特許第6580156号(P6580156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6580156電気機械装置、モータ制御装置及び回転制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580156
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】電気機械装置、モータ制御装置及び回転制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20190912BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20190912BHJP
   G05G 1/08 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H02P6/08
   H02P6/16
   G05G1/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-550060(P2017-550060)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081948
(87)【国際公開番号】WO2017082072
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-219460(P2015-219460)
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】都 軍安
(72)【発明者】
【氏名】木村 渉
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130596(JP,A)
【文献】 特開2015−116626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/08
G05G 1/08
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を含み、制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータと、
前記回転軸の角度位置を検知する回転センサと、
前記回転センサで検知された角度位置に応じて前記回転軸の回転速度を制御するモータ制御部と、
を備え、
前記モータ制御部は、
前記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、
前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、
前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する
電気機械装置。
【請求項2】
前記モータ制御部は、記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が前記正規回転開始位置であると判断した場合に、前記絶対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する
請求項1に記載の電気機械装置。
【請求項3】
前記相対パターンと前記絶対パターンとで、
最大目標回転速度および当該最大目標回転速度に達する迄の加速度が同じである
請求項1または請求項2に記載の電気機械装置。
【請求項4】
前記相対パターンにおける前記相対目標回転速度の増加開始角度位置は、前記絶対パターンにおける前記絶対目標回転速度の増加開始角度位置より大きく、且つ、
前記相対パターンにおける前記相対目標回転速度の前記最大目標回転速度からの減少開始角度位置は、前記絶対パターンにおける前記絶対目標回転速度の前記最大目標回転速度からの減少開始角度位置より大きい
請求項3に記載の電気機械装置。
【請求項5】
前記相対パターンは、前記絶対パターンを用いて生成される。
請求項4に記載の電気機械装置。
【請求項6】
前記相対パターンと前記絶対パターンとは同じ形をしている。
請求項5に記載の電気機械装置。
【請求項7】
操作ノブと、
前記回転軸の回転に伴って所定の経路に沿って前記操作ノブを移動させる移動機構と、
をさらに備え、前記操作ノブによりトランスミッションを切り替える、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械装置。
【請求項8】
前記相対パターンおよび前記絶対パターンは、
前記操作ノブの正規回転開始位置から正規回転終了位置の間の目標位置到達時間、騒音、停止精度および駆動電流の全ての要求仕様を達成できるように規定されている
請求項に記載の電気機械装置。
【請求項9】
回転軸を含み、制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータを制御するモータ制御装置であって、
前記回転軸の角度位置を検知する回転センサと、
前記回転センサで検知された角度位置に応じて前記回転軸の回転速度を制御するモータ制御部と、
を備え、
前記モータ制御部は、
前記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、
前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、
前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する
モータ制御装置。
【請求項10】
回転軸を含み、制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータの回転速度を制御するモータ制御方法であって、
前記回転軸の角度位置を検知する回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、
前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、
前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械装置、モータ制御装置及び回転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータを搭載した電気機械装置は、モータの回転軸の回転によって種々の部材を動かす。例えば、車両に搭載された、電気機械装置の一種であるシフト装置は、操作ノブの操作によってトランスミッションを切り替える。そのような電気機械装置には、イグニッションスイッチがオンになると、操作パネルと面一に収納されている操作ノブが操作パネルから突出するものがある。操作ノブの移動は、モータの回転を並進移動に変換して行われる。操作ノブは、車両の運転に必要であるから、決められた時間内に定位置へ移動させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、動作開始時に一定の割合で駆動デューティ比を上昇させてソフトスタートを行い、目標速度よりも低く設定されたソフトスタート終了判定速度に達したら、定速度制御に移行する。この速度制御には、モータを加速する際に、モータの駆動制御出力値と駆動電流との関係をマップ化した一つの制御パターンを用いて、その実駆動電流制御出力値とその時の駆動電流を検出して、マップに基づいた駆動電流の出力値とを判定値として比較することで、速度制御することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、移動時は高速で一定速度で動き、停止時に速やかに静かに停止するモータ制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−345294号公報
【特許文献2】特開2007−209179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の技術では、操作ノブを移動範囲の上端または下端から動作を開始する場合には前述したマップ化した1つのパターン等を用いて速度制御を行っても問題はない。しかしながら、操作ノブが移動中に外力が加えられる等の要因によって停止し、その後に移動を再開する場合、上記パターンで規定された正規移動開始位置に対応した目標速度をそのまま用いると、移動再開位置において、通常の移動開始時の速度より早い速度で移動開始が行われることになる。また、移動開始位置において、移動開始時に求められる加速カーブ特性を得られない。
【0007】
そのため、操作ノブの移動再開時の速度追従誤差が大きくなると共に、大電流が流れ、駆動回路に高い性能が要求されてしまうという問題がある。また、操作ノブの移動再開時に大きなトルクが印加され、電気機械装置内のギアなどの部材の衝突音が発生してしまうという問題がある。人間が近くにいる環境や、閉鎖された静かな環境では、小さな衝突音も騒音に感じられる場合がある。そこで、電気機械装置の移動再開時のわずかな音も抑制したいという要求が存在する。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中間開始位置から回転を再開する場合でも、適切な目標回転速度を用いて回転制御を行うことができる電気機械装置、モータ制御装置及び回転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の電気機械装置は、回転軸を含み、制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータと、前記回転軸の角度位置を検知する回転センサと、前記回転センサで検知された角度位置に応じて前記回転軸の回転速度を制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、前記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、
前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する。
【0010】
この構成によれば、前記回転軸の回転開始位置が中間開始位置である場合(すなわち、前記回転軸の回転を途中に停止して再開する場合)に、前記正規回転開始位置を基準として規定された絶対パターンを用いずに、前記中間開始位置を基準とした前記相対パターンを用いて、目標回転速度(相対目標回転速度)を規定する。そのため、前記相対パターンとして適切なパターンを規定することで、中間開始位置において、絶対パターンで規定された高速な絶対目標回転速度が用いられることはなく、低速な相対目標回転速度を用いて、大電流が流れることを防止すると共に速度追従誤差を小さくする。また、駆動回路の要求仕様を低くすることができる。また、回転軸にギアなどが連結されている場合に、急激に大きなトルクが生じてギアが高速で回転開始することを抑制でき、衝突音を抑えることができる。すなわち、中間開始位置において絶対パターンを用いると、開始時の加速度カーブ特性が不十分であり、初期の目標回転速度が大きくなってしまうが、本発明によれば、このような課題を解決できる。
【0011】
また、この構成によれば、前記相対パターンを用いて回転制御を行っている間に、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度が前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさなくなると、前記絶対パターンを用いるようにモータ制御を切り変える。そのため、前記相対目標回転速度が前記絶対目標回転速度に達した後は、前記回転軸の回転が途中で停止しなかった場合と同じ目標回転速度にすることができる。これにより回転停止位置付近の目標回転速度を一定にできる。
【0012】
好適には本発明の電気機械装置の前記モータ制御部は、前記前記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が前記正規回転開始位置であると判断した場合に、前記絶対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する。
【0013】
この構成によれば、前記回転軸の回転開始位置が前記正規回転開始位置である場合に、前記相対パターンを用いることなく、前記絶対パターンを用いて、前記モータを制御できる。
【0014】
好適には本発明の電気機械装置は、前記相対パターンと前記絶対パターンとで、最大目標回転速度および当該最大目標回転速度に達する迄の加速度が同じである。
この構成によれば、前記相対モードと前記絶対モードとの間で切り換えを行っても、目標回転速度の変化を滑らかにできる。
【0015】
好適には本発明の電気機械装置は、前記相対パターンにおける前記相対目標回転速度の増加開始角度位置は、前記絶対パターンにおける前記絶対目標回転速度の増加開始角度位置より大きく、且つ、前記相対パターンにおける前記相対目標回転速度の前記最大目標回転速度からの減少開始角度位置は、前記絶対パターンにおける前記絶対目標回転速度の前記最大目標回転速度からの減少開始角度位置より大きい。
この構成によれば、前記中間開始位置において、前記絶対パターンで規定された絶対目標回転速度より低速な相対目標回転速度を用いることができ、大電流が流れることを防止すると共に速度追従誤差を小さくできる。
【0016】
好適には本発明の電気機械装置は、前記相対パターンは、前記絶対パターンを用いて生成される。
この構成によれば、絶対パターンを用いて、前記相対パターンを生成することができ、簡単かつ安価な構成で実現できる。
【0017】
好適には本発明の電気機械装置は、前記相対パターンと前記絶対パターンとは同じ形をしている。
この構成によれば、絶対パターンを用いて、前記相対パターンを生成することができ、簡単かつ安価な構成で実現できる。
【0018】
好適には本発明の電気機械装置は、操作ノブと、前記回転軸の回転に伴って所定の経路に沿って前記操作ノブを移動させる移動機構と、をさらに備え、前記操作ノブによりトランスミッションを切り替える。
この構成によれば、操作ノブが移動機構により移動中に外力などが加わり途中で停止し、再度、移動を開始する場合に、大電流が流れることを防止できる。また、移動機構に急激な回転等が生じて衝突音が生じることを抑制できる。
【0019】
好適には本発明の電気機械装置の前記相対パターンおよび前記絶対パターンは、前記操作ノブの正規回転開始位置から正規回転終了位置の間の目標位置到達時間、騒音、停止精度および駆動電流の全ての要求仕様を達成できるように規定されている。
【0020】
本発明のモータ制御装置は、回転軸を含み制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータを制御するモータ制御装置であって、前記回転軸の角度位置を検知する回転センサと、前記回転センサで検知された角度位置に応じて前記回転軸の回転速度を制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、前記回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する。
【0021】
本発明のモータ制御方法は、回転軸を含み制御に応じた角度位置に向かうトルクを前記回転軸に印加するモータの回転速度を制御するモータ制御方法であって、前記回転軸の角度位置を検知する回転センサの検知結果を基に、前記回転軸の回転開始位置が予め決められた正規回転開始位置であるか否かを判断し、前記正規回転開始位置ではない中間開始位置であると判断した場合に、前記中間開始位置を基準として前記角度位置と相対目標回転速度との関係を規定した相対パターンを用いて、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度となるように前記モータを制御し、前記正規回転開始位置を基準として前記角度位置と絶対目標回転速度との関係を規定した絶対パターンを用いて前記検知された角度位置に対応した前記絶対目標回転速度を特定し、前記特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応した前記相対目標回転速度より大きいという条件を満たさない場合に、前記絶対パターンを用いて、前記角度位置に対応した前記絶対目標回転速度となるように前記モータを制御する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中間開始位置から回転を再開する場合でも、適切な目標回転速度を用いて回転制御を行うことができる電気機械装置、モータ制御装置及び回転制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態の電気機械装置の斜視図である。
図2図1の電気機械装置の他の斜視図である。
図3図1の電気機械装置の3−3線における断面図である。
図4図2の電気機械装置の4−4線における断面図である。
図5】モータの一部の構成要素の配置を示す概念図である。
図6図1の電気機械装置の制御系統の構成図である。
図7図6に示す制御部が、回転軸の回転制御に用いる相対パターンおよび絶対パターンを説明するための図である。
図8図6に示す制御部の切換え動作で新たに生成される速度制御用のパターンを示す図である。
図9図6に示す制御部による回転軸の回転制御方法を説明するためのフローチャートである。
図10】従来の電気機械装置における目標回転速度制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態の電気機械装置100は、操作ノブの昇降と回転の各機能を有する電子シフターであって、この昇降駆動するモータの速度カーブ制御は、パラメータを最適な状態で行うと共に、任意の位置から操作ノブの昇降を再開しても急激に大きなトルクが生じることがなく、且つ所定の位置に精度良く操作ノブを位置付けることが可能である。
【0025】
(構成)
以下、本発明の実施形態に係る電気機械装置について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る電気機械装置100の異なる状態を示す斜視図である。電気機械装置100は、図示しない車両に搭載されるシフト装置である。本実施形態における上下方向は、説明の便宜のために規定されているのであって、実際の使用方向を限定するわけではない。
【0026】
図3は、操作ノブ120が突出位置にある図1の電気機械装置100を、3−3線と操作ノブ120の移動方向である上下方向とを含む平面で切断して、矢印の方向に見た、概略の断面図である。図4は、操作ノブ120が収納位置にある図2の電気機械装置100を、4−4線と操作ノブ120の上下方向とを含む平面で切断して、矢印の方向に見た、概略の断面図である。
【0027】
図1に示すように、電気機械装置100は、筐体110と操作ノブ120とを備える。電気機械装置100の構成要素は、操作ノブ120を除いて筐体110内に収容されている。筐体110は、なくてもよい。
【0028】
操作ノブ120は、使用者による回転操作を受けて、トランスミッションを切り替える。操作ノブ120は、筐体110から上方に突出した図1の突出位置と、筐体110に収納された図2に示す収納位置との間で移動する。例えば、車両の図示しないイグニッションスイッチをオンにすると、図2の収納位置から図1の突出位置に移動し、イグニッションスイッチをオフにすることにより、図1の突出位置から図2の収納位置に移動する。
【0029】
図3に示すように、電気機械装置100は、モータ130を備える。本実施形態のモータ130は、4極6スロットの三相ブラシレスモータであるが、他のブラシレスモータであってもよく、ステッピングモータなどの他のモータであってもよい。モータ130は、カバー131と、カバー131内からカバー131の外まで上方に突設された回転軸132と、カバー131内で、回転軸132の周囲に配設された固定子133とを含む。回転軸132の円筒状の外周曲面は、ウォームギアとして機能するように溝が設けられている。
【0030】
図5は、モータ130の一部の構成要素を上方から見たときの配置を示す概念図である。回転軸132は、上下方向に沿った仮想的な中心線135の周りで回転する。回転軸132の下端は、NSNSの4極を回転方向に均等に並べた磁石を備えており、回転子として機能する。この回転子の周りには、6スロットの固定子133として、6つのコイル(U1,V1,W1,U2,V2,W2)が配設される。コイルU1、コイルV1、コイルW1、コイルU2、コイルV2及びコイルW2は、この順序で中心線135の周りを反時計回りに60度の間隔で配設される。
【0031】
モータ130は、一般的な三相ブラシレスモータの制御方法と同様に制御される。固定子133を構成するコイルに印加する制御信号の経時的な変化によって、回転方向と回転速度が決まる。
【0032】
モータ130は、後述する制御部180の制御に応じた角度位置に向かうトルクを回転軸132に印加する。停止制御時には、回転軸132の一回転を12等分した角度ごとに配置される12個の角度位置のいずれかを停止目標とする。固定子133に印加される信号の違いによって停止目標が決まる。すなわち、モータ130は、外部からの信号の切り替えに応じて、設定された停止目標に向かうトルクを回転軸132に印加するように制御される。
【0033】
ただし、コイルU1とコイルU2とに同じ信号が印加され、コイルV1とコイルV2とに同じ信号が印加され、コイルW1とコイルW2とに同じ信号が印加される。すなわち、固定子133には、中心線135の周りで180度ごとに対称的な信号が印加される。さらに、回転軸132の極の配置は、中心線135の周りに180度単位で同じである。従って、ある角度位置を停止目標とすることは、中心線135の周りで180度回転した角度位置を停止目標とすることでもある。例えば、一方のS極にコイルV1へ向かうトルクが印加されるのは、当該一方のS極がコイルV1を中心とする前後90度の範囲にある場合であり、コイルV1を中心とする前後90度の範囲から外れると、当該一方のS極はコイルV2に向かうトルクを受ける。本明細書では、順次設定される停止目標の前後90度の範囲を越えて回転軸132が回転しない場合について説明する。
【0034】
モータ130は、さらに、中心線135の周りに60度間隔で配設された、3つの回転センサ134を含む。回転センサ134は、磁気センサであり、より具体的には、ホール効果を利用したホール素子である。回転センサ134は、回転軸132の角度位置を検出する。回転センサ134(HU)は、コイルW2とコイルU1との間に配設されている。回転センサ134(HV)は、コイルU1とコイルV1との間に配設されている。回転センサ134(HW)は、コイルV1とコイルW1との間に配設されている。
【0035】
3つの回転センサ134から出力される信号のパターンに基づいて、回転軸132の回転方向と、角度位置がわかる。角度位置は、回転軸132が回転した角度に対応する。回転センサ134は、回転軸132の角度位置を、所定幅の角度範囲単位で検知する。この1単位となる角度範囲を検知範囲と呼ぶ
【0036】
図3に示すように、電気機械装置100は、さらに、昇降軸141、昇降台142、及び従動ギア片143を備える。昇降軸141は、操作ノブ120と一体的に連結されており、中心線135の周りで操作ノブ120と一体的に回転する。昇降台142は、昇降軸141を回転可能に保持する。昇降台142は、上下方向に移動可能である一方で、中心線135の周りで回転できないように、図示しない要素で制限されている。従動ギア片143は、昇降台142に固定されており、回転軸132の周囲に配設されている。従動ギア片143は、回転軸132を臨む面に、回転軸132のウォームギアにかみ合うギア溝をもつ。
【0037】
回転軸132が回転すると、従動ギア片143は回転せずに上下に移動する。回転軸132の回転にともなって、従動ギア片143、昇降台142、昇降軸141及び操作ノブ120が一体的に上下に移動する。従動ギア片143及び昇降台142は中心線135の周りで回転しないが、操作ノブ120及び昇降軸141は中心線135の周りで両方向に回転可能である。操作ノブ120及び昇降軸141は、回転軸132の回転とは無関係に回転させることができる。回転軸132のウォームギア及び従動ギア片143が、回転軸132の回転に伴って所定の経路に沿って操作ノブ120を移動させる移動機構として機能する。所定の経路は、中心線135に平行な直線である。
【0038】
昇降台142は、後で詳細に説明する2つの下遮光片144a及び上遮光片144b(以下、区別せずに遮光片144と呼ぶ場合がある)をもつ。下遮光片144aは、昇降台142の一部から下向きに突設されており、上遮光片144bは、昇降台142の一部から上向きに突設されている。遮光片144の上下方向の移動量は、操作ノブ120の移動量に等しい。
【0039】
電気機械装置100は、さらに、回路基板150を備える。回路基板150は、筐体110の内部の空間を上下に区画するように配設されている。回路基板150は、操作ノブ120と昇降台142との間に配設され、昇降軸141が回路基板150に触れずに貫通するように配設されている。
【0040】
電気機械装置100は、さらに、下位置センサ151a及び上位置センサ151b(以下、区別せずに位置センサ151と呼ぶ場合がある)を備える。位置センサ151は、遮光片144の位置を検知することより、間接的に操作ノブ120の位置を検知するフォトセンサである。下位置センサ151aは、筐体110内部の底面に配設されており、下遮光片144aの位置を検知する。上位置センサ151bは、回路基板150の下面に配設されており、上遮光片144bの位置を検知する。
【0041】
位置センサ151は、上下のいずれか一方に開口をもつ内部空間を画定している。位置センサ151は、内部空間内に物体が存在するか否かを光により検知する。位置センサ151は、内部空間内に遮光片144が存在する場合にオンとなり、内部空間内に遮光片144が存在しない場合にオフとなる。上下方向において、遮光片144の移動量と操作ノブ120の移動量とが同じである。位置センサ151は、遮光片144を通じて間接的に、操作ノブ120の位置を検知する。操作ノブ120は、遮光片144が下位置センサ151aをオンにする収納位置と、遮光片144が上位置センサ151bをオンにする突出位置との間で上下に移動する。
【0042】
電気機械装置100は、さらに、回路基板150に搭載された操作検知部160を備える。操作検知部160は、回路基板150の両側に配設された2つの回転盤161と、回転盤161の操作量センサ162とを含む。昇降軸141は、回転盤161を貫くように配設されている。昇降軸141の円筒状側面には上下方向に延在する溝が設けられており、回転盤161の係合片が昇降軸141の溝に係合している。回転盤161は、図示しない構成要素により、中心線135の周りに回転可能としながら、上下に移動しないように回路基板150に拘束されている。
【0043】
昇降軸141が上下に移動するとき、回転盤161の係合片が昇降軸141の溝の中で摺動するため、回転盤161は上下に移動しない。昇降軸141が、中心線135の周りで回転すると、回転盤161の係合片が昇降軸141の溝に押されるため、回転盤161が昇降軸141と共に回転する。回転盤161の回転量は、磁気センサで構成される操作量センサ162によって検知される。すなわち、操作ノブ120の回転操作は、昇降軸141及び回転盤161を通じて、操作量センサ162によって検知される。なお、操作ノブ120の回転操作の検出手段はこれに限るわけではない。
【0044】
(制御系統)
図6は、電気機械装置100の上下の移動を制御することに関連する制御系統の構成図である。電気機械装置100は、図3に示す回路基板150に搭載された、図6に示すモータ駆動回路170、制御部180及び記憶装置190を備える。
【0045】
モータ駆動回路170は、制御部180からの指示に基づいてモータ130を制御して、回転軸132(図3)を所望の方向及び所望の速度で回転させ、並びに、回転軸132(図3)を停止させる。
【0046】
制御部180は、中央演算処理装置である。記憶装置190は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM;random access memory)である。記憶装置190は、情報を記憶できる他の装置であってもよい。
【0047】
制御部180は、記憶装置190に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより電気機械装置100の種々の制御を行う。制御部180は、他の構成要素で構成されていてもよく、特定用途向け集積回路(ASIC;application specific integrated circuit)であってもよい。
【0048】
制御部180は、モータ駆動回路170、下位置センサ151a、上位置センサ151b、回転センサ134(HU)、回転センサ134(HV)及び回転センサ134(HW)に接続されている。
【0049】
制御部180は、記憶装置190に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、モータ制御部として機能する。
また、制御部180は、駆動波形発生し、モータ駆動回路170に対して三相駆動制御を行う。また、制御部180は、回転センサ134からの検知結果を基に、回転軸132の回転位置を、回転速度、回転加速度を算出する処理を行い、これらの結果を基に駆動波形を発生する。
【0050】
制御部180は、回転軸132を回転させる場合に、回転センサ134で検知された回転軸132の角度位置を基に、停止目標の角度位置に向かう目標回転速度になるようにトルクを回転軸132に印加する。
【0051】
図7は、図6に示す制御部180が、回転軸132の回転制御に用いる相対パターン31および絶対パターン33を説明するための図である。
図7において、横軸は回転軸132の回転(角度)位置を回転センサ134のカウント値で示しており、縦軸は回転速度(deg/s)を示している。また、横軸の回転位置において、「0」は操作ノブ120が最下端(図2に示す収容位置:正規回転開始位置)にあるときのカウント値である。
図7に示すように、相対パターン31および絶対パターン33は、回転軸132の角度位置と目標回転速度との関係を規定している。本実施形態では、相対パターン31が規定する目標回転速度を相対目標回転速度と呼び、絶対パターン33が規定する目標回転速度を絶対目標回転速度と呼ぶ。
【0052】
本実施形態では、図2に示す収容位置に操作ノブ120があるときの回転軸132の角度位置である正規回転開始位置33aと、図1に示す突出位置に操作ノブ120があるときの回転軸132の角度位置との間の角度位置(回転位置)を、中間開始位置31aと呼ぶ。操作ノブ120が図2に示す収容位置から図1に示す突出位置に移動している過程で外力等の要因で停止し、再度移動を開始する場合に、当該移動開始位置を中間開始位置と呼ぶ。
【0053】
相対パターン31は、中間開始位置31aを基準として回転軸132の角度位置と相対目標回転速度との関係を規定している。
また、絶対パターン33は、正規回転開始位置33aを基準として回転軸132の角度位置と絶対目標回転速度との関係を予め決め規定している。
【0054】
なお、本実施形態において、相対パターン31と絶対パターン33とは同じ形状のパターンである。
制御部180は、絶対パターン33を基に相対パターン31を生成する。例えば、制御部180は、記憶装置190に記憶されている絶対パターン33のパターンデータを読み出し、これを中間開始位置31aを開始位置とするように処理して相対パターン31を生成する。すべての中間開始位置31aからのパターンを持つ必要がないので、データ量を小さくできる。
【0055】
相対パターン31と絶対パターン33とでは、最大目標回転速度wmax、初期回転速度wminから最大目標回転速度wmaxに達する迄の加速度が同じである。
また、相対パターン31における相対目標回転速度の増加開始角度位置である中間開始位置31aは、絶対パターンにおける絶対目標回転速度の増加開始角度位置である正規回転開始位置33aより大きい。
また、相対パターン31における相対目標回転速度の最大目標回転速度wmaxからの減少開始角度位置31bは、絶対パターン33における絶対目標回転速度の最大目標回転速度からの減少開始角度位置33bより大きい。
本実施形態では、相対パターン31は、絶対パターン33は形が同じであり、増加回転角度位置がずれている。
【0056】
相対パターン31および絶対パターン33は、操作ノブ120の正規回転開始位置33aから正規回転終了位置の間の目標位置到達時間、騒音、停止精度および駆動電流の全ての要求仕様を達成できるように規定されている。
相対パターン31および絶対パターン33は、例えば、記憶装置190に記憶されたテーブルデータとして実現してもよし、回転位置を変数として目標回転速度を出力する関数として実現してもよい。
【0057】
制御部180は、回転軸132が正規回転開始位置33aから回転を開始する場合、すなわち操作ノブ120が図2に示す収容位置から上方に移動する場合には、図7に示す絶対パターン33を用いて、回転センサ134で検知された角度位置に対応した絶対回転速度を特定し、当該特定した絶対回転速度になるように回転軸132の回転を制御する絶対モードで動作する。
【0058】
制御部180は、回転軸132が中間開始位置31aから回転を開始する場合、すなわち操作ノブ120が図2に示す収容位置と図1に示す突出位置との間から上方に移動する場合には、図7に示す相対パターン31を用いて、回転センサ134で検知された角度位置に対応した相対目標回転速度を特定し、当該特定した相対目標回転速度になるように回転軸132の回転を制御する相対モードで動作する。
【0059】
また、制御部180は、上記相対モードで回転軸132の回転を制御している間に、回転センサ134で検知された角度位置に対応した絶対目標回転速度を、絶対パターン33を用いて特定する。
そして、制御部180は、当該特定した絶対目標回転速度が、前記検知された角度位置に対応して特定された相対目標回転速度より大きいという条件を満たない場合に、回転制御モードを相対モードから絶対モードに切り換える。
これにより、図8に示すように、新たな動的パターン35を用いて、回転センサ134で検知された角度位置に対応した回転速度を特定し、当該特定した回転速度になるように回転軸132の回転を適切に制御することができる。
【0060】
以下、図6に示す制御部180による回転軸132の回転制御方法を説明する。
図9は、図6に示す制御部180による回転軸132の回転制御方法を説明するためのフローチャートである。
ステップST1:
制御部180は、位置センサ151の検知結果に基づいて、操作ノブ120の上昇動作が中間開始位置からであるか否かを判断する。制御部180は、肯定判定の場合にステップST2に進み、否定判定の場合にステップST3に進む。
【0061】
ステップST2:
制御部180は、回転制御モードを相対モードに設定する。このとき、例えば、前回、操作ノブ120の上昇動作を停止した時の回転センサ134のカウンタ値を、中間開始位置31aとして用いる。
【0062】
ステップST3:
制御部180は、回転制御モードを絶対モードに設定する。このとき、図2に示す収容位置における回転センサ134のカウント値である「0」が正規回転開始位置33aとなる。
【0063】
ステップST4:
制御部180は、相対モードの場合に、相対パターン31を用いて、回転センサ134で検知された角度位置に対応した相対目標回転速度を特定する。
また、制御部180は、絶対パターン33を用いて、回転センサ134で検知された角度位置に対応した絶対目標回転速度を特定する。
【0064】
ステップST5:
制御部180は、回転制御モードが相対モードである場合にステップST6に進み、絶対モードである場合にステップST9に進む。
【0065】
ステップST6:
制御部180は、ステップST4で特定した相対目標回転速度より絶対目標回転速度が大きいか否かを判断する。そして、制御部180は肯定判定の場合にステップST7に進み、否定判定の場合にステップST8に進む。
【0066】
ステップST7:
制御部180は、ステップST4で特定した相対目標回転速度を目標速度として回転軸132の回転を制御する。
【0067】
ステップST8:
制御部180は、回転制御モードを、相対モードから絶対モードに切り換える。
【0068】
ステップST9:
制御部180は、ステップST4で特定した絶対目標回転速度を目標速度として回転軸132の回転を制御する。
【0069】
ステップST10:
制御部180は、ステップST7,ST9の処理終了後に所定の処理周期待ちをしてステップST4の処理に戻る。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る電気機械装置100によれば、回転軸132の回転開始位置が中間開始位置31aである場合(すなわち、回転軸132の回転を途中で停止して再開する場合)に、正規回転開始位置33aを基準として規定された絶対パターン33を用いずに、中間開始位置31aを基準とした相対パターン31を用いて、目標回転速度(相対目標回転速度)を規定する。
【0071】
このように、中間開始位置31aから回転を再開する場合に、図7に示す相対パターン31を用いることで、中間開始位置31aにおいて、図10に示すように、絶対パターン33で規定された高速な絶対目標回転速度を用いることなく、低速な相対目標回転速度を用いて、大電流が流れることを防止すると共に速度追従誤差を小さくできる。また、駆動回路の要求仕様を低くすることができる。また、回転軸132にギアなどが連結されている場合に、急激に大きなトルクが生じてギアが高速で回転開始することを抑制でき、衝突音を抑えることができる。すなわち、中間開始位置31aにおいて絶対パターン33を用いると、回転再開時の加速度カーブ特性が不十分であり、初期の目標回転速度が大きくなってしまうが、電気機械装置100よれば、このような課題を解決できる。
【0072】
また、電気機械装置100によれば、相対パターン31を用いて回転制御を行っている間に、回転センサ134で検知された角度位置に対応した絶対目標回転速度が相対目標回転速度より大きいという条件を満たさなくなると、絶対パターン33を用いるようにモータ制御を切り変える。そのため、相対目標回転速度が絶対目標回転速度に達した後は、回転軸132の回転が途中で停止しなかった場合と同じ目標回転速度にすることができる。これにより回転停止位置付近の目標回転速度を一定にできる。
【0073】
また、電気機械装置100では、制御部180は、回転センサ134の検知結果を基に、回転軸132の回転開始位置が正規回転開始位置33aであると判断した場合に、絶対パターン33を用いて、検知された角度位置に対応した絶対目標回転速度となるようにモータ130を制御する。そのため、回転軸132の回転開始位置が正規回転開始位置33aである場合に、相対パターン31を用いることなく、絶対パターン33を用いてモータ130を制御できる。
【0074】
また、電気機械装置100では、図7に示す相対パターン31と絶対パターン33とで、最大目標回転速度および当該最大目標回転速度に達する迄の加速度が同じである。そのため、相対パターン31と絶対パターン33との間で切り換えを行っても、目標回転速度の変化を滑らかにできる。
【0075】
また、電気機械装置100では、図7に示すように、相対パターン31における相対目標回転速度の増加開始角度位置(中間開始位置31a)は、絶対パター33における絶対目標回転速度の増加開始角度位置(正規回転開始位置33a)より大きく、且つ、相対パターン31における相対目標回転速度の最大目標回転速度からの減少開始角度位置31bは、絶対パターン33における絶対目標回転速度の最大目標回転速度からの減少開始角度位置33bより大きい。
そのため、中間開始位置31aにおいて、絶対パターン33で規定された絶対目標回転速度より低速な相対目標回転速度を用いることができ、大電流が流れることを防止すると共に速度追従誤差を小さくできる。
【0076】
また、電気機械装置100では、相対パターン31は、絶対パターン33を用いて生成される。また、電気機械装置100では、相対パターン31と絶対パターン33とは同じ形をしている。そのため、全ての中間開始位置31aについて相対パターン31を準備する必要がなく、簡単かつ安価な構成で実現できる。また、中間開始位置31aから回転を再開する場合に、正規回転開始位置33aから回転を開始する場合と同じ回転加速度パターンを実現できる。
【0077】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
上述した実施形態では、操作ノブ120が図2に示す収容位置から図1に示す突出位置に移動する場合を例示したが、図1に示す突出位置から図2に示す収容位置に移動する場合にも同様に適用可能である。この場合は、図1に示す突出位置が正規回転開始位置33aとなる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、モータの回転軸の回転によって種々の部材を動かす種々の電気機械装置に適用できる。例えば、車両、航空機、船舶など種々の乗り物に搭載されるシフト装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
31…相対パターン
31a…中間開始位置
31b…減少開始角度位置
33…絶対パターン
33a…正規回転開始位置
33b…減少開始角度位置
35…動的パターン
100…電気機械装置、
120…操作ノブ
130…モータ
132…回転軸
133…固定子
134…回転センサ
144…遮光片
144a…下遮光片
144b…上遮光片
145…先端
151…位置センサ
151a…下位置センサ
151b…上位置センサ
170…モータ駆動回路
180…制御部
190…記憶装置
wmax…最大目標回転速度
wmin…初期回転速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10