【実施例1】
【0017】
以下、本発明の冊子ページめくり装置の実施例1を、
図1〜
図3、
図4A、
図4B、
図5、及び
図6A〜
図6Jを用いて説明する。
まず、本実施例の冊子ページめくり装置が用いられる冊子プリンタの構成を
図1により説明する。
図1は本発明の実施例1の冊子ページめくり装置が用いられる冊子プリンタの構成図である。
【0018】
図1に示すように、冊子プリンタ101には、本実施例の冊子ページめくり装置に対応するページめくり部106が搭載されている。このページめくり部106は、例えば、現金自動取引装置や通帳の記帳装置などの冊子プリンタ101に搭載され、例えば、通帳に取引の履歴を印字するものである。
【0019】
また、前記冊子プリンタ101は、冊子を挿入及び排出するための挿入口102、冊子を搬送する搬送部103、冊子のページコードを読み取る冊子読取部104、冊子のページに印字する印字機構部105、冊子のページめくりを行う前記ページめくり部106、これらの機構部或いは要素(ユニット)の制御を行う制御部107などを備えている。なお、前記ページコードを読み取る冊子読取部104は、通帳のマグネットストライプの読み取りやバーコードの読み取りを行うものである。
【0020】
前記挿入口102は、冊子プリンタ101の筺体の正面側に設けられ、冊子が投入されたことを検知するセンサ(図示せず)が設けられている。なお、以下説明する冊子は、例えば、複数枚の紙葉類を綴じたものであり、表紙及び裏表紙に硬い(剛性の高い)紙葉が用いられ、表紙と裏表紙との間に柔らかい(剛性の低い)紙葉が用いられているものである。
【0021】
前記搬送部103は、前記挿入口102と前記ページめくり部106との間で、前記冊子をガイドする下側搬送用ガイド113と上側搬送用ガイド114を備えている。また、前記搬送部103は、前記冊子を搬送させる複数の搬送用ローラ115a〜115hを備えている。
【0022】
前記搬送用ローラ115aと115b、前記搬送用ローラ115cと115d、搬送用ローラ115eと115f、及び前記搬送用ローラ115gと115hは、それぞれ上下に対向して配置されている。また、前記搬送用ローラ115a,115bと前記搬送用ローラ115c,115dとの間には前記冊子読取部104が設置されている。更に、前記搬送用ローラ115e,115fと前記搬送用ローラ115g,115hとの間には前記印字機構部105が設置されている。
【0023】
前記搬送用ローラ115b,115d,115f,115hは駆動ローラであり、搬送用ローラ115a,115c,115e,115gは従動ローラである。また、前記搬送用ローラ(従動ローラ)115a,115c,115e,115gは、前記搬送用ローラ(駆動ローラ)115b,115d,115f,115hに圧接するように構成されている。
【0024】
次に、
図1に示す冊子プリンタの制御について、
図2により説明する。
図2は
図1に示す冊子プリンタを制御する制御部の制御ブロック図である。
この
図2に示すように、冊子プリンタ101の制御部107は、バス201aを介して本体制御部201と接続されている。この制御部107は、前記本体制御部201からの指令や冊子プリンタ101の状態に応じて制御を行っている。前記冊子プリンタ101の内部では、前記制御部107は、各ユニット(挿入口102、搬送部103、冊子読取部104、印字機構部105、ページめくり部106)の駆動系統やセンサと接続され、前記駆動系統の制御を行っている。
【0025】
図3により、
図1に示すページめくり部(冊子ページめくり装置)106の構成を説明する。
図3は
図1に示すページめくり部の構成を説明する側面図で、ページめくり部の動作途中の状態を示す図である。
本実施例における冊子ページめくり装置は、冊子を搬送する搬送ローラ304〜307、搬送路309、ページを吸引吸着して保持するための吸着パッド(ページ吸着手段)303、ページを押さえるためのページ押さえ部材(局所変形手段)308を備えている。
搬送ローラ304と306、305と307は、それぞれ上下に対向して圧接するように配置されており、モータ(図示せず)の駆動力が前記搬送ローラ304〜307に伝達され、前記冊子は搬送路309上を搬送される。
【0026】
前記吸着パッド303は、前記冊子のめくりページ302を負圧により吸引して吸着するものであり、好ましくはゴム製などの吸盤状のもので構成されていて、前記めくりページ302が変形してもその変形に追従して密着可能な柔軟性を有する部材で構成すると良い。なお、前記吸着パッド(ページ吸着手段)303はゴム製の吸盤状のもの、或いは柔軟性を有するゴムなどの素材で構成されるものには限定されず、めくりページを吸着できるものであれば良い。
【0027】
また、前記吸着パッド303を駆動機構(図示せず)により上下動することにより、吸着しためくりページ302を持ち上げることができるように構成されている。前記吸着パッド303には真空ポンプ(図示せず)が接続されており、負圧によりめくりページ302を吸着するように構成されている。なお、
図3に示すMは、前記冊子の端面から前記吸着パッド303の外周端部までの距離である。
【0028】
また、本実施例では、前記吸着パッド303により前記めくりページ302を持ち上げる際、前記ページ押さえ部材308により、前記めくりページ302を押さえるように構成している。このページ押さえ部材308によりめくりページ302を押さえた状態で、前記吸着パッド303を上げることにより、前記めくりページ302に対して局所変形(
図3のLで示す範囲の部分)を与えることができる。前記吸着パッド303の外周側からページ押さえ部材までの長さLを局所変形規定量と呼ぶ。前記ページ押さえ部材308は左右方向に移動制御が可能であり、前記局所変形規定量Lについても任意に調節可能に構成されている。
【0029】
更に、前記ページ押さえ部材308は、冊子を搬送するガイドとして用いることもできる。これにより、冊子を搬送させる際に、搬送ガイドとしても兼用できるため、部品数を削減することができ、冊子ページめくり装置のコスト低減を図ることもできる。
【0030】
図4A、
図4Bは、
図3の要部で、局所変形部の拡大図であり、
図4Aはめくりページを吸着パッドが吸着した状態を示す図、
図4Bはめくりページを吸着した吸着パッドを持ち上げた状態を示す図である。また、
図5は
図4Bに示す局所変形規定量Lと必要荷重Wとの関係を説明する線図であり、局所変形規定量Lを小さくするほどページの曲げ剛性が増加し、ページを持ち上げるための必要荷重Wも大きくなることを説明するためのグラフである。
【0031】
また、
図5には、前記ページ押さえ部材308によって押さえられためくりページ302を局所変形させるための必要荷重Wの他に、前記吸着パッド303によりめくりページ302に伝わる吸引力F
1、吸着パッド303から前記めくりページを透過して2枚目ページ401に伝わる吸引力F
2についても示している。
【0032】
これら
図4A、
図4B及び
図5を用いて、前記局所変形規定量Lを制御することにより、吸着パッド303によりめくりページ302を持ち上げる際に、2枚目ページ401も吸着して持ち上げてしまう多重吸着を回避できるという本実施例の効果を説明する。
【0033】
図4A、
図4Bに示すように、本実施例の冊子ページめくり装置では、吸着したページに局所変形を与えることにより、ページの曲げ剛性により、めくりページ302と、多重吸着された2枚目ページ401以降のページを分離する。
【0034】
ここで、局所変形をさせつつ、ページを持ち上げるために必要な荷重(必要荷重)をWとする。この必要荷重Wは、冊子のページの曲げ剛性EI、局所変形規定量L、ページ持ち上げ量Yにより決定される値であり、次式(1)によって求めることができる。
【0035】
W=(3EI/L
3)Y ……(1)
上記式(1)における局所変形規定量Lを横軸とし、必要荷重Wを縦軸としたグラフが
図5である。上記式(1)から、ページ持ち上げるための必要荷重Wは、
図4Bに示すページ持ち上げ量Yに対しては線形に大きくなり、前記局所変形規定量Lに対しては、3乗に反比例する。
【0036】
ここで、吸引するために用いる真空ポンプの能力や前記吸着パッド303の大きさ等により、前記吸着パッド303からめくりページ302に伝わる吸引力F
1は決定される。また、前記めくる対象となっている前記めくりページ302(紙)には空気透過性があるため、前記めくりページ302を介して、その下の2枚目ページ401以降のページに対しても吸引力が伝わる。前記2枚目ページ401に伝わる吸引力F
2は、次式(2)により算出できる。
F
2=αF
1 ……(2)
ここで、αは吸引力伝達率である。
【0037】
上記式(2)に示すように、2枚目ページ401に伝わる吸引力F
2は、めくりページ302に加わる吸引力F
1に対して吸引力伝達率α分だけ小さくなる。
図5では、めくりページ302に加わる吸引力F
1を水平の実線で示し、2枚目ページ401に加わる吸引力F
2を水平の破線で示している。
【0038】
なお、前記吸引力伝達率αは、めくりページ302と2枚目ページ401の間が封止されている状態のときは非常に高い値となり、めくりページ302と2枚目ページ401の間に隙間がわずかでも生じると、その値は非常に小さくなる。従って、めくりページ302と2枚目ページ401間に隙間を作ることは、多重吸着を回避する上で非常に重要である。
【0039】
以上のことから、2枚目ページ401以降を持ち上げることなく、めくりページ302のみを持ち上げるためには、次式(3)を満たす必要がある。
F
1 > W > F
2 ……(3)
上記式(3)を満たす条件は
図5に示すAの範囲である。
【0040】
そこで、本実施例は、めくりページ302に、前記ページ押さえ部材308と前記吸着パッド303により、局所変形を加える際に、上記式(3)の条件を満たすように、前記局所変形規定量L及び前記ページ持ち上げ量Yを制御するようにしたものである。
【0041】
なお、この際、冊子ページの曲げ剛性EI、吸引力伝達率α、ページを構成している紙媒体の物性値、めくり機構の吸引力F
1、めくり速度、めくり装置動作時の温度や湿度などの少なくとも1つ以上に基づいて予め定められた想定の最悪値、または前記温度や湿度などのパラメータを検知する検知手段により取得したデータを考慮して、前記局所変形規定量L及び前記ページ持ち上げ量Yを決定すれば、更に好ましい。
【0042】
上述した本実施例の説明では、前記局所変形規定量L及び前記ページ持ち上げ量Yを制御することにより、ページを持ち上げるための前記必要荷重Wを調整し、上記式(3)の条件を満たすようにした。これに対し、真空ポンプと前記吸着パッド304とを接続する配管やパイプの途中に、絞り等の吸引力調整手段を設けたり、前記真空ポンプの吸引能力を変化させるようにすれば、前記吸引力F
1及び前記吸引力F
2を制御することが可能となる。従って、前記局所変形規定量L及び前記ページ持ち上げ量Yを制御するのではなく、前記吸引力F
1及び前記吸引力F
2を制御するようにして、上記式(3)の条件を満たすように構成しても良い。
【0043】
以上説明した本実施例によれば、ページめくり時において、前記局所変形規定量Lなどを制御することにより、吸着パッド303により、めくりページ302を持ち上げる際に、上記式(3)を満たようにして、2枚目ページ401以降の吸着、持ち上げを防止し、めくりページ302のみを吸着して持ち上げることができるから、多重吸着を回避或いは抑制することができる。従って、多重めくり防止性能を向上させることができる冊子ページめくり装置を得ることができる。
【0044】
次に、
図6A〜
図6Jを用いて、
図3に示すページめくり部(冊子ページめくり装置)のページめくりの動作手順について
図1も参照しながら説明する。
図6A〜
図6Jはそれぞれページめくり部のページめくり動作を説明する説明図である。
【0045】
通帳などの冊子が、
図1に示す冊子プリンタ101の挿入口102から挿入され、印字機構部105で印字されるが、現在印刷中のページへの記帳が終了すると、次のページへのページめくりを行う必要がある。このページめくりの際には、まず
図6Aに示すように、冊子をページめくり部106(
図1参照)へ搬送する。本実施例ではこの搬送の際に、ページ押さえ部材308を搬送ローラ304と305との間に移動させ、前記ページ押さえ部材308を、冊子を移動させるためのガイドとして用いている。
【0046】
次に、
図6Bに示すように、前記冊子を、ページをめくるための所定位置に、前記搬送ローラ304,306により搬送路309上を搬送して、停止させる。なお、前記所定位置とは、前記冊子の綴じ側を前記搬送ローラ304,306で挟み込むことができ、前記冊子開き側は、搬送ローラ305,307で挟み込まない位置である。
【0047】
次に、
図6Cに示すように、前記ページ押さえ部材308を矢印602で示すように移動させ、めくりページ302を押さえる。このとき、ページ押さえ部材308は、
図5にAで示す範囲となるように、局所変形規定量Lを決め、この局所変形規定量Lとなるように前記ページ押さえ部材308を移動させて停止させる。前記局所変形規定量Lは、めくりページ302を持ち上げることができ、且つ2枚目以降のページ401を持ち上げることがない値(
図5のAで示す範囲の値)である。
【0048】
また、この際、前述したように、冊子ページの曲げ剛性EI、吸引力伝達率α、ページを構成している紙媒体の物性値、めくり機構の吸引力F
1、めくり速度、めくり装置動作時の温度や湿度などの少なくとも1つ以上に基づいて予め定められた想定の最悪値、または前記温度や湿度などのパラメータを検知する検知手段により取得したデータを考慮して、前記局所変形規定量Lを決定すると良い。
【0049】
また、エアー吸引力源(図示せず)を作動させた後、吸着パッド303を矢印601方向へ下降させて、めくりページ302を吸着する。この際、めくりページ302に対する吸着位置は、できるだけめくりページ302の端面近傍であることが望ましい。即ち、前述したように、めくりページ302を介して2枚目ページ401(
図4A参照)に伝わる吸引力は、めくりページ302と2枚目ページ401との間に隙間が生じると非常に小さくなる。従って、本実施例では、前述めくりページ302の端面近傍を吸着することで、冊子の端面から空気が、めくりページ302と2枚目ページ401の間に流れ込み易くなり、めくりページ302の分離に有利な状態となる。
【0050】
具体的には、前記冊子の端面から前記吸着パッド303の外周端部までの距離M(
図3参照)を10mm以内とすることが好ましく、更に好ましくは5±2mmとすると良い。但し、前記距離Mは、10mm以内や5±2mmとすることに限られるものではなく、使用する吸着パッド303の径やめくりページ302の紙質によって、その位置は十数ミリメートル程度としても良い。
【0051】
その後、
図6Dに示すよう吸着パッド303を矢印603の方向へ持ち上げる。この際、前記ページ押さえ部材308の効果により、吸着パッド303は、めくりページ302のみを持ち上げることができ、2枚目以降のページ401との分離を確実に行うことができる。また、前記吸着パッド303は、高い柔軟性を持つ素材(ゴム等)により構成されているので、めくりページ302を持ち上げた際に、該めくりページ302と前記吸着パッド303の間に隙間が形成されることなく、局所変形に追従させることができ、めくりページ302との吸着力を維持することができる。
【0052】
次に、
図6Eに示すように、前記ページ押さえ部材308を矢印604方向へ退避させ、ページめくり空間を確保する。また、前記吸着パッド303を矢印605方向へ移動させ、ページを更に持ち上げる。
【0053】
次に、
図6Fに示すように、持ち上げためくりページ302と残りの冊子部分(非めくりページ)の間にページ支持体606を挿入させる。このページ支持体606は持ち上げためくりページ302を一時的に支持するものである。
【0054】
その後、
図6Gに示すように、吸着パッド304の吸引力源であるエアーを遮断することにより、めくりページ302は前記ページ支持体606に支持される。次に、搬送ローラ304〜307により、冊子を矢印607方向(冊子開き側)への搬送を開始する。
【0055】
最後に、
図6H〜
図6Jに示すように、前記吸着パッド303を矢印608方向に退避させながら、冊子を矢印607,609方向(冊子開き側)に搬送することによって、めくりページ302がめくられ、冊子のページめくりを完了する。
【実施例2】
【0056】
本発明の冊子ページめくり装置の実施例2を、
図7及び
図8A〜
図8Hを用いて説明する。
まず、本実施例2の冊子ページめくり装置の構成を
図7により説明する。
図7は本実施例2を示す要部の概略構成図であり、吸着パッド付近を拡大して示す図である。また、
図7においては、吸着パッド701の内部が見えるように図示している。なお、本実施例2において、
図7に示す部分の構成以外は、
図1〜
図3に示す実施例1と同様の構成となっているので、それらの説明については省略する。
【0057】
図7に示すように、本実施例2の冊子ページめくり装置は、冊子のめくりページを吸着保持して持ち上げ可能に構成されているページ吸着手段と、このページ吸着手段の内部に設けられ、前記ページ吸着手段により吸着されためくりページに局部変形を与える局所変形手段を備える構成としたものである。具体的には、前記ページ吸着手段は吸着パッド701で構成され、この吸着パッド701を支持する支持部701aを備え、前記局所変形手段は、前記吸着パッド701内に設けられ前記支持部701aに取り付けられた弾性体702と、この弾性体702の下部に設けた局所変形部材703を備える構成としたものである。
【0058】
前記弾性体702は、例えばコイルばねなどで構成され、前記吸着パッド701の軸方向(
図7では上下方向)に伸縮自在の構成となっている。また、前記吸着パッド701がめくりページ302を吸着せずに上方に位置して、前記弾性体702がフリーの状態の場合には、前記局所変形部材703の下部は、前記吸着パッド701の下面701bよりも下に位置するように構成されている。
【0059】
本実施例では、前記吸着パッド701をこのように構成していることにより、前記吸着パッド701をめくりページ302に押し当てた状態では、前記局所変形部材703の下部もめくりページ302に押し当てられ、前記弾性体702は圧縮された状態となる。従って、この状態では、前記吸着パッド701の下面701b位置と前記局所変形部材703の下部位置とは同一高さ位置となる。
【0060】
この状態から、前記吸着パッド701が前記めくりページ302を吸着し、その後上昇すると、
図7に示すように、めくりページ302は、前記吸着パッド701の吸着領域内で、前記局所変形部材703により押し付けられ、局所変形が与えられる。その結果、めくりページ302と2枚目ページ401以降の間に隙間を生じさせることができ、この隙間により、前述した吸引力伝達率αが小さくなり、2枚目ページ401以降のページを吸着することなく、めくりページ302だけを分離して持ち上げることができる。
【0061】
次に、
図8A〜
図8Hを用いて、
図7に示す吸着パッドを備えたページめくり部(冊子ページめくり装置)のページめくりの動作手順について
図1も参照しながら説明する。
図8A〜
図8Hは、
図7に示す吸着パッド701を備えたページめくり部のページめくり動作を説明する説明図である。
なお、
図8A〜
図8Hの動作説明図おいて、上述した
図6A〜
図6Jと同様の動作をする部分については説明を省略するか、簡単に説明し、
図6A〜
図6Jと異なる動作をする部分を中心に説明する。
【0062】
通帳などの冊子が、
図1に示す冊子プリンタ101の挿入口102から挿入され、現在印刷中のページへの記帳が終了すると、次のページへのページめくりを行う。
図8Aは、ページめくり部106(
図1参照)へ搬送された冊子が、ページをめくるための所定位置に、搬送ローラ304,306により搬送路309上を搬送して停止させ、ページ押さえ部材308を吸着ヘッド701側とは反対側に移動させた状態を示している。
【0063】
次に、
図8Bに示すように、エアー吸引力源(図示せず)を作動させた後、吸着パッド701を矢印601方向へ下降させて、めくりページ302を吸着する。この吸着パッド701をめくりページ302に押し当てた状態では、
図7に示す前記局所変形部材703の下部もめくりページ302に押し当てられ、前記弾性体702は圧縮された状態となる。
【0064】
その後、
図8Cに示すように、吸着パッド701を矢印605の方向へ持ち上げる。この際、
図7に示すように構成されている吸着パッド701の効果により、該吸着パッド701は、めくりページ302のみを持ち上げることができ、2枚目以降のページ401(
図7参照)との分離を確実に行うことができる。即ち、めくりページ302は、前記吸着パッド701の吸着領域内で、前記局所変形部材703により押し付けられ、局所変形が与えられる。その結果、めくりページ302と2枚目ページ401以降の間に隙間を生じさせることができ、この隙間により前記吸引力伝達率αが小さくなり、2枚目ページ401以降のページを多重吸着することなく、めくりページ302だけを分離して持ち上げることができる。
【0065】
また、本実施例でも、前記吸着パッド701は、高い柔軟性を持つ素材により構成されているので、めくりページ302を持ち上げた際に、該めくりページ302と前記吸着パッド701の間に隙間が形成されることなく、局所変形に追従させることができ、めくりページ302との吸着力を維持することができる。
【0066】
なお、本実施例においても、上記実施例1と同様に、めくりページ302に対する吸着位置は、できるだけめくりページ302の端面近傍であることが望ましく、冊子の端面から吸着パッド701の外周端部までの距離を10mm以内、好ましくは5±2mmとすると良い。
【0067】
次に、
図8Dに示すように、持ち上げためくりページ302と残りの冊子部分の間にページ支持体606を挿入させる。その後、
図8Eに示すように、吸着パッド701の吸引力源であるエアーを遮断することにより、めくりページ302は前記ページ支持体606に支持される。次に、搬送ローラ304〜307により、冊子を矢印607方向(冊子開き側)への搬送を開始する。
【0068】
最後に、
図8F〜
図8Hに示すように、前記吸着パッド701を矢印608方向に退避させながら、冊子を矢印607,609方向(冊子開き側)に搬送することによって、めくりページ302がめくられ、冊子のページめくりを完了する。
【0069】
以上説明したように、2枚目ページ401以降の吸着、持ち上げを防止するために、本実施例2では、前記実施例1のように、ページ押さえ部材308により前記局所変形規定量Lを制御するのではなく、
図7に示すように、吸着パッド701内にめくりページ302へ局所変形を与える局所変形手段(弾性体702、局所変形部材703)を備える構成としている。従って、本実施例によれば、実施例1のように、ページ押さえ部材308が不要となり、その動作に必要な構成も低減できるから、より安価で処理速度の速い冊子ページめくり装置を得ることができる。
【0070】
上述した本発明の冊子ページめくり装置の各実施例によれば、通帳などのように、綴じられた複数の用紙をもつ冊子のページめくりにおいて、ページを複雑に変形させたり大きく湾曲させるなどの変形を加えることなく、また表面を汚したり傷つけたりすることもなく、1枚ずつページめくりを行うことが可能となる。更に、ページ押さえ部材308により前記局所変形規定量Lを制御する機構や、吸着パッドに局所変形手段を備える構成としたことにより、動作が単純で簡易な機構により、多重めくりを確実に抑制することができるので、安価で安定した冊子ページめくり装置を得ることができる。
【0071】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、多重めくりをより確実に防止するため、上記実施例1の構成と上記実施例2の構成を組合せても良い。即ち、実施例1における吸着パッド303を実施例2における吸着パッド701に置き換え、ページ押さえ部材308により前記局所変形規定量Lを制御する機構と組み合わせることにより、めくりページと2枚目以降のページとの分離をより確実に行うことができ、多重めくり防止可能な安定した性能をもつ冊子ページめくり装置を得ることができる。また、前記ページ吸着手段は吸着パッドには限られず、めくりページを吸着して持ち上げることができるものであれば良い。
更に、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。