特許第6579830号(P6579830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579830
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】静電誘導型発電器
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   H02N1/00
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-133006(P2015-133006)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-17882(P2017-17882A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】和泉 輝
(72)【発明者】
【氏名】塩田 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真
(72)【発明者】
【氏名】伊原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】永田 洋一
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−135544(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052106(WO,A1)
【文献】 特表2010−534052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに固定された第1基板と、
前記第1基板に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板と、
帯電膜と、
対向電極と、
前記帯電膜及び対向電極間で発生した交流を出力する出力部と、
を有し、
前記対向電極を第1基板の第1対向面に設置し、
前記対向電極に対向するように前記帯電膜を一定間隔おきに前記第2基板の第2対向面に設置し、
前記対向電極は、
前記第1対向面に分離して設けられた複数の第1電極と第2電極から構成され、
前記第1電極と前記第2電極は、
前記第2基板の移動方向に沿って交互に、前記一定間隔で一列に配置され、
前記第1電極同士と前記第2電極同士が接続されるとともに、
前記第1電極と前記第2電極はそれぞれ前記出力部に接続されており、
前記第1対向面において、
前記一列の前記第1電極と前記第2電極が、複数列設置され、
前記複数列ごとの前記一定間隔の位相はそれぞれ異なるようにし静電誘導型発電器。
【請求項2】
前記第2基板に軸を設けて、
前記軸を前記ハウジングに設けた上部軸受部と下部軸受部で、
回転自在に軸支したことを特徴とする請求項1に記載の静電誘導型発電器。
【請求項3】
ハウジングと、
前記ハウジングに固定された第1基板と、
前記第1基板に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板と、
帯電膜と、
対向電極と、
前記帯電膜及び対向電極間で発生した交流を出力する出力部と、
を有し、
前記対向電極を第1基板の第1対向面に設置し、
前記対向電極に対向するように前記帯電膜を一定間隔おきに前記第2基板の第2対向面に設置し、
前記対向電極は、
前記第1対向面に分離して設けられた複数の第1電極と第2電極から構成され、
前記第1電極と前記第2電極は、
前記第2基板の移動方向に沿って交互に、前記一定間隔で一列に配置され、
前記第1電極同士と前記第2電極同士が接続されるとともに、
前記第1電極と前記第2電極はそれぞれ前記出力部に接続されており、
前記第1対向面において、
前記一列の前記第1電極と前記第2電極が、複数列設置され、
前記複数列の前記一定間隔の位相はいずれも同じであり、
前記第2対向面において、
前記第1電極と前記第2電極の前記複数列ごとに、
前記帯電膜が一定間隔おきに設置された帯電膜の列を対向させ、
それぞれの帯電膜の列の前記一定間隔の位相はそれぞれ異なるようにし静電誘導型発電器。
【請求項4】
前記第2基板に軸を設けて、
前記軸を前記ハウジングに設けた上部軸受部と下部軸受部で、
回転自在に軸支したことを特徴とする請求項3に記載の静電誘導型発電器。
【請求項5】
前記軸若しくは前記第2基板は、
重量バランスの偏りを有する回転錘が直接設置されているか、
又は、回転錘の回転が歯車列を介して前記軸に回転伝動されるように構成されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の静電誘導型発電器。
【請求項6】
前記複数列の前記第1電極と前記第2電極のすべての面積が等しいこと
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項7】
前記第1対向面において、
前記一列の前記第1電極と前記第2電極が2又は3列設置され、
2又は3相交流を出力部に出力すること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電誘導型発電器。
【請求項8】
請求項2又は4に記載の静電誘導型発電器に使用される前記第1基板であって、
前記第1基板の前記第1対向面に、
最外周に設置した前記一列の前記第1電極と前記第2電極のいずれか一方を、
前記第1基板の最外周縁のパターンにより連結接続し、
最内周に設置した前記一列の前記第1電極と前記第2電極のいずれか一方を、
前記第1基板の最内周縁のパターンにより連結接続し、
その他の電極は、
スルーホールを介して、前記第1基板の前記第1対向面の裏側で、連結接続したこと
を特徴とする基板。
【請求項9】
前記複数列の前記第1電極と
前記第2電極のすべての面積が等しいこと
を特徴とする請求項8に記載の基板。
【請求項10】
前記第1基板に対して、
第2基板が並進運動を行うことを特徴とする請求項1又は3に記載の静電誘導型発電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電誘導を利用した発電装置、発電器、携帯型電気機器、携帯型時計等に関する。本発明の発電器のエネルギ源としては、人体の運動、機械等の振動、その他環境に広く存在する運動エネルギを利用することができる。特に、エレクトレット発電において、対向電極等の位相を多相化した発電器に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレット材料による静電誘導を利用した実用的発電装置が、特許文献1〜5などに開示されている。静電誘導とは、帯電した物体を導体に接近させると、帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象のことである。静電誘導現象を利用した発電装置とは、「電荷を保持する膜」(以下、帯電膜という)と対向電極を配置した構造において、この現象を利用して、両者を相対移動させて誘導された電荷を取り出す発電のことである。
【0003】
図1は、静電誘導現象を利用した発電の原理を模式的に説明する説明図である。図1では、対向電極側を移動させているが、帯電膜側を移動させても良い。
【0004】
エレクトレット材料による場合を例にとると、エレクトレットは、誘電体に電荷を打ち込んだものであり、半永久的に静電場を発生させる帯電膜の一種である。このエレクトレットによる発電では、図1にみられるように、エレクトレットにより形成される静電場によって対向電極に誘導電荷が生じ、エレクトレットと対向電極の重なりの面積を変化(振動等)させれば、外部電気回路において交流電流を発生させることができる。このエレクトレットによる発電は、構造が比較的簡単で、電磁誘導によるものより、低周波領域において高い出力が得られる点で有利であって、近年いわゆる「環境発電(Energy Harvesting)」として注目されている。
【0005】
図18(a)〜(c)は、先行技術としての特許文献1の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。図19(a)〜(c)は、特許文献1の対向電極と帯電膜の説明図である。図20は、図19の帯電膜3と、対向電極2の第1電極A、第2電極NAとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。
【0006】
特許文献1には、帯電膜と対向電極の往復周期回動を行う静電誘導を利用した発電装置が開示されている。この先行技術の一実施形態には、図1の模式図とは異なり、出力として取り出す各々の電極が対向基板のみに形成された実施形態が示されている。図18(a)に示すように、回転部材4の下面に帯電膜3が、形成されている。固定側の対向基板1には、複数の第1の電極A、複数の第2の電極NAが交互に形成されている。13は回転部材4と軸8の間に設置された渦巻きバネである。10は回転錘である。
【0007】
複数の第1の電極Aはそれぞれ電気的に接続されて、配線90Aにより発電電力が取り出される。複数の第2の電極NAもそれぞれ電気的に接続されて、配線90Nにより発電電力が整流回路92に取り出される。第1電極A、第2電極NAから出力される電圧は、静電誘導が交互に発生するため、半サイクル位相のずれた交流の波形が出力される。対向基板1上の第1の電極Aに接続した配線90Aと、第2の電極NAに接続した配線90Nは、ダイオード91を使った整流回路92に接続され、整流された電力はコンデンサまたは2次電池等を用いた蓄電部材93に接続されている。蓄電部材93に充電された電力は、後段の電子機器回路を駆動する。特許文献1の各々の電極が対向基板のみに形成された実施形態では、固定側の対向基板から電流を取り出せるので好都合である(回転部材からは電流を取り出す必要がない)。
【0008】
回転部材4の下面には、図19(a)に示すような帯電膜3が形成されている。帯電膜3と帯電膜3の間の回転部材4には、穴が形成されている。一方、図19(b)に示すように、帯電膜3に対向する位置に固定された対向基板1上の対向電極2として、第1電極A、第2電極NAがそれぞれ交互に形成され、第1電極A同士、第2電極NA同士は、それぞれ接続している。第1電極A、第2電極NAから取り出した配線90A、90Nは、ダイオード91を使った整流回路92に接続され、さらにコンデンサまたは2次電池等を用いた蓄電部材93に接続されている。
【0009】
第1電極A、第2電極NAから出力される電圧は、回転部材4の回転により静電誘導が交互に発生するため、交流の波形が出力される。図18(b)、(c)は回転部材4の円周側面から見たときの、帯電膜3と対向電極90A、90Nの配置を示している。対向電極90Aと90Nは交互に配置され、対向電極は、対向電極90A同士あるいは90N同士の間隔と同じ間隔で配置されており、回転部材4を回転させると、図18(b)、(c)のいずれかの位置関係で帯電膜と対向電極が対向する。すなわち、図18(b)に示すように、第1電極Aが帯電膜3に対向すると、第1電極Aにプラスの電荷が引き寄せられて電流が一方向に流れる。同時に、帯電膜3に対向しない位置にいる第2電極NAには、引き寄せられたプラスの電荷が消散して前記一方向と逆方向に電流が流れる。次に、回転部材4が回転して、図18(c)となり、図18(c)、(b)が繰り返される。具体的には、回転部材4に形成する帯電膜3と対向する位置になる第1電極Aと、帯電膜3と対向しない位置にいる第2電極NAとは、逆の極性となるので、それぞれの配線90A、90Nを整流回路92の異なる入力端子に接続する。発電装置から出力された交流波形は、整流回路92により直流に変換され蓄電部材93に充電されることになる。後段に接続されている電子機器回路94を駆動させるに十分な電気が充電されれば、後段の電子機器回路94を駆動させることができる。
【0010】
図19(c)は、図19(a)の帯電膜と図19(b)の対向電極を対向させた回転部材4に対して、その円周側面から見たときの、帯電膜3と対向電極A、NAの配置とクーロン力の影響について示したものである。クーロン力とは、異なる符号の電荷のあいだには働く引力のことで、帯電する電荷が多ければ引力も大きくなる。図19(b)の第1電極A、第2電極NAの配置によれば、図19(c)に示すように帯電膜3と電極A(又は第2電極)との間にはクーロン力が働き、その移動方向成分Fによって、図20(b)に示すような鋸歯状の保持トルクが、回転部材に作用してしまう。なお、図20(a)の第1電極A、第2電極NAは本来扇形であるが、説明をわかりやすくするためにわざと長方形で表示したものである。
【0011】
回転部材4が停止するときは、回転部材4の保持トルクが最大となる位置、すなわち帯電膜3と電極AあるいはNAの重なり合う面積が最大となる位置に止まる。従って、回転部材4の回転開始時にあっては、保持トルクのピーク値よりも大きな回転力が加わらなければ回転部材4は回転できず、外部振動が加わったとしても電力に変換することができない。よって、図20(b)に示すような鋸歯状の保持トルクが、回転部材に作用してしまうと、保持トルクの極めて高いピーク値が、回転部材4の初動トルクの閾値を高くしてしまい、外部振動としての環境振動からのエネルギ変換効率を、より向上させるのに限界があった。また、環境振動から得られた回転部材4の回転や振動の持続性においても、保持トルクのピーク値が繰り返し発生して、より長時間持続する回転や振動に結びつけることができないでいた。
【0012】
特許文献2にも、エレクトレット膜と対向電極の往復周期回動を行う静電誘導を利用した回転型発電装置が開示されており、回転部材の内面にエレクトレット膜が形成され、それに対向する固定側の対向基板に、対向電極が形成されている。回転側のエレクトレット膜と、固定側の対向電極の各々を電極として電流を取り出すものである。特許文献2では、回転側のエレクトレットからも電流を取り出さなければならないので、面倒な手間がかかる。
【0013】
特許文献1、2の従来技術では、いずれも、帯電膜と、対向した基板の対向電極は同一形状とし、帯電膜と対向電極の位置関係が相対移動することによって発電する。このような構造の場合、エレクトレット発電において帯電膜と対向電極間でクーロン力Qが発生するため、回転部材が動き出す初動トルクはこのクーロン力以上のトルクが必要となる。また、回転部材に伝達するトルクがなくなって慣性力で回転部材が回転する場合であっても、慣性力がクーロン力以下になった段階で回転が停止する。このため、エレクトレット発電の発電効率を向上させるには帯電膜と対向電極間に発生するクーロン力を低減する必要がある。特許文献3は、エレクトレット膜と対向電極が並進運動タイプであるが、やはり同様の問題が発生する。
【0014】
上述した特許文献1〜3の従来技術に対し、特許文献4、5のエレクトレット膜を用いた静電誘導型発電装置では、往復動する可動基板を、サンドイッチ状に上部固定基板と下部固定基板で挟んでいる。可動基板の上下面にそれぞれエレクトレット膜を形成し、可動基板の上面のエレクトレット膜に対向する対向電極を、上部固定基板に設けるとともに、可動基板の下面のエレクトレット膜に対向する対向電極を、下部固定基板に設けたものである。可動基板の上部と下部間で、対向電極とエレクトレット膜との移動方向のピッチの位相を、相互にずらして、クーロン力を低減し、発電時の初動トルクの低減を行い、発電効率の向上を図っている。しかしながら、特許文献4、5の上下両面タイプには、次のような問題がある。
【0015】
上下両面タイプでは、上面帯電膜と下面帯電膜の帯電量が等しい場合に限って、クーロン力を打ち消し合うことができるものである。可動基板は、クーロン力の均衡をとるため、上部固定基板と下部固定基板の正確な中間位置に位置しなくてはならない。このため、可動基板の位置精度管理が困難である。その上、帯電量は主に帯電膜厚に依存し、生産過程においてこの膜厚がバラついてしまうばかりでなく、コロナ放電により帯電させるため帯電電荷の量もバラつくことが多い。したがって、上下両面タイプで上下帯電膜の帯電量を等しくするのは、かなり難しい課題となっていた。
【0016】
さらに、可動基板の上下面を利用するため、上部固定基板と可動基板間、可動基板と下部固定基板間の上下に厚さが必要になり、発電機器の厚さが厚くなるという問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2013−135544号公報
【特許文献2】特開2013−59149号公報
【特許文献3】特開2012−138514号公報
【特許文献4】特許第5460872号公報
【特許文献5】特許第5205193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、対向電極列間で相対位置をずらして配置し、対向電極と帯電膜間に生じるクーロン力をキャンセルする静電誘導型発電器において、発電能力を維持しつつ、クーロン力を相殺する精度を高めて発電負荷を低減し、薄型の構造ながら効率の良い静電誘導発電を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに固定された第1基板と、前記第1基板に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板と、帯電膜と、対向電極と、前記帯電膜及び対向電極間で発生した交流を出力する出力部と、を有し、前記対向電極を第1基板の第1対向面に設置し、前記対向電極に対向するように前記帯電膜を一定間隔おきに前記第2基板の第2対向面に設置し、前記対向電極は、前記第1対向面に分離して設けられた複数の第1電極と第2電極から構成され、前記第1電極と前記第2電極は、前記移動方向に沿って交互に、前記一定間隔で一列に配置され、前記第1電極同士と前記第2電極同士が接続されるとともに、前記第1電極と前記第2電極はそれぞれ前記出力部に接続されており、前記第1対向面において、前記一列の前記第1電極と前記第2電極が、複数列設置され、前記複数列ごとの前記一定間隔の位相はそれぞれ異なるようにし、帯電膜及び対向電極間で発生したクーロン力を低減した静電誘導型発電器である。
【発明の効果】
【0020】
複数の移動方向の対向電極列、あるいは帯電膜列の間で相対位置を、同一平面内で対向電極列、あるいは帯電膜列の列数に応じてずらして配置し、対向電極と帯電膜間に生じるクーロン力をキャンセルすることで、発電能力を維持しつつ、相殺し合うクーロン力を均等に管理して発電負荷を低減でき、薄型の構造ながら効率の良い静電誘導発電を行うことが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】静電誘導現象を利用した発電の原理を模式的に説明する説明図である。
図2】本発明の第1実施形態のA−A線(図3)に関する模式的断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の内部構造を示す概要である。
図4】本発明の第1実施形態を説明するための部分的斜視図である。
図5】(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態の整流回路からの出力を示すグラフである。
図7】(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NBのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。なお、帯電膜3、電極A、NA、B、NBは全て四角形で模式的に描かれている。これは理解を容易にするために意図的に四角形にしているが、第1実施形態では扇形となる。
図8】(a)〜(c)は、図7の上段列と下段列に働く保持トルクと、回転部材全体に働く保持トルクを示す説明図である。
図9】本発明の第1実施形態の対向基板の表裏の電気配線パターンを示す一例である。(a)は、対向基板の表側を表示しており、対向基板1の片面のみに第1電極A、Bと第2電極NA、NBが形成されている。(b)は、対向基板の裏側を表示している。
図10】(a)、(b)は、本発明の第2実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態の整流回路を示す説明図である。
図12】本発明の第2実施形態の整流回路からの出力を示すグラフである。
図13】(a)、(b)は、本発明の第2実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NB、C、NCのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。
図14】(c)、(d)は、本発明の第2実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NB、C、NCのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。
図15】(e)、(f)は、本発明の第2実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NB、C、NCのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。
図16】(a)〜(d)は、図10(b)の外周列、中間列、内周列に働く保持トルクと、回転部材全体に働く保持トルクを示す説明図である。
図17】(a)、(b)は、本発明の第3実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。
図18】(a)〜(c)は、先行技術の特許文献1の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。
図19】(a)〜(c)は、特許文献1の対向電極と帯電膜の説明図である。
図20図19の帯電膜3と、対向電極2の第1電極A、第2電極NAとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態では、一例として腕時計で説明するが、必ずしも腕時計に限定されるものではない。携帯用の静電誘導発電器付き電子電気機器などにも適用可能である。
【0023】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態のA−A線(図3)に関する模式的断面図である。図3は、本発明の第1実施形態の内部構造を示す概要である。図4は、本発明の第1実施形態を説明するための部分的斜視図である。図5は、本発明の第1実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。図6は、本発明の第1実施形態の整流回路からの出力を示すグラフである。
【0024】
以下、第1実施形態を、各図面を参照して説明する。第1実施形態は、腕時計などの携帯用電子時計に適用した場合である。
携帯用電子時計は、図2に示すように、風防24を含む外装ケーシング41、42(裏蓋42)と、文字板25と、ハウジング33、34と、このハウジング内に配置されたクオーツムーブメントと、ハウジング内に配置された静電誘導発電器とを有している。風防24は、パッキン43を介して外装ケーシング41に嵌めこまれている。風防24は、透明材料で形成されている。
【0025】
ハウジングは、以下において腕時計の場合によくつかわれる呼称、すなわち、地板33、受け板34として説明する。地板33は、ハウジングの一種であって、様々なパーツを組み込む土台、支持板、内装ケーシングなどを意味している。また、受け板とは、回転体の軸を支えたり、部品を固定・保持する役割を果たす場合に良くつかわれる用語である。
【0026】
クオーツムーブメントは、ここでは、水晶振動子28と、回路基板5と、コイル26及びモータ用のロータ・ステータを備えたステップモータと、運針用歯車と、2次電池22などを含むものとして定義される。回路基板5には、発振回路、分周回路、ステップモータの駆動回路、整流回路、電源回路などが組み込まれている。歯車駆動部21には、クオーツムーブメントの一部である、コイル26、ステップモータ、運針用歯車などが含まれている。図2にみられるように、歯車駆動部21からは、指針軸が、文字板25の上方に突き出て時針、分針、秒針(秒針図示せず)などの指針23が取り付けられている。指針23は、時針、分針しか表示していないが、時針、分針、秒針を備えていても良い。図3は、クオーツムーブメントと静電誘導発電器などの時計内部構造の概要を示しており、図3のZ部分は、地板やクオーツムーブメントの一部が適宜レイアウトされた概略領域である。27はりゅうずを示している。Z部分には、クオーツムーブメントのうち歯車駆動部21や回路基板5などが配置されるが、そのレイアウトは適宜設計的に定めればよい。
【0027】
次に、図2を参照して静電誘導発電器の全体構成について述べる。
回転軸8には回転部材4が固定されており、回転部材4の下面には帯電膜3が配置されている。回転部材4は第2基板ともいう。一方、帯電膜3に対向するように、上部表面に対向電極2が配置された対向基板1が、受け板34に設置固定されている。対向基板1を第1基板ともいう。回転部材4は、地板33と受け板34間で軸支され、文字板25、地板33、回転部材4、対向基板1、受け板34の順序で配置されているが、これに限定されるものではなく、文字板25、地板33、対向基板1、回転部材4、受け板34の順序で配置されていても良い。後述の他の実施形態においても同様である。
【0028】
図2において、クオーツムーブメントの回路基板5も、対向基板と同様に受け板34に設置固定されている。ここでは、対向基板1と帯電膜3とのギャップを精密に管理するため、対向基板1と回路基板5を別体で作製しているが、同様の位置精度が満たされるなら回路基板5と対向基板1を同一の基板に形成することも可能である。回路基板5と対向基板1とが別基板の場合は接続コネクタ、導通バネ、接続端子などで導通を行う。これらは、後述の実施形態においても同様である。
【0029】
回転部材4が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力を、クオーツムーブメント(回路基板5)に出力する。図4には、回転部材4の下面には帯電膜3が配置され、帯電膜3に対向するように、対向電極2が配置された状況が斜視図で模式的に示されている。本実施形態では、回転錘10の伝動に歯車伝動機構を介しているので、上部から下部に向かって、文字板25、地板33、歯車14、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1、受け板34の順序で配置されている。
【0030】
対向基板1には、図5(b)に示すように、外周側に第1電極Aと第2電極NAが交互に配置され、内周側に第1電極Bと第2電極NBが交互に配置されている。全ての第1電極A、全ての第2電極NAはそれぞれ連結されて、第1の交流を形成して、整流回路20に入力される。同様に、全ての第1電極B、全ての第2電極NBはそれぞれ連結されて、第2の交流を形成して、整流回路20に入力される。
【0031】
回転部材の下面の帯電膜3は、図5(a)に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の各一片との間にはブランク部(透し穴、貫穴)が形成されている。回転軸8は、上側は地板33の軸受50、下側は受け板34に設けた軸受50(軸受50は、耐震装置、一例としてパラショックなどであっても良い)で軸支されている。なお、回転部材4にブランク部を形成しなくても実施可能である。
【0032】
帯電膜あるいは対向電極の配置について説明の簡易化のため、以下、位相で表現することにする。その意味合いは下記のとおりである。回転部材の帯電膜とブランク部(透し穴、貫穴)が等面積で円周方向に交互配置され、帯電膜と等面積の電極が円周方向に配置された対向基板とが、同軸で近接配置されたとき、上面視で帯電膜と対向電極の重なる面積が最大となる位置で、最も多くの電荷が対向電極に誘導されるため発電電力は最大である。その後、帯電膜が対向電極から遠ざかると誘導された電荷は減り、帯電膜と対向電極が全く重ならない位置のときに発電電力は最も小さくなる。回転部材の回転によりこの状態が交互に繰り返されるため、発電電力の波形は周期的になり、帯電膜と対向電極が重なる位置から次の重なる位置までは、波形の位相が360度回転する。このとき帯電膜は、円周方向に帯電膜の幅の2倍移動している。従って、対向電極あるいは帯電膜の配置の移動量を説明する場合に、帯電膜の幅2枚分の相対的な位置(回転の場合、変位角度)の違いを位相に読み替え、1サイクルと呼ぶことにする。
【0033】
第1電極Aと第2電極NAの電極列と、第1電極Bと第2電極NBの電極列とは、交流1サイクルの4分の1サイクルだけ位相が異なるように配置されている。第1電極Aと第2電極NAの電極列と、第1電極Bと第2電極NBの電極列の両者合わせて、対向電極2と総称する。第1電極Bと第2電極NBの電極列とは、第1電極Aと第2電極NAの電極列に対して交流1サイクルの4分の3サイクルだけ位相が異なるように配置されていても良い。図5(a)、(b)の実施形態では、第1、2電極は4組設置されているが、これに限定されるものではなく、偶数個設置されていればよい。以下の実施形態においても同様である。
【0034】
回転錘10は腕の動きなどを捉えて回転する。図2、4に示すように、回転軸8の回転部材4の上側において歯車14が回転軸8に固定されている。また、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構(歯車列)として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。ここでは、歯車列は、歯車15、14を指している。この場合、回転錘10の回転が増速されて回転軸8を回転させると、回転部材に設置された帯電膜(エレクトレット膜)3を、対向基板1(受け板34の固定)に静止した対向電極2に対して、増速回転させることができる。従って、回転部材4の回転数が高まると、発電量を上昇させることができる。なお、歯車列としては、2枚の歯車に限らず、3枚以上の歯車を組み合わせても良く、また、特殊歯車、カム、リンク、一方向クラッチ等を途中に介在させたものもここでの歯車伝動機構に含まれる。軸9は、ここでは、受け板34にベアリング16を介して軸支されている。軸9の軸支については、地板33と受け板34で軸支することも可能である。
【0035】
軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構としては、機械式腕時計においてこれまで公知の自動巻きの回転駆動技術を転用することが可能である。たとえば、腕の運動などの振動による、軸9に固定された回転錘10の正逆両方向の回転を、歯車伝動機構に内在した変換クラッチ機構によって、常に一方向の回転に変換するようにしても良い。
【0036】
このような変換クラッチ機構は、ツゥーウェイクラッチ機構として機械式自動巻き腕時計の公知技術として、よく知られているので、これらの公知技術などを適用することが可能である。また、回転錘10による軸9の回転や揺動の正逆一方向のみを、ワンウェイクラッチで回転軸8に伝動しても良い。この場合、回転錘10の軸9(回転部材4の回転軸8)の回転が逆回転する時であっても、回転部材4に動きを阻害する力が加わることがなくなるので運動エネルギの無駄がなくなり、発電効率を高めることができる。以上述べた回転部材4と回転錘10との歯車伝動機構は、以下に述べる実施形態においても適宜適用することができる。本実施形態において、回転錘10は直接回転軸8に設けることも可能である。さらには、回転部材4に錘を設けて、回転錘の代わりにしても良い。これらの場合には歯車伝動機構15、14が不要である。
【0037】
続いて、本実施形態の詳細について以下に説明する。
本発明で帯電膜として用いられるエレクトレット材料には、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
【0038】
さらに、その他にもエレクトレット材料としては、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0039】
図5〜7を参照して、帯電膜3と対向電極2による発電を説明する。本実施形態の発電の仕組みは、特許文献1で説明した図18のタイプと同じである。回転部材4の下面の帯電膜3は、図5(a)に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の各一片3との間にはブランク部(透し穴、貫穴)が形成されている。回転移動する帯電膜3からは整流器への入力は無い。本実施形態では、外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列と、内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列の2列を有している。このような複数列の第1電極と第2電極に対向電極を分割することを、ここでは多相化と呼ぶ。
【0040】
外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列において、次のように電流が生成される。複数の第1電極Aを連結した配線をA配線といい、複数の第2電極NAを連結した配線をNA配線という。第1電極Aと第2電極NAは、移動方向(ここでは回転方向)に沿って交互に、一定間隔(ここでは一定角度間隔)で一列に配置されている。
図5(b)の第1電極Aには、破線で表示された帯電膜3が重なり合っている。帯電膜3が第1電極Aと重なり合っている期間をA期間という。帯電膜3(エレクトレット膜)には、負電荷が保持されているので、第1電極Aには、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。正電荷が引き寄せられる際に電流が流れる。
一方、回転部材4の回転(仮に時計回りとする)に伴い、破線で表示された帯電膜3が、隣の第2電極NAに重なる。帯電膜3が第2電極NAと重なり合っている期間をNA期間という。第2電極NAには、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。正電荷が引き寄せられる際に電流が流れる。これに対して、第1電極Aには、ブランク部(穴)が重なるので、A期間において引き寄せられた正電荷が消散して逆方向に電流が流れる。回転部材4の回転に伴い、A期間とNA期間が交互に繰り返されることになる。すなわち、A期間には、第2電極NAから第1電極Aに電流が流れ、NA期間には、第1電極Aから第2電極NAに電流が流れる。
【0041】
内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列において、次のように電流が生成される。複数の第1電極Bを連結した配線をB配線といい、複数の第2電極NBを連結した配線をNB配線という。第1電極Aと第2電極NAと同様に、内周側の第1電極Bと第2電極NBは、回転方向に沿って交互に、一定角度間隔で一列に配置されている。内周側の第1電極Bと第2電極NBは、外周側の第1電極Aと第2電極NAとは、4分の1サイクルだけ位相差を以って配列されている。内周側の第1電極Bと第2電極NBは、外周側の第1電極Aと第2電極NAと同様に、4分の1サイクルだけ位相差の遅れを以って、交流電流が流れる。外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列に発生した交流は、配線A、NAを経て整流回路20に入力され、内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列に発生した交流も、配線B、NBを経て整流回路20に入力され、整流されて、図6に示す直流電流として取り出される。ここで図6の横軸は、電極に発生した交流の位相角であり、縦軸は発生した交流の振幅である。先に述べたように交流の位相を変位角度に置き換えている。上述された発電装置から出力された2相の交流波形は、整流回路20により直流に変換され、降圧回路30を経て2次電池22に充電されることになる。回転部材4に対向電極2を配置すると、対向電極2から整流回路20に入力する配線を設けることができないため、対向電極2と回転軸8を導通させ回転軸8から発電電流を取り出すしかなく、送電経路の抵抗が増加して発電効率を低下させてしまう。しかし、本実施形態の構成によれば、固定された対向基板の対向電極2から電流を取り出せばよいので、回路構成が極めて簡易なものにすることができる。
【0042】
回転錘10によって、回転軸8に固定された回転部材4が回転すると、帯電膜(エレクトレット膜)3と、対向電極2の第1電極A、第2電極NA、第1電極B、第2電極NBとの重なり面積が増減し、これらに引き寄せられる正電荷が増減して、帯電膜(エレクトレット膜)3と対向電極2間に、図6に示す交流電流を発生させる。これを、出力部として、整流回路20、降圧回路などを通して、クオーツムーブメントに出力させるものである。整流回路20は、ブリッジ式であり、1相の交流波形に対して4個のダイオードを備え、本実施形態では2相の交流波形なので、8個のダイオードを備えている。
【0043】
図7(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NBのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。なお、帯電膜3、電極A、NA、B、NBは全て四角形で模式的に描かれている。これは理解を容易にするために意図的に四角形にしているが、第1実施形態では扇形となる。図8は、図7の上段列と下段列に働く保持トルクと、回転部材全体に働く保持トルクを示す説明図である。図9は、本発明の第1実施形態の対向基板の表裏の電気配線パターンを示す一例である。図9(a)は、対向基板1の表側を表示しており、対向基板1の片面のみに第1電極A、Bと第2電極NA、NBが形成されている。図9(b)は、対向基板1の裏側を表示している。
【0044】
本実施形態では、図5(b)に示すように、内周側の第1電極Bと第2電極NBは、外周側の第1電極Aと第2電極NAとは、4分の1サイクルだけ位相差を以って配列されている。対向基板1に、対向電極2の第1電極A、Bと第2電極NA、NBを配列した具体的実施例は、図9に示されている。この実施形態について簡単に説明する。対向電極を多相化すると、各電極を独立分離して配置しなければならず、分離のための面積ロスが発生してしまう。以下の実施例では、この面積ロスをできるだけ少なくするように工夫した実施形態である。
【0045】
図9(a)に示すように、符号101Aは全ての各第1電極Aを接続したあとの取出し端子である。符号102NAは全ての各第2電極NAを接続したあとの取出し端子である。符号103NBは全ての各第2電極NBを接続したあとの取出し端子である。符号104Bは全ての各第1電極Bを接続したあとの取出し端子である。
【0046】
図9(a)、(b)に示す実施例において、各電極を連結接続するための配置は、次のようなものである。第1電極Aは、対向基板1の外周側に配置されており、第2電極NAと交互に設けられている。第1電極A同士は、電気配線パターンの最外周縁部110によって連結接続されている。一方、第1電極Bは、対向基板1の内周側に配置されており、第2電極NBと交互に設けられている。第2電極NB同士は、電気配線パターンの最内周縁部113によって連結接続されている。これに対して、対向基板の表側において、各第2電極NA同士と各第1電極B同士をそれぞれ連結接続する2つの同心円の接続パターンを設けることもできるが、2つの接続パターンを設けた分だけ、各電極の面積を狭くさせてしまう。各電極を等面積にして、最大限大きくするために、図9(b)に示すように、対向基板1の表側の第2電極NA、第1電極Bにスルーホールを介して、裏側に形成された円環状の接続パターン111、112に接続している。
【0047】
第1電極Aは、パターンの最外周縁部110から取出し端子101Aと接続している。第2電極NAは、それぞれに設けられたスルーホール108を介して、接続パターン111と接続しており、スルーホール102から取出し端子102NAと接続している。第1電極Bは、それぞれに設けられたスルーホール105を介して、接続パターン112と接続しており、第1電極Bの1つに設けられたスルーホール106から、スルーホール104を介して、取出し端子104Bと接続している。第2電極NBは、パターンの最内周縁部113で相互に連結接続し、第2電極NBの1つに設けられたスルーホール109から、スルーホール103を介して、取出し端子103NBと接続している。
このように、第1電極A、第2電極NA、第1電極B、第2電極NBをパターン配置すれば、各電極を等面積にして、各電極の面積を最大限大きくすることができる。
【0048】
以下、このような配列において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NBのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する。外周側の第1電極A、第2電極NAの各面積と、内周側の第1電極B、第2電極NBの各面積とは、それぞれ、皆同じ面積にすると良い。
【0049】
帯電膜が並進運動するときは、図7そのままに四角形電極にすれば良い。図7(a)〜(d)において、図5(b)を上方から平面的に見て、移動方向(回転方向)に沿って直線状に1列に引伸ばした模式的な図面である。上段が内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列であり、下段が外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列である。
【0050】
図7(a)は、外周側の第1電極Aと帯電膜3とがぴったり重なった時である。すなわち、第1電極Aと帯電膜3のオーバラップ部分の面積が最大となっている。したがって、帯電膜3が図示のプラスの移動方向(回転)に移動しようとすると、移動を阻止するように回転部材4に保持トルクを作用させる。このとき、内周側の第1電極Bと第2電極NBは、回転部材4に保持トルクが作用しない。
【0051】
次に、帯電膜3のプラス方向の移動が行われて、図7(b)は、内周側の第1電極Bと帯電膜3とがぴったり重なった時である。すなわち、第1電極Bと帯電膜3のオーバラップ部分の面積が最大となっている。したがって、帯電膜3が図示のプラスの移動方向(回転)に移動しようとすると、移動を阻止するように回転部材4に保持トルクを作用させる。一方、外周側の第1電極Aと第2電極NAは、回転部材4に保持トルクが作用しない。対向電極に対する帯電膜3の位置は、その後、図7(c)、図7(d)と推移し、図7(a)〜(d)が繰り返される。
【0052】
外周側の第1電極Aと帯電膜3、および外側の第2電極NAと帯電膜3とは、オーバラップする面積がそれぞれ半分となり、発電量もそれぞれ半分になるが、2つの発電電力を合計すると、外周側の電極と帯電膜3との重なる面積が最大のときと等しい電力量が得られるので、総合発電量が低下することが無い。
【0053】
図8(a)、(b)、(c)には、図7の下段列の外周電極列の保持トルク、図7の上段列の内周電極列の保持トルク、両者を重ね合わせた全体の保持トルクがグラフで示されている。図8において縦軸は、電極と帯電膜が引き合うクーロン力により、回転部材がその位置に保持される保持力の強さを示しており、横軸は、図7(a)〜(d)に示した対向電極に対する帯電膜位置を示している。破線の波形が、図20(a)の従来構造における保持トルクのデータであり、実線が本実施形態による保持トルクのデータである。
【0054】
先に述べた理由により、外周電極列あるいは内周電極列の保持トルクはその半分が相殺されるため、従来構造に比べてそれぞれ半分の保持トルクで済む。さらに、保持トルクの波形が外周電極列と内周電極列とで半周期ずれているため、これらの保持トルクを総合すると、保持トルクのピークがなくなり平滑化される。
【0055】
本実施形態によれば、全体の保持トルクは、ピーク値がなくなって、一定値を保つことができるため、回転部材の低回転時における速度変動を抑えることができ、発電電流の変動を抑制できる。しかも、図20の従来技術に比べ、各電極と帯電膜とが完全にオーバラップする部分の面積は半分(クーロン力は半分)になり、保持トルクを半分に減らすことができるのである。従って、回転部材4の初動トルクも従来技術に比べて半分に減らすことができる。対向電極の第1電極と第2電極の配置を、図5(b)のようにすることによって、発生する電力を維持しつつ、クーロン力を低減することができる。しかも、クーロン力の影響を受けないエレクトレット発電を行うことができるのである。
【0056】
本実施形態は、上記で述べたように固定基板上で外周電極列と内周電極列との配置を、電極幅の半分ずらして(4分の1サイクルの位相差をもって)配列することで、保持トルクの半減と平滑化が図れるとともに、次に示す利点を有する。
(1)相殺しあうクーロン力を同一にできる。
従来技術の上下両面タイプでクーロン力をキャンセルしようとすると、上下の帯電膜列間で位相がずれるように厳密に位置調整しなくてはならない。基板の上下面に帯電膜列を構成する方法は二通りあり、1枚の基板に対して上面に帯電膜列を形成した後、基板を裏返してもう一方の面に帯電膜列を形成するか、2枚の基板の片面に帯電膜列を形成して裏面同士を張り合わせることで製造できる。上記いずれの製造方法であっても、上面側の帯電膜列の配置に対して、下面側の帯電膜列の配置を精密にずらして設置することは困難性を伴うため、作業工数の増大とコスト上昇につながる。さらに上下両面タイプでは、上部と下部の対向電極も相互に所定量だけずらして配置しなくてはならず、このような立体的な発電構造において配置位置の調整は困難性を伴う。一方、本実施形態によれば、基板上の平面的な配置距離で位相関係が決まり、調整を必要としない。これによって、生産性の向上と、クーロン力のキャンセル精度が大幅に向上する。
【0057】
次に、上下帯電膜の帯電量バラツキの問題が無い。
従来技術の上下両面タイプでは、上面帯電膜と下面帯電膜の帯電量が等しい場合にクーロン力を打ち消し合うことができる。しかし、上下両面タイプでは、1枚の基板の上下面に帯電膜を形成する方法、あるいは2枚の基板を張り合わせる方法のいずれの製造方法にしても、2回の帯電膜形成作業と帯電作業が必要となる。帯電膜形成工程では膜材の粘性により膜厚ムラができやすく、帯電膜の膜厚によって帯電する電荷量が増減する上に、帯電工程ではコロナ放電で電荷を注入するため帯電ムラが発生しやすく、1回の上記作業ごとに帯電膜の帯電量がバラ付くことになる。したがって、上下両面タイプで、上下帯電膜の帯電量を等しくするのは、かなり難しい課題であった。これに対して、本実施形態によれば、生産個体ごとに帯電膜厚と帯電電荷量のバラツキがあったとしても、単一基板上でみれば同一にすることができるので、クーロン力のキャンセルは可能である。このようにして、従来技術の上下両面タイプの課題を解消することができる。
【0058】
(2)配線が片側基板だけで済む。
すなわち、従来技術の上下両面タイプでは、ハイジングの上下部に離れて配置された発電電極から同じ整流回路部に発電電流を入力して蓄電することになり、整流回路部は上部又は下部のいずれかに配置することになるため、上下発電電極からの配線のいずれか、あるいは双方の配線長が長くならざるを得ない。したがって、配線抵抗が大きくなり、蓄電電力が低減してしまう。本実施形態であれば、片側の基板に配線が集中するため、その近傍に整流回路部を置き、短い配線で送電できる。
【0059】
(3)コスト面で優位である。
従来技術の上下両面タイプでは、基板の上下面に帯電膜と対向電極が必要なため、帯電膜と対向電極の形成作業が2回必要とする。本実施形態によれば、それぞれ1回で済む。また、回転部材の両面に対して帯電膜を形成する場合には、回転部材を表裏で固定するための治具とその作業が必要である。本実施形態ではこのようなコストを削減することができる。
(4)薄型に構成できる。
従来技術の上下両面タイプでは、移動する基板の上下面に帯電膜を設けるとともに、ハウジングの上部と下部にも電極を設ける必要があるため、発電器の厚みがでてしまい腕時計には不向きである。本実施形態によれば、基板上面の電極と回転部材の帯電膜のみでよいため、発電器を薄型に構成できる。
【0060】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。図11は、本発明の第2実施形態の整流回路を示す説明図である。図12は、本発明の第2実施形態の整流回路からの出力を示すグラフである。
【0061】
第2実施形態は、帯電膜3と対向電極2間で引き起こされる静電誘導発電電流が、3相交流となるように、第1、第2電極を配列した実施形態である。第2実施形態も第1実施形態と同じ図2の構造を有している。第1実施例と相違する点は、対向基板1に設けられた第1、2電極の配列が、外周から内周に向けて、同心円状(円環状)に、外周電極列、中間電極列、内周電極列の3列配置されている点である。第2実施形態は、回転部材4を適用した実施形態であるが、第2実施形態の回転部材4の代わりに、並進運動を行う移動部材としても同じような効果が得られる。なお、その他の実施形態においても同様である。
【0062】
図10(b)に示すように、外周電極列において、第1電極Aと第2電極NAは、回転方向に沿って交互に、一定角度間隔で一列に配置されている。中間電極列において、第1電極Bと第2電極NBは、回転方向に沿って交互に、一定角度間隔で一列に配置されている。内周電極列において、第1電極Cと第2電極NCは、回転方向に沿って交互に、一定角度間隔で一列に配置されている。図10(a)、(b)の実施形態では、各列の第1、2電極は、それぞれ円周方向に4個ずつ設置され、帯電膜3は4個設置されているが、これに限定されるものではなく、偶数個設置されていればよい。
【0063】
図10(a)、(b)の実施形態の場合の1サイクルは90°である。第1実施形態とは異なり、仮に回転部材4が反時計方向に回転するとすれば、第1電極Aと第2電極NAの外周電極列に対して、内周電極列は、30°先に進んだ位置で第1電極Cと第2電極NCの交互の繰り返しがなされ、中間電極列は、内周電極列より、30°先に進んだ位置で第1電極Bと第2電極NBの交互の繰り返しがなされる。各列の位相差は、上述の例示に限定されるものではなく、各列によって3相交流が発生できるように適宜設定すればよい。全ての第1電極と第2電極は等面積にしているが、これに限定されるものではない。要は、クーロン力による回転部材4の保持トルクが従来技術より低減されるような、各電極の配置、各電極の面積であれば良い。
【0064】
回転部材4の下面の帯電膜3は、図10(a)に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の各一片3との間にはブランク部(透し穴、貫穴)が形成されている。このブランク部が対向電極と正対しても、対向電極に電荷は生じないため、発電電流は生じない。なお、回転部材4の帯電膜3の回転は時計方向でも良いが、以下の図13〜15の説明のためには、反時計方向の回転で説明する。本実施形態においても、各列において第1、2電極に交流が発生する仕組みは、第1実施形態と同じである。本実施形態では、図12に示すような3相交流が発生する。その結果、Y結線の整流回路20によって、図12の実線で示したような出力波形の直流電圧が生成される。3相交流の場合は、NAとNBとNCを導通させて図11のNに示す仮想的な接地点を設けることができるため、接地のための出力線が不要になり、配線数を削減できる。従って、第1実施形態と比べて、整流器20における使用するダイオードを削減させ、回路構成を簡略にすることができる。発生した3相交流に対しては、Y結線の代わりにデルタ結線をしても良い。
【0065】
図13(a)、(b)、図14(c)、(d)、図15(e)、(f)は、本発明の第2実施形態において、帯電膜3と、電極A、NA、B、NB、C、NCのそれぞれとのオーバラップ部分の面積に働くクーロン力を説明する説明図である。図16(a)、(b)、(c)、(d)は、図10(b)の外周列、中間列、内周列に働く保持トルクと、回転部材全体に働く保持トルクを示す説明図である。図16において縦軸は、電極と帯電膜が引き合うクーロン力により、回転部材がその位置に保持される保持力の強さを示しており、横軸は、図13〜15に示した対向電極に対する帯電膜位置を示している。破線の波形が、図20(a)の従来構造における保持トルクのデータであり、実線が本実施形態による保持トルクのデータである図13〜15における上段、中段、下段はそれぞれ図10(b)の内周列、中間列、外周列に相当する。図13〜15において、帯電膜3のプラス側の移動は、図10(a)、(b)における回転部材4の帯電膜3の反時計方向の回転を表している。
【0066】
図13(a)は、下段の第1電極Aと帯電膜3とがぴったり重なった時である。すなわち、第1電極Aと帯電膜3のオーバラップ部分の面積が最大となっている。したがって、帯電膜3が図示のプラスの移動方向(反時計方向の回転)に移動しようとすると、移動を阻止するように回転部材4に保持トルクを作用させる。このとき、中段の第1電極Bと第2電極NBの合計保持トルクと、上段の第2電極NCと第1電極Cの合計保持トルクとが若干作用している。対向基板の電極は3列に分割しているので、それぞれ本来働く保持トルクの3分の1で済んでいる。回転部材4の初動トルクも従来技術に比べて減らすことができる。
【0067】
次に、帯電膜3のプラス方向の移動が行われて、図13(b)は、中段の第2電極NBと帯電膜3とがぴったり重なった時である。すなわち、第2電極NBと帯電膜3のオーバラップ部分の面積が最大となっている。したがって、帯電膜3が図示のプラスの移動方向(回転)に移動しようとすると、移動を阻止するように回転部材4に保持トルクを作用させる。このとき、下段の第1電極Aと第2電極NAの合計保持トルクと、上段の第2電極NCと第1電極Cの合計保持トルクとが若干作用している。この場合でも対向基板の電極は3列に分割しているので、それぞれ本来働く保持トルクの3分の1で済んでいる。図14(c)、(d)、図15(e)、(f)においても同様の現象が生じて、図16(a)〜(d)に示したように、各段に働く保持トルクを重ね合わせると、回転部材全体に働く保持トルクは、本来働く保持トルクの約半分程度で済むことがわかる。
【0068】
本実施形態によれば、全体の保持トルクは、ピーク値がなくなって、一定値を保つことができる。しかも、この一定値は、図20の従来技術に比べ、保持トルクを約半分程度に減らすことができるのである。対向電極の第1電極と第2電極の配置を、図10(b)のようにすることによって、発生する電力を維持しつつ、クーロン力を低減することができる。しかも、クーロン力の影響を受けないエレクトレット発電を行うことができるのである。その他の作用効果は第1実施形態と同じである。
【0069】
(第3実施形態)
図17は、本発明の第3実施形態の対向電極と帯電膜の概要を示す図である。
【0070】
第3実施形態は、回転部材4の下面の帯電膜3は、図17(a)に示すように、外周側と内周側で位相差を4分の1サイクル分だけ設定し、対向基板1の外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列と、内周側の第1電極Bと第2電極NBの外周電極列には、図17(b)に示すように、位相差を設定しない場合の実施形態である。その他の構成は、第1実施形態と同じである。図17(a)のように、対向基板1の外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列と、内周側の第1電極Bと第2電極NBの外周電極列に対応して、外周側の帯電膜3’と内周側の帯電膜3’’とが4分の1分だけ位相がずれている。外周側の帯電膜3’と内周側の帯電膜3’’は、等面積である。これらは連結していてよい。
【0071】
ずれた外周側の帯電膜3’と内周側の帯電膜3’’の帯電膜3と隣の帯電膜3との間には、ブランク部が形成されている。他の実施形態と同様に、回転移動する帯電膜3からは整流器への入力は無い。
【0072】
内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列において、複数の第1電極Bを連結した配線をB配線といい、複数の第2電極NBを連結した配線をNB配線という。第1電極Aと第2電極NAと同様に、内周側の第1電極Bと第2電極NBは、回転方向に沿って交互に、一定角度間隔で一列に配置されている。内周側の第1電極Bと第2電極NBは、外周側の第1電極Aと第2電極NAとは、位相差ゼロで配列されている。しかしながら、外周側の帯電膜3’と内周側の帯電膜3’’が4分の1の位相差をもっているので、回転部材4の回転に伴い、内周側の第1電極Bと第2電極NBは、外周側の第1電極Aと第2電極NAと同様に、4分の1サイクルだけ位相差の遅れを以って、交流電流が流れる。同様にして、帯電膜の位相ずれを外周列、中間列、内周列に設置して、対向電極側の3列の位相差をゼロにすれば、3相交流を出力することができる。
【0073】
外周側の第1電極Aと第2電極NAの外周電極列に発生した交流は、配線A、NAを経て整流回路20に入力され、内周側の第1電極Bと第2電極NBの内周電極列に発生した交流も、配線B、NBを経て整流回路20に入力されて、整流されて、図7に示す直流電流と同様に取り出される。上述された発電装置から出力された2相の交流波形は、整流回路20により直流に変換され、降圧回路30を経て2次電池22に充電されることになる。本実施形態においても、回転軸8からは電流を取り出す必要はなく、固定された対向基板から電流を取り出せばよいので、回路構成が極めて簡易なものにすることができる。
【0074】
第3実施形態の作用効果は、第1実施形態と同様である。回転部材4に複雑なブランク部を打抜く必要があるが、必ずしもブランク部を形成する必要はなく、平板の基板に、ずれた外周側の帯電膜3’と内周側の帯電膜3’’を90°毎に設置しても良い。
【0075】
以上述べた実施形態の他に、その他の実施形態にも、本発明の特徴が適用可能である。第1〜3に実施形態は、回転部材4に帯電膜を形成した形態で説明したが、回転部材4の代わりに並進往復運動する移動部材に、帯電膜を所定間隔で設置してもよい(特許文献3を引用補充する)。それに対向する固定された対向基板1に、図7(a)や図13(a)にみられるような四角形の第1、2電極を同様に設置すれば、これらの実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0076】
第1〜3に実施形態は、図2に示すように、回転軸8の回転部材4の上側において歯車14が回転軸8に固定されている。また、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構(歯車列)として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。歯車列としては2個以上あっても良い。一方、回転錘10は直接回転軸8に設けることも可能である。さらには、回転部材4に錘を設けて、回転錘の代わりにしても良い。これらの場合には歯車伝動機構15、14が不要である。
【0077】
さらに、特許文献1、2のように、回転部材4に錘を設けて、軸8とハウジング33の間にヒゲゼンマイ(時計用語、渦巻きバネ)を設け(この点は特許文献1、2を引用補充する)、ヒゲゼンマイの一端はヒゲ持ち(時計用語、支持棒)でハウジングに固定され、ヒゲゼンマイの他端が、回転軸8にヒゲ玉(時計用語、環状リング)によって圧入や加締めで固定されるような実施形態に、第1〜3実施形態の対向電極と帯電膜の特徴を適用しても良い。この形態は、歯車14と回転軸8との間にベアリングを設けるとともに、ヒゲゼンマイの一端はヒゲ持ちで歯車14に固定され、ヒゲゼンマイの他端が、回転軸8にヒゲ玉によって圧入や加締めで固定するようにしても良い。さらには、第1〜3実施形態における、回転部材4の下方側に設置した対向電極と帯電膜の特徴を、下方側だけでなく同時に、回転部材4の上方側にも設けても、実施可能である。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 対向基板
2 対向電極
3、3’、3’’ 帯電膜
4 回転部材
8 軸
10 回転錘
14、15 歯車
20 整流回路
21 歯車駆動部
22 2次電池
24 風防
25 文字板
30 降圧回路
33、34 ハウジング
A、B、C 第1電極
NA、NB、NC 第2電極
200 クオーツムーブメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20