(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両に設けられるシートトラックレールは、フロア側に設けられるロアレールと該ロアレールに移動可能に係合し、シートが設けられるアッパレールとからなっている。
シートトラックレールの一例を
図9を用いて説明する。
図9は従来のシートトラックレールの断面図である。図において、シートトラックレール1は、フロア側に設けられるロアレール10と、ロアレール10に移動可能に係合し、シートが設けられるアッパレール40とからなっている。
【0003】
最初に、ロアレール10を説明する。
ロアレール10は、フロアと対向する底部11を有している。
この底部11の一方の端部には、上方に向かって折曲された第1上昇フランジ13が形成され、底部11の他方の端部には、上方に向かって折曲され、第1上昇フランジ13と対向する第2上昇フランジ15が形成されている。
【0004】
第1上昇フランジ13の上端部には、第2上昇フランジ15方向に略水平方向に折曲され、底部11と対向する第1横フランジ17が形成され、第2上昇フランジ15の上端部には、第1上昇フランジ13方向に略水平方向に折曲され、底部11と対向する第2横フランジ19が形成されている。
【0005】
尚、第1横フランジ17と第2横フランジ19との間には空間が発生するように、両者は形成されている。
第1横フランジ17の第2上昇フランジ15側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲された第1下降フランジ21が形成され、第2横フランジ19の第1上昇フランジ13側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲され、第1下降フランジ21と空間を介して対向する第2下降フランジ23が形成されている。
【0006】
第1下降フランジ21の下端部には、第1上昇フランジ13方向に略水平方向に折曲された第1水平フランジ25が形成され、第2下降フランジ23の下端部には、第2上昇フランジ15方向に略水平方向に折曲された第2水平フランジ27が形成されている。
次に、ロアレール10とアッパレール40との間に配置され、ロアレール10に対するアッパレール40の移動をスムーズにするボールを説明する。
【0007】
ロアレール10の底部11と第1上昇フランジ13との間の角部には、第1下ボール(鋼球)31が配置される。ロアレール10の底部11と第2上昇フランジ15との間の角部には、第2下ボール(鋼球)33が配置される。
また、ロアレール10の第1上昇フランジ13と第1横フランジ17との間の角部には、第1上ボール35が配置される。ロアレール10の第2上昇フランジ15と第2横フランジ19との間の角部には、第2上ボール37が配置される。
【0008】
次に、アッパレール40を説明する。
アッパレール40は、ロアレール10の第1下降フランジ21、第2下降フランジ23間の空間の上方に位置し、ロアレール10の底部と対向する天部41を有している。
この天部41の一方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール10の第1下降フランジ21と空間を介して対向する第1下降フランジ43が形成され、天部41の他方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール10の第2下降フランジ23と空間を介して対向する第2下降フランジ45が形成されている。
【0009】
第1下降フランジ43の下部には、第1下ボール31に当接可能な円筒面状の第1下ボール受け部47が形成され、第2下降フランジ45の下部には、第2下ボール33に当接可能な円筒面状の第2下ボール受け部49が形成されている。
第1下ボール受け部47の上端部には、ロアレール10の第1上昇フランジ13と対向する第1上昇フランジ51が形成され、第2下ボール受け部49の上端部には、ロアレール10の第2上昇フランジ15と対向する第2上昇フランジ53が形成されている。
【0010】
第1上昇フランジ51の上端部には、第1上ボール35に当接可能な円筒面状の第1上ボール受け部55が形成され、第1上昇フランジ53の上端部には、第2上ボール37に当接可能な円筒面状の第2上ボール受け部57が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
車両が衝突した場合、シートトラックレールにも、衝突による衝撃力が作用する。
特に、ベルトアンカがアッパレール側に取り付けられている場合、アッパレールには、上に持ち上げる力、即ち、アッパレールをロアレールから剥離させようとする力(剥離荷重)が作用する。
【0013】
アッパレールとロアレールとの剥離強度が高ければ、シートトラックレールを薄い材料で作ることができ、軽量化、コスト低減に寄与する。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、高剥離強度を有するシートトラックレールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したシートトラックレールは、
フロア側に設けられるロアレールと該ロアレールに移動可能に係合し、シートが設けられるアッパレールとからなるシートトラックレールにおいて、
前記ロアレールは、
フロアと対向する底部と、
該底部の一方の端部から上方に向かって折曲された第1上昇フランジと、
前記底部の他方の端部から、上方に向かって折曲され、前記第1上昇フランジと対向する第2上昇フランジと、
前記第1上昇フランジの上端部から前記第2上昇フランジ方向に折曲され、底部と対向する第1横フランジと、
前記第2上昇フランジの上端部から前記第1上昇フランジ方向に折曲され、底部と対向し、前記第1横フランジとの間に空間を有する第2横フランジと、
前記第1横フランジに連設された第1引っかけ部と、
前記第2横フランジに連設された第2引っかけ部と、
を有し、
前記第1引っかけ部、前記第2引っかけ部のうち少なくともどちらか一方の引っかけ部は、
前記第1横フランジ、前記第2横フランジのうちのどちらか一方の横フランジの先端部から、下方に向かって折曲された下降フランジと、
該下降フランジの下端部から、前記上昇フランジ方向に斜め下方に折曲され、前記上昇フランジとの間隔が前記底部に行くに従って漸次的に狭くなるように設定された外向き傾斜フランジと、
を有し、
前記アッパレールは、
前記ロアレールの底部と対向する天部と、
該天部の一方の端部から下方に向かって折曲され、前記ロアレールの第1引っかけ部と空間を介して対向する第1下降フランジと、
前記天部の他方の端部から下方に向かって折曲され、前記ロアレールの第2引っかけ部と空間を介して対向する第2下降フランジと、
前記第1下降フランジの下部に形成された第1下ボール受け部と、
前記第2下降フランジの下部に形成された第2下ボール受け部と、
前記
第1下ボール受け部の上端部に形成され、前記ロアレールの第1上昇フランジと対向する第1上昇フランジと、
前記
第2下ボール受け部の上端部に形成され、前記ロアレールの第2上昇フランジと対向する第2上昇フランジと、
を有し、
前記アッパレールの第1上昇フランジ、前記アッパレールの第2上昇フランジのうち少なくともどちらか一方の上昇フランジには、
前記ロアレールの前記上昇フランジ、前記横フランジ、前記下降フランジ、前記外向き傾斜フランジで囲まれた空間に延出した
上ボール受け部が形成され、
前記ロアレールの少なくとも後端部に、
前記外向き傾斜フランジを有する
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシートトラックレールによれば、アッパレールに大きな剥離荷重が作用し、アッパレールの上ボール受け部が、ロアレールの第1横フランジ、第2横フランジのうちのどちらか一方の横フランジを押すと、ロアレール、アッパレールが変形を始める。
ロアレールは、上昇フランジと、アッパレールの上ボール受け部によって押された方の横フランジとの折り曲げ部が伸ばされる方向に変形する。
【0017】
そして、ロアレールの上昇フランジと横フランジとの折り曲げ部が伸ばされる方向に変形していくと、アッパレールの上ボール受け部は、ロアレールの横フランジから、ロアレールの下降フランジに接触し、さらには、ロアレールの外向き傾斜フランジに接触する。
ロアレールの外向き傾斜フランジが、アッパレールの上ボール受け部に干渉し、アッパレールの上ボール受け部の移動を抑制するために、剥離強度が上がる。
【0018】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図面を用いて説明する。
図1は第1実施形態のシートトラックレールの断面を示す図で
図2の切断線I-Iでの断面図、
図2は本実施形態のシートトラックレールが用いられたシートの側面図である。
【0021】
最初に
図2を用いてシートの説明を行う。
図において、シート103は、着座者の臀部を支持するシートクッション105と、着座者の背部を支持するシートバック107とからなっている。
シートトラックレール101は、フロアF側に設けられるロアレール110と、ロアレール110に移動可能に係合し、シート103が設けられるアッパレール140とからなっている。そして、アッパレール140の後部には、ベルトアンカ109が設けられている。
【0022】
ここで、
図1を用いてシートトラックレール101の説明を行う。
最初に、ロアレール110を説明する。本実施形態のロアレール110の断面形状は、長手方向の全域にわたって、同一断面形状である。
ロアレール110は、フロアFと対向する底部111を有している。
【0023】
この底部111の一方の端部には、上方に向かって折曲された第1上昇フランジ113が形成され、底部111の他方の端部には、上方に向かって折曲され、第1上昇フランジ113と対向する第2上昇フランジ115が形成されている。
第1上昇フランジ113の上端部には、第2上昇フランジ115方向に略水平方向に折曲され、底部111と対向する第1横フランジ117が形成され、第2上昇フランジ115の上端部には、第1上昇フランジ113方向に略水平方向に折曲され、底部111と対向する第2横フランジ119が形成されている。
【0024】
尚、第1横フランジ117と第2横フランジ119との間には空間が発生するように、両者は形成されている。
本実施形態では、第1横フランジ117には、第1引っかけ部が連設され、第2横フランジ119には、第2引っかけ部が連設されている。
【0025】
第1横フランジ117の第2上昇フランジ115側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲された第1下降フランジ121が形成され、第2横フランジ119の第1上昇フランジ113側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲され、第1下降フランジ121と空間を介して対向する第2下降フランジ123が形成されている。
【0026】
第1下降フランジ121の下端部には、第1上昇フランジ113方向に斜め下方に折曲され、第1上昇フランジ113との間隔が底部111に行くに従って漸次的に狭くなるように設定された第1外向き傾斜フランジ125が形成され、第2下降フランジ123の下端部には、第2上昇フランジ115方向に斜め下方に折曲され、第2上昇フランジ115との間隔が底部111に行くに従って漸次的に狭くなるように設定された第2外向き傾斜フランジ127とが形成されている。
【0027】
そして、第1下降フランジ121と第1外向き傾斜フランジ125とで第1引っかけ部が構成され、第2下降フランジ123と第2外向き傾斜フランジ127とで第1引っかけ部が構成されている。
次に、ロアレール110とアッパレール140との間に配置され、ロアレール110に対するアッパレール140の移動をスムーズにするボールを説明する。
【0028】
ロアレール110の底部111と第1上昇フランジ113との間の角部には、第1下ボール(鋼球)131が配置される。ロアレール110の底部111と第2上昇フランジ115との間の角部には、第2下ボール(鋼球)133が配置される。
また、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117との間の角部には、第1上ボール135が配置される。ロアレール110の第2上昇フランジ115と第2横フランジ119との間の角部には、第2上ボール137が配置される。
【0029】
次に、アッパレール140を説明する。本実施形態のアッパレール140の断面形状は、長手方向の全域にわたって、同一断面形状である。
アッパレール140は、ロアレール110の第1下降フランジ121、第2下降フランジ123間の空間の上方に位置し、ロアレール110の底部と対向する天部141を有している。
【0030】
この天部141の一方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール110の第1下降フランジ121と空間を介して対向する第1下降フランジ143が形成され、天部141の他方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール110の第2下降フランジ123と空間を介して対向する第2下降フランジ145が形成されている。
【0031】
第1下降フランジ143の下部には、第1下ボール131に当接可能な円筒面状の第1下ボール受け部147が形成され、第2下降フランジ145の下部には、第2下ボール133に当接可能な円筒面状の第2下ボール受け部149が形成されている。
第1下ボール受け部147の上端部には、ロアレール110の第1上昇フランジ113と対向する第1上昇フランジ151が形成され、第2下ボール受け部149の上端部には、ロアレール110の第2上昇フランジ115と対向する第2上昇フランジ153が形成されている。
【0032】
第1上昇フランジ151の上端部には、第1上ボール135に当接可能な円筒面状の第1上ボール受け部155が形成され、第2上昇フランジ153の上端部には、第2上ボール137に当接可能な円筒面状の第2上ボール受け部157が形成されている。
更に、本実施形態では、以下のような構成となっている。
【0033】
(1)
図1に示すように、第1外向き傾斜フランジ125の折り曲げ位置S1は、第1上ボール受け部155の上下方向範囲h1内に位置し、同様に、第2外向き傾斜フランジ127の折り曲げ位置S2は、第2上ボール受け部157の上下方向範囲h2内に位置している。
【0034】
更に、第1外向き傾斜フランジ125の折り曲げ位置S1は、第1上ボール135の中心(O1)より下に位置し、第2外向き傾斜フランジ127の折り曲げ位置S2は、第2上ボール137の中心(O2)より下に位置している。
尚、「第1外向き傾斜フランジ125の折り曲げ位置」とは、第1下降フランジ121と第1外向き傾斜フランジ125との境界をいい、「第2外向き傾斜フランジ127の折り曲げ位置」とは、第2下降フランジ123と第2外向き傾斜フランジ127との境界をいう。
【0035】
(2) シートトラックレール101の幅方向において、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125の先端は、アッパレール140の第1上ボール受け部155の先端より外側に位置し、ロアレール110の第2外向き傾斜フランジ127の先端は、アッパレール140の第2上ボール受け部157の先端より外側に位置している。
【0036】
(3) アッパレール140、ロアレール110の長手方向と直交する断面を示す
図1に示すように、第1上ボール受け部147の上端と下端とを結ぶ平面と、第1外向き傾斜フランジ125とは沿っており、第2上ボール受け部157の上端と下端とを結ぶ平面と第2外向き傾斜フランジ127とは沿っている。
【0037】
ここで、上記構成のシートトラックレールのアッパレールに大きな剥離荷重が作用した場合を
図3、
図4を用いて説明する。
図3、
図4は
図1に示すシートトラックレールのアッパレールに剥離荷重が作用した場合の変形を説明する図である。
(剥離荷重の作用始め
図3(a)→(b))
シートトラックレール101のアッパレール140に剥離荷重が作用すると、アッパレール140が上方に持ち上げられ、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2ボール受け部157の上端部がロアレール110の第1横フランジ117、第2横フランジ119に接触する。
【0038】
この時、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117の間の折り曲げ部(B1)、第2上昇フランジ115と第2横フランジ119の間の折り曲げ部(B2)が伸ばされる力が発生する。また、アッパレール140には第1下降フランジ143、第2下降フランジ145がシートトラックレール中心側に曲がろうとする力が発生し、さらに、第1下降フランジ143と第1下ボール受け部147と間の折り曲げ部(B3)、第2下降フランジ145と第2下ボール受け部149と間の折り曲げ部(B4)が伸ばされる力が発生する。
(初期変形
図3(c))
更に、アッパレール140が持ち上がると、図に示すように、アッパレール140の第1上昇フランジ151、第2上昇フランジ153がロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125の先端、第2外向き傾斜フランジ127の先端に接触する。即ち、アッパレール140がロアレール110に接触する点が増加し、アッパレール140からロアレール110に作用する剥離荷重も分散される。
【0039】
このため、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117の間の折り曲げ部(B1)、第2上昇フランジ115と第2横フランジ119の間の折り曲げ部(B2)が伸ばされる力が減少し、アッパレール140の第1下降フランジ143と第1下ボール受け部147との間の折り曲げ部(B3)が伸ばされる力、アッパレール140の第2下降フランジ145と第2下ボール受け部149との間の折り曲げ部(B4)が伸ばされる力が減少し、ロアレール110,アッパレール140の変形が抑制された状態で、剥離荷重は上昇する。
【0040】
しかし、剥離荷重が更に大きくなると、変形が抑制されていたロアレール110,アッパレール140が変形し始める。具体的には、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117の間の折り曲げ部(B1)、第2上昇フランジ115と第2横フランジ119の間の折り曲げ部(B2)が伸ばされる。また、アッパレール140の第1下降フランジ143と第1下ボール受け部147との間の折り曲げ部(B3)、第2下降フランジ145と第2下ボール受け部149との間の折り曲げ部(B4)が伸ばされる。
(中期変形
図4(a)→(b))
更に、アッパレール140が持ち上がると、
図4(a)に示すように、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157は、ロアレール110の第1下降フランジ121、第2下降フランジ123に接触する。
【0041】
更に、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117の間の折り曲げ部(B1)、第2上昇フランジ115と第2横フランジ119の間の折り曲げ部(B2)が伸ばされる。アッパレール140の第1下降フランジ143と第1下ボール受け部147との間の折り曲げ部(B3)、第2下降フランジ145と第2下ボール受け部149との間の折り曲げ部(B4)が伸ばされる。
【0042】
そして、
図4(b)に示すように、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157が、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127にも接触する。
アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157のロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127への接触により、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157のロアレール110への接触点の移動が抑制され、ロアレール110が幅方向で外側に開く変形が抑制される。その状態で、ロアレール110の第1上昇フランジ113と第1横フランジ117の間の折り曲げ部(B1)、第2上昇フランジ115と第2横フランジ119の間の折り曲げ部(B2)が伸ばされる。アッパレール140の第1下降フランジ143と第1下ボール受け部147との間の折り曲げ部(B3)、第2下降フランジ145と第2下ボール受け部149との間の折り曲げ部(B4)が伸ばされる。
【0043】
この変形は、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157が接触するロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127がフロアに対して略平行になるまで行われる。
そして、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157がロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127より離反し、アッパレール140はロアレール110より完全に剥離する。
【0044】
即ち、ロアレール110ルの第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127が、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157に干渉し、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157の移動を抑制するために、剥離強度が上がる。
【0045】
ここで、
図5を用いて、
図9に示すシートトラックレールのアッパレールに剥離荷重が作用した場合の変形を説明する。
図5(a)、(b)に示す状態の折り曲げ部B1’、B2’、B3’、B4’の折り曲げ状態は、
図4(a)、(b)に示す折り曲げ部B1、B2、B3、B4の折り曲げ状態に相当する。
【0046】
図5(a)において、アッパレール40に剥離荷重が作用し、アッパレール40が上方へ持ち上げられると、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57は、ロアレール10の第1下降フランジ21、第2下降フランジ23に接触する。
更に、アッパレール40に剥離荷重を作用させると、
図5(b)に示すように、ロアレール10のロアレール10の第1上昇フランジ13と第1横フランジ17の間の折り曲げ部(B1’)、第2上昇フランジ15と第2横フランジ19の間の折り曲げ部(B2’)が伸ばされる。アッパレール40の第1下降フランジ43と第1下ボール受け部47との間の折り曲げ部(B3’)、第2下降フランジ45と第2下ボール受け部49との間の折り曲げ部(B4’)が伸ばされる。
【0047】
従来の
図9に示す構成のシートトラックレール1のロアレール10の第1下降フランジ21、第2下降フランジ23は、本実施形態のシートトラックレール101のロアレール110の第1下降フランジ121、第2下降フランジ123より長い。よって、
図4(b)に相当する
図5(b)の状態になっても、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57は、第1水平フランジ25,第2水平フランジ27に接触しない。よって、
図5(b)の状態になっても、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57のロアレール10への接触点の移動の抑制がなされない。このため、
図5(b)→
図5(c)に示すように、ロアレール10は幅方向で外側に開きながら、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57は、アッパレール40の第1下降フランジ43、第2下降フランジ45に接触移動する。
【0048】
そして、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57のロアレール10への接触点の移動の抑制がない状態で、アッパレール140はロアレール110より完全に剥離する。
本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0049】
(1) ロアレール110に、第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127を設けたことにより、アッパレール40に剥離荷重を作用させると、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157とロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127とが接触し、接触部の移動が抑制され、剥離強度が上がる。
【0050】
(2)
図1に示すように、第1外向き傾斜フランジ125の折り曲げ位置S1は、第1上ボール受け部155の上下方向範囲h1内に位置し、同様に、第2外向き傾斜フランジ127の折り曲げ位置S2は、第2上ボール受け部157の上下方向範囲h2内に位置している。
【0051】
よって、剥離の早い段階で第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127がアッパレール40に接触するので、早い段階で変形を抑制することができる。
(3)
図1に示すように、本実施形態では、(2)に示す構造に加え、第1外向き傾斜フランジ125の折り曲げ位置S1は、第1上ボール135の中心(O1)より下に位置し、第2外向き傾斜フランジ127の折り曲げ位置S2は、第2上ボール137の中心(O2)より下に位置していることにより、アッパレール40の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157がロアレール110の第1下降フランジ121、第2下降フランジ123に確実に接触することができ、変形を抑制することができる。
【0052】
図6を用いて説明する。
図6(a)では、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125’の折り曲げ位置S1’は、第1上ボール135の中心(O1)より上に位置し、第2外向き傾斜フランジ127’の折り曲げ位置S2’は、第2上ボール137の中心(O2)より上に位置している。即ち、第1下降フランジ121’、第2下降フランジ123’が実施形態の第1下降フランジ121、第2下降フランジ123より短く、第1外向き傾斜フランジ125’、第2外向き傾斜フランジ127’が実施形態の第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127より長くなっている。
【0053】
図6(b)、(c)は、
図6(a)に示すシートトラックレールのアッパレールに剥離荷重が作用した場合の変形を説明する図で、
図4(a)、(b)に示す状態に相当する。
図4(a)と
図6(b)との相違点は、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157のロアレール110への接触する点S1’、S2’の位置である。 接触する点S1’、S2’が、実施形態の接触する点S1、S2(
図4(a)参照)よりロアレール110の幅方向において内側となり、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157は、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125’、第2外向き傾斜フランジ127’に接触する。
【0054】
よって、アッパレール140に剥離荷重が作用し、アッパレール140が上に持ち上がることにより、ロアレール110が幅方向において外側に開きやすくなる。
更に、接触点S1’、S2’において、アッパレール140の第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157が、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125’、第2外向き傾斜フランジ127’上の平面に接触するため、アッパレール140の第1上ボール受け部155’、第2上ボール受け部157’の移動を抑制せず、実施形態に比べ剥離強度は上がらない。
【0055】
従って、第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157の上下範囲内に第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127を有することにより、接点の移動を最小限にすることができる。
そして、
図6(c)に示すように、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125’、第2外向き傾斜フランジ127’がフロアに対して平行になるまで変形すると、アッパレール140はロアレール110より完全に剥離する。
【0056】
尚、
図9に示すように、ロアレール10の第1外向きフランジ25の折り曲げ位置、第2外向きフランジ27の折り曲げ位置が、アッパレール40の第1上ボール受け部55、第2ボール受け部57より下に位置する場合、第1下降フランジ21、第2下降フランジ23と、第1上ボール受け部55、第2上ボール受け部57とのの隙間が大きく開いてしまい、ロアレール10の第1下降フランジ21、第2下降フランジ23とアッパレール40との接点、及びロアレール10の第1下降フランジ21、第2下降フランジ23とアッパレール40との接点がずれてしまい、ロアレール10の伸ばされるコーナーと接点との距離が伸び、変形を増長させる。
【0057】
(4)
図1に示すように、シートトラックレール101の幅方向(
図1において矢印W方向)において、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125の先端は、アッパレール140の第1上ボール受け部155(第1外向き傾斜フランジ125の先端と係合するアッパレール140の部位)の先端より外側に位置し、ロアレール110の第2外向き傾斜フランジ127の先端は、アッパレール140の第2上ボール受け部157(第2外向き傾斜フランジ127の先端と係合するアッパレール140の部位)の先端より外側に位置している。
【0058】
よって、初期変形の早期(
図3(c))に第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127がアッパレール140に接触するために変形が抑制され、剥離強度が上がる。
(5) アッパレール140、ロアレール110の長手方向と直交する断面を示す
図1に示すように、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125と、この第1外向きフランジ125の先端と係合する部位であるアッパレール140の第1上ボール受け部155とは対向している。また、ロアレール110の第2外向き傾斜フランジ127と、この第2外向き傾斜フランジ127との先端と係合する部位であるアッパレール140の第2上ボール受け部157とは対向している。
【0059】
尚、「外向き傾斜フランジ125,127と、上ボール受け部155,157とは対向している。」とは、アッパレール140に剥離荷重が作用し、アッパレール140が上方に移動した際に、外向き傾斜フランジ125,127と、上ボール受け部155,157とが面、少なくとも点で当接する関係にあることをいう。
【0060】
また、ロアレール110の第1外向き傾斜フランジ125と、この第1外向きフランジ125の先端と係合する部位であるアッパレール140の第1上ボール受け部155とは対向している。
よって、中期変形時(
図4(a)→(b))に、第1上ボール受け部155、第2上ボール受け部157と、第1外向き傾斜フランジ125、第2外向き傾斜フランジ127とが接触することにより、接点の移動が抑制され、剥離強度が上がる。
【0061】
ここで、
図7を用いて、本実施形態を示す
図1、従来例を示す
図9に示す断面形状のシートスライドレールのアッパレールに剥離荷重を加えた場合の引張荷重(応力)とアッパレールの引っ張り量(アッパレールの上下方向の歪み量)との関係を説明する。
図において、実線が
図1に示す断面形状のシートスライドレール、破線が
図9に示す断面形状のシートスライドレールである。また、縦軸が引張荷重、横軸が引張ストロークを示す。
【0062】
弾性域では両者は同じような特性を有するが、塑性域では異なる特性を示し、
図1に示す本実施形態のほうが、
図9に示す従来例より、大きな引張加重に耐えることが分かる。
よって、本実施形態のほうが、従来例より剥離強度が高いことがわかる。
尚、本実施形態のシートトラックレール101のロアレール110、アッパレール140の断面形状は、長手方向の全域にわたって、同一断面形状とした。しかし、アッパレール140を介してロアレール110に入力される剥離力は、ベルトアンカ109が設けられる
アッパレール140の後部であるので、ロアレール110に関しては、後部のみに
図1に示す断面形状としてもよい。この場合でも、ベルトアンカ109からの剥離荷重を抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1横フランジ117には第1引っかけ部を、第2横フランジ119には第2引っかけ部の2つの引っかけ部をそれぞれ設けたが、どちらか一方のひっかっけ部だけでも、剥離強度を向上させることができる。
<第2実施形態例>
図8に示す断面形状のシートトラックでも、本発明は適用できる。図において、ロアレール210は、フロアFと対向する底部211を有している。
【0064】
この底部211の一方の端部には、斜め上方に向かって折曲された第1外向き傾斜フランジ201が形成され、底部211の他方の端部には、斜め上方に向かって折曲された第2外向き傾斜フランジ203が形成されている。
第1外向き傾斜フランジ201、第2外向き傾斜フランジ203は、底部211から離れるに従って、フロアとの間隔が漸次的に広くなるように設定されている。
【0065】
第1外向き傾斜フランジ201の上端には、フロアに対して略垂直に上方に向かって折曲された第1上昇フランジ213が形成され、第2外向き傾斜フランジ203の上端には、フロアに対して略垂直に上方に向かって折曲された第2上昇フランジ215が形成されている。
【0066】
第1上昇フランジ213の上端部には、第2上昇フランジ215方向に略水平方向に折曲され、底部111と対向する第1横フランジ217が形成され、第2上昇フランジ215の上端部には、第1上昇フランジ213方向に略水平方向に折曲され、底部211と対向する第2横フランジ219が形成されている。
【0067】
尚、第1横フランジ217と第2横フランジ219との間には空間が発生するように、両者は形成されている。
第1横フランジ217の第2上昇フランジ215側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲された第1下降フランジ221が形成され、第2横フランジ219の第1上昇フランジ213側の端部には、下方に向かって略垂直方向に折曲され、第1下降フランジ221と空間を介して対向する第2下降フランジ223が形成されている。
【0068】
第1下降フランジ221の下端部には、第1上昇フランジ213方向に斜め下方に折曲され、第1上昇フランジ213との間隔が底部211に行くに従って漸次的に狭くなるように設定された第1外向き傾斜フランジ225が形成され、第2下降フランジ223の下端部には、第2上昇フランジ215方向に斜め下方に折曲され、第2上昇フランジ215との間隔が底部211に行くに従って漸次的に狭くなるように設定された第2外向き傾斜フランジ227とが形成されている。
【0069】
次に、ロアレール210とアッパレール240との間に配置され、ロアレール210に対するアッパレール240の移動をスムーズにするボールを説明する。
ロアレール210の底部211と第1外向き傾斜フランジ201との間の角部には、第1下ボール(鋼球)231が配置される。ロアレール110の底部111と第2上外向き傾斜フランジ203との間の角部には、第2下ボール(鋼球)233が配置される。
【0070】
また、ロアレール210の第1上昇フランジ213と第1横フランジ217との間の角部には、第1上ボール235が配置される。ロアレール210の第2上昇フランジ215と第2横フランジ219との間の角部には、第2上ボール237が配置される。
次に、アッパレール240を説明する。
【0071】
アッパレール240は、ロアレール210の第1下降フランジ221、第2下降フランジ223間の空間の上方に位置し、ロアレール210の底部と対向する天部241を有している。
この天部241の一方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール210の第1下降フランジ221と空間を介して対向する第1下降フランジ243が形成され、天部241の他方の端部には、下方に向かって折曲され、ロアレール210の第2下降フランジ223と空間を介して対向する第2下降フランジ245が形成されている。
【0072】
第1下降フランジ243の下部には、第1下ボール231に当接可能な円筒面状の第1下ボール受け部247が形成され、第2下降フランジ245の下部には、第2下ボール233に当接可能な円筒面状の第2下ボール受け部249が形成されている。
第1下ボール受け部247の上端部には、ロアレール210の第1上昇フランジ213との間隔が上に行くに従って漸次的に広くなるように設定された第1内向き傾斜フランジ251が形成され、第2下ボール受け部249の上端部には、ロアレール210の第2上昇フランジ215との間隔が上に行くに従って漸次的に広くなるように設定された第2内向き傾斜フランジ253が形成されている。
【0073】
第1内向き傾斜フランジ251の上端部(先端)には、第1上ボール235に当接可能な円筒面状の第1上ボール受け部255が形成され、
第2内向き傾斜フランジ253の上端部(先端)には、第2上ボール237に当接可能な円筒面状の第2上ボール受け部257が形成されている。
【0074】
更に、本実施形態では、以下のような構成となっている。
(1) 第1実施形態と同様に、第1外向き傾斜フランジ225の折り曲げ位置は、第1上ボール235の中心(O1’)より下に位置し、第2外向き傾斜フランジ227の折り曲げ位置は、第2上ボール237の中心(O2’)より下に位置している。
【0075】
より良い形態としては、第1外向き傾斜フランジ225の折り曲げ位置S1’は、第1上ボール受け部255の上下方向範囲h1’内に位置し、同様に、第2外向き傾斜フランジ227の折り曲げ位置S2’は、第2上ボール受け部257の上下方向範囲h2内に位置することが好ましい。
【0076】
(2)
図8に示すように、シートトラックレールの幅方向(
図8において矢印W方向)において、ロアレール210の第1外向き傾斜フランジ225の先端は、第1外向き傾斜フランジ225の上端部と係合するアッパレール240の部位(第1内向きフランジ251)の先端より外側に位置し、ロアレール210の第2外向き傾斜フランジ227の先端は、第2外向きフランジ227の上端部と係合するアッパレール240の部位(第2外向き傾斜フランジ253)の先端より外側に位置している。
【0077】
(3) ロアレール210の第1外向き傾斜フランジ225と、この第1外向きフランジ225の先端と係合する部位であるアッパレール240の第1内向き傾斜フランジ251とは対向している。また、ロアレール210の第2外向き傾斜フランジ227と、この第2外向き傾斜フランジ227との先端と係合する部位であるアッパレール240の第2内向き傾斜フランジ253とは対向している。
【0078】
尚、「外向き傾斜フランジ225,227と、内向き傾斜フランジ251,253とは対向している。」とは、アッパレール240に剥離荷重が作用し、アッパレール240が上方に移動した際に、外向き傾斜フランジ225,227と、内向き傾斜フランジ251,253とが面、少なくとも点で当接する関係にあることをいう。
【0079】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に剥離強度を向上させることができる。