(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向の一端部および他端部が閉塞されてなる周壁部を有し、ガス発生剤が配置された燃焼室およびフィルタが配置されたフィルタ室を内部に含む長尺筒状のハウジングと、
前記一端部側の位置に前記燃焼室が形成されるとともに、前記他端部側の位置に前記フィルタ室が形成されるように、前記ハウジングの内部の空間を前記周壁部の軸方向において仕切る仕切り部と、
前記一端部に組付けられた点火器とを備え、
前記仕切り部は、前記燃焼室と前記フィルタ室とを連通させるための連通孔を規定するとともに前記周壁部と略同軸上に配置された筒状の基部を有する基体と、前記連通孔を閉鎖する閉鎖部および前記基部の外周面を覆う環状のカバー部を有する閉鎖体と、前記周壁部と前記カバー部との間に介装された環状のシール材とを含み、
前記仕切り部に対応した位置の前記周壁部に径方向内側に向けて縮径したかしめ部が周方向に沿って設けられることにより、前記仕切り部が、前記ハウジングに対して固定され、
前記周壁部の径方向において前記かしめ部と前記カバー部とによって挟み込まれることにより、前記シール材が、前記かしめ部および前記カバー部の双方に密着している、ガス発生器。
前記周壁部の軸方向において前記他端部と前記仕切り部とによって挟み込まれることにより、前記フィルタが、前記ハウジングに対して固定されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を発火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0004】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、シリンダ型ガス発生器と称されるものがある。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。
【0005】
通常、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器が設置されるとともに当該一端部側にガス発生剤が収容された燃焼室が設けられ、ハウジングの軸方向の他端部側にフィルタが収容されたフィルタ室が設けられ、当該フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁部にガス噴出口が設けられる。
【0006】
このように構成されたシリンダ型ガス発生器においては、燃焼室にて発生したガスがハウジングの軸方向に沿ってフィルタ室に流入することでフィルタの内部を通過し、フィルタを通過した後のガスがガス噴出口を介して外部に噴出される。
【0007】
上述したシリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの内部の空間を軸方向に燃焼室とフィルタ室とに仕切る仕切り部が設けられることが一般的である。この仕切り部は、たとえば板状の部材にて構成され、当該板状の部材からなる仕切り部を挟み込むようにハウジングの周壁部にたとえば一対のかしめ部が設けられることにより、ハウジングに対して仕切り部が固定されることになる。
【0008】
この仕切り部には、作動時において燃焼室とフィルタ室とを連通させるための連通孔が設けられている。当該連通孔は、ガスの流路を絞ることを目的として設けられるオリフィスに相当し、燃焼室とフィルタ室との間に連通孔が設けられることにより、作動時において燃焼室の内圧が十分に高められることでガス発生剤が持続的に燃焼するようになる。
【0009】
一方で、シリンダ型ガス発生器においては、非作動時においてガス発生剤が吸湿してしまうことがないようにガス発生剤が収容された空間を外部から気密に封止することが必要になる。そのため、シリンダ型ガス発生器においては、上述したガス発生剤が配置された燃焼室自体が気密に封止されることとなるように、ハウジングの各所にたとえばOリングやシールテープ等が設けられる場合が多い。
【0010】
具体的には、上述した仕切り部の近傍においては、仕切り部に設けられた連通孔を閉鎖するように当該仕切り部にシールテープが貼り付けられるとともに、ハウジングの周壁部と仕切り部との間にOリング等からなるシール材が介装されることが一般的である。
【0011】
なお、上述した仕切り部の固定構造ならびに燃焼室の封止構造が具体的に開示された文献としては、たとえば特開2002−362299号公報(特許文献1)等がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。また、
図2および
図3は、それぞれ
図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図および仕切り部近傍の拡大断面図である。なお、
図3は、
図1中に示す領域IIIに対応している。以下、これら
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端部および他端部が閉塞された長尺円筒状のハウジングを有している。ハウジングは、ハウジング本体10と、ホルダ20と、閉塞部材30とを含んでいる。
【0028】
これらハウジング本体10、ホルダ20および閉塞部材30にて構成されたハウジングの内部には、内部構成部品としての点火器40、仕切り部50、ガス発生剤60およびフィルタ70等が収容されている。また、ハウジングの内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤60が主として配置された燃焼室S1と、フィルタ70が配置されたフィルタ室S2とが位置している。
【0029】
ハウジング本体10は、ハウジングの周壁部を構成しており、軸方向の両端に開口が形成された長尺円筒状の部材からなる。ホルダ20は、ハウジング本体10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部21を有する筒状の部材からなり、その外周面に後述するかしめ固定のための環状溝部22を有している。閉塞部材30は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面に後述するかしめ固定のための環状溝部31を有している。これらかしめ固定のための環状溝部22,31は、いずれもホルダ20の外周面および閉塞部材30の周面に周方向に沿って延びるように形成されている。
【0030】
ハウジング本体10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよい。また、ハウジング本体10は、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。
【0031】
特に、ハウジング本体10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易にハウジング本体10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
【0032】
一方、ホルダ20および閉塞部材30は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0033】
ホルダ20は、ハウジング本体10の軸方向の一方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記一方の開口端にホルダ20が内挿された状態で、当該ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分のハウジング本体10が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部22に係合されることにより、ホルダ20がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部がホルダ20によって構成されることになる。
【0034】
閉塞部材30は、ハウジング本体10の軸方向の他方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記他方の開口端に閉塞部材30が内挿された状態で、当該閉塞部材30の周面に設けられた環状溝部31に対応する部分のハウジング本体10が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部31に係合されることにより、閉塞部材30がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の他端部が閉塞部材30によって構成されることになる。
【0035】
これらかしめ固定は、ハウジング本体10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、ハウジング本体10には、かしめ部12,13が設けられることになる。
【0036】
ここで、ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22とハウジング本体10に設けられたかしめ部13との間には、環状のシール材25が介装されている(
図2参照)。このシール材25は、環状溝部22とかしめ部13とによって挟み込まれることにより、ホルダ20とハウジング本体10との間に隙間が生じないようにするための部材である。
【0037】
これにより、シール材25が環状溝部22とかしめ部13とに密着することになり、当該部分においてハウジングの内部の空間が外部から気密に封止されることになる。なお、シール材25としては、好適には弾性体が用いられ、たとえば各種のゴム等からなるOリングを利用することができ、この他にも、たとえばシリコーン樹脂等の液状のシール剤を環状溝部22あるいはハウジング本体10に予め塗布してこれを硬化させることでシール材25としてもよい。
【0038】
一方、閉塞部材30の周面に設けられた環状溝部31とハウジング本体10に設けられたかしめ部12との間には、シール材は介装されていない。そのため、環状溝部31とかしめ部12とは、直接接触することになる。
【0039】
なお、ハウジング本体10に対するホルダ20および閉塞部材30の組付構造や、ハウジング本体10とホルダ20との間のシール構造は、上述した組付構造やシール構造に限定されるものではなく、他の組付構造やシール構造を採用することとしてもよい。また、ハウジング本体10と閉塞部材30とを別体とはせずに、有底筒状の形状を有する一つの部材にてこれらを構成することとしてもよい。
【0040】
図1および
図2に示すように、点火器40は、ホルダ20によって支持されることでハウジングの軸方向の上述した一端部に組付けられている。点火器40は、ガス発生剤60を燃焼させるためのものであり、ハウジングの内部の空間に面するように設置されている。
【0041】
点火器40は、点火部41と、一対の端子ピン42とを含んでいる。点火部41の内部には、一対の端子ピン42に接続するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられており、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部41内に点火薬が充填されている。また、点火部41内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
【0042】
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO
3、B/NaNO
3、Sr(NO
3)
2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。なお、点火部41の外表面を規定するスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0043】
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0044】
点火器40の点火部41には、略筒状の金属製の燃焼制御カバー43が外挿されている。燃焼制御カバー43は、作動時において点火器40にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤60に導くためのものであり、より詳細には、点火器40の点火部41にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与えるものである。
【0045】
具体的には、点火部41が燃焼制御カバー43によって取り囲まれていることにより、点火部41の外表面を規定するスクイブカップの破裂の際に、当該スクイブカップのうちのガス発生剤60側に位置する先端部において主として開口が形成されることになり、これに伴って点火部41にて発生する熱粒子の進行方向がハウジング本体10の軸方向に絞られることになる。
【0046】
そのため、上述した如くの燃焼制御カバー43を設けることにより、点火器40で発生する熱粒子を効率的にガス発生剤60に導くことが可能になる。
【0047】
なお、点火器40および燃焼制御カバー43は、ホルダ20に設けられたかしめ部23によってホルダ20に固定されている。より詳細には、ホルダ20は、点火器40および燃焼制御カバー43をかしめ固定するためのかしめ部23をハウジングの内部の空間に面する方の軸方向端部に有しており、燃焼制御カバー43が取付けられた点火器40が貫通部21に内挿されてホルダ20の貫通部21を規定する部分の壁部に当て留めされた状態で上述したかしめ部23がかしめられることにより、点火器40および燃焼制御カバー43がホルダ20に挟持されて固定される。
【0048】
ホルダ20と点火器40との間には、たとえばOリングからなるシール材26が介装されている。シール材26は、ホルダ20と点火器40との間に隙間が生じることを防止するためのものであり、これによってハウジングの内部の空間が気密に封止されることになる。
【0049】
ホルダ20の外部に露出する方の軸方向端部には、上述した貫通部21に連続する窪み部24が設けられている。窪み部24は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れる雌型コネクタ部を形成しており、当該窪み部24内には、点火器40の端子ピン42の先端寄りの部分が露出して位置している。当該雌型コネクタ部としての窪み部24には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
【0050】
なお、ホルダ20に対する点火器40の組付構造や、ホルダ20と点火器40との間のシール構造は、上述した組付構造やシール構造に限定されるものではなく、他の組付構造やシール構造を採用することとしてもよい。
【0051】
図1および
図3に示すように、ハウジングの内部の空間の所定位置には、仕切り部50が配置されている。仕切り部50は、ハウジングの内部の空間を軸方向において燃焼室S1とフィルタ室S2とに仕切るための部材である。
【0052】
仕切り部50は、金属製の部材からなる基体51と、金属製または樹脂製の部材からなる閉鎖体52と、シール材53とを含んでいる。ここで、基体51は、比較的剛性が高くなるように肉厚に構成された部品からなり、閉鎖体52は、比較的剛性が低くなるように薄肉に構成された部品からなる。
【0053】
図3に示すように、基体51は、ハウジング本体10と略同軸上に配置された筒状の基部51aと、当該基部51aのフィルタ室S2側の端部から径方向外側に向けて延びるフランジ部51bとを有している。ここで、基部51aは、その内周面において燃焼室S1とフィルタ室S2とを連通させるための連通孔51a1を規定している。
【0054】
上述したように、基体51の基部51aおよびフランジ部51bは、作動時においても燃焼室S1の内圧上昇に伴ってこれが変形することがないようにいずれも肉厚に構成されており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。なお、基体51のフランジ部51bの外周面は、ハウジング本体10の内周面に当接していることが好ましい。
【0055】
閉鎖体52は、基体51の基部51aに設けられた連通孔51a1を閉鎖する閉鎖部52aと、基部51aの外周面を覆う環状のカバー部52bとを有しており、カバー部52bは、閉鎖部52aの外周縁から連続して延びるように立設されている。すなわち、閉鎖体52は、カップ状の形状を有しており、基体51の燃焼室S1側の開口端と外周面とを覆うように基体51に被せられた状態とされている。
【0056】
上述したように、閉鎖体52は、薄肉に構成されており、特に、閉鎖体52の閉鎖部52aは、作動時においてガス発生剤60の燃焼に伴ってこれが破裂または溶融するように比較的脆弱に構成されており、たとえば銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属製のプレス成形品や、射出成形やシート成形等によって形成された樹脂成形品等からなる。
【0057】
シール材53は、ハウジング本体10と閉鎖体52との間に介装されており、より具体的には、ハウジング本体10の径方向において、後述するハウジング本体10に設けられたかしめ部14と、閉鎖体52のカバー部52bとの間にその一部が位置するように配置されている。
【0058】
シール材53としては、好適には弾性体が用いられ、たとえば各種のゴム等からなるOリングを利用することができ、この他にも、たとえばシリコーン樹脂等の液状のシール剤を閉鎖体52あるいはハウジング本体10に予め塗布してこれを硬化させることでシール材53としてもよい。
【0059】
仕切り部50に対応した位置のハウジング本体10には、かしめ部14が設けられている。かしめ部14は、上述したかしめ部12,13と同様に、ハウジング本体10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ加工によって形成されたものであり、ハウジング本体10の周方向に沿って位置している。
【0060】
このかしめ部14が設けられることにより、仕切り部50がハウジング本体10に対して固定されるとともに、仕切り部50によって燃焼室S1が外部から気密に封止されることになるが、その詳細については後述することとする。
【0061】
図1および
図2に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、ホルダ20と仕切り部50とによって挟まれた空間(すなわち燃焼室S1)には、ガス発生剤60とコイルバネ62とが配置されている。ガス発生剤60は、上記空間のうちの仕切り部50側の位置に配置されており、コイルバネ62は、当該ガス発生剤60とホルダ20との間に配置されている。
【0062】
ガス発生剤60は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤60としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、ガス発生剤60は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。
【0063】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0064】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0065】
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0066】
ガス発生剤60の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤60の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤60の形状の他にもガス発生剤60の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0067】
コイルバネ62は、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成されたバネ部62aおよび押圧部62bを有している。バネ部62aは、その一端がホルダ20に当接するように配置されており、その他端に押圧部62bが形成されている。押圧部62bは、たとえば金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されることで構成されており、ガス発生剤60に当接している。
【0068】
これにより、ガス発生剤60は、コイルバネ62によって仕切り部50側に向けて弾性付勢されることになり、ハウジングの内部において移動してしまうことが防止されている。なお、上述した如くのコイルバネ62に代えて、たとえばセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材からなるクッション材を利用することとしてもよい。
【0069】
図1に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、閉塞部材30と仕切り部50とによって挟まれた空間(すなわちフィルタ室S2)には、フィルタ70が配置されている。フィルタ70は、ハウジング本体10の軸方向と同方向に延びる中空部71を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が閉塞部材30に当接しており、その軸方向の他方の端面が仕切り部50に当接している。
【0070】
フィルタ70は、ガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ70を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
【0071】
フィルタ70としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。
【0072】
また、フィルタ70として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
【0073】
フィルタ室S2を規定する部分のハウジング本体10には、ガス噴出口11が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。これら複数個のガス噴出口11は、フィルタ70を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0074】
次に、
図1を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
【0075】
図1を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。
【0076】
点火器40が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部41内の圧力が上昇し、これによって点火部41が破裂して熱粒子が点火部41の外部へと流出する。流出した熱粒子は、ガス発生剤60へと至る。
【0077】
ガス発生剤60に達した熱粒子は、ガス発生剤60を燃焼させ、これにより多量のガスが発生する。これに伴い、燃焼室S1の圧力および温度が上昇し、仕切り部50の閉鎖体52の閉鎖部52aが破裂または溶融して開口する。これにより、仕切り部50の基体51に設けられた連通孔51a1を介して燃焼室S1とフィルタ室S2とが連通することになり、燃焼室S1にて発生したガスが、当該連通孔51a1を経由してフィルタ室S2に流れ込む。
【0078】
フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ70の中空部71を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ70の内部を通過する。その際に、フィルタ70によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去される。
【0079】
そして、フィルタ70を通過した後のガスは、ガス噴出口11を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
【0080】
ここで、
図1および
図3を参照して、仕切り部50は、上述したようにハウジング本体10に設けられたかしめ部14によって固定されている。これに伴い、フィルタ70は、ハウジング本体10の軸方向において、閉塞部材30と仕切り部50とによって挟み込まれることでハウジング本体10に固定されている。
【0081】
より厳密には、フィルタ70とかしめ部14との間には、基体51のフランジ部51bとシール材53の外縁部とが位置しているため、かしめ部14を設けることによってこれら基体51のフランジ部51bとシール材53の外縁部とがフィルタ70側に向けて押し付けられることになり、さらには仕切り部50によってフィルタ70が閉塞部材30側に向けて押し付けられることになる。そのため、かしめ部14により、仕切り部50およびフィルタ70が一体的にハウジング本体10に対して固定されることになる。
【0082】
したがって、上記構成を採用することにより、仕切り部50がハウジング本体10に対して容易に固定できるばかりでなく、同時にフィルタ70についても、これを容易にハウジング本体10に対して固定することができる。すなわち、仕切り部50の近傍に形成されるかしめ部を従来の2箇所から1箇所に削減できるため、従来に比して仕切り部50近傍の構成を大幅に簡素化することができる。
【0083】
また、ハウジング本体10にかしめ部14を設けることにより、シール材53は、ハウジング本体10の径方向においてかしめ部14と閉鎖体52のカバー部52bとによって挟み込まれることになる。より厳密には、かしめ部14の内側に位置するシール材53の内縁部が、かしめ部14とカバー部52bとによって挟まれることで圧縮されることになる。これにより、シール材53は、かしめ部14とカバー部52bとの双方に密着することになる。
【0084】
そのため、ハウジング本体10と閉鎖体52との間に隙間が生じることがなくなるため、当該部分において燃焼室S1とフィルタ室S2との間の気密性が確保されることになり、結果として当該部分において燃焼室S1が外部から気密に封止されることになる。なお、仕切り部50の基体51に設けられた連通孔51a1は、閉鎖体52の閉鎖部52aによって覆われているため、当該部分においても、非作動時においては燃焼室S1とフィルタ室S2とが連通することはない。
【0085】
加えて、上述したように、シール材53の上記外縁部は、ハウジング本体10の軸方向においてかしめ部14と基体51のフランジ部51bとによって挟み込まれることでかしめ部14およびフランジ部51bの双方に密着している。そのため、この部分においてもシール性を確保することができ、結果として仕切り部50とハウジング本体10との境界部におけるシール性を高めることができる。
【0086】
ここで、仕切り部50をハウジング本体10に組付けるに際しては、基体51をハウジングに内挿する工程と、閉鎖体52を基体51に被せる工程と、シール材53をハウジングの内部に設置する工程と、ハウジング本体10の1箇所の位置においてかしめ加工を施す工程とのみによって行ねえることになり、従来に比して少ない工数での組付けが可能になる。
【0087】
特に、従来必要であった仕切り部にシールテープを貼り付ける工程が不要になるため、シール処理に要する手間が大幅に軽減されることになり、さらにはハウジングの直径を小径化させた場合においても、シール処理が確実に行なえることになる。したがって、シリンダ型ガス発生器の小型軽量化に適したシール構造となる。
【0088】
なお、予め基体51に閉鎖体52を取付け、これら基体51と閉鎖体52とに跨るように液状のシール剤を塗布してこれを硬化させることでシール材53を形成することとすれば、ハウジング本体10に組付ける前の段階において仕切り部50を一体化された一つの部品として構成することが可能になるため、さらにハウジング本体10への仕切り部50の組付けがより容易に行なえることにもなる。
【0089】
加えて、上述したように、ハウジング本体10の仕切り部50近傍に設ける必要のあるかしめ部が1箇所に削減できるため、この点においても組付作業の容易化が図れることになる。
【0090】
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、ガス発生剤60の吸湿を防止するためのシール処理が容易であり、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造コストを大幅に抑制することができるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0091】
(変形例)
図4は、変形例に係るシリンダ型ガス発生器の仕切り部近傍の拡大断面図である。以下、この
図4を参照して、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1について説明する。
【0092】
図4に示すように、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1は、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部50の構成においてのみその構成が相違している。
【0093】
具体的には、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1においては、仕切り部50の基体51が、ハウジング本体10と略同軸上に配置された筒状の基部51aのみを有しており、上述したシリンダ型ガス発生器1Aの基部51aが具備していたフランジ部51b(
図3参照)を有していない。
【0094】
一方で、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1A1においては、仕切り部50の閉鎖体52が、基体51の基部51aに設けられた連通孔51a1を閉鎖する閉鎖部52aと、基部51aの外周面を覆う環状のカバー部52bとに加え、当該カバー部52bのフィルタ室S2側の端部から径方向外側に向けて延びるフランジ部52cをさらに有している。
【0095】
そのため、フィルタ70とかしめ部14との間には、閉鎖体52のフランジ部52cとシール材53の外縁部とが位置することになり、かしめ部14を設けることによってこれら閉鎖体52のフランジ部52cとシール材53の外縁部とがフィルタ70側に向けて押し付けられることになる。
【0096】
このように構成した場合にも、ハウジング本体10にかしめ部14を設けることにより、仕切り部50およびフィルタ70を一体的にハウジング本体10に対して固定することができるとともに、燃焼室S1とフィルタ室S2との間の気密性を確保することができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、ここでは、その図示は省略するが、仕切り部の基部および閉鎖体の双方にフランジ部を設け、これら2つのフランジ部がハウジング本体の軸方向においてかしめ部とフィルタとによって挟み込まれるように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。また、
図6および
図7は、それぞれ
図5に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図および仕切り部近傍の拡大断面図である。なお、
図7は、
図5中に示す領域VIIに対応している。以下、これら
図5ないし
図7を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bについて説明する。
【0099】
図5ないし
図7に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、燃焼室S1の内部の構成においてのみその構成が相違している。
【0100】
具体的には、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、燃焼室S1の内部に、ガス発生剤60およびコイルバネ62に加えて、オートイグニッション剤61と、スペーサ部材80と、収容室規定部材90とが配置されている。
【0101】
図5および
図7に示すように、スペーサ部材80は、有底円筒状のカップ形状を有しており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。スペーサ部材80は、燃焼室S1のうちの仕切り部50が位置する側の端部に配置されている。
【0102】
スペーサ部材80は、ハウジング本体10の軸方向に直交するように配置された平板状の隔壁部81と、当該隔壁部81の外縁部から立設された筒板状の環状壁部82とを有している。スペーサ部材80は、その隔壁部81の外側の主面が仕切り部50に当接するように配置されており、環状壁部82の外周面は、ハウジング本体10の内周面に当接している。
【0103】
隔壁部81の仕切り部50に当接する主面には、スコア81aが設けられている。スコア81aは、ガス発生剤60の燃焼による燃焼室S1の内圧上昇に伴って当該隔壁部81が開裂して開口部が形成されるようにするためのものであり、たとえば放射状に互いに交差するように設けられた複数の溝にて構成される。スコア81aは、仕切り部50のうちの連通孔51a1に対向する部分に設けられている。
【0104】
収容室規定部材90は、ガス発生剤60が収容されたガス発生剤収容室S1Aを規定する部材であり、作動時においてガス発生剤60の燃焼に伴ってこれが破裂または溶融するように比較的脆弱な部材にて構成されており、たとえば銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属製のプレス成形品や、射出成形やシート成形等によって形成された樹脂成形品等からなる。
【0105】
収容室規定部材90は、全体として長尺略円筒状の部材にて構成されており、ハウジング本体10の軸方向に直交するように配置された平板状の頂壁部91と、当該頂壁部91の外縁部から立設された筒板状の側壁部92とを有している。収容室規定部材90は、その頂壁部91が仕切り部50側に位置するとともにその開口端がホルダ20側に位置するように配置されている。
【0106】
収容室規定部材90の開口端側に位置する部分の側壁部92には、拡径部92aが設けられている。拡径部92aは、ホルダ20に固定された点火器40から距離をもって配置されており、当該拡径部92aが設けられた部分よりも頂壁部91側に位置する側壁部92から径方向外側に向けて広がるように形成された部分を有している。また、拡径部92aの外周面の一部は、ハウジング本体10の内周面に当接している。
【0107】
ここで、収容室規定部材90の頂壁部91が位置する側の軸方向端部は、スペーサ部材80の開口端に内挿されており、当該頂壁部91側に位置する側壁部92の端部が、スペーサ部材80の環状壁部82に当接している。
【0108】
このように構成することにより、ガス発生剤60が収容されたガス発生剤収容室S1Aを規定する部分の収容室規定部材90の側壁部92の大部分が、ハウジング本体10の内周面から所定の距離だけ離れて配置されることになり、燃焼室S1の軸方向に沿って空気層からなる断熱層64が形成されることになる。当該断熱層64の機能については、後述することとする。
【0109】
オートイグニッション剤61は、点火器40の作動に依らずに自動発火する薬剤であり、上述したスペーサ部材80の内部に配置されている。より詳細には、オートイグニッション剤61は、偏平円柱状に成形されたペレットからなり、スペーサ部材80の隔壁部81と収容室規定部材90の頂壁部91とに挟み込まれることにより、これら隔壁部81および頂壁部91に接触している。
【0110】
オートイグニッション剤61は、ガス発生剤60よりも低い温度で自然発火する薬剤であり、シリンダ型ガス発生器1Bが組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合に、シリンダ型ガス発生器1Bが外部から加熱されることによって異常動作が誘発されないようにするためのものである。
【0111】
より詳細には、オートイグニッション剤が具備されていないガス発生器が外部から加熱された場合には、ガス発生器の内部の温度が数百度程度にまで昇温されてしまうケースがあり、その場合においては、ガス発生剤の温度がその自然発火温度に達してしまい、異常動作が誘発される場合がある。この異常動作が誘発された場合には、ガス発生器自体が既に外部からの加熱によって高温の状態にあるため、ガス発生剤の燃焼により、ハウジングの内部の圧力が、予定されている通常のガス発生器の作動時において必要になる圧力よりもはるかに高い圧力にまで上昇してしまうケースがある。その場合には、ハウジングの耐圧を超えた圧力がハウジングに加わり、結果として当該ハウジングに破断が生じるおそれがある。
【0112】
これに対し、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bのようにオートイグニッション剤が具備されたガス発生器においては、火災等によってガス発生器が外部から加熱された場合にも、比較的低温のうちにオートイグニッション剤が発火することでガス発生剤を燃焼させ、これによりいわゆるオートイグニッション動作を発現させてハウジングの内部の圧力が破壊圧にまで達しないように調整することができる。したがって、安全性の面において優れたガス発生器となる。
【0113】
ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、ガス発生剤60が収容された収容室規定部材90とハウジング本体10との間に上述した断熱層64が設けられているため、火災等が発生した場合にも、ガス発生剤60が外部から加熱されて昇温してしまうことが抑制できることになる。
【0114】
なお、断熱層64は、ハウジング本体10の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有していることが好ましが、本実施の形態の如くの空気層以外にも、これを他の気体層や真空層、あるいは当該空間に配置された断熱性を有する部材等にて構成してもよい。
【0115】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、オートイグニッション剤61が、ハウジング本体10との間でスペーサ部材80を介して熱的に接触しており、さらにはハウジング本体10との間で収容室規定部材90の頂壁部91寄りの端部を介して熱的に接触しているため、火災等が発生した場合に当該オートイグニッション剤61が効率的に加熱されることになる。
【0116】
したがって、当該構成を採用することにより、特に安全性の面において優れたシリンダ型ガス発生器とできることになる。
【0117】
ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいても、上述した実施の形態1において示した構成と同様の構成の仕切り部50が設けられているとともに、当該仕切り部50に対応した位置のハウジング本体10にかしめ部14が設けられている。そのため、当該構成を採用した場合にも、仕切り部50およびフィルタ70を一体的にハウジング本体10に対して固定することが可能になり、さらには燃焼室S1とフィルタ室S2との間の気密性を確保することができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0118】
上述した本発明の実施の形態1および2ならびにその変形例においては、点火器の点火部内に点火薬のみまたは点火薬と伝火薬とが装填された場合を例示して説明を行なったが、伝火薬を装填する場合にこれが点火器の点火部内に装填されている必要は必ずしもなく、点火器の点火部とガス発生剤との間の位置にたとえばカップ状の部材や容器等を用いてこれが装填されていてもよい。
【0119】
また、上述した本発明の実施の形態1および2ならびにその変形例においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、カーテンエアバッグ装置やニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
【0120】
このように、今回開示した上記実施の形態ならびにその変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。