(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不純物を含むジフルオロリン酸塩と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物及びハロゲン化物並びにアミン類からなる群より選択される少なくとも1種類の処理剤とを混合し、該不純物を分離する工程を有するジフルオロリン酸塩の精製方法であって、
前記精製方法において、前記不純物と前記処理剤とを混合して塩又は錯体を形成させた後、ろ過によりこの塩又は錯体をろ別するジフルオロリン酸塩の精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のジフルオロリン酸塩の精製方法を、その好ましい実施形態に基づいて詳述するが、本発明はこれらの内容に限定されない。
本発明のジフルオロリン酸塩の精製方法は、不純物を含むジフルオロリン酸塩と処理剤とを混合して反応させ、該不純物を分離する工程を有する。
【0020】
本発明に用いるジフルオロリン酸塩は、公知の方法で製造できる。
【0021】
ジフルオロリン酸塩の精製に用いる処理剤としては、
1)塩類
2)アミン類
より選択される少なくとも1種を使用することができる。
処理剤は、市販されているグレードのものであれば特に制限無く使用することができる。
【0022】
塩類としては、具体的にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、又はハロゲン化物等が挙げられる。
【0023】
アルカリ金属としては、具体的に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウムが挙げられる。入手の容易さ及びコストの優位性の観点から選択すれば、リチウム、ナトリウム、又はカリウムが好ましい。
【0024】
アルカリ土類金属としては、具体的に、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムが挙げられる。入手の容易さ、コストの優位性及び安全性の観点から選択すれば、マグネシウム、又はカルシウムが好ましい。
【0025】
アミン類としては、ポリ(4−ビニルピリジン)、トリエチルアミン、又はN,N,N´,N´,−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0026】
ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物が挙げられる。副生物除去の容易さから選択すれば、フッ化物、又は塩化物が好ましい。
【0027】
処理剤としては、アルカリ金属の炭酸塩、水酸化物、又はハロゲン化物が好ましく、更には、リチウム金属の炭酸塩、水酸化物、又はハロゲン化物がより好ましい。その中でも処理できる酸の種類、入手の容易性、アルカリの強さ等を考慮すると、炭酸塩>水酸化物>ハロゲン化物の順に好ましい。
【0028】
本発明の精製方法において、ジフルオロリン酸塩と処理剤と混合(接触)は無溶媒条件下で行われてもよく、また、適切な溶媒存在下で行われてもよい。溶媒を用いる場合、ジフルオロリン酸塩及び処理剤はそれぞれ溶解していない状態でもよく、それぞれ溶解している状態でもよく、一方のみが溶解している状態でもよい。均一性及び処理操作の観点からジフルオロリン酸塩のみ溶解する溶媒を用いることが好ましい。
【0029】
前記溶媒としては反応に関与しないものであれば特に限定されないが、例えば、炭酸エステル類、エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド化合物、アルコール類、又はアルカン類等の有機溶媒が挙げられる。より具体的には、以下のものが挙げられる。
【0030】
炭酸エステル類としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられ、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、又はプロピレンカーボネートが挙げられる。
エステル類(すなわち炭酸エステル類以外のエステル類)としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸のアルキルエステルが挙げられる。アルキル基中の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が一層好ましい。特に酢酸エチル及び酢酸ブチルが好ましく挙げられる。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル及びリン酸トリエチル等のリン酸のトリアルキルエステルや、亜リン酸トリメチル又は亜リン酸ジエチルメチル等の亜リン酸のトリアルキルエステルが挙げられる。リン酸及び亜リン酸のアルキル基中の炭素原子数は、1以上5以下が好ましく、1以上3以下が更に好ましい。また、リン酸及び亜リン酸のアルキル基の構成は、同じアルキル基の組み合わせでもよく、異なるアルキル基の組み合わせでもよい。同じアルキル基の組み合わせとしては、例えば、全てメチル基である組み合わせ、全てエチル基である組み合わせ、全てプロピル基である組み合わせが挙げられる。また異なるアルキル基の組み合わせとしては、1つのメチル基と2つのエチル基の組み合わせ、1つのエチル基と2つのメチル基の組み合わせ、1つのメチル基と2つのプロピル基の組み合わせ、1つのプロピル基と2つのメチル基の組み合わせ、1つのエチル基と2つのプロピル基の組み合わせ、1つのプロピル基と2つのエチル基の組み合わせ等が挙げられる。 エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、又は2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられ、好ましくはジメトキシエタンが挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。
アミド化合物としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルキルアルコールが挙げられる。アルキル基中の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が一層好ましい。
アルカン類としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖式飽和炭化水素が挙げられる。飽和炭化水素中の炭素原子数は、5以上12以下が好ましく、5以上10以下が更に好ましく、6以上8以下が一層好ましい。
【0031】
前記の有機溶媒の中では、電池用の電解液添加剤、特に二次電池用電解液の添加剤としての利用や、溶媒中へ残留する可能性等の観点から、炭酸エステル類、エステル類、又はエーテル類が好ましい。
【0032】
有機溶媒は一種類のものを単独で使用してもよく、又は、2種類以上のものを混合して用いても良い。2種類以上を用いる場合は、ジフルオロリン酸塩の良溶媒と貧溶媒とを任意の割合で混合するか、電池で使用する電解液と同じ組成とすることが好ましい。
【0033】
本発明の精製方法において、処理剤の添加方法は特に限定されず、一括添加してもよく、逐次添加してもよく、分割添加してもよく、また任意の有機溶媒との混合添加をしてもよい。その中でも、操作の簡略化及び容易さの観点から、一括添加、又は混合添加が好ましい。
【0034】
本発明の精製方法において、不純物を含むジフルオロリン酸塩と処理剤の仕込み量は、不純物中の遊離酸分(酸性不純物)の含有量にも依存するが、任意に設定することができる。処理剤は、反応後に残存した過剰量をろ過やデカンテーション等の操作により簡便に除去できることから、特に限定されないが、ジフルオロリン酸塩に対して1〜300wt%の添加量が好ましい。精製操作の容易性の観点から、1〜100wt%とすることが好ましく、特に好ましくは1〜50wt%とすることである。
【0035】
本発明の精製方法において、ジフルオロリン酸塩と処理剤の反応温度は、任意に設定することができ、特に限定されないが、−50〜150℃が好ましい。更には、0〜100℃が好ましく、特に好ましくは20〜80℃である。
【0036】
本発明の精製方法において、溶媒を用いて温度をかける場合、還流をかけることがより好ましい。
【0037】
還流塔の塔底の制御温度は−50〜20℃が好ましく、更には、−40〜10℃がより好ましく、特に好ましくは−30〜5℃である。
【0038】
本発明の精製方法において、ジフルオロリン酸塩と処理剤の接触は、大気圧下で行っても、減圧下で行っても、加圧下で行ってもよく、その中でも操作の容易性の観点から大気圧条件下で行うことが好ましい。
【0039】
本発明の精製方法において、ジフルオロリン酸塩と処理剤の反応時間は、任意に設定することができ、特に限定されないが、5分〜100時間が好ましい。更には、30分〜50時間が好ましく、特に好ましくは1〜24時間である。
【0040】
本発明の精製方法では、前記不純物、特に該不純物中の遊離酸分(酸性不純物)と前記処理剤とを混合して塩又は錯体を形成させた後、この塩又は錯体をさらなる精製工程に付すこともできる。精製方法として、特に限定されず、例えばろ過やデカンテーションのように析出した塩又は錯体を取り除く手法や、クロマトグラフィーのように相互作用により分離する手法や、過剰の炭酸塩や水酸化物をフッ化水素等の酸との反応により中和する手法等を用いることができる。
【0041】
本発明の精製方法により得られるジフルオロリン酸塩は、リチウムイオン二次電池の非水電解液用添加剤や、機能性材料中間体及び医薬品用中間体等に使用することができる。以下、本発明の精製方法により得られるジフルオロリン酸塩の実施形態の一つであるリチウムイオン二次電池の非水電解液用添加剤及びこれを用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
【0042】
本発明の二次電池用非水電解液は、非水溶媒中に少なくともヘキサフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を含み、該ジフルオロリン酸塩の少なくとも一部が、本発明の精製方法によって精製されたジフルオロリン酸塩(以下、本発明のジフルオロリン酸塩ともいう)であることを特徴とする。ヘキサフルオロリン酸塩は、電解質塩として用いられる。
【0043】
本発明の非水電解液で用いられるジフルオロリン酸塩において、本発明のジフルオロリン酸塩の割合は、好ましくは5〜100wt%、より好ましくは50〜100wt%である。
また、本発明のジフルオロリン酸塩は、不純物の含有量が、1wt%以下であり、好ましくは0.8wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下となるように精製されている。
より具体的には、遊離酸分(酸性不純物)が、好ましくは0.5wt%以下であり、より好ましくは0.2wt%以下であり、最も好ましくは0.1wt%以下である。また、不溶解残分が、好ましくは1wt%以下であり、より好ましくは0.5wt%以下であり、最も好ましくは0.3wt%以下である。
【0044】
本発明の非水電解液において、ジフルオロリン酸塩の含有量は、非水電解液中、0.01〜20.0wt%が好ましく、0.05〜15.0wt%がより好ましく、0.10〜10.0wt%が最も好ましい。
【0045】
本発明の非水電解液で用いられる非水溶媒としては、ジフルオロリン酸塩を溶解できる溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ラクトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン類等が使用できるが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。また、単一ではなく、二種類以上の混合溶媒でもよい。
【0046】
また、本発明の非水電解液において、前記の非水溶媒に溶解する電解質塩としては、少なくともヘキサフルオロリン酸塩、リチウムイオン二次電池の場合は、LiPF
6を含んでいればよく、その他、リチウム塩としては、LiPO
2F
2、LiBF
4、LiClO
4、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、LiCF
3SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(FSO
2)
3、LiCF
3CO
2、LiB(CF
3SO
3)
4、LiB(FSO
3)
4、LiB(C
2O
4)
2、LiBF
2(C
2O
4)等を用いることができる。
【0047】
前記非水溶媒中における前記電解質塩の含有量は、好ましくは20.0〜80.0wt%の範囲、更に好ましくは40.0〜60.0wt%の範囲にすることが好ましい。
【0048】
本発明の非水電解液は、一次電池又は二次電池のどちらの電池の非水電解液としても使用できるものであるが、リチウムイオン二次電池を構成する非水電解液として用いることが好ましい。以下、本発明の非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池(以下、本発明の非水電解液二次電池ともいう)について説明する。
【0049】
本発明の非水電解液二次電池の正極は、正極活物質、結着材、導電材等を溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥後、プレスしたもの等が用いられる。
【0050】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができ、その電位が貴な材料であれば特に限定されず、一般に使用されている公知の正極活物質を用いることができる。例えば、金属酸化物や金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属リン酸化合物等の金属化合物が挙げられる。
また、金属層間化合物等の層状構造や、スピネル型構造や、オリビン型構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を使用することができる。
遷移金属元素としては、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、及び鉄等から選択される少なくとも1種の金属を含有するものが好ましい。
更に、これらの遷移金属元素に、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、チタンを添加又は置換した遷移金属複合酸化物であってもよい。
正極活物質としては、高エネルギー密度の非水電解液二次電池を得るために、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を用いることが好ましく、具体的には、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・コバルト・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト・ニッケル・アルミニウム複合酸化物等を好ましいものとして挙げることができる。正極活物質、導電材、及び結着材の合計量に対する、正極活物質の含有量は、好ましくは10.0〜99.9wt%、より好ましくは50.0〜98.0wt%である。
【0051】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ニードルコークス、黒鉛等が挙げられ、中でも、アセチレンブラック、黒鉛が好ましい。
正極活物質、導電材、及び結着材の合計量に対する、導電材の含有量は、好ましくは0.05〜50.0wt%、より好ましくは1.0〜30.0wt%である。
【0052】
結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF) 、力ルボキシメチルセルロース(CMC) 、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(BR)等が挙げられ、中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、力ルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が好ましい。
正極活物質、導電材、及び結着材の合計量に対する、結着材の含有量は、好ましくは0.05〜50.0wt%、より好ましくは1.0〜30.0wt%である。
【0053】
スラリー化する溶媒としては、例えば、水、アルコール等の水系溶媒や、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等の有機系溶媒が挙げられ、水系溶媒としては水、有機系溶媒としてはNMPが好ましい。溶媒の使用量は、正極活物質100質量部に対し、20.0〜90.0質量部が好ましく、30.0〜80.0質量部が更に好ましい。
【0054】
正極の集電体には、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルや銅の鋼材を使用できる。
【0055】
本発明の非水電解液二次電池の負極は、正極と同様、負極活物質、結着材、導電材等を溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥後、プレスしたもの等が用いられる。
【0056】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料であれば特に限定されず、一般に使用されている公知の負極活物質を用いることができる。
例えば、金属リチウム、リチウム−シリコン合金、リチウム−スズ合金等のリチウム合金、スズ−シリコン合金、リチウム−チタン合金、スズ−チタン合金、チタン酸化物等のスズ系若しくはチタン系化合物、炭素材料、導電性ポリマー等を用いることができる。
炭素材料としては、黒鉛(天然、人造)、コークス(石油性、石炭性)、フラーレン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、有機物焼成体等の炭素材料を挙げることができる。
スズ系若しくはチタン系化合物としては、SnO
2、SnO、TiO
2等の電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物を用いることができる。
負極活物質としては、特に、リチウムの吸蔵及び放出に伴う体積変化が少なくて可逆性に優れる結晶性黒鉛等の炭素材料を用いることが好ましい。
【0057】
負極の結着剤、導電材、スラリー化する溶媒については、上記正極で挙げたものと同様のものを同様(含有量等)に用いることができる。
【0058】
負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等を使用できる。
【0059】
また、正極と負極の間には、短絡を防止するためのセパレーター(多孔膜)を介在させることが好ましい。この場合、非水電解液はセパレーターに含浸させて用いる。多孔膜の材質や形状は、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば、特に制限はなく、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が好ましい。
【0060】
多孔性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、これらの共重合体や混合物等が挙げられる。
【0061】
前記構成からなる本発明の非水電解液二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型、パウチ型等、種々の形状とすることができる。例えば、コイン型の形状として、
図1に示す形状が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、かかる実施例に限定されるものではない。生成物の純度はイオンクロマトグラフィーによりアニオン分析を行い、ジフルオロリン酸イオンの相対面積比により定量した。遊離酸分(酸性不純物)はNaOHを用いた中和滴定によりHF換算で定量した。不溶解残分は1,2−ジメトキシエタンに溶解させ、ポリテトラフルオロエチレンメンブレンフィルターでろ過し、不溶解残分量を測定した。[実施例6]、[実施例7]についての不溶解残分量は所定量のろ液若しくは上澄み液を1,2−ジメトキシエタンでメスアップし、ポリテトラフルオロエチレンメンブレンフィルターでろ過し、不溶解残分量を測定した。
【0063】
[実施例1]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
ジフルオロリン酸塩を特開2015−044701号公報記載の実施例2の方法を参考として、以下のように合成を行った。
500mLのPFA製ボトルに顆粒状のヘキサフルオロリン酸リチウム100.1g(0.66mol)を入れたものを、窒素ガスでシールしながら振とう機にセットし、その上で純水27.4g(1.52mol)と塩化チオニル259.7g(2.18mol)をそれぞれ0.2g/min、1.7g/minの速度で導入し、25℃で22時間反応を行った。得られた結晶を120℃の乾燥機中で窒素気流下乾燥し、粗ジフルオロリン酸リチウムを60.2g得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で88%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.161wt%、不溶解残分は5.56wt%であった。
【0064】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、酢酸エチル650gを内容積1Lのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、炭酸リチウム5gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、42gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は55ppm、不溶解残分は849ppmであった。
【0065】
[実施例2]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にして58.9gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で85%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は3.70wt%、不溶解残分は5.15wt%であった。
【0066】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、炭酸リチウム10gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、45gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は60ppm、不溶解残分は337ppmであった。
【0067】
[実施例3]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム63gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で84%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.155wt%、不溶解残分は5.48wt%であった。
【0068】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、水酸化リチウム2gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、45gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は884ppm、不溶解残分は1209ppmであった。
【0069】
[実施例4]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム59gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で89%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.128wt%、不溶解残分は4.73wt%であった。
【0070】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、フッ化リチウム20gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、45gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は675ppm、不溶解残分は823ppmであった。
【0071】
[実施例5]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム62gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で91%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.238wt%、不溶解残分は5.28wt%であった。
【0072】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、ポリ(4−ビニルピリジン)20gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、45gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は267ppm、不溶解残分は918ppmであった。
【0073】
[実施例6]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム58gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で87%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は4.72wt%、不溶解残分は6.89wt%であった。
【0074】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、炭酸リチウム10gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。得られたろ液(ジフルオロリン酸リチウムを20wt%含有)を分析したところ遊離酸分(酸性不純物)はジフルオロリン酸リチウムに対して34ppmであった。また、不溶解残分は430ppmであった。
【0075】
[実施例7]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム61gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で82%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.182wt%、不溶解残分は4.64wt%であった。
【0076】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記ジフルオロリン酸リチウム50g、1,2−ジメトキシエタン200gを内容積500mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、炭酸リチウム10gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液を静置することで炭酸リチウムを沈降させた。炭酸リチウムを含まない上澄み液を分取し、得られた液(ジフルオロリン酸リチウムを20wt%含有)を分析したところ遊離酸分(酸性不純物)は観測されず、不溶解残分は2790ppであった。
【0077】
[実施例8]
<ジフルオロリン酸リチウムの調製>
前記実施例2に記載の精製後のジフルオロリン酸リチウム6gに対してリン酸二水素リチウムを0.04g添加して遊離酸分(酸性不純物)を測定したところ0.014wt%であった。
【0078】
<ジフルオロリン酸リチウムの精製>
前記調製ジフルオロリン酸リチウム5g、1,2−ジメトキシエタン20gを内容積100mlのナスフラスコに容れ、1L/minで窒素シールしながら60℃に設定した恒温槽内に30min保持した。その後、炭酸リチウム1gをナスフラスコ内に添加し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却し、続いて得られた混合液をメンブレンフィルターでろ過した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてろ液から溶媒を留去したところ、4gの白色結晶のジフルオロリン酸リチウムが得られた。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で99%以上であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は24ppm、不溶解残分は510ppmであった。
【0079】
[比較例1]
<ジフルオロリン酸リチウムの合成>
前記実施例1と同様にしてジフルオロリン酸リチウム120gを得た。得られた結晶をイオンクロマトグラフィーにて分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で88%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は0.566wt%、不溶解残分は6.25wt%であった。
【0080】
ジフルオロリン酸塩を特開2015−013795号公報記載の実施例1の方法を参考として、以下のように精製処理を行った。
前記ジフルオロリン酸リチウム100gを内容積250mLのPFA容器に容れ、1L/minで窒素フローさせながら130℃設定した恒温槽内に1時間保持した。その後、130℃の恒温槽内に保持したまま、通気ガスを窒素のみから40体積%のHFを含む窒素ガスに切り替え、その流量を10L/minとした。HFを含む窒素ガスの通気は1時間行った。更に、通気ガスを再び流量1L/minの窒素ガスに切り替えた。窒素ガスの通気は130℃に保持したまま10時間行った。その後、室温まで冷却した。これにより白色結晶のジフルオロリン酸リチウム93gを得た。精製後のジフルオロリン酸リチウムをイオンクロマトグラフィーで分析したところジフルオロリン酸リチウムの純度は相対面積で79%であった。また、遊離酸分(酸性不純物)は3979ppm、不溶解残分は121149ppmであった。
【0081】
【表1】
【0082】
<電池評価>
ジフルオロリン酸塩を含む非水電解液を用いた非水電解液二次電池について、添加効果を確認するための評価試験を実施した。
【0083】
本発明の評価試験では、ジフルオロリン酸リチウムを含む電解液を用い、パウチ型セルの非水電解液二次電池を作製した。以下、具体的に説明する。
【0084】
[実施例9]
<LiCoO
2正極の作製>
正極活物質としてLiCoO
2 93質量部、導電材としてアセチレンブラック 4質量部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部を混合して、正極材料とした。この正極材料をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリー状とした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体の片面に塗布し、乾燥後、プレス成型してLiCoO
2正極を作製した。
【0085】
<黒鉛負極の作製>
負極活物質として人造黒鉛97.0質量部、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)2.0質量部、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)1.0質量部を混合して、負極材料とした。この負極材料を水に分散させてスラリー状とした。このスラリーを銅製の負極集電体の片面に塗布し、乾燥後、プレス成型して黒鉛負極を作製した。
【0086】
<電池の組み立て>
ここで、前記のパウチ型セルにおいて、上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレーターを負極、セパレーター、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウムの両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に、正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、パウチ型電池を作製した。
【0087】
<電解液調製>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)をEC:EMC=3:7の体積比で混合した非水溶媒に、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を1.1mol/Lの割合で溶解させた溶液に、実施例1で精製したジフルオロリン酸リチウムを溶液に対して1wt%添加し、非水電解液を調製し、前記の手順にてパウチ型セルの非水電解液二次電池を作製した。
【0088】
[比較例2]
実施例1で精製前のジフルオロリン酸リチウムを用いて非水電解液を調製した以外は実施例8と同様の方法で、パウチ型セルの非水電解液二次電池を作成した。
【0089】
<電池の評価>
作製した各非水電解液二次電池を、それぞれ25℃において0.2Cに相当する定電流で4.2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cになるまで定電圧充電させた後、0.2Cの定電流で2.7Vになるまで放電させて、初期放電容量を求めた。その後、同条件で、もう2サイクル充放電を行い、電池を安定させた。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、5Cとはその5倍の電流値を、0.1Cとはその1/10の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0090】
<−10℃でのインピーダンスの評価>
初期放電容量を評価し、安定化させた電池を25℃にて0.2Cの定電流で4.2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流値が0.02Cになるまで定電圧充電させた後、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるように放電した。これを−10℃において10mVの交流電圧振幅を印加することで電池のインピーダンスを測定し、0.03Hzの実軸抵抗を求めた。評価結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2から、各非水電解液二次電池において、精製処理を行い遊離酸分、不溶解残分を低減することにより抵抗値の低下が確認された。