(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、ウィンドシールドを払拭するワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は、電動モータにより動作させるワイパアームと、ワイパアームに取り付けられてウィンドシールドを払拭するワイパブレードと、を有する。ワイパブレードの例が、特許文献1,2に記載されている。特許文献1に記載されたワイパブレードは、ワイパアームに装着されるラバーホルダと、ラバーホルダにより支持されるブレードラバーと、を有する。ブレードラバーは、本体部に対して薄肉状のネック部を介して接続されたリップ部と、を有する。
【0003】
本体部は、略矩形状の基部と、基部よりも細幅の胴部と、基部からブレードラバーの幅方向に張り出した第1の倒れ角設定部及び第2の倒れ角設定部と、を有する。第1の倒れ角設定部の先端から第2の倒れ角設定部の先端までの幅は基部の幅と同じである。リップ部は本体部に対して倒れた状態でウィンドシールドに押し付けられる。
【0004】
特許文献1に記載されたワイパブレードは、リップ部がウィンドシールドを払拭し、雪等の異物がリップ部と第1の倒れ角設定部及び第2の倒れ角設定部との間に進入すると、リップ部の傾斜角度を適切に維持できなくなる可能性がある。
【0005】
一方、特許文献2に記載されたブレードラバーは、本体部と、本体部に対してネック部を介して連続されたリップ部と、を有する。リップ部は、肩部と、肩部に連続する先端部と、を有する。特許文献2に記載されたブレードラバーは、肩部と本体とを連結し、かつ、肩部と本体との間の空間を覆う遮蔽膜と、を有する。特許文献2に記載されたブレードラバーは、遮蔽膜が、肩部と本体との間の空間に雪等の異物が進入することを防止できる。つまり、特許文献1に記載されたワイパブレードの不都合を解消できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載されたブレードラバーの遮蔽膜は、リップ部が本体部に対して動作する作用を阻害する問題があった。
【0008】
本発明の目的は、ブレードラバーのリップ部と本体部との間に異物が進入することを防止でき、かつ、本体部に対するリップ部の動作性を確保することのできる、ワイパブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両のワイパアームに取り付けられるラバーホルダと、前記ラバーホルダに支持されるブレードラバーと、を有するワイパブレードであって、前記ブレードラバーは、前記ラバーホルダに支持される本体部と、前記車両のウィンドシールドに接触するリップ部と、前記本体部と前記リップ部との間に介在され、かつ、前記リップ部を前記本体部に対して動作可能に接続するネック部と、を備え、前記本体部及び前記リップ部に接続され、かつ、前記本体部と前記リップ部との間に形成された空間を覆うカバーが設けられ、前記カバーは、前記本体部に接続された第1接続部と、前記リップ部に接続された第2接続部と、を有し、前記第1接続部は、前記本体部の前記ネック部が接続された面よりも前記ラバーホルダ側の箇所に接続されている。
【0010】
本発明における前記リップ部は、前記ネック部に接続された肩部と、前記肩部に中央部を介して一体に形成され、かつ、前記ウィンドシールドに接触する先端部と、を有し、前記第2接続部は、前記リップ部の、前記先端部を除いた部分に接続されている。
【0011】
本発明における前記第2接続部は、前記中央部に接続されている。
【0012】
本発明における前記本体部は、前記ラバーホルダに支持される基部と、前記基部に連続され、かつ、前記ワイパアームの動作方向の幅が前記基部よりも小さい胴部と、前記胴部の幅方向における両端から外側に向けて突出した一対の鍔部と、を有し、前記第1接続部は、前記胴部に接続されている。
【0013】
本発明における前記一対の鍔部は、前記本体部の前記ネック部側の下端部に設けられ、かつ、前記カバーにより覆われている。
【0014】
本発明における前記カバーの厚さは、前記ワイパアームの動作方向における前記ネック部の幅よりも小さい。
【0015】
本発明は、前記ワイパアームの動作方向における前記カバーの幅は、前記ワイパアームの動作方向における前記本体部の幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カバーがブレードラバーのリップ部と本体部との間に異物が進入することを防止し、かつ、本体部に対するリップ部の動作性を確保することができる。
【0017】
本発明によれば、カバーが過剰に撓むことを抑制できる。
【0018】
本発明によれば、リップ部がネック部を支点として本体部に対して動作する際、カバーがネック部の変形を阻害することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ワイパブレードの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1に示す車両10は、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11を有する。また、車両10は、フロントガラス11を払拭するワイパ装置12を有している。ワイパ装置12は、フロントガラス11に付着した雨水、雪、塵埃等の異物を払拭して、視界を良好にするために設けられている。ワイパ装置12は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14と、モータ装置15と、モータ装置15の回転力を第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14に伝達する動力伝達機構16と、を有する。
【0022】
第1ワイパアーム13はピボット軸17を中心として回動可能であり、第2ワイパアーム14はピボット軸18を中心として回動可能である。第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14にワイパブレード19がそれぞれ取り付けられている。2本のピボット軸17,18は車体20によってそれぞれ回動可能に支持されている。第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14は、ブレードラバー28をフロントガラス11に押し付ける力を発生させるための要素である。
【0023】
モータ装置15は、車両10の前後方向でフロントガラス11の前方に配置されている。モータ装置15は、車体20により支持されたケーシング21と、ケーシング21内に収容した電動モータ及び減速機構と、減速機構に連結された出力軸22と、を有する。動力伝達機構16は、モータ装置15から出力された動力を伝達するため、出力軸22とピボット軸17,18とを動力伝達可能に接続する要素であり、動力伝達機構16は、レバー23、リンク24及びアーム25を有する。
【0024】
ワイパブレード19の構造を、
図2、
図3及び
図4を参照して説明する。ワイパブレード19は長尺形状を有している。ワイパブレード19は、第1ワイパアーム13または第2ワイパアーム14に取り付けられたラバーホルダ26と、ラバーホルダ26により支持されたバーティブラ27及びブレードラバー28と、を有する。
【0025】
ラバーホルダ26は、硬質樹脂等の材料により構成されている。ラバーホルダ26は、帯状の基部29と、基部29から第1ワイパアーム13または第2ワイパアーム14に近づく向きで張り出したフィン30と、を有する。フィン30は、空気の圧力でブレードラバー28をフロントガラス11に押し付ける向きの分力を生じさせる要素である。
【0026】
ラバーホルダ26は、幅方向、つまり、
図2の左右方向に間隔をおいて形成された2つの保持穴31を有する。2つの保持穴31はラバーホルダ26の長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。そして、2つの保持穴31にそれぞれバーティブラ27が配置されている。バーティブラ27は、鋼板等の板材を打ち抜き加工して形成された板ばねである。また、バーティブラ27は、保持穴31に配置された状態で厚さ方向に湾曲している。バーティブラ27の素材は、鋼板に代えて硬質樹脂を用いることもできる。バーティブラ27はブレードラバー28をフロントガラス11に沿わせるために押し付ける力を発生させる要素である。
【0027】
ラバーホルダ26は、1つの保持溝32及び2つの係止部33を有する。保持溝32は、ラバーホルダ26の幅方向で2つの保持穴31の間に配置されている。保持溝32は、ラバーホルダ26の長手方向に沿って設けられている。2つの係止部33は保持溝32を形成し、かつ、互いに対向する向きで突出している。2つの係止部33は、ラバーホルダ26の端面34に沿って設けられている。端面34は、フィン30が設けられている箇所とは反対側に位置する。
【0028】
ブレードラバー28は合成ゴム材料により成形されている。合成ゴム材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム材料を、単独または複数混合したものを例示することができる。これらのゴム材料に、加硫剤、軟化剤、充填剤、カーボンブラック等の添加剤を配合したものを加硫してブレードラバー28が製造されている。
【0029】
ブレードラバー28はワイパブレード19の長手方向に沿って配置されている。すなわち、ブレードラバー28は長尺形状を有している。ブレードラバー28は、本体部35と、本体部35にネック部36を介在させて接続したリップ部37と、を有する。ネック部36は、リップ部37を本体部35に対して動作可能に接続する。
【0030】
本体部35は、固定部38と、固定部38に接続部39を介して接続された基部40と、基部40に連続された胴部41と、胴部41から張り出した鍔部42と、を有する。固定部38は保持溝32に配置され、接続部39は2つの係止部33の間に配置されている。2つの係止部33は、固定部38と基部40との間に挟まれており、基部40は端面34に接している。
【0031】
ブレードラバー28は、幅方向の中心線A1に対して左右対称の断面形状を有する。ブレードラバー28は、中心線A1方向、及び中心線A1に対して交差する方向で、ラバーホルダ26に対して位置決めされている。
【0032】
中心線A1方向で、胴部41は基部40とネック部36との間に配置され、ネック部36は、胴部41とリップ部37との間に配置されている。ネック部36は、胴部41のうち、中心線A1方向で基部40の反対に位置する面41Aに接続されている。ラバーホルダ26の幅方向で、基部40の幅L1は、胴部41の幅L2よりも大きい。鍔部42は、ラバーホルダ26の幅方向で、胴部41の両端に位置する側面41Bから、ラバーホルダ26の幅方向に張り出して2箇所に配置されている。側面41Bは
図3で中心線A1と平行である。一対の鍔部42の先端の幅は、基部40の幅L1と同じである。鍔部42は、面41Aと一部一体となって連なって形成されている。つまり、鍔部42は、本体部35のネック部36側の下端部に設けられている。
【0033】
ラバーホルダ26の幅方向で、ネック部36の幅L3は、幅L2よりも小さい。リップ部37は、ネック部36に接続された肩部43と、肩部43に中央部44を介して接続された先端部45と、を有する。先端部45は、第2ワイパアーム14の弾性力で
図5のようにフロントガラス11に押し付けられ、ブレードラバー28が弾性変形する。ブレードラバー28が第2ワイパアーム14から受ける荷重は、中心線A1に沿った方向である。
【0034】
肩部43の幅L4は、ネック部36の幅L3よりも大きく、かつ、幅L2よりも小さい。このため、肩部43と胴部41との間に空間B1が形成されている。中心線A1方向の異なる位置で、幅L4は一定である。中央部44は幅L5を有し、中心線A1方向で先端部45に近づくことに伴い、中央部44の幅L5が小さくなるように、中央部44の表面が湾曲している。中心線A1方向の異なる位置で、先端部45の幅L6は一定であり、かつ、幅L6は幅L5の最小値以下の値である。また、幅L6は幅L3よりも大きい。このように、リップ部37は、断面形状が楔形である。
【0035】
さらに、ブレードラバー28にカバー46が設けられている。カバー46は、胴部41の両側面に接続された第1接続部47と、第1接続部47に湾曲部48を介して接続された外側部49と、外側部49に湾曲部50を介して接続された第2接続部51と、を有する。第2接続部51は、中央部44に接続されている。カバー46は、中心線A1の両側で左右対称形状であり、第1接続部47、湾曲部48、外側部49、湾曲部50及び第2接続部51は、それぞれ2つずつ設けられている。
【0036】
このように、カバー46の第1接続部47は、中心線A1方向で鍔部42と基部40との間で、胴部41に接続されている。つまり、第1接続部47は、本体部35にネック部36が接続された面41Aよりもラバーホルダ26側の箇所に接続されている。面41Aよりもラバーホルダ26側とは、中心線A1方向で面41Aよりもラバーホルダ26に近いことを意味する。カバー46は、ブレードラバー28と同じ合成ゴム材料で成形されている。カバー46の厚さt1は全体で均一であり、かつ、ネック部36の幅L3よりも薄い。すなわち、カバー46は、可撓性の膜部材である。中心線A1に対して直角な方向で、2つの外側部49同士の幅L7は、幅L1よりも大きい。ここで、幅L7はブレードラバー28が弾性変形していない状態における値である。
【0037】
ブレードラバー28が弾性変形していない状態で、第1接続部47と第2接続部51とは互いに平行である。また、ブレードラバー28が弾性変形していない状態で、2つの外側部49は中心線A1に対して平行である。また、2つの外側部49は、ラバーホルダ26の幅方向で2つの鍔部42よりも外側に配置されている。ブレードラバー28が弾性変形していない状態で、2つの鍔部42とカバー46との間に隙間がある。このように、カバー46は、2つの鍔部42及び肩部43を覆っている。このような構成としたことで、カバー46は余裕を持って撓むことができ、リップ部37の動作がカバー46により阻害されることを防ぐ。
【0038】
ワイパブレード19の製造工程において、ブレードラバー28とカバー46とが、押し出し成形で一体化されてもよいし、ブレードラバー28とカバー46とを別々に製造し、ブレードラバー28とカバー46とを互いに接合して一体化してもよい。
【0039】
ブレードラバー28が取り付けられたワイパブレード19は、バーティブラ27の弾性力で、
図5のようにリップ部37の先端部45がフロントガラス11に押し付けられる。すると、リップ部37はネック部36を支点として倒れ、かつ、弾性変形する。フロントガラス11の表面と、リップ部37の中心線A2との間に形成される鋭角側の接触角θ1は、例えば、40〜50[deg ]の範囲内にある。
【0040】
第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が往復動作すると、ワイパブレード19は動作方向B2で往復動作する。動作方向B2は、中心線A1に対して交差する方向である。すると、
図5に示すように、リップ部37がフロントガラス11の表面にある異物を払拭し、視界を確保する。本体部35に対するリップ部37の傾斜方向は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下限位置から上限位置に向けて動作する場合と、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14がフロントガラス11における払拭領域の上限位置から下限位置に向けて動作する場合とで、逆向きとなる。
【0041】
また、肩部43が胴部41に接触することで、本体部35に対するリップ部37の通常使用で想定される傾斜角度の最大値が定まる。そして、リップ部37がフロントガラス11の表面を払拭する際に、胴部41とリップ部37との間の空間B1に異物、例えば雪などが進入することを、カバー46が防止する。このため、本体部35に対するリップ部37の動作が阻害されることを抑制できる。つまり、接触角θ1を異物の払拭に適した良好な値まで小さくすることができる。したがって、ワイパブレード19の払拭性が低下することを抑制できる。
【0042】
また、リップ部37が本体部35に対して弾性変形すると、カバー46も同様に弾性変形する。そして、カバー46の第1接続部47は、本体部35の胴部41のうち、リップ部37に最も近い箇所ではなく、ラバーホルダ26に接近した箇所に接続されている。このため、カバー46の撓み方向の長さをなるべく大きくすることができる。したがって、リップ部37が本体部35に対して傾斜する作用が、カバー46により阻害されることを抑制できる。
【0043】
ブレードラバーの特性を、
図6の線図を参照して説明する。
図6では、縦軸に接触角が示され、横軸に荷重が示されている。荷重は、ブレードラバーをフロントガラスに押し付ける荷重である。実施の形態のブレードラバー28の特性が実線で示され、比較例のブレードラバーの特性が破線で示されている。比較例のブレードラバーは、カバーを鍔部及びリップ部に接続した構造である。
【0044】
実施の形態のブレードラバー28の特性と、比較例のブレードラバーの特性とを比べると、同じ荷重F1であれば、実施の形態における接触角θ1は、比較例における接触角θ2よりも小さい。これは、比較例のブレードラバーに設けたカバーが、実施例のブレードラバーに設けるカバーよりも短く、本体部に対するリップ部の動作がカバーにより阻害されるからである。なお、荷重F1は通常使用で想定される荷重であり、実施の形態のブレードラバー28は、接触角θ1が40度〜50度の範囲内になる。
【0045】
さらに、第2接続部51を肩部43よりも先端部45に近い中央部44に接続したため、空間B1にカバー46の一部が存在しない。したがって、リップ部37が傾斜した場合に、肩部43と胴部41の間にカバー46とが接触することを防止でき、接触角θ1を適正な値に維持でき、ワイパブレード19の払拭性を確保できる。
【0046】
さらに、カバー46の厚さt1は、ネック部36の幅L3よりも小さく、カバー46の曲げ剛性は、ネック部36の曲げ剛性よりも小さい。したがって、リップ部37が本体部35に対して動作する作用に合わせて、カバー46が柔軟に撓むことができる。
【0047】
さらに、リップ部37が本体部35に対して傾斜した場合に、カバー46の内面が鍔部42に接触することで、カバー46が過剰に撓むことを抑制できる。したがって、カバー46は、リップ部37により払拭された水がラバーホルダ26を乗り越え、かつ、ワイパブレード19が動作する向きとは逆向きに移動することを抑制できる。
【0048】
図7は、ブレードラバー28に設けるカバー46の他の例を示す。
図7では、カバー46の第2接続部51が肩部43に接続されている。
図7に示すブレードラバー28及びカバー46の他の構造は、
図3に示すブレードラバー28及びカバー46の他の構造と同じである。
図7に示すカバー46を有するブレードラバー28は、
図3に示すブレードラバー28と同様の効果を得ることができる。
【0049】
なお、本実施形態に記載した幅L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の動作方向における幅である。
【0050】
ブレードラバーは上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、図示はしないが、胴部41に鍔部42が設けられていないブレードラバー28を用いることも可能である。この場合、胴部41のうち、リップ部37に最も近い箇所よりもラバーホルダ26に近い箇所に、カバー46の第1接続部47を接続する。また、中央部44の表面形状は湾曲面に代えて平坦面としてもよい。つまり、中央部44の幅L5が先端部45に近づくことに伴い、徐々に狭くなるテーパ状でもよい。第2接続部は、リップ部の先端部を除いた部分、つまり、肩部または中央部に接続されている。