特許第6580168号(P6580168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580168
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー媒体及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/281 20060101AFI20190912BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20190912BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20190912BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20190912BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20190912BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20190912BHJP
   C12N 1/02 20060101ALN20190912BHJP
   C07K 14/005 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   B01J20/281 G
   C12N7/02
   B01D15/36
   B01J20/26 L
   B01J20/281 R
   B01J20/285 S
   G01N30/00 C
   G01N30/02 B
   !C12N1/02
   !C07K14/005
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-4345(P2018-4345)
(22)【出願日】2018年1月15日
(62)【分割の表示】特願2015-135562(P2015-135562)の分割
【原出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-59952(P2018-59952A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年1月15日
(31)【優先権主張番号】61/369,331
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディビッド・ヤヴォルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アマラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーキン・ウマナ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・カタルド
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・コズロフ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ストーン
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/146321(WO,A1)
【文献】 特表2008−510142(JP,A)
【文献】 特表2002−537106(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0251193(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0032816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281−20/292
G01N 30/00 −30/96
B01J 13/00
B01D 15/00 −15/42
C07K 1/00 −19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負に帯電したウイルスを精製する方法であって、前記方法は、以下のステップを含む、該方法:
負に帯電したウイルスを含むサンプルを提供するステップ;
前記負に帯電したウイルスを含むサンプルを、カットナイロン人絹繊維媒体の軸方向に圧縮したベッドと接触させるステップ、ここで、前記カット繊維は、実質的な長軸部を形成する本体領域を含む断面積を有し、前記本体領域から外方へ延びた複数の突起を有し、前記繊維上にはポリマー官能性が付与されており、前記ポリマー官能性の表面がペンダントトリメチルアンモニウム基で改変されている;
前記繊維を洗浄して、未結合の成分を除去するステップ;
前記負に帯電したウイルスを溶出させ、これにより前記負に帯電したウイルスを精製するステップ。
【請求項2】
負に帯電したウイルスをサンプルから除去する方法であって、前記方法は、以下のステップを含む、該方法:
負に帯電したウイルスを含むサンプルを提供するステップ;
前記負に帯電したウイルスを含むサンプルを、カットナイロン人絹繊維媒体の軸方向に圧縮したベッドと接触させるステップ、ここで、前記カット繊維は、実質的な長軸部を形成する本体領域を含む断面積を有し、前記本体領域から外方へ延びた複数の突起を有し、前記繊維上にはポリマー官能性が付与されており、前記ポリマー官能性の表面がペンダントトリメチルアンモニウム基で改変されており、これにより前記負に帯電したウイルスを前記繊維に結合させる;
前記繊維を洗浄して、未結合の成分を除去するステップ;
前記負に帯電したウイルスを溶出させるステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年7月30日出願の米国予備出願第61/369331号の優先権を主張する。
本発明はイオン交換クロマトグラフィー等によるなどのバイオ分子の精製に適したクロマトグラフィー媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体等の各種の治療用バイオ分子の商業規模の精製は現在ビーズをベースとしたクロマトグラフィー樹脂を使用して実施されている。モノクローナル抗体(mAB)は治療剤及び診断剤としてますます重要性を増している。候補mABに対するハイブリドーマライブラリーのスクリーニング工程は時間と大きな労力を要する。一旦適当なmABを発現するハイブリドーマ細胞種(細胞株)が確立されたら、さらなる特性化のために十分なmABを生産するための精製方法が開発されなければならない。従来の精製方法はタンパク質A又はタンパク質G親和クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーを使用している。生成された抗体は脱塩され、透析を使用して生理的緩衝液へ交換される。通常、全体のプロセスの完結には数日間かかり、複数のmABを並行して評価しなければならない場合に特に面倒である。
【0003】
現在のところ、クロマトグラフィー樹脂はビーズがアフィニティー、陽イオン交換又は陰イオン交換モードで動作することを可能にするような種々のリガンド構造を有するように製造される。これらの樹脂は、大規模(例えば10000リットル)にバイオ分子をバッチ処理できるに十分な吸着容量を有する材料を提供するように、高多孔質で且つ大表面積を有する。クロマトグラフィー樹脂は典型的には球形構造を有することで、最小の流動不均一性でもって効率的なカラム充填を可能にする。ビーズ間の間隙はクロマトグラフィーカラムを貫く対流輸送流れチャンネルを提供する。これはクロマトグラフィーカラムが、最小の圧力降下と大きい線速度で、大きいベッド深さをもって運転されることを可能にする。これ等の因子の組み合わせは、クロマトグラフィー樹脂がバイオ分子の大規模精製に必要な、所望の効率と高透過率と十分な結合容量を提供することを可能にする。ビーズベースのクロマトグラフィーでは、ほとんどの利用可能な吸着表面積はビーズの内部に存在している。したがって、分離プロセスは、質量輸送速度が典型的には細孔内拡散により制御されるので、本質的に遅い。この拡散抵抗を最小にし、同時に動的な結合容量を最大にするには、小直径のビーズが使用できる。しかし、小直径のビーズを使用すると、カラムの圧力降下が増大する問題が生じる。従って、分取クロマトグラフィー分離の最適化には、しばしば効率/動的容量(小さいビーズが良い)とカラム圧力降下(大きいビーズが良い)の間の妥協を要する。
【0004】
大規模生産のカラムに対しては、クロマトグラフィー媒体は典型的には高コスト(1000ドル/L)であり且つ十分な量が必要とされる。その結果、バイオ薬製造会社はクロマトグラフィー樹脂を数百回もリサイクルさせている。こうした各再生サイクルではかなりの量の媒体が消費され、これ等の再生サイクルの洗浄、殺菌、及びカラム充填の各工程の検証に関連した追加のコストを要する。
【0005】
官能化繊維媒体及び/又はその複合材に基づくバイオ製薬分離のために、数種の技術が特許文献に記載され或いは実用化されている。ほとんどは適当な結合容量を得るために必要な表面積を有する多孔質ゲルを繊維マトリックスに結合したものである。しかし、このような構造では、ゲルの位置と質量の均一性が乏しく、低い効率(浅い破過と溶離前線)になる。そのうえ、流れ抵抗は、ベッド深さが浅くても高く、さらに、中位の圧力負荷の下でのゲル圧縮により問題はさらに悪化することが多い。他のアプローチでは、繊維マトリックス中に粒子を合体しているが、粒子はしばしば多孔質であり本来的に吸着官能性(例えば活性炭やシリカゲル)を有する。
【0006】
透過性や達成可能な流量を損なうことなく、バイオ分子クロマトグラフィー用途に使用できる大表面積繊維とペンダント吸着官能基の組み合わせを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に記載の実施形態を利用して、従来技術の欠点に取り組んだ。該実施形態は、クロマトグラフィー媒体特にイオン交換クロマトグラフィー媒体のための吸着媒体に関する。開示されたクロマトグラフィー媒体は成形された繊維から製造される。本発明のある実施形態では、成形された繊維は繊維状構造又は畝状構造を有する。これ等の畝は通常の繊維に比して表面積を増大させる。したがって、繊維直径を減じる(これは、典型的にはベッドの透過率を減じ対応して流量を減じる)ことなく、大表面積が得られる。本発明の実施例による高表面積の繊維の例は、翼付き繊維であり。米国ノースカロライナ州Raleigh)所在のAllasso Industries, Inc.から入手できる。
Allasso社の翼付き繊維の断面走査電子顕微鏡(SEM)像を図1dに示す。これ等の繊維は約14m2/gの表面積を有する。本発明はまた、陽イオン又は陰イオン交換官能性を例えば高表面積繊維に付与するような、表面ペンダント(SP)官能基を追加する方法を開示する。このペンダント官能基はバイオ分子例えばモノクローナル抗体(mAb)のイオン交換クロマトグラフィー精製に対して有用である。
【0008】
本発明の実施形態は、高表面積の官能化繊維を含む媒体によるバイオ分子の単離、精製または分離の方法にも関する。これらの方法は貫流モードまたは結合/溶離モードで実施できる。例えば、モノクローナル抗体(mAb)の精製は、典型的には陽イオン交換クロマトグラフィーで実施されるものであり、抗体タンパク質の等電位点以下のpHで且つ控えめに抑制された溶液導電率で動作されると、抗体タンパク質はイオン交換リガンドを介してイオン的に支持体に結合し、他方未結合の汚染物(ホスト細胞タンパク質、核酸等)はクロマトグラフィーのベッドを自由に通過する。さらにこれらの汚染物は充填されたビーズベッドを適当なバッファー溶液でフラッシュすることにより除去することができ、しかる後に、ビーズ樹脂とタンパク質の間のイオン相互作用を十分に遮蔽する高い伝導率を有する適当な緩衝液により、結合されたmAb生成物を釈放することができる。
対照的に、陰イオン交換クロマトグラフィーは、しばしばモノクローナル抗体の製造において下流側で使用されて、残留細胞培養物の汚染物をさらに除去するために使用され、この場合の動作は、mAbタンパク質がビーズ樹脂の陽イオン性表面に結合しないでクロマトグラフィーカラムを自由に通過するようなpHと導電性を有する溶液条件下で実施される。他方、正味の負電荷を有するタンパク質と核酸は効果的に陰イオン交換樹脂に結合して製品から除去される。
【0009】
ある実施形態に従うと、ここに記載した媒体は、ビーズベースのクロマトグラフィー媒体に比して高いベッド透過率(例えば、500−900mDarcy)と低い材料コストを有し、20〜60mg/mLのIgG動的結合と、高い分離効率(例えば理論段高さHETP<0.1cm)と、50−160mg/gのIgG静電結合容量と、リガンド結合サイトへの吸着質の速い対流支配型の輸送とを有する。
【0010】
或る実施形態によると、固有の大表面積を有する押し出し成型繊維(例えば熱可塑性繊維)を使用して、長さ2−6mmに切断した繊維がランダム配向した充填ベッドとして構成するとき、高い流れ透過率(液体)と一様な流れ分布が可能となる。かかる繊維表面を官能化する化学的処理方法が提供され、吸着による相互作用に基づいたバイオ分子及び生物学的分離が可能になる。化学的処理方法はイオン性、親和性、疏水性等の相互作用、またはそれらの組み合わせの相互作用に基づく種々の表面化学的官能性をこの成型繊維に付与する。繊維の製造及び単純な表面化学処理の複合した技術より、バイオ製薬やワクチン製造において、経済的で容易に拡張可能な精製操作技術が提供できる。
【0011】
ある実施形態によると、速い処理速度を可能にする吸着分離材料が提供される。なぜなら、溶質を繊維表面へまたは繊維表面からの質量輸送が、媒体を通る流体の対流により大きく制御されるからである。これは、拡散型の輸送が長い接触時間を要求しそれ故遅い処理速度であるビーズ型媒体に対して対照的である。ビーズ細孔の殺菌処理が制限される理由から従来のビーズ型の媒体を使用して能率的に分離できなかったウイルスのような大きい生物学的な種を捕捉または除去する能力が、本発明では提供される。
一側面において本願発明は以下の発明を包含する。
(発明1)
実質的な長軸部を形成する本体領域と、該本体領域から放射状に外方へ延びた複数の突起とを含む領域を含む横断面を有する大表面積繊維より構成され、前記繊維は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーから選択した一種のクロマトグラフィーを可能にする官能性を付与されている、クロマトグラフィー媒体。
(発明2)
前記官能性は陽イオン交換官能性である。発明1に記載の媒体。
(発明3)
前記官能性は陰イオン交換官能性である発明1に記載の媒体。
(発明4)
前記官能性はアクリル重合体の官能性である発明1に記載の媒体。
(発明5)
前記繊維の表面はペンダントスルホプロピル基で変性されたものである発明1に記載の媒体。
(発明6)
前記繊維の表面はペンダントトリメチルアンモニウム基で変性されたものである発明1に記載の媒体。
(発明7)
前記官能性は前記繊維にグラフトされた基によるものである発明1に記載の媒体。
(発明8)
前記繊維はほぼ15m2/gの表面積を有する発明1に記載の媒体。
(発明9)
実質的な長軸部を形成する本体領域と、該本体領域から放射状に外方へ延びた複数の突起とを含む横断面を有する大表面積繊維より構成され、前記繊維は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーから選択した一種のクロマトグラフィーを可能にする官能性を付与されている、大表面積繊維の不織布ベッド。
(発明10)
実質的な長軸部を形成する本体領域と、該本体領域から放射状に外方へ延びた複数の突起とを含む横断面を有する繊維より構成され、前記繊維は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーから選択した一種のクロマトグラフィーを可能にする官能性を付与されている、ほぐれた又は融着したカット繊維からなる充填ベッドを収容したハウジング。
(発明11)
実質的な長軸部を形成する本体領域と、該本体領域から放射状に外方へ延びた複数の突起とを含む横断面を有する繊維より構成され、前記繊維は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーから選択した一種のクロマトグラフィーを可能にする官能性を付与されている、繊維媒体のベッドに、バイオ分子を含む試料を接触させることよりなる、バイオ分子を含む試料の精製方法。
(発明12)
前記官能性は貫流形式で精製を可能にする発明11に記載の精製方法。
(発明13)
前記官能性は結合/溶離形式の精製を可能にする発明11に記載の方法。
(発明14)
前記イオン交換官能性は陽イオン交換官能性であり、前記精製はpH5〜8で実施される発明11に記載の方法。
(発明15)
タンパク質混合物を用意し、
長軸部を形成する本体領域と該本体領域から放射状に外方へ延びた複数の突起とを含む横断面を有する繊維媒体の低密度ベッドであって、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーから選択した一種のクロマトグラフィーを可能にする官能性を付与されている繊維媒体のベッドに、前記タンパク質混合物を接触させ、
前記繊維媒体を洗浄して未結合の成分を除去し、
前記繊維媒体を圧縮し、ついで
前記圧縮された繊維媒体を洗浄して結合タンパク質を抽出する、
タンパク質の精製方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】1aは本発明の繊維の概略図である。
図1b】1bは本発明のある実施形態で使用できる畝付き繊維の概略図である。
図1c】1cは1bの繊維のある実施形態によりペンダント基が付着した繊維の概略図である。
図1d】1dは本発明のある実施形態で使用できる畝付繊維のSEM像である。
図1e】本発明のある実施形態により繊維の官能化を工程を示す図である。
図1f】本発明の他の実施形態により繊維の官能化を工程を示す図である。
図2】本発明のある実施形態のSP官能化された媒体に対するIgG破過曲線と溶離ピークを示す。
図3】本発明のある実施形態の変動する速度でのSP官能化された媒体に対するIgG破過曲線を示すグラフ(プロット)である。
図4】本発明のある実施形態の変動する線速度でのIgG動的結合容量を示すグラフ(プロット)である。
図5】本発明のある実施形態によるモノクローナル抗体(mAB)チャレンジ試験のクロマトグラフ図である。
図6】本発明のある実施形態による官能化媒体に対するmAB溶離ピークを示す。
図7】a、b、cは本発明のある実施形態にしたがうタンパク質AHPLCによるIgGの定量化を示す図である。
図8】a、b、cは本発明のある実施形態にしたがうCHO−HCPに対するELISAデータを示す。
図9】本発明のある実施形態にしたがった、モノクローナル抗体供給の総合クリアランスを流通する流れを示すグラフである。
図10】本発明のある実施形態にしたがったSP触手で官能化された媒体に対するIgG破過曲線のプロットを示す。
図11】本発明のある実施形態にしたがった変化する速度でのSP触手官能化された陽イオン交換媒体に対するIgG破過曲線を示す。
図12】本発明のある実施形態にしたがった変化する速度でのSP触手官能化された陽イオン交換媒体に対するIgG動的結合容量を示す。
【0013】
本書に記載した本発明の実施形態による賦形された繊維媒体は繊維自体の表面に依存する。賦形された繊維は大表面積と高流れ透過率を有するので、ヒドロゲルや多孔質粒子の追加のような修飾を要しないで容量及び効率などの性能目標を満たすことができる。さらに、ヒドロゲルや多孔質粒子を追加して表面積を増大させないので、ここに記載の媒体の製造コストは最低に抑制される。
【0014】
繊維は任意の長さ及び直径を有することができ、好ましくはカット繊維、人絹(staple)、又は不織布である。これ等は一体的な構造を有するように接合される必要はなく、個々のものとして有効に使用できる。繊維は糸のような連続した長さのものでもよいし、中間長さの単繊維でもよいし、或いは結晶成長法等により形成された不織布または織物などの繊維材料(例えば人絹)を切断(連続的な長さの繊維を個々の切片にカット)したより短い繊維の形であってもよい。繊維は好ましくはポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、熱可塑性ウレタン、コポリエステル、または液状結晶性重合体のような熱可塑性重合体から選択される。約1〜3デニールの繊維が好ましい。ある実施形態では、繊維の断面長は約1〜100μm、断面幅は約1〜100μmである。適当な繊維の例では、繊維の断面長は約20μm、断面幅は約10μmであり、その結果デニールは約1.5である。約100,000cm2/g〜1,000,000cm2/gの表面積を有する繊維が適当である。好ましくは、繊維の断面長は約10〜20μmである。
【0015】
ある実施形態では、繊維は適当な入口と記載の用途に適合する寸法とを有する装置または容器に圧縮して容易に充填することができる。また、繊維については、不織布工業において共通のスパンボンド(連続繊維)又はウエットレイド(カット繊維)により製造される不織布シート材料のような、予備成形ベッド形式で使用できる。適当な予備成形繊維形式にはシート、マット、ウェブ、モノリス、等が含まれる。
【0016】
ある実施形態では、繊維の断面は一般に翼付き形状であって、本体領域は実質的に長手方向の軸を形成し、複数の翼が本体領域から放射状に外側へ延びて複数の突起を形成している。突起はそれらの間に繊維の長手方向に延びる共軸の複数の溝を形成する。溝の数は1繊維当たり20〜30本である。ある実施形態では、突起の長さは本体領域の長さよりも短い。ある実施形態では繊維の断面はほぼ翼形をなしているとともに、中間領域が繊維の中心を延びる長軸部を形成し、この中間領域から複数の突起が延びている(図1d)。ある実施形態では複数の突起は中間領域からほぼ放射状に延びている。この構造の結果、複数の溝は突起により規定される。突起間の適当な溝幅は約200〜1000ナノメータである。適当な繊維は米国特許公開2008/0105612に記載されているので、引用して本書の一部とする。
【0017】
大表面積の繊維の表面官能化は二段階で達成できる。適当な官能化方法は図1eのスキーム1に例示したようにグラフト重合である。官能化はペンダントアリル基をナイロン6の繊維の表面に固着することから開始される。この固着は水性水酸化ナトリウムの存在下に繊維を温度50℃で12時間かけてアリルグリシジルエーテルで処理することで行われる。繊維表面のペンダントアリル基はペンダントアクリルアミド重合体官能基に対する付着点として繊維表面の固定点(アンカー)の役目をする。アクリルアミド単量体の溶液重合条件が与えられ、繊維表面のペンダントアリル基は溶液中で成長しつつある重合体鎖に固着する。このようにしてアリルで官能化された繊維は引き続いて、温度80℃で4時間かけて、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、N,N’−ジメチルアクリルアミド、及び過硫酸アンモニウムの水溶液により処理される。80℃へ加熱されると、過硫酸塩の分解によりアクリル単量体のフリーラジカル重合が開始される。かかる条件下では、繊維表面のペンダントアリル基はペンダントアクリル重合体官能基に対する固着点として役立つ。このようにして、アクリル重合体は繊維表面に共有結合する。
【0018】
ある実施形態では、アクリルアミド重合体は別個に調製され、次いで表面被覆としてナイロン繊維に塗布されてもよい。得られる表面被覆繊維はアリルをグラフト結合した材料に比肩できるIgG結合容量を有することが分かった。
【0019】
本発明のある実施形態によると、官能化は、図1fに例示したように、高表面積の繊維表面にヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)とN,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm)を交差結合被覆として付着させることで開始される。この工程はそれに続くセリウムイオンで開始されるアクリルアミド単量体のレドックス重合に対する反応性ヒドロキシアルキル官能基を提供する。
【0020】
このHPS/MBAmで処理された繊維は、窒素雰囲気中35℃の温度で、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩、硝酸アンモニウムセリウム(IV)及びHNO3の水溶液と反応させる。この条件下で、繊維表面の交差結合したヒドロキシアルキル(ヒドロキシプロピルアクリレート)官能基のセリウム酸化により、繊維表面に遊離ラジカルが生じて、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸単量体の表面グラフト重合を開始させる。これ等の条件下に、表面で開始した重合プロセスは、重合した2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸単量体の重合触手(tentacle)を生成する。このようにして、アクリルアミド重合体は繊維表面に共有結合する。かかる方法はグラフト重合として知られている。
【0021】
ベッド高さ1〜5cmで、約0.1〜0.4g/ml好ましくは0.32g/mlの適宜のカラム充填密度は、クロマトグラフ評価における受容可能な性能に対して十分な均一流れを提供するであろう。
【0022】
ある実施形態では、従来のビーズベッド媒体とは異なり、媒体(官能化充填繊維)は乾燥し予め充填された形態でユーザに配達できる。繊維は熱または化学的な手段で互いに融合でき、圧力容器に収納できる半剛性の構造を提供できる。かかる構造により、媒体及びそれを収納した容器はそのままで使用が可能となる。クロマトグラフビーズを基本とする媒体は一般に緩い材料(濡れた)として配送でき、ユーザはそれを圧力容器(カラム)に装荷し、いろいろな手段で隙間(ボイド)や通路(チャンネル)を生じないで十分に充填されたベッドを形成できる。通常は均一な充填を確保するために追跡テストが必要であるが、これとは対照的に、本発明の実施形態では製品がそのまま使用できる形で到着するのでユーザによる充填は必要がない。
【0023】
賦形した繊維媒体はその形態上の性質により多孔質クロマトグラフビーズに優る幾つかのすぐれた効果を提供する。ビーズ型クロマトグラフーでは、典型的には、分離工程における速度制限段階は、拡散により支配される吸着質(溶質)の多孔質ビーズへの侵入である。タンパク質のような巨大分子に対しては、この拡散による輸送は比較的遅い。ここに記載した本発明の大きい表面積を有する繊維に対しては、結合サイトは繊維の外表面に露出されているので、流れ中にある吸着質分子は結合サイトに容易に接近できる。本発明の方法により提供される迅速な輸送は短い滞留時間(高流速)を可能にし、それにより移動床システムのような手段に類似する手段による媒体の迅速な循環を可能にする。処理速度は生物学的生産における重要なパラメータであるので、本書に記載した繊維に基づくクロマトグラフ媒体は従来のビーズに基づくクロマトグラフ媒体に比して特別な方法上の利益を提供する。
【0024】
従来のクロマトグラフ樹脂は多孔質ビーズ、典型的にはアガロース、合成重合体、シリカ、又はガラスから出発する。これ等の材料は一般に高価である。たとえば、未官能化アガロースビーズは300−350ドル/L、制御された細孔を有するガラスは600―1000ドル/Lもする。これに対して、本書で記載する高表面積の繊維の不織ベッドであって、適当な密度と厚さを有し、良好なクロマトグラフ性能を達成するベッドは、20−50ドル/Lである。この費用面からの利益は、本発明の新規なクロマトグラフ媒体が一回の製造で一回恐らくは数回の使用で廃棄できる「使い捨て可能な」技術として適正な価格で市販できる可能性を増すであろう。
【0025】
本発明の実施形態の表面官能化繊維媒体(例えばSP官能化したAllasso繊維SPF1)は充填ベッド形式で高い透過率を示す。充填密度に依存して、ベッドの透過率は14000mDarcy超から1000mDarcy未満の範囲になる。0.1g/mL(1gの媒体/9.3mLのカラム容積)の低い充填密度では、線速度900cm/hrで、ベッド透過率14200mDarcyが観測された。この値は広い速度範囲(400〜1300cm/hr)にわたり変わらなかった。かかる挙動は充填繊維ベッドが高い線速度で圧縮されないことを示している。表面官能化繊維媒体(SP官能化Allasso繊維SPF1)のさらに高い充填密度0.33g/mL(1gの媒体/2.85mLのカラム容積)への引き続く圧縮は線速度900cm/hrで、ベッド透過率1000mDarcyを与えた。同様にこのベッド透過率1000mDarcyは線速度400〜1300cm/hrの範囲にわたり変化しなかった。適当な充填密度は約0.1〜約0.5g/mlを含む。
【0026】
バイオ分離のために従来の充填ベッド式イオン交換クロマトグラフィー媒体、例えばProRes−S(米国マサチューセッツ州ビレリカ所在のMillipore Corp製)等に対しては、同様な寸法から上記の場合の寸法(3cmベッド深さ、内径11mmでカラム容積2.85mLのVantageカラム(同社製)までの充填ベッドに対して1900mDarcyの透過率が測定されている。膜式吸着器に対しては、典型的な透過率は1〜10mDarcyの範囲にある。ProRes−Sに対しては、400−1300cm/hrの速度範囲にわたり実質的に変化のないベッド透過率が測定されている。この挙動はProRes−Sのような半剛性のビーズに対しては予期されるが、より圧縮性の媒体(例えばアガロースビーズ)は高い線速度(>200cm/hr)では充填ベッドの実質的な圧縮によりベッド透過率の実質的な減少が考えられる。
【0027】
表2には、ここに記載した実施例の表面官能化繊維媒体(SPF1)に対するIgG動的結合容量(DBC)のデータを示す。200〜1500cm/hrの線速度の範囲で1.5、10及び50%破過で測定したIgGのDBC値に実質的な変化は測定されず、図3に示したIgG破過曲線の形に実質的な変化は存在しなかった。
【0028】
下記の表Aにおいて、IgG動的結合容量(DBC)のデータは広範囲の線速度で測定したProRes−Sに対するものである。この伝統的な充填ベッド式のビーズを用いたイオン交換クロマトグラフィー媒体(ProRes−S)に対し、結合及び溶離捕捉形クロマトグラフィーの用途におけるDBCを最大化するには線速度60cm/hrが推奨される。60cm/hrより高い線速度ではIgG動的結合容量が有意に減少する。測定された最大の線速度1200cm/hrではIgGのDBCは60cm/hrでの値の何分の1かに減じる。ProRes−Sが速度60cm/hrより大きい速度で運転されると、IgG破過曲線の有意な拡大が観測された。
【0029】
60cm/hrより大きい線速度、特に200cm/hrより大きい線速度において非常に短時間の滞留時間やカラム操作が必要な用途では、SP官能化繊維媒体(SPF1)は従来のProRes−S等のビーズ型のクロマトグラフィー樹脂よりも適している。
【0030】
【表A】
【0031】
表A:異なる線速度における1.5%、10%及び50%破過におけるProRes−Sに対するIgG DBC(動的結合容量)
【実施例】
【0032】
以下に大表面積繊維表面の官能化及び遊離ラジカルグラフト重合法を説明する。
例1(ペンダントアリル基による大表面積繊維の表面変性)
ナイロン繊維表面のアリルグリシジルエーテルによる変性
ガラスボトルにアリルグリシジルエーテル(28.9g、250mmol)、硫酸ナトリウム(6.0g、42mmol)及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(60mL)を入れた。この混合物に4gのほぐれたナイロン繊維(供給者ロットID)を加えた。この濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。
室温まで冷却後、固形物をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(400mL)で洗浄し、次いでこの材料を30分間真空乾燥した。
9.4gの湿った固形分を得た。この材料を直ちに次の工程で使用した。
【0033】
例2(アリル変性し、ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能基を有する大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性したナイロン(AMPS/DMAM55/45)のグラフト重合
ガラスボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、5.02g、24mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM、1.96g、20mmol)、過硫酸アンモニウム(0.49g、2mmol)及び水(72.8mL)を加えた。この混合物に9.4gのほぐれたナイロン繊維(実施例1)を加え、この濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温まで冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(450mL)とメタノール(250mL)で洗浄した。この材料をオーブン中70℃で12時間乾燥した。
4.0gの白色繊維固形分が得られた。
【0034】
例3(得られた媒体の官能性能)
実施例2からのスルホプロピルで官能化した大表面積の繊維を、ポリクローナル・ヒトガンマイミュノグロブリン(IgG)の精製のため、陽イオン交換クロマトグラフィーで評価した。IgGに対する静的結合容量測定の結果は下記の表1に示す。この研究において、Allaso Industriesから市販されている未官能化の「翼付き繊維」の試料(ロット番号090602PA6C)の静的結合容量を、上記の例1及び例2に記載された紫外線照射重合法及び熱開始重合体グラフト法によりに製造されたスルホプロピル官能化繊維試料と比較した。熱開始遊離ラジカルグラフト法は、紫外線開始法による静的表面結合容量(10〜30mgIgG/g繊維試料)や未官能化繊維のみの静的表面結合容量(20mg IgG/g繊維試料)よりも十分に高い静的表面結合容量(50〜80mgIgG/g繊維試料)を有するSP官能化繊維媒体を提供した。また、1MのNaCl溶液によるIgG溶離試験をこれ等の試料に対して行った。これらの溶離条件下に、SP官能化繊維材料から50〜70%の結合IgGの回収が得られた。これ等の結果に基づき、SP官能化繊維媒体はバイオ分子クロマトグラフィーの用途における官能性能試験に対して十分な静的結合容量及び塩溶出特性を示すことが分かった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム中2g/Lのポリクローナル・ヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)(pH5)。洗浄バッファー:50mM酢酸ナトリウム(pH5)。溶離バッファ:50mMの酢酸ナトリウム中1Mの塩化ナトリウム(pH5)。
【0037】
例4
約0.3gのほぐれたSP官能化Allasso翼付き繊維を内径6.6mmの(ID)Omnifitクロマトグラフィーカラムに充填した。ベッド体積は頂部溶剤分配ヘッダーの圧縮により2cmに調整してカラム容積を0.68mLにした。IgG動的結合容量の測定を次の手順で実施した。
10CV(カラム容積) 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(平衡化)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中2mg/mLのIgG(SeraCare)
(IgGチャレンジ)
80CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
50CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中1MのNaCl(溶離)
20CV 0.5MのNaOH(洗浄)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
【0038】
図2はいくつかの実施形態に従った、例2に記載されたSPF1繊維に対する代表的なIgG破過曲線の例である。20〜30mg/mLの範囲で鋭い破過曲線とIgG動的結合容量(DBC)が測定された(表2)。50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中の1Mの塩化ナトリウムで溶離することにより、結合IgGの定量的な回収が達成された。
【0039】
【表2】
【0040】
表2:実施例2のSP官能化媒体(SPF1)の異なる線速度における1、5、10及び50%の破過でのIgGのDBCの値
【0041】
図3は200〜1500cm/hrの範囲の種々の線速度でのSPF1繊維媒体カラムに対する重畳したIgG破過曲線である。線流れ速度が増加しても破過曲線の形に差がない。
【0042】
図4は非常に高速(1500cm/hr)ですら測定したIgG動的結合容量がわずかしか変動しないことを示す。この挙動はシステムがIgG分子のイオン性リガンド結合サイトへの対流による輸送に支配されることを示している。
【0043】
これに対して従来のビーズによるイオン交換クロマトグラフィー樹脂は速度が増すと動的結合容量が減少し、破過曲線がより拡散する。非常に高い速度では、ベッドの圧縮がビーズの一体性を損われ、その結果として流れの一様性が乏しくなり、クロマトグラフ性能が低下する。
【0044】
例5(アクリルアミド共重合体被覆によるナイロン表面の変性)
AMPS/DMAMが55/45の溶液重合
250mLの三口丸底フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、10.04g、48mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM、3.92g、40mmol)、過硫酸アンモニウム(0.98g、4mmol)及び水(146mL)を装入した。この溶液を80℃に4時間加熱した。室温に冷却したのち、この重合体溶液を直ちに次に示す工程に使用した。
【0045】
ナイロン繊維表面のAMPS/DMAM重合体被覆(Coating)による変性
ガラスボトルに19gの上記の工程で調製したAMPS/DMAM55/45共重合体溶液と、1gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries.#090602PA6C)を加えた。この濡れた固形物を80℃で24時間加熱した。室温に冷却後、固形物をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(3×50mL)とメタノール(1×50mL)で洗浄した。この材料を真空中で10分間乾燥した。この材料をオーブンに入れて40℃で24時間乾燥した。
0.9gの白色繊維状固形物が得られた。
【0046】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果は表3に示す。この研究ではAllasso (lot ID 090602PA6C)の未官能化の「翼付き繊維」試料の静的結合容量を、この例5の溶液重合体被覆法に従って調製したスルホプロピル(SP)官能化繊維の試料と比較した。この研究では溶液重合体被覆法では、SP官能化繊維媒体の方が、SP未官能化繊維媒体単独(1mgのIgG/g繊維試料)よりも高い静的結合容量(30〜40mgのIgG/g繊維試料)を提供した。これ等の結果に基づき、SP官能化重合体繊維被覆はAMPS/DMAM共重合体の単なる被覆と熱アニールだけで設けることができる。
【0047】
【表3】
【0048】
表3:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中の2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)。
【0049】
例6(ペンダントアリル基による大表面積繊維の表面変性)
アリルグリシジルエーテルによるナイロン繊維表面の変性
0.5Lのフラスコに、アリルグリシジルエーテル(70.7g、620mmol)、硫酸ナトリウム(14.9g、105mmol)及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(350mL)を装入した。この混合物に10gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を追加した。濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。室温に冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(1.5L)とメタノール(0.5L)で洗浄した。得られた材料を真空中で30分乾燥し、次いでオーブンに入れ50℃で18時間乾燥した。
8.8gの白色繊維固体が得られた。
【0050】
例7(ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能基での、アリル変性大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性ナイロン(AMPS/DMAM55/45)のグラフト重合
ガラス容器に2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM)、過硫酸アンモニウム、及び水を、下の表4に記載した比率で装入した。ほぐれたアリルグリシジルエーテル変性ナイロン繊維(実施例6)を各混合物に加えた。この濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。室温に冷却後、濡れた固形物を各々ブッフナー漏斗に移し、蒸留水(3×50mL)とメタノール(1×50mL)で洗浄した。得られた材料はオーブン中、40℃で12時間乾燥した。
乾燥した表面変性繊維の試料はIgGチャレンジ溶液で静的結合容量を測定する用意が整う。
【0051】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果も表4に示す。この研究では、Allasso (lot ID 090602PA6C)からの官能化されていない「翼付き繊維」試料の静的結合容量が、熱開始重合体のグラフト工程により調製されたスルホプロピル官能化繊維の試料(試料A〜G)と比較された。この研究では、SP官能化繊維媒体のIgG静的結合容量はAMPS/DMAM重合体組成と反応溶液の濃度に影響されうる。例えば、試料EとGは、より高いAMPS濃度で調製された試料AとCと同様に、官能化しないナイロン繊維単独(6mgIgG/g繊維)よりも実質的に高いIgG静的結合容量を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4:グラフト重合組成物とIgG静的結合容量測定データ。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)
【0054】
媒体の官能性能
例2で得たスルホプロピル官能化高表面積繊維の性能を次の例でモノクローナル抗体(mAb)の陽イオン交換クロマトグラフィーによる結合及び溶離精製で評価した。mAbは濃度6.7(mg/mL)でタンパク質Aカラムからの溶離物として用意した。
【0055】
例8(モノクローナル抗体の結合及び溶離精製)
カラム充填
例2で得た0.9gのスルホプロピル官能化した大表面積繊維を100gのイソプロパノール中で30分間かけてスラリー化した。400mLの脱イオン水を加え、スラリーを一晩撹拌した。この繊維スラリーを内径11mmのVantageカラムに移し、真空を用いて過剰の液をカラムから引いて人絹繊維の圧縮を促進した。スラリーをカラムに移送したのち、カラムの頂部ヘッダをセットし、ヘッダーで圧縮して、最終のカラム堆積2.76mLにした(目標性能に向けてベッドを圧縮)。2重量%のアセトン溶液を用いてHETP(理論弾高さ)及びピーク非対称の測定を実行した。HETPは0.1cm未満であり、ピーク非対称性は2.0未満であった。
【0056】
陽イオン交換クロマトグラフフィーによるmAbの精製
図5〜6には、例2の陽イオン交換媒体を用いてmAbの結合/溶離精製するクロマトグラフィー法を実施する例が示されている。この例では、6.7mg/mLのmAb(14.7mgのmAb)を含有するタンパク質A溶離液0.79CV(2.18mL)が、カラムに適用され、100mMのMES緩衝液(pH6)中250mMのNaClで溶離される。mAbの溶離ピークは20個の0.5CV画分(各画分=1.38mL)で収集された。280nmでの各画分のUV吸収の測定によるmAb溶出画分の定量は13.8mg(収率94%)の回収を示した。図7のタンパク質AのHPLCによる各溶離画分のIgG分析も行った。この分析もまた各溶離画分のIgG濃度を与える。この分析により、mAb溶離が主として画分第5〜9に存在すること及びmAbの回収率が90%であることを示した。
【0057】
図8にはチャイニーズハムスターの卵巣−各mAb溶離画分のホスト細胞タンパク質濃度(CHO−HCP)に対するELISAデータが記載されている。HCPは主として画分第5〜9において濃度479ng/mLの平均濃度で溶離される。mAbチャレンジ溶液は6944ng/mLのHCP濃度を有し、HCPクリアランス対数減少値(LRV)は1.1と算出された。
【0058】
例9(ペンダントアリル基を有する大表面積繊維の表面変性)
アリルグリシジルエーテルによるナイロン繊維の表面変性
ガラスボトルにアリルグリシジルエーテル(28.8g、252mmol)硫酸ナトリウム(6.0g、43mmol)、及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(60mL)を装入した。この混合物に4gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を追加し、この濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。
室温に冷却したのち、この固形物をブッフナー漏斗に移して蒸留水(0.5L)で洗浄した。得られた材料を真空中で30分乾燥した。この湿った材料を直ちに次の工程で使用した。
【0059】
例10(ペンダントトリメチルアンモニウム陽イオン交換官能性を有するアリル変性大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性ナイロン(APTAC100)のグラフト重合
カラスボトルに(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(APTAC、9.1g、44mmol)、過硫酸アンモニウム(0.64g、3mmol)、水(27mL)、及び10gの濡れたアリルグリシジルエーテル変性した上記例9の繊維を装入した。この溶液を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却したのち、この濡れた固形物をブッフナー漏斗に移して蒸留水(100mL)とメタノール(30mL)で洗浄した。得られた材料を真空中50℃で120分乾燥した。材料をオーブンにおいて50℃で12時間乾燥させた。
6.1gの明黄色の繊維固形物を得た。
乾燥しかつ表面変性した繊維試料はウシ血清アルブミン(BSA)試験溶液と静的結合容量の測定をうける用意ができた。
【0060】
例11(静的結合容量の測定)
トリメチルアンモニウム官能化繊維の陰イオン交換への適用における性能を試験するために、BSA静的結合容量測定を実施した。その結果を下の表5に示す。この研究では、例10の熱開始重合体グラフト法により調製されたトリメチルアンモニウム官能化繊維試料の静的結合容量が記録された。例10からのトリメチルアンモニウム官能化繊維媒体のBSA静的結合容量は1〜19mg/gである。
【0061】
【表5】
【0062】
表5:静的結合容量の測定。チャレンジ:25mMのTRIS緩衝液(pH8)中0.5gのウシ血清アルブミン(BSA)
【0063】
例12(変性しないナイロン繊維のグラフト重合)
200mLの6個のガラスボトルに3−スルホプロピルメタクリレートのカリウム塩(3−SPMA)、水、ナイロン繊維(Allasso Industries製)、及び1MのHNO3溶液(下記の表に記載の量で)を装入した。1Mの硝酸中0.4Mの硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、各ボトルからの繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1M 水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。ついでこの材料をオーブンにおいて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表6の回収及び重量付加データ参照)。
【0064】
【表6】
【0065】
表6:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ。
【0066】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を次の表7に示す。SP−官能化触手繊維媒体は市販のバイオ分子クロマトグラフ用に使用されるビーズベースの陽イオン交換媒体に比肩できるIgG静的結合容量を示す。
【0067】
【表7】
【0068】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表7:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences,Milford,MA)
【0069】
動的結合容量の測定
例12−6のSP官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定結果を次の表8に示す。1.0gの媒体を11mm内径のVantageカラムに充填し、ベッド深さ2.9cm(2.75mLのカラム容積、0.36g/mLの繊維充填密度)になるまで圧縮した。動的結合容量の測定は、60〜1200cm/hrの線速度範囲にわたり行った。これ等の速度は9〜180秒の滞留時間に相当する。例12−6の繊維媒体は30〜40mg/mLの範囲のIgG動的結合容量を示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8:SP触手官能化Allasso翼付繊維の陽イオン交換媒体の各種線速度における1,5,10及び50%破過でのIgG DBC値(RTは滞留時間)。チャレンジ:50mM酢酸塩溶液(pH5)中の20g/LポリクローナルヒトIgG。
【0072】
例13(未変性ナイロン繊維のグラフト重合)
6個の200mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA)、水、ナイロン繊維(Allasso Industries製)及び1MのHNO3溶液(下記の表に記載の量)を装入した。1MのHNO3硝酸中の硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、各ボトルからの繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。
ついでこの材料をオーブンにおいて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表9の回収及び重量追加データ参照)。
【0073】
【表9】
【0074】
注1:1/3分離画分に基づく計算
表9:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ
【0075】
エポキシ官能化繊維のジエチルアミン官能化
6個の250mLボトルに上例からの湿ったGMA官能化繊維の部分と、25重量%のジエチルアミン水溶液を加えた(下記の表に記載の量)。これ等の混合物を室温で3時間撹拌した。
続いて繊維固形分を脱イオン水(3×50mL)とエタノール(1×50mL)で洗浄した。これ等の材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物が得られた(回収及び重量付加データについては表10参照)。
【0076】
【表10】
【0077】
注1;初期の1.5gの繊維装入量の2/3の部分に基づいて算出
表10:エポキシ官能化繊維のジエチルアミンによる変性に対する組成と回収データ
【0078】
静的結合容量の測定
BSAに対する静的結合容量測定の結果を次の表11に示す。GMA触手のグラフト密度に依存して、ジエチルアミン官能化結合手を有する繊維媒体は広い範囲のBSA静的結合容量(SBC)を示すことができる。この系列では、例13−2Bと例13−3Bの組成は、商用のバイオ分子クロマトフィーの用途において、ビーズベースの陽イオン交換媒体に比肩できるBSAのSBC値を与えることが分かった。
【0079】
【表11】
【0080】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表11:静的結合容量の測定。チャレンジ:25mMトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)
【0081】
動的結合容量の測定
例13−3Bのジメチルアミンで官能化した繊維媒体のBSA動的結合容量の測定結果を次の表12に示す。この媒体0.5gを内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ1.5cmまで圧縮した(1.42mLのカラム容積で0.35g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで行った。この速度は滞留時間27秒に相当する。例13−3Bの繊維媒体は10%破過で30mg/mLのBSA動的結合容量を示した。
【0082】
【表12】
【0083】
表12:ジメチルアミン触手官能化されたAllasso翼付き繊維の陰イオン交換媒体での200cm/hrにおけるBSAの1、5、10及び50%破過におけるDBC値(動的結合容量値)(RTは滞留時間)。チャレンジ:25mMTris緩衝液(PH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0084】
例14
未変性ナイロン繊維のグラフト重合
500mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA,1.70g、12mmol)と水(232.8mL)を入れた。5gのAllassoナイロン繊維をこの溶液に加えた。1MのHNO3溶液(7.22mL、7.2mmol)を反応混合物に加え、次いで1MのHNO3(0.602mL,0.240mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)の溶液を加えた。
この反応混合物を35℃で1時間加熱した。
室温まで冷却した後、固形分を脱イオン水(3×100mL)で洗浄した後、この濡れた材料(12.21g)を直ちに次工程で使用した。
【0085】
エポキシ官能化繊維のQ官能化
4個の250mLのボトルに、上例からの濡れたGMA官能化繊維の部分とメタノール(次の表13に記載の量で)中50重量%のトリメチルアミン(水溶液)を装入した。この混合物を室温で18時間撹拌した。
ついで繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸の溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、及びエタノール(1×50mL)で洗浄した。次いでこの材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形分の試料が得られた(表13の回収及び重量追加データ参照)。
【0086】
【表13】
【0087】
表13:トリメチルアミンによるエポキシ官能化繊維の変性のための組成及び回収データ
【0088】
静的結合容量の測定
BSAに対する静的結合容量の測定の結果は下記の表14に示す。Q−官能化触手繊維媒体は30mg/mLのBSA静的結合容量を与えた。この系列においては、例14C及び14Dの組成が最高のBSA SBC値を与える。これは商用バイオ分子クロマトグラフの用途で使用されているビーズベースの陰イオン交換媒体と同等である。
【0089】
【表14】
【0090】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表14:静的結合容量測定。チャレンジ:25mMのトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0091】
動的結合容量の測定
例14Cにより調製したQ官能化繊維媒体に対するBSAの動的結合容量の測定の結果は下記の表15に示す。1.0gの同媒体を内径11mmのVantageカラムに入れ、ベッド深さ3.0cm(2.85mLのカラム容積、0.35g/mL繊維充填密度)に圧縮した。動的結合容量の測定は60〜1200cm/hrの線速度範囲で行った。これ等の速度は9〜180秒の滞留時間に相当する。例14Cの繊維媒体は30〜40mg/mLの範囲のBSA動的結合容量を示している。
【0092】
【表15】
【0093】
表15:Q−触手官能化したAllasso翼付き陰イオン交換繊維媒体に対するBSAの動的結合容量DBCの、各種線速度破過1、5、10及び50%に対する値(RT=滞留時間)。チャレンジ:25mMトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0094】
例15(未変性ナイロン繊維のグラフト重合)
500mLのボトルにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(1.69g、13mmol)と水(232.5mL)を装入した。この溶液に5.00gのAllassoナイロン繊維を加えた。1MのHNO3溶液(7.21mL、7.2mmol)を反応混合物に加え、次いで1MのHNO3溶液(0.601mL、0.240mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)の溶液を添加した。
反応混合物を35℃で1時間加熱した。
室温に冷却後、固形分を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、及びエタノール(1×100mL)で洗浄した。得られた材料をオーブンに入れ40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物5.58gが得られた。
【0095】
例16(ポリ(HEMA)官能化繊維の硫酸化)
アルゴン雰囲気と磁気撹拌子と3NのNaOHバッブラーを有する500mLの3口フラスコに、酢酸を加え、0℃に冷却した。クロロスルホン酸(5.0g、43mmol)を加えた。上記の例からの2.5gのポリ(HEMA)官能化繊維をこの反応混合物に添加し、室温まで放置して温め、1時間撹拌した。
次いでこの繊維固形物に5mLの水と300mLの1M炭酸ナトリウム溶液の添加で中和した。固形の炭酸ナトリウムをこの反応混合物に分割して添加してpH>7にした。繊維固形物を1Mの炭酸ナトリウム溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、及びエタノール(1×100mL)で順次洗浄した。この材料をオーブンにて40℃で12時間乾燥した。
3.64gの白色のゴム状固体を得た。
【0096】
比較例1(未変性EVOH繊維のグラフト重合)
4個の30mLのボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na,50%水溶液)、水、及びEVOH繊維(Engineered Fiber Technologies,S030−0.5dx5mm)を装入した。反応混合物を真空パージし、窒素で3回裏込め(バックフィル)した。1MのHNO3溶液と1MのHNO3溶液中硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに加えた(下記の表16に記載した分量で)。これらの反応ボトルに蓋をし、それらの混合物を40℃で12時間加熱した。
室温まで冷却したのち、各ボトルから繊維固形物を脱イオン水(3×30mL)、0.5Mの水酸化ナトリウム溶液中0.2Mのアスコルビン酸(3×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(2×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、及びメタノール(2×30mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で8時間乾燥した。
白色繊維固形物を得た(表16の回収と収率のデータ参照)
【0097】
【表16】
【0098】
表16:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収のデータ
【0099】
比較例2(未変性PVA繊維のグラフと重合)
4個の30mLのボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na、50%水溶液)、水、及びPVA繊維(Engineered Fiber Technologies,VPB052×3mm)を装入した。この反応混合物を真空パージし、窒素で3回裏込め(バックフィル)した。1MのHNO3溶液と1MのHNO3溶液中硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに加えた(下記の表17に記載した分量)。これらの反応ボトルに蓋をし、それらの混合物を40℃で12時間加熱した。
室温まで冷却したのち、各ボトルから繊維固形物を脱イオン水(3×30mL)、0.5Mの硫酸溶液中0.2Mのアスコルビン酸(3×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(2×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、及びメタノール(2×30mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で8時間乾燥した。
白色繊維固形物を得た(表17の回収と収率のデータ参照)
【0100】
【表17】
【0101】
表17:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収のデータ
【0102】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を下の表18に示す。EVOH繊維ベースの母材に基づくSP官能化触手媒体(比較例1)は低いIgG静的結合容量を示すに過ぎない。PVC繊維ベースの母材に基づくSP官能化触手媒体(比較例2)はある組成(比較例2−1)に対してわずかに高いIgG静的結合容量を示すに過ぎない。すべての場合において、IgG SBC値は市販のバイオ分子クロマトグラフで使用される市販のビーズベースの陽イオン交換媒体よりもはるかに低い。これらの例は翼付き繊維媒体(Allasso Industries製)が示す表面積増加の利点を示すのに役立っている。もしもPVA又はEVOHベースの母材に同様な表面積の増強が実行されれば、本書に記載したセリウムイオンレドックスグラフト法を使用して直接表面を官能化した後で高いIgG結合容量を得ることができるであろう。
【0103】
【表18】
【0104】
注:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表18: 静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)。
【0105】
例16(HPA/MBAm95/5によるナイロン繊維表面の変性)
機械撹拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた2000mLの三口フラスコに、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA、 13.7g、95mmol)、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm、0.77g、5mmol)、及び水(710mL)を装入した。この混合物に16.8gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を加え、次いで過硫酸アンモニウム(1.60g、7mmol)を添加した。濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、熱水(3×500mL)とメタノール(1×500mL)で洗浄した。この材料を真空中で20分間乾燥した。この材料をオーブンに移し、40℃で18時間乾燥した。
17.6gの白色繊維が得られた。
【0106】
例17(HPA/MBAm変性ナイロン繊維のグラフト重合)
4個の200mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA)、水、HPA/MBAm変性ナイロン繊維(例16)及び1MのHNO3溶液(下記の表19に記載の量)を装入した。1MのHNO3中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で12時間加熱した。
室温に冷却したのち、各ボトルからの繊維固形物を脱イオン水(3×150mL)及びメタノール(1×150mL)で洗浄した。この材料をオーブン中で40℃にて12時間乾燥した。
白色の繊維質固形物のサンプルが得られた(表19参照の回収及び重量付加データ参照)。
【0107】
【表19】
【0108】
表19:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収データ
【0109】
例18(組み換えタンパク質A親和性リガンドrSPAによるナイロン繊維表面の変性)
250mLのボトルに1Mの重炭酸ナトリウム(100mL)、組み換えタンパク質A(47.5mg/mL水溶液としてrSPA#RN091139、150mg)及び水(90mL)を装入した。上記の例17−4からのGMAグラフト繊維(350mg)をこの反応混合物に加え、37℃で2.5時間加熱した。
室温への冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、0.1Mの重炭酸ナトリウム(3×100mL)で洗浄した。濡れた繊維固形物を、0.2Mの重炭酸ナトリウム/0.5Mの塩化ナトリウム溶液中10重量%のチオグリセロール溶液100mL中に懸濁した。この混合物を室温で一夜撹拌した。
固形分をブッフナー漏斗に移し、0.1MのTRIZMA塩基溶液、0.15Mの塩化ナトリウム(1×75mL)、及び0.15Mの酢酸(1×75mL)による洗浄サイクルを行った。TRIZMA塩基溶液と酢酸溶液による洗浄はさらに2回反復した。最後にこの繊維固形物を脱イオン水(1×75mL)と20%エタノール(1×75mL)で洗浄した。この繊維固形物を20%エタノール中に保存した。
【0110】
静的結合容量の測定
例18に従って製造したタンパク質Aで官能化された繊維媒体に対するIgG静的結合容量の測定の結果を次の表20に示す。タンパク質Aで官能化された触手を有する繊維媒体は4mg/mL程度のIgG静的結合容量を有する。タンパク質Aのリガンド結合方法をさらに最適化すれば、バイオ分子アフィニティークロマトグラフの用途で低コストで且つ増大したIgG静的結合容量が提供されるであろう。
【0111】
【表20】
【0112】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表20:静的結合容量の測定 チャレンジ:PBS(pH7.4)中2g/LのポリクローなるIgG(SeraCareLifeScience Milford, MA)
【0113】
動的結合容量の測定
例18のタンパク質A官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定の結果は下記の表21に示す。0.35gの媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ1.1cmまで圧縮した(1.04mLのカラム容積、0.34g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量測定を60〜800cm/hrの線速度範囲で行った。これらの速度は5〜60秒の滞留時間に相当している。例18の繊維媒体は5g/mLの範囲のIgG動的結合容量を示している。タンパク質Aリガンド結合方法のさらなる最適化は低コストのバイオ分子親和クロマトグラフィーの応用に対して増大したIgG動的結合容量を提供するであろう。
【0114】
【表21】
【0115】
表21:種々の線速度(RTは滞留時間)における1、5、10及び50%破過におけるタンパク質A官能化したAllasso翼付繊維の親和クロマトグラフ媒体に対するIgG動的結合容量の測定DBC(動的結合容量)。チャレンジ:リン酸塩緩衝塩水(pH7.4)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)。
【0116】
例19(HPA/MBAmで変性したナイロン繊維の貫流通式グラフト重合)
内径22mmのVantageクロマトグラフカラムに、例16からのHPA/MBAm変性ナイロン繊維(100mLの脱イオン水中1.52gの繊維)のスラリーを装入した。真空を用いて過分の液体をカラムを通して引いて人絹繊維の圧縮を容易にした。スラリーをカラムに移したのち、カラムに上部ヘッダを取り付けて最終の容積が4.54mL(ベッド深さ1.2cm)になるようにヘッダを圧縮した。磁気攪拌棒、還流コンデンサ、温度調整器及び加熱マントルを有する250mLの3口フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルフォン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na、50%水溶液、23.0g、100mmol)と水(53.5mL)を加えた。この単量体溶液をアルゴンで10分間撹散した。1MのHNO3(0.62mL、0.250mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液と1MのHNO3溶液(2.5mL、2.5mmol)を反応混合物に加え、それを35℃に加熱した。この単量体溶液をVantageカラムに3.5mL/分の流量で12時間ポンプ送りした。この単量体溶液の粘度は反応中増大することが分かった。これはカラムを流れる単量体溶液の流量をほぼ3時間後に実質的に減少する結果となった。
室温に冷却後、Vantageカラムから繊維固形分を取り出し、0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150ML)及びメタノール(1×150mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
1.52gの白色繊維固形物を得た。
【0117】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を下の表22に示す。貫流グラフト重合法により製造されたSP官能化触手繊維媒体は、市販のバイオ分子クロマトブラフ用ビーズベース陽イオン交換媒体と同等の静的IgG結合容量を示した。HPA/MBAm変性繊維前駆体(例16)はごくわずかなIgGに対する静的結合容量しか示さなかった。
【0118】
【表22】
【0119】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく。
表22:静的結合容量測定。チャレンジ:50mMの酢酸塩溶液(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)
【0120】
動的結合容量の測定
例19のSP官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定結果は下の表23に示す。0.64gの媒体を内径11mmのVantageカラムに装入し、ベッド深さ2.0cmの深さまで圧縮した(1.90mLのカラム容積、0.32g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで行った。この速度は滞留時間36秒に相当する。例19の繊維媒体のIgG動的結合容量は40mg/mLであった。
【0121】
【表23】
【0122】
表23: 種々の線速度(RTは滞留時間、ndはデータなし)における1、5、10及び50%破過における、SP触手官能化Allasso翼付繊維陽イオン交換媒体に対するIgG動的結合容量の測定DBC(動的結合容量)値。チャレンジ:50mMの酢酸塩溶液(pH5)中2.0g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)
【0123】
例20(未変性ナイロン繊維のグラフト共重合)
4個の250mLボトルに、グリシジルメタクリレート(GMA)、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド溶液(APTAC、75wt%水溶液)、水、翼付きナイロン繊維(Allasso Industries製)、及び1MのHNO3(量は表24参照)を装入した。1MのHNO3中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)溶液を各ボトルに加えた。反応ボトルに蓋をし、この混合物を35℃で3時間加熱した。
室温まで冷却し、各ボトルからの繊維固形物をアセトン(3×100mL)で洗浄した。この濡れた材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表24の回収及び重量付加データ参照)。
【0124】
【表24】
【0125】
表24:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ
【0126】
例21(エポキシ官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
30mLのボトルに、上記例20−2のGMA/APTACグラフト繊維(0.5g)、水(10mL)、40%ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド溶液(1.25gの40wt%溶液)、及び1.0Mの水酸化ナトリウム(10mL)を装入した。この反応混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、固形分を脱イオン水(3×50mL)及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。
この濡れた材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
0.48gの明るい黄色の繊維状固形物が得られた。
【0127】
例22(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例2のスルホプロピル官能化繊維1.0gとポリアリルアミン水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で5分間ですばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例22)
【0128】
例23(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例2のスルホプロピル官能化繊維1.0gとポリアリルアミン水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で10分間すばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例23)
【0129】
例24(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例23のポリアリルアミン官能化繊維1.0gとポリアリルアミンの水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で10分間すばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例24)
【0130】
静的結合容量の測定
ウシ血清アルブミン(BSA)に対する静的結合容量の測定結果を下の表25に示す。このポリ(アリルアミン)官能化繊維媒体は20〜60mg/mLの範囲のBSA静的結合容量を与えた。この系列では、例24からの組成はBSAに対する最高の静的結合容量(SBC)を与えたが、これは商用のバイオ分子クロマトグラフの応用に使用されているビーズに基づく陰イオン交換媒体と同等である。
【0131】
【表25】
【0132】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表25: 静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMのトリスバッファ(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)
【0133】
動的結合容量の測定
例24のポリ(アリルアミン)官能化繊維媒体に対するBSA動的結合容量の測定結果を下の表26に示す。1.0gの繊維媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ3.0cm(2.85mLのカラム容積、0.35g/mLの繊維充填密度)まで圧縮した。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで実施した。この速度は54秒の滞留時間に相当する。例24の繊維媒体は、10%破過において50mg/mLのBSA動的結合容量を示した。
【0134】
【表26】
【0135】
表26:200cm/hr(RTは滞留時間)での1、5、10及び50%破過における、ポリ(アリルアミン)官能化Allasso翼付繊維の陰イオン交換媒体に対するBSA動的結合容量(DBC)の測定。チャレンジ:25mMTris(pH8)中0.5g/LのBSA
【0136】
例25(HPA/MBAm95/5によるナイロン繊維表面の変性)
機械的攪拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた1000mLの3口丸底フラスコにヒドロキシプロピルアクリレート(HPA、13.7g、95mmol)、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm、0.77g、5mmol)及び水(710mL)を装入した。この混合物に16.8gのほぐれたナイロン繊維(Allaso Industries, #090602PA6C)を加えた。過硫酸アンモニウム(1.60g、7mmol)を加えた。濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却したのち、固形物をブッフナー漏斗に移し、熱水で洗浄し(3×500mL)、ついでメタノール(1×500mL)で洗浄した。この材料を真空中で30分乾燥した。ついでオーブンに移し、40℃で12時間乾燥した。
17.3gの白色繊維を得た。
【0137】
例26(HPA/MBAmで変性され、ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能性を有する高表面積繊維のセリウムイオンレドックスによるグラフト重合)
HPA/MBAm変性ナイロン繊維のグラフト重合
機械的攪拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた200mLの3口丸底フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS−Na、23.1g、100mmol)と水(76.3mL)を装入した。この溶液に2.50gのHPA/MBAm変性ナイロン繊維(例25)を加えた。この反応混合物を真空中で掃気し、窒素ガスの3サイクル裏込め(充填)を行った。
1MのHNO3(0.620mL、0.250mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液、及び1MのHNO3溶液(2.46mL、2.46mmol)をこの反応混合物に加えた。
この反応混合物を35℃で18時間加熱した。
室温まで冷却した後、固形物を、0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、及びアセトン(3×150mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
2.52gの白色繊維質固形物を得た。
【0138】
媒体の機能性能
例26からのスルホプロピル官能化高表面積繊維を、陽イオン交換クロマトグラフ媒体で、ポリクローナルヒトガンマ免疫グロブリン(IgG)の精製に対して評価した。
【0139】
IgGに対する静的結合容量の測定結果を表27に示す。この研究では、Allasso(ロットID“3kgバッチ−製造ロットIDなし”)からの未官能化「翼付き繊維」の試料の静的結合容量を、例26のセリウムイオンレドックス重合法により製造されたスルホプロピル触手官能化繊維の試料、及び例2の熱開始グラフト重合法の試料と比較した。セリウムイオンレドックス重合法は、熱開始重合体グラフト法(50mgIgG/g繊維試料)及び未官能化繊維のみ(10mgIgG/g繊維試料)と比較して、相当に高い静的結合容量(150mgIgG/g繊維試料)を有するスルホプロピル(SP)触手官能化繊維媒体を提供することが分かった。SP触手官能化繊維媒体は商用のバイオ分子クロマトグラフィーの用途で使用されるビーズベースの樹脂媒体に比肩できるIgG静的結合容量を示す。
【0140】
【表27】
【0141】
表27: 静的結合容量測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)
【0142】
HETP(理論段高さ)値は、例26からの1.00gのSP−触手変性ナイロン繊維を内径11mmのVantageカラムに充填し、繊維ベッドを深さ3.0cmに圧縮したもの(カラム容積2.85mL)にアセトン注入法を用いて測定した。HETPの許容値(0.08cm)とピーク非対称性(1.8〜2.0)が見出された。これ等の結果に基づき、0.35g/mLのSP−触手変性繊維充填密度がクロマトグラフの評価において十分な一様流れ性能を与えると考えられる。
同じカラムを使用して次の手順によりIgG動的結合容量の測定も行った。
5CV(カラム容積) 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(平衡化)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中1.7mg/mLのIgG(SeraCare)(IgG チャレンジ)
30CV 50mMのNaOAc(pH5)(洗浄)
15CV 50mMのNaOAc緩衝液中1MのNaCl(pH5)(溶離)
10CV 0.5MのNaOH(洗浄)
10CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
【0143】
図10は特定の実施形態に従ったSP−触手変性繊維に対する代表的なIgG破過曲線の例を示す。鋭い破過曲線と10%IgG破過で40mg/mLのIgG動的結合容量がある(表28)。
【0144】
【表28】
【0145】
表28:種々の線速度での1、5、10、及び50%破過(RT=滞留時間)におけるSP−触手変性繊維Allasso翼付き繊維陽イオン交換媒体に対するIgG動的結合容量
【0146】
図11は200〜1200cm/hrの種々の線速度でのSP−触手繊維カラムに対する重畳したIgG破過曲線を示す。線速度が大きくなるにつれてIgG破過曲線の傾斜がわずかに減じる。本書に記載された実施形態に従った繊維媒体に対するIgG動的結合容量に対する速度の効果は、ビーズに基づく装置で典型的に観測される速度の効果よりははるかに小さい。図12において、最高速度(1200cm/hr、9秒の滞留時間)で測定されたIgG動的結合容量のわずかな減少が見られる。この挙動は、このシステムがIgG分子のイオン性リガンド結合サイトへの対流による輸送に大きく支配されることを示している。
【0147】
これに対して、従来のビーズに基づくイオン交換クロマトグラフィー樹脂は、速度の増加につれて動的結合容量がかなり減少し且つより大きい拡散破過曲線を示すであろう。非常な高速度ではベッドの圧縮がビーズの完全性を損ない、流れの一様性を損なってクロマトグラフ性能を減じる。
【0148】
例27
貫流ホスト細胞タンパク質クリアランス
例26に従って製造したスルホプロピル官能化繊維媒体を貫流精製(ポリッシュ)モードでのHCP除去活性に対して評価した。0.3gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径14.5mmのカラムに装入し、ベッド深さ0.6cm(1.00mLの容積、0.30g/mLの繊維充填密度)まで圧縮した。このカラムを単独に、及び商用の膜式吸着器(ChromaSorb(商標),Millipore Corp,膜体積0.2mL)と組み合わせて試験した。
【0149】
モノクローナル抗体を含んでいる細胞培地を清澄化し、次いでタンパク質Aカラムクロマトグラフィーを用いて分離し、溶液をpH5に調節した。次いでタンパク質Aの溶離pHをTRISでpH7に調節し、次いで0.2μの膜を通過させて濾過した。
【0150】
このカラムとChromasorb(商標)膜装置を緩衝溶液(25mMのTris、pH7)で平衡化した。
このスルホプロピル官能化繊維媒体及びChromaSorb膜式吸着器(Millipore Corpの商品名)を表29に記載したように独立に評価し、また直列で評価した。7.3g/Lのモノクローナル抗体たんぱく質A(プロテインA)の72mLの溶離物(pH7)を0.25mL/分で同装置に流通させた。6つの12mL分画を捕集した。8つの貫流分画と1つの保留試料をHCP−ELISAとタンパク質A HPLCにより分析して、HCPクリアランス及びモノクローナル抗体回収レベルをそれぞれ決定した。
【0151】
SP繊維(0.38LRV)はChromaSorb(商品名)膜吸着器(1.42LRV)ほどにはHCPを除去しなかったが、pH7での2個の貫流型吸着器の直列接続配置はHCPクリアランス(2.13LRV)で独立したいずれかの吸着器よりも有効であった。これらの吸着媒体はこの用途に限定されない容量なので、これら2個の吸着器は別個の明確に異なるHCPの個体群を除去するであろうことを示唆している。HCPがより正の有効電荷を有する場合には、SP繊維はより低いpHでより多くのHCPを除去するのではないかと思われるが、しかし、SP繊維に対するモノクローナル抗体の親和性も増大して製品回収率を減じるであろう。
【0152】
【表29】
【0153】
注1:貫流画分容積の総和
表29:モノクローナル抗体の貫流精製。3つの貫流洗練列の評価。SP−繊維(例26)(頂部)、ChromaSorb(商品名)(中段)、SP繊維(例26)/ChromaSorb(商品名)直列(底部)。5個の貫流と1つのプールした画分に対するモノクローナル抗体回収(タンパク質A HPLC)及びHCPクリアランス(HCP−ELISA)。
チャレンジ:0.25mL/分の流量での7.3g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶離液(pH7)。
【0154】
例28
還流ホスト細胞タンパク質クリアランス
例14で作製したQ−官能化繊維媒体(例14C)を貫流精製モードでHCP除去活性に対する評価を行った。0.34gのQ−官能化繊維媒体を14.5mmの内径を有するカラムに充填し、ベッド深さ0.6cm(1.00mLのカラム容積、0.34g/mLの繊維充填密度)に圧縮した。
モノクローナル抗体を含んだ細胞培養媒体を清澄し、次いでタンパク質Aカラムクロマトグラフィーを用いて単離し、pHを5に調整した。引き続いてタンパク質Aの溶離をTRIZMA塩基でpH8に調整し、次いで0.2μのろ過膜でろ過した。
【0155】
Q−官能化繊維媒体のカラムを緩衝溶液(25mMのpH8のTris)で平衡化した。
Q−官能化繊維媒体の評価からのデータを表30に示した。8.2g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶離物(pH8)100mLを流量1.0mL/分でカラム装置に通した。10個の10mL画分を集めた。溶離緩衝液として25mMのTris(pH8)中1Mの塩化ナトリウム溶液で、結合HCPを溶離した。2個の10mL溶離画分も集めた。これら10個の貫流画分と2個の溶離画分をHCP−ELISAとタンパク質A HPLCで分析して、HCPクリアランスのレベルとモノクローナル抗体回収をそれぞれ決定した。
【0156】
Q−官能化繊維は貫流モードでのHCPクリアランスで有効であった。0.3のHCP(ホスト細胞タンパク質)のLRV(除去活対数減少値)が高いmAb(モノクローナル抗体)回収率(98%)で達成された。ここに開示した実施形態のQ官能化繊維媒体は、モノクローナル抗体の製造のための貫流ポリッシュ(精製)においてビーズベースの樹脂媒体及び膜吸着媒体の装置に代わる便利で低コストの代替物として使用できる。Q−官能化繊維媒体(例14Cにより製造したQ−官能化繊維媒体に対して700mDa)の高い透過性は膜吸着器を用いて達成できない流量でmAb供給流の高速処理を可能にしうる。
【0157】
【表30】
【0158】
注1:貫流及び溶離画分容積の会合
表30:モノクローナル抗体供給物の貫流精製。充填ベッド形式のQ−官能化繊維媒体を用いる貫流ポリッシュ法による流れの評価(1.0mLカラム容量、0.34g/mL充填密度)。5つの貫流画分及び2つの溶離画分に対するモノクローナル抗体の回収(タンパク質A HPLC)及びHCPクリアランス(HCP−ELISA)。集めた画分データは算出値である。チャレンジ:流量1.0mL/分で8.2g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶出液(pH8)(滞留時間60秒)。
【0159】
例29(貫流モノクローナル抗体の会合クリアランス)
例26で製造したスルホプロピル繊維媒体によるモノクローナル抗体の総合除去活性を貫流ポリッシュモードで評価した。1.0gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ3.0cmに圧縮した(カラム容積2.85mL、繊維充填密度0.35g/mL)。
20g/Lのモノクローナル抗体を含有するタンパク質A溶離プールを、50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)中0.5mMの塩化ナトリウムと50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)で希釈し、pH5と導電率19mS/cmの6.9g/Lの溶液を得た。導電率19mS/cmは単量体モノクローナル抗体の結合を弱め、タンパク質Aの供給溶液中の総合したモノクローナル抗体の結合を有利にするために選択した。
スルホプロピル官能化繊維媒体のカラムは緩衝液(pH5の50mMの酢酸塩)で平衡化した。
【0160】
スルホプロピル官能化繊維媒体の評価データは表31と図9に示す。6.9g/L のモノクローナル抗体タンパク質A溶出液(pH5、19mS/cm)285mLを3.2mL/分(200cm/hr)の流量でカラムに通過させた。33個の8.6mL(3カラム容積)画分を捕集した。結合した単量体及び会合モノクローナル抗体を、50mMの酢酸塩(pH5)中0.5Mの塩化ナトリウム溶液を溶離緩衝液(バッファ)として使用して溶離した。5個の8.6mL(3カラム容積)の溶離画分を捕集した。これ等33個の貫流画分と5個の溶離画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)とタンパク質A HPLCで分析して会合クリアランスとモノクローナル抗体タンパク質の回収のレベルをそれぞれ決定した。
【0161】
スルホプロピル官能化繊維は、貫流モード動作で、単量体モノクローナル抗体種の存在下に、会合したモノクローナル抗体に結合する能力を示した。タンパク質AのHPLCデータからは、92%という高いmAb回収率を見出した。SECデータの分析によると貫流画分2に単量体mAbの完全な破過が見られ、一方、会合mAbは貫流画分5まで初期供給濃度0.6%(100%破過)に適合しなかった。溶離画分35、36及び37のSEC分析は、mAb集団の会合した高分子量(HMW)の種に富み、単量体mAbが枯渇していることを示した。本書に示した実施形態によるスルホプロピル官能化繊維媒体は本実施例に記載した方法に従って会合クリアランスの手段として役立つ。スルホプロピル官能化繊維媒体の高度な透過性(例26により調製したスルホプロピル官能化繊維媒体に対し520mDa)は、模擬した動的ベッド動作に適する高い流量で高速かつ迅速サイクルのmAb供給流れを可能にする。
【0162】
【表31】
【0163】
注1:貫流及び溶離画分体積の総計
表31: モノクローナル抗体の貫流総合クリアランス。スルホプロピル官能化繊維媒体の充填ベッド形式(2.85mLのカラム容積、0.35g/mLの充填密度)での貫流総合クリアランス法の評価。31個の貫流、3個の溶離画分に対するモノクローナル抗体回収(タンパク質A HPLC)と%単量体、%HMW会合(SEC)。プールした画分のデータは計算値。チャレンジ:3.2mL/分(滞留時間54秒)での6.9g/Lのモノクローナル抗体タンパク質Aの溶離(pH5、19mS)
【0164】
例32(圧縮性ベッドへの直接捕捉)
例19のスルホプロピル官能化繊維媒体を、貫流モード動作で、未清澄化細胞培養液からの直接的なモノクローナル抗体の捕捉に対して評価した。0.49gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径14.5mmのカラムに充填し、ベッド深さ3.0cm(5.0mLのカラム容積、0.10g/mLの繊維充填密度)に圧縮した。スルホプロピル官能化繊維媒体のカラムを緩衝液(50mMの酢酸塩緩衝液pH5)で平衡化した。0.8g/Lのモノクローナル抗体を含む未清澄化チャイニーズハムスター卵細胞の培養液(pH6.5、5.7mS/cm)を用意した。
【0165】
0.8g/Lのモノクローナル抗体を含む100mLの未清澄化の細胞培養液を流量12.5mL/分(460cm/hr)でカラムに通した。9個の10mL(2カラム容積)の貫流画分を収集した。低密度繊維ベッドを50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)で、繊維ベッドを繰り返して圧縮及び膨張することにより洗浄した。この圧縮及び膨張はカラムの流れ分配ヘッダーを調整することにより行った。13個の10mL(2カラム容積)の50mM酢酸塩緩衝液(pH5)洗浄画分を捕集した。結合したモノクローナル抗体を溶離緩衝液として50mMの酢酸塩溶液中(pH5)1.0Mの塩化ナトリウム溶液を用いて溶離した。溶離工程は、モノクローナル抗体溶離物をさらに濃縮するために、圧縮ベッド方式(ベッド深さ1.0cm、1.65mLのカラム容積、0.30g/mLの繊維充填密度)で実施することが好ましい。3個の10mL(2カラム容積)溶離画分を捕集した。9個の貫流画分、13個の洗浄画分、及び3個の溶離画分をタンパク質A HPLCで分析して、モノクローナル抗体回収を測定した。スルホプロピル官能化繊維媒体の評価データを表32に示す。
【0166】
これらスルホプロピル官能化繊維は未清澄化チャイニーズハムスター卵細胞の培養培地の存在下に、モノクローナル抗体(mAb)へ結合する能力を有することを示した。タンパク質A HPLCのデータは、画分7によるmAb捕捉動作中にmAbの完全な破過が起きることを示している。50mM酢酸塩溶液(pH5)での洗浄段階は、洗浄画分6により未結合のmAbをカラムと装置から除去する。50mMの酢酸塩溶液(pH5)中1.0Mの塩化ナトリウムによる溶離は、結合したmAbをスルホプロピル官能化繊維媒体カラムから溶離する。当業者は種々のプロセスの変形によりモノクローナルIgG結合容量の十分な利得が実現できることを認識するであろう。それらには、細胞培養供給物導通性の減少、未清澄脂肪培養供給物の希釈、或いは本例のスルホプロピルに基づく陽イオン交換性リガンドの官能性に代わるタンパク質A親和リガンド構造の使用等が含まれる。当業者には例18のタンパク質A官能化繊維媒体又はその誘導体がこの直接捕捉に好ましいことが理解されよう。低充填密度の形式では、表面官能化繊維媒体は、未清澄化の供給流から直接のIgG捕捉が可能である。引き続くベッド圧縮は圧縮ベッド形式でのmAb溶離の濃縮を可能にする。この方法は、モノクローナル抗体のような治療用のバイオ薬剤の下流側の工程で、第1清澄化(遠心)工程及び第2清澄化(深濾過)工程を省略することができるであろう。
【0167】
【表32】
【0168】
注1:貫流、洗浄、及び溶離画分体積の総計
表32:未清澄化細胞培地からのモノクローナル抗体の直接捕捉。直接mAb捕捉法の評価は、スルホプロピル官能化繊維媒体を充填したベッドの形式で行う(容積:5.00mLカラム容積。充填密度:0.10g/mL)。モノクローナル抗体濃度及び回収(タンパク質A HPLC)4個の貫流、4個の洗出し、及び3個の塩化ナトリウム溶出画分。チャレンジ:0.87g/Lのモノクローナル抗体を含む100mLの未清澄チャイニーズハムスター卵細胞液(pH6.5、5.7mS)で流量12.5mL/分(滞留時間:24秒)
【0169】
例33(ウイルスの結合/溶離精製のための繊維媒体の可能性)
バクテリオファージφ6に対する静的結合容量と溶離回収測定の結果が表31に挙げてある。5個のプラスチック遠心管に例14CのQ−官能化触手繊維媒体と未官能化Allasso繊維試料を下表33に記載した量で装入した。各繊維試料と対照の管を5mLの25mMトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mLのHSA)で10分間撹拌しながら平衡化した。これ等の管を室温で最高4000rpmの卓上型遠心分離器で10分間回転して繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを取り除き、25mMのトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mL HSA)中1.7×107pfu/mLのφ6溶液2.5mLを各管に加えた。これらの試料を室温で1時間撹拌した。その後、管を卓上遠心分離器で室温で4000rpmで15分間回転し繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを除去し、これ等の試料をプラーク形成分析法により未結合φ6に対する分析を行った。管を2.5mLの25mMトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mLのHSA)で遠心下で3回洗浄し、繊維媒体を各洗浄と2.5mLの上澄み除去の間にペレット化した。洗浄後に25mMのトリス緩衝液(pH8,0.18mg/mL HSA)中1.0Mの塩化ナトリウムの溶液2.5mLを各管に加えた(5mLの全容積、最終NaCl濃度0.5M)。これらの試料を室温で10分間撹拌した。その後、管を卓上遠心分離器中、室温で10分間4000rpmで回転し、繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを除去し、これ等の溶離試料のプラーク形成分析法により溶離φ6を分析した。試料14CのQ−官能化触手繊維媒体は有意なバクテリオファージφ6の対数減少値(LRV)3.1を示し、溶離回収率が40%を示した。この性能は商業的なウイルスクロマトグラフで使用されている膜ベースの陰イオン交換媒体と同等である。本発明のQ−官能化繊維媒体は予め充填される装置形式又は貫流ウイルスクリアランス又は結合/溶離ウイルス精製のためのクロマトグラフィーカラムに一体に組込むことができる。
【0170】
【表33】
【0171】
表33:静的結合容量測定。
チャレンジ:0.18mg/mLのHSAでの25mMトリス(pH8)中2.5mLの1.7×107pfu/mLバクテリオファージφ6。
溶出緩衝液:0.18mg/mLのHSAを有する25mMトリス(pH8)中0.5MのNaCl。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12