特許第6580166号(P6580166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6580166レオロジーコントロールのためのウレアウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580166
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】レオロジーコントロールのためのウレアウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20190912BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20190912BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190912BHJP
   C09D 7/45 20180101ALI20190912BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20190912BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190912BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20190912BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190912BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20190912BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190912BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20190912BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20190912BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20190912BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   C08G18/32 037
   C09D7/43
   C09D201/00
   C09D7/45
   C09D11/03
   C09J201/00
   C09J11/08
   B05D7/24 302T
   C08G18/83
   C08L75/04
   C08G18/76
   C08G18/28 015
   C08G18/32 034
   C08G18/75
   C09K3/00 103G
   C09K3/00 103N
【請求項の数】19
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-564630(P2017-564630)
(86)(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公表番号】特表2018-525458(P2018-525458A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016067588
(87)【国際公開番号】WO2017017036
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】15178541.7
(32)【優先日】2015年7月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510259817
【氏名又は名称】ビイク−ヒエミー ゲゼルシャフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BYK−Chemie GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク エーバーハート
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ナーゲルスディーク
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィア ビューネ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン オーマイス
(72)【発明者】
【氏名】アグネタ シュミット
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−503953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/32
C08G 18/28
C08G 18/75
C08G 18/76
C08G 18/83
C08L 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
は、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルケニル基、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルキニル基、または12〜24個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する多価不飽和ヒドロカルビル基であり、
は、8〜24個の炭素原子を有する飽和の分岐もしくは非分岐アルキル基、または12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルケニル基、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルキニル基、または12〜24個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する多価不飽和ヒドロカルビル基であり、および
n個のR基は全て、独立に、構造単位(IIa−o)、(IIa−m)、(IIa−p)、(IIb−o)、(IIb−m)および(IIb−p)
【化2】
から選択される1種以上の基であり、
n+1個のR基は全て、独立に、構造単位(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIIg)および(IIIh)
【化3】
から選択される1種以上の基であり、および
nは、≧1の整数であり、ここで、nの上限は、前記一般式(I)のウレアウレタンの最大数平均分子量Mであって、65000g/molであり、かつDIN 55672−2に従ってポリメタクリル酸メチルを標準物質として用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される最大数平均分子量Mによって定まり、
上式における前記R基およびR基の隣接するNH基への結合部位は、記号で示される)
のウレアウレタン。
【請求項2】
前記R基は、16〜20個の炭素原子を有する1価不飽和アルケニル基であり、
前記R基は、10〜16個の炭素原子を有する飽和分岐アルキル基または16〜20個の炭素原子を有する1価不飽和アルケニル基であり、
前記n個のR基は、独立に、前記構造単位(IIa−m)および(IIa−p)から選択される1種以上の基であり、
前記n+1個のR基は、独立に、前記構造単位(IIIa)および(IIIb)の1種以上の基であることを特徴とする、請求項1に記載のウレアウレタン。
【請求項3】
前記R基は、非分岐オクタデセニル基であり、
前記R基は、分岐もしくは非分岐C10〜C14アルキル基または非分岐オクタデセニル基であり、
前記n個のR基は、前記構造単位(IIa−m)の基であり、および
前記n+1個のR基は、独立に、前記構造単位(IIIa)および(IIIb)の1種以上の基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のウレアウレタン。
【請求項4】
前記構造単位(IIIa)および(IIIb)は、好ましくは、前記n+1個のR基内に40:60のモル比〜100:0のモル比までで存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウレアウレタン。
【請求項5】
およびRは、16〜20個の炭素原子を有する1価または多価不飽和の分岐または非分岐アルケニル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウレアウレタン。
【請求項6】
はオレイルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のウレアウレタン。
【請求項7】
=Rであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のウレアウレタン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種以上のウレアウレタンを含むウレアウレタン組成物において、
基およびR基の両方が不飽和である前記式(I)の前記ウレアウレタンの重量による比率は、前記式(I)の前記ウレアウレタンの全体を基準として10%〜100%であり、および
前記R基のみが不飽和である前記式(I)の前記ウレアウレタンの重量による比率は、前記式(I)の前記ウレアウレタンの全体を基準として0%〜90%であることを特徴とする、ウレアウレタン組成物。
【請求項9】
液状形態にあることを特徴とする、請求項8に記載のウレアウレタン組成物。
【請求項10】
前記ウレアウレタンは極性非プロトン性溶媒に溶解している、請求項8または9に記載のウレアウレタン組成物。
【請求項11】
前記極性非プロトン性溶媒は、置換または無置換N−アルキルピロリドン、ジアルキルスルホキシド、置換または無置換アミド、および≦80℃の融点を有する有機塩からなる群から選択される、請求項10に記載のウレアウレタン組成物。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のウレアウレタン組成物を調製するためのプロセスにおいて、極性非プロトン性溶媒の存在下で、
(a)式ROHおよび/またはROHの1種以上の1価アルコールと、式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートとから、式R−O−(CO)−NH−R−NCOまたは式R−O−(CO)−NH−R−NCOの1種以上のモノ付加体が調製され、かつ次いで前記モノ付加体は、
(i)式HN−R−NHの1種以上のジアミンと、または
(ii)前記式HN−R−NHの1種以上のジアミンと、前記式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートとの、両端にNH末端を有する1種以上のプレポリマーと、または
(iii)前記式HN−R−NHの1種以上のジアミンおよび前記式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートと、または
(iv)両端にNH末端を有する1種以上のプレポリマー、または前記構造HN−R−NHの1種以上のジアミンと、両端にNH末端を有する1種以上のプレポリマーとの混合物、および前記式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートと反応させられるか;または
(b)前記式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートと、前記式HN−R−NHの1種以上のジアミンとの、両端にNCO末端を有する1種以上のプレポリマーが調製され、かつ前記プレポリマーは、前記式ROHおよび/またはROHの1種以上の1価アルコールと反応させられ;
プロセスの変形形態(a)および(b)において、前記式ROHの少なくとも1種の1価アルコールが使用されることを特徴とする、プロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスが実施され、および次いで前記極性非プロトン性溶媒が除去されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のウレアウレタン(I)を調製するためのプロセス。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のウレアウレタン(I)、または請求項8〜11のいずれか一項に記載のウレアウレタン組成物、または請求項12もしくは13に記載のプロセスの1つにより得ることができるウレアウレタン組成物の、レオロジーコントロール剤および/または沈降防止剤としての使用。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種以上のウレアウレタン(I)または請求項8〜11のいずれか一項に記載の1種以上のウレアウレタン組成物を含むことを特徴とする、レオロジーコントロール剤および/または沈降防止剤。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の1種以上のウレアウレタン(I)または請求項8〜11のいずれか一項に記載の1種以上のウレアウレタン組成物を含むことを特徴とする、塗料組成物、ポリマー配合物、顔料ペースト、シーラント配合物、化粧料、セラミックス配合物、掘削流体、非水性スラリー、接着剤配合物、ポッティングコンパウンド、建築材料配合物、潤滑剤、穴埋め補修コンパウンド、洗剤組成物、印刷用インクおよび他のインクからなる群から選択される液状配合物。
【請求項17】
前記液状配合物全体における前記1種以上のウレアウレタン(I)の比率は0.1重量%〜5重量%である、請求項16に記載の液状配合物。
【請求項18】
前記液状配合物中に、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素および芳香脂肪族炭化水素の群から選択される少なくとも1種の炭化水素がさらに存在することを特徴とする、請求項16または17に記載の液状配合物。
【請求項19】
前記炭化水素は、前記液状配合物の総重量を基準として少なくとも10重量%の範囲で前記液状配合物中に存在する、請求項18に記載の液状配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレアウレタンならびにその使用およびそれを含む配合物と、その製造および使用と、それを含む液状配合物とに関する。
【背景技術】
【0002】
液体系、特に塗料系または掘削流体のレオロジーを制御するためのレオロジー添加剤(rheological auxiliary)として、主に有機変性ベントナイト、シリカ、硬化ヒマシ油およびポリアミドワックスが使用されている。
【0003】
これらのレオロジー添加剤を使用することの欠点は、通常、これらが乾燥固体形態にあることである。そのため、上記レオロジー添加剤は、まず溶媒および剪断力を利用して固まりを砕いた半加工状態にしてから使用される。あるいは、砕く前のレオロジー添加剤を、決まった温度に制御された液体系に導入することによって使用することも可能である。この温度制御が規定から外れると、通常、最終塗膜に塗膜欠陥を生じさせる可能性のある微結晶が生成する。
【0004】
このようなレオロジー添加剤を使用することの一般的な欠点は、これらが透明な塗膜に白濁化および曇りを生じさせることである。さらに、処理中に粉塵が発生する可能性がある乾燥粉体を用いる作業は望ましくない。
【0005】
固体のレオロジーコントロール剤に替えて使用される液体として、特定の尿素化合物の溶液がある。
【0006】
実際、この種の溶液は頻繁に採用されており、例えば、独国特許第2822908号明細書、欧州特許第0006252B1号明細書、独国特許出願公開第19919482A1号明細書、欧州特許出願公開第1188779A号明細書および欧州特許出願公開第2370489A号明細書に記載されている。
【0007】
使用される溶媒または担体媒体は、通常、極性非プロトン性溶媒および/またはイオン液体と称されるものであり、これらは、実際には、穏和な温度条件下(通常、80℃未満、理想的には室温)で溶融して液体となる塩である。
【0008】
通常、溶解した尿素化合物のレオロジーコントロール性はかなり優れているが、多くの場合、対応する尿素溶液の貯蔵安定性に関する最適化を行うことが必要である。換言すれば、尿素の溶液は尿素結晶化に由来する析出物を早期に形成すべきでない。実用上、これは、尿素溶液の貯蔵および輸送が容易であることを意味し、したがって、レオロジーコントロール剤を実際に製造した後に十分な時間が経過した後もレオロジーコントロール剤として(例えば、塗料製造業者により)使用可能であることを意味する。
【0009】
さらに、レオロジーコントロール剤としての作用スペクトルを最適化することも必要である。換言すれば、特に公知の尿素化合物を使用しても十分な成果が得られない低極性系で使用することが可能なレオロジーコントロール剤が必要とされている。こうして尿素系レオロジーコントロール剤の挙動が最適化された場合、これはレオロジー効果の根本的な改善として現れるのみならず、特に無極性系用途で使用する配合物(例えば、特定のバインダー系、洗浄液(purge solution)または他の液体媒体)における混和性および優れた効果としても現れ、好ましくは、それと同時に、レオロジーコントロール剤として使用される対応する組成物の貯蔵安定性も非常に高くなる。
【0010】
独国特許第2822908号明細書には、末端基としてアルキル基および/またはアルキル末端(ポリ)アルキレンオキシド基を有する直鎖ウレアウレタンを含むチキソトロープ剤が記載されている。
【0011】
欧州特許第0006252B1号明細書には、非プロトン性溶媒および塩化リチウムの存在下でチキソトロープ剤を製造するためのプロセスが記載されている。得られるチキソトロープ剤は、既に独国特許第2822908号明細書に記載されている末端基を有する。
【0012】
独国特許出願公開第19919482A1号明細書に開示されているプロセスは、具体的には、欧州特許第000625B1号明細書に記載のプロセスを、ジイソシアネートおよび1価アルコールからモノイソシアネート付加体(これは、後段でリチウム塩および非プロトン性溶媒の存在下においてジアミンと反応させられる)を調製する点でさらに発展させたものである。独国特許出願公開第19919482A1号明細書に記載されているウレアウレタンはまた、任意選択的にヘテロ原子を含む飽和末端基のみを有するか、または末端基としてアラルキル基を有する。独国特許出願公開第19919482A1号明細書から知られている典型的な代表的ウレアウレタンは、実施例12から得られるものであり、これは、トリレンジイソシアネート1分子にn−ドデカノール1分子を付加したモノ付加体に基づいて、さらにキシリレンジアミンを反応させることによって得られる最終生成物である。欧州特許出願公開第2370489A1号明細書は、このプロセスをさらに発展させたプロセスを提示している。この明細書ではリチウム塩を省くことが可能であり、イオン液体、すなわち液体有機塩が使用されている。
【0013】
欧州特許出願公開第1188779A1号明細書は、主として水または水および少量の極性有機溶媒を含む配合物にチキソトロピーを付与するのに好適なレオロジーコントロール剤としてのウレアウレタンに主眼を置くものである。欧州特許出願公開第1188779A1号明細書の発明では、基本的にウレアウレタンの末端基は必ず互いに異なっていなければならない。欧州特許出願公開第1188779A1号明細書は、全ての実施例において、2個の末端基の少なくとも1個がブチルトリグリコールおよび/またはメトキシポリエチレングリコールから誘導された末端基であるウレアウレタンを開示している。実施例8および13においてのみ、ブチルトリグリコールから誘導された末端基に加えて、無極性末端基、すなわちイソトリデシル基(イソトリデカノールから誘導)も有するウレアウレタンの溶液が調製されている。
【0014】
さらに、欧州特許出願公開第2292675A1号明細書には、末端基として、尿素基もしくはウレタン基を介して結合している飽和もしくは不飽和のヒドロカルビル基、または酸素および窒素等のヘテロ原子も含む多くの異なる基を有することができるポリ尿素(polymeric urea)が記載されている。実施例5には、両端にオレイル末端を有する生成物が記載されており、これはイソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジアミンを用いて得られるものである。
【0015】
欧州特許出願公開第10127290A1号明細書には、チキソトロピー性を有する不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている。ここで使用されるチキソトロープ剤は、一般に、ポリエステル樹脂の存在下で調製される。これを調製するには、脂肪族イソシアネートおよびオレフィン性不飽和ヒドロキシル化合物の付加体をまず調製し、次いでこれらをポリエステル樹脂中で脂肪族または芳香脂肪族アミンと反応させ、場合によりさらにポリエステル樹脂自体とも反応させる。具体的に明示されている唯一のオレフィン性不飽和ヒドロキシル化合物はヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルであり、これは、後段でポリエステル樹脂内においてその効果を十分に発揮するために、ポリエステル樹脂に組み込まれるように作用する。しかしながら、欧州特許出願公開第10127290A1号明細書のチキソトロープ剤のチキソトロピー効果に関する結果は、不飽和ポリエステル樹脂の性質が非常に重要であることを示唆している。欧州特許出願公開第10127290A1号明細書では、ウレアウレタンの末端基として不飽和長鎖ヒドロカルビル基を用いることは述べられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の具体的な目的は、相応の高品質なレオロジーコントロール剤を提供することである。これは、公知のレオロジーコントロール剤と比較して、特に無極性系において、塗料組成物中で使用した場合に優れたタレ性を付与するべきであり、および/またはそれ以外に液状配合物中の固体の沈降防止性を改善するべきである。さらに、先行技術から知られているレオロジーコントロール剤の不利な性質は克服されているべきである。上記および以下に記載するさらなる利点は、以下に記載するウレアウレタンおよびウレアウレタン組成物を提供することにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ウレアウレタン
本発明の目的は、特に、一般式(I)
【化1】
(式中、
は、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルケニル基、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルキニル基、または12〜24個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する多価不飽和ヒドロカルビル基であり、
は、8〜24個の炭素原子を有する飽和の分岐もしくは非分岐アルキル基、または12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルケニル基、12〜24個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルキニル基、または12〜24個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する多価不飽和ヒドロカルビル基であり、および
n個のR基は全て、独立に、構造単位(IIa−o)、(IIa−m)、(IIa−p)、(IIb−o)、(IIb−m)および(IIb−p)
【化2】
から選択される1種以上の基であり、
n+1個のR基は全て、独立に、構造単位(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)、(IIIg)および(IIIh)
【化3】
から選択される1種以上の基であり、および
nは、≧1の整数であり、ここで、nの上限は、一般式(I)のウレアウレタンの最大数平均分子量Mであって、65000g/molであり、かつDIN 55672−2に従ってポリメタクリル酸メチルを標準物質として用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される最大数平均分子量Mによって定まる)
のウレアウレタンを提供することにより達成された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これに関連して、Mの上限が固定されることによってnが制限されるため、「n」の最大値に関する特定の数値は不要である。したがって、記号「n」で表されるのは、単に、n≠1である場合、ウレアウレタンがn個の[NH−R−NH−CO−NH−R−NH−CO]単位を含む低重合体または重合体となり得ることである。
【0019】
通常、nは、1〜150または1〜125の整数、好ましくは1〜100または1〜75の整数、最も好ましくは1〜50または1〜25の整数である。さらに、nの値は1〜15、1〜10および1〜5であることが好ましい。
【0020】
n=1である場合、ウレアウレタンは特定の分子量を有する化合物の形態をとる。この化合物は本明細書において特に好ましい。
【0021】
しかしながら、さらにウレアウレタンは低重合体であっても重合体であってもよく、すなわち、n≧2であれば分子が不均質となる可能性があり、その場合、これらは重量平均分子量および数平均分子量を有し、これらの平均値は、一般に、nが増加するにつれて互いの差が大きくなる可能性がある。
【0022】
数平均モル質量が約1000g/molまでであるウレアウレタンの場合、NMRにより、例えば、対象のNMR共鳴シグナルの積分値の比を求めることによって決定することができる。当業者は、より高い分子量範囲の分子量測定にはNMR分光法ではなく他のプロセスが好ましいことを認識している。モル質量が1000g/molを超えるウレアウレタンの数平均分子量は、以下の説明に従いゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるモル質量分布の数平均として求められる。GPCモル質量分布は、DIN 55672 Part 2(2008年6月)に従って測定される。溶出液として臭化リチウムのジメチルアセトアミド溶液(含有量:5g/L)を使用する。校正は、分布が狭く、直鎖状構造を有し、分子量が1000000〜102g/molであるポリメタクリル酸メチルを標準物質として用いて行う。カラム系の温度は50℃とする。
【0023】
n=1の場合、一般式(I)のウレアウレタンの分子量には理論的な下限値が存在し、最小の分子量を有するR基、R基およびR基に基づき、Rとして12個の炭素原子を有するトリアルケン性不飽和ヒドロカルビル基を有する場合には794g/molであり、Rとしてジアルケン性不飽和ヒドロカルビル基を有する場合には792g/molであり、Rとしてモノアルケン性不飽和ヒドロカルビル基を有する場合には798g/molであり、Rとしてモノアルキン性不飽和ヒドロカルビル基を有する場合には796g/molである。n=1の場合、化合物は上述の条件下で均質であり、通常、参照されるのは分子量であり、数平均分子量Mでも重量平均分子量Mでもなく、分子が均質である場合、分子量=M=Mであるため、平均を求める方法は重要でない。
【0024】
本発明によれば、一般式(I)の本発明のウレアウレタンの数平均分子量Mの上限は、65000g/mol、好ましくは50000g/molまたは30000g/mol、より好ましくは20000g/molまたは10000g/mol、最も好ましくは6000g/mol、5000g/molまたは4000g/molである。
【0025】
上式では、RおよびR基と隣接するNH基との結合部位を記号で示す。
【0026】
特別な定義は必要とされていないが、本明細書における「アルキル基」、「アルケニル基」および「アルキニル基」という語は、標準的な化学命名法に従う、脂肪族ヒドロカルビル基の特定の実施形態と見なされる。したがって、これらは、IUPACの炭化水素の定義に準拠して、炭素原子および水素原子のみを含み、したがってヘテロ原子、例えば、酸素または窒素を含まない基である。
【0027】
上に示したウレアウレタンを、以後、本発明のウレアウレタンと称する。
【0028】
ウレアウレタン組成物
本発明は、本発明のウレアウレタンを含むウレアウレタン組成物であって、
基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として10%〜100%であり、および
基の1個のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜90%である、ウレアウレタン組成物をさらに提供する。
【0029】
本明細書では、上述のウレアウレタン組成物を本発明のウレアウレタン組成物とも称する。
【0030】
本発明のウレアウレタン組成物も、式(I)の本発明のウレアウレタンと同様に、他のウレアウレタンをさらに含むことができる。本発明のウレアウレタン以外のこの種のウレアウレタンは、例えば、本発明に従い定義したR基、R基およびR基を有し、本発明のR基とは、炭素原子数がより少ないかもしくはより多く、および/または酸素原子を含み、したがってヒドロカルビル基ではない点が異なっているR基を含む、ウレアウレタンであってもよい。この種の基は、例えば、ジ−、トリ−またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテル基のように、例えば、1個以上のエーテル酸素原子を含むことができる。この種の本発明外のウレアウレタンが本発明のウレアウレタン組成物中に存在する場合、これらは、本発明のウレアウレタン組成物に後に導入することもでき、または他にin situで導入することもできる。後者は、例えば、本発明に従い使用することができるモノ付加体と、本発明に従い使用することができるジアミンとの反応において、ジイソシアネートと本発明外のアルコールとのモノ付加体を少量存在させることにより可能である。
【0031】
但し、好ましい実施形態では、ウレアウレタン組成物中の全ウレアウレタンの少なくとも50重量%が構造(I)を有する。より好ましくは、ウレアウレタン組成物中の全ウレアウレタンの少なくとも50重量%が、RおよびRの両方が不飽和であり、好ましくはエチレン性不飽和である構造(I)を有する。
【0032】
本発明のウレアウレタン組成物のさらなる好ましい実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタン重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として20%〜100%であり、および
基のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜80%である。
【0033】
本発明のウレアウレタン組成物の好ましい実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として50%〜100%であり、および
基のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜50%である。
【0034】
本発明のウレアウレタン組成物の好ましい実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として70%〜100%であり、および
基のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜30%である。
【0035】
本発明のウレアウレタン組成物の好ましい実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として80%〜100%であり、および
基のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜20%である。
【0036】
本発明のウレアウレタン組成物の好ましい実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として90%〜100%であり、および
基のみが不飽和である式(I)のウレアウレタンの重量による比率は、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として0%〜10%である。
【0037】
本発明のウレアウレタン組成物のさらなる実施形態では、R基およびR基の両方が不飽和、好ましくはエチレン性不飽和である式(I)のウレアウレタンを、式(I)のウレアウレタンの全体を基準として100%含む。
【0038】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含む本発明のウレアウレタン組成物の好ましい実施形態において、
基は、12〜20個の炭素原子を有する1価または多価不飽和の分岐または非分岐アルケニル基であり、
基は、8〜20個の炭素原子を有する飽和の分岐もしくは非分岐アルキル基であるか、または12〜20個の炭素原子を有する1価もしくは多価不飽和の分岐もしくは非分岐アルケニル基であり、
n個のR基は、独立に、構造単位(IIa−m)および(IIa−p)から選択される1種以上の基であり、および
n+1個のR基は、独立に、構造単位(IIIa)および(IIIb)の1種以上の基である。
【0039】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含む本発明のウレアウレタン組成物の特に好ましい実施形態において、
基は、16〜20個の炭素原子を有する1価不飽和アルケニル基であり、
基は、10〜16個の炭素原子を有する飽和分岐アルキル基または16〜20個の炭素原子を有する1価不飽和アルケニル基であり、
n個のR基は、独立に、構造単位(IIa−m)および(IIa−p)から選択される1種以上の基であり、および
n+1個のR基は、独立に、構造単位(IIIa)および(IIIb)の1種以上の基である。
【0040】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含む本発明のウレアウレタン組成物の非常に好ましい実施形態において、
基は、非分岐オクタデセニル基、好ましくはオレイル基であり、
基は、分岐もしくは非分岐C10〜C14基、好ましくはイソトリデシル基であるか、または非分岐オクタデセニル基、好ましくはオレイル基であり、
n個のR基は、構造単位(IIa−m)の基であり、および
n+1個のR基は、独立に、構造単位(IIIa)および(IIIb)の1種以上の基である。
【0041】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含むウレアウレタン組成物の全ての実施形態において、構造単位(IIIa)および(IIIb)は、好ましくは、n+1個のR基中に40:60のモル比〜100:0のモル比までで存在し;さらに好ましくは、構造単位(IIIa)および(IIIb)は、n+1個のR基中に50:50のモル比〜100:0のモル比までで存在し;最も好ましくは、構造単位(IIIa)および(IIIb)は、n+1個のR基中に60:40のモル比〜100:0のモル比までで存在する。
【0042】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含む本発明のウレアウレタン組成物の実施形態では、RおよびRは、12〜20個、より好ましくは16〜20個の炭素原子を有する1価または多価不飽和、より好ましくは1価不飽和の分岐または非分岐、より好ましくは非分岐アルケニル基であることが好ましい。より好ましくは、全ての実施形態においてR=Rであり、最も好ましくはR=R=オレイルである。
【0043】
実用性に関しては、本発明のウレアウレタン組成物は、液体形態、好ましくは適用条件下で液体形態、より好ましくは、室温、すなわち25℃において液体形態で提供されることが適切である。好ましくは、本発明のウレアウレタンは、本発明のウレアウレタン組成物中に室温で溶解した形態にある。
【0044】
好適な溶媒は、特に非プロトン性有機溶媒である。特に好適な溶媒は、極性非プロトン性有機溶媒、最も好ましくは、アミド、ラクタム、スルホキシドおよびイオン液体(すなわち、≦80℃の融点を有する有機塩)の群から選択されるものである。したがって、本発明の対応するウレアウレタン組成物の調製をこれらの極性非プロトン性有機溶媒またはイオン液体中で行うことが好ましい。
【0045】
本明細書において特に好ましい極性非プロトン性有機溶媒は、置換または無置換の、好ましくは無置換のN−アルキルピロリドン、ジアルキルスルホキシド、置換または無置換アミド、特にカルボキサミドである。N−アルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドンおよびN−ヒドロキシエチルピロリドンである。ジアルキルスルホキシドの一例はジメチルスルホキシドである。アミドの例は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアルキルアミドアルキルエステル、N,N−ジアルキルアミドアルキルエーテル、ヘキサメチルホスホルアミドおよびアシルモルホリンである。溶媒として好適な好ましいイオン液体は、置換イミダゾリウム塩、例えば、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、エチル硫酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、エチル硫酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、チオシアン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムおよびチオシアン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。該当する溶媒は組み合わせて用いることもできる。
【0046】
溶媒の中でもジメチルスルホキシドが好ましく、特に窒素に結合したアルキル基が直鎖または分岐、好ましくは直鎖であり、アルキル基が1〜20個、好ましくは2〜20個、より好ましくは3〜16個、最も好ましくは4〜12個の炭素原子を有するN−アルキルピロリドンに加えて、N,N−ジメチルアミドアルキルエステル、N,N−ジメチルアミドアルキルエーテル、ホルミルモルホリンおよびアセチルモルホリンが好ましい。
【0047】
溶媒の溶解特性を改善するために、塩、すなわち無機化合物も添加される場合が多い。これらは、好ましくは、元素周期律表の第I主族および第II主族の陽イオン(アルカリ金属およびアルカリ土類金属)の塩またはアンモニウム塩、好ましくは、リチウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩、より好ましくはリチウム塩またはカルシウム塩である。好ましい陰イオンは1価の陰イオン、より好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、ギ酸イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオン、最も好ましくは塩化物イオン、酢酸イオンおよび/または硝酸イオンである。
【0048】
本発明のウレアウレタンおよび本発明のウレアウレタン組成物の調製
本発明のウレアウレタン組成物は、公知の方法で、対応するイソシアネートをアミンと反応させることにより調製することができる。この種のウレアウレタンの調製プロセスは、例えば、欧州特許第0006252B1号明細書、独国特許出願公開第2822908号明細書、独国特許出願公開第19919482号明細書、欧州特許出願公開第1188779号明細書および欧州特許出願公開第2370489A1号明細書に詳述されている。好ましくは、本発明のウレアウレタン組成物もこれらの上述の調製プロセスにより調製される。
【0049】
したがって、好ましいウレアウレタン組成物は、この種の調製プロセスにより得られるものである。
【0050】
例えば、最初に構造ROHおよび/またはROHを有する1種以上の1価アルコールと、OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートとから、1種以上のモノ付加体を調製することが可能であり、その結果として、付加体としての式R−O−(CO)−NH−R−NCOまたはR−O−(CO)−NH−R−NCOのモノ付加体が得られる。これらのモノ付加体は、例えば、過剰のジイソシアネートを使用することによって得ることができ、その場合、調製後に過剰のジイソシアネートを例えば蒸留によって除去することができる。
【0051】
次いで、このモノ付加体を、構造HN−R−NHを有する1種以上のジアミンと反応させることにより最終生成物を得ることができる。
【0052】
上述のジアミンではなく、両端にNH末端を有する、1種以上の上述のジアミンと、1種以上の上述のジイソシアネートとの1種以上のプレポリマーを使用することも可能である。次いで、このプレポリマーをモノ付加体と反応させる。
【0053】
さらなる例示的な実施形態では、構造HN−R−NHを有するジアミンと、1種以上のジイソシアネートOCN−R−NCOとの混合物とモノ付加体とをワンポット反応で反応させることにより、ウレアウレタン(I)を得る。
【0054】
さらなる別法では、モノ付加体を、両端にNH末端を有する1種以上のプレポリマーと反応させるか、または構造HN−R−NHを有する1種以上のジアミンと、両端にNH末端を有する1種以上のプレポリマーとの混合物に加えて、式OCN−R−NCOの1種以上のジイソシアネートと反応させることにより、ウレアウレタン(I)を得る。
【0055】
本発明のウレアウレタンを得るために、ジイソシアネートOCN−R−NCOおよびジアミンHN−R−NHを使用して、両端にNCO末端を有するプレポリマーを調製し、このプレポリマーを構造ROHおよび/またはROHを有する1価アルコールと反応させることも可能である。
【0056】
但し、上述の全ての場合において、式ROHの少なくとも1種の1価アルコールを使用することは必須である。
【0057】
反応は、好ましくは、上述の極性非プロトン性溶媒中で行われる。ウレアウレタン自体は、必要に応じて、例えば溶媒を留去することによって得ることができる。
【0058】
本発明のウレアウレタンおよび本発明のウレアウレタン組成物の使用分野
本発明のウレアウレタンおよびそれを含むウレアウレタン組成物は、無極性バインダー系、例えば、長油性アルキド、中油性アルキド、NAD(非水性分散液)系、TPA(熱可塑性アクリレート)系において特に良好なレオロジー効果を示す。本発明の組成物のレオロジー効果は、例えば、耐タレ性、すなわち対応する塗料配合物のタレ限界から決定することができる。
【0059】
驚くべきことに、本発明のウレアウレタンまたはそれを含む本発明のウレアウレタン組成物は、有機バインダーが低量である配合物にも、または有機バインダーを含まない配合物にさえも、例えば、掘削流体と称されるものにも使用することができる。
【0060】
したがって、本発明のウレアウレタンおよびそれを含むウレアウレタン組成物は、好ましくはレオロジーコントロール剤、より好ましくはチキソトロープ剤であり、それぞれ同様に本発明の主題の一部を構成する。
【0061】
本発明のウレアウレタンおよびそれを含むウレアウレタン組成物のさらなる使用分野は、沈降防止剤、すなわち液体系中の固体粒子の沈殿を遅延させるか防止さえする添加剤としての使用であり、本明細書におけるこれらの粒子の性質は無機または有機のいずれであってもよい。対応する有用な系の例としては、ペイント、接着剤、潤滑剤およびポリマー配合物に加えて、ガスおよび石油生産に使用される掘削流体(多くの場合、連続相が炭化水素であり、分散相が水性であるW/O型エマルジョンの形態にある)および非水性スラリー(例えば、グアーまたはキサンタンの炭化水素中スラリー)が挙げられる。
【0062】
本発明のウレアウレタン組成物は、特に無極性系において顕著な混和性をさらに示す。これは、この種の配合物、例えば塗料組成物、特に無極性溶媒をベースとする配合物における微小片、曇りおよび/または白濁の生成が、先行技術から知られている代替物と比較して低減され、理想的には完全に解消されていることを意味する。
【0063】
それと同時に、本発明の組成物の溶液は貯蔵安定性に極めて優れる。これは、本発明のウレアウレタンが好適な溶媒(組み合わせて用いることもできる)中において長期間にわたり結晶化しないことを意味する。
【0064】
本明細書における好ましい溶媒は、置換または無置換、好ましくは無置換のN−アルキルピロリドン、ジアルキルスルホキシド、置換または無置換アミド、特にカルボキサミドである。N−アルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドンおよびN−ヒドロキシエチルピロリドンである。ジアルキルスルホキシドの一例はジメチルスルホキシドである。アミドの例は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアルキルアミドアルキルエステル、N,N−ジアルキルアミドアルキルエーテル、ヘキサメチルホスホルアミドおよびアシルモルホリンである。溶媒として好適な好ましいイオン液体は、置換イミダゾリウム塩、例えば、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、エチル硫酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、エチル硫酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、チオシアン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムおよびチオシアン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0065】
溶媒の中でも、ジメチルスルホキシドが好ましく、特に窒素に結合したアルキル基が直鎖または分岐、好ましくは直鎖であり、好ましくは1〜20個、より好ましくは3〜16個、最も好ましくは4〜12個の炭素原子を含むN−アルキルピロリドンに加えて、N,N−ジメチルアミドアルキルエステル、N,N−ジメチルアミドアルキルエーテル、ホルミルモルホリンおよびアセチルモルホリンが好ましい。
【0066】
様々な本発明のウレアウレタン、本発明のウレアウレタン組成物、本発明のレオロジーコントロール剤、本発明のチキソトロピー剤または本発明の沈降防止剤を組み合わせて、すなわち、この種の物質、組成物または薬剤を混合物として、好ましくはレオロジーコントロールのために、特にチキソトロピーを付与するためにまたは沈降防止剤として使用することも可能である。
【0067】
したがって、本発明は、本発明のウレアウレタンまたは本発明のウレアウレタン組成物の、沈降防止剤としてまたはレオロジーコントロール剤として、好ましくはチキソトロピー剤としての使用をさらに提供し、これらは各場合において液状配合物であり、好ましくは室温(25℃)で液体である。
【0068】
これらの液状配合物は、好ましくは、塗料組成物、例えばペイントおよびワニス、またはポリマー配合物、顔料ペースト、シーラント配合物、化粧料、セラミックス配合物、ガスおよび石油生産用掘削流体、非水性スラリー、洗剤組成物、接着剤配合物、ポッティングコンパウンド、建築材料配合物、潤滑剤、穴埋め補修(spackling)コンパウンド、印刷用インクまたは他のインク、例えばインクジェット用インクである。
【0069】
好ましい液状配合物は、無水であるかまたはごく少量の水を含むものである。本明細書における少量の水とは、水含有量が5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味すると理解される。
【0070】
さらなる特定の実施形態において、本発明の液状配合物は、油中水型エマルジョンと呼ばれるものの連続相を形成する。その場合の上述の水の量は、エマルジョンを配合する前の液状配合物(すなわち、後の「油相」)に存在する水のみに関連する。エマルジョンが生成する際に水相から連続相へと溶け込む水の割合は極めて小さいため、本明細書では考慮しない。
【0071】
油中水型エマルジョンは、その総重量を基準として、高い可能性で例えば20重量%または30重量%の水を含むことができる。典型的な油中水型エマルジョンは、掘削泥水、好ましくは石油掘削泥水と称されるものであり、これも同様に本発明の主題の一部を構成する。
【0072】
ペイントおよびワニス、印刷インクおよび他のインク、特にインクジェット用インクは、溶剤系または無溶剤系のいずれのペイントおよびワニス、印刷用インクおよび他のインク(インクジェット用インク等)であってもよい。ペイントおよびワニスは、自動車用塗料系、建築用塗料、保護塗料(特に船および橋梁の塗装)、缶およびコイル状鋼板(coil)用塗料、木材および家具用塗料、工業用塗料、プラスチック用塗料系(polymer paint system)、金属線被覆(wire coating)、食品および飲料ならびに種子用コーティングに加えて、カラーフィルタ(例えば、液晶ディスプレイ用)に使用されるカラーレジストと称されるものを含む、非常に幅広い異なる使用分野で使用可能である。ペイントおよびワニスの使用分野としては、一般に固形分の比率が非常に高く液体成分の比率が低いペースト状物質、例えば、顔料ペーストと称されるもの、またはそれ以外に微粉化された金属粒子または金属粉末をベースとするペースト(例えば、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、青銅、黄銅をベースとするもの)も挙げられる。本発明のウレアウレタンまたはウレアウレタン組成物を含むこの種のペーストも同様に本発明の主題の一部を構成する。
【0073】
ポリマー配合物は、化学的架橋プロセス(「硬化」)により好ましくは熱硬化性物質に変換されるポリマー材料を製造するための、好ましくは液状配合物、より好ましくは室温、すなわち25℃で液状であるものである。したがって、好ましいポリマー調製物は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド等)である。これらは幅広い異なる条件下、例えば室温で(常温硬化系)または高温で(高温硬化系)、場合により加圧も行いながら(「密閉金型」用途、シート成形コンパウンドまたはバルク成形コンパウンド)硬化させることができる。好ましいポリマー配合物には、PVCプラスチゾルも含まれる。
【0074】
化粧料は、パーソナルケア領域、またはそれ以外にヘルスケア領域に使用される多様な液状組成物、例えば、ローション剤、クリーム剤、ペースト剤(例えば、練り歯磨き)、フォーム剤(例えば、シェービングフォーム)、ジェル剤(例えば、シェービングジェル、シャワージェル、ゲル形態で配合された医薬品)、毛髪用シャンプー、液体石鹸、マニキュア液、口紅または染毛剤とすることができる。
【0075】
掘削流体は掘削作業において坑井内にポンプ注入される液体である。これらは、一般に、無機固体粒子の懸濁液であり、多くの場合、専用のミキサーを用いて製造される。これらは好ましくは油系掘削流体と呼ばれるものであり、連続液相が有機液体媒体(一般に炭化水素)から構成され、その中に硫酸バリウム等の無機成分が懸濁している。これらはまた、多くの場合、逆相型エマルジョン、すなわち水滴が有機媒体中に乳化した形態にある。ガスおよび石油生産では非水性スラリーも好ましく使用され、これは、好ましくは、有機化合物、好ましくは多糖類(例えば、キサンタンガムまたはグアーガム)の炭化水素中懸濁液である。これらは、多くの場合、水性媒体を後段で濃厚化すること(例えば、水圧破砕法と称されるもの)を目的として使用されるポンプ注入可能な媒体である。
【0076】
潤滑剤は、潤滑目的で使用される、すなわち、摩擦および摩耗の低減、力の伝達、冷却、制振、シール作用および腐食防止の役割を果たす組成物であり、本明細書では液体潤滑剤および潤滑グリースが好ましい。
【0077】
接着剤は、加工条件下で液状であり、面の結合(areal bonding)および内部強度により被着体同士を接合することができる任意の加工材料とすることができる。これらの接着剤は、好ましくは、溶剤系であっても無溶剤系であってもよい。
【0078】
最後に、本発明は、本発明のウレアウレタンまたは本発明のウレアウレタン組成物を含む上述の液状配合物に関する。
【0079】
本発明の液状配合物、特に塗料組成物、ポリマー配合物、顔料ペースト、シーリング用配合物、化粧料、セラミックス配合物、非水系スラリーならびにガスおよび石油生産用掘削流体、接着剤配合物、ポッティングコンパウンド、建築材料配合物、潤滑剤、穴埋め補修コンパウンド、印刷用インクまたは他のインクにおける本発明のウレアウレタンの比率は、液状配合物の総重量を基準として、好ましくは0.1重量%〜5重量%、より好ましくは0.15重量%〜3重量%、最も好ましくは0.2重量%〜2.0重量%である。
【0080】
好ましくは、本発明の液状配合物は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素および芳香脂肪族炭化水素の群から選択される1種以上の炭化水素をさらに含む。より好ましくは、この炭化水素は、液状配合物の総重量を基準として少なくとも10重量%〜99重量%の範囲で液状配合物中に存在する。液状配合物の炭化水素含有量の好ましい下限値は、例えば、15重量%または20重量%である。一方、好ましい上限値は、99重量%未満、例えば80重量%、70重量%とすることもでき、25重量%とすることさえできる。
【0081】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0082】
以下に記載する百分率は、特に断りのない限り重量百分率である。
【0083】
(I)レオロジーコントロール剤の合成
比較例
比較例1(独国特許出願公開第19919482A1号明細書の実施例12に類似):
最初に欧州特許出願公開第1188779号明細書に従い、トリレン2,4−ジイソシアネート(Desmodur T100、Bayer)およびラウリルアルコールからモノ付加体を調製する。反応器内で、LiCl(1.65g、0.04mol)をN−エチルピロリドン(BASF)(75.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(3.55g、0.026mol)を加え、透明な混合物を60℃に加熱する。次いで、Desmodur T100およびラウリルアルコールのモノ付加体(19.8g、0.052mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。ウレアウレタン含有量が25%である無色透明な流体生成物を得る。
【0084】
比較例2:
最初に欧州特許出願公開第1188779号明細書に従い、トリレン2,4−ジイソシアネート(Desmodur T100、Bayer)およびラウリルアルコールからモノ付加体を調製する。反応器内で、LiCl(1.65g、0.04mol)を5−(ジメチルアミノ)−2−メチル−5−オキソペンタン酸メチル(75.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(3.55g、0.026mol)を加え、透明な混合物を60℃に加熱する。次いで、Desmodur T100およびラウリルアルコールのモノ付加体(19.8g、0.052mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。ウレアウレタン含有量が25%である無色透明な流体生成物を得る。
【0085】
比較例3:
比較例3として、欧州特許出願公開第2292675A1号明細書の実施例5を調製した。
【0086】
実施例
最初に、以下にさらに記載するウレアウレタンの合成の出発原料として、欧州特許出願公開第1188779号明細書に従い、次に示すモノ付加体を調製する。
モノ付加体1を、トリレン2,4−ジイソシアネートおよびトリレン2,6−ジイソシアネート(Desmodur T65、Bayer)の混合物と、(Z)−オクタデク−9−エノール(オレイルアルコール、Merck)とから調製する。
モノ付加体2を、トリレン2,4−ジイソシアネートおよびトリレン2,6−ジイソシアネート(Desmodur T65、Bayer)の混合物と、Exxal(商標)13トリデシルアルコール(C13を多く含む、C11〜14アルカノール、Exxon Mobil Corporation)とから調製する。
モノ付加体3を、トリレン2,4−ジイソシアネート(Desmodur T100、Bayer)と、1−ドデカノール(Aldrich)とから調製する。
【0087】
実施例1:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(3.0g、0.07mol)をN−メチルピロリドン(BASF)(150.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(6.5g、0.047mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(24.3g、0.052mol)およびモノ付加体2(16.2g、0.042mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で1時間以内に加える。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを25%含有する。
【0088】
実施例2:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(3.3g、0.078mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(90.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(7.2g、0.052mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(49.5g、0.104mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを40%含む。
【0089】
実施例3:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(2.8g、0.066mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(150.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(6.0g、0.044mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(41.2g、0.088mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを25%含む。
【0090】
実施例4:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(2.8g、0.066mol)をN−メチルピロリドン(BASF)(150.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(6.0g、0.044mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(41.2g、0.088mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを25%含む。
【0091】
実施例5:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(4.5g、0.105mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(225.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(9.7g、0.07mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(36.5g、0.077mol)およびモノ付加体2(24.4g、0.063mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを25%含む。
【0092】
実施例6:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(5.4g、0.127mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(210.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(11.7g、0.085mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(42.0g、0.089mol)およびモノ付加体2(31.0g、0.081mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを30%含む。
【0093】
実施例7:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(5.3g、0.126mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(210.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(11.6g、0.084mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(45.6g、0.097mol)およびモノ付加体2(27.5g、0.071mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを30%含む。
【0094】
実施例8:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.3g、0.149mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(195.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.7g、0.099mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(46.8g、0.099mol)およびモノ付加体2(38.2g、0.099mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0095】
実施例9:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.3g、0.149mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(195.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.5g、0.098mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(51.1g、0.108mol)およびモノ付加体2(34.1g、0.089mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0096】
実施例10:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.2g、0.146mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(195.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.4g、0.098mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(55.3g、0.117mol)およびモノ付加体2(30.1g、0.078mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0097】
実施例11:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.3g、0.149mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(245.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.7g、0.099mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(46.8g、0.099mol)およびモノ付加体2(38.2g、0.099mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを30%含む。
【0098】
実施例12:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.3g、0.149mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(280.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.7g、0.099mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(46.8g、0.099mol)およびモノ付加体2(38.2g、0.099mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを27.5%含む。
【0099】
実施例13:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.3g、0.149mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(280.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.5g、0.098mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(51.1g、0.108mol)およびモノ付加体2(34.1g、0.089mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを27.5%含む。
【0100】
実施例14:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.2g、0.146mol)をジメチルスルホキシド(DMSO、Merck)(280.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(13.4g、0.098mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(55.3g、0.117mol)およびモノ付加体2(30.1g、0.078mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように1時間以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。無色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを27.5%含む。
【0101】
実施例15:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(4.2g、0.099mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(130.0g)に60℃で撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(9.1g、0.066mol)を加えると、溶液は数秒後に白濁化する。次いで、モノ付加体1(32.1g、0.066mol)およびモノ付加体3(25.5g、0.066mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で30分以内に滴下する。その間に反応混合物は完全に透明になる。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。黄色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0102】
実施例16:
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(4.0g、0.095mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(130.0g)に60℃で撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(8.7g、0.064mol)を加えると、溶液は数秒後に白濁化する。次いで、モノ付加体1(45.0g、0.095mol)およびモノ付加体3(12.2g、0.032mol)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で30分以内に滴下する。その間に反応混合物は完全に透明になる。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。黄色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0103】
実施例17(低重合体/重合体;M=3135、M=3708)
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.0g、0.142mol)をN−オクチルピロリドン(BASF)(130.0g)に60℃で撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(9.7g、0.071mol)を加えると、溶液は数秒後に白濁化する。次いで、モノ付加体1(51.4g、0.109mol)およびトリレンジイソシアネート(2.8g、0.016mol)(Desmodur T80;Bayerからのトリレン2,4−ジイソシアネートおよびトリレン2,6−ジイソシアネートの混合物)の混合物を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で30分以内に滴下する。その間に反応混合物は完全に透明になる。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。黄色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0104】
実施例18(低重合体/重合体;M=3317、M=3967)
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.2g、0.147mol)をN−オクチルピロリドン(Aldrich)(130.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(10.0g、0.073mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(50.1g、0.105mol)およびトリレンジイソシアネート(Bayerからのトリレン2,4/2,6−ジイソシアネートの混合比4:1の異性体混合物;Desmodur T80)(3.6g、0.021mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように35分以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間および90℃でさらに30分間撹拌する。黄色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0105】
実施例19(低重合体/重合体;M=3377、M=4102)
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(6.5g、0.153mol)をN−オクチルピロリドン(Aldrich)(130.0g)に撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(10.4g、0.077mol)を加え、混合物を60℃に加熱する。次いで、モノ付加体1(48.7g、0.102mol)およびトリレンジイソシアネート(Bayerからのトリレン2,4/2,6−ジイソシアネートの混合比4:1の異性体混合物;Desmodur T80)(4.4g、0.026mol)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないように35分以内に滴下する。反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間および90℃でさらに30分間撹拌する。黄色透明な流体生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0106】
実施例20(低重合体/重合体;M=5021、M=7865)
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(4.8g、0.114mol)をN−オクチルピロリドン(Aldrich)(130.0g)に60℃で撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(15.5g、0.114mol)を加えると、溶液は数秒後に白濁化する。次いで、モノ付加体1(36.4g、0.076mol)およびトリレンジイソシアネート(13.3g、0.076mol)(Bayerからのトリレン2,4/2,6−ジイソシアネートの混合比4:1の異性体混合物;Desmodur T80)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で50分以内に滴下する。その間に反応混合物はほぼ透明になる。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。その間に溶液は完全に透明になり、黄色透明な粘稠生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0107】
実施例21(低重合体/重合体;M=3935、M=5512)
撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応器内で、LiCl(4.0g、0.094mol)をN−オクチルピロリドン(Aldrich)(130.0g)に60℃で撹拌しながら溶解する。その後、メタ−キシリレンジアミン(12.8g、0.094mol)を加えると、溶液は数秒後に白濁化する。次いで、モノ付加体1(45.0g、0.094mol)およびトリレンジイソシアネート(8.2g、0.047mol)(Bayerからのトリレン2,4/2,6−ジイソシアネートの混合比4:1の異性体混合物;Desmodur T80)を、撹拌しながら温度が80℃を超えないような速度で50分以内に滴下する。その間に反応混合物は完全に透明になる。添加終了後、反応を完結させるために反応混合物を80℃で3時間撹拌する。黄色透明な粘稠生成物を得る。生成物はウレアウレタンを35%含む。
【0108】
(II)レオロジーコントロール剤として好適なウレアウレタンの性能試験
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
評点尺度の説明
【0112】
【表3】
【0113】
試験方法1:溶媒混合物
100mL容のガラス瓶に、それぞれキシレン/n−ブタノール(90:10(w/w))およびDowanol PMA/Shellsol A/イソブタノール(50:25:25(w/w/w))の溶剤混合物(50g)を装入し、次いでそれぞれの添加剤をDispermat CV(歯付ディスク、d=2.5cm、1000rpm)を用いて撹拌しながら混合する。全ての場合において、ウレアウレタンの添加量として2%(溶剤混合物の総質量を基準とする)に相当する量を選択した。添加終了後、撹拌をさらに1分間継続する。
【0114】
次いで試料を室温で1日間静置し、次いで、レオロジー効果の指標としてのゲル強度および添加剤の系内への混和性の指標としての白濁化を目視で評価する。
【0115】
【表4】
【0116】
この表から、比較例1のゲル強度が著しく劣っており、本発明の実施例1および2よりも混和性が低いことが分かる。
【0117】
試験方法2:Acrydic A−188/A−1300白色ペイント
100mL容のガラス瓶に、後に詳述する組成を有するAcrydic A−188/A−1300白色ペイント(50g)を装入し、次いでそれぞれの添加剤をDispermat CV(歯付ディスク、d=2.5cm、1000rpm)で撹拌しながら混合する。添加終了後、撹拌をさらに1分間継続する。全ての場合において、ウレアウレタンの添加量として0.25重量%(配合物の総質量を基準とする)に相当する量を選択した。
【0118】
次いで試料を室温で1日間静置した後、レオロジー効果の指標としての耐タレ性を塗布条件下で試験した。
【0119】
この目的のために、試料をスパチュラで均質に混合した後、コントラストチャートに50〜500μmのステップギャップバーアプリケーター(step gap bar applicator)および卓上型自動アプリケーター(BYK−Gardnerから)を用いて5cm/秒の速度で塗布する。塗布後、コントラストチャートを乾燥させるためにそのまま垂直に吊り下げる。乾燥後、塗料がダレない、すなわち明らかな流れまたは膨れの発生が見られない最大膜厚(μm)(湿潤)を求める。同量のウレアウレタンを使用した場合の耐ダレ性の値が高いほど、レオロジー効果が高い。
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
この表から、比較例2は耐タレ性という観点でのレオロジー効果が本発明の実施例3および4よりも劣っていることは明らかである。
【0123】
試験方法3:Setal A F 26 X白色ペイント
100mL容のガラス瓶に、後に詳述する組成を有するSetal A F 26 X白色ペイント(50g)を装入し、次いでそれぞれの添加剤をDispermat CV(歯付きディスク、d=2.5cm、1000rpm)で撹拌しながら混合する。全ての場合において、ウレアウレタン添加量として0.5重量%(ペイント配合物の総質量を基準とする)に相当する量を選択した。添加終了後、撹拌をさらに1分間継続する。
【0124】
次いで試料を室温で1日間静置した後、これを塗布することにより、レオロジー効果の指標としての耐タレ性を評価する。この目的のために、試料をスパチュラで均質に混合した後、コントラストチャートに50〜500μmのステップギャップバーアプリケーターおよび卓上型自動アプリケーター(BYK−Gardnerから)を用いて5cm/秒の速度で塗布する。塗布後、コントラストチャートを乾燥させるためにそのまま垂直に吊り下げる。乾燥後、塗料がダレない、すなわち明らかな流れまたは膨れの発生が見られない最大膜厚(μm)(湿潤)を求める。同量のウレアウレタンを使用した場合の耐ダレ性の値が高いほど、レオロジー効果が高い。
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
この表から、比較例2が本発明の生成物よりも耐ダレ性が劣ることは明らかである。
【0128】
試験方法4:Worleekyd B6301バインダー
100mL容のガラス瓶にWorleekyd B6301バインダー(50g)を装入し、次いでそれぞれの添加剤をDispermat CV(歯付きディスク、d=2.5cm、1000rpm)で撹拌しながら添加する。全ての場合において、ウレアウレタンの添加量として1.0重量%(ペイント配合物の総質量を基準とする)に相当する量を選択する。添加終了後、撹拌をさらに1分間継続する。
【0129】
次いで試料を室温で1日間静置した後、これを塗布することにより、レオロジー効果の指標としての耐ダレ性を評価する。この目的のために、試料をスパチュラで均質に混合した後、コントラストチャートに50〜500μmのステップギャップバーアプリケーターおよび卓上型自動アプリケーター(BYK−Gardnerから)を用いて5cm/秒の速度で塗布する。塗布後、コントラストチャートを乾燥させるためにそのまま垂直に吊り下げる。乾燥後、塗料がダレない、すなわち明らかな流れまたは膨れの発生が見られない最大膜厚(μm)(湿潤)を求める。同量のウレアウレタンを使用した場合の耐ダレ性の値が高いほど、レオロジー効果が高い。
【0130】
【表9】
【0131】
この表から、比較例1および2の耐ダレ性が本発明の実施例よりも劣ることは明らかである。
【0132】
試験方法5:油系掘削泥水
まず掘削泥水(400g)を、詳述する配合に従い、Hamilton Beachミキサー(GM20型HMD200−CEモデル、製造業者:Hamilton Beach;設定:レベル1)を用いて製造する。
【0133】
泥水試料を100gずつに分け、それぞれの添加剤をウルトラタラックス撹拌機(製造業者:IKA−Werke GmbH、T45)を用いて6000rpmで5分間かけて混合する(ブランク試料も同様に剪断する)。全ての場合において、ウレアウレタンの添加量として0.5重量%(掘削泥水の総質量を基準とする)に相当する量を選択した。
【0134】
分離特性を求めるために、各場合において掘削泥水(60g)を50mL容のスナップ蓋付きボトル(snap−lid bottle)に分注し、室温で4週間保存する。その後、レオロジー効果の指標としての分離(シネレシスの発生)を、スナップ蓋付きボトに充填された全体の高さを基準とする%として評価する。分離相の高さが低いほど添加剤のレオロジー効果が高く、したがって成分分離に抵抗するためにより適切に使用することができる。
【0135】
選択された実施例に関し、掘削泥水の残り(40g)を50mL容のガラス瓶に分注する。室温で16時間静置した後、Physica MCR−301レオメータ(製造業者:Anton Paar GmbH)を使用し、DPP30プレート−プレート構成を用いて測定ギャップを0.5mmとし、剪断速度制御下で(剪断速度を10、150、300、500および1000 1/sとする)粘度の温度依存性を3種の温度(4℃、25℃、66℃)で測定する。
【0136】
【表10】
【0137】
【表11】
【0138】
この表から、実施例2および15〜21による本発明の生成物は、比較例1および3またはブランク試料と比較して、分離に抵抗して系を安定化させる作用が高いことは明らかである。
【0139】
【表12】
【0140】
この表から、比較例1は実施例2による本発明の生成物と比較して粘度上昇が非常に小さいことは明らかである。