(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二ハウジングの内部において、前記コイルスプリングの内側に位置して前記ガイド部材の前記軸受ホルダとは反対側の端部内に挿入されるとともに、前記従動部材を保持する第二ガイド部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のアクチュエータを、開口部に対して開閉可能に設けられたドアを開閉駆動するために用いた車両ドア開閉用アクチュエータであって、
前記開口部および前記ドアの何れか一方に前記第一ハウジングを連結し、
前記開口部および前記ドアの何れか他方に前記第二ハウジングを連結したことを特徴とする車両ドア開閉用アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(車両ドア開閉用アクチュエータ)
図1は、本発明の実施形態における車両ドア開閉用アクチュエータ100(以下、単にアクチュエータ100という)を備えた車両の例を示す斜視図である。
同図に示すように、アクチュエータ100は、自動車1の例えばテールゲート(ドア)2を開閉する。テールゲート2は、自動車1の車体後部に形成された開口部3に対し、開口部3の上部3aに図示しないヒンジ機構を介して開閉可能に設けられている。
【0022】
アクチュエータ100は、開口部3の左右両側にそれぞれ設けられ、それぞれ、一端100aが開口部3の側枠部3sにピン(図示無し)を介して回動可能に連結され、他端100bがテールゲート2にピン(図示無し)を介して回動可能に連結されている。
【0023】
図2は、アクチュエータ100の外観を示す側面図である。
図3は、アクチュエータ100の断面図である。
図4は、アクチュエータ100のモータ部30および減速ギヤ部50を示す拡大断面図である。
図2、
図3に示すように、アクチュエータ100は、第一ハウジング10と、第二ハウジング20と、モータ部30と、モータ部30の回転力を減速して出力する減速ギヤ部50と、減速ギヤ部50を介して伝達されるモータ部30の回転力により回転するスクリュー軸60と、コイルスプリング70と、を備えている。
【0024】
第一ハウジング10は、円筒状で、鉄等の金属製材料から形成されている。
図4に示すように、第一ハウジング10の一端10a(
図4における左側端)には、テールゲート2側にピン(図示無し)を介して連結されるジョイント部材11が設けられている。ジョイント部材11は、円板状で第一ハウジング10の一端10の内側に嵌め込まれたプレート部11aと、プレート部11aから第一ハウジング10の外方に突出し、ピン(図示無し)が連結されるジョイント部11bと、を備えている。
【0025】
第一ハウジング10の一端10aには、キャップ12が装着されている。キャップ12は、ジョイント部材11のジョイント部11bが挿通される挿通孔12hを中央部に有した円板状の閉塞部12aと、閉塞部12aの外周部から筒状に連続して延びる筒状部12bと、を一体に備えている。キャップ12は、筒状部12b内に第一ハウジング10の一端10aが圧入されることで第一ハウジング10に固定されている。
【0026】
図3に示すように、第二ハウジング20は、第一ハウジング10の内径よりも小さな外径を有した円筒状で、樹脂等の第一ハウジング10よりも軟らかい材料から形成されている。このように、第二ハウジング20は、第一ハウジング10に対して軽量化が図られている。
第二ハウジング20は、一端20a側(
図3における左端側)が、第一ハウジング10の他端10b側(
図3における右端側)から第一ハウジング10内に挿入されている。第二ハウジング20は、第一ハウジング10に対し、他端10bから出没する方向に相対移動可能とされている。
【0027】
第二ハウジング20の他端20bは、深絞り加工等により底部20cが形成されている。この底部20cの径方向中央に、後述のジョイント部材21のジョイント部21bを挿通可能な貫通孔20dが形成されている。
また、第二ハウジング20の他端20bには、底部20cの内側にジョイント部材21が設けられている。ジョイント部材21は、自動車1の開口部3の側枠部3sと第二ハウジング20とを連結するためのものである。ジョイント部材21は、第二ハウジング20の他端20bの内側に嵌め込まれたプレート部21aと、プレート部21aから底部20cに形成された貫通孔20dを介して外方に突出するジョイント部21bと、を有している。このジョイント部21bに、ピン(図示無し)を介して開口部3の側枠部3sが連結される。
【0028】
プレート部21aは底部20cに面するように配置され、第二ハウジング20の他端20bにかしめ加工等により固定されている。また、プレート部21aの径方向中央には、第二ハウジング20の内方に突出する雄ネジ部21cが設けられている。この雄ネジ部21cに、円筒状のインナーチューブ24の他端24bが螺合されている。
【0029】
円筒状のインナーチューブ24は、第二ハウジング20内に配置されている。インナーチューブ24は、例えばアルミに引き抜き加工を施して形成される。このインナーチューブ24の他端24bに、ジョイント部材21の雄ネジ部21cに螺合する雌ネジ部24cが刻設されている。
【0030】
(モータ部)
図5は、モータ部30のヨーク31および減速ギヤ部50のインターナルギヤ51を示す斜視図である。
図4、
図5に示すように、モータ部30は、ヨーク31と、ヨーク31の内周面31fに固定されたマグネット32と、ヨーク31の径方向内側に回転自在に設けられたアーマチュア130と、アーマチュア130に電流を供給する給電部35と、アーマチュア130の回転位置を検出する検出部36と、を備えている。
【0031】
ヨーク31は、金属製で、円筒状をなし、第一ハウジング10内に配置されている。ヨーク31の外径は、第一ハウジング10の内径よりも所定寸法小さい。ヨーク31の一端31a側には、ホルダ部材37が設けられている。ホルダ部材37は、ヨーク31の一端31aを塞ぐ円板状のプレート部37aと、プレート部37aからヨーク31の内側に挿入された第一筒状部37bと、プレート部37aから第一筒状部37bと反対側に向かって延びるよう形成された第二筒状部37cと、を有する。
【0032】
プレート部37aおよび第二筒状部37cは、ヨーク31の外径と略同径の外径を有している。ホルダ部材37は、第一筒状部37bをヨーク31内に挿入し、プレート部37aをヨーク31の一端31a(
図4における左側端)に突き当てて装着される。
図5に示すように、第一筒状部37bには、その外周面にヨーク31の軸方向に延びる突起37dが形成されている。ヨーク31の一端31aには、突起37dが係合するスリット31dが形成されている。突起37dとスリット31dとが係合することで、ホルダ部材37は、ヨーク31に対し、周方向に相対移動不能に設けられている。
【0033】
図4に示すように、ヨーク31の他端31b側(
図4における右端側)には、後述する減速ギヤ部50を構成するインターナルギヤ(ギヤケース、リングギヤ)51が挿入されている。インターナルギヤ51は、円板状のプレート部51aと、プレート部51aの外周部からヨーク31の他端31bに向かって延びる円筒状の筒状部51bと、プレート部51aとは反対側の端部で筒状部51bから外周側に拡径したフランジ部51cと、を一体に備えている。
このインターナルギヤ51は、プレート部51aをヨーク31の一端31a側に向けて筒状部51bがヨーク31内に挿入され、フランジ部51cをヨーク31の他端13bに突き当てて装着される。
【0034】
図5に示すように、インターナルギヤ51のフランジ部51cにはスリット51dが形成され、ヨーク31の他端31bから軸方向に延びるよう形成された突起31eがかしめ加工等によって係合される。スリット51dと突起31eとが係合されることにより、インターナルギヤ51は、ヨーク31に対し、周方向に相対移動不能に設けられている。
【0035】
図4に示すように、ホルダ部材37の第二筒状部37cと、ジョイント部材11のプレート部11aとの間には、エンドダンパ38が設けられている。エンドダンパ38は、弾性を有したゴム系材料からなり、ホルダ部材37の第二筒状部37cと、ジョイント部材11のプレート部11aとの間に挟み込まれた円板状のプレート部38aと、プレート部38aの外周部からホルダ部材37側に延び、第二筒状部37cが内側に挿入される筒状部38bと、を一体に有している。
ジョイント部材11のプレート部11aとエンドダンパ38のプレート部38a、互いに当接した状態になっている。そして、各プレート部11a,38aの何れか一方には凸部が、他方にはこの凸部が嵌る凹部(何れも図示無し)が形成されている。これにより、各プレート部11a,38a同士が相対回転しないようになっている。
【0036】
ここで、ヨーク31の一端31a側では、エンドダンパ38の筒状部38bが、ホルダ部材37の第二筒状部37cと第一ハウジング10との間に介在している。これにより、ヨーク31と第一ハウジング10との間には、クリアランスC1が形成されている。
【0037】
ヨーク31の内周面31fに固定されたマグネット32は、ヨーク31の中心軸方向に長く、ヨーク31の内周面31fの周方向に間隔を空けて複数個が設けられている。
ヨーク31の径方向内側に設けられたアーマチュア130は、シャフト33と、シャフト33に固定されたコア34aと、コア34aに巻回されているコイル34bと、を有する。
【0038】
シャフト33は、ヨーク31の中心軸方向に沿って延びるよう設けられている。シャフト33は、一端33aが、ホルダ部材37のプレート部37aの中央部に設けられた環状の軸受38Aに、その中心軸回りに回動自在に支持されている。
シャフト33の他端33bは、インターナルギヤ51のプレート部51aの中央部に設けられた環状の軸受38Bに、その中心軸回りに回転自在に支持されている。
【0039】
コア34aは、2つの軸受38A,38Bの間で、シャフト33の外周面に一体に設けられている。コア34aは、放射状に延びる複数のティース131を有している。これらティース131に、それぞれ絶縁性のインシュレータ132を介してコイル34bが巻回されている。
【0040】
このように構成されたアーマチュア130に電流を供給する給電部35は、ホルダ部材37に保持されている。給電部35は、ホルダ部材37に保持され、コイル34bに給電するためのブラシ35aと、シャフト33に設けられブラシ35aと摺接する整流子35bと、を有している。ブラシ35aには、外部の電源から給電する配線(図示無し)が接続されている。この配線(図示無し)は、ホルダ部材37のプレート部37a、エンドダンパ38、ジョイント部材11のプレート部11aを貫通し、アクチュエータ100の他端10b(
図4における左側端)から外部に導出される。
整流子35bは、コイル34bと電気的に接続されている。
【0041】
アーマチュア130の回転位置を検出するための検出部36は、センサマグネット39と、センサ基板40と、を備えている。
センサマグネット39は、ホルダ部材37のプレート部37aに対して第二筒状部37c側で、シャフト33の一端33a(
図4における左側端)に一体に設けられている。
センサ基板40は、板状で、ホルダ部材37の第二筒状部37c内に保持されている。このセンサ基板40には、センサマグネット39と対向する側に、センサマグネット39がシャフト33とともに回転したときに、その回転を検出するホールIC等の磁気検出子40sが設けられている。センサ基板40には、磁気検出子40sにおける検出信号を外部に出力する出力信号線(図示無し)が接続されている。
【0042】
このようなモータ部30は、給電部35の配線(図示無し)およびブラシ35aを通してコイル34bに通電すると、コイル34bで発生する磁力と、ヨーク31に固定されたマグネット32で発生する磁力との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によって、シャフト33がその中心軸回りに回転駆動される。
【0043】
検出部36では、シャフト33と一体に設けられた検出部36のセンサマグネット39の回転を、センサ基板40の磁気検出子40sで検出することで、シャフト33の回転回数を検出する。磁気検出子40sで検出されたセンサマグネット39の回転、すなわちシャフト33の回転は、出力信号線(図示無し)を介し、アクチュエータ100の他端10bから外部に出力される。
【0044】
(減速ギヤ部)
このように構成されたモータ部30の給電部35とは反対側に、減速ギヤ部50が設けられている。減速ギヤ部50は、インターナルギヤ51と、第一サンギヤ52と、第一段遊星ギヤ53と、第一キャリア54と、第二サンギヤ55と、第二段遊星ギヤ56と、第二キャリア57と、を備えている。
【0045】
ヨーク31の他端31b内に設けられたインターナルギヤ51は、筒状部51bの内周面に、ギヤ歯51gが形成されている。
第一サンギヤ52は、シャフト33の他端33bに嵌め込まれ、その外周面にギヤ歯52gが形成されている。
【0046】
第一段遊星ギヤ53は、第一サンギヤ52の外周部に、例えば3個が設けられている。各第一段遊星ギヤ53は、その外周面に第一サンギヤ52のギヤ歯52gおよびインターナルギヤ51のギヤ歯51gに噛み合うギヤ歯53gが形成されている。
第一キャリア54は、円板状で、複数の第一段遊星ギヤ53に対し、シャフト33とは反対側に配置されている。第一キャリア54は、円板状に形成され、かつ第一段遊星ギヤ53を回転自在に支持する支持軸が組み付けられている。
【0047】
第二サンギヤ55は、第一キャリア54の中心部に、シャフト33とは反対側に一体に設けられている。第二サンギヤ55は、その外周面にギヤ歯55gが形成されている。
【0048】
第二段遊星ギヤ56は、第二サンギヤ55の外周部に、例えば3個が設けられている。各第二段遊星ギヤ56は、その外周面に第二サンギヤ55のギヤ歯55gおよびインターナルギヤ51のギヤ歯51gに噛み合うギヤ歯56gが形成されている。
第二キャリア57は、複数の第二段遊星ギヤ56に対し、シャフト33とは反対側に配置されている。第二キャリア57は、円板状に形成され、かつ第二段遊星ギヤ56を回転自在に支持する支持軸(図示無し)が組み付けられている。
【0049】
ここで、インターナルギヤ51のプレート部51aと第一段遊星ギヤ53との間、および第一キャリア54と第二段遊星ギヤ56との間には、ワッシャ58A、58Bが配されている。
これら第一サンギヤ52、第二サンギヤ55は、それぞれ焼結材などの金属製とされ、第一キャリア54、第二キャリア57もまた金属製とされている。また、インターナルギヤ51、第一段遊星ギヤ53、第二段遊星ギヤ56は、それぞれ樹脂製とされている。
【0050】
さらに、インターナルギヤ51のギヤ歯51g、第一サンギヤ52のギヤ歯52g、第一段遊星ギヤ53のギヤ歯53g、第二サンギヤ55のギヤ歯55g、第二段遊星ギヤ56のギヤ歯56gは、それぞれハス歯歯車とされている。これにより、減速ギヤ部50の各ギヤ間における噛み合い代を増やし、作動音を低減することができる。
また、インターナルギヤ51のギヤ歯51gは、第一段遊星ギヤ53のギヤ歯53gに噛み合う部分と、第二段遊星ギヤ56のギヤ歯56gに噛み合う部分とが、連続する同一ピッチのギヤ歯51gにより形成されている。これにより、インターナルギヤ51を容易に製作することができる。
【0051】
このような減速ギヤ部50においては、シャフト33が回転すると、第一サンギヤ52がシャフト33と一体に回転する。第一サンギヤ52の回転は、その外周側の第一段遊星ギヤ53に伝達される。各第一段遊星ギヤ53は、第一サンギヤ52のギヤ歯52gと、外周側のインターナルギヤ51のギヤ歯51gとに噛み合いながら、第一サンギヤ52の外周部を公転するとともに、第一キャリア54に組み付けられた支持軸を中心に自転する、いわゆる遊星運動する。
これら複数の第一段遊星ギヤ53の遊星運動により、第一キャリア54がシャフト33と同軸回りに減速されて回転する。
【0052】
第一キャリア54が回転すると、第二サンギヤ55が一体に回転し、その外周側の第二段遊星ギヤ56に伝達される。各第二段遊星ギヤ56は、第二サンギヤ55のギヤ歯55gと、外周側のインターナルギヤ51のギヤ歯51gとに噛み合いながら、第二サンギヤ55の外周部で公転すると共に、第二キャリア57に組み付けられた支持軸を中心に自転する、いわゆる遊星運動する。
これら複数の第二段遊星ギヤ56の遊星運動により、第二キャリア57がシャフト33と同軸回りに減速されて回転する。
【0053】
スクリュー軸60は、その一端60aが、第一ハウジング10内に設けられた軸受61により、その中心軸回りに回動自在に保持されている。軸受61は、かしめ加工等によって第一ハウジング10内に嵌め込み固定された円環状の軸受ホルダ62の内側に保持されている。
【0054】
図6は、インターナルギヤ51と軸受ホルダ62との間に配するダンパ部材63を示す斜視展開図である。
図4、
図6に示すように、軸受61および軸受ホルダ62と、インターナルギヤ51のフランジ部51cとの間には、ダンパ部材63が設けられている。
【0055】
ダンパ部材63は、弾性を有したゴム系材料からなり、軸受61および軸受ホルダ62と、インターナルギヤ51のフランジ部51cとの間に挟み込まれた円板状のプレート部63aと、プレート部63aの外周部からインターナルギヤ51側に延び、インターナルギヤ51のフランジ部51cが内側に挿入される筒状部63bと、を一体に有している。
【0056】
ここで、ヨーク31の他端31b側では、ダンパ部材63の筒状部63bが、ヨーク31の他端31bおよびインターナルギヤ51のフランジ部51cと第一ハウジング10との間に介在し、ヨーク31と第一ハウジング10との間に、クリアランスC1が形成される。すなわち、モータ部30および減速ギヤ部50は、これらの軸方向両端に設けられたエンドダンパ38およびダンパ部材63によって、第一ハウジング10にフローティング支持されている。
【0057】
また、第一ハウジング10にかしめ固定された軸受ホルダ62において、ダンパ部材63に対向する側には、周方向に間隔をあけて複数の突起62tが形成されている。また、インターナルギヤ51のフランジ部51cにおいて、ダンパ部材63に対向する側には、周方向に間隔を空けて複数の突起51tが形成されている。ダンパ部材63には、周方向に間隔を空けて、突起51t,62tのそれぞれが挿入される複数の挿入孔63h,63gが形成されている。すなわち、インターナルギヤ51に形成された突起51tと、第一ハウジング10に固定された軸受ホルダ62に形成された突起62tとによって、第一ハウジング10に対してヨーク31が相対回転することを防ぐ。また、突起51tと突起62tとがダンパ部材63の挿入孔63h、63gに挿入されることにより、モータ部30および減速ギヤ部50の振動が、第一ハウジング10に伝達されることを防ぐ。
【0058】
スクリュー軸60の一端60aには、減速ギヤ部50の第二キャリア57の中央部に形成された出力ギヤ孔57hに噛み合うギヤ64が設けられている。これにより、スクリュー軸60は、モータ部30におけるシャフト33の回転が、減速ギヤ部50を介して伝達され、その中心軸回りに回転駆動される。
【0059】
図7は、第一ハウジング10と第二ハウジング20との継ぎ目の部分を示す拡大断面図である。
同図に示すように、スクリュー軸60の外周面には、螺旋状に連続したネジ条60nが形成されている。スクリュー軸60の他端60b側は、第二ハウジング20のインナーチューブ24の一端24a内に設けられたナット部材25内に挿入されている。
【0060】
図8は、インナーチューブ24とナット部材25とを示す斜視展開図である。
同図に示すように、ナット部材25は、その外周面に、周方向に間隔を空けて複数(例えば、この実施形態では4つ)の溝25mが形成されている。一方、ナット部材25が挿入されたインナーチューブ24の内周面には、インナーチューブ24の軸方向に沿って連続する突条24tが、周方向に間隔を空けて複数(例えば、この実施形態では4つ)形成されている。
【0061】
ナット部材25は、インナーチューブ24の突条24tに溝25mを噛み合わせて配置される。これにより、インナーチューブ24に対するナット部材25の周方向の回転が規制される。そして、インナーチューブ24は、他端24bが第二ハウジング20の他端20bに設けられたジョイント部材21に螺合されているので、このジョイント部材21とインナーチューブ24とを介してナット部材25と第二ハウジング20との相対回転が規制される。
【0062】
図7に示すように、ナット部材25の溝25mは、ナット部材25において第一ハウジング10側とは反対側の端部25bから、第一ハウジング10側に向かって所定長の長さで形成されている。これにより、溝25mは、ナット部材25の第一ハウジング10側の端部25aから一定長の範囲では形成されていない。また、インナーチューブ24に形成された突条24tも、インナーチューブ24の一端24aから所定長の範囲には形成されていない。
【0063】
このように、溝25mを、軸方向全体に渡って形成せず、ナット部材25の溝25mとインナーチューブ24の突条24tとの噛み合いによって、ナット部材25が第一ハウジング10から離間する方向に移動するのを規制している。
また、ナット部材25の端部25aは、インナーチューブ24内に、スナップリング25rやかしめ加工等によって固定されている。
【0064】
スクリュー軸60は、ネジ条60nが、ナット部材25の内周面に形成された雌ネジ溝25nに螺合するとともに、先端部60sがナット部材25を貫通して突出している。
スクリュー軸60の先端部60sには、外周側に張り出すストッパ65が、かしめ加工等によって一体に固定されている。このストッパ65によって、ナット部材25のスクリュー軸60からの抜けが防止される。
【0065】
図3に示すように、第一ハウジング10および第二ハウジング20内に、コイルスプリング70が配置されている。コイルスプリング70は、例えば金属製である。コイルスプリング70は、第二ハウジング20内で、インナーチューブ24がその内側に挿入されている。また、第一ハウジング10内で、コイルスプリング70の内側には、第一ハウジング10内に設けられた筒状のガイドチューブ18が挿入されている。
【0066】
図7に示すように、ガイドチューブ18は、内径がインナーチューブ24の外径よりも大きく、その内側にインナーチューブ24が挿入配置されている。また、ガイドチューブ18の他端18b側の外周面18fは、一端18a側から他端18b側に向かってその外径が漸次小さくなるテーパ状に形成されている。
【0067】
また、
図4に示すように、ガイドチューブ18の一端18a側には、外周側に張り出すフランジ部18cが一体に形成されている。さらに、ガイドチューブ18のフランジ部18cと、軸受ホルダ62との間には、円環状のシール部材66が挟み込まれている。シール部材66は、ゴム系材料等の防水性および弾性を有した材料からなり、その外周面は、第一ハウジング10に密着している。
コイルスプリング70は、その内側に、インナーチューブ24およびガイドチューブ18が挿通されることで、コイルスプリング70の伸縮時に、コイルスプリング70が伸縮方向側方に撓んだり座屈したりするのを抑える。
【0068】
このようなコイルスプリング70は、第二ハウジング20のジョイント部材21のプレート部21aと、ガイドチューブ18のフランジ部18cとの間に、圧縮状態で設けられている。これにより、コイルスプリング70は、第一ハウジング10と第二ハウジング20とが互いに離間して、アクチュエータ100の全長を延ばす方向に付勢している。
また、コイルスプリング70によって、ガイドチューブ18のフランジ部18cがシール部材66側に押圧される。換言すれば、ガイドチューブ18のフランジ部18cと軸受ホルダ62とにより、シール部材66が挟持されている。
【0069】
図7に示すように、第一ハウジング10の他端10bには、その外周側に円筒状のアウターリング80が設けられている。アウターリング80は、金属等の剛性の高い材料により形成されており、第一ハウジング10の他端10bに圧入されて固定されている。
また、アウターリング80の先端部80aは、第一ハウジング10の他端10bよりも第二ハウジング20側に僅かに突出している。アウターリング80の先端部80aの内周面には、円環状で防水性と弾性とを有するゴム系材料からなる円環状のシールリング81が一体に設けられている。
このように、材料の異なるアウターリング80とシールリング81は、例えば2色成形により形成される。
【0070】
シールリング81の内周面は、第二ハウジング20の外周面に摺接している。このシールリング81により、第一ハウジング10と第二ハウジング20との隙間からアクチュエータ100内に水等が侵入するのを防止する。
【0071】
(車両ドア開閉用アクチュエータの動作)
次に、アクチュエータ100の動作について説明する。
モータ部30のシャフト33を回転駆動させると、シャフト33の回転が減速ギヤ部50を介してスクリュー軸60に伝達される。これによってスクリュー軸60が回転すると、ナット部材25がスクリュー軸60の軸方向に沿って移動する。ナット部材25は、第二ハウジング20と一体化されたインナーチューブ24に固定されているので、これによって、第一ハウジング10に対して第二ハウジング20が出没し、アクチュエータ100が伸縮する。
【0072】
このとき、第一ハウジング10は鉄等の金属製材料から形成されている一方、第二ハウジング20は樹脂等の軟らかい材料で形成されているので、第一ハウジング10と第二ハウジング20の双方にスライド痕が付くことなく、第二ハウジング20のみにスライド痕が付く。しかも第二ハウジング20を樹脂等により形成することで、スライド痕が目立たず、意匠性が維持される。
【0073】
図9は、アクチュエータ100を縮めた状態を示す断面図である。
同図に示すように、第一ハウジング10に対して第二ハウジング20が没入すると、自動車1の開口部3に設けられたバックゲート2が閉じられる。一方、
図3に示すように、第一ハウジング10に対して第二ハウジング20が突出すると、自動車1の開口部3に設けられたバックゲート2が開けられる。このとき、アクチュエータ100を伸ばした状態でモータ部30の動作を停止させても、コイルスプリング70の付勢力によって、第一ハウジング10に対し第二ハウジング20が突出した状態が維持される。
【0074】
ここで、上述の実施形態では、第一ハウジング10内にガイドチューブ18を設け、このガイドチューブ18のフランジ部18cと軸受ホルダ62とにより、シール部材66を挟持している。このため、シール部材66にフランジ部18cと軸受ホルダ62とが密着し、これらフランジ部18cと軸受ホルダ62との間のシール性が確保される。この結果、例えば、第一ハウジング10と第二ハウジング20との隙間から水や塵埃が侵入した場合であっても、シール部材66によって、モータ部30の内部に水や塵埃が侵入してしまうことを防止できる。よって、アクチュエータ100の耐久性を向上できるとともに、作動の信頼性を高めることができる。
【0075】
しかも、第一ハウジング10とガイドチューブ18との間にコイルスプリング70を設け、コイルスプリング70のバネ力を利用してシール部材66側にフランジ部18cを押圧させている。このため、シール部材66に対するフランジ部18cおよび軸受ホルダ62の密着性を高めることができる。
また、ガイドチューブ18によって、圧縮時におけるコイルスプリング70の圧縮方向に交差する方向の座屈を防止できる。コイルスプリング70の押圧力は、フランジ部18cを介してシール部材66に伝達されるため、コイルスプリング70の押圧力がシール部材66に均等に作用する。このため、シール部材66に対するフランジ部18cおよび軸受ホルダ62の密着性をさらに高めることができる。
【0076】
ここで、軸受ホルダ62にシール部材66を密着させるように設け、モータ部30側の防水性、防塵性を高めるためにガイドチューブ18を利用しているが、このガイドチューブ18を設けることによって、第一ハウジング10の軸受ホルダ62に対応する位置に段差面を設けて軸受ホルダ62とシール部材66とを密着させる必要がない。つまり、第一ハウジング10のガイドチューブ18に対応する箇所を、このガイドチューブ18の形状に合わせて深絞り加工を施し、第一ハウジング10に、シール部材66と当接する段差面(内壁)を形成する必要がない。このため、第一ハウジング10を筒状に形成でき、この第一ハウジング10の加工コストを低減できる。
【0077】
また、第一ハウジング10を筒状に形成できることから、アクチュエータ100を組み付ける際、第1ハウジング10にモータ部30、減速ギヤ部50、軸受ホルダ62を組み付けた後、第一ハウジング10の他端10b側からシール部材66、ガイドチューブ18、およびコイルスプリング70を、この順に挿入していけばよい。このため、アクチュエータ100の組立性も向上できる。
【0078】
また、第二ハウジング20内にインナーチューブ24を設けることにより、ガイドチューブ18の他端18b側にインナーチューブ24が配置された状態になっている。このため、ガイドチューブ18とインナーチューブ24の2つのチューブ18,24により、コイルスプリング70の全長をガイドすることができる。
また、インナーチューブ24によって、圧縮時におけるコイルスプリング70の圧縮方向に交差する方向の座屈を防止できる。このため、コイルスプリング70の押圧力がシール部材66にさらに均等に作用する。この結果、シール部材66に対するフランジ部18cおよび軸受ホルダ62の密着性をさらに高めることができる。
さらに、インナーチューブ24がナット部材25を保持することで、ナット部材25を保持するために他の部品等を備える必要がなく、部品点数を減少できる。
【0079】
さらに、アクチュエータ100は、第一ハウジング10の端部に設けられた筒状のアウターリング80と、アウターリング80の内周面に設けられ、第二ハウジング20の外周面に摺接する環状のシールリング81と、をさらに備えている。これにより、第一ハウジング10と第二ハウジング20との隙間から、侵入物(雨水や塵埃等)が侵入するのを防ぐことができる。
【0080】
また、モータ部30のヨーク31の内周面31gに、減速ギヤ部50のインターナルギヤ51が設けられている。このため、ヨーク31とインターナルギヤ51との相対位置を、容易かつ高精度に決定できる。
しかも、インターナルギヤ51に、モータ部30のシャフト33を回転自在に支持する軸受38Bを設けている。このため、モータ部30の中心軸と減速ギヤ部50の中心軸とを、容易かつ高精度に位置合わせすることができる。また、部品に過度なストレスが掛かって耐久性が損なわれたり、部品同士の当たりが強くなって作動音が高まったりする等の不具合が生じるのを防ぐことができる。したがって、アクチュエータ100の耐久性、作動性等を高めるとともに、振動や作動音を低減して高品質化を図ることが可能となる。
また、インターナルギヤ51に、モータ部30のシャフト33を回転自在に支持する軸受38Bを設けることにより、ヨーク31に軸受38Bを支持するための絞り加工等を施す必要がなくなるので、ヨーク31の加工コストを低減できる。
【0081】
さらに、減速ギヤ部50を遊星減速機構により構成することで、減速ギヤ部50の減速比を高めつつ、省スペース化できる。
そして、減速ギヤ部50を構成する遊星減速機構が複数段の構成であり、インターナルギヤ51の内周面に形成するギヤ歯51gを、第一段遊星ギヤ53、第二段遊星ギヤ56のそれぞれに噛み合う同一ピッチで形成するようにした。これにより、インターナルギヤ51を容易に製作することができる。
【0082】
また、インターナルギヤ51は、ヨーク31の内周面31gにかしめ加工により固定されている。このため、ヨーク31に対してインターナルギヤ51を確実に位置決め固定できる。さらに、モータ部30の回転時に、その反力によって、インターナルギヤ51が回転しまうのを防ぐことができる。
【0083】
また、ヨーク31の一端31a側に設けられたホルダ部材37に、エンドダンパ38が設けられていると共に、ヨーク31の他端31b側に設けられたインターナルギヤ51に、ダンパ部材38が設けられている。これにより、ヨーク31と第一ハウジング10との間にクリアランスC1が形成される。すなわち、第一ハウジング10に、モータ部30、給電部35および減速ギヤ部50が、エンドダンパ38およびダンパ部材38を介してフローティング支持されている。このため、モータ部30や減速ギヤ部50の振動、およびこれらモータ部30や減速ギヤ部50と、スクリュー軸60との間における振動が、第一ハウジング10に伝わるのを抑制できる。このため、アクチュエータ100の作動時の振動や騒音を低減できる。
【0084】
さらに、インターナルギヤ51に、ダンパ部材63側に突出する突起51tが形成され、軸受ホルダ62に、ダンパ部材63側に突出する突起62tが形成され、ダンパ部材63に、突起51tや突起62tが挿入可能な挿入孔63h,63gが形成されている。このため、ダンパ部材63において、インターナルギヤ51側と軸受ホルダ62側とにおける周方向の相対変位を吸収することができる。これにより、モータ部30の作動時における回転方向の振動や衝撃の発生を抑えることができる。また、外力によってスクリュー軸60が回転したときの振動や衝撃がモータ部30や減速ギヤ部50側に入力されるのを防止することができる。
【0085】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、アクチュエータ100の各部の構成は、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。一例として、上述の実施形態では、減速ギヤ部50を遊星減速機構により構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、遊星減速機構に代えてさまざまな減速機構を適用することが可能である。この場合、モータ部30のヨーク31の内周面に減速機構のギヤケースを配置し、さらに、ギヤケースに、シャフト33を回転自在に支持するための軸受38Bを設ければよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、ナット部材25の外周面に、4つの溝25mを形成するとともに、インナーチューブ24の内周面に、4つの突条24tを形成することにより、インナーチューブ24に対するナット部材25の周方向の回転が規制される場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ナット部材25の外周面に少なくとも1つ溝25mが形成されていればよく、また、これに対応してインナーチューブ24の内周面に少なくとも1つ突条24tが形成されていればよい。さらに、ナット部材25の外周面に突条を形成する一方、インナーチューブ24の内周面に、突条と係合可能な溝を形成してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、筒状の第一ハウジング10内に、筒状のガイドチューブ18を挿入し、ガイドチューブ18のフランジ部18cと軸受ホルダ62とにより、シール部材66を挟持した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第一ハウジング10のガイドチューブ18に対応する箇所を、このガイドチューブ18の形状に対応するように深絞り加工等により形成し、これによって形成された段差面と軸受ホルダ62とによりシール部材66を挟持するように構成してもよい。この場合、第一ハウジング10の深絞り加工等を施した箇所の外周面に、コイルスプリング70を配置する。
【0088】
さらに、上述の実施形態では、モータ部30のシャフト33の回転力を、減速ギヤ部50を介してスクリュー軸60に伝達させている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、シャフト33にスクリュー軸60を直接連結してもよい。この場合、軸受ホルダ62に設けられた軸受61によって、スクリュー軸60を回転自在に支持してもよいし、シャフト33を回転自在に支持してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、ヨーク31の一端31a側に設けられたホルダ部材37に、エンドダンパ38を設けると共に、ヨーク31の他端31b側に設けられたインターナルギヤ51に、ダンパ部材38を設けた場合について説明した。そして、第一ハウジング10に、モータ部30、給電部35および減速ギヤ部50を、エンドダンパ38およびダンパ部材38を介してフローティング支持させた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくともモータ部30の両端側で、かつ第一ハウジング10とヨーク31との間に、エンドダンパ38やダンパ部材38が介在するように構成されていればよい。このように構成することで、少なくともモータ部30の作動時における振動が、第一ハウジン部10に伝達されてしまうのを抑制できる。
【0090】
さらに、アクチュエータ100の用途は、バックゲート2の開閉用に限らず、他の様々なドアの開閉に用いることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。