)。組成物B1、B2など及びPH1、PH2などをそれぞれペトリ皿に注ぎ、そしてそれぞれ同量の細菌、カビ及び酵母と共にインキュベートした。最小阻止濃度(MIC)とは、組成物B1、B2など及びPH1、PH2などにおいて細菌、カビ及び酵母の成長の阻害が生じる濃度のことである。
【0062】
以下の表2に記載した、イソソルビドカプリレート1の最小阻止濃度について決定した値は、ブチルポリグリコールの希釈効果に対して既に補正されている。
【0063】
【表4】
【0064】
表2.イソソルビドカプリレート1の最小阻止濃度(MIC)
表2にまとめた結果は、イソソルビドカプリレート1が、特に試験した酵母の
Candida albicans及びカビに対して抗菌活性であることを示している。
【0065】
(E)使用例
次の処方物を、 本発明のイソソルビドカプリレート1に従う組成物を使用して調製する。
処方例1:活性化保湿クリーム
【0066】
【表5】
【0067】
調製:
I Aの成分を混合し、そして混合物を80℃に加熱する
II Cの成分を混合し、そして混合物を80℃に加熱する
III BをIに添加する
IV IIをIIIに添加し、混合物を室温にまで冷却するまで撹拌する
V DをIVに添加する
VI Eを使用してpHを5.5に調整する。
【0068】
処方例2:
【0069】
【表6】
【0070】
調製:
I Aの成分を混合し、そして混合物を80℃に加熱する
II Bの成分を、全ての物質が溶解するまで混合する(適宜穏やかに加熱しながら)
III IIをIに添加する
IV Cの成分を混合し、そして混合物を50℃に加熱する
V IVを混合物が35℃にまで冷却するまで高速で撹拌する
VI DをVに35℃で添加する。
【0071】
処方物3及び4:作物保護処方物
【0072】
【表7】
【0073】
調製:
活性成分を他の成分と再度分散させ(Kelzan(登録商標)S溶液を除く)、その後、これに平均粒径が<2マイクロメートルになるまで微粉砕を施した。その後、これにKelzan(登録商標)S溶液を撹拌しながら加える。
【0074】
処方例5:食器洗い液
【0075】
【表8】
【0076】
処方例6:表面洗浄剤(多目的洗浄剤)
【0077】
【表9】
【0078】
処方物5及び6の調製:
まず、水の量の半分を充填し、そして成分を処方物5及び6について与えた表に列挙されたのと同じ順序で混合することによって添加する。その後、水の残りの量を添加する。これにより透明な水性組成物が得られる。