特許第6580160号(P6580160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機ホーム機器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6580160-除湿機 図000002
  • 特許6580160-除湿機 図000003
  • 特許6580160-除湿機 図000004
  • 特許6580160-除湿機 図000005
  • 特許6580160-除湿機 図000006
  • 特許6580160-除湿機 図000007
  • 特許6580160-除湿機 図000008
  • 特許6580160-除湿機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580160
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】除湿機
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20190912BHJP
   F24F 1/0358 20190101ALI20190912BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B01D53/26 100
   F24F1/0358
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-555897(P2017-555897)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2015085035
(87)【国際公開番号】WO2017103987
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 大輔
(72)【発明者】
【氏名】前山 英明
(72)【発明者】
【氏名】中村 博史
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−221349(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/142313(WO,A1)
【文献】 特開平10−238894(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111602(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/174623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
F24F 1/0358
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置された運転周波数可変の圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器を備え、可燃性を有する地球温暖化係数が6以下の低GWP冷媒が循環する冷媒回路と、
前記筐体内に配置され、空気を室内から前記筐体内に吸気して前記蒸発器及び前記凝縮器を通過させた後、前記筐体内から前記室内に吹き出す送風ファンと、
前記蒸発器の下方に設けられ、前記蒸発器で発生した結露水を貯める貯水タンクとを備え、
前記蒸発器の冷媒パス数が前記凝縮器の冷媒パス数よりも多く、且つ、前記蒸発器のフィンピッチが前記凝縮器のフィンピッチよりも小さい除湿機。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体内に配置された運転周波数可変の圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器を備え、可燃性を有する地球温暖化係数が6以下の低GWP冷媒が循環する冷媒回路と、
前記筐体内に配置され、空気を室内から前記筐体内に吸気して前記蒸発器及び前記凝縮器を通過させた後、前記筐体内から前記室内に吹き出す送風ファンと、
前記蒸発器の下方に設けられ、前記蒸発器で発生した結露水を貯める貯水タンクとを備え、
前記蒸発器の冷媒パス数が前記凝縮器の冷媒パス数よりも多く、且つ、前記蒸発器の伝熱管の肉厚が前記凝縮器の伝熱管の肉厚よりも厚い除湿機。
【請求項3】
前記蒸発器のフィンピッチが前記凝縮器のフィンピッチよりも小さい請求項記載の除湿機。
【請求項4】
前記蒸発器の流路断面積が前記凝縮器の流路断面積よりも大きい
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の除湿機。
【請求項5】
前記低GWP冷媒は、炭素と炭素との間に二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした単一冷媒又はこの冷媒を含む混合冷媒である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の除湿機。
【請求項6】
前記低GWP冷媒は、炭素と炭素との間に二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に、不燃性冷媒を混合した混合冷媒である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の除湿機。
【請求項7】
前記混合冷媒において、前記不燃性冷媒が10〜12%混合されている請求項6記載の除湿機。
【請求項8】
前記除湿機に充填する充填冷媒量は、所望の除湿量に基づいて次式
冷媒量[g]=7.03×除湿量[l/day]−1.91
から算出された冷媒量以下である請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の除湿機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内の湿度を除去することを目的とする除湿機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変速運転が可能な圧縮機を用いることで、ONOFF運転のみしか行えない従来の誘導電動機(IM)を用いる除湿機に比べて、消費電力が少なく、小型、軽量で持ち運びやすくした除湿機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3829625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球温暖化抑制のため、除湿機の使用冷媒として地球温暖化係数GWPが6以下の可燃性冷媒が用いられる。しかし、この種の可燃性を有する低GWP冷媒は、従来使用されるR134a冷媒に比べて冷媒の潜熱量が低く、それ故、除湿量の低下を招く。除湿量の低下を補うには、充填冷媒量の増加や熱交換器の容量及び圧縮機の容量の増加が必要である。しかし、可燃性冷媒は、万一冷媒漏れが生じた場合に燃焼が発生する可能性があるため、充填冷媒量を増やすことは好ましくない。また、熱交換器の容量及び圧縮機の容量の増加も、近年の小型化の要求の観点から好ましくない。また、可燃性を有する低GWP冷媒において、潜熱量が大きいものについても、強燃性であるという問題があった。このため、可燃性を有する低GWP冷媒を用いる場合には、充填冷媒量を大幅に低減し、燃焼性を抑制して安全を確保しつつ、従来冷媒と同等の除湿量を維持することが求められる。
【0005】
特許文献1の除湿機のように、運転周波数が可変の圧縮機を用いれば、所望の冷媒流量が得られるため、潜熱量の低い冷媒を用いても使用冷媒の潜熱量の低さをカバーできる。よって、運転周波数が可変の圧縮機を用いれば、運転周波数が固定のものを用いる場合のように、使用冷媒の潜熱量の低さをカバーするために充填冷媒量を増加したり、熱交換器の容量及び圧縮機の容量を上げたりする必要は無い。つまり、可燃性を有する低GWP冷媒を使用する場合であっても、運転周波数が可変の圧縮機を用いれば、充填冷媒量の増加や、除湿機本体サイズの大型化を抑制できる。
【0006】
しかし、冷媒流量を増加させた場合、冷媒の圧力損失も増大するため、除湿量の低下を招き、所望の除湿量を得るために必要な消費電力量も増大する。
【0007】
本発明はこのような点を鑑みなされたもので、可燃性の低GWP冷媒を用いながらも、軽量でコンパクトであり、また、冷媒の圧力損失を低減して除湿量の維持および消費電力量の低減を図ることが可能な除湿機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る除湿機は、筐体と、筐体内に配置された運転周波数可変の圧縮機、凝縮器、減圧装置及び蒸発器を備え、可燃性を有する地球温暖化係数が6以下の低GWP冷媒が循環する冷媒回路と、筐体内に配置され、空気を室内から筐体内に吸気して蒸発器及び凝縮器を通過させた後、筐体内から室内に吹き出す送風ファンと、蒸発器の下方に設けられ、蒸発器で発生した結露水を貯める貯水タンクとを備え、蒸発器の冷媒パス数が凝縮器の冷媒パス数よりも多く、且つ、蒸発器のフィンピッチが凝縮器のフィンピッチよりも小さいものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可燃性の低GWP冷媒を用いながらも、軽量でコンパクトであり、また、冷媒の圧力損失を低減して除湿量の維持および消費電力量の低減を図ることが可能な除湿機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部構成を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る除湿装置6を構成する冷媒回路とともに、除湿機の制御系を示した図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る除湿機の冷媒回路の冷媒パス数の説明図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る除湿機において、凝縮器13の冷媒パス数を1とし、蒸発器15の冷媒パス数を変えて除湿量比率を計測した結果を示すグラフである。
図6】従来の伝熱管内径に比べて凝縮器13及び蒸発器15のそれぞれの伝熱管16を細径化した場合の充填冷媒量比率を示すグラフである。
図7】燃焼濃度下限である5.4%以下を満足する、除湿量に応じた充填冷媒量を示すグラフである。
図8】所望の除湿量を得るにあたって必要な、蒸発器15に対する凝縮器13の容積比率と充填冷媒量比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
<除湿機の構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部構成を示す縦断面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部構成を示す概略図である。これらの図に示すように、本実施の形態1の除湿機は、自立可能に構成された除湿機筐体1を備え、室内空気Aを除湿機筐体1内に取り込むための吸込口2と、水分が除去された乾燥空気Bを除湿機筐体1から室内へ排出する吹出口3とが除湿機筐体1に形成され、除湿機の外観が構成されている。
【0012】
そして、除湿機筐体1内において吸込口2の空気下流には蒸発器15が配置され、蒸発器15の空気下流には凝縮器13が配置されている。蒸発器15及び凝縮器13は多数の伝熱管16と多数のフィン17とで構成されたフィンアンドチューブ熱交換器で構成されている。
【0013】
図2に示すように、本実施の形態1に係る除湿機は、吸込口2から吸引された室内空気Aの湿度を検出する湿度センサ4と、室内空気Aの温度を検出する温度センサ5と、を備えている。なお、以下の説明では、湿度センサ4及び温度センサ5によって検出された湿度及び温度を、それぞれ「検出湿度」及び「検出温度」と称することとする。
【0014】
また、本実施の形態1に係る除湿機は、室内空気Aに含まれる水分を除去して乾燥空気Bを生成する除湿装置6と、除湿装置6によって室内空気Aから除去された水分を溜める貯水タンク7と、を備えている。なお、除湿装置6の詳細な構成については後述する。
【0015】
貯水タンク7には、貯水タンク7内の水の量を検出する水量検出センサとしての水位センサ8が設けられている。水位センサ8は、発光素子と受光素子とを備えた光学式水位センサ、超音波発信回路と超音波受信回路とを備えた超音波式水位センサ等を用いることができる。
【0016】
除湿機筐体1の内部には送風ファン9が設けられている。送風ファン9は、吸込口2から除湿機筐体1内に室内空気Aを吸気して除湿装置6を通過させた後、除湿装置6で除湿されて乾燥した乾燥空気Bを吹出口3から室内に排出する気流を発生させるためのものである。
【0017】
本実施の形態1に係る除湿機は更に、制御装置10と操作部11とを備えている。操作部11は、使用者が除湿機の操作を行うためのものであり、除湿モードの選択、設定湿度の入力等の情報が使用者によって入力される部分である。制御装置10については次の図3で説明する。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態1に係る除湿装置6を構成する冷媒回路とともに、除湿機の制御系を示した図である。
この図3に示すように、除湿装置6は、冷媒を圧縮する圧縮機12と、圧縮機12で昇圧された冷媒を冷却する凝縮器13と、凝縮器13にて冷却された冷媒を減圧膨張させる減圧装置としての膨張弁14と、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒への吸熱を行う蒸発器15と、を配管によって順に接続されることで構成された冷媒回路を有している。なお、ここでは減圧装置として膨張弁を用いているが、キャピラリーチューブでもよい。
【0019】
制御装置10はインバータ回路18を備えている。インバータ回路18は、図示しないコンバータ回路によって変換された直流電圧を任意の電圧、周波数及び位相の交流電圧に変換する回路である。制御装置10は、湿度センサ4、温度センサ5及び水位センサ8等からの入力と操作部11に入力された情報とに基づいて、インバータ回路18を制御し、圧縮機12及び送風ファン9へ供給する交流電圧の周波数をそれぞれ可変に制御する。制御装置10は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0020】
制御装置10の制御についてより詳しくは、湿度センサ4により検出された検出湿度が操作部11から入力された設定湿度となるように、除湿装置6を制御するとともに送風ファン9を制御する。すなわち、制御装置10は、湿度センサ4により検出された検出湿度が操作部11から入力された設定湿度となるように、圧縮機12の運転周波数を決定するとともに、送風ファン9の回転数を決定する。そして、制御装置10は、圧縮機12の運転周波数[Hz]が、決定した周波数となるようにインバータ回路18を制御する。これにより、圧縮機12は、決定した運転周波数[Hz]に応じた単位時間当たりの回転数[rpm]に制御される。また、制御装置10は、送風ファン9の単位時間当たりの回転数[rpm]が、決定した回転数となるようにインバータ回路18を制御する。ここで、圧縮機12は、単位時間当たりの回転数が大きいほど出力が大きくなる。また、送風ファン9は、単位時間当たりの回転数が大きいほど出力が大きくなる。
【0021】
冷媒回路には、可燃性を有する低GWP冷媒を使用する。低GWP冷媒とは、R134a又はR410A等の現行冷媒に比べて地球温暖化への寄与が極めて少ない冷媒である。ここでは、主にR290、R1234yf、R1234ze等のGWPが6以下の冷媒を使用する。
【0022】
GWPを低くするには、大気中で安定的に存在している時間である大気寿命を短くする必要がある。大気寿命が短い、ということは大気中の化学的反応性が高いことに相当し、燃焼性が高まることに相当する。よって低GWP冷媒を用いる場合には、不燃性の冷媒を用いる場合に比べて充填冷媒量を少なくし、室内での除湿機使用時の可燃性のリスク低減を図ることが必要である。そこで、本実施の形態1では、圧縮機12として運転周波数が可変の圧縮機を用い、必要除湿量に応じて冷媒流量の増量を可能とすることで、充填冷媒量を低減しても、所望の除湿量を得ることを可能としている。
【0023】
また、本実施の形態1では、凝縮器13の冷媒パス数よりも蒸発器15の冷媒パス数を多くすることで蒸発器15における冷媒の圧力損失の低減を図り、冷媒循環量の低下に伴う除湿量の低下を回避して結果的に消費電力量の低減を図ることを特徴としている。以下、この点について説明する。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態2に係る除湿機の冷媒回路の冷媒パス数の説明図である。
図4は、凝縮器13の冷媒パス数が1、蒸発器15の冷媒パス数が2の場合を示している。つまり、蒸発器15は、2つの冷媒経路を有する2パス型の蒸発器である。このように冷媒パス数を増やすことで、管内圧損を低減することができる。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態2に係る除湿機において、凝縮器13の冷媒パス数を1とし、蒸発器15の冷媒パス数を変えて除湿量比率を計測した結果を示すグラフである。図5において横軸は蒸発器15の冷媒パス数[−]、縦軸は除湿量比率[%]である。
凝縮器13の冷媒パス数が1で、蒸発器15の冷媒パス数が2の場合の除湿量比率を100%とすると、蒸発器15の冷媒パス数を3及び4に増やした場合、除湿量比率を98%以上に維持できる。しかし、蒸発器15の冷媒パス数を1に減らすと、除湿量比率が91%と極端に低下する。このように、蒸発器15の冷媒パス数が凝縮器13の冷媒パス数と同数の1であると冷媒循環量が低下し、その結果、除湿量が低下する。なお、凝縮器13側の冷媒パスを増やしても、冷媒パスを増やす前と除湿量は同等であり、除湿量を増やすことはできない。このように、冷媒充填量の削減による除湿量低下を補うにあたり、蒸発器15の冷媒パス数の増加は有効である。
【0026】
次に、除湿機における除湿装置6の冷媒回路の動作について説明する。
圧縮機12が運転を開始すると、圧縮された高温高圧の冷媒ガスが凝縮器13に流入する。凝縮器13に流入した冷媒は、周囲空気に熱を放出することにより液化する。液化した冷媒は膨張弁14で減圧されて気液二相状態となり、蒸発器15に送り込まれる。蒸発器15は上述したように冷媒パスが2であり、膨張弁14から流出した冷媒は2パスに分配されて蒸発器15に送り込まれる。蒸発器15に送り込まれた各冷媒は周囲空気から熱を吸収することでガス状態となる。そして、ガス状態の各冷媒は、蒸発器15を通過後に合流し、圧縮機12に戻る。
【0027】
このように可燃性冷媒を使用する本除湿機では、凝縮器13よりも蒸発器15の冷媒パスを増やすことで、冷媒圧力損失低減に起因した冷媒循環量の低下を防ぐことができる。その結果、充填冷媒量を増やすことなく除湿量の維持又は向上が可能になる。
【0028】
次に、除湿機における除湿動作について説明する。
制御装置10は、操作部11のスイッチ操作にて、除湿モードが選択されたことを検知した場合に除湿運転を実行する。除湿運転では、具体的には、湿度センサ4により検出された検出湿度が操作部11から入力された設定湿度となるように、送風ファン9を駆動するとともに除湿装置6を駆動する。
【0029】
制御装置10は、除湿装置駆動時の圧縮機12の制御として具体的には以下のようにしている。すなわち、検出湿度と設定湿度との差が予め設定した所定値よりも小さい場合には、運転周波数をA[Hz]に決定し、検出湿度と設定湿度との差が予め設定した所定値以上の場合には、運転周波数をB(>A)[Hz]に決定するようにしている。なお、圧縮機12の制御は、このように運転周波数を2段階に制御する方法に限られず、他に例えば、更に複数段階に制御するようにしてもよい。
【0030】
そして、制御装置10は、決定した運転周波数となるようにインバータ回路18を制御して、圧縮機12と送風ファン9の回転数を制御する。
【0031】
以上のようにして送風ファン9が駆動されると、室内空気Aが吸込口2から除湿機筐体1内の除湿装置6に取り込まれる。また、圧縮機12が駆動されることにより除湿装置6において冷媒が冷媒回路内を循環する。吸込口2から吸い込まれた室内空気Aは、まず蒸発器15に送り込まれる。蒸発器15に送り込まれた室内空気Aは蒸発器15によって露点以下に冷やされ、空気中の水分が結露することで空気は除湿される。結露した水分は、貯水タンク7によって受け止めて貯められ、外部に排水される。このようにして、室内空気Aは蒸発器15を通過することにより冷却されて絶対湿度が低下する。
【0032】
除湿された空気は、乾燥空気Bとなり、凝縮器13を通過することにより加熱された後、送風ファン9により吹き出しダクトを通り、吹出口3から室内空間へと吹き出される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、圧縮機12の運転周波数が可変であり冷媒循環量を増やせるため、運転周波数が固定の圧縮機を用いる場合のように蒸発器15の容量及び圧縮機12の容量を増やすことなく、所望の除湿量を得ることが可能である。よって、除湿機本体サイズの大型化を招くことなく、軽量、コンパクトでありながら、除湿量の低下が少なく、地球温暖化への影響が非常に小さい除湿機を提供できる。
【0034】
また、運転周波数が可変であり、必要に応じて冷媒循環量を増やせるため、運転周波数が一定速の場合のように充填冷媒量の増加を図る必要がない。つまり、可燃性冷媒の充填量を減らすことができ、除湿機の安全性が高まる。すなわち、冷媒として、地球温暖化への影響が小さい低GWPであって且つ可燃性の冷媒を用いる除湿機であっても、室内使用が可能な除湿機を構成できる。
【0035】
また、蒸発器15の冷媒パス数を凝縮器13の冷媒パス数よりも多くしたので、冷媒圧力損失低減に起因した冷媒循環量の低下を防ぐことができ、充填冷媒量を増やさず、除湿量の維持又は向上が可能になる。その結果、所望の除湿量を得るために必要な消費電力量の増大を抑制できる。
【0036】
なお、ここでは、蒸発器15の冷媒パス数が2、凝縮器13の冷媒パス数が1の場合の例を説明したが、この構成に限られたものはない。すなわち、蒸発器15及び凝縮器13のそれぞれが複数の冷媒経路を有する多パス型の熱交換器であり、蒸発器の冷媒パス数が凝縮器の冷媒パス数よりも多く構成されていれば、本発明に含まれる。
【0037】
実施の形態2.
以上の実施の形態1は、蒸発器15の冷媒パス数が凝縮器13の冷媒パス数よりも多いことを特徴とする除湿機であった。本実施の形態2は、蒸発器15の流路断面積が凝縮器13の流路断面積よりも大きい除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態2が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
蒸発器15は凝縮器13に比べ、通過する冷媒の密度が小さく冷媒流速が速いため、圧力損失が増大し易い。そして、圧力損失が増大すると冷媒循環量が低下するため、除湿量の低下に繋がる。このため、蒸発器15の流路断面積を、凝縮器13の流路断面積に比べて大きくすることで、除湿機の冷媒回路における冷媒圧力損失を低減できる。ここで、流路断面積は、冷媒パス数と伝熱管16の断面積との積である。
【0039】
ところで、冷媒回路内において凝縮器13出口は冷媒の滞留量が多い。凝縮器13出口の冷媒は液状態であるため、液状態の冷媒が循環せずに滞留してしまうと、滞留した液冷媒量を除いた「残りの冷媒量」で除湿動作が行われることになる。よって、液冷媒の滞留を見越した冷媒量を充填しておく必要がある。見方を変えれば、液冷媒の滞留を改善できれば、充填冷媒量の低減が可能である。凝縮器13出口の液冷媒の滞留を改善するには、凝縮器13の伝熱管16を細径化することが有効である。この点について検証した結果が図6である。
【0040】
図6は、従来の伝熱管内径に比べて凝縮器13及び蒸発器15のそれぞれの伝熱管16を細径化した場合の充填冷媒量比率を示すグラフである。図6において横軸は従来の伝熱管内径に対する、検証対象の伝熱管内径の比である伝熱管内径比[%]である。縦軸は従来の伝熱管内径比の場合に必要であった充填冷媒量に対する、検証対象の伝熱管内径比の場合に必要な充填冷媒量の比である充填冷媒量比率[%]である。
蒸発器15は伝熱管内径比を60%にしても、つまり従来より40%細径化しても、充填冷媒量は97%程度までしか減らない。これに対し、凝縮器13の伝熱管16を40%細径化すると、充填冷媒量を従来よりも約60%程度まで減らせる。
【0041】
つまり、本実施の形態2では、上述したように蒸発器15の流路断面積を凝縮器13の流路断面積に比べて大きくするようにしており、逆に言えば、凝縮器13の流路断面積を蒸発器15の流路断面積よりも小さくしている。蒸発器15と凝縮器13とで流路断面積に大小を付けるにあたり、図6を踏まえて凝縮器側の伝熱管16を細径化することで凝縮器13の流路断面積を小さくするようにすると、除湿量を低下させることなく充填冷媒量の低減も可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、蒸発器15の流路断面積を凝縮器13に比べて大きくすることで以下の効果が得られる。すなわち、蒸発器15の冷媒圧力損失の低減、及び凝縮器13出口の液冷媒の滞留量低減が可能となり、結果として除湿量の維持又は向上が可能となる。
【0043】
また、伝熱管16に細径の円管又は扁平管を使用するため、凝縮器13の容積を小さくできる。これにより充填冷媒量が非常に少なくなり冷媒の燃焼性が軽減されるため、地球温暖化への影響が小さく安全性の高い除湿機を提供できる。
【0044】
実施の形態3.
以上の実施の形態2では、蒸発器15の流路断面積が凝縮器13の流路断面積よりも大きいものであった。本実施の形態3は、蒸発器15のフィンピッチを凝縮器13のフィンピッチよりも小さくすることで、可燃性冷媒の漏洩を低減することを特徴とする除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態3が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0045】
除湿機において、室内空気は、まず蒸発器15を通って除湿され、その空気が凝縮器13で加熱されて室内へ放出される。このため、熱交換器を腐食させる汚染物質を含む空気は初めに蒸発器15を通過することになる。蒸発器15は、室内空気中に含まれる水分を結露させるため、汚染物質が付着しやすい。つまり、蒸発器15は、凝縮器13に比べて腐食性が高く、それ故、凝縮器13に比べて腐食による貫通孔が発生して冷媒漏れが生じる可能性が高い。
【0046】
本除湿機は冷媒回路に可燃性冷媒が充填されるため、いわば室内に可燃性冷媒が存在することになる。このため、本除湿機において冷媒漏洩を防止することは極めて重要である。したがって、熱交換器の防食は不可欠である。
【0047】
そこで、本実施の形態3では、凝縮器13に比べて腐食の生じやすい蒸発器15のフィンピッチを凝縮器13のフィンピッチよりも小さくし、フィン17の枚数を凝縮器13よりも増やすようにした。これにより汚染物質に基づく腐食作用を、伝熱管16ではなくフィン17に相対的に集中させることで、蒸発器15の貫通孔の発生を防ぎ、信頼性の高い除湿機を提供できる。
【0048】
また、銅伝熱管とアルミフィンとを用いる一般的な熱交換器において、アルミの電位は銅よりも低いため、犠牲防食作用によりアルミフィンの腐食が促進され、銅伝熱管は防食されて貫通孔の発生を防ぐことができる。よって、蒸発器15において伝熱管16に銅伝熱管16を用い、フィン17にアルミフィンを用いるようにすれば、更に貫通孔の発生抑制効果を高めることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、蒸発器15のフィンピッチを凝縮器13のフィンピッチよりも小さくしたことで更に以下の効果が得られる。すなわち、汚染物質に基づく腐食作用を、伝熱管16ではなくフィン17に相対的に集中させることで、蒸発器15の貫通孔の発生を防ぐことができて耐腐食性に優れ、冷媒の漏洩を抑制し、信頼性の高い除湿機を提供できる。
【0050】
実施の形態4.
以上の実施の形態3は、蒸発器15のフィンピッチが凝縮器13のフィンピッチよりも小さいことを特徴とするものであった。本実施の形態4は、蒸発器15の伝熱管16の肉厚を厚くしたことを特徴とする除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態4が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0051】
上述したように蒸発器15は凝縮器13に比べて腐食が生じやすいことから、蒸発器15の伝熱管16の肉厚を、少なくとも凝縮器13の伝熱管16の肉厚よりも厚くする。これにより、除湿機のフィン17が腐食しても、伝熱管16における腐食による貫通孔の発生を防ぎ、冷媒漏洩を減らす。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態4によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、蒸発器15の伝熱管16の肉厚を凝縮器13の伝熱管16の肉厚よりも厚くしたことで、以下の効果が得られる。すなわち、蒸発器15の貫通孔の発生を防ぐことができて耐腐食性に優れ、冷媒の漏洩を抑制し、信頼性の高い除湿機を提供できる。
【0053】
なお、伝熱管16となる銅管よりも電位の低い銅あるいは異種金属を銅管の表面にコーティングして伝熱管16の肉厚を増やしても良い。また、本実施の形態4を実施の形態3と組み合わせるようにしてもよい。この場合、伝熱管16の防食効果が更に高まるため、更に安全性の高い除湿機を提供できる。
【0054】
実施の形態5.
以上の実施の形態4は、蒸発器15の伝熱管16の肉厚が凝縮器13の伝熱管16の肉厚よりも厚いことを特徴とするものであった。本実施の形態5は、冷媒として、「炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒からなる単一冷媒」又は「この冷媒を含む混合冷媒」を用いることを特徴とする除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態5が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0055】
上記2つの冷媒のうちのどちらかを用いることで、地球温暖化係数が小さく、環境に優しい除湿機を提供できる。特に、ハイドロフルオロオレフィン系のR1234yf、R1234zeは、従来より除湿機において一般に使用されるR134aの物性に近い。このため、R1234yf、R1234zeのどちらかの冷媒を用いて除湿機を構成する場合には、既存の熱交換器を流用可能である。また、R1234yf及びR1234zeは、カーエアコンに使用されている地球温暖化係数の低い冷媒でもあり安価である。また、R1234yf及びR1234zeは、可燃性であっても、R290のような強燃性でなく微燃性であるため、安全性の観点からも室内設置の除湿機に向いている。
【0056】
以上説明したように本実施の形態5によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、冷媒として、「炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒からなる単一冷媒」又は「この冷媒を含む混合冷媒」を用いたので、以下の効果が得られる。すなわち、地球温暖化係数が小さく、環境に優しい除湿機を提供できる。
【0057】
実施の形態6.
以上の実施の形態5では、冷媒として、「炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒からなる単一冷媒」又は「この冷媒を含む混合冷媒」を用いるものあった。本実施の形態6は、冷媒として、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に、不燃性冷媒を混合した混合冷媒を用いる除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態6が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0058】
R1234yf、R1234zeといったハイドロフルオロオレフィン系冷媒に不燃性冷媒を混合した冷媒を用いると、冷媒の微燃性が弱められ、除湿機の安全性が高まる。
【0059】
ところで、冷媒回路では、作動流体として冷媒の他に冷凍機油が使用されている。冷媒と冷凍機油とを含む作動流体の劣化は、温度が高いほど進行が早く、例えば圧縮機12内の摩擦熱で高温になる摺動部で主に劣化が生じる。また、冷凍機油中の添加剤も同様に熱劣化する。添加剤としては、例えば磨耗防止剤又は酸化防止剤などが該当する。このような劣化物は冷凍機油及び冷媒に対して不溶であり、一般にスラッジと呼ばれる。このスラッジが多量に発生すると、冷媒回路内において流路断面積の小さい配管部分で流路閉塞を起こすことがある。このような状況になると流路抵抗が増大して冷媒の循環量が低下し、冷凍能力が低下し、除湿量の低下を招く。
【0060】
しかし、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に不燃性冷媒を混ぜることにより、ハイドロフルオロオレフィン系冷媒の化学的反応性を抑制できる。このため、圧縮機12の中で摺動部が高温になっても、ハイドロフルオロオレフィン系冷媒の分解又は重合を抑制でき、冷媒のスラッジの発生を抑えられる。
【0061】
以上説明したように本実施の形態6によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、冷媒として、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に不燃性冷媒を混合した混合冷媒を用いたので、以下の効果が得られる。すなわち、冷媒の微燃性が弱められ、除湿機の安全性を高めることができる。また、スラッジの発生を抑えることができる。これにより、冷媒回路を構成する機器内の配管や圧縮機12のスラッジ詰まりを抑え、長期信頼性の高い除湿機を提供できる。
【0062】
実施の形態7.
以上の実施の形態6では、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に不燃性冷媒を混合したものであった。以上の実施の形態6では、不燃性冷媒の混合率について特に規定していなかったが、本実施の形態7は、「炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒」に10〜12%の不燃性冷媒が混合されたことを特徴とするものである。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態7が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
例えば、R1234yf、R1234zeに例えば12%以下の濃度で不燃性冷媒であるR134aを混合する。欧州ではHFC(ハイドロフルオロカーボン)等のF−Gasが規制されており、R1234yf、R1234zeに例えば12%以下の濃度で不燃性冷媒であるR134aを混合した混合冷媒は、このF−Gas規制の基準値であるGWP150以下を満足する。また、R1234yf及びR1234zeをそのまま純物質で使う場合よりも燃焼性を弱める効果が得られる。
【0064】
以上説明したように本実施の形態7によれば、実施の形態1及び実施の形態6と同様の効果が得られるとともに、冷媒として、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に、10〜12%の不燃性冷媒を混合した混合冷媒を用いたので、以下の効果が得られる。すなわち、欧州F−Gas規制の基準値であるGWP150以下を満足することに加えて、純物質で使う場合よりも燃焼性を弱める効果が得られる。
【0065】
実施の形態8.
以上の実施の形態7では、炭素と炭素との間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンをベース成分とした冷媒に、10〜12%の不燃性冷媒が混合されている冷媒を用いるものであった。本実施の形態8は、充填冷媒量を、「冷媒量[g]=7.03×除湿量[l/day]−1.91」(以下、(1)式という)で計算される冷媒量以下としたこと特徴とする除湿機に関する。それ以外の除湿機の構成、動作等は実施の形態1と同様である。以下、本実施の形態8が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0066】
図7は、燃焼濃度下限である5.4%以下を満足する、除湿量に応じた充填冷媒量を示すグラフである。
図7で示すグラフが、上記(1)式を示しており、このグラフから求まる充填冷媒量は、乾球温度27℃、相対湿度60%時の除湿量に対する燃焼濃度下限である5.4%以下を満足する冷媒量の上限である。つまり、所望の除湿量が例えば10[l/day]の場合、充填冷媒量が61[g]以下であれば、この充填冷媒量の全てが仮に室内に漏洩しても、室内の冷媒濃度が燃焼濃度下限(燃焼が生じる冷媒濃度範囲の下限)である5.4%以下となり、燃焼が生じないことを示している。逆に充填冷媒量61[g]を超えると、室内の冷媒濃度が燃焼濃度下限である5.4%を超えてしまい、燃焼が生じる可能性があるということになる。
【0067】
更に具体的に説明すると、除湿量が10[l/day]である、いわば10L機種は、例えば11畳〜14畳を除湿対象空間とする。よって、11畳の部屋の容積であれば、除湿機に充填された61[g]の冷媒の全てが漏洩しても、室内の冷媒濃度が燃焼濃度である5.4%を超えることがなく、燃焼を防止できるということになる。よって、充填冷媒量61[g]は、10L機において燃焼を防ぐことが可能な冷媒量範囲のうちの上限ということになる。
【0068】
なお、乾球温度27℃、相対湿度60%時の燃焼濃度下限(燃焼下限冷媒濃度)が5.4%において燃焼が生じない充填冷媒量が61[g]となるというのは、以下の(2)式に基づくものである。
冷媒量[kg]=部屋の容積[m]×(燃焼下限冷媒濃度[%]/100)×27℃時の冷媒密度[kg/m
つまり、上記(1)式は、所望の除湿量と部屋の容積との関係と、(2)式とを用いて除湿量と冷媒量との関係式に置き換えたものに相当する。
【0069】
また、燃焼濃度の下限を示す「5.4%」の数値は、相対湿度60%で、冷媒としてR1234zeを用いた場合の燃焼試験結果資料に基づくものである。なお、R1234zeと同じく微燃性冷媒であるR1234yfにおいても同様の燃焼試験結果となると考えられ、R1234yfを用いた場合の燃焼濃度下限も「5.4%」でR1234zeと同じである。
【0070】
よって、冷媒としてR1234yf又はR1234zeを用いる場合、所望の除湿量に応じて上記(1)式から求めた充填冷媒量以下の量を充填することで、充填した冷媒の全てが仮に室内に漏洩しても、室内の冷媒濃度が燃焼濃度に満たない。このため、除湿機を安全に使用できる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態8によれば、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、充填冷媒量を、上記(1)式を満たす冷媒量以下としたので、以下の効果が得られる。すなわち、上述したように除湿機内に充填した冷媒の全てが仮に室内に漏洩しても、室内の冷媒濃度が燃焼濃度に満たないため、除湿機を安全に使用できる。
【0072】
なお、上記(1)式から求まる冷媒量は、安全に使用する上で、R1234yf又はR1234zeを単独で除湿機に封入できる量であるが、不燃性冷媒を混合して充填冷媒量を増やしても良い。
【0073】
また、ここではR1234yf又はR1234zeについて述べたが、次の冷媒であっても、同様に安全性の高い除湿機を得られる。すなわち、ISO817及びASHRAE34等で規定されるClass2Lに近い微燃性に分類され、27℃のガス密度が38kg/m以下の冷媒が該当する。この冷媒であれば、上記(1)式で求められる冷媒量以下に充填冷媒量を調整することで、室内に冷媒が漏洩しても燃焼せず安全性の高い除湿機を得ることができる。
【0074】
なお、上記各実施の形態1〜8においてそれぞれ別の実施の形態として説明したが、各実施の形態の特徴的な構成を適宜組み合わせて除湿機を構成してもよい。例えば、実施の形態3と実施の形態4とを組み合わせることで、防食効果を更に高めることができ、安全性の高い除湿機を提供できる。また、各実施の形態1〜8のそれぞれにおいて、同様の構成部分について適用される変形例はその変形例を説明した実施の形態以外の他の実施の形態においても同様に適用される。
【符号の説明】
【0075】
1 除湿機筐体、2 吸込口、3 吹出口、4 湿度センサ、5 温度センサ、6 除湿装置、7 貯水タンク、8 水位センサ、9 送風ファン、10 制御装置、11 操作部、12 圧縮機、13 凝縮器、14 膨張弁、15 蒸発器、16 伝熱管、17 フィン、18 インバータ回路、A 室内空気、B 乾燥空気。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8