【文献】
Catalytic reaction of 1,3-butanediol over solid acids,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2006年 8月18日,Volume 256, Issues1-2,p106-112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄工程後に得られるジエン化合物を含む混合物を蒸留し、水及び低沸点不純物を塔頂液、ジエン化合物を塔底液として分離する第1蒸留工程、及び前記第1蒸留工程の塔底液を蒸留し、ジエン化合物を塔頂液、高沸点不純物を塔底液として分離する第2蒸留工程をさらに含む、請求項1に記載のジエン化合物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエンモノマーは、合成ゴム、プラスチックなどの樹脂原料としての工業的価値が高く、その効率的な製造法が求められている。
【0003】
従来、ジエンモノマーはナフサの熱分解炉(クラッカー)の熱分解物を蒸留分離し、その一留分として得られている。しかしながら、この留分精製による方法では、ジエンモノマーを選択的に得たい場合であっても他のモノマー留分(エチレン、プロピレンなど)を含めた採算性を考慮せねばならず、工業的な製造の自由度が低かった。
【0004】
そこで、入手の容易なエチレン又は付加価値の低い留分を原料としたジエンモノマーの製造方法が検討されている。例えば炭素数4以上のモノオレフィンをモリブデン−ビスマス系触媒の存在下で酸化脱水素処理を行うことによるジエンモノマーの製造方法が特許文献1及び特許文献2に開示されている。しかしこの方法では、酸素と可燃性ガスの混在による爆発の危険性を回避するため、大量の不活性ガスで反応系を希釈する必要がある。加えて、未反応モノオレフィンを回収するため、エネルギーを消費する精製設備を追加する必要がある。
【0005】
特許文献3及び特許文献4にはジエンモノマーを精製する方法が開示されている。しかし、これらの方法は主にモノオレフィンの脱水素反応により生成するジエンモノマーの使用を前提としている。従来のナフサの熱分解又は脱水素反応により得られるジエンモノマーの不純物は比較的沸点の近い多種の化合物を含む。例えば、1,3−ブタジエンを目的物とすると、ナフサの熱分解又は脱水素反応の不純物は1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、イソブテン等を含む場合がある。これらの化合物は何れも1,3−ブタジエンとの沸点が近いため、混合物から蒸留分離により1,3−ブタジエンを精製することは極めて困難である。したがって、これらの混合物から例えば1,3−ブタンジエンを分離するために、例えば特許文献5に示すように、ジエンを特異的に溶解する溶剤を用いた抽出又は抽出蒸留が広く用いられている。
【0006】
ジエン化合物の別の製造方法として、脱水触媒の存在下、不飽和アルコールの脱水反応によるものがある。この方法で生成するジエンモノマーは、原料中にモノオレフィンを含まないことから、反応後の流体に含まれるモノオレフィン濃度を低く抑えることができるため、抽出蒸留が不要となることが期待される。しかし、このような脱水反応により生成するジエンモノマーの精製方法は現在確立していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
脱水触媒の存在下、不飽和アルコールの脱水反応により得られる、ジエン化合物を含む生成ガスから、簡潔な工程によりジエン化合物を精製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、一般式(3)で示されるジエン化合物を含む生成ガスを水で洗浄しアルデヒド類を含む不純物を分離することにより簡単なプロセスで高純度のジエン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本明細書では「アルデヒド類」とはアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクロレイン、及びメタクロレインを総称したものである。
【0010】
すなわち本発明は以下の項目[1]〜[4]に関する。
[1]
触媒の存在下、不飽和アルコールの脱水反応によりジエン化合物を含む生成ガスを得る脱水反応工程、及び前記生成ガスを水で洗浄し、不純物であ
るアルデヒド類を除去する洗浄工程を含むジエン化合物の製造方法。
[2]
前記洗浄工程後に得られるジエン化合物を含む混合物を蒸留し、水及び低沸点不純物を塔頂液、ジエン化合物を塔底液として分離する第1蒸留工程、及び前記第1蒸留工程の塔底液を蒸留し、ジエン化合物を塔頂液、高沸点不純物を塔底液として分離する第2蒸留工程をさらに含む、[1]に記載のジエン化合物の製造方法。
[3]
前記不飽和アルコールが一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物の混合物であり、生成するジエン化合物が一般式(3)で示される化合物である[1]又は[2]のいずれかに記載のジエン化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R
1〜R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【化2】
(式中、R
1〜R
6は一般式(1)と同一のものを示す。)
【化3】
(式中、R
1〜R
6は一般式(1)と同一のものを示す。)
[4]
R
1〜R
6のすべてが水素原子である[3]に記載のジエン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、簡潔な工程で高純度のジエン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施をすることができる。以下、高純度のジエン化合物を製造する方法について記載する。
【0014】
<脱水反応工程>
本工程で使用する脱水触媒は、一般式(1)及び(2)などで示される不飽和アルコールの脱水能を示すものであれば限定されない。例えば金属リン酸塩、金属縮合リン酸塩、金属硫酸塩、金属塩酸塩、金属酸化物、無機酸などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、担体に担持して使用してもよい。例えば、脱水触媒の形状保持性が低い実施形態では、担体に担持させた触媒を脱水触媒として使用することができる。
【0015】
担体の例としてはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナ、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどが挙げられるが、特に限定はされない。
【0016】
金属リン酸塩、金属縮合リン酸塩、金属硫酸塩、及び金属塩酸塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Al、B、Snなどが挙げられる。これら金属の中ではNa、Mg、及びAlが好ましい。
【0017】
金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ゼオライトなどが挙げられる。
【0018】
無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などが挙げられる。
【0019】
本工程で使用する触媒としては目的のジエン選択率が高いことから、硫酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、又はポリリン酸ナトリウムを用いることがより好ましい。
【0020】
不飽和アルコールとして、炭素−炭素二重結合及び水酸基を分子内に有し、脱水反応により引き抜き可能な水素原子を有する様々な化合物を用いることができる。本発明の一実施態様では、不飽和アルコールは一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物の混合物であり、生成するジエン化合物は一般式(3)で示される化合物である。
【化4】
(式中、R
1〜R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【化5】
(式中、R
1〜R
6は一般式(1)と同一のものを示す。)
【化6】
(式中、R
1〜R
6は一般式(1)と同一のものを示す。)
【0021】
上記一般式(1)、(2)及び(3)中、R
1〜R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。
【0022】
炭素数1〜5のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基等が挙げられる。R
1〜R
6はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、得られる共役ジエン化合物の有用性から水素原子であることがより好ましい。R
1〜R
6は互いに同じであっても、異なっていてもよいが、すべて水素原子であることが最も好ましい。このとき、一般式(1)の化合物は2−ブテン−1−オール、一般式(2)の化合物は3−ブテン−2−オールとなり、生成物である一般式(3)の化合物は1,3−ブタジエンとなる。
【0023】
本工程においては、一般式(1)又は一般式(2)で示されるアリル型不飽和アルコール以外の不飽和アルコール、例えば3−ブテン−1−オールなどが併存していてもよい。
【0024】
本工程で使用する反応装置は連続式の気相流通反応装置であることが好適である。触媒は固定床又は流動床のいずれの方式でもよい。
【0025】
反応装置の一例として上流に原料である不飽和アルコールの気化器を備えた直管型反応器が挙げられる。反応器に触媒を充填し、不飽和アルコールを気化器で蒸発させて生じた原料ストリームを反応器に導入する。反応器下流の熱交換器で反応生成物を冷却し、目的のジエン化合物と未反応の不飽和アルコールを回収する。副反応を抑制するため、気化した不飽和アルコールを窒素、水蒸気などの不活性ガスで希釈して反応に供してもよい。
【0026】
本工程の反応温度は200〜500℃の範囲が適している。200℃以上であると、反応が速やかに進む。一方、500℃以下とすると副反応による選択率低下の影響が小さくなる。より好ましい温度範囲は300〜400℃である。
【0027】
触媒充填容積当たりの不飽和アルコールの導入量は0.05〜20kg/(h・L−cat)の範囲とすることができ、好ましくは0.1〜10kg/(h・L−cat)であり、最も好ましくは0.2〜5.0kg/(h・L−cat)である。導入量が少ない場合は生産性が下がり、触媒コスト増加の要因となる。多い場合には未反応の原料が増加し、分離及び精製に余分な労力が必要となる他、原料からの副反応が進行しやすくなる。
【0028】
不飽和アルコールを含む原料ストリームの触媒充填容積に対する空間速度[SV]は100〜40000h
−1の範囲とすることができ、特に500〜10000h
−1が好適である。空間速度が低すぎる場合は接触時間の増加により、不飽和アルコール原料及び生成したジエン化合物から副生成物が生じる可能性がある。空間速度が高すぎる場合には転化率が低下し、未反応の原料が増加して、その回収にコストを要することがある。
【0029】
<気液分離工程>
脱水反応により生成したジエン化合物を含む生成ガスは、冷却(通常0〜100℃、好ましくは10〜60℃)した後に、気液分離器に供給してもよい。気液分離後、ガス相のみを水洗塔に供給し、含有されるアルデヒド類を除去する。冷却温度が低い場合は水が凝固してしまうおそれがある。冷却温度が高い場合はジエン化合物の二量体、過酸化物、重合物などの化合物への反応が進行してしまうおそれがある。
【0030】
<洗浄工程(アルデヒド類除去)>
特許文献3によると、アルデヒド類とジエン化合物の分離に際しては、これらが共沸点を持つために蒸留は適していない。本発明において、このジエン化合物を含む生成ガスからのアルデヒド類の除去は水を使用したガス洗浄により行う。
【0031】
水洗塔の運転条件(操作温度、操作圧力、ガス液比率など)は所望のアルデヒド類除去率、共役ジエン化合物のロスなどを考慮したうえで、一般の吸収塔の設計方法に従って設計される。例えば、吸収塔の操作圧力を高くすることによりアルデヒド類の水に対する溶解性が高められるため、より少ない水使用量で所望のアルデヒド類除去率を達成することが可能となる。一方で、共役ジエン類の溶解度も高くなるため、共役ジエン類のロスも大きくなる。一般的には操作圧力は常圧〜1MPaGの範囲で設定され、特に不飽和アルコール脱水反応工程の操作圧力、洗浄水の温度(通常20〜50℃程度、好ましくは30〜40℃)、所望のアルデヒド類除去率の達成に必要な洗浄水流量などを総合的に考慮して決定される。洗浄水の温度が高い場合は吸収効率が悪くなる。洗浄水の温度が低い場合には洗浄水の冷却に必要なコストが過剰となる。
【0032】
アルデヒド類の吸収に用いる洗浄水の供給量は、水洗塔の運転条件によっても異なるが、一般的に水洗塔を大型化することなく、洗浄効率を十分に高くするために、水洗塔に導入されるジエン化合物を含む生成ガス1Nm
3/hrに対して、1〜10L/hr程度とすることが好ましい。
【0033】
<第1蒸留工程(低沸点不純物及び水の分離)>
水洗塔でアルデヒド類を除去された、ジエン化合物を含む混合ガスを圧縮して液化して得られた混合物を、水素ガス、プロピレン等の低沸分及び水を分離するために蒸留塔に供給し、塔頂から低沸点不純物及び水を塔頂液として分離する。塔底からは低沸点不純物及び水が分離されたジエン化合物を塔底液として抜き出す。この蒸留は、圧力0.3〜0.7MPaG、好ましくは0.4〜0.6MPaGで、塔頂温度は0〜60℃、塔底温度は45〜65℃で操作される。この工程では、充填塔、段塔等を用いることができる。ジエン化合物は容易に重合物を形成するため、重合物による閉塞に耐性があり、加えてメンテナンスが容易な塔構造とすることが望ましい。ジエン化合物を含むプロセス流体の液相、例えばフィード、コンデンサー上流、還流などに重合防止剤を添加することが望ましい。
【0034】
<第2蒸留工程(高沸点不純物の分離)>
第1蒸留工程で、蒸留塔の塔底から抜き出したジエン化合物を、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド等の高沸点不純物から分離するために、蒸留塔に供給し、塔頂から精製されたジエン化合物を塔頂液として抜き出す。塔底からは高沸点不純物を塔底液として抜き出す。この蒸留は、圧力0.3〜0.7MPaG、好ましくは0.4〜0.6MPaGで、塔頂温度は40〜60℃、塔底温度は50〜120℃で操作される。この工程では、充填塔、段塔等を用いることができる。ジエン化合物は容易に重合物を形成するため、重合物による閉塞に耐性があり、加えてメンテナンスが容易な塔構造とすることが望ましい。ジエン化合物を含むプロセス流体の液相、例えばフィード、コンデンサー上流、還流などに重合防止剤を添加することが望ましい。
【0035】
上記に述べた方法は、本発明の実施形態の一つであり、実施に当たってはその神髄に照らして、別の実施形態をとることもできるが、それらは全て本発明の範疇に含まれる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
図1に実施例1におけるジエン化合物の製造工程をプロセス図として示す。
【0038】
[硫酸マグネシウム担持シリカ触媒の調製]
シリカ担体としてキャリアクトQ−15(登録商標、富士シリシア化学株式会社製)20gに対し、硫酸マグネシウム無水物(和光純薬工業株式会社製)0.4gを含む水溶液を含浸担持して、エバポレーターで大部分の水を除いたのちに80℃のオーブン中で12時間風乾を行った。その後、マッフル炉(ADVANTEC製KM−280)で空気中、400℃〜500℃で合計5時間加熱焼成し、硫酸マグネシウム担持シリカ触媒を得た。
【0039】
[反応装置]
不飽和アルコール脱水反応には、脱水反応器11として固定床の常圧気相流通反応装置を使用した。反応管(ステンレス製)は内径16mm、全長300mmで、上部に原料を蒸発させるための気化器、及び希釈剤(窒素ガス)の導入口を接続し、下部には冷却器、及び気液分離器12を設置した。反応によって生じたガス及び液はそれぞれ別々に回収し、ガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
【0040】
不飽和アルコールとして3−ブテン−2−オール、クロチルアルコール(2−ブテン−1−オール)、若しくは3−ブテン−1−オール、又はこれらの混合物を用いる場合、製造されるジエン化合物は1,3−ブタジエンとなる。その際、不飽和アルコールから1,3−ブタジエンを製造する脱水反応工程における転化率及び選択率の計算には以下の式を用いた。「不飽和アルコール導入量」及び「不飽和アルコール消費量」は3−ブテン−2−オール、クロチルアルコール、及び3−ブテン−1−オールの合計量である。
【数1】
【数2】
【0041】
副生成物の選択率計算には炭素数の違いを考慮し、以下の式を用いた。分母の「4」は不飽和アルコールの炭素数、分子の「1分子中の炭素数」は対象の副生物の炭素数を意味する。
【数3】
【0042】
(a)脱水反応工程
硫酸マグネシウム担持シリカ触媒を用い、不飽和アルコール水溶液(3−ブテン−2−オール濃度48.0質量%、クロチルアルコール濃度32.0質量%、3−ブテン−1−オール濃度0.0質量%、水濃度20.0質量%)を原料とし、窒素ガス及び水蒸気を希釈剤として脱水反応を行った。不飽和アルコール(合計)の導入量は触媒1mLあたり毎時0.32g(=0.32kg/(h・L−cat))、水蒸気(ガス)の導入量は触媒1mLあたり毎時0.30L、窒素ガスの導入量は触媒1mLあたり毎時0.60Lで、気化器温度は120℃、反応器内温度は350℃に設定した(SV=1000h
−1)。反応開始から7.5時間後までの平均反応成績は、それぞれ以下のとおりとなった。
不飽和アルコール転化率 :99.8%
1,3−ブタジエン選択率 :95.0%
【0043】
また、主な副生成物の選択率は以下のとおりとなった。
プロピレン選択率 :0.9%
ブテン選択率 :0.5%
n−ブチルアルデヒド選択率:0.3%
【0044】
(b)気液分離工程
不飽和アルコールの脱水反応により得られた1,3−ブタジエンを含む生成ガス(
図1中フロー1)を42℃まで冷却し気液分離器12に供給した。気液分離後のガス相(
図1中フロー2)を圧縮機で0.20MPaGまで加圧し、熱交換器を通して42℃に冷却した。
【0045】
(c)洗浄工程
気液分離器12を経た生成ガスを、3mmディクソンパッキンを高さ1000mmに充填した内径20mmの水洗塔(アルデヒド類分離塔)13の下段に0.071Nm
3/hr(168g/hr)で導入した。この塔の上段からは30℃の洗浄水を0.340L/hrで供給し、0.18MPaGの圧力下で向流接触させ、生成ガスに含まれるアセトアルデヒドを吸収させた。アセトアルデヒドを除去した生成ガス(
図1中フロー3)を塔頂から抜き出した。塔底からはアセトアルデヒドを吸収した廃水を抜き出した。
【0046】
(c)第1蒸留工程
洗浄工程で塔頂から抜き出した1,3−ブタジエンを含む混合ガスを圧縮機で0.60MPaGまで加圧し、熱交換器を通して42℃まで冷却することで液化ガスとした。この液化ガスを、3mmディクソンパッキンを高さ1500mmに充填した内径20mmの低沸分分離蒸留塔14に導入した。低沸分分離蒸留塔14は圧力0.55MPaG、塔頂温度7℃、塔底液温度59℃で、塔底から純度99.4質量%の1,3−ブタジエン(
図1中フロー4)を161.3g/hrで抜き出した。
【0047】
(d)第2蒸留工程
第1蒸留工程で塔底から抜き出した1,3−ブタジエンを含む液化ガスを、3mmディクソンパッキンを高さ1500mmに充填した内径20mmの高沸分分離蒸留塔15に導入した。高沸分分離蒸留塔15は圧力0.45MPaG、塔頂温度46℃、塔底液温度は102℃で塔頂から高純度の1,3−ブタジエン(純度99.85質量%、
図1中フロー5)を160.3g/hrで抜き出した。
【0048】
各フローの成分組成を表1に示す。
【表1】
【0049】
(比較例1)
特許文献3の実施例によると、酸化脱水素反応により製造されるブタジエンは反応器出口にて表2の組成を有する。
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例1と比較例1の対比)
比較例1の反応で得られるブタジエンにはブテン類、ブタン類などの不純物が含まれている。これらの不純物は1,3−ブタジエンと沸点が近く、分離するためには、例えば特許文献5に示すようなジメチルホルムアミドを抽剤とした抽出、抽出蒸留などの方法を行うことが公知である。
図2に比較例1のジエン化合物の製造工程をプロセス図として示す。
図2には吸収塔22、抽出蒸留塔23、放散塔24及び溶剤再生塔25が記載されており、脱水素反応器21にて生成した、ブテン類、ブタン類などの不純物を含む生成ガスに対して抽出蒸留を行った後
にアルデヒド類の分離(水洗塔26)、低沸点不純物の分離(低沸分分離設備27)及び高沸点不純物の分離(高沸分分離設備28)が行なわれる。これに対し、実施例1の反応で得られるブタジエンにはこれらの不純物がほとんど含まれておらず(ブテン類は400ppm)、水洗及び蒸留により容易に高純度のブタジエンを得ることができる。これにより、従来、高純度のブタジエンを得るために必要であった抽出、抽出蒸留などの工程が不要となり、分離に要していたエネルギー及び抽出蒸留塔などの設備費の削減が可能となる。