特許第6579996号(P6579996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6579996シート、テープおよび半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579996
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】シート、テープおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-94499(P2016-94499)
(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公開番号】特開2017-204526(P2017-204526A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍一
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−038098(JP,A)
【文献】 特開2009−283927(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/015817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層および前記基材層上に位置する粘着剤層を含むダイシングフィルムと、
前記粘着剤層上に位置する半導体裏面保護フィルムとを含み、
前記半導体裏面保護フィルムは、1.7kgf/mm以上のシリコンチップに対する25℃せん断接着力を有する、
シート。
【請求項2】
前記半導体裏面保護フィルムが、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂の前記熱硬化性樹脂に対する比の値が1以下である、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
はく離ライナーと、
前記はく離ライナー上に位置する、請求項1または2に記載のシートと
を含む、テープ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のシートの前記半導体裏面保護フィルムと半導体ウエハとをはりあわせる工程と、
前記半導体裏面保護フィルムを硬化させる工程と、
硬化後の前記半導体裏面保護フィルム上に位置する前記半導体ウエハをダイシングする工程と
を含む半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートと、テープと、半導体装置の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイシングフィルム一体型半導体裏面保護フィルムを用いる場合、ダイシングフィルム上に位置する半導体裏面保護フィルムと半導体ウエハとをはりあわせ、ダイシングすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−222896号公報
【特許文献2】WO2014/092200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレードダイシング時の衝撃や摩擦によりチップ側面に亀裂が入ることがある。チップ側面の亀裂―サイドウォールチッピング―は低減する必要がある。亀裂は外観を悪くし、信頼性を低下させるおそれがあるからである。
【0005】
本発明のある態様は、ダイシング時にチップ側面に生じる亀裂を低減可能なシートとテープとを提供することを目的とする。本発明のある態様は、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はシートに関する。シートはダイシングフィルムを含む。ダイシングフィルムは、基材層および基材層上に位置する粘着剤層を含む。シートは、粘着剤層上に位置する半導体裏面保護フィルムをさらに含む。半導体裏面保護フィルムは、1.7kgf/mm以上のシリコンチップに対する25℃せん断接着力を有する。25℃せん断接着力が1.7kgf/mm以上であるので、ダイシング時にチップ側面に生じる亀裂を低減できる。ダイシング時における半導体チップの振動を抑制可能なのだろう。25℃せん断接着力は、シリコンチップに半導体裏面保護フィルムを70℃で固定し、120℃2時間で加熱した後に、せん断速度500μm/sec、25℃で測定できる。
【0007】
本発明のある態様はテープに関する。テープは、はく離ライナーと、はく離ライナー上に位置するシートとを含む。
【0008】
本発明のある態様は、半導体装置の製造方法に関する。半導体装置の製造方法は、シートの半導体裏面保護フィルムと半導体ウエハとをはりあわせる工程を含むことができる。半導体装置の製造方法は、半導体裏面保護フィルムを硬化させる工程を含むことができる。半導体装置の製造方法は、硬化後の半導体裏面保護フィルム上に位置する半導体ウエハをダイシングする工程を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】テープの概略平面図である。
図2】テープの一部の概略断面図である。
図3】半導体装置の製造工程の概略断面図である。
図4】半導体装置の製造工程の概略断面図である。
図5】半導体装置の製造工程の概略断面図である。
図6】変形例3におけるシートの概略断面図である。
図7】シートとシートに固定されたウエハとの概略断面図であって、ダイシングブレードの切り込み深さを示したものである。
図8】ダイシング後におけるチップの側面図であって、ヒビの深さを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
実施形態1
図1に示すように、テープ1は、はく離ライナー13と、はく離ライナー13上に位置するシート71a、71b、71c、……、71m(以下、「シート71」と総称する。)とを含む。テープ1はロール状をなすことができる。シート71aとシート71bのあいだの距離、シート71bとシート71cのあいだの距離、……シート71lとシート71mのあいだの距離は一定である。
【0012】
はく離ライナー13はテープ状をなす。はく離ライナー13は、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0013】
図2に示すように、シート71はダイシングフィルム12を含む。ダイシングフィルム12は円盤状をなす。ダイシングフィルム12は、基材層121と、基材層121上に位置する粘着剤層122とを含む。基材層121は円盤状をなす。基材層121の両面は、第1主面と第1主面に対向した第2主面とで定義できる。基材層121の第1主面は粘着剤層122と接している。基材121の厚みは、たとえば50μm〜150μmである。基材121は、エネルギー線を透過する性質を有することが好ましい。粘着剤層122は円盤状をなす。粘着剤層122の両面は、第1主面と第1主面に対向した第2主面とで定義できる。粘着剤層122の第1主面は半導体裏面保護フィルム11と接している。粘着剤層122の第2主面は基材層121と接している。粘着剤層122の厚みは好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。粘着剤層122の厚みは好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。粘着剤層122を構成する粘着剤は、たとえばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤である。なかでもアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、たとえば(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体または共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤であることができる。
【0014】
粘着剤層122は第1部分122Aを含むことができる。第1部分は円盤状をなすことができる。第1部分122Aは半導体裏面保護フィルム11と接している。第1部分122Aは、第2部分122Bより硬い。第1部分122Aは、たとえばエネルギー線により硬化されていることができる。粘着剤層122は、第1部分122Aの周辺に配置された第2部分122Bをさらに含むことができる。第2部分122Bはドーナツ板状をなすことができる。第2部分122Bは、エネルギー線により硬化する性質を有することができる。エネルギー線として紫外線などを挙げることができる。第2部分122Bは、半導体裏面保護フィルム11と接していない。
【0015】
シート71は半導体裏面保護フィルム11を含む。半導体裏面保護フィルム11は円盤状をなす。半導体裏面保護フィルム11の両面は、第1主面と第1主面に対向した第2主面とで定義できる。半導体裏面保護フィルム11の第1主面は、はく離ライナー13と接している。半導体裏面保護フィルム11の第2主面は粘着剤層122と接している。
【0016】
半導体裏面保護フィルム11の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは6μm以上、特に好ましくは10μm以上である。半導体裏面保護フィルム11の厚みは、好ましくは200μm以下、より好ましくは160μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
【0017】
半導体裏面保護フィルム11は、1.7kgf/mm以上のシリコンチップに対する25℃せん断接着力を有する。25℃せん断接着力が1.7kgf/mm以上であるので、ダイシング時にチップ側面に生じる亀裂を低減できる。ダイシング時における半導体チップの振動を抑制可能なのだろう。25℃せん断接着力の下限は、たとえば1.8kgf/mmであることができる。25℃せん断接着力の上限は、たとえば4kgf/mm、3.5kgf/mm、3kgf/mmなどであることができる。25℃せん断接着力は、熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂に対する比などで調整できる。25℃せん断接着力は、シリコンチップに半導体裏面保護フィルム11を70℃で固定し、120℃2時間で加熱した後に、せん断速度500μm/sec、25℃で測定できる。より詳細には、25℃せん断接着力は、実施例に記載の方法で測定される。
【0018】
半導体裏面保護フィルム11は、好ましくは0.5kgf/mm以上のシリコンチップに対する100℃せん断接着力を有する。100℃せん断接着力が0.5kgf/mm以上であると、ダイシング時のチップ飛びや、リフロー時の半導体裏面保護フィルム11のはく離が生じ難い傾向があり、信頼性に優れる。100℃せん断接着力は、好ましくは1.0kgf/mm以上、より好ましくは2.0kgf/mm以上である。
【0019】
半導体裏面保護フィルム11は有色である。有色であると、ダイシングフィルム12と半導体裏面保護フィルム11とを簡単に区別できることがある。半導体裏面保護フィルム11は、たとえば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましい。黒色が特に好ましい。レーザーマークを視認しやすいからである。
【0020】
濃色とは、基本的には、L***表色系で規定されるL*が、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、さらに好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0021】
また、黒色とは、基本的には、L***表色系で規定されるL*が、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、さらに好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L***表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、たとえば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、より好ましくは−5〜5であり、特に−3〜3の範囲(中でも0またはほぼ0)であることが好適である。
【0022】
なお、L***表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L***表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L***)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L***表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0023】
半導体裏面保護フィルム11は、好ましくは着色剤を含む。着色剤は、たとえば、染料、顔料である。なかでも染料が好ましく、黒色染料がより好ましい。
【0024】
半導体裏面保護フィルム11における着色剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上である。半導体裏面保護フィルム11における着色剤の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0025】
半導体裏面保護フィルム11は樹脂成分を含むことができる。半導体裏面保護フィルム11における樹脂成分の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。半導体裏面保護フィルム11における樹脂成分の含有量は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0026】
樹脂成分は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含むことができる。熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂に対する比の値は、たとえば1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.2以下である。熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂に対する比の値の下限は、たとえば0.1、0.15などである。ここで、熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂に対する比は、熱可塑性樹脂含有量の熱硬化性樹脂含有量に対する重量比である。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはフッ素樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アクリル樹脂が好適である。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に、半導体チップを腐食させるイオン性不純物など含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、特に限定は無く、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、またはヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂もしくはグリシジルアミン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることができる。
【0030】
半導体裏面保護フィルム11は、25℃で液状のエポキシ樹脂と、25℃で固体状のエポキシ樹脂とを含むことができる。この場合、作業性に優れる。液状エポキシ樹脂の固体状エポキシ樹脂に対する比の値は、たとえば0.4以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上である。ここで、液状エポキシ樹脂の固体状エポキシ樹脂に対する比は、液状エポキシ樹脂含有量の固体状エポキシ樹脂含有量に対する重量比である。
【0031】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、たとえば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。フェノール樹脂は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0032】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、たとえば、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5当量〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8当量〜1.2当量である。
【0033】
半導体裏面保護フィルム11は、熱硬化促進触媒を含むことができる。たとえば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などである。
【0034】
半導体裏面保護フィルム11を予めある程度架橋させておくため、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基などと反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくことが好ましい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0035】
半導体裏面保護フィルム11は、充填剤を含むことができる。無機充填剤が好適である。無機充填剤は、たとえば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などである。充填剤は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカが好ましく、溶融シリカが特に好ましい。無機充填剤の平均粒径は0.1μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、たとえば、レーザー回折型粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0036】
半導体裏面保護フィルム11における充填剤の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。半導体裏面保護フィルム11における充填剤の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。
【0037】
半導体裏面保護フィルム11は、ほかの添加剤を適宜含むことができる。ほかの添加剤としては、たとえば、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0038】
シート71は、半導体装置を製造するために使用できる。
【0039】
図3に示すように、シート71と半導体ウエハ4とをはりあわせる。具体的には、ロールを用いて50℃〜100℃で半導体ウエハ4にシート71を圧着する。回路面と回路面に対向した裏面(非回路面、非電極形成面などとも称される)とで半導体ウエハ4の両面は定義できる。半導体ウエハ4はたとえばシリコンウエハである。
【0040】
半導体裏面保護フィルム11を加熱することにより半導体裏面保護フィルム11を硬化させる。たとえば、ダイシングフィルム12にヒーターをあて、ダイシングフィルム12越しに半導体裏面保護フィルム11を加熱することができる。たとえば120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上で加熱をおこなう。上限は、たとえば270℃、260℃などである。
【0041】
図4に示すように、ダイシングフィルム12を吸着台8に固定し、半導体ウエハ4を切断し、ボンディング前チップ5を形成する。すなわち、半導体ウエハ4をダイシングすることによりボンディング前チップ5を形成する。ボンディング前チップ5は、半導体チップ41と、半導体チップ41上に位置するダイシング後半導体裏面保護フィルム111とを含む。半導体チップ41の両面は、回路面と回路面に対向した面(裏面)とで定義できる。
【0042】
ボンディング前チップ5をニードルで突き上げ、ボンディング前チップ5をダイシングフィルム12から剥離する。
【0043】
図5に示すように、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)によりボンディング前チップ5を被着体6に固定する。具体的には、半導体チップ41の回路面が被着体6と対向する形態で、ボンディング前チップ5を被着体6に固定する。たとえば、半導体チップ41のバンプ51を被着体6の導電材(半田など)61に接触させ、押圧しながら導電材61を溶融させる。ボンディング前チップ5と被着体6との間には空隙がある。空隙の高さは一般的に30μm〜300μm程度である。固定後は、空隙などの洗浄をおこなうことができる。
【0044】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)などの基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、たとえば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板などが挙げられる。
【0045】
バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、たとえば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材などの半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。なお、導電材61の溶融時の温度は、通常260℃程度である。ダイシング後半導体裏面保護フィルム111がエポキシ樹脂を含むと、この温度に耐えることが可能である。
【0046】
ボンディング前チップ5と被着体6との間の空隙を封止樹脂で封止する。通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより封止樹脂を硬化させる。
【0047】
封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されない。封止樹脂としては、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物などが挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができる。封止樹脂の形状は、フィルム状、タブレット状などである。
【0048】
以上の方法により得られた半導体装置(フリップチップ実装の半導体装置)は、被着体6と、被着体6に固定された半導体チップ41と、半導体チップ41上に位置するダイシング後半導体裏面保護フィルム111とを含む。
【0049】
半導体装置のダイシング後半導体裏面保護フィルム111にレーザーで印字することが可能である。なお、レーザーで印字する際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。また、レーザーとしては、気体レーザー、個体レーザー、液体レーザーなどを利用することができる。具体的には、気体レーザーとしては、特に制限されず、公知の気体レーザーを利用することができるが、炭酸ガスレーザー(COレーザー)、エキシマレーザー(ArFレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、XeFレーザーなど)が好適である。また、固体レーザーとしては、特に制限されず、公知の固体レーザーを利用することができるが、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーなど)、YVOレーザーが好適である。
【0050】
フリップチップ実装方式で実装された半導体装置は、ダイボンディング実装方式で実装された半導体装置よりも、薄く、小さい。このため、各種の電子機器・電子部品またはそれらの材料・部材として好適に用いることができる。具体的には、フリップチップ実装の半導体装置が利用される電子機器としては、いわゆる「携帯電話」、「PHS」、小型のコンピュータ(たとえば、いわゆる「PDA」(携帯情報端末)、いわゆる「ノートパソコン」、いわゆる「ネットブック(商標)」、いわゆる「ウェアラブルコンピュータ」など)、「携帯電話」およびコンピュータが一体化された小型の電子機器、いわゆる「デジタルカメラ(商標)」、いわゆる「デジタルビデオカメラ」、小型のテレビ、小型のゲーム機器、小型のデジタルオーディオプレイヤー、いわゆる「電子手帳」、いわゆる「電子辞書」、いわゆる「電子書籍」用電子機器端末、小型のデジタルタイプの時計などのモバイル型の電子機器(持ち運び可能な電子機器)などが挙げられるが、もちろん、モバイル型以外(設置型など)の電子機器(たとえば、いわゆる「ディスクトップパソコン」、薄型テレビ、録画・再生用電子機器(ハードディスクレコーダー、DVDプレイヤーなど)、プロジェクター、マイクロマシンなど)などであってもよい。また、電子部品または、電子機器・電子部品の材料・部材としては、たとえば、いわゆる「CPU」の部材、各種記憶装置(いわゆる「メモリー」、ハードディスクなど)の部材などが挙げられる。
【0051】
変形例1
粘着剤層122の第1部分122Aは、エネルギー線により硬化する性質を有する。粘着剤層122の第2部分122Bもエネルギー線により硬化する性質を有する。変形例1では、ボンディング前チップ5を形成する工程の後に、粘着剤層122にエネルギー線を照射しボンディング前チップ5をピックアップする。エネルギー線を照射すると、ボンディング前チップ5のピックアップが容易である。
【0052】
変形例2
粘着剤層122の第1部分122Aはエネルギー線により硬化されている。粘着剤層122の第2部分122Bもエネルギー線により硬化されている。
【0053】
変形例3
図6に示すように、粘着剤層122の片面全体が半導体裏面保護フィルム11と接している。
【0054】
(そのほか)
変形例1〜変形例3などは、任意に組み合わせることができる。
【0055】
以上のとおり、実施形態1に係る半導体装置の製造方法は、シート71の半導体裏面保護フィルム11と半導体ウエハ4とをはりあわせる工程と、半導体裏面保護フィルム11を硬化させる工程と、硬化後の半導体裏面保護フィルム11上に位置する半導体ウエハ4をダイシングする工程とを含む。製造方法は、半導体ウエハ4をダイシングする工程で形成されたボンディング前チップ5をピックアップする工程をさらに含むことができる。製造方法は、ボンディング前チップ5を被着体6に固定する工程をさらに含むことができる。
【実施例】
【0056】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0057】
実施例1における半導体裏面保護フィルムの作製
アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス社製 SG−70L)の固形分―溶剤を除く固形分―100重量部に対して、エポキシ樹脂(三菱化学社製 jER YL980)20重量部と、エポキシ樹脂(東都化成社製 KI−3000)50重量部と、フェノール樹脂(明和化成社製 MEH7851−SS)75重量部と、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−25R 平均粒径0.5μm)180重量部と、染料(オリエント化学工業社製 OIL BLACK BS)10重量部と、触媒(四国化成社製 2PHZ)20重量部とをメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度23.6重量%の樹脂組成物の溶液を調製した。樹脂組成物の溶液をはく離ライナー(三菱樹脂社 ダイヤホイルMRA50 (シリコーン離型処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム))に塗布した。130℃で2分間乾燥させることにより、平均厚み20μmの半導体裏面保護フィルムを作製した。
【0058】
実施例1におけるシートの作製
ハンドローラーを用いてダイシングフィルム(日東電工社製 V−8−AR (平均厚み65μmの基材層と平均厚み10μmの粘着剤層とを有するダイシングフィルム))に半導体裏面保護フィルムをはりあわせることにより、実施例1のシートを得た。実施例1のシートは、ダイシングフィルムと、ダイシングフィルムの粘着剤層上に位置する半導体裏面保護フィルムとを有する。
【0059】
実施例2における半導体裏面保護フィルムの作製
アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス社製 SG−70L)の固形分―溶剤を除く固形分―100重量部に対して、エポキシ樹脂(三菱化学社製 jER YL980)140重量部と、エポキシ樹脂(東都化成社製 KI−3000)140重量部と、フェノール樹脂(明和化成社製 MEH7851−SS)290重量部と、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−25R 平均粒径0.5μm)470重量部と、染料(オリエント化学工業社製 OIL BLACK BS)10重量部と、触媒(四国化成社製 2PHZ)20重量部とをメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度23.6重量%の樹脂組成物の溶液を調製した。樹脂組成物の溶液をはく離ライナー(三菱樹脂社 ダイヤホイルMRA50 (シリコーン離型処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム))に塗布した。130℃で2分間乾燥させることにより、平均厚み20μmの半導体裏面保護フィルムを作製した。
【0060】
実施例2におけるシートの作製
ハンドローラーを用いてダイシングフィルム(日東電工社製 V−8−AR)に半導体裏面保護フィルムをはりあわせることにより、実施例2のシートを得た。実施例2のシートは、ダイシングフィルムと、ダイシングフィルムの粘着剤層上に位置する半導体裏面保護フィルムとを有する。
【0061】
比較例1における半導体裏面保護フィルムの作製
アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス社製 SG−70L)の固形分―溶剤を除く固形分―100重量部に対して、エポキシ樹脂(大日本インキ社製 HP―4700)10重量部と、フェノール樹脂(明和化成社製 MEH7851−H)10重量部と、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−25R 平均粒径0.5μm)70重量部と、染料(オリエント化学工業社製 OIL BLACK BS)10重量部と、触媒(四国化成社製 2PHZ)10重量部とをメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度23.6重量%の樹脂組成物の溶液を調製した。樹脂組成物の溶液をはく離ライナー(三菱樹脂社 ダイヤホイルMRA50 (シリコーン離型処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム))に塗布した。130℃で2分間乾燥させることにより、平均厚み20μmの半導体裏面保護フィルムを作製した。
【0062】
比較例1におけるシートの作製
ハンドローラーを用いてダイシングフィルム(日東電工社製 V−8−AR)に半導体裏面保護フィルムをはりあわせることにより、比較例1のシートを得た。比較例1のシートは、ダイシングフィルムと、ダイシングフィルムの粘着剤層上に位置する半導体裏面保護フィルムとを有する。
【0063】
シリコンチップの準備
東京化工社製のベアウエハを厚み0.7mmになるように研削した。研削ホイールは、Z1としてGF01−SD320−BT100−50、Z2としてBGT−270 IF−01−9−4/6−B−K09を用いた。表面ドライポリッシュのためにホイールDPW-018 DP-F05 450x11Tx60を用いた。研削後、ダイシングし、3mm×3mm×厚み0.7mmのシリコンチップAと、9.5mm×9.5mm×厚み0.7mmのシリコンチップBを得た。
【0064】
25℃せん断接着力
70℃のシリコンチップA(3mm×3mm×厚み0.7mm)に裏面保護フィルムをはりあわせ、裏面保護フィルムのはみ出しを切断し除いた。これにより、切断後裏面保護フィルムと、切断後裏面保護フィルムの第1面に接するシリコンチップAとから構成された構造を得た。切断後裏面保護フィルムの第2面に70℃のシリコンチップB(9.5mm×9.5mm×厚み0.7mm)をつけ、120℃2時間加熱した。これにより、シリコンチップAと、シリコンチップBと、シリコンチップAおよびシリコンチップBの間に位置する硬化後裏面保護フィルムとから構成された物体を得た。Dage社製シリーズ4000を用い、せん断速度500μm/sec、25℃で、シリコンチップAの側面に荷重をかけ、シリコンチップAと硬化後裏面保護フィルムとのせん断はく離に要した荷重を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
100℃せん断接着力
Dage社製シリーズ4000のステージ温度を100℃に設定し、ステージで物体―シリコンチップAと、シリコンチップBと、シリコンチップAおよびシリコンチップBの間に位置する硬化後裏面保護フィルムとから構成された物体―を1分間加熱したということ以外は、25℃せん断接着力と同じ方法で100℃せん断接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
チッピング
シートの半導体裏面保護フィルムにウエハ(裏面研磨処理された、直径8インチ厚み0.2mmのシリコンミラーウエハ)をロールで70℃で圧着した。シートに固定されたウエハをダイシングすることにより、ボンディング前チップを形成した。ボンディング前チップは、シリコンチップと、シリコンチップに固定されたダイシング後半導体裏面保護フィルムとを有する。図7に示すように、切込深さZ1―シリコンチップ表面からの深さ―が45μmとなるように調整した。切込深さZ2がダイシングテープの粘着剤層厚みの1/2までとなるように、切込深さZ2を調整した。
ダイシング条件
ダイシング装置:商品名「DFD−6361」ディスコ社製
ダイシングリング:「2−8−1」(ディスコ社製)
ダイシング速度:30mm/sec
ダイシングブレード:
Z1;ディスコ社製「203O−SE 27HCDD」
Z2;ディスコ社製「203O−SE 27HCBB」
ダイシングブレード回転数:
Z1;40,000r/min
Z2;45,000r/min
カット方式:ステップカット
チップサイズ:2.0mm角
【0067】
ボンディング前チップをダイシングフィルムから剥離した。マイクロスコープ(Keyence社製 VHX500)でシリコンチップの切断面―4つの切断面のうち最後に切断された面―を観察し、マイクロスコープでヒビの深さを測定した。図8に示すように、ヒビの深さは、半導体裏面保護フィルムとシリコンチップとの界面からの深さである。シリコンチップの厚み100%に対してヒビの深さが10%未満であるときは◎と判定した。ヒビの深さが30%未満であるときは○と判定した。ヒビの深さが30%以上であるときは×と判定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【符号の説明】
【0069】
1 テープ
11 半導体裏面保護フィルム
12 ダイシングフィルム
121 基材層
122 粘着剤層
122A 第1部分
122B 第2部分
13 はく離ライナー
71 シート
【0070】
4 半導体ウエハ
5 ボンディング前チップ
6 被着体
8 吸着台
41 半導体チップ
51 バンプ
61 導電材
111 ダイシング後半導体裏面保護フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8