特許第6579901号(P6579901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グンゼ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579901
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】繊維処理剤及び天然由来精油付繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/00 20060101AFI20190912BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   D06M13/00
   D06M15/53
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-202161(P2015-202161)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-75413(P2017-75413A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 千晶
(72)【発明者】
【氏名】由井 美也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌和
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−036919(JP,U)
【文献】 特開2004−300638(JP,A)
【文献】 特開2007−270135(JP,A)
【文献】 実開平07−039842(JP,U)
【文献】 特開2008−255518(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0086511(US,A1)
【文献】 特開2006−321900(JP,A)
【文献】 特開2011−117100(JP,A)
【文献】 特開2011−137256(JP,A)
【文献】 特開2005−097266(JP,A)
【文献】 特開2006−348429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
A41B9/00−9/16
13/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然由来の精油と、揮発防止剤とを含有し、前記揮発防止剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルであることを特徴とする繊維処理剤。
【請求項2】
天然由来の精油は、テルペノイド類又はその類縁の化合物を含有する精油であることを特徴とする請求項1記載の繊維処理剤。
【請求項3】
繊維製品と、該繊維製品に付着した天然由来の精油及び揮発防止剤とからなり、前記揮発防止剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルであることを特徴とする天然由来精油付繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめるとともに、洗濯によって容易に該精油を除去することができる機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤、及び、該繊維処理剤によって処理された天然由来精油付繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
天然成分から抽出される精油は、嗅覚を積極的に刺激し、その香りは一瞬で心身をシフトする力をもっているといわれている。精油を嗅ぐと、エンドルフィン、セロトニン、アドレナリン等が分泌されるといわれており、それにより多幸感、情緒の安定、情動、記憶、本能行動、食欲、性欲、睡眠欲、自律神経系や内分泌系の働きをコントロールすることができる。その働きから、免疫系を強化したり、血液やリンパ液の流れを促進したり、腎臓、肝臓、胃等の身体の各器官の働きを向上させる効果が期待される。更には、認知症等の予防効果や、更年期不定愁訴の諸症状を緩和する効果も期待される。
【0003】
このような天然由来の精油を繊維製品に付着させることにより、日常的にその香りを嗅げるようにすることが試みられている。例えば特許文献1には、更年期不定愁訴の諸症状を緩和することを目的に、スターアニスオイル、フェンネルオイル、シトロネラオイル、ローズオイル、ローレルオイル、ペッパーオイル、ワームシードオイル、バジルオイル、タラゴンオイル、イランイランオイル等の精油を付着させた繊維製品が開示されている。
【0004】
しかしながら、天然由来の精油を繊維製品に付着させても、実際に香りを実感できるのは僅かな時間に過ぎず、30分間もたてばほとんど香りを感じなくなってしまうという問題があった。これに対して、精油の成分を繊維製品の表面に化学的に結合(例えば、共有結合)させることも検討されたが、化学的に結合させた場合にはほとんど香りを失ってしまった。また、香りを失わずに化学的に結合させることができたとしても、今度は洗濯によっても精油を除去できないという問題が発生した。即ち、いったん精油を繊維製品に処理しても、日によっては香りを抑えたい場合もあり、また、日毎に違う香りを楽しみたいという需要もある。従って、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめるとともに、洗濯によって容易に該精油を除去することができる精油付繊維製品が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−97266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめるとともに、洗濯によって容易に該精油を除去することができる機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤、及び、該繊維処理剤によって処理された天然由来精油付繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天然由来の精油と、揮発防止剤とを含有する繊維処理剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、天然由来の精油を単独で用いるのではなく、揮発防止剤と併用した繊維処理剤を用いることにより、容易に繊維製品に天然由来の精油を付着させた繊維製品を得ることができ、かつ、比較的長時間にわたって該精油の香りを楽しめることを見出し、本発明を完成した。このような処理を行った繊維製品において、天然由来の精油は化学的に結合しているわけではないことから、洗濯によって容易に除去することができる。
【0009】
本発明の繊維処理剤は、天然由来の精油(以下、単に「精油」ともいう。)と、揮発防止剤とを含有する。
上記精油は、天然由来のものであれば特に限定されず、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、シトロネラ、ベルガモット、マンダリン、ライム、リツェアクベバ、レモン、レモングラス等の柑橘系の精油や、アンジェリカ、キャロットシード、クラリセージ、タイム、バジル、フェンネル、ペパーミント、マージョラム、ローズマリー等のハーブ系の精油や、カモミール、ジャスミン、ゼラニウム、ネロリ、ヘリクリサム、ラベンダー、リンデン、ローズ等の花系の精油や、イランイラン、サンダルウッド、パチュリー、パルマローザ、ベチバー等のエキゾチック系の精油や、エレミ、ガルバナム、ファー、フランキンセンス、ベンゾイン、ミルラ等の樹脂系の精油や、アニス、カルダモン、クローブ、コリアンダー、シナモン、ジンジャー、ブラックペッパー、ローレル等のシナモン系の精油や、サイプレス、シダーウッド、ジュニパー、パイン、プチグレン、マートル、ユーカリ、ローズウッド等の樹木系の精油等が挙げられる。
なかでも、柑橘系やハーブ系の精油は、リモネン、1,8−シネオール、ミルセン、ピネン、サビネン、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール等のテルペノイド類又はその類縁の化合物を含有するが、特に揮発性が高く、短時間で香りが気散してしまうことが知られている。本発明の繊維処理剤を用いれば、このようなテルペノイド類又はその類縁の化合物を含有する精油であっても、比較的長時間にわたって香りを楽しめることから特に好適である。
なお、本明細書においてテルペノイド類の類縁の化合物とは、上記テルペノイド類の誘導体であって、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、オキシド類、エステル類、ラクトン類、カルボン酸類を意味する。
【0010】
上記揮発防止剤は、上記精油と併用することにより、繊維製品に付着した精油が気散するのを防止する効果を有する。
上記揮発防止剤は、上記精油揮発防止効果を発揮するものであれば特に限定されないが、例えば、安息香酸エステル等の従来から揮発防止剤として知られている化合物のほか、エチレングリコール等の多価アルコールや、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80等の界面活性剤が挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、上記テルペノイド類を含有する精油と組み合わせたときに、特に高い精油揮発防止効果を発揮できることから好適である。
【0011】
本発明の繊維処理剤中の上記揮発防止剤の配合量は特に限定されないが、上記精油100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は30重量部である。上記揮発防止剤の配合量がこの範囲内であると、充分な精油揮発防止効果を発揮することができる。上記揮発防止剤の配合量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0012】
本発明の繊維処理剤は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。上記溶媒としては、上記精油及び上記揮発防止剤を溶解、又は、良好に懸濁できるものであれば特に限定されないが、取り扱い性に優れることから、水、エタノール、メタノール等の水系溶媒が好適である。
【0013】
本発明の繊維処理剤は、更に必要に応じて、乳化剤、分散剤等の添加剤を含有してもよい。
【0014】
本発明の繊維処理剤を製造する方法は特に限定されず、上記精油、揮発防止剤、溶媒及び必要に応じて添加する添加剤を混合する方法が挙げられる。
【0015】
本発明の繊維処理剤を用いて繊維製品を処理することにより、該繊維製品に天然由来の精油及び揮発防止剤が付着した天然由来精油付繊維製品を得ることができる。
このような天然由来精油付繊維製品は、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめる一方、洗濯によって容易に該精油を除去することができる。これは、上記揮発防止剤を併用することにより精油の揮発が抑制されて、より長時間精油が残留する一方、精油が繊維製品に化学的に結合されていないことから、洗濯によって容易に精油を除去できるためと考えられる。従って、いったん精油を繊維製品に処理しても、日によっては香りを抑えたり、日毎に違う香りを楽しんだりすることもできる。
繊維製品と、該繊維製品に付着した天然由来の精油及び揮発防止剤とからなる天然由来精油付繊維製品もまた、本発明の1つである。
【0016】
上記繊維製品としては特に限定されず、綿(セルロース系繊維)、麻、絹、羊毛等の天然繊維からなるもの、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、アクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維からなるものであってもよく、これらの混合繊維からなるものであってもよい。なかでも、綿布は、肌着等をはじめとする繊維製品の多くに用いられるものであり、本発明の繊維処理剤で処理したときに、特に長時間にわたって精油の香りを楽しめることから好適である。
なお、上記繊維製品は、例えば、繊維製品を構成する分子に、カルボキシル基、アミノ基、スルホン基、水酸基、リン酸基、エポキシ基、エーテル残基等の極性基又はこれらの基を有する基等の親水基を結合させた、親水化処理が施されたものであってもよい。親水化処理が施された繊維製品では、更に長時間にわたって精油の香りを楽しむことができる。
【0017】
本発明の天然由来精油付繊維製品としては特に限定されず、衣料の他、ハンカチ、タオル、ふとん等も好適である。なかでも、肌着や、敷ふとん、敷マット、敷布、毛布・タオルケット、ふとんカバー、掛けふとんの襟掛け、枕、枕カバー、パジャマ等の就寝用品等に精油を付着させた場合には、意識せずとも長時間にわたって精油の香りを吸入することになることから、極めて高い効果が期待できる。
【0018】
本発明の天然由来精油付繊維製品を製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の繊維処理剤中に繊維製品を浸漬又はパディングする方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめるとともに、洗濯によって容易に該精油を除去することができる機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤、及び、該繊維処理剤によって処理された天然由来精油付繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0021】
(実験例1)
(1)繊維処理剤の調製
表1に示した配合に従い、精油(オレンジスイート、生活の木社製、リモネン含有量95.56%)、揮発防止剤及び精製水を混合して、繊維処理剤1〜6を得た。
【0022】
【表1】
【0023】
(2)綿布への処理
0.5gの綿布(カルボキシル基量0.05mmol/g)に対して、繊維処理剤1〜6を150μL塗布して、天然由来精油付繊維製品を得た。
得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後、30分後、90分後及び24時間後に回収し、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。塗布してから0分後の精油の含有量を100として、30分後、90分後及び24時間後における精油残留率(%)を算出した。結果を表2に示した。
【0024】
【表2】
【0025】
(3)親水化処理綿布への処理
綿布に代えて親水化処理綿布(カルボキシル基量0.50mmol/g)を用いた以外は上記綿布の場合と同様にして、天然由来精油付繊維製品を得て、塗布してから30分後、90分後及び24時間後における精油残留率(%)を算出した。結果を表3に示した。
【0026】
【表3】
【0027】
(実験例2)
実験例1で用いた綿布又は親水化処理綿布0.5gに対して、実験例1で調製した繊維処理剤4を150μL塗布して、天然由来精油付繊維製品を得た。
得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後に、通常の家庭用洗濯機(パナソニック社製、NA−F50B5)を用いて、洗剤(花王社製、アタック)を0.67g/Lの濃度となるように加えた水を用い、浴比1:30の条件で洗濯した。
洗濯後の綿布について、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。洗濯前(塗布してから0分後)の精油の含有量を100として、洗濯後における精油残留率(%)を算出した。結果を表4に示した。
【0028】
【表4】
【0029】
(実験例3)
綿布、ポリエステル布、アセテート布、及び、綿/ポリエステル混合布0.5gに対して、実験例1で調製した繊維処理剤4を150μL塗布して、天然由来精油付繊維製品を得た。
得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後、30分後、60分後、及び、120分後に回収し、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。塗布してから0分後の精油の含有量を100として、30分後、60分後、及び、120分後における精油残留率(%)を算出した。
また、得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後に、通常の家庭用洗濯機(パナソニック社製、NA−F50B5)を用いて、洗剤(花王社製、アタック)を0.67g/Lの濃度となるように加えた水を用い、浴比1:30の条件で洗濯した。洗濯後の綿布について、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。洗濯前(塗布してから0分後)の精油の含有量を100として、洗濯後における精油残留率(%)を算出した。
結果を表5に示した。
【0030】
【表5】
【0031】
(実験例4)
精油としてオレンジスイートに代えてローズマリー・カンファ(生活の木社製、1,8−シネオール含有量21.0%)を用いた以外は、実験例1における繊維処理剤4と同じ配合にて繊維処理剤7を得た。
綿布0.5gに対して、繊維処理剤7を150μL塗布して、天然由来精油付繊維製品を得た。
得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後、30分後、90分後、及び、120分後に回収し、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。塗布してから0分後の精油の含有量を100として、30分後、90分後、及び、120分後における精油残留率(%)を算出した。
また、得られた天然由来精油付繊維製品を、塗布してから0分後に、通常の家庭用洗濯機(パナソニック社製、NA−F50B5)を用いて、洗剤(花王社製、アタック)を0.67g/Lの濃度となるように加えた水を用い、浴比1:30の条件で洗濯した。洗濯後の綿布について、メタノール20mLを用いて精油を抽出し、ガスクロマトグラフィー法により精油の含有量を測定した。洗濯前(塗布してから0分後)の精油の含有量を100として、洗濯後における精油残留率(%)を算出した。
結果を表6に示した。
【0032】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、長時間にわたって天然由来の精油の香りを楽しめるとともに、洗濯によって容易に該精油を除去することができる機能を繊維製品に付与することができる繊維処理剤、及び、該繊維処理剤によって処理された天然由来精油付繊維製品を提供することができる。