(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置を廃棄するにあたっては、情報の漏洩を防ぐため、ユーザは記録内容を消去することが多い。記録内容を消去する方法の一つとして、ディスクの各トラックに数回に渡りランダムデータを上書きする方法が知られている。以下、この方法を「ソフトウエア的消去方法」と呼ぶ。しかし、近年の磁気ディスク装置の大容量化により、ソフトウエア的消去方法は、長時間を要するという問題がある。
【0003】
記録内容を短時間で消去する方法としては、裁断等によって、磁気ディスク装置を物理的に破壊する方法が知られている。しかし、磁気ディスク装置の一般ユーザは、磁気ディスク装置の裁断装置等を所有していない。従って、この方法を採るということは、裁断装置等を所有している第三者(処分業者等)に磁気ディスク装置の処分を委ねることになり、情報漏洩の新たなリスクが生じる。以上のような事情により、裁断装置等を所有していない磁気ディスク装置の一般ユーザが、磁気ディスク装置を物理的に破壊できるようにする需要があり、様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、(1)磁気ヘッドに過大な電流を流して磁気ヘッドを破壊する、(2)ディスクのサーボ領域に意味の無いデータを書き込む、および(3)ディスクの回転速度を低下させ磁気ヘッドとディスクとを摺動させて磁性膜を物理的に破壊する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、ディスクの磁性膜を破壊する破壊刃を磁気ディスク装置に装着する技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、磁気ヘッドが取り付けられているアームとディスク面との角度を変更し、磁気ヘッドをディスクに圧接させてディスクを回転させ、磁性膜を破壊する技術が開示されている。
また、下記特許文献4には、多数の硬質粒(粒径は望ましくは3μm以下)を収納した袋を磁気ディスク装置内に設け、袋を針で突いて硬質粒を磁気ディスク装置内に拡散させ、これによって磁性膜や磁気ヘッドを物理的に破壊する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
<実施形態の構成>
まず、
図1に示す概略構成図を参照し、本発明の第1実施形態による磁気ディスク装置Aの構成を説明する。なお、磁気ディスク装置Aは、例えばベアドライブである。
図1においてプラッタ(磁気ディスク)10は、円板状に形成されるとともに永久磁石型三相同期電動機であるモータ30の回転軸31に装着され、モータ30の回転に伴って回転する。プラッタ10は、後述する磁性膜14(
図2参照)を有し、磁性膜14には同心円状に複数のトラックが形成される。また、トラックは半径方向に分割され複数のセクタが形成される。プラッタ10は、これらセクタ単位でデータを記録するものである。また、
図1に示した例において、プラッタ10は、通常の読取り/書込み動作時には、反時計方向に回転する。
【0014】
ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって駆動され、回転軸21を中心として回動する。ヘッド・アセンブリ20は、回転軸21に軸支された略台形状の肉厚金属板であるアーム22と、アーム22の先端に固定された、略台形状の薄板金属板であるサスペンション24とを有している。
【0015】
サスペンション24の先端部分には、プラッタ10に対向するようにスライダ26が装着されており、スライダ26の先端部分には、読出し用の磁気ヘッド28が装着されている。また、書込み用の磁気ヘッド(不図示)もスライダ26に装着されている。ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって、最内周トラック位置P1から最外周トラック位置P2までの任意のトラック位置に位置決めすることができる。
【0016】
また、プラッタ10が停止する際には、ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって、退避位置P3に移動される。退避位置P3においては、スライダ26はプラッタ10には対向しない。これは、プラッタ10の停止時に、スライダ26とプラッタ10との接触を防止するためである。
【0017】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、ROMには、制御プログラムや各種データ等が格納されており、制御プログラムはCPUによって実行される。
図1では、制御プログラムによって実現される動作モードの機能を、ブロックとして示す。
【0018】
制御部50の内部において、動作モード指定手段56は、外部のホストコンピュータ等(図示せず)から供給されたコマンドに基づいて、磁気ディスク装置Aの動作モードとして、「通常モード(第1のモード)」または「廃棄モード(第2のモード)」のうち何れか一方を指定する。ここで、通常モードとは、通常の書込み/読出しを行う動作モードである。また、廃棄モードとは、磁気ディスク装置Aを破棄する場合に、記録されたデータを破壊する動作モードである。
【0019】
ところで、ユーザが誤操作によって廃棄モードを選択してしまうような事態を防止するため、廃棄モードは、誤操作によっては生じにくい特殊な操作が行われた場合にのみ選択できるようにしておくとよい。例えば、磁気ディスク装置Aの筐体(外付け型の場合は、磁気ディスク装置Aを収容した筐体でもよい)に、細い貫通孔を形成し、その貫通孔に針のような細い部材を挿入することによってのみ押下できるボタンや、通常よりも強い力で押下する事により割れる構造となっているクラッカープレートを押し割って押下するボタンなどによる「廃棄ボタン」(廃棄操作部)を設け、この廃棄ボタンが押下されない限り、廃棄モードを選択できないようにすることが考えられる。このような構成を採用すると、特に複数の磁気ディスク装置Aが一台のコンピュータに接続されている場合に、破壊すべき磁気ディスク装置Aを確実に特定して破壊を実行できる。また、動作モードの指定は、外部のホストコンピュータ等から供給されたコマンドに基づいて行うものに限られず、ディスク装置Aに設置された廃棄ボタン(廃棄操作部) によって動作モード指定手段56に対して廃棄モードを選択し、実行できる構成であってもよい。この構成により外部のホストコンピュータ等が無くても、電源供給された状態であれば破壊モードをボタン操作で実行できる。そのため、多くの記憶装置の破壊を行う場合でも電源接続のみで破壊実行ができるのでホストコンピュータとの接続の手間がかからないという効果がある。
【0020】
回転制御手段52は、指定された動作モードに基づいて、ドライブ回路42に対して回転制御信号S1を出力する。回転制御信号S1は、モータ30の回転/停止、回転速度、回転方向を指定する信号である。ドライブ回路42は、回転制御信号S1に応じて三相交流電圧を生成し、モータ30に印加する。これにより、モータ30は、回転制御信号S1に従った回転方向および回転速度で回転する。
【0021】
ヘッド位置制御手段54は、指定された動作モードに基づいて、ドライブ回路44に対して、ヘッド・アセンブリ20の位置を指定する位置制御信号S2を出力する。なお、指定される位置は、最内周トラック位置P1〜最外周トラック位置P2までの任意のトラックに対応する位置、または退避位置P3である。ドライブ回路44は、位置制御信号S2に応じた電流をボイスコイル・モータ40に供給することにより、ヘッド・アセンブリ20を指定された位置に移動させる。
【0022】
図1において、プラッタ10は1枚のみを図示するが、実際には複数枚(N枚)のプラッタ10が平行に配置されている。そして、各プラッタ10は、表裏両面が記録面になっており、これら記録面毎にヘッド・アセンブリ20が設けられる。従って、ヘッド・アセンブリ20は合計で2N台設けられているが、
図1においては最上部の1台のみ図示する。各ヘッド・アセンブリ20は、相互に結合されており、ボイスコイル・モータ40によって同時に駆動される。
【0023】
次に、
図2に示す側面図を参照し、サスペンション24の先端部分およびプラッタ10の詳細構成を説明する。なお、
図2においては、ヘッド・アセンブリ20が最内周トラック位置P1〜最外周トラック位置P2の範囲内にあるものとし、ヘッド・アセンブリ20は、最上部に位置する一台のみを図示する。また、
図2においては、プラッタ10の断面構造も示す。
【0024】
図2において、プラッタ10は、ガラスやアルミニウム合金等によって構成された円板状の基板12と、基板12の表裏両面に形成された磁性膜14と、磁性膜14を覆う保護膜16とを有している。さらに、保護膜16の表面には、潤滑剤が塗布されている(図示略)。プラッタ10は、通常は、
図1において反時計方向に回転するため、
図2においては右から左に向かって移動することになる。
【0025】
スライダ26は、略直方体状に形成されており、その左下隅部には磁気ヘッド28が装着されている。また、スライダ26の右下隅部はテーパー状に切り欠かれ、切欠部26aが形成されている。プラッタ10が回転すると、回転方向と同一方向に空気流70が発生する。空気流70は、切欠部26aを介してスライダ26の下面に沿って流れる。スライダ26は、サスペンション24によってプラッタ10に向かって押圧されているが、空気流70が流入することによってプラッタ10の表面から若干の距離d1を隔てて浮上する。この浮上量d1は、約10nmである。
【0026】
次に、
図3を参照し、スライダ26の詳細構成を説明する。なお、
図3は、スライダ26を斜め下方から見た斜視図である。上述したように、スライダ26の底面部には、テーパー状に切り欠かれた切欠部26aが形成されている。この切欠部26aは、プラッタ10の回転に伴う空気の流れをスライダ26の底面にスムーズに送り込むためのものである。また、スライダ26の底面部には、その空力特性を高めるため、前後方向に沿って溝26bが形成されている。さらに、スライダ26の底面の前後方向の長さをd2とすると、後方寄りの長さd3(但し、d2>d3)の範囲にて、粗化処理部26cが形成されている。
【0027】
粗化処理部26cにおいては、スライダ26の表面が粗化処理されている。粗化処理部26cを後方寄りの長さd3の範囲で形成した理由は、通常の使用状態(
図2参照)において後方ほどスライダ26の浮上幅が大きくなるため、粗化処理部26cがプラッタ10に接触する可能性を小さくできるからである。なお、粗化処理によって生ずる凹凸の高さnmオーダーにすることが望ましい。
【0028】
<実施形態の動作>
図1において、動作モード指定手段56が通常モード(第1のモード)を指定すると、プラッタ10は所定の回転速度で反時計方向に回転駆動され、
図2に示したように、スライダ26、磁気ヘッド28は、プラッタ10とは非接触状態に保たれたまま、各トラックに対してデータの読出しを行う。従って、磁気ディスク装置Aに対して意図しない外力等が加わらない限り、スライダ26がプラッタ10に接触することはなく、磁性膜14に記録されたデータは保持される。
【0029】
制御部50が外部から所定のコマンドを受信すると、動作モード指定手段56は、磁気ディスク装置Aの動作モードを通常モードから廃棄モード(第2のモード)に変更する。廃棄モードが指定されると、ヘッド位置制御手段54はヘッド・アセンブリ20を最内周トラック位置P1に移動させ、回転制御手段52はプラッタ10の回転を停止させる。この状態におけるヘッド・アセンブリ20の側面図を
図4に示す。プラッタ10が停止すると、スライダ26には浮力が働かないため、
図4に示すように、サスペンション24の押圧力によって、スライダ26がプラッタ10に押圧される。
【0030】
次に、ヘッド位置制御手段54は、スライダ26がプラッタ10を押圧した状態のまま、最内周トラック位置P1〜最外周トラック位置P2(
図1参照)の範囲で、ヘッド・アセンブリ20を所定回数だけスイング(往復運動)させる。これにより、スライダ26の底面は、円弧状の往復軌道に沿ってプラッタ10に摺動する。すると、スライダ26、特にその底面のエッジ部分や粗化処理部26cによってプラッタ10が物理的に傷付き、保護膜16および磁性膜14が掻き落とされる。これにより、磁性膜14に記録されていたデータが破壊される。
【0031】
さらに、掻き落とされた保護膜16および磁性膜14が微粒子となってスライダ26とプラッタ10との間に挟まると、これによっても保護膜16および磁性膜14の破壊を促進することができる。また、スライダ26がプラッタ10に摺動することにより摩擦熱が発生する。この摩擦熱が磁性膜14のキュリー温度以上になると、磁性膜14の磁性が失われるため、磁性膜14が残存していたとしても、データを消失することができる。
【0032】
ヘッド・アセンブリ20を最内周トラック位置P1〜最外周トラック位置P2の範囲で所定回数だけスイングさせると、回転制御手段52は、モータ30を所定の回転角だけ回転させることによってプラッタ10を回転させ、しかる後にヘッド・アセンブリ20を同様に所定回数だけスイングさせる。この動作を繰り返すことによって、プラッタ10に記録されたデータが物理的に破壊される。
【0033】
ところで、磁性膜14には、セクタ単位でデータが記録されているが、各セクタには、データと、ECC(誤り訂正符号,Error Check and Correct)とが記録されている。そして、データと、ECCの一部とを破壊すると、データを復元することはできなくなる。従って、上述した「所定の回転角」は各セクタの全体を破壊するように設定してもよいが、データと、ECCの一部とを破壊するような値に設定してもよい。このように、セクタの一部を選択的に破壊することにより、データの破壊速度を向上させることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の磁気ディスク装置Aによれば、モータ30を停止させスライダ26とプラッタ10の表面とを確実に接触させた状態でスライダ26を移動させることができるため、磁性膜14を確実に破壊することができ、ハードディスクの再利用を不可とする事ができる。
【0035】
また、スライダ26とプラッタ10との接触部分の温度を磁性膜14のキュリー温度以上にすることにより、一層確実にデータを破壊することができる。さらに、磁性膜14の破壊時には、スライダ26の底面のエッジ部分(長さd2)を使用するため、プラッタ10に対して一度のスイングでプラッタ10の広範囲に渡って傷を付けることができる。これにより、磁性膜14に記録されたデータを迅速に破壊することができる。
【0036】
ところで、磁気ディスク装置Aの電源をオフにする際には、ヘッド・アセンブリ20を退避位置P3に移動させることが通常である。しかし、磁気ディスク装置Aの電源が急にオフにされた場合等には、スライダ26が保護膜16に接触したままの状態に置かれることがある。このような場合、本実施形態によれば、スライダ26の底面に粗化処理部26cを形成したことにより、スライダ26と保護膜16との接触面積を小さくすることができる。従って、両者の接触が長時間に渡った場合であっても、スライダ26の吸付きを防止することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の磁気ディスク装置について説明する。第2実施形態の磁気ディスク装置のハードウエア構成は、第1実施形態(
図1〜
図4)と同様である。
本実施形態の磁気ディスク装置の動作モードは、第1実施形態と同様に、通常モードまたは廃棄モードのうち何れかに設定される。通常モードの動作は、第1実施形態と同様であり、プラッタ10は所定の回転速度で回転駆動され、スライダ26、磁気ヘッド28は、プラッタ10とは非接触状態に保たれたまま、データの読出しを行う。
【0038】
制御部50が外部から所定のコマンドを受信すると、動作モード指定手段56は、磁気ディスク装置の動作モードを通常モードから廃棄モードに変更する。廃棄モードが選択されると、ヘッド位置制御手段54は、ヘッド・アセンブリ20を最内周トラック位置P1に移動させ、プラッタ10の回転を停止させる(
図4参照)。
【0039】
次に、回転制御手段52は、プラッタ10の回転方向を通常モードの回転方向とは逆方向に変更して回転させる。例えば、
図1においては、プラッタ10を時計方向に回転させる。上述したように、モータ30は、永久磁石型三相同期電動機であるので、U相,V相,W相の電圧のうち二相の電圧を入れ替えると、モータ30を逆方向に回転させることができる。なお、モータ30として永久磁石型三相同期電動機以外のモータを用いる場合である場合は、そのモータの種類に応じた方法で逆回転させるとよい。
【0040】
ところで、スライダ26は、通常モードにおいて(反時計方向に所定の回転速度でプラッタ10が回転する場合に)
図2に示したようにプラッタ10から浮上するように構成されている。従って、回転方向が逆になると、プラッタ10が回転したとしても、スライダ26は浮上せず、プラッタ10はスライダ26に摺動しつつ回転するようになる。これにより、プラッタ10が物理的に傷付き、保護膜16および磁性膜14が掻き落とされることによって、磁性膜14に記録されていたデータが破壊される。
【0041】
また、スライダ26とプラッタ10との接触部分に生じる摩擦熱が磁性膜14のキュリー温度以上になると、磁性膜14の磁性が失われるため、磁性膜14が残存していたとしても、データを破壊することができる。現在のトラックにおいてプラッタ10が所定の回転数だけ逆回転すると、ヘッド位置制御手段54は、ヘッド・アセンブリ20を他のトラックに移動させ、同様に所定の回転数だけ逆回転させる。この動作を繰り返すことによって、プラッタ10に記録されたデータが物理的に破壊される。
【0042】
ここで、逆回転させる際の回転速度は、通常モードの回転速度と同一でもよいが、さらに回転速度を高めてもよい。通常モードにおける回転速度とは、データの読出し/書込みを高い信頼性で実現できる速度であって、モータ30にて実現可能な最高速度よりも低い場合が多い。廃棄モードにおいては、読出し/書込みの信頼性は特に問題にならないため、モータ30にて実現可能な最高速度にてプラッタ10を回転させるとよい。これにより、磁性膜14や保護膜16を効率的に掻き落とすことができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、廃棄モードにおける回転速度を通常モードにおける回転速度またはそれ以上にすることができるので、回転速度を低下させた場合と比較して、磁性膜14に記録されたデータを迅速に破壊することができる。
【0044】
[第3実施形態]
<実施形態の構成>
次に、
図5に示す概略構成図を参照し、本発明の第3実施形態による磁気ディスク装置Aの構成を説明する。なお、
図5において、
図1〜
図4の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態の磁気ディスク装置Aは、第1実施形態のもの(
図1参照)と同様に、プラッタ10、ヘッド・アセンブリ20、モータ30、ボイスコイル・モータ40、制御部50等を有している。但し、本実施形態において、サスペンション24は磁性材料によって構成されている。
【0045】
さらに、本実施形態においては、ヘッド・アセンブリ20の近傍に電磁石60が設けられている。電磁石60は、コイル62と、ヨーク64とを有している。インバータ46は、所定の振動指令信号S3を受信すると、コイル62に対して交流電圧を印加する。
【0046】
本実施形態においても、磁気ディスク装置Aの動作モードは、通常モードまたは廃棄モードのうち一方に設定される。制御部50に設けられた振動制御手段58は、動作モードが廃棄モードに設定されると、上述した振動指令信号S3をインバータ46に供給する。
【0047】
電磁石60におけるヨーク64は略コ字状に形成され、略コ字状の縦棒を成す部分にコイル62が巻回されている。ヨーク64の上腕部64aは、コイル62の上端部から突出し、サスペンション24の可動範囲の軌道に沿って円弧状に湾曲している。
図6は、
図5におけるI−I’断面図である。
図6におけるヨーク64の下腕部64bは、コイル62の下端部から突出し、上腕部64aに対して対称を成すように、サスペンション24の軌道に沿って円弧状に湾曲している。これにより、上腕部64a,下腕部64bは、2枚のプラッタ10と4台のサスペンション24とを挟んで対向する。
【0048】
ここで、コイル62に交流電圧を印加すると、交流電圧が正電圧になる半周期においては、上腕部64a,下腕部64bの一方がN極に帯磁し、他方がS極に帯磁する。また、交流電圧が負電圧になる半周期においては、上腕部64a,下腕部64bの極性が反転する。磁性材料である各サスペンション24は、上腕部64a,下腕部64bが帯磁すると、これらに吸引される。サスペンション24はバネ性を有しているため、交流電圧の半周期で振動する。そして、各サスペンション24の先端に設けられた4個のスライダ26は、交流電圧の半周期でプラッタ10に衝突する。
【0049】
<実施形態の動作>
本実施形態の通常モードの動作は、第1,第2実施形態のものと同様であり、プラッタ10は所定の回転速度で反時計方向に回転駆動され、スライダ26、磁気ヘッド28は、プラッタ10とは非接触状態に保たれたまま、データの読出しを行う。
【0050】
一方、制御部50が外部から所定のコマンドを受信すると、動作モード指定手段56は、磁気ディスク装置の動作モードを通常モードから廃棄モードに変更する。廃棄モードにおいて、振動制御手段58は、インバータ46に対して、交流電圧を発生させるように振動指令信号S3を供給する。この振動指令信号S3によって、インバータ46が交流電圧を発生させると、スライダ26は、交流電圧の半周期でプラッタ10に衝突し、その衝突箇所にて磁性膜14および保護膜16を損傷させる。
【0051】
モータ30によってプラッタ10を適宜回転させ、また、ボイスコイル・モータ40によってヘッド・アセンブリ20の位置を適宜変更することにより、プラッタ10の全体に渡って磁性膜14および保護膜16が損傷し、記録されていたデータが破壊される。プラッタ10およびヘッド・アセンブリ20の駆動方法については、プラッタ10の全体を損傷させることができるのであれば、種々の方法を採ることが可能であるが、上述した第1実施形態または第2実施形態の廃棄モードの駆動方法を採ることが望ましい。
【0052】
第1実施形態および第2実施形態の廃棄モードの駆動方法は、何れもスライダ26をプラッタ10に摺動させることによって磁性膜14および保護膜16を掻き落とすものであった。本実施形態においてプラッタ10にスライダ26を衝突させ磁性膜14および保護膜16を損傷させると、スライダ26をプラッタ10に摺動させた際、スライダ26が損傷箇所に引っ掛かりやすくなる。このため、本実施形態においては、第1,第2実施形態と比較して、磁性膜14および保護膜16を一層効率的に掻き落とすことができるようになる。
【0053】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0054】
(1)上記各実施形態において、退避位置P3は、最外周トラック位置P2よりも外周に設けたが、退避位置P3を最内周トラック位置P1よりも内周に退避させるシッピングゾーン方式を採用してもよい。
【0055】
(2)上記各実施形態の通常モードにおいては、スライダ26がプラッタ10に接触する可能性は低いため、スライダ26の底面の全体を粗化処理部26cにしてもよい。なお、粗化処理部26cは、スライダ26自体の素材を粗化処理して構成してもよく、スライダ26の底面に研磨材を塗布することによって構成してもよい。また、スライダ26の底面のエッジによって磁性膜14および保護膜16を充分に掻き落とせるのであれば、粗化処理部26cは形成しなくてもよい。なお、粗化処理部26cを形成しない場合は、従来のスライダを使用する事ができるため、コストの面で有利である。
【0056】
(3)第1実施形態においては、ヘッド・アセンブリ20をスイングしている期間中はモータ30を停止させたが、スイング期間中において必ずしもモータ30を停止させる必要はなく、スライダ26とプラッタ10の表面とを確実に接触させる程度の速度であれば、ヘッド・アセンブリ20のスイング動作を継続しつつ、モータ30を回転させてもよい。
【0057】
(4)第3実施形態において、サスペンション24は、必ずしも全体を磁性材料で構成する必要はなく、上腕部64a,下腕部64bに対向する部分の少なくとも一部が磁性材料であればよい。
【0058】
(5)磁気ディスク装置Aは、上記各実施形態の内容を組み合わせて備えるか、または全て兼ね備えるものであってもよい。すなわち、動作モードとして廃棄モードが指定されると、例えば第1,第2実施形態の一方の動作と第3実施形態の動作とを組み合わせて実行してもよい。または、第1実施形態と同様にアーム22をスイングさせながら、第2実施形態と同様に通常モードとは逆方向にプラッタ10を回転させ、さらに、第3実施形態と同様に、電磁石60によってスライダ26を振動させてもよい。
【0059】
(6)上記各実施形態による磁気ディスク装置Aにおいては、廃棄モードによってプラッタ10上のデータを破壊した後に、制御部50は破壊終了を示す旨の信号を外部のホストコンピュータ等に対して送信可能な構成としてもよい。