(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る構造物の点検装置について図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照して、本実施の形態の構造物の点検装置(以下、単に点検装置という)の構成について説明する。
なお、本実施の形態では、点検装置10Aの評価対象となる構造物2はビルであり、点検装置10Aが構造物外面部2Aの状態として、構造物躯体202に接着されたタイルなどの外装材4の状態を検出して評価するものである場合について説明するが、点検装置10Aが検出する構造物外面部2Aの状態は、外装材4の状態に限定されるものではなく、構造物外面部2Aのひび割れ、汚損、空洞、温度など従来公知の様々な状態を検出の対象とすることができる。
また、点検装置10Aの評価対象となる構造物は、ビルに限定されるものではなく、ダムの堤体、高架橋など様々な構造物に適用可能である。
【0009】
点検装置10Aは、回転翼機12と、管理端末14とを含んで構成されている。
回転翼機12は、無線操縦式の小型ヘリコプターであり、構造物外面2Bと一定の距離をおいた状態で構造物外面2Bに沿って移動する移動手段を構成するものである。
図2に示すように、回転翼機12には筐体1202に4つのプロペラ1204が設置されている。このため、風などの影響を受けやすい屋外等でも安定して飛行が可能である。
回転翼機12の操縦は、リモートコントローラ(図示なし)や管理端末14を用いてなされ、リモートコントローラ(図示なし)や管理端末14によって回転翼機12の飛行方向や飛行速度が制御される。
回転翼機12の操縦は、リモートコントローラ(図示なし)や管理端末14を用いて点検作業者が行ってもよいし、リモートコントローラ(図示なし)や管理端末14を用いて自動制御によって行ってもよい。
【0010】
回転翼機12の筐体1202には、
図1に示すように、案内手段16、カメラ18、打撃部20、検出部22、測位部24、処理部26、通信部28が搭載されている。
【0011】
案内手段16は、構造物外面2B(外装材4の表面)に当接することで構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持しつつ、構造物外面2Bに沿って回転翼機12に移動を案内するものである。
本実施の形態では、案内手段16は、回転翼機12の筐体1202に設けられた3個以上のキャスター(車輪)1602で構成されている。
各キャスター1602は、360度旋回可能な全方向キャスターで構成され、同一平面上に互いに間隔をおいて配置されており、各キャスター1602が構造物外面2Bに当接した状態で回転翼機12と構造物外面2Bとの距離が予め定められた寸法となるように構成されている。なお、構造物外面2Bは、構造物2の側面や上面(屋根)を含む。
上記予め定められた寸法は、カメラ18202が構造物外面2Bを撮影するために必要な焦点距離を確保するに足る寸法であればよい。
したがって、回転翼機12が構造物外面2Bに接近し、やがて各キャスター1602が構造物外面2Bに当接すると、回転翼機12と構造物外面2Bとの距離が予め定められた寸法となり、この状態を保ったまま回転翼機12が構造物外面2Bに沿って移動可能となる。
【0012】
打撃部20は、ソレノイドなどのアクチュエータを用いてハンマーで外装材4を打撃するものである。
検出部22は、ハンマーで外装材4が打撃された際に発生する打音を検出して検出信号を生成するものであり、マイクロフォンで構成されている。なお、検出部22は、ハンマーで外装材4が打撃された際に発生する外装材4の振動あるいはハンマーの振動を検出して検出信号を生成するものであってもよい。
本実施の形態では、打撃部20および検出部22により構造物外面部2Aの状態を検出する検出手段が構成されている。
【0013】
カメラ18は、構造物外面2Bの画像を連続的に撮影するものである。
カメラ18で撮影する画像は、構造物外面2Bを漏れなく撮影するために動画とすることが好ましいが、撮影間隔を適当に設定した静止画であってもよい。
【0014】
図3は、カメラ18が撮影する画像の説明図である。
符号Aは、カメラ18が撮影する1枚の画像を示し、回転翼機12の移動に応じてカメラ18が撮影する画像Aの位置が、d1、d2、d3、d4の順番で移動する過程を示している。
カメラ18、打撃部20は同一の筐体1202に固定されているため、カメラ18で撮影される画像A上において打撃部20で打撃される外装材4の検出位置b(検出手段で検出される検出位置b)は、画像A上で固定されている。
すなわち、検出位置bは画像A上に設定される互いに直交するX座標およびY座標の2次元の座標データで特定されることになり、検出位置bは画像A上において固定される。また、検出位置bの座標データは画像を構成する画素単位で特定される。
【0015】
一方、カメラ18で撮影される構造物外面2Bの位置は、画像A上の画素数によって特定することができる。すなわち、カメラ18の光学系や撮像素子の仕様、撮像素子から構造物外面2Bまでの距離によって1画素当たりの寸法が決定され、したがって、画像上の画素数と1画素当たりの寸法とに基づいて画像A上における位置を算出することができる。
【0016】
ところで、
図3に示すように、カメラ18で撮影される構造物外面2Bに予め基準点P1を設定すると、構造物外面2B上に基準点P1を原点として互いに直交するX座標およびY座標の2次元の座標データが設定可能となる。基準点P1は、例えば、構造物外面2Bに予め塗料やシールなどで形成された指標で構成してもよいし、あるいは、構造物外面2Bの角部などの特定の箇所を基準点P1として設定してもよい。
カメラ18によって基準点P1を含む画像Aを最初に撮影したのち、回転翼機12が移動するにつれて連続的に撮影される画像Aの移動量および移動方向を、画像の画素に基づいて検出することで、基準点P1を原点とした検出位置bまでの座標データを画素単位で得ることが可能である。
画素単位の座標データは、前述したように1画素あたりの寸法に基づいて実際の距離に換算することができる。
より詳細に説明すると、ある時点で撮影した1枚の画像と、次の時点で撮影した1枚の画像とを比較して特徴点を画素単位で抽出し、次にそれら2枚の画像を重ね合わせて特徴点の移動量と移動方向を画素単位で検出する処理を行なう。なお、特徴点は、例えば、構造物外面2Bの傷、欠け、汚れ、角部など、画像処理によって使用される従来公知の様々な特徴的な部分から抽出されるものである。
このような処理を連続して撮影した画像に対して繰り返して行なうことにより、基準点P1を原点とした検出位置bまでの座標データを画素単位で連続的に得ることができる。
【0017】
測位部24は、GPS衛星などの測位衛星から送信される測位信号を受信して、回転翼機12の現在位置(例えば緯度経度および標高など)を特定するものである。
測位部24で特定した回転翼機12の現在位置は、回転翼機12の飛行経路の制御等に用いられる。
【0018】
処理部26は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROMなどの記憶手段、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
処理部26は、カメラ18で連続的に撮影された構造物外面2Bの画像情報(動画あるいは間欠的に撮影された静止画)を受け付ける。
また、処理部26は、打撃部20の制御を行なうと共に検出部22で検出された検出信号をA/D変換することで検出情報を生成する。
処理部26は、検出情報と、この検出情報が生成された時点における画像情報とを関連付ける処理を行ない、互いに関連付けられた検出情報および画像情報を通信部28を介して管理端末14に送信する。
処理部26は、互いに関連付けられた検出情報および画像情報を記憶手段に記録してもよい。
また、処理部26は、測位部24によって特定された現在位置を通信部28を介して管理端末14に送信する。
【0019】
通信部28は、管理端末14の通信部32との間で無線通信を行う。
通信部28は、カメラ18での撮影中による検出情報および画像情報の送信を逐次行ってもよいし、一連の撮影が終了してから記憶手段に記録されていた検出情報および画像情報を一括して行ってもよい。
【0020】
管理端末14は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートホン等であり、構造物2周辺に位置する点検作業者が保持している。
管理端末14は、通信部30、処理部32、設計データ用データベース34、表示部36、操作部38を含んで構成されている。
通信部30は、回転翼機12の通信部28との間で無線通信を行う。
なお、通信部30を介して回転翼機12の飛行経路や飛行速度を制御する制御信号を送信してもよい。
【0021】
処理部32は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
処理部32は、制御プログラムを実行することにより、評価手段32A、検出位置特定手段32B、評価情報生成手段32Cとして機能する。
【0022】
評価手段32Aは、打撃部20および検出部22による検出結果に基づいて構造物外面部2Aの状態を評価するものである。
本実施の形態では、評価手段32Aは、通信部30を介して受信した互いに関連付けられた検出情報および画像情報のうちの検出情報にもとづいて構造物外面部2Aの状態を評価する。具体的には、外装材4の剥離の有無を判定し、また、外装材4の背面の空洞の外装材4の深さ方向における位置を算出する。
なお、評価手段32Aによる構造物外面部2Aの状態の評価は、検出情報に含まれる検出信号の周波数、振幅、波長などの検出結果に基づいてなされ、このような評価方法として従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0023】
検出位置特定手段32Bは、通信部30を介して受信した互いに関連付けられた検出情報および画像情報にもとづいて打撃部20および検出部22の検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の座標データを検出位置bとして特定するものである。
すなわち、検出位置特定手段32Bは、前述したように、カメラ18で連続的に撮影された画像に含まれる基準点P1を原点として構造物外面2B上に互いに直交するX座標およびY座標を設定すると共に、カメラ18で連続的に撮影される画像の移動量および移動方向に基づいて打撃部20および検出部22の検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の座標データを特定する。すなわち、前述したように、連続的に撮影された画像から抽出した特徴点の移動量と移動方向を画素単位で検出する処理を行なうことにより、基準点P1を原点とした検出位置bまでの座標データを画素単位で連続的に特定する。
なお、検出位置特定手段32Bは、座標データを、画素数で示される単位から、実際の長さの単位(mm、cm、m)で示される値に換算する。このような換算は、前述したように、カメラ18の光学系や撮像素子の仕様、撮像素子から構造物外面2Bまでの距離によって決定される1画素当たりの寸法に基づいて、画像上の画素数と1画素当たりの寸法とから画像上における位置を算出することでなされる。
【0024】
評価情報生成手段32Cは、評価手段32Aによる評価結果と検出位置特定手段32Bで特定された検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを関連付けた評価情報を生成するものである。
本実施の形態では、評価情報生成手段32Cは、構造物外面部2Aの状態の評価結果(外装材4の剥離の有無、空洞位置)と、検出位置bとを関連付けた評価情報を生成するものである。
このようにすることで、評価結果と、検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の座標データとを的確に把握することができ、構造物外面部2Aの状態を的確に評価する上で有利となる。
【0025】
表示部36は、画像を表示するものであり、評価情報を報知する報知手段を構成するものであり、構造物外面2Bの画像と評価情報とを対応付けて報知する。
すなわち、処理部32は、通信部30を介して受信した画像情報と、評価情報に含まれる評価結果と、評価情報に含まれる検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを組み合わせて表示部36に表示させる。
このようにすることで、構造物外面2Bの画像と、評価結果と、検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを的確に把握することができ、構造物外面部2Aの状態を的確に評価する上で有利となる。
【0026】
操作部38は、処理部32に対する設定操作、回転翼機12に対する操縦操作を行なう際に操作されるものである。
【0027】
設計データ用データベース34は、構造物2の設計データを格納するものであり、設計データには、構造物2を構成する各部の位置や形状を示す座標データが含まれている。
したがって、処理部32は、通信部30を介して受信した評価情報に含まれる検出位置bの座標データに基づいて設計データ上における検出位置bの座標データを特定することができる。
そして、処理部32は、構造物2の設計データに基づいて構造物2の全体図、あるいは、部分図を表示部36に画像として表示させると共に、その画像上に検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の位置を特定のマーク(ポインタ)などで表示することができる。
さらに、処理部32は、評価情報に含まれる評価結果と、評価情報に含まれる検出位置bの座標データとを表示部36に表示させることができる。
このようにすることで、構造物2の設計データに基づく画像と、評価結果と、検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを的確に把握することができ、構造物外面部2Aの状態を的確に評価する上で有利となる。
【0028】
次に、
図5のフローチャートを参照して点検装置10Aの動作について説明する。
まず、
図4に示すように、評価対象となる構造物躯体202に設けられた外装材4の表面に基準点P1を設置する(ステップS10)。
基準点P1は、例えば、構造物外面2Bの角部の1つに設置するなど任意である。
点検作業者等からの指示または自動制御によって点検開始が指示されると、点検装置10Aは、回転翼機12の飛行を開始させる(ステップS12)。
回転翼機12を構造物外面2Bに近接させ、やがて各キャスター1602が構造物外面2Bに当接すると、回転翼機12と構造物外面2Bとの距離が予め定められた寸法となり、この状態を保ったまま回転翼機12が構造物外面2Bに沿って移動可能な状態となる。
そして、回転翼機12を、カメラ18で基準点P1が撮影可能な位置まで移動させ、カメラ18により基準点P1を含む構造物外面2Bの領域から撮影を開始させる(ステップS14)。
そして、
図4に矢印で示すように、評価対象となる構造物外面部2Aの全域がカメラ18によって撮影されるように、回転翼機12を水平方向および鉛直方向に移動させながら、検出手段による構造物外面部2Aの状態の検出と、カメラ18による構造物外面2Bの撮影とを実行する(ステップS16)。
なお、
図4において、符号Vはカメラ18によって撮像される領域を示している。
これにより、回転翼機12では、互いに検出情報および画像情報が関連付けられ、それら検出情報および画像情報が通信部28を介して管理端末14へと送信される(ステップS18)。
【0029】
管理端末14では互いに関連付けられた検出情報および画像情報を通信部30を介して受信する(ステップS20)。
そして、評価手段32Aは、互いに関連付けられた検出情報および画像情報のうちの検出情報にもとづいて構造物外面部2Aの状態を評価する(ステップS22)。
次いで、検出位置特定手段32Bは、受信した互いに関連付けられた検出情報および画像情報にもとづいて打撃部20および検出部22の検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置b(座標データ)を特定する(ステップS24)。
さらに、評価情報生成手段32Cは、評価手段32Aによる評価結果と検出位置特定手段32Bで特定された検出位置bとを関連付けた評価情報、具体的には、構造物外面部2Aの状態の評価結果(外装材4の剥離の有無、空洞位置)と、検出位置bとを関連付けた評価情報を生成する(ステップS26)。
【0030】
処理部32の制御により、表示部36は、通信部30を介して受信した画像情報と、評価情報に含まれる評価結果と、評価情報に含まれる検出位置bとを組み合わせて表示し(ステップS28)、一連の動作を終了する。
評価結果の表示は、例えば、
図6に示すように、表示部36の表示画面3602上において、外装材4の剥離が有る箇所は赤色のマークM1が当該外装材4の画像に重ね合わせて表示される。また、外装材4の剥離が無い箇所は青色のマークM2が当該外装材4の画像に重ね合わせて表示される。
また、各マークの近傍に検出位置bとして、基準点P1を原点としたX座標、Y座標の値が例えば、mm単位で表示される。
また、外装材4の背面の空洞の位置が浅いほど赤色の濃度が濃いマークM1で表示され、外装材4の背面の空洞の位置が深いほど赤色の濃度を薄くしたマークM1で表示される。
例えば、空洞の位置が5mm未満であれば薄い赤色、5mm以上であれば濃い赤色といったように表示される。なお、濃度は2段階に限定されず3段階以上であってもよい。
また、空洞の位置を示す数値を当該外装材4の画像に重ね合わせて表示してもよい。
なお、本実施の形態では、画像情報と評価情報に含まれる評価結果および検出位置bとを表示部36の表示画面3602上に表示する場合について説明したが、コンピュータにプリンタ装置を接続し、画像情報と検出位置と個別評価情報とを印刷媒体上に印刷により表示させるようにしてもよいことは無論である。この場合、表示部36はプリンタ装置によって構成されることになる。
【0031】
なお、処理部32は、受信した検出位置b(座標データ)と、設計データ用データベース34に格納されている構造物2の設計データとに基づいて構造物2の全体図、あるいは、部分図を表示部36に画像として表示させると共に、その画像上に検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の位置をポインタなどで表示部36により表示させてもよい。
【0032】
以上説明したように本実施の形態によれば、構造物外面2Bと一定の距離をおいた状態で構造物外面2Bに沿って移動する移動手段を用いてカメラ18により構造物外面2Bの画像を連続的に撮影し、構造物外面部2Aの状態を検出する検出手段の検出結果に基づいて評価手段32Aによって構造物外面部2Aの状態を評価する。また、検出位置特定手段32Bによって、カメラ18で連続的に撮影された画像に含まれる基準点P1を原点として構造物外面2B上に互いに直交するX座標およびY座標を設定すると共に、カメラ18で連続的に撮影される画像の移動量および移動方向に基づいて検出手段の検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の座標データを検出位置bとして特定する。そして、評価手段32Aによる評価結果と検出位置特定手段32Bで特定された検出位置bとを関連付けた評価情報を生成するようにした。
したがって、従来のように、位置情報を取得するためにトータルステーションを用いる必要がなく、構造物外面部2Aの状態と構造物外面部2Aの検出位置bとを関連付けた評価を効率的に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0033】
また、本実施の形態では、表示部36により構造物外面2Bの画像と評価情報とを対応付けて報知するようにしたので、構造物外面部2Aの状態と構造物外面部2Aの検出位置bとを関連付けた評価を効率的に行う上で有利となる。
【0034】
また、本実施の形態では、検出手段は、構造物外面2Bを叩打する打撃部20と、構造物外面2Bで発生した音または振動を検出する検出部22とを備えるものとしたので、外装材4の剥がれや浮きを含む構造物外面部2Aの状態の評価を的確に行う上で有利となる。
【0035】
また、本実施の形態では、移動手段は、無線操縦式の回転翼機12であるため、構造物外面部2Aの状態を広範囲に効率よく検出することができ、構造物外面部2Aの状態の評価を効率よく行なう上で有利となる。
【0036】
また、本実施の形態では、案内手段16により、構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持しつつ、構造物外面2Bに沿って回転翼機12に移動を案内するようにした。そのため、カメラ18によって撮影される構造物外面2Bの画像の大きさの変化が少なく、したがって、撮影した画像上における画素当たりの寸法のばらつきを抑制できるため、検出位置特定手段32Bによって検出位置bを精度良く得る上で有利となる。
また、案内手段16により、構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持できるため、構造物外面2Bに対する回転翼機12の位置および姿勢を安定した状態で構造物外面2Bを叩打することができ、打音の検出を安定して行え、構造物外面2Bの不良の有無の判定を正確に行なう上で有利となる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について
図7を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は、検出手段として打撃部20、検出部22に代えてカメラ18を用いた点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、第2の実施の形態の点検装置10Bにおいては、カメラ18によって撮影された構造物外面2Bの画像自体が構造物外面部2Aの検出結果となっている。
したがって、撮影された画像からなる検出情報と、この検出情報が生成された時点における画像情報とは同一のものとなるため、画像情報を通信部28を介して管理端末14に送信する。
そして、管理端末14の評価手段32Aは、検出情報としての画像情報(カメラ18で撮影された画像)を検出結果として受け付けると共に、画像を解析して構造物外面部2Aの状態を評価する。具体的には、画像解析により構造物外面部2Aのひび割れや汚損を検出し、ひび割れの寸法や汚損の大きさなどを示す評価結果を生成する。
【0038】
検出位置特定手段32Bは、通信部30を介して受信した互いに関連付けられた検出情報および画像情報にもとづいて、すなわち同一の画像情報に基づいて打撃部20および検出部22の検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の座標データを検出位置bとして特定する。
さらに、評価情報生成手段32Cは、評価手段32Aによる評価結果と検出位置特定手段32Bで特定された検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを関連付けた評価情報を生成する。
以下、第1の実施の形態と同様に、処理部32は、通信部30を介して受信した画像情報と、評価情報に含まれる評価結果と、評価情報に含まれる検出対象となる構造物外面部2Aの箇所の検出位置bとを組み合わせて表示部36に表示させる。
【0039】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、カメラ18を検出手段として用いるため、構成の簡素化を図る上で有利となる。
なお、第2の実施の形態では、カメラ18を検出手段として兼用した場合について説明したが、カメラ18とは別に検出用カメラを設け、この検出用カメラを検出手段として機能させてもよい。この場合は、カメラ18の倍率に比較して検出用カメラの倍率を高いものとすれば、構造物外面2Bをより詳細に撮影し、構造物外面部2Aの状態をきめ細かく検出する上で有利となる。
【0040】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について
図8を参照して説明する。
第3の実施の形態は、打撃部20、検出部22に代えて赤外線温度センサ40を検出手段として用い、かつ、管理端末14に、評価情報生成手段32Cに代えて検出情報生成手段32Dを設けた点が第1の実施の形態と異なっている。
赤外線温度センサ40は、構造物外面2Bから放射される赤外線を受光することで構造物外面部2Aの温度を検出するものである。
したがって、第3の実施の形態の点検装置10Cにおいては、構造物外面部2Aの温度が構造物外面部2Aの状態の検出結果として通信部28を介して管理端末14に送信される。
管理端末14の検出情報生成手段32Dは、構造物外面部2Aの状態の検出結果としての構造物外面部2Aの温度と、検出位置特定手段32Bで特定された検出位置bとを関連付けた検出情報を生成するものである。
そして、管理端末14の処理部32は、構造物外面2Bの画像と検出情報とを対応付けて表示部36により表示させる。
第3の実施の形態によれば、構造物外面部2Aの状態の検出結果と、検出位置特定手段32Bで特定された検出位置bとを関連付けた検出情報を生成し、構造物外面2Bの画像と検出情報とを対応付けて報知するようにしたので、第1の実施の形態と同様に、従来のように、位置情報を取得するためにトータルステーションを用いる必要がなく、構造物外面部2Aの状態と構造物外面部2Aの検出位置bとを関連付けた評価を効率的に行いつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
なお、検出手段は、赤外線温度センサ40に限定されるものではなく、従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0041】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について
図9を参照して説明する。
第4の実施の形態の点検装置10Dにおいては、回転翼機12は、第1の実施の形態の案内手段16に代えて吸着手段42を備えている。
吸着手段42は、回転翼機12に設けられ、構造物外面2Bに吸着することで構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持し、構造物外面2Bに対する吸着を解除することで回転翼機12の移動を許容するものである。
本実施の形態では、案内手段16は、バキュームチャック44と、真空ポンプ46とを備えている。
バキュームチャック44は、対象物を吸引固定する吸引面4402と、吸引面4402に開口する複数の吸引孔4404と、各吸引孔4404に連通する接続口4406を備えている。
真空ポンプ46は、処理部26の制御により駆動、駆動の停止が制御されるものであり、真空ポンプ46の吸気口8402がバキュームチャック44の接続口4406に接続されており、真空ポンプ46が作動することで吸引面4402が構造物外面2Bに吸着する。なお、処理部26の制御は、管理端末14によってなされる。
バキュームチャック44は、真空ポンプ46の動作により吸引面4402が構造物外面2Bに吸着した状態で回転翼機12と構造物外面2Bとの距離が予め定められた寸法となるように、ブラケットを介して回転翼機12に取り付けられている。
そして、真空ポンプ46の駆動が停止された状態で構造物2の近傍において回転翼機12の移動がなされ、所望の位置で真空ポンプ46を駆動することで回転翼機12がバキュームチャック44を介して構造物外面2Bに固定されることになる。
【0042】
第4の実施の形態によれば、回転翼機12に、構造物外面2Bに対して吸着することで構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持し、構造物外面2Bに対する吸着を解除することで回転翼機12の移動を許容する吸着手段42を設けた。そのため、カメラ18によって撮影される構造物外面2Bの画像の大きさの変化が少なく、したがって、撮影した画像上における画素当たりの寸法のばらつきを抑制できるため、検出位置特定手段32Bによって検出位置bを精度良く得る上で有利となる。
また、第4の実施の形態によれば、吸着手段42により構造物外面2Bと回転翼機12との距離を一定に保持できるため、構造物外面2Bに対する回転翼機12の位置および姿勢を安定した状態で構造物外面2Bを叩打することができ、打音の検出を安定して行え、構造物外面2Bの不良の有無の判定を正確に行なう上で有利となる。
なお、吸着手段42は、構造物外面2Bに吸着できればよいのであり、例えば、構造物外面2Bが鉄などのように磁石に吸引される材料で構成されている場合は、吸着手段42を電磁石および電磁石に電流を供給する駆動回路によって構成してもよい。
【0043】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について
図10を参照して説明する。
第1から第4の実施の形態では、移動手段が回転翼機12である場合について説明したが、第5の実施の形態では、移動手段が構造物2に設けられたクレーン48である点が第1から第4の実施の形態と異なっている。
クレーン48は、構造物2であるビルの屋上に設けられている。
クレーン48は、屋上に設置される架台4802と、架台4802に対して旋回可能に設けられた旋回部4804と、旋回部4804に立設され揺動可能に支持されたブーム4806と、ブーム4806の先端からワイヤ4808を介して吊り下げられた筐体4810と、旋回部4804に設けられワイヤ4808の巻き上げ、繰り出しを行なう不図示のウインチなどを含んで構成されている。
そして、筐体4810には、
図1に示す回転翼機12と同様に、カメラ18、打撃部20、検出部22、測位部24、処理部26、通信部28が搭載されている。
また、管理端末14の構成は
図1と同様である。
このような構成によれば、クレーン48の旋回部4804の旋回、ブーム4806の揺動、ウインチによるワイヤ4808の巻き上げ、繰り出しにより筐体4810が構造物外面2Bと間隔をおいて構造物外面2Bに沿って移動される。
したがって、第1の実施の形態と同様に、カメラ18による構造物外面2Bの撮影、打撃部20および検出部22による構造物外面部2Aの状態の検出がなされ、構造物外面2Bの画像および構造物外面部2Aの検出結果が通信部28を介して管理端末14に送信される。
そして、管理端末14では、第1の実施の形態と同様に、評価手段32Aによる評価結果と前記検出位置特定手段32Bで特定された検出位置bとを関連付けた評価情報の生成がなされ、構造物外面2Bの画像と評価情報とを対応付けた報知がなされる。
このような第5の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、移動手段としてクレーン48を用いるため、構造物2の周囲にはワイヤ4808で吊り下げられた筐体4810を移動し得る空間が確保できれば足り、構造物2の周囲に回転翼機12の飛行が可能な広いスペースを確保できないような場合に有利となる。
また、第5の実施の形態に、第2から第4の実施の形態を適用することも可能である。
なお、クレーン48は、ビルの屋上に設置される形態に限定されず、構造物2の大きさや構造に対応して移動式クレーンやケーブルクレーンなど従来公知の様々な構造のクレーン48が使用可能である。
構造物2が中層以下のビルであれば、移動式クレーン48をビルの近傍の地盤上に設置し、ブーム4806の先端からワイヤ4808を介して筐体4810を吊り下げるようにすればよい。
また、構造物2がダムの堤体などのように大きなものであった場合には、堤体の両端に架け渡されたケーブルクレーンを用いることができる。この場合には、ケーブルクレーンを構成するケーブルに沿って移動するトロリからワイヤを介して筐体を吊り下げるようにすればよい。
【0044】
なお、実施の形態では、検出手段が、打撃部20および検出部22、カメラ18、赤外線温度センサ40である場合について説明したが、検出手段は、構造物外面部2Aの状態を検出できればよいのであり、従来公知の様々なセンサが使用可能である。
例えば、構造物外面部2Aの浮きや凹凸を検出する場合には、構造物外面2Bの形状を測定可能な3Dスキャナを用いることができる。
また、実施の形態では、タイルなどの外装材42の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイルやモルタルなどの外装材4が設けられていない場合には、構造物外面に加え、この構造物外面近くの内部の状態を評価する場合、また、タイルやモルタルなどの外装材4が設けられている場合には、外装材4の表面に加え、外装材4の表面の内側の外装材4部分や外装材4の内側の構造物躯体の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。