(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579993
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】液面計用フロート装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/62 20060101AFI20190912BHJP
G01F 23/76 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
G01F23/62 Z
G01F23/76 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-86384(P2016-86384)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-194429(P2017-194429A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591131774
【氏名又は名称】株式会社工技研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】石川 之彦
【審査官】
羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−107986(JP,A)
【文献】
特開2001−004434(JP,A)
【文献】
特開2008−151692(JP,A)
【文献】
特開昭50−051356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪式液面計の磁歪線を内部に埋設したステムに上下動可能に嵌挿した縦型円筒状のフロート本体内の下方部に円環状の磁石を埋設すると共に、該フロート本体の下面にバランスウエイトを取り付けた液面計用フロート装置。
【請求項2】
前記バランスウエイトは環状の板状に形成され、その内周面に、前記ステムの外周面に接触可能な複数の突起を形成した請求項1に記載の液面計用フロート装置。
【請求項3】
前記ステムの中間部とタンクの開口部との間に、該ステムの傾斜を調整する支持手段を介在して該ステムを支持する請求項1又は請求項2に記載の液面計用フロート装置。
【請求項4】
前記支持手段は、中心部に前記ステムを嵌挿する第1透孔を有する球状パッキングと、前記開口部に螺着し、前記球状パッキングを受ける受け凹部と該受け凹部の底部の中央部に形成され前記ステムを遊嵌する第2透孔とを有する傾斜調整ホルダーと、中心部に前記ステムを遊嵌する第3透孔を有し、前記受け凹部の内周に螺合して前記球状パッキングを押圧するロックナットとからなる請求項3に記載の液面計用フロート装置。
【請求項5】
前記ステムが垂直であるかどうかを確認する手段を該ステムに取り付ける請求項3又は請求項4に記載の液面計用フロート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設されている危険物を貯蔵するタンク等に適用される液面計用フロート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや軽油、灯油等の危険物を貯蔵する地下タンクは、法令により原則一年に一回漏えいの有無を点検すること、地下タンク設置後40年以上経過したタンクに関してはその内面を樹脂等でライニングして、且つ高精度液面計で常時監視を行うこと等が法令により定められている。
【0003】
年一回の定期点検においては、危険物を貯蔵しているタンクのため、タンクを空にせずに点検することが一般的で、タンク内の液面より上の部分を気相部、液面より下の部分を液相部と称してそれぞれ検査を行う必要がある。
【0004】
又、常時監視用に高精度液面計を設置した場合は例えば深夜でタンク施設が停止している時微小な液面変化の有無を監視して基準以上の液面変化を検知して漏えいを検知する方法が用いられている。
【0005】
これらの検査については消防関連法規の定めがあり、気相部の検査に関しては告示第71条の1項から4項において具体的な方法及び判定の基準が示されているが、液相部の検査については具体的な方法及び判定の基準が定められておらず、告示第71条5項として
イ 点検範囲 当該方法により必要な精度を確保することができると認められる部分
ロ 実施方法 直径0.3ミリメートル以下の開口部又は当該開口部から危険物の漏れを検知することができる精度で点検を行い、異常がないこと。
とされており、又、告示第71条3項1号では危険物の微小な漏れを検知する「常時監視」設備、告示第4条49の2には危険物の微小な漏れを「常時検知」する設備がうたわれている。
【0006】
そして、液面の変化による液相部の漏えい検査は、精密な液面計を使用して地下タンクの漏えい口からのタンク内液体の流出又は地下タンク外部にある地下水の侵入による液面の変化を精密に捉えることにより行っている。
【0007】
これらの基準となる数値は前記で示した法令にある0.3ミリメートルの開口部又は該開口部からの漏れであり、液面の変化でこれを捉えるために磁歪式液面計が使用されている例がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3749908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この例の如く磁歪式液面計が例えば0.005ミリメートルのように非常に高い分解能を有していることから利用されているが、実用に当たってはフロートと磁歪式液面計のステムとの間の摩擦力が大きく性能を左右する。
【0010】
即ち、磁歪式液面計は原理的に非常に高い分解能を実現できるため微小な変化を捉えることができるものであるが、これを液面計として使用する場合には、フロートが液面に追従しなければ高精度を発揮することが不可能である。
【0011】
ここで、磁歪式液面計は、
図12に示す如く検出部Aと該検出部Aからのニッケル合金等強磁性体で構成された磁歪線Bを収めた金属の筒体のステムCと該ステムCの該外周面に沿って液面に追従して上下動するフロートDとからなり、フロートDの重量、浮力及びフロートDとステムCとの摩擦力がその性能を大きく左右する。
【0012】
そして、一般的に磁歪式液面計に用いられているフロートDは縦型円筒状を有しており、その中心部の中間部に磁石Eが埋め込まれているため重心位置が高く、単体で液面に浮くときに直立しにくい構造であるので、液面が変化してもフロートDの内周面とステムCの外周面との間が接触してその接触による摩擦力によりフロートDが液面に追従して上下動する動作が阻害され、液面が上昇方向の場合はフロートDに作用する浮力の変化が摩擦力に打ち勝つまで、液面が下降する場合はフロートDに作用する重量の変化が摩擦力に打ち勝つまでフロートDは変化せず、更にフロートDが変位した時でオーバーシュート現象を生じ、実際の液面の変化より大きくフロートが変位する等の現象により正確な液面を捉えることが困難である問題点がある。
【0013】
又、後述するように
図5の如くフロート2を貫通している筒体のステム3を取り付ける時ステム3の傾きに注意を払わずステム3が垂直方向に対して傾いているとフロート2の内面とステム3がより強く接触して摩擦力が増大し誤差の要因となる。
【0014】
本発明はこのような問題点を解消し、正確な液面を検出して液相部における漏えいを確実に検出可能にする液面計用フロート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明はこの目的を達成すべく、磁歪式液面計の磁歪線を内部に埋設したステムに上下動可能に嵌挿した縦型円筒状のフロート本体内の下方部に円環状の磁石を埋設すると共に、該フロート本体の下面にバランスウエイトを取り付けた。
【0016】
更に、ステムの傾きの調節が容易な支持手段とステムの傾きを確認する手段を具備したことによりステムを垂直に保持するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正確な液面を検出して液相部における漏えいを確実に検出可能にする液面計用フロート装置を提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1のフロート装置の正面図である。
【
図3】本発明の実施例2のフロート装置の正面図である。
【
図5】ステムが傾斜したときのフロート装置の状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施例3の磁歪式液面計の斜視図である。
【
図7】該液面計のステムの支持手段の断面図である。
【
図9】該支持手段の球状パッキングの正面図である。
【
図10】該支持手段の傾斜調整ホルダーの断面図である。
【
図11】傾いたソケットにステムを垂直状態に支持した状態の該支持手段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1を
図1及び
図2により説明する。
【0021】
図1は本発明の実施例1のフロート装置の正面図、
図2は該フロート装置の下面図である。
【0022】
1は本実施例のフロートであり、該フロート1は縦型円筒状のフロート本体2からなり、該フロート本体2の内周面の内径をステム3の外周面の外径より大に形成し、該フロート1は、その内周面内を該ステム3が挿通した状態で上下動可能に形成されている。
【0023】
そして、前記フロート本体2内の下方部、好ましくは最下部の位置に円環状の磁石4を埋設すると共に該フロート本体2の下面にテフロン(登録商標)等の低摩擦材料の環状板状に形成されているバランスウエイト5を取り付けた。
【0024】
かくて、フロート1はそのフロート本体2内の下方部に円環状の磁石4が埋設されていると共に、該フロート本体2の下面に環状板状のバランスウエイト5を取り付けたので、フロート1は垂直状態で液面L上に浮き、フロート1の内周面にステム3の外周面が軽く接触するのみで、摩擦を殆ど受けずに上下動し、正確な液面を検出して液相部における漏えいを確実に検出可能となる。
【実施例2】
【0025】
本発明の実施例2を
図3及び
図4により説明する。
【0026】
図3は本発明の実施例2のフロート装置の正面図、
図2は該フロート装置の下面図である。
【0027】
本実施例2においては、前記実施例1のフロート1のバランスウエイト5の内周部に等間隔に先端が例えば尖塔状の突起6を形成したことを特徴としている。
【0028】
かくて、前記バランスウエイト5の内周部に等間隔に先端が例えば尖塔状の突起6を形成したので、これら突起6の先端が前記ステム3の外周面と点接触となるので、突起6先端がステム3の外周面に軽く接触するのみで、フロート1は摩擦を更に受けずに上下動し、正確な液面を検出して液相部における漏えいを確実に検出可能になる。
【実施例3】
【0029】
本発明の実施例3を
図5乃至
図11により説明する。
【0030】
図5はステムが傾斜したときのフロート装置の状態を示す正面図、
図6は本発明の実施例3の磁歪式液面計の斜視図、
図7は該液面計のステムの支持手段の断面図、
図8は該支持手段のロックナットの断面図、
図9は該支持手段の球状パッキングの正面図、
図10は該支持手段の傾斜調整ホルダーの断面図、
図11はステムを垂直状態に支持した状態の該支持手段の断面図である。
【0031】
実施例2のフロート装置において、ステム3が傾斜した状態で液面計がタンクの開口部に支持されていると、
図5に示す如く、フロート1の下端部のバランスウエイト5の突起6の先端部がステム3の外周面に強く接触することによる摩擦力により液面に追従したフロート1の動作が阻害されて精度が大きく低下する。
【0032】
図6において、7は磁歪式液面計、3Aは該磁歪式液面計7のステム、8は該ステム3Aの中間部に取り付けられている支持手段を示し、該支持手段8は、
図7に示す如く、タンク9の上部に設けられている筒状の開口部10に螺合して固定される傾斜調整ホルダー11と、該傾斜調整ホルダー11の受け凹部12で受けられる球状パッキング13と、該受け凹部12の内周に螺合して該球状パッキング13を押圧するロックナット14からなる。
【0033】
即ち、前記球状パッキング13は、
図9に示す如く中心部に前記ステム3Aを嵌挿する第1透孔15を有しており、又、前記傾斜調整ホルダー11は、
図10に示す如く中心部に前記受け凹部12が形成されていると共に該受け凹部12の底部の中心部に前記ステム3Aを遊嵌する第2透孔16を有しており、更に前記受け凹部12の底部の上面の周辺部に前記球状パッキング13を受ける湾曲状の受面17が形成されていると共に前記傾斜調整ホルダー11の外周面に螺条18が形成されている。
【0034】
又、前記ロックナット14は、
図8に示す如く中心部に前記ステム3Aを遊嵌する第3透孔19を有していると共に、下端面の周縁部に前記球状パッキング13を押圧する湾曲状の押圧面20が形成されており、更に、該ロックナット14の外周面に螺条21が形成されている。
【0035】
22は前記開口部10の内周面に形成した螺条、23は前記ステム3Aの中間部にバンド24により取り付けられている水平器、即ち、ステム3Aの傾きを確認する手段を示す。
【0036】
かくて、前記ステム3Aを、前記ロックナット14の第3透孔19に遊嵌し、更に前記球状パッキング13の第1透孔15に挿通し、更に前記傾斜調整ホルダー11の第2透孔16に遊嵌した状態で、該傾斜調整ホルダー11を前記開口10に螺合して
図7に示す如く固定する。このときは、前記球状パッキング13が前記傾斜調整ホルダー11の受面17と前記ロックナット14の押圧面20に摺接しながら前記ステム3Aが前記球状パッキング13と共に傾動可能となるように前記ロックナット14が緩く前記傾斜調整ホルダー11の凹部12内に螺合している。
【0037】
そして、
図11で示す如く前記水平器23を見ながら前記ステム3Aが垂直状態になるように該ステム3Aを前記球状パッキング13と共に傾動して垂直状態になった時点でロックナット14を締め付ける。これにより該球状パッキング13は前記傾斜調整ホルダー11の受面17と前記ロックナット14の押圧面20とのにより挟まれながら押圧されて該球状パッキング13が固定され前記ステム3Aは垂直に保持される。
【0038】
かくて、該ステム3Aは垂直に保持されるので前記フロート1は、液面Lの上下動に伴ってその内面の下端部が前記ステム3Aに接触することなく円滑に上下動して追従し、正確な液面を検出して液相部における漏えいを確実に検出可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の液面計用フローと装置は、地下に埋設されている危険物を貯蔵するタンク等の漏えいを検出するのに適用される。
【符号の説明】
【0040】
1 フロート
2 フロート本体
3 ステム
3A ステム
4 磁石
5 バランスウエイト
6 突起
7 磁歪式液面計
8 支持手段
9 タンク
10 開口部
11 傾斜調整ホルダー
12 受け凹部
13 球状パッキング
14 ロックナット
15 第1透孔
16 第2透孔
19 第3透孔
23 水平器