(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0032】
以下に大表面積繊維表面の官能化及び遊離ラジカルグラフト重合法を説明する。
例1(ペンダントアリル基による大表面積繊維の表面変性)
ナイロン繊維表面のアリルグリシジルエーテルによる変性。
ガラスボトルにアリルグリシジルエーテル(28.9g、250mmol)、硫酸ナトリウム(6.0g、42mmol)及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(60mL)を入れた。この混合物に4gのほぐれたナイロン繊維(供給者ロットID)を加えた。この濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。
室温まで冷却後、固形物をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(400mL)で洗浄し、次いでこの材料を30分間真空乾燥した。
9.4gの湿った固形分を得た。この材料を直ちに次の工程で使用した。
【0033】
例2(アリル変性し、ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能基を有する大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性したナイロン(AMPS/DMAM55/45)のグラフト重合
ガラスボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、5.02g、24mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM、1.96g、20mmol)、過硫酸アンモニウム(0.49g、2mmol)及び水(72.8mL)を加えた。この混合物に9.4gのほぐれたナイロン繊維(実施例1)を加え、この濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温まで冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(450mL)とメタノール(250mL)で洗浄した。この材料をオーブン中70℃で12時間乾燥した。
4.0gの白色繊維固形分が得られた。
【0034】
例3(得られた媒体の官能性能)
実施例2からのスルホプロピルで官能化した大表面積の繊維を、ポリクローナル・ヒトガンマイミュノグロブリン(IgG)の精製のため、陽イオン交換クロマトグラフィーで評価した。IgGに対する静的結合容量測定の結果は下記の表1に示す。この研究において、Allaso Industriesから市販されている未官能化の「翼付き繊維」の試料(ロット番号090602PA6C)の静的結合容量を、上記の例1及び例2に記載された紫外線照射重合法及び熱開始重合体グラフト法によりに製造されたスルホプロピル官能化繊維試料と比較した。熱開始遊離ラジカルグラフト法は、紫外線開始法による静的表面結合容量(10〜30mgIgG/g繊維試料)や未官能化繊維のみの静的表面結合容量(20mg IgG/g繊維試料)よりも十分に高い静的表面結合容量(50〜80mgIgG/g繊維試料)を有するSP官能化繊維媒体を提供した。また、1MのNaCl溶液によるIgG溶離試験をこれ等の試料に対して行った。これらの溶離条件下に、SP官能化繊維材料から50〜70%の結合IgGの回収が得られた。これ等の結果に基づき、SP官能化繊維媒体はバイオ分子クロマトグラフィーの用途における官能性能試験に対して十分な静的結合容量及び塩溶出特性を示すことが分かった。
【0035】
【表1】
【0036】
表1:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム中2g/Lのポリクローナル・ヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)(pH5)。洗浄バッファー:50mM酢酸ナトリウム(pH5)。溶離バッファ:50mMの酢酸ナトリウム中1Mの塩化ナトリウム(pH5)。
【0037】
例4
約0.3gのほぐれたSP官能化Allasso翼付き繊維を内径6.6mmの(ID)Omnifitクロマトグラフィーカラムに充填した。ベッド体積は頂部溶剤分配ヘッダーの圧縮により2cmに調整してカラム容積を0.68mLにした。IgG動的結合容量の測定を次の手順で実施した。
10CV(カラム容積) 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(平衡化)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中2mg/mLのIgG(SeraCare)
(IgGチャレンジ)
80CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
50CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中1MのNaCl(溶離)
20CV 0.5MのNaOH(洗浄)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
【0038】
図2はいくつかの実施形態に従った、例2に記載されたSPF1繊維に対する代表的なIgG破過曲線の例である。20〜30mg/mLの範囲で鋭い破過曲線とIgG動的結合容量(DBC)が測定された(表2)。50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中の1Mの塩化ナトリウムで溶離することにより、結合IgGの定量的な回収が達成された。
【0039】
【表2】
【0040】
表2:実施例2のSP官能化媒体(SPF1)の異なる線速度における1、5、10及び50%の破過でのIgGのDBCの値
【0041】
図3は200〜1500cm/hrの範囲の種々の線速度でのSPF1繊維媒体カラムに対する重畳したIgG破過曲線である。線流れ速度が増加しても破過曲線の形に差がない。
【0042】
図4は非常に高速(1500cm/hr)ですら測定したIgG動的結合容量がわずかしか変動しないことを示す。この挙動はシステムがIgG分子のイオン性リガンド結合サイトへの対流による輸送に支配されることを示している。
【0043】
これに対して従来のビーズによるイオン交換クロマトグラフィー樹脂は速度が増すと動的結合容量が減少し、破過曲線がより拡散する。非常に高い速度では、ベッドの圧縮がビーズの一体性を損われ、その結果として流れの一様性が乏しくなり、クロマトグラフ性能が低下する。
【0044】
例5(アクリルアミド共重合体被覆によるナイロン表面の変性)
AMPS/DMAMが55/45の溶液重合
250mLの三口丸底フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、10.04g、48mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM、3.92g、40mmol)、過硫酸アンモニウム(0.98g、4mmol)及び水(146mL)を装入した。この溶液を80℃に4時間加熱した。室温に冷却したのち、この重合体溶液を直ちに次に示す工程に使用した。
【0045】
ナイロン繊維表面のAMPS/DMAM重合体被覆(Coating)による変性
ガラスボトルに19gの上記の工程で調製したAMPS/DMAM55/45共重合体溶液と、1gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries.#090602PA6C)を加えた。この濡れた固形物を80℃で24時間加熱した。室温に冷却後、固形物をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(3×50mL)とメタノール(1×50mL)で洗浄した。この材料を真空中で10分間乾燥した。この材料をオーブンに入れて40℃で24時間乾燥した。
0.9gの白色繊維状固形物が得られた。
【0046】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果は表3に示す。この研究ではAllasso (lot ID 090602PA6C)の未官能化の「翼付き繊維」試料の静的結合容量を、この例5の溶液重合体被覆法に従って調製したスルホプロピル(SP)官能化繊維の試料と比較した。この研究では溶液重合体被覆法では、SP官能化繊維媒体の方が、SP未官能化繊維媒体単独(1mgのIgG/g繊維試料)よりも高い静的結合容量(30〜40mgのIgG/g繊維試料)を提供した。これ等の結果に基づき、SP官能化重合体繊維被覆はAMPS/DMAM共重合体の単なる被覆と熱アニールだけで設けることができる。
【0047】
【表3】
【0048】
表3:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中の2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)。
【0049】
例6(ペンダントアリル基による大表面積繊維の表面変性)
アリルグリシジルエーテルによるナイロン繊維表面の変性
0.5Lのフラスコに、アリルグリシジルエーテル(70.7g、620mmol)、硫酸ナトリウム(14.9g、105mmol)及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(350mL)を装入した。この混合物に10gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を追加した。濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。室温に冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、蒸留水(1.5L)とメタノール(0.5L)で洗浄した。得られた材料を真空中で30分乾燥し、次いでオーブンに入れ50℃で18時間乾燥した。
8.8gの白色繊維固体が得られた。
【0050】
例7(ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能基での、アリル変性大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性ナイロン(AMPS/DMAM55/45)のグラフト重合
ガラス容器に2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAM)、過硫酸アンモニウム、及び水を、下の表4に記載した比率で装入した。ほぐれたアリルグリシジルエーテル変性ナイロン繊維(実施例6)を各混合物に加えた。この濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。室温に冷却後、濡れた固形物を各々ブッフナー漏斗に移し、蒸留水(3×50mL)とメタノール(1×50mL)で洗浄した。得られた材料はオーブン中、40℃で12時間乾燥した。
乾燥した表面変性繊維の試料はIgGチャレンジ溶液で静的結合容量を測定する用意が整う。
【0051】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果も表4に示す。この研究では、Allasso (lot ID 090602PA6C)からの官能化されていない「翼付き繊維」試料の静的結合容量が、熱開始重合体のグラフト工程により調製されたスルホプロピル官能化繊維の試料(試料A〜G)と比較された。この研究では、SP官能化繊維媒体のIgG静的結合容量はAMPS/DMAM重合体組成と反応溶液の濃度に影響されうる。例えば、試料EとGは、より高いAMPS濃度で調製された試料AとCと同様に、官能化しないナイロン繊維単独(6mgIgG/g繊維)よりも実質的に高いIgG静的結合容量を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4:グラフト重合組成物とIgG静的結合容量測定データ。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)
【0054】
媒体の官能性能
例2で得たスルホプロピル官能化高表面積繊維の性能を次の例でモノクローナル抗体(mAb)の陽イオン交換クロマトグラフィーによる結合及び溶離精製で評価した。mAbは濃度6.7(mg/mL)でタンパク質Aカラムからの溶離物として用意した。
【0055】
例8(モノクローナル抗体の結合及び溶離精製)
カラム充填
例2で得た0.9gのスルホプロピル官能化した大表面積繊維を100gのイソプロパノール中で30分間かけてスラリー化した。400mLの脱イオン水を加え、スラリーを一晩撹拌した。この繊維スラリーを内径11mmのVantageカラムに移し、真空を用いて過剰の液をカラムから引いて人絹繊維の圧縮を促進した。スラリーをカラムに移送したのち、カラムの頂部ヘッダをセットし、ヘッダーで圧縮して、最終のカラム堆積2.76mLにした(目標性能に向けてベッドを圧縮)。2重量%のアセトン溶液を用いてHETP(理論弾高さ)及びピーク非対称の測定を実行した。HETPは0.1cm未満であり、ピーク非対称性は2.0未満であった。
【0056】
陽イオン交換クロマトグラフフィーによるmAbの精製
図5〜6には、例2の陽イオン交換媒体を用いてmAbの結合/溶離精製するクロマトグラフィー法を実施する例が示されている。この例では、6.7mg/mLのmAb(14.7mgのmAb)を含有するタンパク質A溶離液0.79CV(2.18mL)が、カラムに適用され、100mMのMES緩衝液(pH6)中250mMのNaClで溶離される。mAbの溶離ピークは20個の0.5CV画分(各画分=1.38mL)で収集された。280nmでの各画分のUV吸収の測定によるmAb溶出画分の定量は13.8mg(収率94%)の回収を示した。
図7のタンパク質AのHPLCによる各溶離画分のIgG分析も行った。この分析もまた各溶離画分のIgG濃度を与える。この分析により、mAb溶離が主として画分第5〜9に存在すること及びmAbの回収率が90%であることを示した。
【0057】
図8にはチャイニーズハムスターの卵巣−各mAb溶離画分のホスト細胞タンパク質濃度(CHO−HCP)に対するELISAデータが記載されている。HCPは主として画分第5〜9において濃度479ng/mLの平均濃度で溶離される。mAbチャレンジ溶液は6944ng/mLのHCP濃度を有し、HCPクリアランス対数減少値(LRV)は1.1と算出された。
【0058】
例9(ペンダントアリル基を有する大表面積繊維の表面変性)
アリルグリシジルエーテルによるナイロン繊維の表面変性
ガラスボトルにアリルグリシジルエーテル(28.8g、252mmol)硫酸ナトリウム(6.0g、43mmol)、及び4Nの水酸化ナトリウム溶液(60mL)を装入した。この混合物に4gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を追加し、この濡れた固形物を50℃で12時間加熱した。
室温に冷却したのち、この固形物をブッフナー漏斗に移して蒸留水(0.5L)で洗浄した。得られた材料を真空中で30分乾燥した。この湿った材料を直ちに次の工程で使用した。
【0059】
例10(ペンダントトリメチルアンモニウム陽イオン交換官能性を有するアリル変性大表面積繊維の遊離ラジカルグラフト重合)
アリル変性ナイロン(APTAC100)のグラフト重合
カラスボトルに(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(APTAC、9.1g、44mmol)、過硫酸アンモニウム(0.64g、3mmol)、水(27mL)、及び10gの濡れたアリルグリシジルエーテル変性した上記例9の繊維を装入した。この溶液を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却したのち、この濡れた固形物をブッフナー漏斗に移して蒸留水(100mL)とメタノール(30mL)で洗浄した。得られた材料を真空中50℃で120分乾燥した。材料をオーブンにおいて50℃で12時間乾燥させた。
6.1gの明黄色の繊維固形物を得た。
乾燥しかつ表面変性した繊維試料はウシ血清アルブミン(BSA)試験溶液と静的結合容量の測定をうける用意ができた。
【0060】
例11(静的結合容量の測定)
トリメチルアンモニウム官能化繊維の陰イオン交換への適用における性能を試験するために、BSA静的結合容量測定を実施した。その結果を下の表5に示す。この研究では、例10の熱開始重合体グラフト法により調製されたトリメチルアンモニウム官能化繊維試料の静的結合容量が記録された。例10からのトリメチルアンモニウム官能化繊維媒体のBSA静的結合容量は1〜19mg/gである。
【0061】
【表5】
【0062】
表5:静的結合容量の測定。チャレンジ:25mMのTRIS緩衝液(pH8)中0.5gのウシ血清アルブミン(BSA)
【0063】
例12(変性しないナイロン繊維のグラフト重合)
200mLの6個のガラスボトルに3−スルホプロピルメタクリレートのカリウム塩(3−SPMA)、水、ナイロン繊維(Allasso Industries製)、及び1MのHNO
3溶液(下記の表に記載の量で)を装入した。1Mの硝酸中0.4Mの硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、各ボトルからの繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1M 水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。ついでこの材料をオーブンにおいて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表6の回収及び重量付加データ参照)。
【0064】
【表6】
【0065】
表6:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ。
【0066】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を次の表7に示す。SP−官能化触手繊維媒体は市販のバイオ分子クロマトグラフ用に使用されるビーズベースの陽イオン交換媒体に比肩できるIgG静的結合容量を示す。
【0067】
【表7】
【0068】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表7:静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences,Milford,MA)
【0069】
動的結合容量の測定
例12−6のSP官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定結果を次の表8に示す。1.0gの媒体を11mm内径のVantageカラムに充填し、ベッド深さ2.9cm(2.75mLのカラム容積、0.36g/mLの繊維充填密度)になるまで圧縮した。動的結合容量の測定は、60〜1200cm/hrの線速度範囲にわたり行った。これ等の速度は9〜180秒の滞留時間に相当する。例12−6の繊維媒体は30〜40mg/mLの範囲のIgG動的結合容量を示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8:SP触手官能化Allasso翼付繊維の陽イオン交換媒体の各種線速度における1,5,10及び50%破過でのIgG DBC値(RTは滞留時間)。チャレンジ:50mM酢酸塩溶液(pH5)中の20g/LポリクローナルヒトIgG。
【0072】
例13(未変性ナイロン繊維のグラフト重合)
6個の200mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA)、水、ナイロン繊維(Allasso Industries製)及び1MのHNO
3溶液(下記の表に記載の量)を装入した。1MのHNO
3硝酸中の硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、各ボトルからの繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。
ついでこの材料をオーブンにおいて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表9の回収及び重量追加データ参照)。
【0073】
【表9】
【0074】
注1:1/3分離画分に基づく計算
表9:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ
【0075】
エポキシ官能化繊維のジエチルアミン官能化
6個の250mLボトルに上例からの湿ったGMA官能化繊維の部分と、25重量%のジエチルアミン水溶液を加えた(下記の表に記載の量)。これ等の混合物を室温で3時間撹拌した。
続いて繊維固形分を脱イオン水(3×50mL)とエタノール(1×50mL)で洗浄した。これ等の材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物が得られた(回収及び重量付加データについては表10参照)。
【0076】
【表10】
【0077】
注1;初期の1.5gの繊維装入量の2/3の部分に基づいて算出
表10:エポキシ官能化繊維のジエチルアミンによる変性に対する組成と回収データ
【0078】
静的結合容量の測定
BSAに対する静的結合容量測定の結果を次の表11に示す。GMA触手のグラフト密度に依存して、ジエチルアミン官能化結合手を有する繊維媒体は広い範囲のBSA静的結合容量(SBC)を示すことができる。この系列では、例13−2Bと例13−3Bの組成は、商用のバイオ分子クロマトフィーの用途において、ビーズベースの陽イオン交換媒体に比肩できるBSAのSBC値を与えることが分かった。
【0079】
【表11】
【0080】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表11:静的結合容量の測定。チャレンジ:25mMトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)
【0081】
動的結合容量の測定
例13−3Bのジメチルアミンで官能化した繊維媒体のBSA動的結合容量の測定結果を次の表12に示す。この媒体0.5gを内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ1.5cmまで圧縮した(1.42mLのカラム容積で0.35g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで行った。この速度は滞留時間27秒に相当する。例13−3Bの繊維媒体は10%破過で30mg/mLのBSA動的結合容量を示した。
【0082】
【表12】
【0083】
表12:ジメチルアミン触手官能化されたAllasso翼付き繊維の陰イオン交換媒体での200cm/hrにおけるBSAの1、5、10及び50%破過におけるDBC値(動的結合容量値)(RTは滞留時間)。チャレンジ:25mMTris緩衝液(PH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0084】
例14
未変性ナイロン繊維のグラフト重合
500mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA,1.70g、12mmol)と水(232.8mL)を入れた。5gのAllassoナイロン繊維をこの溶液に加えた。1MのHNO
3溶液(7.22mL、7.2mmol)を反応混合物に加え、次いで1MのHNO
3(0.602mL,0.240mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)の溶液を加えた。
この反応混合物を35℃で1時間加熱した。
室温まで冷却した後、固形分を脱イオン水(3×100mL)で洗浄した後、この濡れた材料(12.21g)を直ちに次工程で使用した。
【0085】
エポキシ官能化繊維のQ官能化
4個の250mLのボトルに、上例からの濡れたGMA官能化繊維の部分とメタノール(次の表13に記載の量で)中50重量%のトリメチルアミン(水溶液)を装入した。この混合物を室温で18時間撹拌した。
ついで繊維固形物を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸の溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、及びエタノール(1×50mL)で洗浄した。次いでこの材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形分の試料が得られた(表13の回収及び重量追加データ参照)。
【0086】
【表13】
【0087】
表13:トリメチルアミンによるエポキシ官能化繊維の変性のための組成及び回収データ
【0088】
静的結合容量の測定
BSAに対する静的結合容量の測定の結果は下記の表14に示す。Q−官能化触手繊維媒体は30mg/mLのBSA静的結合容量を与えた。この系列においては、例14C及び14Dの組成が最高のBSA SBC値を与える。これは商用バイオ分子クロマトグラフの用途で使用されているビーズベースの陰イオン交換媒体と同等である。
【0089】
【表14】
【0090】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表14:静的結合容量測定。チャレンジ:25mMのトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0091】
動的結合容量の測定
例14Cにより調製したQ官能化繊維媒体に対するBSAの動的結合容量の測定の結果は下記の表15に示す。1.0gの同媒体を内径11mmのVantageカラムに入れ、ベッド深さ3.0cm(2.85mLのカラム容積、0.35g/mL繊維充填密度)に圧縮した。動的結合容量の測定は60〜1200cm/hrの線速度範囲で行った。これ等の速度は9〜180秒の滞留時間に相当する。例14Cの繊維媒体は30〜40mg/mLの範囲のBSA動的結合容量を示している。
【0092】
【表15】
【0093】
表15:Q−触手官能化したAllasso翼付き陰イオン交換繊維媒体に対するBSAの動的結合容量DBCの、各種線速度破過1、5、10及び50%に対する値(RT=滞留時間)。チャレンジ:25mMトリス緩衝液(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)。
【0094】
例15(未変性ナイロン繊維のグラフト重合)
500mLのボトルにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(1.69g、13mmol)と水(232.5mL)を装入した。この溶液に5.00gのAllassoナイロン繊維を加えた。1MのHNO
3溶液(7.21mL、7.2mmol)を反応混合物に加え、次いで1MのHNO
3溶液(0.601mL、0.240mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)の溶液を添加した。
反応混合物を35℃で1時間加熱した。
室温に冷却後、固形分を0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、及びエタノール(1×100mL)で洗浄した。得られた材料をオーブンに入れ40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物5.58gが得られた。
【0095】
例16(ポリ(HEMA)官能化繊維の硫酸化)
アルゴン雰囲気と磁気撹拌子と3NのNaOHバッブラーを有する500mLの3口フラスコに、酢酸を加え、0℃に冷却した。クロロスルホン酸(5.0g、43mmol)を加えた。上記の例からの2.5gのポリ(HEMA)官能化繊維をこの反応混合物に添加し、室温まで放置して温め、1時間撹拌した。
次いでこの繊維固形物に5mLの水と300mLの1M炭酸ナトリウム溶液の添加で中和した。固形の炭酸ナトリウムをこの反応混合物に分割して添加してpH>7にした。繊維固形物を1Mの炭酸ナトリウム溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、及びエタノール(1×100mL)で順次洗浄した。この材料をオーブンにて40℃で12時間乾燥した。
3.64gの白色のゴム状固体を得た。
【0096】
比較例1(未変性EVOH繊維のグラフト重合)
4個の30mLのボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na,50%水溶液)、水、及びEVOH繊維(Engineered Fiber Technologies,S030−0.5dx5mm)を装入した。反応混合物を真空パージし、窒素で3回裏込め(バックフィル)した。1MのHNO
3溶液と1MのHNO
3溶液中硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに加えた(下記の表16に記載した分量で)。これらの反応ボトルに蓋をし、それらの混合物を40℃で12時間加熱した。
室温まで冷却したのち、各ボトルから繊維固形物を脱イオン水(3×30mL)、0.5Mの水酸化ナトリウム溶液中0.2Mのアスコルビン酸(3×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(2×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、及びメタノール(2×30mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で8時間乾燥した。
白色繊維固形物を得た(表16の回収と収率のデータ参照)
【0097】
【表16】
【0098】
表16:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収のデータ
【0099】
比較例2(未変性PVA繊維のグラフと重合)
4個の30mLのボトルに2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na、50%水溶液)、水、及びPVA繊維(Engineered Fiber Technologies,VPB052×3mm)を装入した。この反応混合物を真空パージし、窒素で3回裏込め(バックフィル)した。1MのHNO
3溶液と1MのHNO
3溶液中硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)の0.4M溶液を各ボトルに加えた(下記の表17に記載した分量)。これらの反応ボトルに蓋をし、それらの混合物を40℃で12時間加熱した。
室温まで冷却したのち、各ボトルから繊維固形物を脱イオン水(3×30mL)、0.5Mの硫酸溶液中0.2Mのアスコルビン酸(3×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(2×30mL)、脱イオン水(3×30mL)、及びメタノール(2×30mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で8時間乾燥した。
白色繊維固形物を得た(表17の回収と収率のデータ参照)
【0100】
【表17】
【0101】
表17:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収のデータ
【0102】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を下の表18に示す。EVOH繊維ベースの母材に基づくSP官能化触手媒体(比較例1)は低いIgG静的結合容量を示すに過ぎない。PVC繊維ベースの母材に基づくSP官能化触手媒体(比較例2)はある組成(比較例2−1)に対してわずかに高いIgG静的結合容量を示すに過ぎない。すべての場合において、IgG SBC値は市販のバイオ分子クロマトグラフで使用される市販のビーズベースの陽イオン交換媒体よりもはるかに低い。これらの例は翼付き繊維媒体(Allasso Industries製)が示す表面積増加の利点を示すのに役立っている。もしもPVA又はEVOHベースの母材に同様な表面積の増強が実行されれば、本書に記載したセリウムイオンレドックスグラフト法を使用して直接表面を官能化した後で高いIgG結合容量を得ることができるであろう。
【0103】
【表18】
【0104】
注:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表18: 静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)。
【0105】
例16(HPA/MBAm95/5によるナイロン繊維表面の変性)
機械撹拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた2000mLの三口フラスコに、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA、 13.7g、95mmol)、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm、0.77g、5mmol)、及び水(710mL)を装入した。この混合物に16.8gのほぐれたナイロン繊維(Allasso Industries, #090602PA6C)を加え、次いで過硫酸アンモニウム(1.60g、7mmol)を添加した。濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、熱水(3×500mL)とメタノール(1×500mL)で洗浄した。この材料を真空中で20分間乾燥した。この材料をオーブンに移し、40℃で18時間乾燥した。
17.6gの白色繊維が得られた。
【0106】
例17(HPA/MBAm変性ナイロン繊維のグラフト重合)
4個の200mLのボトルにグリシジルメタクリレート(GMA)、水、HPA/MBAm変性ナイロン繊維(例16)及び1MのHNO
3溶液(下記の表19に記載の量)を装入した。1MのHNO
3中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)溶液を各ボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、これらの混合物を35℃で12時間加熱した。
室温に冷却したのち、各ボトルからの繊維固形物を脱イオン水(3×150mL)及びメタノール(1×150mL)で洗浄した。この材料をオーブン中で40℃にて12時間乾燥した。
白色の繊維質固形物のサンプルが得られた(表19参照の回収及び重量付加データ参照)。
【0107】
【表19】
【0108】
表19:セリウムレドックスグラフト重合組成と回収データ
【0109】
例18(組み換えタンパク質A親和性リガンドrSPAによるナイロン繊維表面の変性)
250mLのボトルに1Mの重炭酸ナトリウム(100mL)、組み換えタンパク質A(47.5mg/mL水溶液としてrSPA#RN091139、150mg)及び水(90mL)を装入した。上記の例17−4からのGMAグラフト繊維(350mg)をこの反応混合物に加え、37℃で2.5時間加熱した。
室温への冷却後、固形分をブッフナー漏斗に移し、0.1Mの重炭酸ナトリウム(3×100mL)で洗浄した。濡れた繊維固形物を、0.2Mの重炭酸ナトリウム/0.5Mの塩化ナトリウム溶液中10重量%のチオグリセロール溶液100mL中に懸濁した。この混合物を室温で一夜撹拌した。
固形分をブッフナー漏斗に移し、0.1MのTRIZMA塩基溶液、0.15Mの塩化ナトリウム(1×75mL)、及び0.15Mの酢酸(1×75mL)による洗浄サイクルを行った。TRIZMA塩基溶液と酢酸溶液による洗浄はさらに2回反復した。最後にこの繊維固形物を脱イオン水(1×75mL)と20%エタノール(1×75mL)で洗浄した。この繊維固形物を20%エタノール中に保存した。
【0110】
静的結合容量の測定
例18に従って製造したタンパク質Aで官能化された繊維媒体に対するIgG静的結合容量の測定の結果を次の表20に示す。タンパク質Aで官能化された触手を有する繊維媒体は4mg/mL程度のIgG静的結合容量を有する。タンパク質Aのリガンド結合方法をさらに最適化すれば、バイオ分子アフィニティークロマトグラフの用途で低コストで且つ増大したIgG静的結合容量が提供されるであろう。
【0111】
【表20】
【0112】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく
表20:静的結合容量の測定 チャレンジ:PBS(pH7.4)中2g/LのポリクローなるIgG(SeraCareLifeScience Milford, MA)
【0113】
動的結合容量の測定
例18のタンパク質A官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定の結果は下記の表21に示す。0.35gの媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ1.1cmまで圧縮した(1.04mLのカラム容積、0.34g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量測定を60〜800cm/hrの線速度範囲で行った。これらの速度は5〜60秒の滞留時間に相当している。例18の繊維媒体は5g/mLの範囲のIgG動的結合容量を示している。タンパク質Aリガンド結合方法のさらなる最適化は低コストのバイオ分子親和クロマトグラフィーの応用に対して増大したIgG動的結合容量を提供するであろう。
【0114】
【表21】
【0115】
表21:種々の線速度(RTは滞留時間)における1、5、10及び50%破過におけるタンパク質A官能化したAllasso翼付繊維の親和クロマトグラフ媒体に対するIgG動的結合容量の測定DBC(動的結合容量)。チャレンジ:リン酸塩緩衝塩水(pH7.4)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)。
【0116】
例19(HPA/MBAmで変性したナイロン繊維の貫流通式グラフト重合)
内径22mmのVantageクロマトグラフカラムに、例16からのHPA/MBAm変性ナイロン繊維(100mLの脱イオン水中1.52gの繊維)のスラリーを装入した。真空を用いて過分の液体をカラムを通して引いて人絹繊維の圧縮を容易にした。スラリーをカラムに移したのち、カラムに上部ヘッダを取り付けて最終の容積が4.54mL(ベッド深さ1.2cm)になるようにヘッダを圧縮した。磁気攪拌棒、還流コンデンサ、温度調整器及び加熱マントルを有する250mLの3口フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルフォン酸ナトリウム塩溶液(AmPS−Na、50%水溶液、23.0g、100mmol)と水(53.5mL)を加えた。この単量体溶液をアルゴンで10分間撹散した。1MのHNO
3(0.62mL、0.250mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液と1MのHNO
3溶液(2.5mL、2.5mmol)を反応混合物に加え、それを35℃に加熱した。この単量体溶液をVantageカラムに3.5mL/分の流量で12時間ポンプ送りした。この単量体溶液の粘度は反応中増大することが分かった。これはカラムを流れる単量体溶液の流量をほぼ3時間後に実質的に減少する結果となった。
室温に冷却後、Vantageカラムから繊維固形分を取り出し、0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150ML)及びメタノール(1×150mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
1.52gの白色繊維固形物を得た。
【0117】
静的結合容量の測定
IgGに対する静的結合容量の測定結果を下の表22に示す。貫流グラフト重合法により製造されたSP官能化触手繊維媒体は、市販のバイオ分子クロマトブラフ用ビーズベース陽イオン交換媒体と同等の静的IgG結合容量を示した。HPA/MBAm変性繊維前駆体(例16)はごくわずかなIgGに対する静的結合容量しか示さなかった。
【0118】
【表22】
【0119】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度に基づく。
表22:静的結合容量測定。チャレンジ:50mMの酢酸塩溶液(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)
【0120】
動的結合容量の測定
例19のSP官能化繊維媒体に対するIgG動的結合容量の測定結果は下の表23に示す。0.64gの媒体を内径11mmのVantageカラムに装入し、ベッド深さ2.0cmの深さまで圧縮した(1.90mLのカラム容積、0.32g/mLの繊維充填密度)。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで行った。この速度は滞留時間36秒に相当する。例19の繊維媒体のIgG動的結合容量は40mg/mLであった。
【0121】
【表23】
【0122】
表23: 種々の線速度(RTは滞留時間、ndはデータなし)における1、5、10及び50%破過における、SP触手官能化Allasso翼付繊維陽イオン交換媒体に対するIgG動的結合容量の測定DBC(動的結合容量)値。チャレンジ:50mMの酢酸塩溶液(pH5)中2.0g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare Life Sciences, Milford, MA)
【0123】
例20(未変性ナイロン繊維のグラフト共重合)
4個の250mLボトルに、グリシジルメタクリレート(GMA)、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド溶液(APTAC、75wt%水溶液)、水、翼付きナイロン繊維(Allasso Industries製)、及び1MのHNO
3(量は表24参照)を装入した。1MのHNO
3中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)溶液を各ボトルに加えた。反応ボトルに蓋をし、この混合物を35℃で3時間加熱した。
室温まで冷却し、各ボトルからの繊維固形物をアセトン(3×100mL)で洗浄した。この濡れた材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
白色繊維固形物の試料が得られた(表24の回収及び重量付加データ参照)。
【0124】
【表24】
【0125】
表24:セリウムレドックスグラフト重合組成物と回収データ
【0126】
例21(エポキシ官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
30mLのボトルに、上記例20−2のGMA/APTACグラフト繊維(0.5g)、水(10mL)、40%ポリ(アリルアミン)ヒドロクロリド溶液(1.25gの40wt%溶液)、及び1.0Mの水酸化ナトリウム(10mL)を装入した。この反応混合物を35℃で18時間加熱した。
室温に冷却後、固形分を脱イオン水(3×50mL)及びアセトン(1×50mL)で洗浄した。
この濡れた材料をオーブンに入れ、40℃で12時間乾燥した。
0.48gの明るい黄色の繊維状固形物が得られた。
【0127】
例22(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例2のスルホプロピル官能化繊維1.0gとポリアリルアミン水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で5分間ですばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例22)
【0128】
例23(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例2のスルホプロピル官能化繊維1.0gとポリアリルアミン水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で10分間すばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例23)
【0129】
例24(スルホプロピル官能化繊維のポリ(アリルアミン)変性)
磁気撹拌棒を備えた500mLのビーカーに例23のポリアリルアミン官能化繊維1.0gとポリアリルアミンの水溶液(PAA MW=15kDa、20%(w/w)、75mL)を装入した。ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(750μL、Aldrich #475696)を加え、その混合物を室温で10分間すばやく撹拌し、次いで250mLの水で急冷した。混合物をメジウムガラスフリットフィルタでろ過し、次いで水洗した(3×250mL)。この繊維を40℃で一夜乾燥した。(例24)
【0130】
静的結合容量の測定
ウシ血清アルブミン(BSA)に対する静的結合容量の測定結果を下の表25に示す。このポリ(アリルアミン)官能化繊維媒体は20〜60mg/mLの範囲のBSA静的結合容量を与えた。この系列では、例24からの組成はBSAに対する最高の静的結合容量(SBC)を与えたが、これは商用のバイオ分子クロマトグラフの応用に使用されているビーズに基づく陰イオン交換媒体と同等である。
【0131】
【表25】
【0132】
注1:0.33g/mLの繊維充填密度
表25: 静的結合容量の測定。チャレンジ:50mMのトリスバッファ(pH8)中2g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)
【0133】
動的結合容量の測定
例24のポリ(アリルアミン)官能化繊維媒体に対するBSA動的結合容量の測定結果を下の表26に示す。1.0gの繊維媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ3.0cm(2.85mLのカラム容積、0.35g/mLの繊維充填密度)まで圧縮した。動的結合容量の測定を線速度200cm/hrで実施した。この速度は54秒の滞留時間に相当する。例24の繊維媒体は、10%破過において50mg/mLのBSA動的結合容量を示した。
【0134】
【表26】
【0135】
表26:200cm/hr(RTは滞留時間)での1、5、10及び50%破過における、ポリ(アリルアミン)官能化Allasso翼付繊維の陰イオン交換媒体に対するBSA動的結合容量(DBC)の測定。チャレンジ:25mMTris(pH8)中0.5g/LのBSA
【0136】
例25(HPA/MBAm95/5によるナイロン繊維表面の変性)
機械的攪拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた1000mLの3口丸底フラスコにヒドロキシプロピルアクリレート(HPA、13.7g、95mmol)、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm、0.77g、5mmol)及び水(710mL)を装入した。この混合物に16.8gのほぐれたナイロン繊維(Allaso Industries, #090602PA6C)を加えた。過硫酸アンモニウム(1.60g、7mmol)を加えた。濡れた固形物を80℃で4時間加熱した。
室温に冷却したのち、固形物をブッフナー漏斗に移し、熱水で洗浄し(3×500mL)、ついでメタノール(1×500mL)で洗浄した。この材料を真空中で30分乾燥した。ついでオーブンに移し、40℃で12時間乾燥した。
17.3gの白色繊維を得た。
【0137】
例26(HPA/MBAmで変性され、ペンダントスルホプロピル陽イオン交換官能性を有する高表面積繊維のセリウムイオンレドックスによるグラフト重合)
HPA/MBAm変性ナイロン繊維のグラフト重合
機械的攪拌器、還流コンデンサ及び温度制御器を備えた200mLの3口丸底フラスコに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS−Na、23.1g、100mmol)と水(76.3mL)を装入した。この溶液に2.50gのHPA/MBAm変性ナイロン繊維(例25)を加えた。この反応混合物を真空中で掃気し、窒素ガスの3サイクル裏込め(充填)を行った。
1MのHNO
3(0.620mL、0.250mmol)中0.4Mの硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液、及び1MのHNO
3溶液(2.46mL、2.46mmol)をこの反応混合物に加えた。
この反応混合物を35℃で18時間加熱した。
室温まで冷却した後、固形物を、0.5Mの硫酸中0.2Mのアスコルビン酸溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、1Mの水酸化ナトリウム溶液(3×150mL)、脱イオン水(3×150mL)、及びアセトン(3×150mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥した。
2.52gの白色繊維質固形物を得た。
【0138】
媒体の機能性能
例26からのスルホプロピル官能化高表面積繊維を、陽イオン交換クロマトグラフ媒体で、ポリクローナルヒトガンマ免疫グロブリン(IgG)の精製に対して評価した。
【0139】
IgGに対する静的結合容量の測定結果を表27に示す。この研究では、Allasso(ロットID“3kgバッチ−製造ロットIDなし”)からの未官能化「翼付き繊維」の試料の静的結合容量を、例26のセリウムイオンレドックス重合法により製造されたスルホプロピル触手官能化繊維の試料、及び例2の熱開始グラフト重合法の試料と比較した。セリウムイオンレドックス重合法は、熱開始重合体グラフト法(50mgIgG/g繊維試料)及び未官能化繊維のみ(10mgIgG/g繊維試料)と比較して、相当に高い静的結合容量(150mgIgG/g繊維試料)を有するスルホプロピル(SP)触手官能化繊維媒体を提供することが分かった。SP触手官能化繊維媒体は商用のバイオ分子クロマトグラフィーの用途で使用されるビーズベースの樹脂媒体に比肩できるIgG静的結合容量を示す。
【0140】
【表27】
【0141】
表27: 静的結合容量測定。チャレンジ:50mMの酢酸ナトリウム(pH5)中2g/LのポリクローナルヒトIgG(SeraCare LifeSciences, Milford, MA)
【0142】
HETP(理論段高さ)値は、例26からの1.00gのSP−触手変性ナイロン繊維を内径11mmのVantageカラムに充填し、繊維ベッドを深さ3.0cmに圧縮したもの(カラム容積2.85mL)にアセトン注入法を用いて測定した。HETPの許容値(0.08cm)とピーク非対称性(1.8〜2.0)が見出された。これ等の結果に基づき、0.35g/mLのSP−触手変性繊維充填密度がクロマトグラフの評価において十分な一様流れ性能を与えると考えられる。
同じカラムを使用して次の手順によりIgG動的結合容量の測定も行った。
5CV(カラム容積) 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(平衡化)
60CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)中1.7mg/mLのIgG(SeraCare)(IgG チャレンジ)
30CV 50mMのNaOAc(pH5)(洗浄)
15CV 50mMのNaOAc緩衝液中1MのNaCl(pH5)(溶離)
10CV 0.5MのNaOH(洗浄)
10CV 50mMのNaOAc緩衝液(pH5)(洗浄)
【0143】
図10は特定の実施形態に従ったSP−触手変性繊維に対する代表的なIgG破過曲線の例を示す。鋭い破過曲線と10%IgG破過で40mg/mLのIgG動的結合容量がある(表28)。
【0144】
【表28】
【0145】
表28:種々の線速度での1、5、10、及び50%破過(RT=滞留時間)におけるSP−触手変性繊維Allasso翼付き繊維陽イオン交換媒体に対するIgG動的結合容量
【0146】
図11は200〜1200cm/hrの種々の線速度でのSP−触手繊維カラムに対する重畳したIgG破過曲線を示す。線速度が大きくなるにつれてIgG破過曲線の傾斜がわずかに減じる。本書に記載された実施形態に従った繊維媒体に対するIgG動的結合容量に対する速度の効果は、ビーズに基づく装置で典型的に観測される速度の効果よりははるかに小さい。
図12において、最高速度(1200cm/hr、9秒の滞留時間)で測定されたIgG動的結合容量のわずかな減少が見られる。この挙動は、このシステムがIgG分子のイオン性リガンド結合サイトへの対流による輸送に大きく支配されることを示している。
【0147】
これに対して、従来のビーズに基づくイオン交換クロマトグラフィー樹脂は、速度の増加につれて動的結合容量がかなり減少し且つより大きい拡散破過曲線を示すであろう。非常な高速度ではベッドの圧縮がビーズの完全性を損ない、流れの一様性を損なってクロマトグラフ性能を減じる。
【0148】
例27
貫流ホスト細胞タンパク質クリアランス
例26に従って製造したスルホプロピル官能化繊維媒体を貫流精製(ポリッシュ)モードでのHCP除去活性に対して評価した。0.3gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径14.5mmのカラムに装入し、ベッド深さ0.6cm(1.00mLの容積、0.30g/mLの繊維充填密度)まで圧縮した。このカラムを単独に、及び商用の膜式吸着器(ChromaSorb(商標),Millipore Corp,膜体積0.2mL)と組み合わせて試験した。
【0149】
モノクローナル抗体を含んでいる細胞培地を清澄化し、次いでタンパク質Aカラムクロマトグラフィーを用いて分離し、溶液をpH5に調節した。次いでタンパク質Aの溶離pHをTRISでpH7に調節し、次いで0.2μの膜を通過させて濾過した。
【0150】
このカラムとChromasorb(商標)膜装置を緩衝溶液(25mMのTris、pH7)で平衡化した。
このスルホプロピル官能化繊維媒体及びChromaSorb膜式吸着器(Millipore Corpの商品名)を表29に記載したように独立に評価し、また直列で評価した。7.3g/Lのモノクローナル抗体たんぱく質A(プロテインA)の72mLの溶離物(pH7)を0.25mL/分で同装置に流通させた。6つの12mL分画を捕集した。8つの貫流分画と1つの保留試料をHCP−ELISAとタンパク質A HPLCにより分析して、HCPクリアランス及びモノクローナル抗体回収レベルをそれぞれ決定した。
【0151】
SP繊維(0.38LRV)はChromaSorb(商品名)膜吸着器(1.42LRV)ほどにはHCPを除去しなかったが、pH7での2個の貫流型吸着器の直列接続配置はHCPクリアランス(2.13LRV)で独立したいずれかの吸着器よりも有効であった。これらの吸着媒体はこの用途に限定されない容量なので、これら2個の吸着器は別個の明確に異なるHCPの個体群を除去するであろうことを示唆している。HCPがより正の有効電荷を有する場合には、SP繊維はより低いpHでより多くのHCPを除去するのではないかと思われるが、しかし、SP繊維に対するモノクローナル抗体の親和性も増大して製品回収率を減じるであろう。
【0152】
【表29】
【0153】
注1:貫流画分容積の総和
表29:モノクローナル抗体の貫流精製。3つの貫流洗練列の評価。SP−繊維(例26)(頂部)、ChromaSorb(商品名)(中段)、SP繊維(例26)/ChromaSorb(商品名)直列(底部)。5個の貫流と1つのプールした画分に対するモノクローナル抗体回収(タンパク質A HPLC)及びHCPクリアランス(HCP−ELISA)。
チャレンジ:0.25mL/分の流量での7.3g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶離液(pH7)。
【0154】
例28
還流ホスト細胞タンパク質クリアランス
例14で作製したQ−官能化繊維媒体(例14C)を貫流精製モードでHCP除去活性に対する評価を行った。0.34gのQ−官能化繊維媒体を14.5mmの内径を有するカラムに充填し、ベッド深さ0.6cm(1.00mLのカラム容積、0.34g/mLの繊維充填密度)に圧縮した。
モノクローナル抗体を含んだ細胞培養媒体を清澄し、次いでタンパク質Aカラムクロマトグラフィーを用いて単離し、pHを5に調整した。引き続いてタンパク質Aの溶離をTRIZMA塩基でpH8に調整し、次いで0.2μのろ過膜でろ過した。
【0155】
Q−官能化繊維媒体のカラムを緩衝溶液(25mMのpH8のTris)で平衡化した。
Q−官能化繊維媒体の評価からのデータを表30に示した。8.2g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶離物(pH8)100mLを流量1.0mL/分でカラム装置に通した。10個の10mL画分を集めた。溶離緩衝液として25mMのTris(pH8)中1Mの塩化ナトリウム溶液で、結合HCPを溶離した。2個の10mL溶離画分も集めた。これら10個の貫流画分と2個の溶離画分をHCP−ELISAとタンパク質A HPLCで分析して、HCPクリアランスのレベルとモノクローナル抗体回収をそれぞれ決定した。
【0156】
Q−官能化繊維は貫流モードでのHCPクリアランスで有効であった。0.3のHCP(ホスト細胞タンパク質)のLRV(除去活対数減少値)が高いmAb(モノクローナル抗体)回収率(98%)で達成された。ここに開示した実施形態のQ官能化繊維媒体は、モノクローナル抗体の製造のための貫流ポリッシュ(精製)においてビーズベースの樹脂媒体及び膜吸着媒体の装置に代わる便利で低コストの代替物として使用できる。Q−官能化繊維媒体(例14Cにより製造したQ−官能化繊維媒体に対して700mDa)の高い透過性は膜吸着器を用いて達成できない流量でmAb供給流の高速処理を可能にしうる。
【0157】
【表30】
【0158】
注1:貫流及び溶離画分容積の会合
表30:モノクローナル抗体供給物の貫流精製。充填ベッド形式のQ−官能化繊維媒体を用いる貫流ポリッシュ法による流れの評価(1.0mLカラム容量、0.34g/mL充填密度)。5つの貫流画分及び2つの溶離画分に対するモノクローナル抗体の回収(タンパク質A HPLC)及びHCPクリアランス(HCP−ELISA)。集めた画分データは算出値である。チャレンジ:流量1.0mL/分で8.2g/Lのモノクローナル抗体タンパク質A溶出液(pH8)(滞留時間60秒)。
【0159】
例29(貫流モノクローナル抗体の会合クリアランス)
例26で製造したスルホプロピル繊維媒体によるモノクローナル抗体の総合除去活性を貫流ポリッシュモードで評価した。1.0gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径11mmのVantageカラムに充填し、ベッド深さ3.0cmに圧縮した(カラム容積2.85mL、繊維充填密度0.35g/mL)。
20g/Lのモノクローナル抗体を含有するタンパク質A溶離プールを、50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)中0.5mMの塩化ナトリウムと50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)で希釈し、pH5と導電率19mS/cmの6.9g/Lの溶液を得た。導電率19mS/cmは単量体モノクローナル抗体の結合を弱め、タンパク質Aの供給溶液中の総合したモノクローナル抗体の結合を有利にするために選択した。
スルホプロピル官能化繊維媒体のカラムは緩衝液(pH5の50mMの酢酸塩)で平衡化した。
【0160】
スルホプロピル官能化繊維媒体の評価データは表31と
図9に示す。6.9g/L のモノクローナル抗体タンパク質A溶出液(pH5、19mS/cm)285mLを3.2mL/分(200cm/hr)の流量でカラムに通過させた。33個の8.6mL(3カラム容積)画分を捕集した。結合した単量体及び会合モノクローナル抗体を、50mMの酢酸塩(pH5)中0.5Mの塩化ナトリウム溶液を溶離緩衝液(バッファ)として使用して溶離した。5個の8.6mL(3カラム容積)の溶離画分を捕集した。これ等33個の貫流画分と5個の溶離画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)とタンパク質A HPLCで分析して会合クリアランスとモノクローナル抗体タンパク質の回収のレベルをそれぞれ決定した。
【0161】
スルホプロピル官能化繊維は、貫流モード動作で、単量体モノクローナル抗体種の存在下に、会合したモノクローナル抗体に結合する能力を示した。タンパク質AのHPLCデータからは、92%という高いmAb回収率を見出した。SECデータの分析によると貫流画分2に単量体mAbの完全な破過が見られ、一方、会合mAbは貫流画分5まで初期供給濃度0.6%(100%破過)に適合しなかった。溶離画分35、36及び37のSEC分析は、mAb集団の会合した高分子量(HMW)の種に富み、単量体mAbが枯渇していることを示した。本書に示した実施形態によるスルホプロピル官能化繊維媒体は本実施例に記載した方法に従って会合クリアランスの手段として役立つ。スルホプロピル官能化繊維媒体の高度な透過性(例26により調製したスルホプロピル官能化繊維媒体に対し520mDa)は、模擬した動的ベッド動作に適する高い流量で高速かつ迅速サイクルのmAb供給流れを可能にする。
【0162】
【表31】
【0163】
注1:貫流及び溶離画分体積の総計
表31: モノクローナル抗体の貫流総合クリアランス。スルホプロピル官能化繊維媒体の充填ベッド形式(2.85mLのカラム容積、0.35g/mLの充填密度)での貫流総合クリアランス法の評価。31個の貫流、3個の溶離画分に対するモノクローナル抗体回収(タンパク質A HPLC)と%単量体、%HMW会合(SEC)。プールした画分のデータは計算値。チャレンジ:3.2mL/分(滞留時間54秒)での6.9g/Lのモノクローナル抗体タンパク質Aの溶離(pH5、19mS)
【0164】
例32(圧縮性ベッドへの直接捕捉)
例19のスルホプロピル官能化繊維媒体を、貫流モード動作で、未清澄化細胞培養液からの直接的なモノクローナル抗体の捕捉に対して評価した。0.49gのスルホプロピル官能化繊維媒体を内径14.5mmのカラムに充填し、ベッド深さ3.0cm(5.0mLのカラム容積、0.10g/mLの繊維充填密度)に圧縮した。スルホプロピル官能化繊維媒体のカラムを緩衝液(50mMの酢酸塩緩衝液pH5)で平衡化した。0.8g/Lのモノクローナル抗体を含む未清澄化チャイニーズハムスター卵細胞の培養液(pH6.5、5.7mS/cm)を用意した。
【0165】
0.8g/Lのモノクローナル抗体を含む100mLの未清澄化の細胞培養液を流量12.5mL/分(460cm/hr)でカラムに通した。9個の10mL(2カラム容積)の貫流画分を収集した。低密度繊維ベッドを50mMの酢酸塩緩衝液(pH5)で、繊維ベッドを繰り返して圧縮及び膨張することにより洗浄した。この圧縮及び膨張はカラムの流れ分配ヘッダーを調整することにより行った。13個の10mL(2カラム容積)の50mM酢酸塩緩衝液(pH5)洗浄画分を捕集した。結合したモノクローナル抗体を溶離緩衝液として50mMの酢酸塩溶液中(pH5)1.0Mの塩化ナトリウム溶液を用いて溶離した。溶離工程は、モノクローナル抗体溶離物をさらに濃縮するために、圧縮ベッド方式(ベッド深さ1.0cm、1.65mLのカラム容積、0.30g/mLの繊維充填密度)で実施することが好ましい。3個の10mL(2カラム容積)溶離画分を捕集した。9個の貫流画分、13個の洗浄画分、及び3個の溶離画分をタンパク質A HPLCで分析して、モノクローナル抗体回収を測定した。スルホプロピル官能化繊維媒体の評価データを表32に示す。
【0166】
これらスルホプロピル官能化繊維は未清澄化チャイニーズハムスター卵細胞の培養培地の存在下に、モノクローナル抗体(mAb)へ結合する能力を有することを示した。タンパク質A HPLCのデータは、画分7によるmAb捕捉動作中にmAbの完全な破過が起きることを示している。50mM酢酸塩溶液(pH5)での洗浄段階は、洗浄画分6により未結合のmAbをカラムと装置から除去する。50mMの酢酸塩溶液(pH5)中1.0Mの塩化ナトリウムによる溶離は、結合したmAbをスルホプロピル官能化繊維媒体カラムから溶離する。当業者は種々のプロセスの変形によりモノクローナルIgG結合容量の十分な利得が実現できることを認識するであろう。それらには、細胞培養供給物導通性の減少、未清澄脂肪培養供給物の希釈、或いは本例のスルホプロピルに基づく陽イオン交換性リガンドの官能性に代わるタンパク質A親和リガンド構造の使用等が含まれる。当業者には例18のタンパク質A官能化繊維媒体又はその誘導体がこの直接捕捉に好ましいことが理解されよう。低充填密度の形式では、表面官能化繊維媒体は、未清澄化の供給流から直接のIgG捕捉が可能である。引き続くベッド圧縮は圧縮ベッド形式でのmAb溶離の濃縮を可能にする。この方法は、モノクローナル抗体のような治療用のバイオ薬剤の下流側の工程で、第1清澄化(遠心)工程及び第2清澄化(深濾過)工程を省略することができるであろう。
【0167】
【表32】
【0168】
注1:貫流、洗浄、及び溶離画分体積の総計
表32:未清澄化細胞培地からのモノクローナル抗体の直接捕捉。直接mAb捕捉法の評価は、スルホプロピル官能化繊維媒体を充填したベッドの形式で行う(容積:5.00mLカラム容積。充填密度:0.10g/mL)。モノクローナル抗体濃度及び回収(タンパク質A HPLC)4個の貫流、4個の洗出し、及び3個の塩化ナトリウム溶出画分。チャレンジ:0.87g/Lのモノクローナル抗体を含む100mLの未清澄チャイニーズハムスター卵細胞液(pH6.5、5.7mS)で流量12.5mL/分(滞留時間:24秒)
【0169】
例33(ウイルスの結合/溶離精製のための繊維媒体の可能性)
バクテリオファージφ6に対する静的結合容量と溶離回収測定の結果が表31に挙げてある。5個のプラスチック遠心管に例14CのQ−官能化触手繊維媒体と未官能化Allasso繊維試料を下表33に記載した量で装入した。各繊維試料と対照の管を5mLの25mMトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mLのHSA)で10分間撹拌しながら平衡化した。これ等の管を室温で最高4000rpmの卓上型遠心分離器で10分間回転して繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを取り除き、25mMのトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mL HSA)中1.7×10
7pfu/mLのφ6溶液2.5mLを各管に加えた。これらの試料を室温で1時間撹拌した。その後、管を卓上遠心分離器で室温で4000rpmで15分間回転し繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを除去し、これ等の試料をプラーク形成分析法により未結合φ6に対する分析を行った。管を2.5mLの25mMトリス緩衝液(pH8、0.18mg/mLのHSA)で遠心下で3回洗浄し、繊維媒体を各洗浄と2.5mLの上澄み除去の間にペレット化した。洗浄後に25mMのトリス緩衝液(pH8,0.18mg/mL HSA)中1.0Mの塩化ナトリウムの溶液2.5mLを各管に加えた(5mLの全容積、最終NaCl濃度0.5M)。これらの試料を室温で10分間撹拌した。その後、管を卓上遠心分離器中、室温で10分間4000rpmで回転し、繊維媒体をペレット化した。2.5mLの上澄みを除去し、これ等の溶離試料のプラーク形成分析法により溶離φ6を分析した。試料14CのQ−官能化触手繊維媒体は有意なバクテリオファージφ6の対数減少値(LRV)3.1を示し、溶離回収率が40%を示した。この性能は商業的なウイルスクロマトグラフで使用されている膜ベースの陰イオン交換媒体と同等である。本発明のQ−官能化繊維媒体は予め充填される装置形式又は貫流ウイルスクリアランス又は結合/溶離ウイルス精製のためのクロマトグラフィーカラムに一体に組込むことができる。
【0170】
【表33】
【0171】
表33:静的結合容量測定。
チャレンジ:0.18mg/mLのHSAでの25mMトリス(pH8)中2.5mLの1.7×10
7pfu/mLバクテリオファージφ6。
溶出緩衝液:0.18mg/mLのHSAを有する25mMトリス(pH8)中0.5MのNaCl。