(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
監視対象システムで発生した障害のうち、対応不要であった障害を対象障害として、前記対象障害が発生した前記監視対象システムの構成要素である比較元要素と、前記監視対象システムの他の構成要素である比較先要素とについて属性毎に一致するか否かを判定し、一致すると判定された属性と各属性に対して割り当てられた寄与度とを用いて前記比較先要素についての構成類似度を計算する構成類似計算部と、
前記構成類似計算部によって計算された前記構成類似度に基づき、前記対象障害が発生した場合に対応不要とする構成要素の候補である静観候補を特定する候補特定部と
を備える静観候補特定装置。
前記構成類似計算部は、前記比較元要素に関連する構成要素である関連要素と、前記比較先要素に関連する構成要素である関連要素とについても、属性毎に一致するか否かを判定し、一致すると判定された属性と各属性に対して割り当てられた寄与度を用いて前記構成類似度を計算する
請求項1に記載の静観候補特定装置。
前記構成類似計算部は、一致すると判定された属性に対して割り当てられた寄与度の合計値を、前記比較元要素の各属性に対して割り当てられた寄与度の合計値と、前記比較先要素の各属性に対して割り当てられた寄与度の合計値との平均値で除して、前記構成類似度を計算する
請求項1又は2に記載の静観候補特定装置。
前記候補特定部は、前記構成類似度と前記負荷類似度とに重み付けした上で合計して総合類似度を計算し、計算された前記総合類似度が高い前記比較先要素を前記静観候補として特定する
請求項4に記載の静観候補特定装置。
監視対象システムで発生した障害のうち、対応不要であった障害を対象障害として、前記対象障害が発生した前記監視対象システムの構成要素である比較元要素と、前記監視対象システムの他の構成要素である比較先要素とについて属性毎に一致するか否かを判定し、一致すると判定された属性と各属性に対して割り当てられた寄与度とを用いて前記比較先要素についての構成類似度を計算し、
前記構成類似度に基づき、前記対象障害が発生した場合に対応不要とする構成要素の候補である静観候補を特定する静観候補特定方法。
監視対象システムで発生した障害のうち、対応不要であった障害を対象障害として、前記対象障害が発生した前記監視対象システムの構成要素である比較元要素と、前記監視対象システムの他の構成要素である比較先要素とについて属性毎に一致するか否かを判定し、一致すると判定された属性と各属性に対して割り当てられた寄与度とを用いて前記比較先要素についての構成類似度を計算する構成類似計算処理と、
前記構成類似計算処理によって計算された前記構成類似度に基づき、前記対象障害が発生した場合に対応不要とする構成要素の候補である静観候補を特定する候補特定処理と
をコンピュータに実行させる静観候補特定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る監視システム1の構成を説明する。
監視システム1は、静観候補特定装置10と、監視対象システム50とを備える。静観候補特定装置10は、ファイアウォール91と、ネットワーク92とを介して、監視対象システム50と接続されている。
【0011】
監視対象システム50は、1つ以上のサーバ51と、1つ以上のネットワーク機器52とを構成要素として備える。ネットワーク機器52は、ルータ、スイッチ、ハブといった機器である。また、監視対象システム50は、ファイアウォール53を備える。
ここでは、監視対象システム50は、サーバ51とネットワーク機器52とを構成要素として備えるとして説明する。しかし、監視対象システム50は、1つ以上のサーバ51等によって構成されるサブシステムを構成要素としてもよい。
【0012】
図2を参照して、実施の形態1に係る静観候補特定装置10の構成を説明する。
静観候補特定装置10は、コンピュータである。
静観候補特定装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14と、通信インタフェース14と、入出力インタフェース15とのハードウェアを備える。プロセッサ11は、システムバスを介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0013】
プロセッサ11は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ11は、具体例としては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0014】
メモリ12は、プロセッサ11によってデータ、情報、プログラムが一時的に記憶される作業領域である。メモリ12は、具体例としては、RAM(Random Access Memory)である。
【0015】
ストレージ13は、具体例としては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、又は、HDD(Hard Disk Drive)である。また、ストレージ13は、SD(Secure Digital)メモリカード、CF(CompactFlash)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記憶媒体であってもよい。
【0016】
通信インタフェース14は、監視対象システム50と通信するための装置である。通信インタフェース14は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、RS232C、USB、IEEE1394の端子である。
【0017】
入出力インタフェース15は、キーボード、マウス、マイク、カメラといった入力装置と、ディスプレイといった表示装置32を接続するための装置である。入出力インタフェース15は、具体例としては、DVI(Digital Visual Interface)、D−SUB(D−SUBminiature)、HDMI(登録商標,High−Definition Multimedia Interface)の端子である。
【0018】
静観候補特定装置10は、機能構成要素として、障害検出部21と、静観判定部22と、負荷収集部23と、障害抽出部24と、構成類似計算部25と、負荷類似計算部26と、候補特定部27とを備える。障害検出部21と、静観判定部22と、負荷収集部23と、障害抽出部24と、構成類似計算部25と、負荷類似計算部26と、候補特定部27との各部の機能は、ソフトウェアにより実現される。
ストレージ13には、各部の機能を実現するプログラムが記憶されている。このプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。また、ストレージ13には、負荷情報41と、監視設定情報42と、静観設定情報43と、障害履歴情報44と、構成情報45と、寄与情報46とが記憶されている。
【0019】
静観候補特定装置10の各部の機能の処理の結果を示す情報とデータと信号値と変数値とは、メモリ12、又は、プロセッサ11内のレジスタ又はキャッシュメモリに記憶される。以下の説明では、静観候補特定装置10の各部の機能の処理の結果を示す情報とデータと信号値と変数値は、メモリ12に記憶されるものとする。
【0020】
図2では、プロセッサ11は、1つだけ示されている。しかし、静観候補特定装置10は、プロセッサ11を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、各部の機能を実現するプログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ11と同じように、プロセッシングを行うICである。
【0021】
***動作の説明***
実施の形態1に係る静観候補特定装置10の動作を説明する。
実施の形態1に係る静観候補特定装置10の動作は、実施の形態1に係る静観候補特定方法に相当する。また、実施の形態1に係る静観候補特定装置10の動作は、実施の形態1に係る静観候補特定プログラムの処理に相当する。
実施の形態1に係る静観候補特定装置10の動作は、監視対象システム50を監視する監視処理と、静観設定情報43を更新する更新処理とに分けられる。
【0022】
図3を参照して、実施の形態1に係る監視処理を説明する。
(ステップS11:障害検出処理)
障害検出部21は、監視設定情報42に従い、監視対象システム50の構成要素であるサーバ51及びネットワーク機器52から情報を収集して、障害を検出する。障害検出部21は、障害が検出された場合には、検出された障害を示す情報をプロセス間通信といった方法により静観判定部22に伝達する。
なお、障害を検出する方法としては、監視対象システム50の各機器にエージェントソフトウェアをインストールする方法、エージェント無しでネットワーク経由で監視する方法、監視専用の機器を監視対象システム50に配置し、その機器から障害情報を得る方法等がある。
【0023】
図4に示すように、監視設定情報42は、監視対象システム50の構成要素であるサーバ51及びネットワーク機器52に対して、どの様な監視を行い、どの様な条件の場合に障害とみなすかを示す情報である。
図4では、監視設定情報42は、監視項目名毎に、ホスト名と、監視種別と、障害条件とを有している。監視項目名は、障害の識別子である。ホスト名は、監視対象システム50の構成要素である機器の識別子である。監視種別は、障害の種別を示す識別子である。障害条件は、障害と判定される条件である。
監視設定情報42は、具体例としては、特定のサーバ51について、CPU使用率が何%以上であるか、PINGでの応答が連続して何回以上ないかといったことを示す。また、監視設定情報42は、具体例としては、特定のネットワーク機器52について、ネットワーク使用率が何%以上であるか、パケットロス数が幾つ以上であるかといったことを示す。
【0024】
具体例としては、障害検出部21は、監視設定情報42が
図4に示す内容であった場合、srv1というサーバ51に対してはCPU使用率とPINGの応答情報とを取得する。そして、障害検出部21は、CPU使用率が90%以上となった場合と、PINGが連続3回以上応答無しとなった場合とには、障害条件と一致したとして、srv1というサーバ51に障害が発生していると検出する。CPU使用率が90%以上となった場合であれば、障害検出部21は、srv1_CPUという監視項目名を検出された障害を示す情報として静観判定部22に伝達する。
【0025】
(ステップS12:静観判定処理)
静観判定部22は、静観設定情報43を参照して、ステップS11で障害検出部21から伝達された情報が示す障害を静観するか否かを判定する。
静観判定部22は、静観すると判定された場合、処理をステップS13に進め、静観しないと判定された場合、処理をステップS11に戻す。
【0026】
図5に示すように、静観設定情報43は、対応不要であると特定されている障害を識別するための情報である。
図5では、静観設定情報43は、監視項目名毎に、静観条件と、静観時間帯とを有している。静観条件は、静観対応とされる条件である。静観時間帯は、静観対応とされる時間帯である。静観条件と静観時間帯との両方が設定されている場合には、両方を満たした場合に静観対応とされる。
静観設定情報43は、具体例としては、特定のサーバ51について、ある時間帯におけるCPU使用率が高い状態は対応不要であることを示す。これは、例えば、定期的に実行するバッチ処理では、その処理が行われている時間帯は他の時間帯よりもCPU使用率が高くなるが、異常ではないため対応不要であることを意味している。CPU使用率以外でも、定期的にリブート処理を行うために、ある時間帯にシャットダウンのエラーログが出力されても、異常ではないため対応不要とすること、及び、定期的なリブート中はPINGに応答しなくても、異常ではないため対応不要とすることも考えられる。
【0027】
具体例としては、静観判定部22は、静観設定情報43が
図5に示す内容であった場合、srv1_CPUという監視項目名が伝達されると、発生時刻が日曜の2:00〜4:00であれば、静観すると判定し、他の時刻であれば、静観しないと判定する。
【0028】
(ステップS13:障害対応処理)
静観判定部22は、ステップS11で検出された障害を示す情報を入出力インタフェース15を介して表示装置32に送信して、表示させる。これにより、静観判定部22は、検出された障害を管理者に伝達する。
【0029】
具体例としては、静観判定部22は、CPU使用率が90%以上となった場合であれば、障害検出部21は、srv1_CPUという監視項目名を検出された障害を示す情報として表示装置32に表示させる。この際、静観判定部22は、スピーカから音を出す、ランプを点灯させるといった他の通知を合わせて行ってもよい。
【0030】
(ステップS14:障害記録処理)
静観判定部22は、ステップS11で検出された障害を示す情報を障害履歴情報44としてストレージ13に書き込む。また、ステップS11で検出された障害に対して、管理者によって実行された対応内容が障害履歴情報44としてストレージ13に書き込まれる。
【0031】
図6に示すように、障害履歴情報44は、検出された障害の内容と、それ対して管理者によって実行された対応内容とを示す情報である。
図6では、障害履歴情報44は、障害番号及び時刻毎に、ホスト名と、担当者と、内容とを有している。障害番号は、検出された障害の識別子である。時刻は、レコードが書き込まれた時刻である。ホスト名は、監視対象システム50の構成要素である機器の識別子である。担当者は、障害の対応を行った管理者の識別子である。内容は、障害の内容、又は、実行された対応内容である。障害履歴情報44は、1つの障害番号で特定されるレコードの内容を時刻の順に確認することにより、検出された障害の内容から、実行された対応内容が時系列に確認できる。
【0032】
(ステップS15:負荷収集処理)
負荷収集部23は、ステップS11からステップS14とは独立して、定期的に監視対象システム50の各構成要素の負荷に関する情報を収集し、負荷情報41としてストレージ13に書き込む。負荷収集部23は、システム単位、ホスト単位、項目単位といった様々な指定の範囲毎に、間隔を定めて負荷に関する情報を収集する。
なお、負荷情報を取得する方法としては、監視対象システム50の各機器にエージェントソフトウェアをインストールする方法、SNMP(Simple Network Management Protocol)といった標準化されたプロトコルにより収集する方法等がある。
【0033】
図7に示すように、負荷情報41は、監視対象システム50の各構成要素の負荷を時刻毎に示す情報である。
図7では、負荷情報41は、時刻及びホスト名毎に、リソースと、値とを有している。リソースは、構成要素の負荷の対象を示す識別子である。値は、負荷を示す値である。
負荷情報41は、構成要素がサーバ51の場合には、時刻毎のCPU使用率、メモリ使用率、ストレージのディスク使用率等を示す。負荷情報41は、構成要素がネットワーク機器52の場合には、時刻毎のネットワーク使用率、パケットロス数等を示す。
【0034】
図8を参照して、実施の形態1に係る更新処理を説明する。
(ステップS21:障害抽出処理)
障害抽出部24は、対応不要であった障害についての障害履歴情報44をストレージ13から読み出す。具体例としては、障害抽出部24は、障害履歴情報44の内容の欄から対応不要という文字列を検索し、ヒットした障害履歴情報44のレコードを読み出す。
障害抽出部24は、読み出された障害履歴情報44から基準を満たす障害を、静観対象として抽出する。基準とは、具体例としては、同一の構成要素、かつ、同一の障害内容の障害番号が一定数以上存在するといったものである。静観対象として抽出する処理は、管理者によって別途手動で実行されてもよい。
障害抽出部24は、抽出された静観対象についての情報を静観設定情報43としてストレージ13に書き込む。これにより、以降、静観対象として抽出された障害と同じ障害が発生した場合には、ステップS12で静観すると判定されるようになる。
【0035】
(ステップS22:構成類似計算処理)
構成類似計算部25は、ステップS21で抽出された静観対象で対象とする構成要素、すなわち監視対象システム50で発生した障害のうち対応不要であった障害が発生した監視対象システム50の構成要素を比較元要素とする。また、構成類似計算部25は、監視対象システム50の他の各構成要素を順に比較先要素とする。
そして、構成類似計算部25は、比較元要素と比較先要素とについて属性毎に一致するか否かを判定する。構成類似計算部25は、一致すると判定された属性と、各属性に割り当てられた寄与度とから比較先要素についての構成類似度を計算する。
【0036】
図9を参照して、実施の形態1に係るステップS22の構成類似計算処理を説明する。
(ステップS221:元情報読出処理)
構成類似計算部25は、ステップS21で抽出された静観対象の対象とする構成要素の識別子であるホスト名を取得し、取得されたホスト名が示す構成要素を比較元要素とする。構成類似計算部25は、比較元要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。
【0037】
図10に示すように、構成情報45は、監視対象システム50の各構成要素についての情報である。
図10では、構成情報45は、ID及び属性名毎に、値を有している。IDは、機器及びソフトウェアといった全ての構成要素を一意に識別する識別子である。ホスト名とIDとの違いは、ホスト名は構成要素のうち機器についての識別子であったのに対して、IDは全ての構成要素についての識別子である点である。属性名は、属性の識別子である。値は、属性値である。したがって、
図10では、1つのIDについての複数のレコードによって1つの構成要素についての情報が表されている。
属性名が種別となっているレコードの値が、その構成要素の種別を表しており、種別に応じて属性名に設定される内容が異なる。具体例としては、種別がServerの場合には、属性名として、ホスト名と、OSと、CPUと、メモリと、HDDと、IPアドレスとが設定される。また、種別がソフトウェアの場合には、属性名として、ソフトウェア名と、エディションと、インストール日と、ライセンス有効期限と、ベンダー名とが設定される。
【0038】
続いて、構成類似計算部25は、比較元要素と種別が同じ構成要素を比較先要素として、各比較先要素についてステップS222からステップS225の処理を実行する。
【0039】
(ステップS222:先情報読出処理)
構成類似計算部25は、処理対象の比較先要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。
【0040】
続いて、構成類似計算部25は、比較元要素の各属性についてステップS223からステップS224の処理を実行する。
【0041】
(ステップS223:寄与度読出処理)
構成類似計算部25は、比較元要素の種別及び属性について、寄与情報46に含まれる寄与度をストレージ13から読み出す。この際、構成類似計算部25は、寄与情報46のうち、比較元要素の属性の値と一致する比較パラメータを有するレコードの寄与度を読み出す。
なお、構成類似計算部25は、比較元要素の属性の値と一致する比較パラメータを有するレコードが複数ある場合には、最も低い寄与度を読み出す。逆に、構成類似計算部25は、比較元要素の属性の値と一致する比較パラメータを有するレコードがない場合には、寄与度を固定値とする。固定値は、具体例としては、1.0である。
【0042】
図11に示すように、寄与情報46は、各属性についての類似度を計算するための情報である。
図11では、寄与情報46は、種別及び属性毎に、比較パラメータと、寄与度とを有している。比較パラメータは、比較元要素の構成情報45の値と比較されるパラメータである。
図11では、比較パラメータ中の“?”が任意の1文字と一致し、“*”が任意の0文字以上と一致する。寄与度は、類似度を計算する際の係数である。
【0043】
具体例としては、
図10に示すホスト名srv1のCPUであれば、
図11の1〜4行目のレコードの比較パラメータと一致する。そのため、1〜4行目のレコードの寄与度のうち最も低い寄与度である0.1が読み出されることになる。
【0044】
(ステップS224:一致判定処理)
構成類似計算部25は、比較元要素と、処理対象の比較先要素とについて属性毎に、値が一致するか否かを判定する。
【0045】
(ステップS225:類似度計算処理)
構成類似計算部25は、ステップS224で一致すると判定された属性について、ステップS223で読み出されたレコードの寄与度を用いて比較先要素についての構成類似度を計算する。
具体的には、実施の形態1では、構成類似計算部25は、ダイス係数を使用して、比較元要素の属性と、比較先要素の属性とで一致した共通要素数を、比較元要素の属性数と比較先要素の属性数との平均値で割った値を構成類似度として計算する。なお、属性数を数える際、属性の数をそのまま数えるのではなく、各属性の寄与度の値を合算する。属性類似度が1に近いほど、比較元要素と比較先要素とが類似しており、0に近いほど、比較元要素と比較先要素とが類似していないことを示す。
なお、ダイス係数に限らず、2つの集合の類似性を計算する手法であれば、ジャッカード係数、シンプソン係数といった他の手法を用いてもよい。
【0046】
図12を参照して具体例を説明する。
図12では、
図10に示すホスト名がsrv1の構成要素と、ホスト名がsrv4の構成要素とを比較した場合が示されている。
図12では、一致した属性は、OSの1つであるが寄与度が0.7であるため、共通要素数は0.7になる。また、比較元要素の属性数は、ホスト名、OS、CPU、メモリ、HDD、IPアドレスの6つであるが、それぞれ寄与度を使って合算すると、1.0になる。比較先要素の属性数についても同じく1.0になる。したがって、属性数の平均値は1.0になる。この結果、構成類似度は、0.7/1.0で0.7になる。
なお、寄与度を使わずに構成類似度を計算した場合は、一致する属性がOSの1つであり、属性数の平均値が6であるため、1/6で0.167になる。このように、寄与度を用いることにより、CPUの型番やメモリの量といった、大きな差とならない項目の影響を少なくすることができる。
【0047】
(ステップS23:負荷類似計算処理)
負荷類似計算部26は、ステップS21で抽出された静観対象で対象とする構成要素、すなわち監視対象システム50で発生した障害のうち対応不要であった障害が発生した監視対象システム50の構成要素を比較元要素とする。また、負荷類似計算部26は、監視対象システム50の他の各構成要素を順に比較先要素とする。
そして、負荷類似計算部26は、比較元要素と比較先要素とについて負荷の類似度合を、比較先要素についての負荷類似度として計算する。
【0048】
図13を参照して、実施の形態1に係るステップS23の負荷類似計算処理を説明する。
(ステップS231:元情報読出処理)
負荷類似計算部26は、ステップS21で抽出された静観対象の対象とする構成要素の識別子であるホスト名を取得し、取得されたホスト名が示す構成要素を比較元要素とする。構成類似計算部25は、比較元要素の負荷情報41をストレージ13から読み出す。
【0049】
続いて、負荷類似計算部26は、比較元要素と種別が同じ構成要素を比較先要素として、各比較先要素についてステップS232からステップS233の処理を実行する。
【0050】
(ステップS232:先情報読出処理)
負荷類似計算部26は、処理対象の比較先要素の負荷情報41をストレージ13から読み出す。
【0051】
(ステップS233:類似度計算処理)
負荷類似計算部26は、ステップS231で読み出された比較元要素の負荷情報41と、ステップS232で読み出された比較先要素の負荷情報41との類似度を計算する。
具体的には、実施の形態1では、負荷類似計算部26は、対応する負荷情報41毎に、一定期間における負荷の平均値を計算し、計算された平均値の近さを類似度とする。そして、負荷類似計算部26は、負荷情報41毎に計算された類似度を合計して負荷類似度を計算する。具体的には、負荷類似計算部26は、CPU使用率とメモリ使用率とディスク使用率とのそれぞれについて負荷の近さを類似度として計算し、計算された類似度を合計して負荷類似度とする。
また、負荷類似計算部26は、対応する負荷情報41毎に、直線補間又は曲線補間を用いて、負荷の変化を表す多項式又は三角関数といった近似式を計算して、計算された近似式を比較することにより、時間とともに変化する負荷の近さを類似度として計算してもよい。この場合には、比較が可能になるように、比較元要素と比較先要素とについて同じ形式の近似式を用いるようにする。そして、負荷類似計算部26は、負荷情報41毎に計算された類似度を合計して負荷類似度を計算してもよい。
他にも、負荷類似計算部26は、リソース使用率の組合せにより負荷類似度を計算してもよい。具体的には、CPU使用率の一定期間の平均値を、メモリ使用率の一定期間の平均値で除した値の近さを負荷類似度として計算してもよい。また、自己回帰移動平均モデルのパラメータを用いて負荷類似度を計算してもよい。また、以上の負荷類似度の計算方法のいくつかを組合せて負荷類似度を計算してもよい。
【0052】
(ステップS24:候補特定処理)
候補特定部27は、ステップS22で計算された構成類似度と、ステップS23で計算された負荷類似度とに重み付けした上で合計して総合類似度を計算する。そして、候補特定部27は、計算された総合類似度が高い比較先要素を静観候補として特定する。
候補特定部27は、特定された静観候補を入出力インタフェース15を介して表示装置32に表示させ、監視対象システム50の管理者に静観候補を示す。この際、候補特定部27は、静観候補とともに、その静観候補についての総合類似度と構成類似度と負荷類似度とを表示させてもよい。
【0053】
なお、ステップS21で比較元要素についての情報が静観設定情報43としてストレージ13に書き込まれたのと同様に、ステップS24で特定された静観候補についての情報も、静観設定情報43としてストレージ13に書き込まれてもよい。あるいは、ステップS24で特定された静観候補のうち、管理者によって選択された静観候補についての情報だけが、静観設定情報43としてストレージ13に書き込まれてもよい。
【0054】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る静観候補特定装置10は、構成要素の寄与度を考慮して、構成要素間の構成の類似度を判定する。また、実施の形態1に係る静観候補特定装置10は、構成要素の構成の類似度だけでなく、負荷の類似度も考慮して、構成要素間の総合的な類似度を判定する。これにより、構成要素間の類似度を適切に判定することができる。その結果、静観候補を適切に特定可能である。
【0055】
具体例としては、サーバの構成要素の1つであるCPUの場合、クロック数が違う程度で大きな差が無いとしても、比較すると型番が異なるため、従来は別物であるとみなされた。一方で、同様の機能を持つソフトウェアであっても、ベンダーが異なる場合は、機能や脆弱性、未知や既知のバグが異なるため、障害発生に関しては大きな差となるが、従来は類似すると判定された。しかし、実施の形態1に係る静観候補特定装置10によれば、寄与度を考慮して構成の類似度を判定するとともに、負荷の類似度を考慮して総合的な類似度を判定するため、類似度を適切に判定することができる。
【0056】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、静観候補特定装置10の各部の機能がソフトウェアで実現された。変形例1として、静観候補特定装置10の各部の機能はハードウェアで実現されてもよい。この変形例1について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0057】
図14を参照して、変形例1に係る静観候補特定装置10の構成を説明する。
各部の機能がハードウェアで実現される場合、静観候補特定装置10は、プロセッサ11とメモリ12とストレージ13とに代えて、処理回路16を備える。処理回路16は、静観候補特定装置10の各部の機能と、メモリ12及びストレージ13の機能とを実現する専用の電子回路である。
【0058】
処理回路16は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)が想定される。
静観候補特定装置10は、処理回路16を代替する複数の処理回路を備えていてもよい。これら複数の処理回路により、全体として各部の機能が実現される。それぞれの処理回路は、処理回路16と同じように、専用の電子回路である。
【0059】
<変形例2>
変形例2として、一部の機能がハードウェアで実現され、他の機能がソフトウェアで実現されてもよい。つまり、静観候補特定装置10の各部のうち、一部の機能がハードウェアで実現され、他の機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0060】
プロセッサ11とメモリ12とストレージ13と処理回路16とを、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、各部の機能は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0061】
<変形例3>
障害検出部21と静観判定部22と負荷収集部23とについては、市販されているサーバ監視及びネットワーク監視といったツールを利用してもよい。
【0062】
実施の形態2.
実施の形態2では、比較元要素に関連する構成要素である関連要素と、比較先要素に関連する構成要素である関連要素とについても考慮して、構成類似度を計算する点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明する。
【0063】
***動作の説明***
図8のステップS22の処理が実施の形態1と異なる。
図9を参照して、実施の形態1に係るステップS22の構成類似計算処理を説明する。
(ステップS221:元情報読出処理)
構成類似計算部25は、実施の形態1と同様に、ステップS21で抽出された静観対象の対象とする構成要素の識別子であるホスト名を取得し、取得されたホスト名が示す構成要素を比較元要素とする。構成類似計算部25は、比較元要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。
また、構成類似計算部25は、構成情報45に含まれる関連情報47を参照して、比較元要素に関連する構成要素である関連要素を特定し、特定された関連要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。
【0064】
図15に示すように、関連情報47は、構成要素間の関連を示す情報である。
図15では、関連情報47は、関連元毎に、関連先と、関連種別とを有している。関連元は、関連元になる構成要素のIDである。関連先は、関連元に関連する構成要素のIDである。関連種別は、関連元に対する関連先の関係を示す情報である。関連種別は、具体例としては、関連先が関連元の一部である、関連先が関連元に依存している、関連元が関連先を所有している、多重化関係であるといったことを示す。また、関連種別は、関連を持った日時、関連を持たせた担当者といった情報を有していてもよい。
構成類似計算部25は、関連情報47の関連元から比較元要素のIDを検索して関連先のIDを読み出すことにより、関連先の構成要素を特定することができる。
【0065】
(ステップS222:先情報読出処理)
構成類似計算部25は、処理対象の比較先要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。また、構成類似計算部25は、関連情報47を参照して、処理対象の比較先要素に関連する構成要素である関連要素を特定し、特定された関連要素の構成情報45をストレージ13から読み出す。
【0066】
(ステップS223:寄与度読出処理)
構成類似計算部25は、実施の形態1と同様に、比較元要素の種別及び属性について、寄与情報46に含まれる寄与度をストレージ13から読み出す。また、構成類似計算部25は、ステップS221で特定された比較元要素に関連する関連要素の種別及び属性について、寄与情報46に含まれる寄与度をストレージ13から読み出す。
【0067】
(ステップS224:一致判定処理)
構成類似計算部25は、実施の形態1と同様に、比較元要素と、処理対象の比較先要素とについて属性毎に、値が一致するか否かを判定する。また、構成類似計算部25は、ステップS221で特定された比較元要素に関連する関連要素と、ステップS222で特定された比較先要素に関連する関連要素とについて属性毎に、値が一致するか否かを判定する。
【0068】
(ステップS225:類似度計算処理)
構成類似計算部25は、ステップS224で一致すると判定された属性について、ステップS223で読み出されたレコードの寄与度を用いて比較先要素についての構成類似度を計算する。
【0069】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る静観候補特定装置10は、比較元要素に関連する構成要素である関連要素と、比較先要素に関連する構成要素である関連要素とについても考慮して、構成類似度を計算する。これにより、構成要素間の類似度をより適切に判定することができる。