(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、ピニオンの径が大きくなり、ウェビング巻取り量を確保するために、ピニオンを回転させるためのラック等が長くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ピニオン部の径を抑えることができるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、前記スプールに収容されて前記スプールの軸方向に沿って配置され、前記スプールの軸方向一端部よりも他端側で前記スプールに保持されているトーションシャフトと、前記スプールの軸方向一端側に設けられ、外周部には第一ピニオン構成部が形成され、前記第一ピニオン構成部は、車両緊急時に流体の圧力で移動する移動部材によって前記巻取方向へ回転するピニオン部の幅方向一方側を構成している第一部材と、前記第一部材と前記トーションシャフトとの間に配置されて前記第一部材に固定されると共に前記トーションシャフトに固定され、外周部には前記第一ピニオン構成部に並設されて前記ピニオン部の幅方向他方側を構成する第二ピニオン構成部が形成されている第二部材と、車両緊急時に前記第一部材及び前記第二部材の一方が前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転するのを制限するロック手段と、を有
し、前記第二部材には、前記トーションシャフトが嵌入されていると共に前記ピニオン部と同軸的に設けられた筒状の被嵌入部が形成され、前記ピニオン部における歯底は前記被嵌入部の外周面よりも半径方向内側の位置に設定されている。
請求項
2に記載する本発明のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、前記スプールに収容されて前記スプールの軸方向に沿って配置され、前記スプールの軸方向一端部よりも他端側で前記スプールに保持されているトーションシャフトと、前記スプールの軸方向一端側に設けられ、外周部には第一ピニオン構成部が形成され、前記第一ピニオン構成部は、車両緊急時に流体の圧力で移動する移動部材によって前記巻取方向へ回転するピニオン部の幅方向一方側を構成している第一部材と、前記第一部材と前記トーションシャフトとの間に配置されて前記第一部材に固定されると共に前記トーションシャフトに固定され、外周部には前記第一ピニオン構成部に並設されて前記ピニオン部の幅方向他方側を構成する第二ピニオン構成部が形成されている第二部材と、車両緊急時に前記第一部材及び前記第二部材の一方が前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転するのを制限するロック手段と、を有
し、前記第二部材には、その軸心部に孔部が貫通形成され、前記孔部の内側には、前記トーションシャフトの側を向く環状の座部が形成されており、前記第一部材は、前記孔部に収容されて前記座部にかしめ固定された突出部を備える。
請求項
3に記載する本発明のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、前記スプールに収容されて前記スプールの軸方向に沿って配置され、前記スプールの軸方向一端部よりも他端側で前記スプールに保持されているトーションシャフトと、前記スプールの軸方向一端側に設けられ、外周部には第一ピニオン構成部が形成され、前記第一ピニオン構成部は、車両緊急時に流体の圧力で移動する移動部材によって前記巻取方向へ回転するピニオン部の幅方向一方側を構成している第一部材と、前記第一部材と前記トーションシャフトとの間に配置されて前記第一部材に固定されると共に前記トーションシャフトに固定され、外周部には前記第一ピニオン構成部に並設されて前記ピニオン部の幅方向他方側を構成する第二ピニオン構成部が形成されている第二部材と、車両緊急時に前記第一部材及び前記第二部材の一方が前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転するのを制限するロック手段と、を有
し、前記第二部材には、その軸心部に孔部が貫通形成され、前記第一部材は、前記孔部に抜止めされた状態で収容された突出部を備えており、前記第一部材の前記突出部の外周側には、前記スプールの側とは反対側に凹んで前記突出部の周りに環状に形成されると共に半径方向外側の内周面に複数の雌スプラインが形成された嵌合凹部が設けられ、前記第二部材には、前記スプールの側とは反対側に突出して前記突出部の周りに環状に形成されると共に外周面に前記複数の雌スプラインと噛み合う複数の雄スプラインが形成された嵌合凸部が設けられている。
【0007】
請求項1
〜請求項3にそれぞれ記載された本発明のウェビング巻取装置によれば、車両緊急時に、第一部材及び第二部材の一方は、ロック手段によって、巻取方向とは反対の引出方向への回転が制限される。第一部材の外周部に形成された第一ピニオン構成部は、車両緊急時に流体の圧力で移動する移動部材によって巻取方向へ回転するピニオン部の幅方向一方側を構成している。また、第一部材とトーションシャフトとの間に配置された第二部材は、第一部材に固定されると共にトーションシャフトに固定されており、この第二部材の外周部には第一ピニオン構成部に並設されてピニオン部の幅方向他方側を構成する第二ピニオン構成部が形成されている。このため、車両緊急時にロック手段によって引出方向への回転を制限される部材の外周側に別体のピニオンを配置する場合に比べて、ピニオン部の径を抑えることができる。
【0009】
また、請求項
1に記載する本発明のウェビング巻取装置によれば、ピニオン部における歯底は被嵌入部の外周面よりも半径方向内側の位置に設定されているので、ピニオン部の径が一層抑えられる。
【0011】
また、請求項
2に記載する本発明のウェビング巻取装置によれば、第一部材の突出部は、第二部材の孔部に収容されて孔部に形成された座部にかしめ固定されているので、第一部材はスラスト方向へ抜止めされた状態で第二部材に強固に固定される。
【0013】
また、請求項
3に記載する本発明のウェビング巻取装置によれば、第一部材の突出部の外周側において、第一部材の嵌合凹部の雌スプラインに第二部材の嵌合凸部の雄スプラインが噛み合っており、突出部よりも外周側で回り止めされている。このため、第一部材と第二部材との間でトルク荷重を良好に伝達させることができる。
【0014】
請求項
4に記載する本発明のウェビング巻取装置は、請求項
3記載の構成において、前記第二部材には、前記トーションシャフトが嵌入されていると共に前記嵌合凸部と同軸的に設けられた筒状の被嵌入部が形成され、前記第二部材における前記嵌合凸部の外周面は、前記トーションシャフトにおいて前記被嵌入部に嵌入されている部位の外周面よりも半径方向外側の位置に設定されている。
【0015】
請求項
4に記載する本発明のウェビング巻取装置によれば、第二部材における嵌合凸部の外周面は、トーションシャフトにおいて被嵌入部に嵌入されている部位の外周面よりも半径方向外側の位置に設定されているので、トーションシャフト側からのトルク荷重を一層良好に伝達することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るウェビング巻取装置によれば、ピニオン部の径を抑えることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係るウェビング巻取装置について
図1〜
図5を用いて説明する。なお、図中では、ウェビング巻取装置10におけるスプール14の軸方向一端側を矢印Aで示し、スプール14の軸方向他端側を矢印Bで示している。
【0019】
図1には、本実施形態に係るウェビング巻取装置10の一部が分解斜視図で示されている。この図に示されるように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両における車体骨格部を構成するセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。また、フレーム12は、脚板12A、12Bを備えており、脚板12Aと脚板12Bとは対向されている。
【0020】
フレーム12には、略円筒状のスプール14が設けられている。スプール14の中心軸線方向は、脚板12Aと脚板12Bとの対向方向に沿っており、スプール14は、その中心軸線周りに回転可能とされている。スプール14には、シートベルト装置の長尺帯状のウェビング16の長手方向基端部が係止されており、スプール14が巻取方向(矢印C方向)へ回転されることによって、ウェビング16が長手方向基端側からスプール14に巻取られる。また、ウェビング16の長手方向先端側は、スプール14から車両上側へ延びており、ウェビング16の長手方向先端側は、フレーム12の車両上側でスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。なお、前記スルーアンカは、前記センターピラーに支持されている。
【0021】
ウェビング16の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鋼材等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
【0022】
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシートの車両幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング16が掛回された状態で、ウェビング16に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、乗員の身体にウェビング16が装着される。
【0023】
一方、フレーム12の脚板12Aの外面側(フレーム外側)には、スプリングハウジング22が設けられている。スプリングハウジング22の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段(図示省略)が設けられており、スプール14は、スプール付勢手段の付勢力によってウェビング16の巻取方向(矢印C方向)へ付勢されている。
【0024】
これに対して、フレーム12の脚板12Bの外面側(フレーム外側)には、ロック機構24が設けられている。ロック機構24は、第一部材としてのロックベース26を備えている。ロックベース26は、スプール14の軸方向一端側(矢印A方向参照)に設けられ、スプール14と同軸的でかつ相対回転可能とされると共にスプール14の回転力が伝わることでスプール14の中心軸線周りに回転可能とされている。このロックベース26は、本実施形態ではダイキャスト製とされる。また、ロック機構24は、センサ機構(図示省略)を備えている。なお、センサ機構は、例えば、特開2014−162290号公報等で公知であるため、詳細説明を省略する。センサ機構は、車両衝突時等の車両緊急時に作動される。センサ機構が作動されると、ロックベース26に設けられたロック手段としてのロックパウル28が、ロックベース26の回転半径方向外側へ移動されるようになっている。
【0025】
また、フレーム12の脚板12Bには、カバープレート30がリベット32によって固定されている。カバープレート30は、フレーム12の側とは反対側に凹むと共に、プレート部30Aを備えている。カバープレート30のプレート部30Aは、フレーム12の脚板12Bの外面側(フレーム外側)において脚板12Bに対向するように配置されている。
【0026】
カバープレート30のプレート部30Aには、ロック手段としてのラチェット孔30Bが貫通形成されており、ロック機構24のロックベース26は、カバープレート30のラチェット孔30Bを貫通している。ロック機構24のセンサ機構が作動され、ロックベース26のロックパウル28が、ロックベース26の回転半径方向外側へ移動されると、ロックパウル28が、カバープレート30のラチェット孔30Bのラチェット歯に噛合うようになっている。これによって、ロックベース26は車両緊急時に巻取方向とは反対の引出方向(矢印D方向)への回転が制限される。
【0027】
また、ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタを構成するトーションシャフト18を備えている。トーションシャフト18は、棒状に形成されており、スプール14の軸心部に収容されてスプール14の軸方向に沿って配置されている。トーションシャフト18の軸方向の第一端部18Aは、スプール14の軸方向他端部14Bの側(軸方向一端部14Aよりも他端側)でスプール14に対する相対回転が阻止された状態でスプール14に保持されている。トーションシャフト18の軸方向の第二端部18Bは、第二部材としての連結部材34を介してロックベース26に繋がっている。
【0028】
ロックベース26とトーションシャフト18との間に配置された連結部材34は、ロックベース26に固定されると共にトーションシャフト18に固定されている。これにより、トーションシャフト18のロックベース26に対する相対回転は阻止され、ロックベース26は、連結部材34及びトーションシャフト18によってスプール14に対する相対回転が阻止された状態でスプール14に繋がっている。連結部材34は、本実施形態ではダイキャスト製とされる。なお、ロックベース26及び連結部材34の詳細説明については後述する。
【0029】
ウェビング巻取装置10は、プリテンショナ38を備えている。プリテンショナ38は、パイプ40(筒状部材)を備えている。パイプ40は、全体的に略円筒形状に形成されると共に、複数の曲部を有している。パイプ40の軸方向基端部は、マイクロガスジェネレータ装着部40Aとされている。マイクロガスジェネレータ装着部40Aは、フレーム12の脚板12Aの上端側に設けられた支持部12Cに支持されている。マイクロガスジェネレータ装着部40Aには、マイクロガスジェネレータ42(流体供給手段の一態様であるガス発生手段)が装着される。
【0030】
マイクロガスジェネレータ42は、制御手段としてのECUを介して車両に設けられた衝突検知センサ(何れも図示省略)に電気的に接続されている。車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、ECUによってマイクロガスジェネレータ42が作動され、マイクロガスジェネレータ42において発生された流体の一態様であるガスが、パイプ40の内側へ供給される。
【0031】
パイプ40の軸方向先端部は、開口部が下方側へ向けられたカバープレート取付部40Bとされている。カバープレート取付部40Bは、カバープレート30の上部に設けられたパイプ取付部30Cに取り付けられ、スプール14の中心軸線よりも車両幅方向内側(図中手前側)に配置されている。
【0032】
一方、プリテンショナ38は、移動部材としてのラック46を備えている。ラック46は、合成樹脂製とされ、ロックベース26及び連結部材34よりも軟質の材料で棒状に形成されている。そして、このラック46は、パイプ40の内側に配置される。なお、パイプ40の内側において、ラック46とマイクロガスジェネレータ42との間には、シールボール44が配置される。ラック46は、車両緊急時にマイクロガスジェネレータ42から供給される流体の圧力によりパイプ40の内側及びカバープレート30の内側を(つまりスプール14の軸方向一端側で)移動するようになっている。
【0033】
また、カバープレート30の上部には、パイプ取付部30Cに対して車両幅方向外側(図中奥側)にストッパ取付部30Dが設けられている。さらに、フレーム12の脚板12Bの上部には、カバープレート30のストッパ取付部30Dの対向部にストッパ取付部12Dが設けられている。カバープレート30のストッパ取付部30Dとフレーム12のストッパ取付部12Dとの間には、ラックストッパ48のフランジ部48Bが配置されており、このフランジ部48Bはリベット32によって共締めされている。ラックストッパ48の本体部48Aは、有底筒状とされてカバープレート30の側に開口部を向けており、カバープレート30の内側を移動したラック46の移動を制限するようになっている。
【0034】
次に、ロックベース26及び連結部材34について詳細に説明する。
図2には、ウェビング巻取装置10の一部が
図5(A)(ロックベース26の外面側から見た図)の2−2線に沿って切断した状態の断面図で示されている。また、
図3及び
図4には、ウェビング巻取装置10の一部が拡大された状態の分解斜視図でそれぞれ示されている。
【0035】
これらの図に示されるように、ロックベース26の外周部には、ピニオン部50の幅方向一方側を構成する第一ピニオン構成部60が形成されており、連結部材34の外周部には第一ピニオン構成部60に並設されてピニオン部50の幅方向他方側を構成する第二ピニオン構成部70が形成されている。第一ピニオン構成部60と第二ピニオン構成部70とで構成されたピニオン部50は、プリテンショナ38(
図1参照)の一部を構成して複数の係合歯52を備えている。なお、
図3では、係合歯52のうち第二ピニオン構成部70で構成される部位を符号70Aで示し、
図4では、係合歯52のうち第一ピニオン構成部60で構成される部位を符号60Aで示している。
【0036】
図3及び
図4に示されるように、係合歯52は、ピニオン部50の回転中心周りに一定角度毎に放射状に形成されている。これらの係合歯52におけるピニオン部50の回転周方向に沿った寸法は、ピニオン部50の径方向外側へ向けて短く設定されている。また、ピニオン部50の係合歯52は、車両緊急時に流体の圧力で
図1に示されるパイプ40の内側から移動するラック46によって荷重を受けるように設定されており、移動するラック46によってピニオン部50(
図4参照)は巻取方向(矢印C方向)へ回転するようになっている。
【0037】
図2〜
図4に示されるように、連結部材34には、その軸心部に孔部72が貫通形成され、孔部72の内側には、トーションシャフト18の側を向く環状の座部72A(
図2参照)が形成されている。これに対して、ロックベース26は、トーションシャフト18の側に突出して連結部材34の孔部72に抜止めされた状態で収容されたボス状の突出部62を備えている。
図2に示されるように、ロックベース26の突出部62は、連結部材34の座部72Aにかしめ固定されたかしめ部62Aを備えている。
【0038】
また、ロックベース26の突出部62の外周側には、スプール14の側とは反対側に凹んで突出部62の周りに環状に形成された嵌合凹部64が設けられている。嵌合凹部64の半径方向外側の内周面には複数の雌スプライン64A(
図4参照)が形成されている。これに対して、連結部材34には、スプール14の側とは反対側に突出して突出部62の周りに環状に形成された嵌合凸部74が設けられている。
図3及び
図4に示されるように、連結部材34の嵌合凸部74の外周面には、ロックベース26の嵌合凹部64の複数の雌スプライン64Aと噛み合う複数の雄スプライン74Aが形成されている。これにより、連結部材34の嵌合凸部74とロックベース26の嵌合凹部64とが嵌合している。
【0039】
さらに、
図2及び
図4に示されるように、連結部材34には、トーションシャフト18の第二端部18Bが嵌入されている筒状の被嵌入部76が形成されている。被嵌入部76は、ピニオン部50と同軸的に設けられると共に、嵌合凸部74と同軸的に設けられている。被嵌入部76の内周面には、複数の雌スプライン76Aが形成されている。これに対して、トーションシャフト18の第二端部18Bの外周面18Mには、連結部材34の被嵌入部76の複数の雌スプライン76Aと噛み合う複数の雄スプライン18Xが形成されている。これにより、
図5(B)に示されるように、トーションシャフト18の第二端部18Bと連結部材34の被嵌入部76とが嵌合している。また、
図2に示されるように、連結部材34における嵌合凸部74の外周面74Mは、トーションシャフト18の第二端部18Bの外周面18Mよりも半径方向外側の位置に設定されている(二点鎖線X参照)。
【0040】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
図1に示されるウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ロックパウル28がラチェット孔30Bのラチェット歯に噛合うと、ロックベース26は、引出方向(矢印D方向)への回転が制限される。また、車両衝突時にECUによってプリテンショナ38のマイクロガスジェネレータ42が作動されると、マイクロガスジェネレータ42からパイプ40の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によってパイプ40の内側のラック46が移動し、パイプ40の軸方向先端側からラック46が排出される。そして、排出されたラック46が
図2に示されるピニオン部50の係合歯52を押圧すると、ピニオン部50が巻取方向(
図1等の矢印C方向)へ回転される。
【0042】
ピニオン部50を構成するロックベース26及び連結部材34は、フォースリミッタ機構のトーションシャフト18を介してスプール14に繋がっており、スプール14に対する相対回転が阻止されているため、ピニオン部50が巻取方向へ回転されることによって、
図1等に示されるスプール14が巻取方向(矢印C方向)へ回転される。これによって、ウェビング16がスプール14に巻取られて、ウェビング16による乗員の拘束力が増加される。
【0043】
ここで、本実施形態では、
図2に示されるように、ピニオン部50の幅方向一方側の部位は、ロックベース26の外周部に形成された第一ピニオン構成部60で構成されている。また、ピニオン部50の幅方向他方側の部位は、連結部材34の外周部に形成された第二ピニオン構成部70で構成されている。このため、例えば、ロックベースの外周側に別体のピニオンを配置する場合に比べて、ピニオン部の径を抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態では、ロックベース26の突出部62は、連結部材34の孔部72に収容されて孔部72に形成された座部72Aにかしめ固定されている。このため、ロックベース26はスラスト方向へ抜止めされた状態で連結部材34に強固に固定される。したがって、
図1に示されるプリテンショナ38の作動時にピニオン部50(
図2参照)に作用する荷重を一層大きくすることができ、プリテンショナ38の性能向上に寄与し得る。
【0045】
また、本実施形態では、
図2に示されるロックベース26の突出部62の外周側において、ロックベース26の嵌合凹部64の雌スプライン64A(
図4参照)に連結部材34の嵌合凸部74の雄スプライン74A(
図3参照)が噛み合っており、突出部62よりも外周側で回り止めされている。このため、より大きなフォースリミッタ荷重やプリテンショナ38(
図1参照)の作動による荷重が作用しても、連結部材34とロックベース26との間でトルク荷重を良好に伝達させることができるので、そのような点で性能を向上させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、連結部材34における嵌合凸部74の外周面74Mは、トーションシャフト18において被嵌入部76に嵌入されている第二端部18Bの外周面18Mよりも半径方向外側に設定されている(二点鎖線X参照)。このため、トーションシャフト18側からのトルク荷重を一層良好に伝達することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るウェビング巻取装置10によれば、ピニオン部50の径を抑えることができる。その結果として、
図1に示されるパイプ40及びラック46の長さを抑えてもプリテンショナ38の作動時におけるウェビング16の巻取量(引込量)を所定量確保することができる。よって、体格を縮小することができると共に、コストを抑えることもできる。
【0048】
なお、
図2に示されるロックベース26の突出部62の外周側において、嵌合凹部64と嵌合凸部74との嵌合構造を設けることで、ロックベース26及び連結部材34に大径の円柱部(厚肉部)が形成されるのを抑えることができる。また、それと同時に、ロックベース26及び連結部材34の各部位の肉厚を均等な肉厚に近付けることができると共に、ロックベース26及び連結部材34の表面積を大きくすることができるので、ダイキャスト成形時における部品冷却時間を短く抑えることもできる。したがって、生産性を向上させることができ、コストも抑えられる。
【0049】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について
図6を用いて説明する。
図6(A)には第1の変形例に係るウェビング巻取装置の一部が断面図で示されている。
図6(B)には第2の変形例に係るウェビング巻取装置の一部が断面図で示されている。なお、これらの変形例は、以下に説明する点を除いて上記実施形態と実質的に同様の構成になっている。
【0050】
図6(A)に示される第1の変形例では、ロックベース26は、連結部材34の孔部72に抜止めされた状態で収容された突出部80を備えている。なお、この第1の変形例において上記実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。ロックベース26には、突出部80の軸心部を含む部位にボルト締結穴80Aが形成されており、このボルト締結穴80Aの内周面には雌ねじ部が形成されている。ボルト締結穴80Aには、トーションシャフト18の側からボルト82の軸部82Aが螺合されている。また、ボルト82の頭部82Bは突出部80の突出頂面80B及び孔部72の座部72Aに着座している。これにより、ロックベース26と連結部材34とが互いに締結されている。この第1の変形例によっても、概ね上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0051】
図6(B)に示される第2の変形例は、ピニオン部50の径が上記実施形態の場合より小さく設定されている点を除いては、上記実施形態と概ね同様の構成になっているので、便宜上、上記実施形態と同一の符号を付す。この変形例では、ピニオン部50における歯底52Aは、被嵌入部76の外周面76Mよりも半径方向内側の位置に設定されている(二点鎖線Y参照)。この第2の変形例では、ピニオン部50の径がより小さく設定されているので、
図1に示されるパイプ40及びラック46の長さを更に短くしてもプリテンショナ38の作動時におけるウェビング16の巻取量(引込量)を所定量確保することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、第一ピニオン構成部を備えた第一部材がロックベース26とされているが、上記実施形態の変形例として、第二ピニオン構成部を備えた第二部材がロックベースとされると共に、車両緊急時に当該ロックベースの巻取方向とは反対の引出方向への回転がロック手段によって制限されるような構成が採られてもよい。この場合のロック手段は、一例として、第二部材としての前記ロックベースにおける外周部のうちスプール側の部位に形成された外歯と、車両緊急時にセンサ機構が作動した場合に前記外歯と噛合うロックパウルと、を備えてもよい。なお、車両緊急時にロックベースの外歯にロックパウルが噛合う構成は、例えば、特開2011−255814号公報等で公知であるため、詳細説明を省略する。
【0053】
また、第一部材と第二部材との結合構造は、上記実施形態及び変形例の構造と異なるものであってもよい。
【0054】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0055】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。