(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580157
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】燃料噴射量のための補正値を求めるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20190912BHJP
F02D 41/20 20060101ALI20190912BHJP
F02D 41/40 20060101ALI20190912BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
F02M55/02 360Z
F02D41/20 380
F02D41/40 F
F02D41/40 H
F02D41/14 310N
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-551151(P2017-551151)
(86)(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公表番号】特表2018-513305(P2018-513305A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016054846
(87)【国際公開番号】WO2016155986
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年9月29日
(31)【優先権主張番号】102015205877.8
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヨース
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー ヘス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シェンク ツー シュヴァインスベルク
(72)【発明者】
【氏名】アヒム ヒアヒェンハイン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル バウアー
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−043614(JP,A)
【文献】
特表2014−503044(JP,A)
【文献】
特開2000−018068(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0121600(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0100761(US,A1)
【文献】
特開平07−197840(JP,A)
【文献】
特開2001−336436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
F02D 41/14
F02D 41/20
F02D 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射器(130)を用いて燃料が高圧蓄積器(120)から燃焼室(105)内に噴射される内燃機関(100)における前記燃料噴射器(130)の燃料調量のための補正値を求めるための方法であって、
前記燃料噴射器(130)を通る静的流量率(Qstat)に対する代表値が、前記燃料噴射器(130)の少なくとも1つの噴射過程において、前記高圧蓄積器(120)内で前記噴射過程に基づいて発生する圧力差(Δp)と、前記噴射過程に対して特徴付けられる対応する持続時間(Δt)との比を求めることによって求められ、
前記補正値は、前記代表値と、前記内燃機関(100)の全ての前記燃料噴射器(130)の対応する代表値からの平均値との比に基づいて求められる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記代表値は、前記燃料噴射器(130)の複数の燃料噴射過程において求められる前記圧力差(Δp)と前記対応する持続時間(Δt)との比から求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記代表値は、前記燃料噴射器(130)の複数の燃料噴射過程において求められる前記圧力差(Δp)と前記対応する持続時間(Δt)との比の平均値から求められる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記内燃機関(100)の全ての前記燃料噴射器(130)の対応する補正値の平均値は、排気ガス中の所望の燃料対酸素比が変化しないように設定される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料噴射器(130)の噴射過程に対して特徴付けられる前記持続時間(Δt)を求める際に、前記燃料噴射器(130)の実際値開放持続時間、目標値開放持続時間、駆動制御時間、及び、閉鎖時間のうちの少なくとも1つが使用される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補正値は、前記噴射過程に対して特徴付けられる目標持続時間を求める際に使用された前記静的流量率に対する値の補正のために使用される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの噴射過程の間に、前記高圧蓄積器(120)内の圧力(p)を高める複数の過程が阻止される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
計算ユニット(180)上で実行されるときに、前記計算ユニット(180)に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法を実施させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムを実行するように構成されていることを特徴とする計算ユニット(180)。
【請求項10】
記憶された請求項8に記載のコンピュータプログラムを有している機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射器を用いて高圧蓄積器からの燃料が燃焼室内に噴射される内燃機関の燃料噴射器の燃料調量のための補正値を求めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
自動車においては、遵守しなければならない有害物質の排出に関して、時には非常に厳しい制限値が適用される。その他に、現在の、そして特に将来の排出規制値及び排気ガス規制値を遵守するためには、噴射における正確な燃料調量が重要である。
【0003】
しかしながら、ここでは、調量において、様々な許容誤差が生じることを考慮しなければならない。そのような調量許容誤差は、一般的にサンプル依存性のニードル動特性及びサンプル依存性の燃料噴射器の静的流量率から結果として生じる。ニードル動特性の影響は、例えば電子機械技術によるアプローチ、例えばいわゆる制御されたバルブ操作などによって低減することができる。制御されたバルブ操作では、燃料噴射器の駆動制御時間が、閉ループ制御の趣旨で例えば自動車の寿命期間を超えて適応化される。この場合には噴射中に駆動制御信号が検出され、平行して開閉時点から、バルブニードルの開放持続時間が求められる。それにより、各噴射器の実際の開放時間が算出でき、場合によっては再制御可能である。独国特許出願公開第102009002593号明細書(DE102009002593A1)には、バルブの実際値開放持続時間を目標値開放持続時間に制御するためのそのような方法が開示されている。
【0004】
静的流量率において生じ得るエラーは、噴射孔形状の許容誤差とニードルストロークの許容誤差とから結果として生じる。そのようなエラーは、これまでは概ね包括的にしか、即ち、例えばラムダ制御又は混合気適合化に基づいて、内燃機関の全ての燃料噴射器に関して共通の補正しかできなかった。但し、それに伴い、内燃機関の個々の燃料噴射器が、それらの静的流量率に関する偏差を有しているかどうか(即ち、同じ開放持続時間において異なった量が放出されるかどうか)を認識することはできず、これは排気ガス又はスムーズな動作に関係しかねない。
【0005】
独国特許出願公開第102007050813号明細書(DE102007050813A1)からは、例えば内燃機関の噴射器制御の放出量監視のための方法が公知であり、ここでは、高圧蓄積器内の圧力低下に基づいて、噴射器から放出される燃料量が監視される。しかしながら、何らかの偏差の原因を詳細に特定することやそれらの補正は、ここでは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009002593号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007050813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、内燃機関の燃料噴射器における燃料調量のより正確な監視及び/又は補正のための手段を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の開示
本発明によれば、請求項1の特徴部分を有する方法が提案されている。好ましい構成は、従属請求項及び以下の説明の態様である。
【0009】
発明の利点
本発明に係る方法は、燃料噴射器を用いて燃料が高圧蓄積器から燃焼室内に噴射される内燃機関における燃料噴射器の燃料調量のための補正値を求めるために用いられる。ここでは燃料噴射器を通る静的流量率に対する代表値が、燃料噴射器の少なくとも1つの噴射過程において、高圧蓄積器内で噴射過程に基づいて発生する圧力差と、噴射過程に対して特徴付けられる対応する持続時間との比を求めることによって求められる。それにより、燃料噴射器を通る静的流量率に対する代表値は、圧縮率である。さらにその後、代表値と比較値との比較に基づいて、例えば商形成によって補正値が求められる。
【0010】
この補正値は、その後、好ましくは静的流量率に対する値の補正に使用され、この場合、この値は、目標持続時間又は噴射過程に対して特徴付けられる時間、例えば目標開放持続時間又は目標駆動制御持続時間を求める場合に使用される。例えば静的流量率に対するこれまでの値を、この補正値で乗算することが可能である。特にこの補正は、自動車の運転中に行うことができ、特に定期的に行うことも、又は、保守管理中若しくはその他の検査中に行うことも可能である。
【0011】
本発明は、燃料噴射器によって噴射過程中に放出される燃料量又はその体積流量が、対応する圧力差、即ち、高圧蓄積器内のいわゆるレール内の噴射過程前後の圧力差に比例するか又は少なくとも十分に比例していることを利用している。ここにおいて、さらに噴射過程に対して特徴付けられる持続時間が既知である場合には、この圧力差と、対応する持続時間との比から、燃料噴射器を通る静的流量率の比例要因にまで相当する値を求めることが可能である。
【0012】
静的流量率を、即ち、フルリフト状態における時間当たりの噴射量を考慮することにより、所望の噴射量を噴射するための噴射持続時間を、さらにより正確に設定することが可能になる。この方法は、内燃機関の各燃料噴射器毎に実施することができるので、それによって、例えばラムダ測定を介した噴射量全体の包括的適合化においては識別することができなかった燃料調量の際の噴射器固有の偏差が補正できるようになる。それに対して、ニードル動特性(即ち、開閉時点)における偏差は、冒頭に述べたような電子機械技術による方法によって補正することが可能である。それにより、燃料調量に影響を与える2つの要因であるニードル動特性及び静的流量率に対して、それぞれに適切かつ正確な方法が使用可能になる。
【0013】
好ましくは、代表値は、燃料噴射器の複数の燃料噴射過程において求められる圧力差と対応する持続時間との比から求められる。圧力差及び噴射に対して特徴付けられる持続時間の個々の測定では、結果的な精度は限られているので、適切な方法によって相互に関連付けられる複数の測定が実施されることによって、実質的により正確な値が達成可能である。
【0014】
合目的的に、代表値は、燃料噴射器の複数の燃料噴射過程において求められる圧力差と対応する持続時間との比の平均値から求められる。なぜなら、平均値形成は、非常に簡単であり、正確な値が供給されるからである。この場合、これらの測定における必要数は、大抵の場合、高圧蓄積器内の典型的な脈動と、高圧蓄積器内の圧力に対して使用されるセンサの精度とに依存する。
【0015】
好ましくは、補正値は、代表値と、比較値としての内燃機関の全ての燃料噴射器の対応する代表値からの平均値との比に基づいて求められる。それにより、この方法は、生じ得る系統的誤差、例えば不正確なセンサ又は例えば温度若しくはエタノール含有量などの実際の燃料特性に関する誤りを含んだ情報に基づく系統的誤差に依存しなくなる。商形成によって、これらの影響要因は除去される。同様に比例要因を考慮する必要はない。この目的のためには、全ての燃料噴射器の代表値が、合目的的にそれぞれ同じ方法で求められることに留意すべきである。十分な数で十分に正確なセンサが、例えば高圧蓄積器内の圧力、媒体温度及びエタノール含有量のために使用される又は使用できる限り、それによって、静的流量率に対する絶対値も求めることが可能である。補正値は、この絶対値と比較値としての所望の値とからの比に基づいて求めることが可能である。
【0016】
内燃機関の全ての燃料噴射器の対応する補正値の平均値は、排気ガス中の所望の燃料対酸素比が変化しないように設定されている場合には利点となる。この場合のこの燃料対酸素比は、ラムダ値とも称される。それにより、例えば内燃機関の可及的に最適な排気ガス値が達成可能になる。
【0017】
好ましくは、燃料噴射器の噴射過程に対して特徴付けられる持続時間を求める際に、燃料噴射器の実際値開放持続時間(即ち、開放時点と閉鎖時点との間で測定された持続時間)、目標値開放持続時間(即ち、理想的なモデル開放持続時間、即ち、未測定の開放持続時間)、駆動制御持続時間、即ち、駆動制御信号がバルブに印加される持続時間、及び/又は、閉鎖時間、即ち、駆動制御持続時間の終了から開放持続時間の終了までの時間、が考慮される。実際値開放持続時間は、確かにそれによって、噴射過程の間の燃料流の持続時間が最も正確に記述される値ではあるが、しかしながら、他の特性量も、場合によっては補正により、噴射過程の関連する持続時間の決定に対して十分正確であってもよく、特に、これらは部分的に非常に簡単に求めることができる。前述した2つ以上の特性量の組み合わせは、さらにより正確な値をもたらすことができる。この場合、どの特性量が使用されるかは、例えばセンサのような既存の検出手段か又は駆動制御電子機器内のデータに依存して行うことができる。この場合、実際値開放持続時間は、例えば冒頭に述べたような噴射持続時間が制御される制御されたバルブ操作を用いて求めることが可能である。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの噴射過程の間に、高圧蓄積器内の圧力を高める複数の過程が阻止される。この目的のために、特に高圧ポンプによる、高圧蓄積器内への燃料の追加吐出の阻止又は中断が含まれる。さもなければ噴射過程に基づく高圧蓄積器内の圧力差は、ともすると十分正確には検出できなくなるか又はこれが品質劣化する。それに対して、同様に圧力の損失につながる可能性のある漏れは、特に燃料噴射器の代表値と、全ての燃料噴射器の対応する代表値の平均値との比が設定される、補正値の相対的な決定においては重要ではない。
【0019】
本発明に係る計算ユニット、例えば制御機器、特に自動車のエンジン制御機器は、特にプログラミング技術によって、本発明に係る方法を実施するように構成されている。
【0020】
また、ソフトウェアの形態での当該方法の実施も有利である。なぜなら、このことは、特に、実施される制御機器が、さらに別の課題のためにも使用され、そのためいずれにせよ既存のものである場合には、特にわずかなコストしか引き起こさないからである。コンピュータプログラムの提供のために適したデータ担体は、特に磁気的、電気的及び光学的記憶手段、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM、DVDなどである。また、コンピュータネットワーク(インターネット、イントラネットなど)を介したプログラムのダンロードも可能である。
【0021】
本発明のさらなる利点及び構成は、以下の説明及び添付の図面から明らかとなる。
【0022】
本発明は、実施例に基づき図面に概略的に示されており、さらに以下において図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る方法の実施に適している、コモンレールシステムを備えた内燃機関を概略的に示した図。
【
図2】燃料噴射器における体積流量を時間軸に亘って示した線図。
【
図3】噴射過程中の高圧蓄積器内の圧力経過を示した線図。
【
図4】燃料噴射器に対する駆動制御時間を求めるための経過を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態
図1には、本発明に係る方法の実施に適している内燃機関100が概略的に示されている。例示的にこの内燃機関100は、3つの燃焼室、即ち、対応するシリンダ105を含んでいる。各燃焼室105には、1つの燃料噴射器130が割り当てられており、この燃料噴射器130も、それぞれ高圧蓄積器120、いわゆるレールに接続されており、この燃料噴射器130を介して高圧蓄積器120は燃料を供給する。なお、本発明に係る方法は、任意の他の気筒数、例えば4気筒、6気筒、8気筒又は12気筒を有する内燃機関においても実施可能であることを理解されたい。
【0025】
さらに、この高圧蓄積器は、高圧ポンプ110を介して燃料タンク140から燃料を供給される。この高圧ポンプ110は内燃機関100に連結されており、詳細には例えば高圧ポンプが、内燃機関のクランク軸又はカム軸(これもクランク軸に連結されている)を介して駆動されるように連結されている。
【0026】
各燃焼室105への燃料を調量するための燃料噴射器130の駆動制御は、エンジン制御機器180として構成された計算ユニットを介して行われる。なお、見易くする理由から、エンジン制御機器180から1つの燃料噴射器130までの接続しか示していないが、しかしながら、ここでは各燃料噴射器130が、このエンジン制御機器に対応して接続されていることを理解されたい。この場合、各燃料噴射器130は、固有に駆動制御可能である。さらにエンジン制御機器180は、圧力センサ190を用いて高圧蓄積器120内の燃料圧力を検出するように構成されている。
【0027】
図2の線図では、燃料噴射器の長く持続する駆動制御の場合での燃料噴射器を通る累積的体積流量Vが、時間軸tに亘って示されている。この場合、時点t
pで駆動制御時間が開始され、時点t
1でバルブニードルの持ち上げが開始される。それにより、この時点t
1では、燃料噴射器の開放持続時間も開始される。その際には、累積的体積流量Vが、又は、燃料噴射器を通って流れる燃料量が、短い持続時間の後のバルブニードルが持ち上げられている間のさらなる領域に亘って一定して増加していることが見てとれる。この領域では、バルブニードルはいわゆるフルリフト状態にあり、即ち、バルブニードルは、完全に又は目標高さまで持ち上げられている。
【0028】
この期間の間は、燃料噴射器の開弁によって、単位時間当たり一定の燃料量が流れており、即ち、累積的体積流量Vの勾配を示す静的流量率Q
statが一定である。ここでの静的流量率の大きさは、冒頭で既に述べたように、噴射過程の間に噴射された燃料量全体を決定する重要な要因である。それ故、静的流量率における偏差又は許容誤差は、噴射過程当たりの噴射された燃料量に影響を及ぼす。
【0029】
時点t
3では駆動制御時間が終了し、閉鎖時間が開始される。その際、バルブニードルは、降下を開始する。この閉鎖時間及び開放持続時間は、バルブニードルが再び完全にバルブを閉じた場合の時点t
4で終了する。
【0030】
図3の線図では、噴射過程中の高圧蓄積器内の圧力経過pが、時間軸tに亘って示されている。ここでは、高圧蓄積器内の圧力pが、ポンプ吐出及び噴射による燃料噴出に基づく所定の変動を除いて実質的に一定であることが見てとれる。持続時間Δtだけ持続する噴射過程の間に、高圧蓄積器内の圧力pは、値Δpだけ低下する。
【0031】
それに続いて圧力pは、ここでも所定の変動を除いて、高圧ポンプによる追加吐出によって圧力pが再び初期レベルに上昇するまで、低いレベルにとどまる。
【0032】
この場合、複数の噴射過程におけるこの圧力落ち込みの検出及び評価は、通常はいずれにせよ既存の構成要素、例えば圧力センサ190や相応の入力回路も含めたエンジン制御機器180によって行われる。それ故に付加的な構成要素は不要である。
【0033】
この評価は、各燃焼室105毎に個別に行われ、それに伴い噴射器個別に行われる。これにより、複数の燃焼室間の調量のばらつきが低減され、例えばカーボンの付着した噴射器又は欠陥のある噴射器が、例えば工場において(テスタを介して)より良好に識別可能になる。
【0034】
燃料噴射器を通る静的流量率Q
statは、既に上述したように、噴射された燃料量又は時間あたりのその体積流量によって特徴付けられる。システム圧力まで増圧される高圧蓄積器内又はレール内においては、噴射される体積流量は、レール内の圧力降下に比例する。この場合、対応する持続時間は、燃料噴射器の開放持続時間に対応し、これは、例えば冒頭に述べたように、いわゆる制御されたバルブ操作を用いた電子機械技術により決定可能である。
【0035】
圧力降下又は圧力差Δpと、開放持続時間又は噴射の持続時間Δtとの間の商形成によって、静的流量率Q
statに対する代替値又は代表値としての圧力率Δp/Δtが得られ、即ち、測定過程iに対して、以下の式、
【数1】
が成り立つ。この場合、高圧ポンプによる追加吐出は、関連する時間窓内に入れられるべきではない。そのため、追加吐出は、場合によっては抑制されなければならない。
【0036】
システム内において使用可能な構成要素により、Q
statに対するこの代替値は、通常は所定の精度でしか決定することができないので、精細化のための適切な方法は有意である。このことは、例えば平均値形成か、又は、適切なソフトウェア実施による他の数学的方法によって達成することが可能である。平均値形成における決定誤差は、個々の測定の数の増加に伴って減少する。即ち、それによって、例えばn個の測定過程に対して、以下の式、
【数2】
がもたらされる。
【0037】
必要な精度を達成するために、このケースでは、最小数の測定が必要である。必要な測定の数に達している場合、静的流量率Q
statに対する有意義な代替量が存在する。
【0038】
このような方法で、全ての噴射器に対して、対応する代替量又は代表値が形成可能になる。さらに、噴射器個別の補正が合目的的な手法で相対的に行われ、即ち、噴射器個別の代替量が、比較値としての全ての燃料噴射器の対応する代替量の平均値に対して比の関係におかれる。この相対的アプローチによって、この方法は、例えば圧力センサの絶対誤差又は燃料温度に依存しなくなる。このようにして、例えば以下の式、
【数3】
の形態の補正値がもたらされる。但し、前記式中の項については以下の関係、
【数4】
が成り立つ。ここで、前記Zは、気筒又は噴射器の数である。
【0039】
ここでは、生じ得る比例要因又は系統的測定誤差が、この商形成において除去されることも見てとれる。
【0040】
静的流量率の包括的な平均値オフセットである以下の項、
【数5】
即ち、内燃機関の全ての燃料噴射器の静的流量率の平均値のずれは、この相対的アプローチによって補正されず、このことが個々の燃料噴射器の静的流量率の補正無しでも可能であるように、例えば、いわゆるラムダ制御又は適合化によって補償される。
【0041】
補正値は、ここにおいては、例えば駆動制御持続時間の補正のために、噴射過程に対して特徴付けられる目標持続時間として使用され、その際には、駆動制御持続時間を求める際に使用される静的流量率に対する値がこの補正値と乗算される。このことは、例えば、目標燃料量から駆動制御持続時間への連鎖的計算において、各燃料噴射器に固有の換算係数を割り当てる係数の形態で行われ、即ち、各静的流量率に対する噴射器個別の値が生じる。
【0042】
説明してきた静的流量率の補正は、例えば制御されたバルブ操作のような下位の方法によって、ニードル動特性の影響が最小化又は少なくとも低減され、それによって、噴射された燃料の体積流量と測定可能な時間(開放持続時間)との間でほぼ線形的な関係が存在する場合に、特に正確な結果をもたらす。それにより、2つの最大の調量誤差が、即ち、ニードル動特性における誤差と、静的流量率における誤差とが、それぞれ固有の方法によって、物理的に適正に補償可能になる。
【0043】
2つの方法の組合せによって、全ての燃料噴射器の調量精度の可及的に最適な平等化が提供可能になる。十分に正確な圧力検出、温度検出及び媒体検出を伴うシステムの場合では、例えば既に述べたようなラムダ制御を用いた燃料対酸素比の測定に関する補正を必要としない絶対的観測も可能である。
【0044】
図4には、静的流量率に対する値Q
statに基づいた、燃料噴射器に対する駆動制御時間Δt’’を求めるための経過が概略的に示されている。目標噴射量ΔV
soll、及び場合により求められた補正値によって補正された静的流量率に対する値Q
statからは、燃料噴射器に対する目標開放持続時間Δt’が、比例法則による簡単な構成において求められる。ここにおいて、この目標開放持続時間Δt’と高圧蓄積器内の圧力pとからは、好ましくは特性マップを使用して、その後の燃料噴射器を駆動制御する駆動制御時間Δt’’が求められる。