(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1金属被膜および前記第2金属被膜は、それぞれ銀、金、銅、ニッケル、白金、錫およびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1または請求項2に記載の複合導電性粒子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複合導電性粒子、それを含む導電性樹脂組成物および導電性塗布物について、図を用いながら詳細に説明する。
【0015】
<複合導電性粒子>
図1を参照し、本実施の形態に係る複合導電性粒子1は、0.1μm以上50μm以下の粒子径d
1を有する第1導電性粒子10と、第1導電性粒子10の表面に付着する、50nm以上1000nm以下の粒子径d
2を有する第2導電性粒子20とを備える。第1導電性粒子10は、第1粒子11と、第1粒子11の表面を被覆する第1金属被膜12とからなり、第2導電性粒子20は、第2粒子21と、第2粒子21の表面を被覆する第2金属被膜22とからなる。また、第1導電性粒子10の粒子径d
1は、第2導電性粒子20の粒子径d
2よりも大きく、第2導電性粒子20の第1導電性粒子10に対する付着率は2%以上40%以下である。なお、本発明の導電性粒子は、不可避不純物を含んでいてもよく、また、本発明の効果を発揮する限り、他の任意の成分を含んでいてもよい。
【0016】
本明細書において「付着」とは、物理的に相互に結合している状態をいい、単に接している状態とは異なる。また、この状態は、少なくとも、導電性粒子を利用するにあたって、導電性粒子に加えられる物理的衝撃(たとえば、撹拌作業、塗布作業等)に耐えうるものである。
【0017】
(付着率)
まず、付着率について説明する。複合導電性粒子1の付着率(第2導電性粒子20の第1導電性粒子10に対する付着率)は次の方法により算出することができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)を用いて、複合導電性粒子1の電子画像を得る。電子画像において、粒子径d
1を有する1つの粒子(第1導電性粒子10)の表面に、粒子径d
2(ただし、d
1>d
2)を有する複数の粒子(第2導電性粒子20)が付着している構造を示すものが、複合導電性粒子1に該当する。
【0018】
図2は、複合導電性粒子のSEM写真を示す図である。
図2において、粒子径の最も大きい粒子が第1導電性粒子10であり、その表面に付着している粒子径の小さい複数の粒子が第2導電性粒子20である。すなわち、
図2は、観察視野に1つの複合導電性粒子1を示すSEM写真である。
【0019】
なお、電子画像において、粒子同士が「付着している状態」であるのか、「凝集している状態」であるのかは、粒子の状態および粒子径の関係によって区別することができる。たとえば、多数(それらの粒子径は問わない)の粒子同士が密着することによって形成される大きな塊が観察される場合には、この塊を構成する各粒子は「凝集している状態」に区別することができる。これに対し、上述のように、粒子径d
1を有する1つの粒子の表面に、粒子径d
2(ただし、d
1>d
2)を有する複数の粒子が重なって、または繋がっているように観察される場合には、「付着している状態」に区別することができる。また、電子画像において粒子同士が3次元的に重なる状態となる場合があるが、このような状態は、互いに重なる粒子の背面、または前面を電子画像で観察することができないため、このような電子画像は観察対象から除く。
【0020】
図2に示されるように、SEM写真において、複合導電性粒子1中の第1導電性粒子10の表面に付着する第2導電性粒子20が占める領域は、第1導電性粒子10が占める領域よりも高い明度を示す傾向にある。このため、
図3に示すように、電子画像を二値化処理することにより、1つの複合導電性粒子1が占める領域において、第1導電性粒子10が占める領域(
図3中のAの領域)の面積S1と、第2導電性粒子20が占める領域(
図3中のBの領域)の面積S2とを算出することができる。なお、
図3において、Bの領域は斜線でハッチングされる全ての領域である。
【0021】
そして、該面積S1、S2の各数値を下記式(1)に当てはめることにより、上記付着率を算出することができる。なお、本明細書において、付着率は、1つのSEM写真で観察される複合導電性粒子50個以上について測定した結果の平均値とする。
付着率(%)=S2/(S1+S2)×100・・・(1)。
【0022】
本実施の形態に係る複合導電性粒子1において、第2導電性粒子20による第1導電性粒子10の付着率は、2%以上40%以下である。この場合に、複合導電性粒子1は、高い導電性と高い充填性とを両立することができる。一方、付着率が2%未満の場合には、導電性が不十分となり、付着率が40%を超える場合には、充填性が不十分となる。上記被覆率は、4%以上35%以下がより好ましい。
【0023】
(第1導電性粒子および第2導電性粒子)
図1に戻り、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20の形状は特に制限されず、球状、粒状、円盤状、柱状、立方体、直方体、板状、針状、繊維状、フィラー状、樹枝状などの各形状を有することができる。製造方法上、第1粒子11および第2粒子21の各形状は、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20の各形状に引き継がれる。なお、本明細書において、球状とは、数学的な球形を意図するものではなく、一見して球形と判断できる程度のものをいう。
【0024】
また、上述のように、第1導電性粒子10は0.1μm以上50μm以下の粒子径d
1を有し、第2導電性粒子20は50nm以上1000nm以下の粒子径d
2を有し、粒子径d
1は粒子径d
2よりも大きい。なお、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20の各粒子径は、SEM写真を分析することによって測定することができる。第1導電性粒子10および第2導電性粒子20のそれぞれがこのような粒子径を有することにより、複合導電性粒子1は高い導電性を有しつつ、高い充填性を有することができる。粒子径d
1は1μm以上20μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下がさらに好ましく、粒子径d
2は100nm以上950nm以下がより好ましく、100nm以上700nm以下がさらに好ましい。
【0025】
ここで、上記粒子径d
1は、SEM写真にて観察される任意の50個以上の第1導電性粒子10の粒子径の平均値であり、同様に、粒子径d
2は、SEM写真にて観察される任意の50個以上の第2導電性粒子20の粒子径の平均値である。第1導電性粒子10または第2導電性粒子20の形状が球状の場合には、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20のそれぞれの直径を粒子径d
1および粒子径d
2とする。また、第1導電性粒子10または第2導電性粒子20の形状が板状、針状などの長さの異なる辺を有する場合には、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20の各長辺の距離を粒子径d
1および粒子径d
2とする。
【0026】
(第1粒子および第2粒子)
第1導電性粒子10のコアを構成する第1粒子11、および第2導電性粒子20のコアを構成する第2粒子21の材料は特に制限されず、アルミニウム、銅、ニッケル、錫などの金属、シリカ、ガラス、アルミナ、セラミックスなどの種々の無機物、樹脂などの有機物を用いることができる。ただし、第1粒子11の材料と第2粒子21とは同じ材料からなる。これは、後述する製造方法に起因する。
【0027】
上記複合導電性粒子1の比重を小さくする観点からは、第1粒子11および第2粒子21は、比重の小さい材料からなることが好ましく、たとえば、樹脂、シリカ、アルミナ、アルミニウム、ガラス、ジルコニア、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、ダイヤモンドのいずれかからなることが好ましい。
【0028】
樹脂は特に制限されず、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどのポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレートなどのアクリル樹脂、ジビニルベンゼン重合樹脂、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジビニルベンゼン−メタクリル酸エステル共重合体などのジビニルベンゼン系共重合体樹脂、ポリアルキレンテレフタラート、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミンホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などを挙げることができる。
【0029】
シリカとしては、溶融シリカや、これを表面処理した無孔質のものを好適に用いることができる。また、ガラスも特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、環境への負荷を低減する観点から無鉛ガラスが好ましい。なお、ガラスを構成する成分として金属が含まれていてもよい。
【0030】
特に、第1粒子11および第2粒子21は、シリカからなることが好ましい。シリカは樹脂と比して濡れ性が高いため、後述する製造方法において、シリカ粒子の表面に均一に金属被膜を形成させることができる。このため、シリカからなる第1粒子11および第2粒子21を有する複合導電性粒子1は、均質な第1金属被膜12および第2金属被膜22を有することができる。また、シリカは、樹脂と比して熱収縮による変化や溶剤による膨潤が少ないため、第1粒子11および第2粒子21をシリカ粒子とすることにより、より品質の安定した複合導電性粒子1を提供することができる。
【0031】
また、第1粒子11および第2粒子21の形状は特に制限されず、球状、粒状、板状、針状、繊維状、円盤状、柱状、立方体、直方体、フィラー状、樹枝状などの各形状を有することができる。ただし、後述する製造方法におけるめっき処理液中での分散性の高さから、第1粒子11および第2粒子21の形状は球状であることが好ましい。この場合、複合導電性粒子1の品質をより均質にすることができる。
【0032】
(第1金属被膜および第2金属被膜)
第1導電性粒子10を被覆する第1金属被膜12、および第2導電性粒子20を被覆する第2金属被膜22の材料は特に制限されず、公知の金属を用いることができる。ただし、第1金属被膜12の材料と第2金属被膜22の材料とは同じである。これは、後述する製造方法に起因する。なかでも、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、錫(Sn)およびこれらの合金は特に高い導電性を有するため、第1金属被膜12および第2金属被膜22は、銀、金、銅、ニッケル、白金、錫およびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。また、第1金属被膜12および第2金属被膜22は、各々1層の金属層で構成されてもよく、同種の金属または異種の金属からなる複数層で構成されてもよい。また、金属の導電性を大きく阻害せず、本発明の効果を奏する限り、第1金属被膜および第2金属被膜には、リン(P)、ホウ素(B)、炭素(C)および硫黄(S)等の非金属が含まれていてもよい。
【0033】
第1金属被膜12は、第1粒子11の表面の全体を被覆していることが好ましいが、これに限られず、第1粒子11の表面の一部を被覆していてもよい。ただし、効果を十分に発揮する観点から、少なくも第1粒子11の表面の70%以上を被覆していることが好ましい。また、第2金属被膜22もまた、第2粒子21の表面の全体を被覆していることが好ましいが、これに限られず、第2粒子21の表面の一部を被覆していいてもよい。ただし、効果を十分に発揮する観点から、少なくとも第2粒子21の表面の70%以上を被覆していることが好ましい。
【0034】
また、第1金属被膜12および第2金属被膜22の平均膜厚は0.1nm以上であることが好ましい。0.1nm未満の場合、各複合導電性粒子1を被覆することが困難となり、導電性の低下を引き起こす傾向がある。また、上記膜厚は、1nm以上であることがより好ましい。また、膜厚は100nm以下であることがさらに好ましい。膜厚が100nmを超えると、膜厚のばらつきが大きくなる傾向にあり、また凝集し易くなる傾向にある。さらに、膜厚を大きくするためには使用する金属量を増やす必要があるため、製造コストの増加に繋がる傾向がある。このため、必要とされる導電性と製造コストとの兼ね合いを考慮することが好ましい。
【0035】
第1金属被膜12および第2金属被膜22の膜厚は、SEM等の電子顕微鏡を用いて複合導電性粒子1の断面観察を行うことにより評価することができる。なお、第1粒子11(第2粒子21)の第1金属被膜12(第2金属被膜22)による被覆の均一性や被覆の程度等についても、同様の断面観察によって評価することができる。
【0036】
(保護層)
複合導電性粒子1は、その表面を被覆する保護層を備えていてもよい(不図示)。当該保護層は脂肪酸または脂肪酸塩などの表面処理剤により形成することができる。複合導電性粒子1がその表面に保護層を備えることによって耐熱性が向上し、これにより導電性が維持される。なお、保護層は、複合導電性粒子1の表面の全体を被覆していることが好ましいが、これに限られず、複合導電性粒子1の一部を被覆している構成であってもよい。この保護層は、複合導電性粒子を導電性樹脂組成物に配合した際に、複合導電性粒子の分散剤や潤滑剤としての機能も果たす。
【0037】
表面処理剤は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。たとえば、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、キレート剤、有機金属化合物などを挙げることができる。なかでも、脂肪酸、脂肪酸塩が好ましく、これら以外としては、ベンゾトリアゾール類が好ましい。脂肪酸としては、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、アクリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、アラキドン酸などを挙げることができる。特に、第1金属被膜12および第2金属被膜22に対する高い保護効果を有する観点から、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸の少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、表面処理剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(製造方法)
複合導電性粒子1の製造方法について説明する。まず、第1粒子11および第2粒子21の材料となる粉末を準備する。粉末としては、金属粉末、樹脂粉末、およびシリカ粉末などの無機物の粒子からなる粉末などが挙げられる。用いられる粉末の形状は特に制限されず、球状、粒状、板状、針状、繊維状、フィラー状、樹枝状などの各形状のものを用いることができるが、後述するめっき処理液中における分散性の高さから、球状であることが好ましい。なお、第1粒子11および第2粒子21の材料の形状が球状である場合、製造される複合導電性粒子1を構成する第1導電性粒子10および第2導電性粒子20もまた球状となる。
【0039】
ここで、用いる粉末は第1粒子11および第2粒子21の材料であるため、当該粉末には、少なくとも、第2導電性粒子20の粒子径d
2よりも小さい粒子径を有する小粒子と、該小粒子よりも大きく、かつ第1導電性粒子10の粒子径d
1(ただし、d
1>d
2)よりも小さい粒子径を有する大粒子とが混在している必要がある。
【0040】
たとえば、市販の粉末を用いる場合には、レーザー回折法などの公知の粒度分布測定法により測定された粒度分布に基づいて、必要とする小粒子と大粒子とが混在しているかどうかを確認することができる。特に、粉末のD50が1μm〜50μmであることが好ましく、D10が0.1μm〜10μmであることが好ましく、さらには、D10が0.1μm〜1μmであることがより好ましい。この場合、高い歩留まりでの製造が可能となる。なお、D50、D10とは、レーザー回折法により測定された体積累積粒度分布において、それぞれ累積度50%、10%の粒子径を意味する。
【0041】
本製造方法においては、複合導電性粒子1を製造するために、粉末全体として上記のような粒度分布を有する粉末を用いてもよいし、上記のような小粒子と大粒子とを別々に準備してこれらを予め混合させた粉末を準備してもよい。さらに、混合させるにあたって、複合導電性粒子1の被覆率を考慮して、この混合割合を調整してもよい。
【0042】
次に、撹拌装置の撹拌槽内に準備した粉末を投入し、これをスラリー化する。撹拌装置としては、たとえば、
図4に示す撹拌装置を用いることができる。
図4において、撹拌装置30は、撹拌槽31と、撹拌槽31内に収容されたスラリー等を撹拌可能な撹拌羽根32とを備える。撹拌羽根32は、支軸部32aと羽根部32bとからなり、不図示の駆動部により、図中矢印方向に、所定の翼周速度で回転することができる。本実施の形態では、撹拌槽31内に粉末からなるスラリーが投入される。
【0043】
次に、撹拌槽31内に、必要であれば、第1粒子11と第2粒子21との表面に第1金属被膜12および第2金属被膜22を被覆させるための触媒を投入する。第1粒子11および第2粒子21の表面に触媒付与を行わずに直接めっき処理液に接触させることで、第1金属被膜12および第2金属被膜22とを形成させることもできる。しかし、無電解めっき処理の前に無電解めっき用の触媒を各粒子に付着させておくことにより、金属被膜の形成がより効率的になるため、触媒の投入を行うことが好ましい。
【0044】
触媒を付着させる方法としては、たとえば、塩化第一スズを含む塩酸溶液によって第1粒子11および第2粒子21の表面を処理した後、塩化パラジウムを含む溶液で処理する方法、塩化パラジウムおよび塩化第一スズを含む溶液で処理する方法、塩化第一スズおよび塩化パラジウムを含む溶液にて第1粒子11および第2粒子21の表面を処理した後、塩酸水溶液、硫酸水溶液などを用いて活性化する方法などが例示される。これらの方法は、センシタイジング−アクチベーティング法またはキャタリスト法として知られる公知の方法である。本製造方法においては、このような公知の触媒付与方法を適宜使用することができる。
【0045】
次に、撹拌槽31内に、金属塩、還元剤、および錯化剤を含むめっき処理液を投入する。金属塩としては、有機溶媒および水溶媒を含む混合溶媒中で安定的に溶解できるものが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、塩化物、酢酸塩、乳酸塩、スルファミン酸塩、フッ化物、ヨウ化物、シアン化物等を用いることができる。なお、金属塩を構成する金属は、第1金属被膜12および第2金属被膜22を構成する金属である。
【0046】
還元剤としては、無電解めっき処理法に用いられる公知のものを用いることができる。具体的には、グルコース、サッカロースなどの糖類、セルロース、デンプン、グリコーゲンなどの多糖類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、次亜リン酸、ホルムアルデヒド、水素化ボロン、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン酒石酸、およびこれらの塩などを用いることができる。なお、ヒドラジン洒石酸塩は、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0047】
錯化剤としては、無電解めっき処理法に用いられる公知のものを用いることができる。具体的には、コハク酸などのカルボン酸、クエン酸および洒石酸などのオキシカルボン酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アミノ酢酸、およびこれらの塩など、たとえば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などを用いることができる。無電解めっき処理法において、このような錯化剤を用いることによって、金属の再析出を抑制することができるため、安定的に金属被膜を成長させることができる。
【0048】
また、めっき処理液のpHは、金属塩を構成する金属の種類によって適宜調整することが好ましい。めっき処理液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を添加することにより、そのpHをアルカリ性(pH8〜12)に調整することができ、硫酸、硝酸、クエン酸等を添加することにより、そのpHを酸性(pH3〜6)にすることがで、これらの組み合わせにより、そのpHを中性(pH6〜8)にすることができる。さらに、めっき処理液の温度は1〜99℃に調整することが好ましい。この場合、めっき反応を効率的に進めることができる。
【0049】
そして、撹拌羽根32を回転させてめっき処理液を撹拌させることにより、無電解めっき処理を行う。このとき、撹拌羽根32の翼周速度を1.5m/sec以上10m/sec以下に制御する。
【0050】
また、撹拌装置30において、撹拌槽31の内径D1と撹拌羽根32の外径D2との関係(D1:D2)は、7:3〜5:5であることが好ましく、7:3〜6:4であることがより好ましい。この場合、撹拌槽31内のめっき処理液中における第1粒子11および第2粒子21の分散をより均一にできるため、翼周速度の制御を均一に反映させることができる。また、同様の理由により、撹拌槽31内のめっき処理液の高さH1と撹拌羽根32の高さH2との関係(H1:H2)は、9.9:0.1〜7:3であることが好ましく、9.9:0.1〜9:1であることがより好ましい。なお、高さH1は、撹拌槽31の底部上面とめっき処理液の液面との距離に相当し、高さH2は、底部上面と羽根部32bの下面との距離に相当する。必要に応じて、撹拌槽31内の上下方向における分散性を向上させるために、撹拌槽31の内部壁に邪魔板(バッフル)を設置してもよい。
【0051】
上記無電解めっき処理により、めっき処理液中に複合導電性粒子1が作製される。したがって、撹拌後のスラリー(めっき処理液)を固液分離することにより、複合導電性粒子1のスラリーを得ることができ、これを乾燥させることにより、複合導電性粒子1を得ることができる。
【0052】
なお、上述の保護層を形成する場合には、その形成方法は特に制限されないが、たとえば、無電解めっき処理後の処理液から固液分離等によって複合導電性粒子1を取り出し、これを保護層の材料となる脂肪酸または有機酸を含む溶液中に投入する、という方法を採用することができる。この処理によって、保護層を有する複合導電性粒子1を作製することができる。
【0053】
以上のように、複合導電性粒子1は特定の条件下で無電解めっき処理を行うことによって効率的に製造することができる。換言すれば、上述のような簡易な処理により、各粒子の表面が金属によって被覆された導電性粒子が作製されるとともに、導電性粒子のうち、粒子径d
1を有する「大径導電性粒子」である第1導電性粒子10の表面に、粒子径d
2(ただし、d
1>d
2)を有する複数の「小径導電性粒子」である第2導電性粒子20が付着することができる。この理由は明確ではないが、本発明者らは以下のように考察している。
【0054】
めっき処理液中において、大小様々な粒子の表面に金属塩由来の金属が析出する。これにより、様々な粒子径を有する導電性粒子が作製される。そして、このときの翼周速度が1.5m/sec未満の場合には、スラリーの分散性が低くなるために、「大径導電性粒子」と「小径導電性粒子」とを含む全ての導電性粒子が凝集する。この場合には、1つの「大径導電性粒子」に対して「小径導電性粒子」が付着するだけでなく、他の「大径導電性粒子」までもが付着してしまうために、複合導電性粒子1を製造することができない。なお、この状態は上述の「凝集している状態」に相当する。
【0055】
また、翼周速度が10m/secを超える場合、スラリーの分散性が高くなるために、「大径導電性粒子」と「小径導電性粒子」とがそれぞれ金属によって被覆された後に各粒子同士が接触することが困難となる。このため、「小径導電性粒子」を「大径導電性粒子」の表面に付着させることができず、それぞれの導電性粒子は分散されたままとなる。なお、通常、粒子のめっき処理を行うにあたっては、各粒子が分散されることが所望される。
【0056】
これに対し、翼周速度が1.5m/sec以上10m/sec以下の場合には、スラリーの分散性が、上述のような凝集を起こさずに、「大径導電性粒子」と「小径導電性粒子」とがそれぞれ被覆された後に接触するのに適切な状態となる。このため、1つの「大径導電性粒子」に対して複数の「小径導電性粒子」が付着することができ、結果的に、複合導電性粒子1が製造される。
【0057】
(効果)
本実施の形態に係る複合導電性粒子1によれば、高い導電性と高い充填性とを有することができる。複合導電性粒子1が高い導電性と高い充填性との両特性を有することのできる理由は次のように考えられる。
【0058】
すなわち、従来の導電性粒子は、1つのコア粒子の表面に金属被膜が形成された構成を有していた。これに対し、複合導電性粒子1は、粒子径の比較的大きい第1導電性粒子10の表面に粒子径の比較的小さい第2導電性粒子20が複数付着した構成を有する。このような構成を有することにより、粒子同士の接点が増し、かつ粒子の充填性も高まるため、結果的に、高い導電性と高い充填性との両特性を有することができる。
【0059】
なお、複合導電性粒子1において、第1導電性粒子10および第2導電性粒子20のそれぞれは、
図1に示されるように金属被膜によって個々に被覆された構成を有する。すなわち、第1粒子11および第2粒子21は互いに直接は接触していない。このため、複合導電性粒子1の構造は、たとえば、互いに直接接触する複数の粒子の表面が一体的に金属によって被覆されるような構成とは異なる。複合導電性粒子1は、一体的に金属によって被覆されるような構成に比して第1粒子11と第2粒子21とがそれぞれ被覆された状態で互いに付着しているため、第1導電性粒子10と第2導電性粒子20との接点においても導通することができ、もってより高い導電性を有することができる。
【0060】
ここで、第2導電性粒子20による第1導電性粒子10の被覆率が高過ぎたり、第2導電性粒子20の粒子径が大き過ぎたりすると、複合導電性粒子1の構造が嵩高くなり、その充填性が低下すると考えられる。しかし、本実施の形態に係る複合導電性粒子1において、上記被覆率は2%以上40%以下であり、さらに第1導電性粒子10の粒子径d
1と第2導電性粒子20の粒子径d
2とが上述の数値を満たすことにより、十分に高い充填性を発揮することができる。
【0061】
<導電性樹脂組成物>
本実施の形態に係る導電性樹脂組成物は、上述の複合導電性粒子1を導電材として含むことを特徴とする。複合導電性粒子1は、上述のように、高い導電性と高い充填性を有するものであり、これを導電材として含む導電性樹脂組成物は、上述の複合導電性粒子1の効果を引き継ぐことができる。すなわち、本発明の導電性組成物によれば、高い導電性を有する複合導電性粒子1を含むとともに、導電性樹脂組成物中において、複合導電性粒子1を高密度で充填させることができる。したがって、導電性の高い導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0062】
上記導電性樹脂組成物は、具体的には、樹脂に上記複合導電性粒子1を分散させたものであり、導電性ペースト、導電性塗料、導電性接着剤、導電性インキ、導電性フィルム、導電性成形物、導電性塗膜などを挙げることができる。このような導電性樹脂組成物は、たとえば、上記複合導電性粒子1を樹脂に練り込んだり、樹脂溶液に分散させることにより、製造することができる。
【0063】
上記樹脂は、この種の用途に使用される従来公知の樹脂を使用することができ、たとえば、熱硬化型アクリル樹脂/メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂/セルロースアセテートブチレート(CAB)/メラミン樹脂、熱硬化型ポリエステル(アルキド)樹脂/メラミン樹脂、熱硬化型ポリエステル(アルキド)/CAB/メラミン樹脂、イソシアネート硬化型ウレタン樹脂/常温硬化型アクリル樹脂、水希釈型アクリルエマルジョン/メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0064】
なお、導電性樹脂組成物における導電性粒子の含有量は、用途により異なるため特に限定されないが、たとえば、樹脂100質量部に対して10質量部以上100質量部以下とすることが好ましい。10質量部未満の場合、導電性樹脂組成物の導電性が不十分となる場合があり、100質量部を超える場合、導電性樹脂組成物中の導電性粒子の量が多過ぎるために、取扱い性が低下する場合がある。また、上記導電性樹脂組成物は、樹脂および複合導電性粒子1以外の任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、たとえば、ガラスフリット、金属アルコキシド、粘度調製剤、表面調製剤などを挙げることができる。
【0065】
<導電性塗布物>
本実施の形態に係る導電性塗布物は、上記導電性樹脂組成物により形成された塗膜を基体上に有する塗布物である。したがって、この導電性塗布物は、高い導電性を備えたものとなる。
【0066】
上記導電性塗布物は、具体的には、電極、配線、回路、導電性接合構造、導電性粘着テープ等を挙げることができる。塗膜の形状および厚さも特に制限されず、その用途によって所望の厚さを採用することができる。
【0067】
上記基体に関し、金属、プラスチックなどの有機物、セラミックス、ガラスなどの無機物、紙および木材など、その素材は特に限定されない。
【0068】
なお、上記導電性樹脂組成物を基体上に塗布する方法は、従来公知の塗布方法を特に限定することなく採用することができ、いかなる方法も採用することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
以下のようにして、実施例1に係る導電性粉末(複合導導電性粒子)を作製した。まず、第1粒子および第2粒子の材料として、シリカ粉末(商品名:「アドマファインSO−C6」、株式会社アドマテックス製)を準備した。なお、この粉末の特性は以下の通りであった。
比表面積:35922cm
2/cm
3
D10:0.69μm
D50:1.83μm。
【0071】
次に、
図4に示すような構成を有する撹拌装置を準備した。準備した撹拌装置に関し、撹拌槽の最大容量は2.0Lであり、撹拌槽の内径D1と撹拌羽根の外径D2との関係(D1:D2)は、7:3〜6:4の範囲内であった。また、後述するめっき処理において、撹拌槽内のめっき処理液の高さH1と撹拌羽根の高さH2との関係(H1:H2)は、9.9:0.1〜9:1の範囲内とした。
【0072】
準備した撹拌装置の撹拌槽内に、上記シリカ粉末10g、イオン交換水0.05Lを投入して撹拌羽根を回転させてスラリーを形成した。そして、該スラリーに塩化第一スズ0.2gをイオン交換水0.05Lに溶解させた溶液を添加し、5分間撹拌した。なお、このときの翼周速度は5m/secであり、槽内温度は30℃とした。これにより、シリカ粉末を構成するシリカ粒子の表面にスズイオンが担持された。そして、上記処理後のスラリーを固液分離し、得られた固体成分Aをイオン交換水で洗浄した。なお、以降記載する遠心分離の条件は、本条件と同様とした。
【0073】
次に、撹拌槽内にイオン交換水0.45Lを投入し、さらに、上記洗浄後の固体成分Aを添加した。そして、翼周速度2.7m/secで1分撹拌した後、下記の水溶液1〜3を添加して同翼周速度で30分間撹拌した。これにより、シリカ粒子の表面に、該表面を被覆する第1金属被膜および第2金属被膜としての銀被膜を形成するための無電解めっき処理を行った。なお、このときの槽内温度は30℃とした。
水溶液1:硝酸銀6.75gと25%アンモニア水30mLをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液
水溶液2:水酸化ナトリウム2.7gをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液
水溶液3:ぶどう糖40.5gをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液。
【0074】
上記めっき処理後の処理液を固液分離し、得られた固体成分Bをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分B中には、
図1に示される構成を有する本発明に係る複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Bを、別の撹拌槽内に投入されたオレイン酸含有アルコール溶液中に添加して、10分撹拌することにより、複合導電性粒子の表面にオレイン酸からなる保護層を形成させた。なお、オレイン酸含有アルコール溶液としては、2gのオレイン酸が100mLのイソプロピルアルコールに溶解された溶液を用いた。
【0075】
上記保護層を形成させた後、得られたスラリーを固液分離し、得られた固体成分Cをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分中には、保護層を有する複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Cに対して、110℃、真空環境下で乾燥処理を行い、実施例1に係る導電性粉末を得た。なお、この導電性粉末の色調は褐色であった。
【0076】
<実施例2>
以下のようにして、実施例2に係る導電性粉末(複合導電性粒子)を作製した。まず、第1粒子および第2粒子の材料として、シリカ粉末(商品名:「アドマファインSO−C6」、株式会社アドマテックス製)を準備した。
【0077】
次に、
図4に示すような構成を有する撹拌装置を準備した。準備した撹拌装置に関し、撹拌槽の最大容量は0.5Lであり、D1:D2およびH1:H2の各比は実施例1と同様とした。
【0078】
次に、準備した撹拌槽の撹拌槽内に、上記シリカ粉末10g、イオン交換水0.05Lを投入して撹拌羽根を回転させてスラリーを形成した。そして、該スラリーにフッ化スズ0.2gをイオン交換水0.05Lに溶解させた溶液を添加し、5分間撹拌した。なお、このときの翼周速度は5m/secであり、槽内温度は50℃とした。これにより、シリカ粉末を構成するシリカ粒子の表面にスズイオンが担持された。そして、上記処理後のスラリーを固液分離し、得られた固体成分Aをイオン交換水で洗浄した。
【0079】
次に、撹拌槽内にイオン交換水0.2Lを投入し、さらに、上記洗浄後の固体成分Aを添加した。そして、翼周速度2.7m/secで1分撹拌した後、下記の水溶液1〜3を添加して同翼周速度で30分間撹拌した。これにより、シリカ粒子の表面に、該表面を被覆する第1金属被膜および第2金属被膜としての銀被膜を形成するための無電解めっき処理を行った。なお、このときの槽内温度は30℃とした。
水溶液1:硝酸銀1.75gと25%アンモニア水8mLをイオン交換水50mLに溶解させた水溶液
水溶液2:水酸化ナトリウム0.7gをイオン交換水50mLに溶解させた水溶液
水溶液3:ぶどう糖10.5gをイオン交換水50mLに溶解させた水溶液。
【0080】
上記めっき処理後の処理液を固液分離し、得られた固体成分Bをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分B中には、
図1に示される構成を有する本発明に係る複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Bを、別の撹拌槽内に投入されたオレイン酸含有アルコール溶液中に添加して、10分撹拌することにより、複合導電性粒子の表面にオレイン酸からなる保護層を形成させた。なお、オレイン酸含有アルコール溶液としては、1.5gのオレイン酸が0.3Lのイソプロピルアルコールに溶解された溶液を用いた。
【0081】
上記保護層を形成させた後、得られたスラリーを固液分離し、得られた固体成分Cをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分C中には、保護層を有する複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Cに対し、110℃、真空環境下で乾燥処理を行い、実施例2に係る導電性粉末を得た。なお、この導電性粉末の色調は黒褐色であった。
【0082】
<実施例3>
以下のようにして実施例3に係る導電性粉末(複合導電性粒子)を作製した。まず、第1粒子および第2粒子の材料として、シリカ粉末(商品名:「アドマファインSO−C6」、株式会社アドマテックス製)を準備した。
【0083】
次に、
図4に示すような構成を有する撹拌装置を準備した。準備した撹拌装置に関し、撹拌槽の最大容量は1Lであり、D1:D2およびH1:H2の各比は実施例1と同様とした。そして、実施例2と同様の方法により、洗浄後の固体成分Aを得た。
【0084】
次に、撹拌槽内にイオン交換水0.5Lを投入し、さらに、上記洗浄後の固体成分Aを添加した。そして、翼周速度2.7m/secで1分撹拌した後、下記の水溶液1〜3を添加して同翼周速度で30分間撹拌した。これにより、シリカ粒子の表面に、該表面を被覆する第1金属被膜および第2金属被膜としての銀被膜を形成するための無電解めっき処理を行った。なお、このときの槽内温度は30℃とした。
水溶液1:硝酸銀3.9gと25%アンモニア水18mLをイオン交換水110mLに溶解させた水溶液
水溶液2:水酸化ナトリウム1.5gをイオン交換水110mLに溶解させた水溶液
水溶液3:ぶどう糖23.6gをイオン交換水110mLに溶解させた水溶液。
【0085】
上記めっき処理後の処理液を固液分離し、得られた固体成分Bをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分中Bには、
図1に示される構成を有する本発明に係る複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Bを、別の撹拌槽内に投入されたオレイン酸含有アルコール溶液中に添加して、10分撹拌することにより、複合導電性粒子の表面にオレイン酸からなる保護層を形成させた。なお、オレイン酸含有アルコール溶液としては、1.5gのオレイン酸が0.3Lのイソプロピルアルコールに溶解された溶液を用いた。
【0086】
上記保護層を形成させた後、得られたスラリーを固液分離し、得られた固体成分Cをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分C中には、保護層を有する複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Cに対し、110℃、真空環境下で乾燥処理を行い、実施例3に係る導電性粉末を得た。なお、この導電性粉末の色調は灰褐色であった。
【0087】
<実施例4>
以下のようにして実施例4に係る導電性粉末(複合導電性粒子)を作製した。まず、第1粒子および第2粒子の材料として、シリカ粉末(商品名:「アドマファインSO−C6」、株式会社アドマテックス製)を準備した。
【0088】
次に、
図4に示すような構成を有する撹拌装置を準備した。準備した撹拌装置に関し、撹拌槽の最大容量は3Lであり、D1:D2およびH1:H2の各比は実施例1と同様とした。そして、実施例2と同様の方法により、洗浄後の固体成分Aを得た。
【0089】
次に、撹拌槽内にイオン交換水1.2Lを投入し、さらに、上記洗浄後の固体成分Aを添加した。そして、翼周速度2.7m/secで1分撹拌した後、下記の水溶液1〜3を添加して同翼周速度で30分間撹拌した。これにより、シリカ粒子の表面に、該表面を被覆する第1金属被膜および第2金属被膜としての銀被膜を形成するための無電解めっき処理を行った。なお、このときの槽内温度は30℃とした。
水溶液1:硝酸銀10.5gと25%アンモニア水47mLをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液
水溶液2:水酸化ナトリウム4.2gをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液
水溶液3:ぶどう糖63gをイオン交換水300mLに溶解させた水溶液。
【0090】
上記めっき処理後の処理液を固液分離し、得られた固体成分Bをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分中Bには、
図1に示される構成を有する本発明に係る複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Bを、別の撹拌槽内に投入されたオレイン酸含有アルコール溶液中に添加して、10分撹拌することにより、複合導電性粒子の表面にオレイン酸からなる保護層を形成させた。なお、オレイン酸含有アルコール溶液としては、1.5gのオレイン酸が0.3Lのイソプロピルアルコールに溶解された溶液を用いた。
【0091】
上記保護層を形成させた後、得られたスラリーを固液分離し、得られた固体成分Cをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分C中には、保護層を有する複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Cに対し、110℃、真空環境下で乾燥処理を行い、実施例4に係る導電性粉末を得た。なお、この導電性粉末の色調は黄白色であった。
【0092】
<実施例5>
以下のようにして実施例5に係る導電性粉末(複合導電性粒子)を作製した。まず、第1粒子および第2粒子の材料として、株式会社アドマテックス製シリカ粉末を準備した。なお、この粉末の特性は以下の通りであった。
比表面積:7577cm
2/cm
3
D10:8.55μm
D50:16.24μm。
【0093】
次に、
図4に示すような構成を有する撹拌装置を準備した。準備した撹拌装置に関し、撹拌槽の最大容量は5.0Lであり、D1:D2およびH1:H2の各比は実施例1と同様とした。
【0094】
準備した撹拌装置の撹拌槽内に、上記シリカ粉末10g、イオン交換水0.02Lを投入して撹拌羽根を回転させてスラリーを形成した。そして、該スラリーに塩化パラジウムおよび塩化第一スズを含む溶液10mlを添加し、10分間撹拌した。なお、このときの翼周速度は1.7m/secであり、槽内温度は50℃とした。これにより、シリカ粉末を構成するシリカ粒子の表面にスズ−パラジウムコロイド粒子が吸着された。そして、上記処理後のスラリーを固液分離し、得られた固体成分Aをイオン交換水で洗浄した。
【0095】
次に、撹拌槽内にイオン交換水0.1Lを投入し、さらに、上記洗浄後の固体成分Aを添加した。そして翼周速度は1.7m/secで1分撹拌した後、10%硫酸を0.1L添加し、5分間撹拌した。なお、このときの翼周速度は1.7m/secであり、槽内温度は25℃とした。これにより、スズが除去され、パラジウムが金属化された。そして、上記処理後のスラリーを固液分離し、得られた固体成分Bをイオン交換水で洗浄した。
【0096】
次に、撹拌槽内にイオン交換水0.25Lを投入し、さらに上記洗浄後の固体成分Bを添加した。そして、翼周速度5.3m/secで1分撹拌した後、下記の水溶液1〜3を添加して同翼周速度で20分間撹拌した。これにより、シリカ粒子の表面に、該表面を被覆する第1金属被膜および第2金属被膜としてのニッケル−リン被膜を形成するための無電解処理を行った。なお、このときの槽内温度は50℃とした。
水溶液1:硫酸ニッケル14gをイオン交換水30mlに溶解させた水溶液
水溶液2:次亜リン酸ナトリウム3.1gをイオン交換水30mlに溶解させた水溶液
水溶液3:コハク酸ナトリウム3.0gをイオン交換水100mlに溶解させた水溶液。
【0097】
上記めっき処理後の処理液を固液分離し、得られた固体成分Cをイオン交換水で洗浄した。なお、ここで得られた固体成分C中には、
図1で示される構成を有する本発明に係る複合導電性粒子が含まれることになる。そして、得られた洗浄後の固体成分Cに対して、110℃、真空環境下で乾燥処理を行い、実施例5に係る導電性粉末を得た。なお、この導電性粉末の色調は黒色であった。
【0098】
<比較例1>
めっき処理における翼周速度を20m/secとした以外は、実施例1と同様の方法を実施した。これにより、比較例1に係る導電性粉末を作製した。なお、この導電性粉末の色調は灰色であった。
【0099】
<SEM観察>
実施例1および比較例1の各導電性粉末に関し、SEM観察を行った。具体的には、まず、カーボンテープ上に各導電性粉末を分散させた各試料を準備した。次に、走査型電子顕微鏡(製品名:「VE−7800」、株式会社キーエンス製)を用いて、加速電圧20kV、測定倍率5000倍の条件下で、各試料の反射電子像(電子画像)を撮影した。実施例1の導電性粉末のSEM写真を
図5に、比較例1の導電性粉末のSEM写真を
図6に示す。また、参考として、原料として用いたシリカ粉末のSEM写真を
図7に示す。
【0100】
図5〜
図7を参照し、
図5に示される実施例1の導電性粉末においては、粒子径の大きい導電性粒子の表面に粒子径の小さい導電性粒子が付着している形態の導電性粒子、すなわち複合導電性粒子が観察された。これに対し、
図6に示される比較例1の導電性粉末においては、複合導電性粒子は観察されなかった。また、
図6と
図7と比較し、比較例1の導電性粉末は、各シリカ粒子の表面がAgで被覆されたものであることが理解された。
【0101】
また、実施例2〜5の各導電性粉末に関しても同様のSEM観察を行ったところ、表1に示すように、粒子径の大きい導電性粒子の表面に粒子径の小さい導電性粒子が付着している形態の導電性粒子、すなわち複合導電性粒子が観察された。
【0102】
<粒子径>
実施例1〜5および比較例1の各導電性粉末について、
図5および
図6に示すようなSEM観察を複数視野にて行った各SEM写真を解析することにより、各粒子の粒子径を求めた。実施例1においては、大きい粒子径を有する1つの粒子(第1導電性粒子)の表面に、これよりも小さい粒子径(第2導電性粒子)を有する複数の粒子が付着した複合導電性粒子が観察されたため、第1導電性粒子および第2導電性粒子のそれぞれの粒子径を求めることとした。その結果を表1の「粒子径(μm)」に示す。なお、各粒子径は、複数視野でのSEM観察により得られたSEM写真から任意に選択した50個の粒子の直径の平均値である。
【0103】
<付着率>
実施例1〜5の導電性粉末について、
図5に示すようなSEM写真を解析することにより、第1導電性粒子に対する第2導電性粒子の付着率を求めた。なお、付着率の算出に関し、画像処理ソフトウェア(製品名:「WinROOF」、三谷商事株式会社)を用いて上述の算出方法に従った。その結果を表1の「付着率(%)」の欄に示す。なお、付着率は、任意に選択した50個の複合導電性粒子の平均値である。
【0104】
<金属被覆率>
実施例1〜5および比較例1の各導電性粉末に関し、金属被覆率を算出した。具体的には、以下の手順で算出した。まず、原子吸光光度計による金属量の定量前の各導電性粉末の重量(酸溶液による溶解前の導電性粉末の重量)を測定した。次に、重量を測定した各導電性粉末を酸溶液に溶解させた各試料を準備した。次に、準備した各試料に関し、原子吸光光度計(製品名:「A−2000」、株式会社日立ハイテクフィールディング製)を用いて、各導電性粉末に含まれる金属量(各導電性粒子を構成するシリカ粒子の表面を被覆する金属量の総量に相当する)を測定した。そして、得られた金属の定量結果をもとに、下記式(2)により、各導電性粒子の金属被覆率(重量%)を算出した。この結果を表1の「被覆率(%)」の欄に示す。
【0105】
なお、上記各試料は、導電性粒子を適量採取後、硝酸およびフッ化水素酸からなる混酸を用いて室温にて30分程度の時間をかけて溶解させ、測定に適した濃度に希釈したものを用いた。また、測定波長は328.1nm(銀)、232.0nm(ニッケル)、ガス条件は空気−アセチレンとした。
金属被覆量(重量%)=W1/W2×100・・・(2)
(式(2)中、W1は金属被膜を構成する金属の重量を示し、W2は酸溶液による溶解前の導電性粉末の重量を示す)。
【0106】
【表1】
【0107】
<導電性>
実施例1〜5および比較例1の各導電性粉末の比抵抗を算出して、各導電性粉末の導電性を評価した。具体的には、各導電性粉末と樹脂(商品名:「ニッペアクリルオートクリヤースーパー」、日本ペイント社製)との配合率(導電性粉末:樹脂)が60vol%:40vol%になるように混練して、それぞれの導電性粉末を含有する樹脂組成物を作製した。
【0108】
そして、乾燥後の塗膜厚さが30μmとなるようにPETフィルム上に各樹脂組成物を塗布し、80℃にて1時間乾燥することにより、PETフィルム上に塗膜を形成した。なお、塗膜の厚みは、デジマチック標準外側マイクロメータ(商品名:「IP65 COOLANT PROOF Micrometer」、株式会社ミツトヨ社製)で測定することによって確認した。
【0109】
各塗膜について、四探針式表面抵抗測定器(商品名:「ロレスタGP」、株式会社三菱アナリテック製)を用いて任意の3点を測定し、その平均値を比抵抗値(Ω・cm)とした。その結果を表2の「比抵抗(Ω・cm)」に示す。比抵抗値が小さい程導電性に優れていることを示す。
【0110】
<充填性>
実施例1〜5および比較例1の各導電性粉末のタップ密度を測定して、各導電性粉末の充填性を評価した。タップ密度はJIS Z2512:2012に準拠した方法で測定することができる。なお、タップ密度の測定には、タッピング式粉体減少度測定器(型式:「TPM−1」、筒井理化学器械株式会社製)を用いた。その結果を表2の「タップ密度(g/cm
3)」に示す。タップ密度が大きいほど充填性に優れていることを示す。
【0111】
【表2】
【0112】
表1および表2を参照し、実施例1と比較例1とを比較すると、金属被膜の被覆率が同等であるにも関わらず、実施例1の導電性粉末は、比較例1の導電性粉末よりも低い比抵抗の塗膜を形成することができた。また、実施例1〜5の導電性粉末は、比較例1の導電性粉末と比較して、高いタップ密度を示した。これにより、複合導電性粉末が高い導電性と高い充填性との両特性を発揮できることが確認された。
【0113】
<断面観察>
実施例1の導電性粉末の断面を観察した。まず、エポキシ樹脂と導電性粉末を混合して硬化後、イオンミリング装置を用いて導電性粉末の断面観察用の試料を作製した。走査型電子顕微鏡(商品名:「SU8020」、株式会社日立ハイテクノロジー社製)を用いて、加速電圧50kV、測定倍率30000倍の条件下で、試料中の導電性粉末の断面を観察し反射電子像(電子画像)を撮影した。
【0114】
図8に実施例1の導電性粉末の断面のSEM写真を示す。
図8から、実施例1の導電性粉末は、第1導電性粒子において、第1粒子であるシリカ粒子の表面が第1金属被膜である銀被膜により被覆され、第2導電性粒子において、第2粒子であるシリカ粒子の表面が第2金属被膜である銀被膜により被覆されており、第1導電性粒子が第2導電性粒子よりも大きく、第1導電性粒子の表面に第2導電性粒子が付着していることが確認された。
【0115】
また、実施例2〜5についても実施例1と同様の方法により各断面を観察したところ、実施例1と同様に、第1導電性粒子において、第1粒子であるシリカ粒子の表面が第1金属被膜である金属被膜(実施例2〜4では銀被膜、実施例5ではニッケル−リン被膜)により被覆され、第2導電性粒子において、第2粒子であるシリカ粒子の表面が第2金属被膜である金属被膜(実施例2〜4では銀被膜、実施例5ではニッケル−リン被膜)により被覆されており、第1導電性粒子が第2導電性粒子よりも大きく、第1導電性粒子の表面に第2導電性粒子が付着していることが確認された。
【0116】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0117】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。