特許第6579887号(P6579887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サムソンの特許一覧

<>
  • 特許6579887-加熱殺菌装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579887
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】加熱殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/04 20060101AFI20190912BHJP
   A23L 3/12 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   A61L2/04
   A23L3/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-189070(P2015-189070)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-63804(P2017-63804A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】森本 守
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124094(JP,A)
【文献】 特開2014−226107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00− 2/28
A61L 11/00− 12/14
A23L 3/00− 3/3598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物を収容する殺菌槽、途中に噴射用水循環ポンプを持ち殺菌槽内から取り出した噴射用水を殺菌槽内へ循環させる噴射用水循環経路、殺菌槽内の水位を検出する水位検出装置、殺菌槽内への給水を行う給水配管を持ち、 殺菌槽内に収容した被殺菌物へ噴射用水を噴射することで被殺菌物を加熱して殺菌を行い、その後に被殺菌物の冷却を行うようにしている加熱殺菌装置において、水位検出装置では、循環時水位と循環時水位より低位の低水位にて水位を検出するようにしておき、加熱殺菌を行う場合、前記の循環時水位よりも高い水位となるまで給水を行ってから噴射用水の循環を開始するものであり、噴射用水の循環を行うことで水位が循環時水位よりも更に低い低水位未満になると、噴射用水の循環を一旦停止し、噴射用水循環ポンプの作動停止から殺菌槽内底部への噴射用水の戻りが続くことによる水位上昇で殺菌槽内水位が循環時水位まで回復する時間Xを計測しておき、計測した時間Xに基づいて殺菌槽内へ追加の給水を行うものであることを特徴とする加熱殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱殺菌装置において、追加の給水は計測した時間Xに定数を掛けた時間分給水することによって行うものであることを特徴とする加熱殺菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱殺菌装置において、追加の給水を行う場合、被殺菌物が浸かる位置までは水位を上昇させないように上限を設定していることを特徴とする加熱殺菌装置。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに並べた被殺菌物を殺菌槽内に収容しておき、被殺菌物に向けて加熱した噴射用水を噴射することで被殺菌物を加熱し、殺菌を行うようにしている加熱殺菌装置に関するものである。より詳しくは、被殺菌物に噴射する噴射用水は殺菌槽内底部と被殺菌物の間で循環するものであって、殺菌槽内底部にためている噴射用水量を適切にするようにした加熱殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2014−226107号に記載があるように、殺菌槽内に密封包装した被殺菌物を収容しておき、加熱した噴射用水を被殺菌物に噴射することで被殺菌物を加熱して殺菌を行う加熱殺菌装置が広く普及している。この加熱殺菌装置では、トレイに被殺菌物を並べておき、殺菌槽内に被殺菌物を乗せ置いたトレイを複数段重ねた状態で収容する。被殺菌物の殺菌槽内への収容後、殺菌槽内底部に噴射用水をためておき、殺菌槽内底部の噴射用水に蒸気を吹き込むことで噴射用水を加熱し、加熱した噴射用水を被殺菌物に噴射することで被殺菌物を加熱する。加熱殺菌装置では、殺菌槽内の上部や左右側部に噴射ノズルを設置しており、殺菌槽底部と噴射ノズルの間を繋ぐ噴射用水循環経路を設け、噴射用水循環経路の途中に噴射用水循環ポンプを設けておいて噴射用水を循環する。殺菌槽内の底部から噴射用水循環経路に取り出した噴射用水は、噴射用水循環ポンプと熱交換器を通って殺菌槽内の噴射ノズルへ達し、噴射ノズルから被殺菌物へ噴射する。被殺菌物に噴射した噴射用水で被殺菌物の加熱を行い、噴射用水は被殺菌物の表面を伝わりながら殺菌槽底部へ落下する。
【0003】
加熱殺菌装置の運転を行う場合、殺菌槽内水位が循環時水位(水位A)になるまで給水を行う。殺菌槽内には循環時水位での水の有無を検出する水位検出装置を設けておき、水位検出装置が循環時水位で水ありを検出するまで給水を行う。加熱殺菌装置での運転制御装置は、殺菌槽内水位が循環時水位に達すると給水を停止し、噴射用水循環経路に設けている噴射用水循環ポンプを作動することで噴射用水の循環を行い、噴射ノズルから被殺菌物へ噴射する。この際、噴射用水の循環を開始すると、噴射用水循環経路内が噴射用水で満たされ、また被殺菌物へ噴射した噴射用水は、被殺菌物の表面を伝わりながら落下するものであるために、噴射用水が殺菌槽内底部まで落下するには時間を要し、被殺菌物の上に噴射用水が滞留することになるため、殺菌槽内の水位は低くなる。殺菌槽内での水位が低くなった場合、噴射用水循環経路内に空気が入り込むことがあり、噴射用水循環経路内に空気が入ると、噴射用水循環ポンプではエア噛みが発生することになっていた。
【0004】
そのため、殺菌槽内の水位は、循環時水位に達した後に所定時間だけ長く給水を継続し、殺菌槽内水位を高めた状態で噴射用水の循環を開始することも行われていた。噴射用水循環経路内の容積は一定であるため、噴射用水循環経路に噴射用水が満たされることによる殺菌槽内での水位の低下は容易に算出することができる。しかし、噴射用水が被殺菌物の上に乗る量は被殺菌物の状態などによって変動する。被殺菌物の形状が水を乗せやすいものであった場合や、被殺菌物の収容数が多い場合には、被殺菌物の上に滞留する噴射用水量は多くなり、その場合には噴射用水の循環を開始すると殺菌槽底部での噴射用水の水位は大きく低下する。
【0005】
噴射用水としてどれだけの量が必要であるかは一定ではないため、給水量が適切でないことにより、殺菌槽内の水位が高くなりすぎたり、低くなりすぎたりする場合があった。水位が低すぎる場合は、先に記載したように噴射用水循環ポンプでエア噛みが発生し、水位が高すぎる場合には余分な噴射用水を加熱することになるために不経済となり、また下段の被殺菌物が殺菌槽内底部にたまった噴射用水によって浮き上がることがあった。被殺菌物は重ならないようにトレイに並べて殺菌槽内に収容するが、被殺菌物が噴射用水に浸かることで浮力が発生した場合、被殺菌物は動きやすくなるため、被殺菌物同士で重なり合う箇所ができることがある。被殺菌物が重なると、重なった部分では内部に熱が伝わりにくくなるため、殺菌が不十分になるおそれが生じることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−226107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被殺菌物を乗せ置いたトレイを殺菌槽内に複数段積み重ねて収容しておき、殺菌槽内の被殺菌物に高温の噴射用水を噴射することで被殺菌物の加熱殺菌を行うようにしている加熱殺菌装置において、殺菌槽内にためる噴射用水量が適正になるよう制御することのできる加熱殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、被殺菌物を収容する殺菌槽、途中に噴射用水循環ポンプを持ち殺菌槽内から取り出した噴射用水を殺菌槽内へ循環させる噴射用水循環経路、殺菌槽内の水位を検出する水位検出装置、殺菌槽内への給水を行う給水配管を持ち、 殺菌槽内に収容した被殺菌物へ噴射用水を噴射することで被殺菌物を加熱して殺菌を行い、その後に被殺菌物の冷却を行うようにしている加熱殺菌装置において、水位検出装置では、循環時水位と循環時水位より低位の低水位にて水位を検出するようにしておき、加熱殺菌を行う場合、前記の循環時水位よりも高い水位となるまで給水を行ってから噴射用水の循環を開始するものであり、噴射用水の循環を行うことで水位が循環時水位よりも更に低い低水位未満になると、噴射用水の循環を一旦停止し、噴射用水循環ポンプの作動停止から殺菌槽内底部への噴射用水の戻りが続くことによる水位上昇で殺菌槽内水位が循環時水位まで回復する時間Xを計測しておき、計測した時間Xに基づいて殺菌槽内へ追加の給水を行うものであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記の加熱殺菌装置において、追加の給水は計測した時間Xに定数を掛けた時間分給水することによって行うものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記の加熱殺菌装置において、追加の給水を行う場合、被殺菌物が浸かる位置までは水位を上昇させないように上限を設定していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明を実施することで、殺菌槽内の噴射用水量を適切とすることができ、殺菌槽内底部での噴射用水の水位が適切となる。そのため、噴射用水循環経路内に空気が入ることによる噴射用水循環ポンプでのエア噛みの発生や、水位の上昇した噴射用水によって殺菌槽内の被殺菌物が浮き上がり、被殺菌物同士が重なり合うといったことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している加熱殺菌装置のフロー図である。加熱殺菌装置は、円筒形の殺菌槽1内に被殺菌物2を収容しておき、加熱した噴射用水を被殺菌物2に向けて噴射することで被殺菌物2の加熱殺菌を行うものである。被殺菌物2はトレイ上に並べておき、被殺菌物2を乗せ置いたトレイを複数段重ねた状態で殺菌槽1内に収容する。殺菌槽1の底部には噴射用水循環経路11の一端を接続し、噴射用水循環経路11の他端は殺菌槽1内の側部と上部に設置した噴射ノズル13に接続しておく。噴射用水循環経路11の途中には噴射用水循環ポンプ4と熱交換器3を設けておき、殺菌槽1底部から取り出した噴射用水を噴射用水循環ポンプ4で加圧して殺菌槽1内の噴射ノズルから被殺菌物2へ噴射する。
【0014】
熱交換器3は、加熱殺菌装置の冷却工程時に噴射用水から熱を奪うものであり、熱交換器3では噴射用水と冷却用水の間で熱交換を行う。熱交換器の一方の側は殺菌槽1との間で循環する噴射用水が通り、他方の側は噴射用水から熱を奪うための冷却用水が通る。冷却用水側では温度の上昇した冷却用水から熱を放出するクーリングタワー8を設けておき、熱交換器3とクーリングタワー8の間で冷却用水を循環する冷却用水循環経路9を設ける。冷却用水循環経路9の途中には、冷却用水の循環を行うための冷却用水循環ポンプ10と、熱交換器3の前後をつなぐバイパス配管5を設置し、バイパス配管5の途中には流量調節の可能な冷却用水量制御弁6を設ける。冷却用水量制御弁6を開くと、クーリングタワー8から熱交換器3へ向かっていた冷却用水がバイパス配管5を流れることになり、バイパス配管5を流れてきた冷却用水は熱交換器3へは行かずにクーリングタワー8へ戻ることになる。
【0015】
殺菌槽1への給水は、噴射用水循環経路11に給水配管17を接続しておき、給水配管17に設けた給水ポンプ16と給水弁15で行う。殺菌槽1には、殺菌槽1内の水位を検出する水位検出装置14を設けておく。水位検出装置14は、循環時水位(水位A)と、循環時水位Aよりも低い低水位(水位B)にて水の有無を検出するようにしている。
【0016】
加熱殺菌装置の運転を制御する運転制御装置12を設け、運転制御装置12は加熱殺菌装置の各機器と接続しておく。殺菌槽1には、殺菌槽1内の温度を検出する温度検出装置7を設けておき、運転制御装置12では、温度検出装置7によって検出した殺菌槽1内の温度に基づいて運転を行う。
【0017】
加熱殺菌を行う場合、まず、被殺菌物2をトレイ上に並べ、被殺菌物2を乗せ置いたトレイを複数段重ねた状態で殺菌槽1内に収容する。次に殺菌槽1の扉を閉じ、殺菌槽1内に給水を行う。初期給水では、給水ポンプ16を作動し、給水弁15を開くことで給水配管17を通して殺菌槽内への給水を行い、水位検出装置14によって検出している殺菌槽内の水位が循環時水位まで上昇したことを検出し、そこから所定時間T1が経過するまで行う。そのため、初期給水停止時の殺菌槽内水位は、循環時水位(水位A)より一定量高い水位となる。この水位を高くするのは、噴射用水循環経路11によって噴射用水の循環を開始すると、噴射用水循環経路11内が噴射用水で満たされ、被殺菌物2の上にも噴射用水が乗ることによって殺菌槽内底部での水位が低下するため、循環時水位よりも一定量分高くなるまで給水するようにしている。この所定時間T1分の給水は、噴射用水循環経路11内の容積に基づいて決定する。ここでの給水は、殺菌槽内底部の噴射用水によって被殺菌物2が浸かることはないようにしておく。初期給水が終了すると、給水ポンプ16は停止し、給水弁15は閉じておく。
【0018】
次に、殺菌槽1内の底部にためている噴射用水に蒸気を吹き込み、噴射用水の温度を高める初期昇温を行う。殺菌槽内の噴射用水中に蒸気を吹き込むと、噴射用水の温度は上昇する。噴射用水温度が所定温度まで上昇すると、噴射用水循環ポンプ4の作動を行い、噴射用水の被殺菌物2への噴射を行う。噴射用水循環ポンプ4を作動すると、殺菌槽内底部の噴射用水は噴射用水循環経路11内を流れて噴射ノズル13へ向かい、噴射ノズル13から被殺菌物2へ向けての噴射が行われる。被殺菌物2へ向けて噴射された噴射用水は、被殺菌物2の表面を流れ、その際に被殺菌物2を加熱する。噴射用水は多数段積み重ねているトレイ内の被殺菌物2を順次加熱しつつ落下し、殺菌槽内底部へ流れ落ちていく。
【0019】
噴射用水の被殺菌物2への噴射を開始すると、噴射用水循環経路11内は噴射用水で満たされ、さらに噴射ノズル13から噴射した後の噴射用水も、殺菌槽内底部まで流れ落ちるまでに時間が掛かるため、被殺菌物の上には滞留している噴射用水が乗ることになる。噴射用水の循環を開始したことによって、殺菌槽内底部にたまっている噴射用水の量は減少し、噴射用水の水位は低下する。
【0020】
運転制御装置12では、水位検出装置14で検出している殺菌槽1内の水位が低水位(水位B)まで低下すると、噴射用水循環ポンプ4の作動を停止する。噴射用水循環ポンプ4を停止すると、殺菌槽1内から噴射用水循環経路11へ流れ出ていた噴射用水の流れが止まる。このことにより、噴射ノズル13から被殺菌物2への噴射も止まるが、すでに噴射ノズル13から噴射して被殺菌物2の上にある噴射用水は、その後も順次落下していく。そのため、殺菌槽内底部の噴射用水の流出は止まるが、殺菌槽内底部への噴射用水の流入はしばらく続くため、殺菌槽内底部の噴射用水の水位は上昇していく。殺菌槽内底部の噴射用水の水位が循環時水位まで上昇すると、噴射用水循環ポンプ4の作動を行って噴射用水の循環を再開する。
【0021】
被殺菌物2に噴射した噴射用水が殺菌槽内底部まで落下するのに要する時間は、被殺菌物2の形状や収容量などによって変化する。被殺菌物2が薄いレトルトパウチ食品であると、被殺菌物2の上に水が乗りやすく、また一度に殺菌処理を行う被殺菌物2が多いものであって、被殺菌物2を多数段収容している場合には、噴射ノズル13から被殺菌物2へ噴射した噴射用水が殺菌槽内底部まで落下するのに要する時間は長くなり、被殺菌物上で滞留する噴射用水量は多くなる。
【0022】
運転制御装置12では、噴射用水循環ポンプ4の作動停止から循環時水位に復帰するまでの時間Xを計測しておく。そして計測した時間Xにある定数を掛けた時間分、追加の給水を行う。この時間Xは、被殺菌物2の上に乗っている噴射用水が落下していく時間によって変動する。被殺菌物2の上に乗っている噴射用水が殺菌槽内底部まで落下していくのに要する時間が長いと、殺菌槽内底部に戻ってくる噴射用水の時間当たりの流量は少なくなるため、殺菌槽内底部の水位が回復する時間は長くなり、時間Xの値は大きくなる。
【0023】
そして、噴射用水が落下していく時間が長くなる場合には、噴射用水の循環時に噴射用水は被殺菌物の上に多く滞留するため、準備しておく噴射用水の量は多く必要となる。そのため、運転制御装置12では、追加の給水量は時間Xに比例させており、時間Xの値に所定の定数を掛けた時間分の給水を行う。ただしこの追加での給水によって、殺菌槽内底部にためた噴射用水が被殺菌物2に浸かることになり、被殺菌物2に浮力がかかることによって被殺菌物2が移動することになると、被殺菌物2が積み重なる部分ができてしまう。被殺菌物2が積み重なると、その部分では内部までの加熱が行われにくくなるため、上記追加給水は殺菌槽内の水位が被殺菌物2の下端高さより高くならないようにする。
【0024】
噴射用水量の適正量は状況ごとに異なるものであるため、上記のように循環停止中の水位回復時間を計測することで噴射用水の給水必要量を算出する。このようにすることで、給水必要量を算出することができる。
【0025】
循環停止時の水位上昇が早い場合は、噴射用水が被殺菌物2から殺菌槽底部へ早く流れ落ちるものであるため、被殺菌物の上に滞留する噴射用水量は少ない。逆に、循環停止時の水位上昇が遅い場合は、噴射用水が被殺菌物2から殺菌槽底部へ流れ落ちるのに要する時間が長いということであり、この場合には被殺菌物の上に滞留する噴射用水量が多くなるため、噴射用水循環時の殺菌槽水位低下は大きくなる。被殺菌物2上に滞留する噴射用水量が多くなるほど、殺菌槽の底部にたまっている噴射用水の割合は少なくなり、殺菌槽底部での噴射用水量が少ないと、噴射用水循環ポンプ4でのエア噛みを起こしやすくなる。そのため、被殺菌物へ噴射した噴射用水が殺菌槽の底部へ落下するのに時間が掛かる場合、つまり低水位(水位B)で循環を停止してから循環時水位(水位A)まで回復する時間の長い場合ほど、噴射用水量が多くなるようにしておく。
【0026】
殺菌槽内の水位が低すぎる場合は、噴射用水循環経路11内に空気が入り、噴射用水循環経路11の途中に設置している噴射用水循環ポンプ4でエア噛みが発生することがあった。また、水位が高すぎる場合には下段の被殺菌物が殺菌槽内底部にたまった噴射用水によって浮き上がることがあった。被殺菌物2はトレイに重ならないように並べておくが、被殺菌物が浮かび上がることで移動すると、被殺菌物での重なりが発生し、重なったことによって加熱ムラが発生することがある。そして加熱する噴射用水の量が増加すると、噴射用水を所定の温度まで昇温する際に蒸気を多く供給することが必要となるために不経済となるという問題があった。そのため本発明では、上記のように給水を行うことで殺菌槽底部での噴射用水量が適切になるようにしている。
【0027】
噴射用水を適切に制御した後は、被殺菌物2の温度を高める昇温工程、被殺菌物2の温度を殺菌温度で維持する加熱工程を行い、被殺菌物2を殺菌する。加熱による殺菌が終了すると、被殺菌物2を冷却する冷却工程に移行する。冷却時には冷却用水循環ポンプ10を作動し、熱交換器3とクーリングタワー8の間で冷却用水を循環する。熱交換器3の噴射用水循環経路11側に噴射用水を送り、冷却用水循環経路9側に冷却用水を送ると、噴射用水と冷却用水の間で熱交換が起こり、噴射用水の熱が冷却用水に移動する。熱交換器3での熱交換によって噴射用水の温度を被殺菌物2の温度よりも低くして、噴射ノズル13から被殺菌物2へ噴射用水の噴射を行うと、被殺菌物2の温度は低下していく。処理槽内温度が冷却終了温度まで低下すると、冷却の工程を終了する。その後、殺菌槽1内からの排水と排気を行った後に、殺菌槽1内から被殺菌物2を取り出して全体の工程を終了する。
【0028】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 殺菌槽
2 被殺菌物
3 熱交換器
4 噴射用水循環ポンプ
5 バイパス配管
6 冷却用水量制御弁
7 温度検出装置
8 クーリングタワー
9 冷却用水循環経路
10 冷却用水循環ポンプ
11 噴射用水循環経路
12 運転制御装置
13 噴射ノズル
14 水位検出装置
15 給水弁
16 給水ポンプ
17 給水配管
図1