(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1から
図12には、本発明の好ましい実施形態のロック機構を備えた携帯時計10が示されている。
【0019】
図1は本発明のロック機構を備えた携帯時計10の平面図である。
図2は携帯時計10の部分断面図であり、ロックピン60の支持軸62の中心を通る面で切断した断面である。
図3は携帯時計10の分解斜視図である。
【0020】
以下、携帯時計10の機能部品について順に説明する。
【0021】
図2において、携帯時計10のリング状のケース20の上面には筒状部21が形成され、その外側に円環状の第一段部22とさらにその外側には一段低い第二段部23が形成されている。ケース20の上面側にはパッキン20aを介してガラス11が嵌着され、下面側には図示しない裏蓋が螺着されている。ケース20、ガラス11、及び裏蓋によって形成された空間12には、中央部に図示しないムーブメントが、下面側には図示しない電池
などが収納されている。
【0022】
図3に示すように、ケース20の第二段部23の縁からケース20の側面上方に渡って凹部24が周方向の複数個所に形成されている。
【0023】
また、
図3に示すように、ムーブメントが組み込まれたケース20の第一段部22上にはクリックばね30が組み込まれ、第二段部23上の2カ所に規制部材であるロックピン60が組み込まれ、その上から規制操作部材であるロックリング40が組み込まれている。さらに、ロックリング40上面の段部41には操作部材である回転ベゼル50が組み込まれている。なお、後述する銘板52は、機能部品ではないため
図3では省略してある。
【0024】
図4はクリックばね30を示し、
図4(a)はクリックばね30の上面側斜視図であり、
図4(b)はばね部32の先端部付近を拡大して係止状態を示した断面図である。
図4(a)に詳細を示すように、クリックばね30には、リング状の本体31から上方へ切り起こされて二段に曲げられたばね部32が等間隔に3カ所ある。
図4(b)に示すように、ばね部32の先端は、後述する回転ベゼル50の歯56を構成する複数の凸部56aの間の凹部のいずれかに係合している。このクリックばね30によって、回転ベゼル50の操作に伴い操作者にクリック感が得られるとともに、回転ベゼル50における回転方向の停止位置が、ばね部32の先端部によって位置決めされるようになっている。
【0025】
また、本体31からは下方に直角に切り曲げられた支持部33が2カ所に突出しており、この支持部33はケース20の第一段部22に設けられた係止穴22aに係止される。尚、一つの支持部33は、
図4(a)に示す位置に設けられ、もう一つの支持部33は、図示した支持部33から180度離れた位置に設けられている。係止穴22aは一つの支持部33につき等間隔に第一段部22の複数個所に設けられており、そのいずれか一つを選択して支持部33を係止させることによって、ケース20に対するクリックばね30の回転方向の位置を調整できるようになっている。一箇所の係止穴22aは、
図3に図示した位置に設けられ、もう一箇所の係止穴は、
図3に図示した係止穴から180度離れた位置に形成されている。
【0026】
図5はロックピン60を上面側から見た斜視図である。
図5に示すように、ロックピン60の平面は円弧状で一定の幅と厚さを有している。このロックピン60の一方の端部60a付近には、上面に後述する回転ベゼル50の歯56を構成する凸部56aと凸部56aとの間の凹部に係合して回転ベゼル50の回転を規制する規制部であるピン61が形成され、また、下面には支持軸62が一体に形成されている。さらに、両端部60a,60bに近い上下面には斜面60a1、60b1が形成されている。斜面60a1は、一方の端部60aの下面側が切り欠かれて、この一方の端部60aが先細りの形状に形成されている。斜面60b1は、他方の端部60bの上面側が切り欠かれて他方の端部60bが先細りの形状に形成されている。
【0027】
支持軸62はケース20の第二段部23に形成されたガイド穴23bに一定のクリアランスを持って挿入されており、このロックピン60の自由な上下動を案内するようになっている。支持軸62によって、ロックピン60は、回転ベゼル50の歯56を構成する複数の凸部56aの配列方向に沿った方向への移動範囲が、ガイド穴23bに対するクリアランスの範囲に制限される。ガイド穴23bは、
図3に図示した位置と、この位置から180度離れた位置の2箇所に形成されている。
【0028】
ロックピン60はケース20の載置部である第二段部23の上面と回転ベゼル50の下面との間にあって、内側を第一段部22の外側面と、外側をロックリング40の内側面4
9とに囲まれた周方向の空間の2箇所に上下に移動可能に載置されている。
【0029】
図2で示すように、ケース20の筒状部21の外壁面と回転ベゼル50の内壁面とには対向するようにそれぞれ溝部21a、50bが形成されている。そして、平面視が多角形の外形線の一部を欠落させた略C字形状である図示しない金属Cリングをこの溝部21a、50bに渡って係合させることによって、回転ベゼル50がケース20から外れないようになっている。
【0030】
図6は回転ベゼルを上面側から見た斜視図である。
図6に示すように、回転ベゼル50の外周には等間隔に6カ所の操作部50aが張り出して形成されている。操作部50aの側面50a1は、この操作部50aの回転方向に対する傾斜を反対の斜面50a2よりきつくして反時計回りに操作し易くしてある。回転ベゼル50の上面側には円環状の段部51が形成されており、段部51には
図2に示す銘板52(
図3では機能部品ではないため省略されている)が
図1に示す等間隔に4本のネジ53で固定されている。
【0031】
銘板52上には、
図1に示した分目盛54と原点マーク57と5分間隔の数字55が、携帯時計10の平面視で、針14と文字板13の見切り範囲とを取り囲むように記されている。回転ベゼル50下面には、半径方向に凹部が刻まれて形成された複数の凸部56aが周方向に等間隔に設けられている。
図4(b)に示すように、この凸部56aの凹部の周方向の断面形状を左右非対象にして、クリックばね30のばね部32の先端が係合して回転ベゼル50が反時計回りの一方向にしか回転できないようにしてあってもよい。
【0032】
図7はロックリング40の上面側の一部を拡大した斜視図である。
図7に示すように、ロックリング40の内周には、半円弧状の段部41a,41bが等間隔に2カ所に形成されている。尚、
図7では、段部41aは一端側だけを図示し、段部41bは他端側だけを図示している。段部41a,41bはロックリング40の上面からやや下がった位置に上面を有している。段部41aの一端には、段部41aの上面からさらに下がった位置に上面を有し、この上面が切り欠かれて下面側に傾斜した先細りの斜面である上向きの斜面45を先端に有する規制作用部46が形成されている。段部41bの他端には、段部41bの下面からロックピン60の厚さ以上上がった位置に下面を有し、この下面が切り欠かれて上面側に傾斜した先細りの斜面である下向きの斜面47を先端に有する解除作用部48が形成されている。
【0033】
段部41aの図示しない他端には、解除作用部48と同じ形状の解除作用部が形成され、段部41bの図示しない一端には、規制作用部46と同じ形状の規制作用部が形成されている。すなわち、段部41aと段部41bのそれぞれの両端に、規制作用部46と解除作用部48とが形成されている。段部41aの規制作用部46と段部41bの解除作用部48とは対向するように設けられており、これらの間に位置するロックピン60に対し、ロックリング40の旋回動作に応じて、両作用部はそれぞれ異なった作用を行うようになっている。
【0034】
そして、携帯時計10がロック状態にあるときには、規制作用部46の上面の先端がロックピン60の下面の先端の位置にあって、解除作用部48の下面の先端はロックピン60の上面の後端の位置にある。携帯時計10がアンロック状態にあるときには、解除作用部48の先端がロックピン60の先端に近い位置にあって、規制作用部46の先端はロックピン60から離れた位置にある。規制作用部46と解除作用部48は、このような位置関係である。段部41aの図示しない解除作用部と、段部41bの図示しない規制作用部の位置関係も、図示した規制作用部46,解除作用部48の位置関係と同様であり、これらの間に、もう一つのロックピン60が配置されている。
【0035】
図3に示すように、ロックリング40の外周には等間隔に2カ所の半径方向に張り出してロックリング40を旋回させるときに操作する操作部40aが形成されており、操作部40aの上面には時計回り方向を示す矢印とLOCKの文字並びに反時計回りの方向を示す矢印とFREEの文字が記されている。
【0036】
図8はロックリング40の下面側の部分斜視図である。
図8に示すようにロックリング40の下面側には、周方向に長い溝部42と、長い溝部42を挟むようにして短い溝部43、44が形成されている。溝部42、43、44はそれぞれ半径方向に一定の幅を有している。
図9(a)はロックリング40とケース20との係合部をケース20の外側から見た周方向の断面図であり、ロックリング40がアンロック位置にあるところである。
図9(b)はプランジャ70の断面図である。
【0037】
図9(b)に詳細を示すプランジャ70は、円筒状の底付容器71に収納され、圧縮コイルばね72によって上方へ付勢されたスチールボール73が絞られた容器71の上方の開口部から露出している部品であり、ケース20の第二段部23に等間隔に2カ所に設けられた穴23aに植設されている。一つの穴23aは、
図3に示した位置に設けられ、もう一つの穴23aは、
図3に示した位置から180度離れた位置に設けられている。
【0038】
ロックリング40の操作部40aを操作してロック位置に停止させるときには、このプランジャ70のスチールボール73が、ロックリング40の下面側の長い溝部42と短い溝部44との間の下面側に突出した凸形状の部分を乗り越えて、短い溝部44に係合する際に、時計の使用者がクリック感を得る。また、ロックリング40の操作部40aを操作してアンロック位置に停止させる時には、プランジャ70のスチールボール73が、ロックリング40の下面側の長い溝部42と短い溝部43との間の下面側に突出した凸形状の部分を乗り越えて、短い溝部43に係合する際に、時計の使用者がクリック感を得る。
【0039】
ロックリング40の全体はDLC膜(ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質膜)で被覆されている。そして、短い溝部43、44と長い溝部42の傾斜面となっている側面43a、44a、42a、並びに両溝間の下面40b1,40b2のDLC膜はレーザーで除去してある。これはプランジャ70のスチールボール73がロックリング40の下面の各溝間の凸形状の部分を乗り越える際、ステンレス製のスチールボール73よりも硬度が高いDLC膜によってスチールボール73が摩耗して、各溝間の凸形状の部分を乗り越える際に支障が生じる程度に変形するのを防ぐためである。また、側面43a、44a、42a、並びに各溝間の下面のDLC膜を除去せずに、スチールボール73をセラミックス等の硬質材料で形成して、ボール側が磨耗しないようにすることもできる。
【0040】
誤操作によってロック状態が解除されるのを防ぐために、側面43a、44a、42aは、矢印で示した3カ所を他より緩やかにし、2つの側面44aのうち、
図9における左側の側面44aを急な傾斜としても良い。これにより、溝部44がプランジャ70の位置にあるロック状態から、アンロック状態にするためにロックリング40を反時計周りに旋回したときのロックリング40の回転操作に要する回転トルクを大きく設定して、ロック動作の動きは緩く、アンロック動作の動きはきつくすることができる。
【0041】
ケース20における第二段部23上面には、外周よりに等間隔に2カ所のロック/アンロック状態を表示するための円弧状の表示部25が設けられている。この表示部25は、例えば赤色に着色されており、回転ベゼル50のロック状態では、この表示部25は、ロックリング40から外周に突出する操作部40aによって覆い隠され、回転ベゼル50のアンロック状態では、操作部40aが回転して、この表示部25が露出するようになっている。この表示部25を見ることによってロック又はアンロックの状態が容易に視認できるようになっている。
【0042】
尚、ロックリング40を回転させることにより、ロックリング40の下面側に形成された溝部42をケース20の凹部24の位置に一致させることができ、溝部42は、その外周側の部分がケース20の凹部24から露出する。この状態で、携帯時計10のガラス11を上にして、凹部24の付近に水道水等を流し込むことで、水道水が各部品の間に流れ込んで溝部42や他の部分を通って放水され、溝部42内に入った砂埃等を洗い流すことができる。
【0043】
図10は携帯時計10がロック状態にあるときのロックリング40とロックピン60と回転ベゼル50の関係を示すケース20の外側から見た断面図、
図11は同じくアンロック状態にあるときの3者の関係を示す断面図、
図12は携帯時計10のロック状態とアンロック状態のときのロックピン60の位置を示す断面図である。尚、
図12は、図面が複雑にならないように、規制作用部46と解除作用部48は省略している。
【0044】
アンロック状態の携帯時計10をロック状態にさせようとするときには、操作部40aを操作してロックリング40を回転ベゼル50の歯56を構成する複数の凸部56aの配列方向に沿った第1の方向である時計回りに旋回させてロック位置にセットする。このとき、
図9(a)に示したロックリング40の下面の溝部44がプランジャ70に嵌ってロックリング40の位置が定まる。この旋回動作に伴って、規制作用部46は前進してロックピン60を回転ベゼル50側に押し上げる作用をする。
【0045】
すなわち、ロックリング40が時計周りに旋回すると、
図10に示す状態の直前に、斜面45の付近とロックピン60の斜面60a1の付近とが当接し、これにより支持軸62によってロックピン60には上に持ち上がる力が作用する。さらにロックリング40が旋回運動を続けると、規制作用部46がロックピン60の下に潜り込んで、
図10に示すように、規制作用部46の上面が、ロックピン60の一方の端部60aの下面を回転ベゼル50側に押し上げる。尚、ロックピン60の上面は、回転ベゼル50の歯56との対向面であり、ロックピン60の下面は、回転ベゼル50の歯56との非対向面である。
【0046】
この状態では、ピン61が回転ベゼル50の歯56の凹部に係合する。これと同時に、解除作用部48は後退して斜面47がロックピン60の他方の端部60bの浮き上がりを抑制するようになる。これによってロックピン60は他方の端部60bを支点として右上がりに傾斜することになり、ピン61が回転ベゼル50の歯56の間の凹部のいずれか一つに係合する位置に移動するから回転ベゼル50の回転はロックされる。なお、このとき、ピン61が歯56の凹部に丁度係合する位置に来るようにするために、予めケース20に対するクリックばね30の組み込み位置を調整してある。
【0047】
図12に示すように、アンロック状態におけるロックピン60の上面はS1の位置であり、ロック状態におけるロックピン60の上面はS2の位置である。そして、ロックピン60の一方の端部60aはロック状態及びアンロック状態の間をRで示した軌跡を描いて移動する。従って、ロックピン60が、回転ベゼル50の歯56に係合しないアンロック状態から、係合するロック状態となる規制動作を行う際に、ロックピン60は、S1,S2,Rで囲まれる空間SP内の移動を要する。
【0048】
ロック状態の携帯時計10をアンロック状態にさせようとするときには、操作部40aを操作してロックリング40を第1方向とは反対の第2方向である反時計回りに旋回させてアンロック位置にセットする。このとき、
図9(a)に示したロックリング40下面の溝部43がプランジャ70に嵌ってロックリング40の位置が定まる。この旋回動作に伴って、
図11に示すように、解除作用部48は前進して、ロックピン60が規制動作に要する
図12に示した空間SPの外からこの空間SPの中に入る。そして、解除作用部48
は、さらに前進して、ロックピン60の回転ベゼル50の歯56との対向面である上面の大半を覆って、ロックピン60の浮き上がりを妨げる作用をする。一方規制作用部46はロックピン60には関わらない位置に後退するから、ピン61は歯56の凹部とは係合しなくなり回転ベゼル50の回転は自由になる。
【0049】
次に、規制作用部46と解除作用部48がロックリング40に形成される位置について説明する。
【0050】
図11に示した携帯時計10のアンロック状態から、ロックリング40を時計回りに旋回させてロック状態にする場合において、規制作用部46の上面がロックピン60の下面側を回転ベゼル50側に押す位置まで移動して、ロックピン60が傾き始めるときに、解除作用部48は、
図12に示した空間SPの外に移動するか、または、空間SPの中であっても、規制作用部46の上面が、ロックピン60の下面側を押し上げる動作を妨げない位置まで後退する。
【0051】
また、
図10に示した携帯時計10のロック状態から、ロックリング40を反時計回りに旋回させてアンロック状態にする場合において、解除作用部48が
図12に示した空間SPの中に入るときに、規制作用部46の上面が、ロックピン60の下面側を回転ベゼル50側に押し上げない位置まで移動するか、又は、ロックピン60の下面側を回転ベゼル50側に押し上げる位置であっても、解除作用部48が空間SPの中に入る動作を妨げない程度のロックピン60の傾きとなる位置まで後退する。このような位置関係になるように、規制作用部46及び解除作用部48がロックリング40に形成されている。
【0052】
規制作用部46と解除作用部48がこのような位置関係であれば、ロックリング40が、どのような回転位置であっても、規制作用部46と解除作用部48のいずれか一方がロックピン60に作用することとなり、ロックピン60に規制作用部46と解除作用部48の両方が作用しない不安定な状態が存在しない。
【0053】
通常、携帯時計10は、文字板13側を上に向け、裏蓋側を下に向けて使用する。この場合は、
図10に示した状態から、規制作用部46が後退したときに、ロックピン60の下面を規制作用部46が押し上げなくなり、ロックピン60は、自重によって
図11に示した位置に移動するとともに、解除作用部48が
図12に示した空間SPに中に入る。
【0054】
仮に、携帯時計10を、文字板13側を下に向け、裏蓋側を上に向けて使用している場合、
図10に示した状態から、規制作用部46が後退したときに、ロックピン60は、自重では
図11に示した位置に移動しない。この場合は、
図12に示した空間SP内に前進してくる解除作用部48が、ロックピン60の上面を押し下げることにより、ロックピン60が
図11に示した位置に移動する。
【0055】
従って、ロックピン60は、戻しばねを設けずに、ロックリング40の回転操作によって、回転ベゼル50の歯56に係合する状態から、回転ベゼル50の歯56に係合しない状態となる。
【0056】
前述のように、2つのロックピン60が2箇所に設けられ、これに対応してロックリング40には、規制作用部46と解除作用部48とが2組設けられており、
図10や
図11に示したロック状態やアンロック状態への動作は、これらの2箇所の位置で同時に行われる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に示した回転ベゼルのロック機構は、回転ベゼル50の操作にクリック感を付与するクリックばね30とは別に、規制部材であるロックピン6
0を用いるため、回転ベゼル50の強固なロックが可能であり、壊れにくい。
【0058】
また、本実施形態に示した回転ベゼルのロック機構は、規制操作部材であるロックリング40が、回転ベゼル50の歯56を構成する複数の凸部56aの配列方向に沿った方向に回転する簡単な構造を用いることができる。さらに、本実施形態に示した回転ベゼルのロック機構は、ロックピン60を、回転ベゼル50の歯56に係合する携帯時計10のロック状態から、回転ベゼル50の歯56に係合しない携帯時計10のアンロック状態に動作させる際の戻しばねが不要となるため、構造が簡単である。
【0059】
次に、規制部材であるロックピンの変形例について説明する。
図13は本実施形態のロックピン60の変形例を示す上面側斜視図である。
図13(a)に示したロックピン65には規制部である立方体形状の係合部66がロックピン65の幅とほぼ同じ幅で1カ所に形成されている。係合部66は回転ベゼル50の歯56の凹部に係合する断面形状を有する。他の構成はロックピン60と同様である。このロックピン65は、係合部66の幅が
図5に示したロックピン60より長いため、歯56の凹部との係合がより一層強固になるとともに、係合部66が歯56に係合した状態で携帯時計10に衝撃が加わっても、係合部66が破損し難い。
【0060】
図13(b)に示したロックピン67には規制部であるピン68が2本形成されている。ピン68は回転ベゼル50の歯56の隣り合う凹部と係合する形状を有している。
図13(b)に示したロックピンは、2本のピン68が歯56に係合することにより、
図13(a)に示したロックピン67と同様な効果がある。
【0061】
本実施形態では、操作部材として、回転操作をする回転ベゼル50の例を示したが、回転操作ではなく直線的にスライドして往復動する操作部材にも適用が可能である。例えば、回転ベゼル50を1/5程度の長さで直線状に真っ直ぐ伸ばした形状とし、ロックリング40をこれに合わせた形状とすることで、これらの部材をスライドスイッチのようなスライド操作部材として構成することが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、ロックピン60が他方の端部60bを支点として傾く構造としたが、ケース20の第二段部23と回転ベゼル50の歯56との間でロックピン60が傾かずに上下動する構造としてもよい。例えば、ロックピン60の長さを短くし、ロックピン60が傾かないように支持軸62の長さを長くすることにより上下動させても良い。この場合、規制作用部46と解除作用部48は、短くしたロックピン60の両端部60a,60b付近まで伸ばして形成すると良い。但し、本実施形態に示した構造の方が、支持軸62が短くても良く、ロックピン60の動作も安定する。
【0063】
さらに、規制作用部46とロックピン60の一方の端部60aのそれぞれに斜面45と斜面60a1を設けたが、いずれか一方だけに斜面を設けても良いし、両方に斜面を形成しなくても同様な動作を行うように構成することができる。例えば、ロックピン60だけに斜面60a1を設けるとともに、ロックピン60の一方の端部60aの厚さを規制作用部46の端部の厚さよりも厚くする。この構成によって、ロックピン60の斜面60a1に、規制作用部46の矩形状の端部が当接し、規制作用部46の端部がロックピン60の下に案内されるようにしても良い。
【0064】
また、ロックピン60と規制作用部46の両方に斜面を設けずに、ロックピン60の支持軸62の長さをガイド穴23bの深さよりも長くして、携帯時計10のアンロック状態においてロックピン60の一方の端部60aが第二段部23から規制作用部46の端部の厚さ以上浮いた状態としてもよい。これにより、規制作用部46の端部が、第二段部23とロックピン60の下面との間に入って、規制作用部46の端部がロックピン60の下面
を直接押すことができる。
【0065】
但し、本実施形態のように、ロックピン60と規制作用部46の両方に斜面を形成した方が、これらのいずれか一方だけに斜面を形成した場合と比較して、規制作用部46がロックピン60を回転ベゼル50の歯56の方にスムーズに押すことができる。また、ロックピン60と規制作用部46の両方に斜面を形成した方が、これらの両方に斜面を形成しない場合と比較して、携帯時計10のロック解除状態でロックピン60を傾斜させなくても良いため、ロック機構を薄型化することができる。
【0066】
また、本実施形態では、解除作用部48とロックピン60の他方の端部60bの両方に斜面47と斜面60b1を設けたが、いずれか一方だけに斜面を設けても良いし、両方に斜面を形成しなくても同様な動作を行うように構成することができる。特に、解除作用部48は、その下面が携帯時計10のアンロック状態におけるロックピン60の上面よりも高い位置にある。従って、この高さの設定によっては、解除作用部48とロックピン60の他方の端部60bの一方又は両方に斜面を設けなくても、ロック解除操作の際に、解除作用部48の端部が、ロックピン60の他方の端部60bに引っかからないように構成することができる。
【0067】
但し、本実施形態のように、解除作用部48とロックピン60の両方に斜面を形成した方が、解除作用部48が空間SP内にスムーズに移動できるし、解除作用部48の下面をロックピン60の上面に近づけて薄型化することができる。
【0068】
さらに、ロックリング40の回転方向に応じて、規制作用部46と解除作用部48とが、択一的に切り替わりロックピン60に作用するように構成したが、例えば、ロックリング40をFREE方向に回転させたときに、ロックピン60への規制作用部46の作用が解除されてから、連続せずに間隔を置いて解除作用部48が作用するように構成することも可能である。ロックリング40をLOCK方向に回転させる場合も同様である。
【0069】
但し、ロックピン60に規制作用部46と解除作用部48の両方が作用しない状態があると、携帯時計10の姿勢に応じてロックピン60が動き、ロックリング40が、「LOCK」の回転位置ではないにもかかわらず、ロックピン60が回転ベゼル50の歯56に係合することもある。これに対し、本実施形態では携帯時計10の姿勢に依存せずに使用することができる。
【0070】
また、ロックピン60がロックリング40の回転方向に動かないようにできれば、ロックピン60に支持軸62を設けなくても良い。例えば、ロックピン60における他方の端部60b付近の背面側に凹部を形成するか、又は、貫通孔を形成し、この凹部又は貫通孔に、第二段部23に形成した凸部が係合して、ロックリング40の回転方向に動かない構造としても良い。
【0071】
また、本実施形態では、規制作用部46の端部の上面に対し、解除作用部48の下面の方が、ロックピン60の厚さ以上離れた位置にあるが、他の構成を用いることも可能である。例えば、ロックピン60における支持軸62から他方の端部60b側の部分は、ロックピン60の厚さに応じた高さだけ回転ベゼル50から遠ざけるように一段低い形状に形成する。そして、第二段部23に、この一段低い部分に対応した凹部を形成することにより、解除作用部48の下面を、規制作用部46の下面とほぼ同じ高さ位置に形成することも可能である。但し、本実施形態に示した構成の方が、第二段部23及びロックピン60の形状を簡素化できる。