(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コイルに発生する誘起電圧と、第2コイルに発生する誘起電圧との位相差の機械角をθとし、N極とS極を一対として数えたときの極対数をPとし、前記スロットの数をSとし、前記Pと前記Sの最小公倍数をKとしたとき、
前記機械角θは、
θ≦1/2×360/K
を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の電動モータ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(減速機付モータ)
図1は、本発明に係る電動モータ2を用いた減速機構付モータ装置1の部分断面図、
図2は、
図1のA−A線に沿う断面図である。
図1、
図2に示すように、減速機構付モータ装置1は、例えば車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置等の駆動用として用いられるものであって、電動モータ2と、電動モータ2に連結されたウォームギヤ減速機構4と、を備えている。
【0027】
(電動モータ)
電動モータ2は、筒部53を有するヨーク5と、筒部53内に回転自在に設けられたアーマチュア6と、筒部53の開口縁53b側に内嵌固定されたブラシホルダユニット20と、を備えている。
ヨーク5は、例えば鉄等の金属からなる有底筒状の部材であり、深絞りによるプレス加工等により成型される。ヨーク5の大部分を占める筒部53は、軸方向平面視で中心軸Oを挟んで径方向で対向する一対の平坦部61と、一対の平坦部61を連結する弧状部63と、により構成されている。
【0028】
ヨーク5の筒部53の内周面53aには、4つのマグネット7が周方向に磁極が順番となるように接着剤等により固着されている。マグネット7としては、ネオジ焼結磁石およびネオジボンド磁石の希土類磁石や、フェライト磁石等が使用される。ヨーク5は、4つのマグネット7を有しているので、磁極数は4極となる。また、極対数(N極とS極との対の数)でいうと2対となる。
【0029】
さらに、マグネット7は、ヨーク5の筒部53を構成する弧状部63の形状に対応するように、軸方向平面視で略円弧形状に形成されている。また、4つのマグネット7は、N極およびS極の磁極がそれぞれ対向するように配置されている。さらに、隣り合うマグネット7のピッチ角(機械角)は、90°になるように設定されている。このピッチ角(機械角)でいう90°が、電気角でいう180°となる。
【0030】
ヨーク5の底壁51の略中央には、中心軸Oに沿って外側に突出するボス19が形成されている。ボス19の内周面には、円環状の金属等からなる軸受18が圧入固定されている。この軸受け18は、アーマチュア6を構成するモータ回転軸3の一端(
図1における右端)を回転自在に支持するためのものである。
また、ボス19の底部には、スラストプレート54が設けられている。スラストプレート54は、スチールボール55を介してモータ回転軸3のスラスト荷重を受けている。スチールボール55は、モータ回転軸3とスラストプレート54との間の摺動抵抗を減少すると共にモータ回転軸3の芯ズレを吸収している。
【0031】
ヨーク5の筒部53には、開口縁53b側(
図1における左側)に、ブラシホルダ収納部90が一体成形されている。このブラシホルダ収納部90に、ブラシホルダユニット20が収納される。ブラシホルダ収納部90の周壁90aは、軸方向平面視で略長円形状に形成されている。すなわち、ブラシホルダ収納部90の周壁90aは、短手方向で対向する平坦面を有する一対の平坦部91と、一対の平坦部91に跨るように形成されており、長手方向において対向する平坦部91の周方向端部を接続する一対の弧状部92とを有している。
【0032】
また、ブラシホルダ収納部90の一対の平坦部91および一対の弧状部92は、ブラシホルダユニット20を構成する後述のブラシホルダ22の外形に対応して形成されている。
さらに、ブラシホルダ収納部90側の周壁90aには、電動モータ2をウォームギヤ減速機構4に締結固定するための外フランジ部52が設けられている。外フランジ部52には、ウォームギヤ減速機構4に螺入されるボルト44を挿入するための挿通孔(不図示)が形成されている。
【0033】
(アーマチュア)
ヨーク5内に回転自在に設けられたアーマチュア6は、モータ回転軸3と、モータ回転軸3に外嵌固定されたアーマチュアコア8と、アーマチュアコア8に巻回されたアーマチュアコイル9(
図3参照)と、モータ回転軸3の他端側に配置されたコンミテータ10と、を備えている。アーマチュアコア8は、電磁鋼板等からなるリング状の板部材11を軸方向に複数枚積層したものである。しかしながら、アーマチュアコア8を、軟磁性粉を加圧成形したものとしてもよい。
【0034】
図2に詳示するように、板部材11の外周部には、軸方向平面視で略T字状に形成された複数(本実施形態では10個)のティース12が、周方向に沿って等間隔に、且つ放射状に延出形成されている。各ティース12は、径方向に延出するティース本体部12aと、ティース本体部12aの先端に設けられ周方向に張り出した外周部12bと、により構成されている。
【0035】
アーマチュアコア8の外周には、軸方向に沿って延在する溝状のスロット13が形成されている。スロット13は、モータ回転軸3に複数枚の板部材11を外嵌固定することにより形成され、隣接するティース12の外周部12b間に形成される。前述の通り、本実施形態ではティース12の数が10個であるため、ティース12間のスロット13も10スロット形成される。また、ティース12が周方向に沿って等間隔に配置されているため、各スロット13も周方向に沿って等間隔に複数形成される。
また、各ティース12には、樹脂等の絶縁材料からなるインシュレータ14が装着されている。このインシュレータ14の上から各ティース本体部12aにアーマチュアコイル9が巻回される。なお、アーマチュアコイル9の詳細な巻回方法については、後述する。
【0036】
モータ回転軸3の他端側(
図1における左側)に外嵌固定されるコンミテータ10の外周面には、導電材で形成されたセグメント15が複数枚(本実施形態では10枚)取り付けられている。したがって、本実施形態の電動モータ2は、マグネット7(磁極数)が4個(4極)、スロット13が10スロット、セグメント15が10枚の、4極10スロット10セグメントで構成された直流モータとなっている。
セグメント15は、軸線方向に長い板状の金属片により形成されている。そして、セグメント15は、互いに離間して絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。
【0037】
各セグメント15のアーマチュアコア8側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ16が一体成形されている。ライザ16には、アーマチュアコイル9の巻線73(何れも
図3参照)が掛け回わされる。巻線73は、例えばヒュージングによりライザ16に固定されている。これにより、セグメント15と、これに対応するアーマチュアコイルとが導通される。
セグメント15には、このセグメント15に電力を供給するためのブラシ(不図示)が摺接されている。ブラシは、ブラシホルダ収納部90の周壁90aに収納されているブラシホルダユニット20に設けられている。
【0038】
(ブラシホルダユニット)
ブラシホルダユニット20は、ブラシホルダ収納部90の形状に対応するように、且つアーマチュアコア8側の面が開口するように、略箱状に形成されたブラシホルダ22を有している。すなわち、ブラシホルダ22は、対向配置された一対の平坦壁22aと、一対の平坦壁22aに跨るように形成された一対の弧状壁22bと、を有している。
そして、ブラシホルダ22の平坦壁22aとブラシホルダ収納部90の平坦部91とが当接されている。また、ブラシホルダ22の弧状壁22bとブラシホルダ収納部90の弧状部92とが当接されている。このように、ブラシホルダ収納部90にブラシホルダ22が嵌合され、このブラシホルダ22によってヨーク5の開口が閉塞されている。このように配置されたブラシホルダ22内に、不図示のブラシが配置されている。
【0039】
(ウォームギヤ減速機構)
このように構成された電動モータ2におけるヨーク5の外フランジ部52に、ウォームギヤ減速機構4がボルト44によって締結固定されている。ウォームギヤ減速機構4には、ウォーム軸45およびウォームホイール46を収納するギヤハウジング43が設けられている。
ギヤハウジング43に形成されたウォーム軸収容部47には、ウォーム軸45が収容されている。ウォーム軸45は、電動モータ2のモータ回転軸3の他端側(
図1における左側)に、カップリング等のジョイント部材88を介して連結されている。
【0040】
ウォーム軸45は、モータ回転軸3と同軸上に設けられている。また、ウォーム軸45の他端側は、ウォーム軸収容部47に設けられた軸受41によって回転自在に支持されている。さらに、ウォーム軸45の電動モータ2とは反対側(
図1における左側)には、スラストプレート58およびスチールボール57が設けられている。これらスラストプレート58およびスチールボール57によって、ウォーム軸45のスラスト荷重を受けている。
ウォーム軸45に噛合されるウォームホイール46には、出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール46と共に回転可能に連結されている。また、出力軸48は、電動モータ2のモータ回転軸3に対し直交する方向に沿うように設けられている。
【0041】
このような構成のもと、電動モータ2を駆動させると、モータ回転軸3と一体となってウォーム軸45が回転する。すると、このウォーム軸45に噛合されるウォームホイール46が回転し、さらに、出力軸48が回転する。そして、出力軸48が回転することにより、車両のパワーウィンドウやサンルーフ、電動シート、ワイパ装置等の電装品が作動する。
【0042】
(第1実施形態)
(アーマチュアコイルの巻回方法)
次に、
図3に基づいて、アーマチュアコイル9の巻回方法について説明する。
図3は、アーマチュア6の展開図であり、隣接するティース12間の空隙がスロット13に相当している。なお、以下の図面においては、各セグメント15、および各ティース12にそれぞれ符号を付して説明する。また、アーマチュア6は、ウォームギヤ減速機構4側からみて(
図1における左方から右方をみて)時計回りに回転(
図3における左方から右方、矢印CW参照、以下、この回転方向を一方向と称する場合がある)に回転するものとする。
【0043】
ここで、同電位となるセグメント15同士は、接続線70によって短絡されている。つまり、本実施形態においては、4つ置き(例えば、1番セグメント15と6番セグメント15)のセグメント15同士が接続線70によってそれぞれ短絡されている。
また、アーマチュアコイル9は、所定のティース12間に巻回された第1コイル71と、所定のティース12間に巻回された第2コイルと、により構成されている。これら第1コイル71および第2コイル72は、巻線73を巻回してなる。
【0044】
より具体的には、第1コイル71は、以下のように形成される。すなわち、例えば、1番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、10−1番ティース12の間のスロット13と2−3番ティース12の間のスロット13との間に、順方向(
図3において時計回り方向)にN回巻回する。続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、1つ目の第1コイル71が形成される。
【0045】
一方、第2コイル72は、以下のように形成される。すなわち、例えば、1番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、10−1番ティース12の間のスロット13と2−3番ティース12の間のスロット13との間に、順方向(
図3において時計回り方向)にN/2回巻回する。これにより、第2小コイル72aが形成される。続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、2−3番ティース12の間のスロット13と4−5番ティース12の間のスロット13との間に、逆方向(
図3において反時計回り方向)にN/2回巻回する。これにより、第2小コイル72bが形成される。
【0046】
続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、2つの第2小コイル72a,72bからなる1つ目の第2コイル72が形成される。
【0047】
ここで、上記のように、第1コイル71を形成する巻線73の巻き始め端73a、および第2コイル72を形成する巻線73の巻き始め端73aは、それぞれ1番セグメント15に接続されている。一方、第1コイル71を形成する巻線73の巻き終わり端73b、および第2コイル72を形成する巻線73の巻き終わり端73bは、それぞれ1番セグメント15に隣接する2番セグメントに接続されている。
そして、このように構成された第1コイル71および第2コイル72は、同様の手順で各セグメント15間に順次形成される。
【0048】
ここで、第1コイル71と第2コイル72とでは、ヨーク5のマグネット7の磁束の影響を受けて発生する誘起電圧の位相差が9°となる。このように、第1コイル71と第2コイル72とで、誘起電圧の位相差を9°に設定する理由は、4極10スロット10セグメントで構成された電動モータ2にあっては、トルクリップル周波数の次数は20次となる。この次数は、磁極数とスロット13の数の最小公倍数によって決定される。また、1周期の回転角は18°となるので、その1/2周期とするために第1コイル71と第2コイル72とで、誘起電圧の位相差を機械角で9°に設定している。
【0049】
これを式で表すと以下のようになる。
すなわち、第1コイル71に発生する誘起電圧と、第2コイル72に発生する誘起電圧との位相差の機械角をθkとし、ヨーク5の極対数をPとし、スロット13の数をSとし、電動モータ2の次数(極対数Pとスロット数Sとの最小公倍数)をKとしたとき、機械角θkは、
θk≦1/2×360/K ・・・(1)
を満たすように設定されている。
本実施形態では、次数は20次なので、式(1)より、θk=9°となる。
【0050】
上記のように設定する理由についてより詳しく説明するために、
図4に基づいて、第1コイル71と第2コイル72の誘起電圧について考察する。
図4は、第1コイル71と第2コイル72の誘起電圧を説明するための説明図であって、(a)〜(d)は、説明過程における考察図である。なお、以下の説明では、
図3に示すティース12の番号と対応するように、各ティース12に番号を付して説明する。また、以下の説明では、説明を分かり易くするために、
図3に示す1つの第1コイル71、および1つの第2コイル72と、これら第1コイル71および第2コイル72と同一相となる(同一の磁極のマグネット7に対応している)第1コイル71および第2コイル72と、の誘起電圧についてのみ説明する。
【0051】
つまり、第1コイル71については、1−2番ティース12に巻回された第1コイル71、および6−7番ティース12に巻回された第1コイル71の誘起電圧についてのみ説明する。また、第2コイル72については、1−2番ティース12、および6−7番ティース12に巻回された第2小コイル72aと、3−4番ティース12、および8−9番ティース12に巻回された第2小コイル72bの誘起電圧についてのみ説明する。
【0052】
まず、
図4(a)に示すように、4極10スロットのアーマチュアコア8は、各ティース12の周方向中心と中心軸Oとを通る直線L1間の角度θkは、θk=360°/10=36°となる。
ここで、角度θkは、機械角である。この機械角の角度θkを、
図4(b)に示すように、電気角θdで表現すると、θd=2×36°=72°となる。
【0053】
この
図4(b)に基づいて、1−2番ティース12に巻回された第1コイル71、および6−7番ティース12に巻回された第1コイル71の誘起電圧E1をベクトルで考えると、
図4(c)に示すように、1−2番ティース12の間(スロット)、および6−7番ティース12の間(スロット)に誘起電圧E1が形成される。この誘起電圧E1のベクトルは、1番ティース12を基準とすると、電気角θd=36°だけ位相がずれている。
【0054】
一方、
図4(b)に基づいて、1−2番ティース12、および6−7番ティース12に巻回された第2小コイル72aの誘起電圧E2をベクトルで考えると、
図4(d)に示すように、1−2番ティース12の間(スロット)、および6−7番ティース12の間(スロット)に誘起電圧E2が形成される。また、3−4番ティース12、および8−9番ティース12に巻回された第2小コイル72bの誘起電圧E3をベクトルで考えると、ほぼ1,6番ティース12上に誘起電圧E3が形成される。ここで、第2小コイル72bは、逆方向に巻回されているので、誘起電圧E3のベクトルが1番ティース12上に形成された形となる。
【0055】
そして、第2コイル72全体の誘起電圧E4は、各誘起電圧E2,E3の合計となるので、1−2番ティース12の間(スロット)、および6−7番ティース12の間(スロット)に形成される。誘起電圧E4のベクトルは、1番ティース12を基準とすると、電気角θd=18°だけ位相がずれている。
すなわち、第1コイル71の誘起電圧E1と、第2コイル72の誘起電圧E4とでは、電気角θd=18°の位相差がある。これは、機械角θkに換算すると、9°となる。
【0056】
次に、
図5〜
図7に基づいて、上記のアーマチュアコイル9における解析結果について説明する。なお、以下の説明では、本実施形態の電動モータ2、比較対象の従来の電動モータ共に、回転方向は一方向(
図3における矢印CW参照)であるとする。
図5は、縦軸をトルク[Nm]、電流値[A]とし、横軸をアーマチュア6の回転角[deg]とした場合のトルクと電流値[A]の変化を、従来の電動モータと本実施形態の電動モータ2とで比較したグラフである。
同図に示すように、本実施形態の電動モータ2は、従来と比較して、トルクリップル、電流値共に低減することが確認できる。
【0057】
図6は、縦軸をトルク振幅[mNm]とし、横軸をトルクリップル周波数の次数とした場合のトルク振幅[mNm]の変化を、従来の電動モータと本実施形態の電動モータ2とで比較したグラフである。
同図に示すように、20次において、本実施形態の電動モータ2は、従来と比較して、トルク振幅が大幅に減少されることが確認できる。
【0058】
図7は、縦軸を無負荷誘起電圧[V]、この無負荷誘起電圧が生じた際に巻線73に流れるコイル電流値[A]とし、横軸をアーマチュア6の回転角[deg]とした場合の無負荷誘起電圧[V]とコイル電流値[A]の変化を、第1コイル71と第2コイル72とで比較したグラフである。
同図に示すように、第1コイル71の誘起電圧波形と第2コイル72の誘起電圧波形とが異なることが確認できる。
【0059】
このように、上述の第1実施形態のアーマチュアコイル9は、所定のティース12(例えば、1−2番ティース12)間に巻線73をN回、順方向に巻回して形成された第1コイル71を有している。また、アーマチュアコイル9は、第1コイル71が形成されている所定のティース12間に巻線73をN/2回、順方向に巻回して形成された第2小コイル72aと、第1コイル71が形成されている所定のティース12間に一方向前方で隣り合う他の所定のティース12(例えば、3−4番ティース12)間に巻線73をN/2回、逆方向に巻回して形成された第2小コイル72bと、からなる第2コイル72を有している。さらに、第1コイル71を形成する巻線73の巻き始め端73a、および第2コイル72を形成する巻線73の巻き始め端73aは、それぞれ同一電位のセグメント15(例えば、1番セグメント15)に接続されていると共に、第1コイル71を形成する巻線73の巻き終わり端73b、および第2コイル72を形成する巻線73の巻き終わり端73bは、それぞれ同一電位のセグメント15(例えば、2番セグメント15)に接続されている。そして、各巻き始め端73aが接続されているセグメント15と、各巻き終わり端73bが接続されているセグメント15は、隣接する(電位の異なる)セグメント15に設定されている。
このため、第1コイル71と第2コイル72とのそれぞれに発生する誘起電圧に位相差が生じ、アーマチュア6の回転方向が一方向(
図3における矢印CW参照)の場合において、電動モータ2のトルクリップルを低減できる。よって、電動モータ2の駆動時の不快音を低減できる。
【0060】
また、第1コイル71に発生する誘起電圧と、第2コイル72に発生する誘起電圧との位相差の機械角をθkとし、ヨーク5の極対数をPとし、スロット13の数をSとし、電動モータ2の次数(極対数Pとスロット数Sとの最小公倍数)をKとしたとき、機械角θkは、上記式(1)を満たすように設定されている。このため、第1コイル71と第2コイル72とのそれぞれに発生する誘起電圧E1,E4に、より効果的に位相差を形成することができ、より効果的にトルクリップルを低減できる。このため、電動モータ2の駆動時の不快音をさらに低減できる。
【0061】
なお、上述の第1実施形態では、例えば、1−2番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第1コイル71を形成し、この第1コイル71を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ1番セグメント15と2番セグメント15に接続した場合について説明した。また、例えば、1−2番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第2小コイル72aを形成すると共に、3−4番ティース12間に巻線73を逆方向に巻回して第2小コイル72bを形成して第2コイル72とした場合について説明した。そして、第2コイル72を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ1番セグメント15と2番セグメント15に接続した場合について説明した。しかしながら、第1コイル71と第2コイル72との組み合わせは、上記に限られるものではなく、
図8に示す組み合わせが挙げられる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、
図9に基づいて、第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態におけるアーマチュア6の展開図であり、隣接するティース12間の空隙がスロット13に相当している。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の第3実施形態についても同様)。
【0063】
(アーマチュアコイルの巻回方法)
ここで、前述の第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態のアーマチュアコイル9の第1コイル71および第2コイル72の巻回方法と、第2実施形態のアーマチュアコイル209の第1コイル271および第2コイル272の巻回方法と、が異なる点にある(以下の第3実施形態についても同様)。
【0064】
より具体的には、
図9に示すように、第1コイル271は、以下のように形成される。すなわち、例えば、1番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、10−1番ティース12の間のスロット13と2−3番ティース12の間のスロット13との間に、順方向(
図9において時計回り方向)にN回巻回する。続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、1つ目の第1コイル71が形成される。
【0065】
一方、第2コイル272は、以下のように形成される。すなわち、例えば、2番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、第1コイル271が形成されたティース12から一方向(
図9における矢印CW参照)前方に、1つのティース12分ずれた位置に掛け回す。つまり、巻線73を、1−2番ティース12の間のスロット13と3−4番ティース12の間のスロット13との間に、順方向(
図9において時計回り方向)にN/2回巻回する。これにより、第2小コイル272aが形成される。続いて、3−4番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、3−4番ティース12の間のスロット13と5−6番ティース12の間のスロット13との間に、逆方向(
図9において反時計回り方向)にN/2回巻回する。これにより、第2小コイル272bが形成される。
【0066】
続いて、3−4番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、2番セグメント15に隣接する3番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、2つの第2小コイル272a,272bからなる1つ目の第2コイル72が形成される。
【0067】
ここで、上記のように、第1コイル271を形成する巻線73の巻き始め端73aは、1番セグメント15に接続されている。一方、第2コイル272を形成する巻線73の巻き始め端73aは、一方向(
図9における矢印CW参照)前方に、1つのセグメント15分ずれた2番セグメント15に接続されている。
また、第1コイル271を形成する巻線73の巻き始め端73aは、第2コイル272を形成する巻線73の巻き始め端73aが接続されている2番セグメント15に接続されている。一方、第2コイル272を形成する巻線73の巻き終わり端73bは、2番セグメントに隣接する3番セグメント15に接続されている。
【0068】
そして、このように構成された第1コイル271および第2コイル272は、同様の手順で第1コイル271を形成する巻き始め端73aが3,5,7,9番セグメント15に接続されるように、所定のセグメント15間に順次形成される。
【0069】
ところで、前述の第1実施形態におけるアーマチュアコイル9の巻回方法では、同一のセグメント15間に、2本のコイル71,72(第1コイル71、第2コイル72)の各巻き始め端73aおよび巻き終わり端73bが接続されているので、通常の重ね巻と比較してコイル断面積を同一とするために使用する巻線73の線径を、通常の重ね巻に使用する巻線の線径の1/√2に設定する必要がある。これに対し、本実施形態では、巻線73の太径化が図れる。このことについて、以下に詳述する。
【0070】
図10は、電動モータ2のアーマチュアコイル9のセグメント15への結線図であって、(a)は、前述の第1実施形態を示し、(b)は、本第2実施形態を示す。なお、
図10(a)、
図10(b)に示すセグメント15には、
図3、
図9に示すセグメント15の番号と対応するように番号を付して説明する。
【0071】
まず、前述の第1実施形態を示す
図4(a)において、1−2番セグメント15間、および6−7番セグメント15間について考える。同図に示すように、1−2番セグメント15間、および6−7番セグメント15間には、それぞれ第1コイル71および第2コイル72が接続されている。ここで、1番セグメント15と6番セグメント15は、接続線70によって短絡されている。また、2番セグメント15と7番セグメント15も、接続線70によって短絡されている。
【0072】
このため、6−7番セグメント15間に第1コイル71を接続せず、この分、1−2番セグメント15間に第1コイル71を纏めて接続しても1−2番セグメント15間、および6−7番セグメント15間に、それぞれ第1コイル71が接続されているのと同様になる。また、1−2番セグメント15間に第2コイル72を接続せず、この分6−7番セグメント15間に第2コイル72を纏めて接続しても1−2番セグメント15間、および6−7番セグメント15間に、それぞれ第2コイル72が接続されているのと同様になる。
【0073】
このことから、本第2実施形態を示す
図10(b)に示すように、6−7番セグメント15間に第1コイル271を接続せず、1−2番セグメント15間に第1コイル271を接続した場合、この1−2番セグメント15間に接続されている第1コイル271の巻回数を2N回に設定せず、N回に設定する(
図9参照)ことにより、第1コイル271を形成する巻線73の太径化を図ることができる。
また、1−2番セグメント15間に第2コイル272を接続せず、6−7番セグメント15間に第2コイル272を接続した場合、この6−7番セグメント15間に接続されている第2コイル272の巻回数を全体で2N回に設定せず、N回に設定する(
図9参照)ことにより、第2コイル272を形成する巻線73の太径化を図ることができる。
【0074】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、巻線73の線径を太径化できる。
【0075】
なお、上述の第1実施形態および第2実施形態では、第1コイル71,271の巻線73の巻回数がN回に設定されているのに対し、各第2小コイル72a,72b,272a,272bの巻線73の巻回数がN/2回ずつに設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各第2小コイル72a,72b,272a,272bの巻線73の巻回数が合計でN回に設定されていればよい。
つまり、第1コイル71,271の巻線73の巻回数をN回とし、Aを1以上N未満の整数としたとき、第2小コイル72a,272aの巻線73の巻回数をA回、第2小コイル72b,272bの巻線73の巻回数をN−A回に設定すればよい。また、第1コイル71,271に発生する誘起電圧と、第2コイル72,272に発生する誘起電圧との位相差の機械角θkが、上記式(1)を満たせばよい。
【0076】
また、上述の第2実施形態では、例えば、1−2番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第1コイル271を形成し、この第1コイル271を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ1番セグメント15と2番セグメント15に接続した場合について説明した。また、例えば、2−3番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第2小コイル272aを形成すると共に、4−5番ティース12間に巻線73を逆方向に巻回して第2小コイル272bを形成して第2コイル272とした場合について説明した。そして、第2コイル272を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ2番セグメント15と3番セグメント15に接続した場合について説明した。しかしながら、第1コイル271と第2コイル272との組み合わせは、上記に限られるものではなく、
図11に示す組み合わせが挙げられる。
【0077】
(第3実施形態)
(アーマチュアコイルの巻回方法)
次に、
図12に基づいて、第3実施形態について説明する。
図12は、第3実施形態におけるアーマチュア6の展開図であり、隣接するティース12間の空隙がスロット13に相当している。
【0078】
ここで、第3実施形態におけるアーマチュアコイル309を構成する第1コイル371は、以下のように形成される。すなわち、例えば、1番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、10−1番ティース12の間のスロット13と2−3番ティース12の間のスロット13との間に、順方向(
図12において時計回り方向)にN/2回巻回する。これにより、第1小コイル371aが形成される。続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、5−6番ティース12の間のスロット13と6−7番ティース12の間のスロット13との間に、順方向にN/2回巻回する。これにより、第1小コイル371bが形成される。
【0079】
続いて、7−8番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、1番セグメント15に隣接する2番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、2つの第1小コイル371a,371bからなる1つ目の第1コイル371が形成される。
【0080】
一方、第3実施形態におけるアーマチュアコイル309を構成する第2コイル372は、以下のように形成される。すなわち、例えば、6番セグメント15のライザ16に巻き始め端73aが掛け回された巻線73を、10−1番ティース12の間のスロット13と2−3番ティース12の間のスロット13との間に、順方向にN/4回巻回する。これにより、第2小コイル372aが形成される。続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、2−3番ティース12の間のスロット13と4−5番ティース12の間のスロット13との間に、逆方向(
図12において反時計回り方向)にN/4回巻回する。これにより、第2小コイル372bが形成される。
【0081】
続いて、2−3番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、6−7番ティース12の間のスロット13と7−8番ティース12の間のスロット13との間に、順方向にN/4回巻回する。これにより、第2小コイル372cが形成される。さらに、7−8番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、7−8番ティース12の間のスロット13と9−10番ティース12の間のスロット13との間に、逆方向にN/4回巻回する。これにより、第2小コイル372dが形成される。
【0082】
続いて、7−8番ティース12の間のスロット13から巻線73を引き出し、この巻線73の巻き終わり端73bを、6番セグメント15に隣接する7番セグメント15のライザ16に掛け回す。これにより、4つの第2小コイル372a〜372dからなる1つ目の第2コイル372が形成される。
そして、このように構成された第1コイル371および第2コイル372は、同様の手順で各セグメント15間に順次形成される。
【0083】
このように構成した場合であっても、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、同一相となる複数の所定のティース12間(例えば、第1小コイル371aと第1小コイル371b、また、例えば、第2小コイル372a,372bと第2小コイル372c,372d)に巻回される第1コイル371、および第2コイル372に供給される電流の均一化が図れる。このため、電動モータ2のトルクリップルを低減しつつ、電動モータ2の磁気バランスを向上させることができ、モータ性能を向上できる。
【0084】
なお、上述の第3実施形態では、各第1小コイル371a,371bの巻線73の巻回数がN/2回に設定されているのに対し、各第2小コイル372a〜372dの巻線73の巻回数がN/4回ずつに設定されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではない。
【0085】
具体的には、極対数をPとし、Xを1以上の整数としたとき、同一相となる複数の所定のティース12間に巻線73をそれぞれX/P回、順方向に巻回し、且つ一連に形成して第1コイル371を構成すればよい。また、第1コイル371が形成されている複数の所定のティース12間に巻線73をX/2P回、順方向に巻回すると共に、第1コイル371が形成されている所定のティース12間に一方向前方で隣り合う他の所定のティース12間に巻線73をX/2P回、逆方向に巻回し、これらを同一相となる複数の所定のティース12間に一連に形成して第2コイル372を構成すればよい。また、第1コイル371に発生する誘起電圧と、第2コイル372に発生する誘起電圧との位相差の機械角θkが、上記式(1)を満たせばよい。
【0086】
また、上述の第3実施形態では、例えば、1−2番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第1小コイル371aを形成すると共に、6−7番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第1小コイル371aと連なる第1小コイル371bを形成して第1コイル371とした場合について説明した。そして、第1コイル371を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ1番セグメント15と2番セグメント15に接続した場合について説明した。
【0087】
また、例えば、1−2番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第2小コイル372aを形成し、3−4番ティース12間に巻線73を逆方向に巻回して第2小コイル372bを形成し、6−7番ティース12間に巻線73を順方向に巻回して第2小コイル372cを形成し、8−9番ティース12間に巻線73を逆方向に巻回して第2小コイル372dを形成して第2コイル372とした場合について説明した。そして、第2コイル272を形成した巻線73の巻き始め端73a、および巻き終わり端73bをそれぞれ6番セグメント15と7番セグメント15に接続した場合について説明した。しかしながら、第1コイル271と第2コイル272との組み合わせは、上記に限られるものではなく、
図13に示す組み合わせが挙げられる。
【0088】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、例えば車両のパワーウィンドウ、サンルーフ、電動シートおよびワイパ装置等の駆動用として用いられる減速機構付モータ装置1に電動モータ2を適用し、この電動モータ2におけるアーマチュア6に、アーマチュアコイル9,209,309が巻回されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に用いられる電動モータ2に、アーマチュアコイル9,209,309を巻回することが可能である。
【0089】
また、上述の実施形態では、電動モータ2は、マグネット7(磁極数)が4個(4極)、スロット13が10スロット、セグメント15が10枚の、4極10スロット10セグメントで構成された直流モータである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、マグネット7の個数は、2個以上の複数個であればよい。また、スロット13(ティース12)の個数は、偶数個であればよい。
ここで、マグネット7の個数が2個(磁極数が2極)の場合、上述の第1〜第3実施形態のうち、第1実施形態のみ実施可能である。一方、マグネット7の個数が4個以上(磁極数が4極以上)の場合、上述の第1〜第3実施形態の全て、実施可能である。
【0090】
また、上述の実施形態では、各第1コイル71,271,371と各第2コイル72,272,372を順番に形成していく場合について説明した。つまり、巻線73を巻回する装置として、一本の巻線73を繰出す、いわゆるシングルフライヤを用いた巻線装置を用いて各第1コイル71,271,371と各第2コイル72,272,372を形成する場合について説明した。しかしながら、以下の
図14に示すようにすることで、二本の巻線73を同時に繰出すことができる、いわゆるダブルフライヤを用いた巻線装置による巻線73の巻回作業が可能となる。
【0091】
(変形例)
図14は、変形例における電動モータ2のアーマチュアコイル9,209,309のセグメント15への結線図であって、前述の
図8に対応している。
なお、
図14において、各セグメント15には、
図3に示すセグメント15の番号と対応するように番号を付している。また、
図14において示す矢印は、巻線73の巻き進む方向を示している。さらに、
図14において、ダブルフライヤ(不図示)のうち、一方のフライヤ(不図示)から繰出される巻線73を実線で示し、他方のフライヤ(不図示)から繰出される巻線73を破線で示す。
【0092】
ここで、同電位となるセグメント15同士は、接続線70によって接続されているので、同電位同士のセグメント15であれば、何れのセグメント15に所定の巻線73を接続してもよい。
このような条件のもと、例えば、電動モータ2が、マグネット7(磁極数)が4個(4極)、スロット13が10スロット、セグメント15が10枚の、4極10スロット10セグメントで構成された直流モータである場合では、モータ回転軸3を中心にして点対称に各第1コイル71,271,371および各第2コイル72,272,372が形成される。
【0093】
このため、
図14に示すように、第1コイル71,271,371を巻回する途中で、これら第1コイル71,271,371と連続的に接続線70を形成し、さらに、各第2コイル72,272,372を巻回する途中で、これら第2コイル72,272,372と連続的に接続線70を形成するように巻線73を巻回していくことで、ダブルフライヤを用いた巻線装置による巻線73の巻回作業が可能となる。なお、巻線73の線径を2種類とし、接続線70を別に巻回してから各第1コイル71,271,371および各第2コイル72,272,372を形成してもよい。