【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基本的に、遮断壁の降下を検知する手段を備え、その検知手段の信号又は動力により、異なる部屋の搬送装置間に設置されている、搬送物の受け渡しを行う中継搬送装置が、遮断壁が降下する遮断空間から待避することができる駆動装置又は動作部品を備えた構成の遮断機構であるが、検知手段、中継搬送装置、及び、動作部品それぞれに特徴を有する搬送装置の遮断機構である。
【0014】
検知手段については、遮断壁と接触又は衝突するレバー又はローラの材質及び構成を、中継搬送装置については、回動、摺動、又は、伸縮する仕組みを、そして、駆動装置については、シリンダ及びその動力源等を、動作部品については、バネ、錘、及び、プーリ等の組合せ、並びに、中継搬送装置の保持部品及び保持方法等を検討することによって、本発明の完成に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備え、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端付近に備えた回動側板支持部材の回動軸を中心として支持される回動側板の一端に軸支されると共に、複動手段が、搬送装置に応動するコンベヤを支持可能に及び遮断空間から回動して待避可能に回動側板と接続されていることを特徴とする搬送装置の遮断機構である。
【0016】
中継搬送手段として適用する搬送装置に応動するコンベヤは、特に限定されるものではなく、部屋間に亘って搬送物が支障なく受け渡しが可能であって、遮断壁の昇降が可能な遮断空間に収まるものであればよく、一般的なローラコンベヤ、ベルトコンベヤ等が適している。ローラコンベヤの場合には、簡単な遮断機構を構築することができるローラ一本だけであることが好ましい。
【0017】
中継搬送手段を軸支すると共に遮断空間から回動して待避可能に回動側板支持部材に支持される回動側板、及び、回動側板を支持すると共に遮断空間から待避可能に接続される複動手段は、部屋間に始終端が位置する二つの搬送装置のいずれかの少なくとも片側に設置されればよいが、中継搬送装置の搬送物を受け渡しする機能及び中継搬送装置が待避する機能が安定して発現されるためには、両側に設置した方が好ましい。
【0018】
コンベヤを軸支する回動側板を回動可能に支持する回動側板支持部材は、特別に設けても良いが、搬送装置の側壁で代替することが可能である。同様に、検知手段及び複動手段も固定する支持部材を新たに設けても良いが、搬送装置の側壁を利用して固定してもよい。
【0019】
このような搬送装置の遮断機構は、遮断壁が降下して部屋を閉鎖する遮断動作を検知した検知手段から信号が発せられると、中継搬送手段を軸支すると共に回動側板支持部材の回動軸を中心として支持される回動側板に接続されている複動手段が、回動側板を下方に回動して、中継搬送手段を遮断空間から待避するように作動する。逆に、検知手段が、遮断壁が上昇して部屋を開放する接続動作を検知した場合、切換信号が発せられ、複動手段が回動側板を上方に回動して中継搬送手段を元の位置に復帰させることができる。
【0020】
従って、本発明の搬送装置の遮断機構は、遮断壁と中継搬送装置とが接触することなく、検知手段から送信される信号に基づき、中継搬送装置が回動可能に接続された複動手段が作動して中継搬送装置を遮断空間から待避することができるため、中継搬送装置が損傷を受けることなく、確実かつ迅速に待避すると共に、遮断壁の開放においては、速やかに復旧することができる。
【0021】
更に、本発明の搬送装置の遮断機構は、確実かつ迅速な待避、及び、速やかな復帰という観点から、以下に示すような中継搬送手段を適用することを特徴としている。
【0022】
第一に、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構において、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外に設けられた摺動部材上を摺動するコンベヤ摺動支持部材に軸支されると共に、複動手段が、コンベヤ摺動支持部材を滑止可能に及び遮断空間から摺動して待避可能に、コンベヤ摺動支持部材と接続されていることを特徴とするものである。
【0023】
この場合も、中継搬送手段として適用する搬送装置に応動するコンベヤは、特に限定されるものではなく、部屋間に亘って搬送物が支障なく受け渡しが可能であって、遮断壁の昇降が可能な遮断空間に収まるものであればよく、一般的なローラコンベヤ、ベルトコンベヤ等が適している。ローラコンベヤの場合には、簡単な遮断機構を構築することができるローラ一本だけであることが好ましい。
【0024】
また、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外に設けられる摺動部材、コンベヤを軸支すると共に摺動部材上を摺動するコンベヤ摺動支持部材、及び、コンベヤ摺動支持部材を滑止可能に及び遮断空間から摺動して待避可能に接続される複動手段は、部屋間に始終端が位置する二つの搬送装置のいずれかの少なくとも片側に設置されればよいが、中継搬送装置の搬送物を受け渡しする機能及び中継搬送装置が待避する機能が安定して発現されるためには、両側に設置した方が好ましい。
【0025】
複動手段及びコンベヤ摺動支持部材を受ける摺動部材も、新たな支持部材を設けて固定しても良いが、搬送装置の側壁を利用して固定してもよい。
【0026】
このような搬送装置の遮断機構は、遮断壁が降下して部屋を閉鎖する遮断動作を検知した検知手段から信号が発せられと、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外に設けられた摺動部材上を摺動すると共に中継搬送手段を軸支するコンベヤ摺動支持部材と接続されている複動手段が縮退することによって、コンベヤ摺動支持部材が摺動して中継搬送手段が遮断空間から待避するように作動する。逆に、検知手段が、遮断壁が上昇して部屋を開放する接続動作を検知した場合、切換信号が発せられ、複動手段が伸長することによって、コンベヤ摺動支持部材が摺動して中継搬送手段を元の位置に復帰させることができる。
【0027】
第二に、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構において、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外のコンベヤ固定支持部材で、搬送装置に応動するコンベヤの一端が軸支され、複動手段が、搬送装置に応動するコンベヤの他端と支持可能に及び遮断空間から回動して待避可能に接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
コンベヤとしては、一般的なローラコンベヤ、ベルトコンベヤ等が適しているが、この場合のローラコンベヤは、ローラ一本では中継搬送手段を遮断空間から待避させることができないため、少なくとも二本以上のローラを備えたコンベヤである必要がある。
【0029】
この搬送装置の遮断機構は、遮断壁が降下して部屋を閉鎖する遮断動作を検知した検知手段から信号が発せられると、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外のコンベヤ固定支持部材に一端が軸支されている中継搬送手段の他端と接続された複動手段が縮退し、中継搬送手段が下方に回動して遮断空間から待避される。逆に、検知手段が、遮断壁が上昇して部屋を開放する接続動作を検知した場合、切換信号が発せられ、複動手段が伸長することによって、中継搬送手段を元の位置に復帰させることができる。
【0030】
その他、コンベヤ固定支持部材、複動手段の設置方法及び設置場所については、上記遮断機構と同様である為、説明を省略する。
【0031】
第三に、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構において、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端付近に備えたコンベヤ伸縮支持部材で支持されると共に、複動手段が、搬送装置に応動するコンベヤを押止可能に及び遮断空間から縮退して待避可能に、コンベヤ伸縮支持部材と接続されていることを特徴とするものである。
【0032】
この場合は、中継搬送手段であるコンベヤとして、一般的なベルトコンベヤ、ローラコンベヤを適用することはできず、コンベヤを構成する少なくとも二本以上のローラを軸支する支持部材間にバネ等の伸縮手段を設け、この伸縮手段を縮退させると共に、コンベヤを保持することができるように、複動手段を接続する必要がある。
【0033】
このような構成にすることによって、遮断壁が降下して部屋を閉鎖する遮断動作を検知した検知手段から信号が発せられると、複動手段が縮退することによって、中継搬送手段を構成するローラを軸支する支持部材間の伸縮手段が縮退し、コンベヤの長さが短くなり、中継搬送手段が遮断空間から待避することができる。逆に、検知手段が、遮断壁が上昇して部屋を開放する接続動作を検知した場合、切換信号が発せられ、複動手段が伸長することによって、中継搬送手段を構成するローラを軸支する支持部材間の伸縮手段も伸長し、コンベヤの長さが長くなり、中継搬送手段を元の位置に復帰させることができる。
【0034】
その他、コンベヤ固定支持部材、複動手段の設置方法及び設置場所については、上記遮断機構と同様である為、説明を省略する。
【0035】
第四に、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構において、中継搬送手段が、搬送装置に応動するローラであって、搬送装置に応動するローラがローラ回動支持部材に軸支されると共に、ローラ回動支持部材が、搬送装置の始端又は終端付近の球面軸受支持部材に備えた球面軸受を用いて軸支され、更に、ローラ回動支持部材を遮断空間から待避可能に摺接する案内プレートを備え、複動手段が、搬送装置に応動するローラを支持可能に及び遮断空間から鉛直方向に引き続き水平方向に回転して待避可能に、ローラ回動支持部材と接続されていることを特徴とするものである。
【0036】
この場合、中継搬送手段は一本のローラに限定される。このローラが軸支されたL字型ローラ回動支持部材は、球面軸受けで軸支されると共に、L字型ローラ回動支持部材のアームに複動手段が接続され、複動手段の伸長及び縮退に伴ってローラが遮断空間から待避及び遮断空間に復帰することができる軌道に誘導する案内プレートが、L字型ローラ回動支持部材のアームと摺動可能に接触されている。
【0037】
この構成の遮断機構の案内プレートによるローラの軌道を更に詳しく説明する。L字型ローラ回動軸支持部材は球面軸受けで軸支されているため、L字型ローラ回動軸支持部材が立体的に移動することができる。従って、L字型ローラ回動軸支持部材のアームに接続された複動手段が伸長すると、L字型ローラ回動軸支持部材に軸支されたローラが、異なる部屋に設置された搬送装置の位置から上方に回動し、更に、複動手段が伸長すると、搬送装置と直角方向に回動して待避することができる案内プレートの形状としておけば、複動手段がローラの回転運動に変換でき、容易に遮断空間から待避及び遮断空間に復帰することができる。
【0038】
この遮断機構の場合には、球面軸受け支持部材、L字型ローラ回動軸支持部材、複動手段の設置方法及び設置場所は、上述した遮断機構と異なり、球面軸受け支持部材及び複動手段は、搬送装置の下方に固定することが好ましく、L字型ローラ回動軸支持部材は、当然、中継搬送手段のローラの片側に備えることになる。
【0039】
第五に、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構において、搬送装置の始端と終端に段差を設け、中継搬送手段を、前記搬送装置に応動するコンベヤ又は傾斜板とし、段差を中継するように、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外のコンベヤ固定支持部材又は傾斜板固定支持部材で、搬送装置に応動するコンベヤ又は傾斜板の一端が軸支され、複動手段が、搬送装置に応動するコンベヤ又は傾斜板を押止可能に及び遮断空間から回動して待避可能に、搬送装置に応動するコンベヤ又は傾斜板と接続されていることを特徴とするものである。
【0040】
この場合のコンベヤは、一般的なローラコンベヤ、ベルトコンベヤ等を適用することができ、これらを支持するコンベヤ固定支持部材又は傾斜板固定支持部材及び複動手段は、搬送装置の少なくとも片側に設置すればよいが、安定したコンベヤ又は傾斜板の待避及び復帰を確保するため、搬送装置の両側に設けることが好ましい。また、こられを固定する方法は、新たな支持部材を設けてもよいが、搬送装置の側壁等を利用することができる。
【0041】
また、本発明の搬送装置の遮断機構は、複動手段についても、中継搬送手段を確実かつ迅速に待避すると共に、速やかに復帰させることを目的として、以下に示すような解決手段を提供している。
【0042】
第一に、複動手段が、検知手段の指示に従って、中継搬送手段を遮断空間から待避及び中継搬送手段を遮断空間に復帰するようにピストンを往復運動するエアシリンダ及び電動シリンダであることを特徴とするものである。
【0043】
エアシリンダは、動力が圧縮空気であるため、簡便な構造でサイズが小さく、安全性が高い清潔な装置であり、高温環境下でも使用できるという特徴があり、火災時に駆動させる複動手段に適している。また、圧縮空気には弾力性があるため、本発明の中継搬送手段の待避及び復帰において、中継搬送手段に損傷を与える可能性が少なくなる。
【0044】
エアシリンダのエア供給切換弁は、空気式切換弁と電磁式切換弁とがあるが、特に限定されない。電気を使用しないという観点からは、空気式切換弁である方が好ましく、全空気圧回路による装置が可能である。ただし、電源の問題は、後述するように、非常用電源又は自己発電装置を適用することによって解決することができるので、切換速度を考慮して両者を使い分けることが望ましい。
【0045】
そして、エアシリンダへのエア供給手段として、開閉弁を介してコンプレッサと接続された、高圧空気を貯留するエアタンクを備えておくことによって、本発明の搬送装置の遮断機構のように、火災時だけに使用するという場合には、装置を大型化する必要がないという特徴もある。更に、主エアタンクの故障等に対応するため、開閉弁を介して補助タンクを備えていることが好ましく、開閉弁を介してコンプレッサと接続された補助タンクを備えていることがより更に好ましい。最悪の場合には、エアシリンダへのエア供給手段は、本発明の搬送装置の遮断機構は火災時だけに使用されるので、エアシリンダと開閉弁とから形成されるエア配管で十分作動させることも可能である。このように、エアシリンダは、安全性という観点から特に優れている。
【0046】
一方、本発明の搬送装置の遮断機構の複動手段が、電動シリンダであることを特徴としているのは、エアシリンダとは異なる特徴を有していることに起因する。
【0047】
特に、電動シリンダは、制御性に優れているという大きな特徴があり、位置及び速度調整が容易で、初動が速い。そのため、制御性の高さは、損傷を防止することができ、初動の速さは、緊急性を要する中継搬送手段の待避に適している。
【0048】
電源が必要であるという点については、後述するように、非常用電源又は自己発電装置を適用することによって解決することが可能である。
【0049】
第二に、本発明の複動手段が、検知手段の指示に従って、中継搬送手段を遮断空間から待避及び前記中継搬送手段を遮断空間に復帰するようにピストンを往復運動するエアシリンダ又は電動シリンダに、機械的伸縮装置を並設した機構であることを特徴とするものである。
【0050】
このように、機械的伸縮装置をエアシリンダ又は電動シリンダに並設することによって、エアシリンダ又は電動シリンダのピンストンの往復運動を補助し、エアシリンダ又は電動シリンダに係る動力源の負荷を低減するだけでなく、中継搬送手段の動作を制御するものである。
【0051】
機械的伸縮装置としては、特に限定されるものではないが、錘付きワイヤ、圧縮バネ、及び、引張りバネであることが好ましい。錘付きワイヤの場合は、中継搬送手段の待避において、中継搬送手段に迅速な動作を促すものである。圧縮バネの場合、異なる部屋の搬送装置の受け渡しを行う中継搬送装置の保持を補助すると共に、中継搬送手段の待避における動作に弾力性を与え、中継搬送手段の損傷防止を補うものである。そして、引張りバネの場合は、錘付きワイヤと同様、中継搬送手段に迅速な動作を促すものである。
【0052】
更に、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備における、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた、本発明の搬送装置の遮断機構の特徴として、検知手段を挙げることができる。
【0053】
本発明の検知手段は、遮断空間に位置し、遮断壁が降下することによって遮断壁と接触又は衝突するレバーと、レバーの変位を信号に変換する切換装置と、その信号を複動手段及び/又は搬送装置に送信する配線とを備えていることを特徴としている。
【0054】
本発明の検知手段を配備することによって、遮断壁と中継搬送手段とが接触又は衝突することなく中継搬送手段の待避動作に移行できるため、中継搬送手段の損傷を抑えることができることはいうまでもなく、検知手段のレバーの位置に応じて、中継搬送手段の待避動作に移行できると共に、搬送装置を停止することが可能であるため、中継搬送手段の速やかな待避だけでなく、搬送装置からの搬送物の落下を防止することも可能となる。
【0055】
逆に、火災が鎮火した後、又は、遮断壁が誤動作した後、遮断壁が上昇すると共に、検知手段のレバーによって信号が切換えられ、中継搬送手段は、異なる部屋の搬送装置間で搬送物を受け渡しする元の位置に復帰させることができる。
【0056】
更に、このような検知手段は、遮断壁が降下及び上昇することによって遮断壁と接触又は衝突するレバーを工夫することによって、電源の必要ない中継搬送手段の待避動作及び復帰動作を誘導することができる。すなわち、検知手段が、搬送装置の始端又は終端付近に固定された第一の検知ローラ支持部材に軸支される、遮断壁と接触回転する輪軸状の発電ローラであって、増幅器を備えた回転式発電機と回転可能に連接されると共に、エアシリンダと配線され、前記エアシリンダの電磁式切換弁を駆動する電源として活用することを特徴とするものである。この検知手段によって、電源を全く必要としないでエアシリンダを駆動して中継搬送手段を待避及び復帰させることができるという特徴がある。また、電動シリンダを用いた場合の電源にもなりうる。
【0057】
一方、本発明の搬送装置の遮断機構が、中継搬送手段を待避させる複動手段として、エアシリンダ又は電動シリンダを用いる場合、検知手段は、遮断壁と接触又は衝突するレバーである必要はなく、火災報知器及び/又はスプリンクラーであってもよい。火災報知器及び/又はスプリンクラーの信号が複動手段及び/又は前記搬送装置に送信されることによって、中継搬送手段の待避動作に移行できると共に、搬送装置を停止することが可能であるため、中継搬送手段の速やかな待避だけでなく、搬送装置からの搬送物の落下を防止することも可能となる。
【0058】
以上、エアシリンダや電動シリンダのように、少なからず電源を必要とする複動手段を本発明の搬送装置の遮断機構に採用した場合、火災時には停電することが予想されるので、非常用電源に切換え可能としておくことが好ましい。
【0059】
このように、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備における、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた、本発明の搬送装置の遮断機構の特徴として、中継搬送手段、検知手段について説明したが、更に、検知手段と複動手段とを複合化した解決手段を見出した。
【0060】
これまでの複動手段は、水、エア、油、電気等を動力源としたシリンダのピストンの往復運動を利用することによって、中継搬送手段の待避及び復帰を行うものであったが、次に示す本発明の複動手段は、エアや電気等の動力源を用いることなく往復のいずれの方向の運動時にも作用圧力が加わった状態で動くことが可能な複動手段を適用したことに特徴がある。
【0061】
すなわち、本発明の搬送装置の遮断機構は、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備え、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端に隣接した遮断空間外に設けられた摺動部材上を摺動するコンベヤ摺動支持部材に軸支され、複動手段が引張りバネであって、ストッパによりコンベヤ摺動支持部材を滑止可能に及び遮断空間から摺動して待避可能に、コンベヤ摺動支持部材と接続されており、検知手段が、遮断空間に位置するレバーを備えた巻取り装置であって、ストッパと巻取り装置とが、遮断壁がレバーと接触又は衝突してストッパが解除可能に接続されていることを特徴とするものである。引張りバネの代わりに、錘を使用することもできる。
【0062】
この遮断機構も、検知手段が遮断壁と接触又は衝突することによって、中継搬送手段が待避するため、中継搬送手段に損傷を与えることはないと共に、バネ又は錘を動力源としているため、穏やかな中継搬送手段の待避動作で、安全性が高い遮断機構である。また、電源を必要とせず、火災時に作動させる装置として相応しい。
【0063】
以上、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と、中継搬送手段を静止及び駆動可能な複動手段とを備えた搬送装置の遮断機構について説明した。しかしながら、本発明の課題である、遮断壁の降下による搬送設備への損傷がなく、安全・安心で、かつ、確実に対応可能で、速やかに復旧可能な遮断機構の実現は、このような構成に限定されるものではなく、様々な部品を組合せたことを特徴とした、電源を要することのない遮断機構によっても実現可能である。
【0064】
このような本発明の搬送装置の遮断機構としては、まず、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、中継搬送手段を静止可能な係止手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段とを備え、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と中継搬送手段を静止可能な係止手段とを一体化させた中継搬送手段解除アームとし、搬送装置の始端又は終端付近に備えた支柱の軸を回転中心として中継搬送手段解除アームが支持され、中継搬送手段が、搬送装置に応動するローラであって、搬送装置の始端又は終端付近に備えた回動側板支持部材の回動軸を支点として支持される吊持ピンを付設した回動側板の一端に軸支され、係止手段で吊持ピンを用いて回動側板を吊持すると共に、検知手段が、遮断空間に位置するレバーを備えた切換装置であることを特徴とする搬送装置の遮断機構をあげることができる。この遮断機構では、遮断壁の降下によって遮断壁がレバーと接触又は衝突して、係止手段が回動側板の吊持を解除することによって中継手段が待避する。
【0065】
この遮断機構によれば、極めて簡単な構造で、遮断壁と中継搬送手段が接触又は衝突することなく、中継搬送手段が速やかに待避することができる。逆に、簡単な構造であるため、自動的ではないが、容易に復旧することが可能である。
【0066】
この遮断機構の吊持ピンにベアリングを取付けることによって、中継搬送手段の待避動作をより円滑にすることができ好ましい。逆に、検知手段であるレバーと搬送装置の始端又は終端付近に備えた支柱とを引張りバネで接続することによって、中継搬送手段が安定して保持される。
【0067】
様々な部品を組合せたことを特徴とした、電源を要することのない第二の遮断機構としては、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、中継搬送手段を静止可能な係止手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段とを備え、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段と中継搬送手段とを一体化させた中継搬送手段待避アームとし、中継搬送手段が、搬送装置に応動するローラであって、中継搬送手段待避アームの先端で軸支され、搬送装置の始端又は終端付近に備えた支柱の軸を回転中心として中継搬送手段待避アームが支持され、係止手段が、圧縮バネであって、搬送装置に固定されて中継搬送手段待避アームを押圧し、検知手段が、遮断空間に位置するレバーを備えた切換装置であることを特徴とする搬送装置の遮断機構をあげることができる。この遮断機構によれば、遮断壁の降下によって遮断壁がレバーと接触又は衝突して、係止手段が縮退することによって中継手段が待避する。
【0068】
この第二の遮断機構も、極めて簡単な構造で、遮断壁と中継搬送手段が接触又は衝突することなく、中継搬送手段が速やかに待避することができる上、中継搬送手段が圧縮ばねで押圧されているため、中継搬送手段が自由落下しないので、作業員に対して安全で、搬送装置に対して損傷を与えないという特徴を有している。
【0069】
簡単な構造であるため、自動的ではないが、容易に復旧することが可能であるが、この第二の遮断機構の場合、後述するように、検知手段のレバーを工夫することによって、遮断壁の上昇に伴って、中継搬送手段を自動的に復帰させることが可能である。
【0070】
本発明の課題を解決する様々な形式の遮断機構を記載してきたが、これらに共通した本発明の種々の課題解決手段がある。これらは、検知手段として使用しているレバーの材質や構成であり、遮断壁及び遮断機構の衝撃及び損傷を緩和すること、及び、遮断壁を開放する際の搬送設備の復旧を容易にすることを目的とするものである。
【0071】
検知手段に備えられた遮断空間に位置するレバーが、降下してくる遮断壁との接触又は衝突によって変位することによって、電気的な信号が中継搬送手段の待避動作を始動させる場合においても、機械的な動作が中継搬送手段の待避動作を始動させる場合においても、レバーが少なくとも弾性構造体であれば、レバーは変位して本発明の遮断機構を機能させることができる。
【0072】
しかし、耐火性を有し重量のある遮断壁が、高速で降下してレバーと接触又は衝突することによって受ける遮断壁及びレバーの衝撃は、極めて大きく、遮断壁及びレバーが損傷することも予想される。従って、検知手段に備えられた遮断空間に位置する弾性構造体のレバーは、衝撃を緩和するために、ゴム状物質で被覆されるか、ゴム風船内に閉じ込められることが好ましい。また、レバー自体を、遮断壁との接触又は衝突によるレバーの変位が損なわれない程度の弾性率を有するゴム状物質で形成することがより好ましい。このような材質で構成されたレバーも、降下してくる遮断壁との接触又は衝突によって変位することによって、電気的な信号が中継搬送手段の待避動作を始動させる場合においても、機械的な動作が中継搬送手段の待避動作を始動させる場合においても、弾性構造体のレバー同様、変位して本発明の遮断機構を機能させることができることはいうまでもない。そして、遮断壁が降下した後も接触した状態を保つことができるので、遮断壁とレバーとの摩擦力により、遮断壁の上昇に伴う中継搬送手段の復帰において、レバーの電気的信号又は機械的動作を逆に切換えることが可能となり、中継搬送手段の復帰を半自動化又は自動化することができる。
【0073】
このようなレバーの材質だけではなく、レバーの構成を検討した結果、次のように改造することによって、レバー本来の機能を損なうことなく、弾性構造体及び材質を改良したレバーよりも好ましい結果が得られ、本発明の完成に至った。
【0074】
第一に、レバーの先端において、降下する遮断壁と接触するようにローラを軸支している構成であることを特徴とするレバーである。ローラは、降下する遮断壁と接触して回転しながら変位するので、遮断壁及びレバーが受ける衝撃が一層緩和される。この際、遮断壁と接触して回転し易くするため、更に、衝撃を緩和するため、ゴム状物質で被覆されたローラ又はゴム状物質で形成されたローラであることがより好ましい。ローラが軸支されたレバーは、衝撃を緩和するだけでなく、上述したように、遮断壁との接触を保つローラが、遮断壁の上昇に伴う中継搬送手段の復帰を半自動化又は自動化することができる。
【0075】
第二に、検知手段において、遮断空間に位置するレバーが、降下する遮断壁の下端と接触又は衝突して筒状部品内を伸縮する柱状部品を備えた構成であることを特徴とするレバーである。柱状部品を伸縮させる方法は、筒状部品内に備えた圧縮バネにより柱状部品を保持する方法又は筒状部品と柱状部品とで形成された密閉空間の圧縮気体により保持する方法が、簡便で好ましい。上記ローラの材質同様、この柱状部品の先端も、ゴム状物質で被覆された柱状部品又はゴム状物質で形成された柱状部品であることが好ましい。柱状部品が伸縮するレバーも、衝撃を緩和するだけでなく、上述したように、遮断壁の上昇に伴う中継搬送手段の復帰の半自動化又は自動化においても重要な役割を果たす。
【0076】
更に、レバーの材質及び構成に加え、特徴を付与した遮断壁を含めた搬送装置の遮断機構とすることによっても、本発明の課題解決手段を提供することができる。
【0077】
すなわち、遮断壁の下端付近であって、遮断壁の降下によって検知手段を構成するレバー、ローラを軸支したレバー、又は、柱状部品と接触又は衝突する位置に突起部、より好ましくは、ゴム状物質で形成された突起部が付設されている突起遮断壁を遮断機構に含めることを特徴とする搬送装置の遮断機構である。このような構成とすることによって、遮断壁と検知手段とが直接接触することが回避されるため、耐火性を有し重量のある遮断壁が、高速で降下した場合、突起部で衝撃が緩和され、遮断壁及びレバーが受ける衝撃を緩和することができる。
【0078】
更に好ましくは、遮断壁の下端付近であって、遮断壁の降下によって検知手段を構成するレバー、ローラを軸支したレバー、又は、前記柱状部品と接触又は衝突する位置にローラが付設されているローラ遮断壁を含めることを特徴とする搬送装置の遮断機構である。この場合も、遮断壁に付設されるローラは、ゴム状物質で被覆されたローラ又はゴム状物質で形成されたローラであることがより好ましい。
【0079】
このような突起遮断壁及びローラ遮断壁も、遮断壁が上昇する際に、突起部及びローラがレバー、ローラを軸支したレバー、及び、柱状部品と接触又は衝突することによって、レバーの電気的信号又は機械的動作を逆に切換えることが可能となり、中継搬送手段の復帰を半自動化又は自動化することができる。
【0080】
最後に、ローラ、プーリ、錘、バネ等の様々な部品を組合せた、電源を必要としない、本発明の課題を解決する遮断機構として、検知手段に、レバーではなくローラを適用したことを特徴とする遮断機構を提供する。
【0081】
すなわち、部屋間に亘って搬送物を移動可能な搬送設備において、部屋間に始終端が位置する搬送装置と、部屋間の遮断壁が昇降する遮断空間に位置する中継搬送手段と、中継搬送手段を静止可能な係止手段と、遮断壁の遮断動作を検知する検知手段とを備え、中継搬送手段が、搬送装置に応動するコンベヤであって、搬送装置の始端又は終端付近に備えた回動側板支持部材の回動軸を中心として支持される回動側板の一端に軸支されており、検知手段が、搬送装置の始端又は終端付近に固定された第一の検知ローラ支持部材に軸支される、遮断壁と接触回転する輪軸状の第一のローラと、搬送装置の始端又は終端付近に固定された第二の検知ローラ支持部材に軸支された輪軸状の第二のローラとが逆回転可能に連接されると共に、第二のローラと中継搬送手段が一端に軸支された回動側板の他端とが接続されると共に、回動側板の他端が中継搬送手段を支持可能に及び遮断空間から待避可能に機械的収縮装置と接続されていることを特徴とする搬送装置の遮断機構である。この遮断機構によれば、遮断壁が降下すると共に、中継搬送装置が下方に待避し、遮断壁が上昇すると共に、中継搬送装置が元の前記遮断空間に復帰することを特徴とする搬送装置の遮断機構である。
【0082】
機械的収縮装置としては、錘付きワイヤであることが好ましく、遮断機構の安定した動作を実現するためには、引張バネであることがより好ましい。
【0083】
第一のローラが、降下してくる遮断壁との接触を確実なものとするためには、第一の検知ローラと第二の検知ローラとが連結アームで接続され、第一の検知ローラ、第二の検知ローラ、又は、連結アームが、一端が固定された伸縮手段と接続され、第一の検知ローラに押圧が付加されていることが好ましい。この伸縮手段は、その接続方法により、圧縮バネ又は引張りバネであることが簡便な構造で好ましい。
【0084】
このように、検知手段として、降下する遮断壁と接触して回転するローラを採用することによって、高速で降下してくる耐火性を有し重量のある遮断壁が、検知手段と衝突することはなく、検知手段を構成するローラが回転するだけであるため、遮断壁及び検知手段が受ける衝撃がなく、搬送設備の損傷の問題を解決することができる。また、電源を必要としないので、火災時に適した装置である。更に、火災鎮火後又は誤動作後に、遮断壁を上昇して復旧する場合、遮断壁の上昇に伴って、検知手段を構成するローラが逆回転し、中継搬送手段が自動的に復帰することができる。
【0085】
以上、本発明の搬送装置の遮断機構を説明したが、遮断機構は、火災時に使用されるため、エア配管系及び電気配線系は、全て、不燃性材料で保護される必要があり、不燃性有機材料又は金属材料で被覆されることが好ましい。