(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580265
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】可動の家具部分用の引込み装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/453 20170101AFI20190912BHJP
A47B 88/40 20170101ALI20190912BHJP
【FI】
A47B88/00 H
A47B88/04 E
A47B88/12
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-526243(P2018-526243)
(86)(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公表番号】特表2018-534081(P2018-534081A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】AT2016060063
(87)【国際公開番号】WO2017083894
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】A750/2015
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ゲッツ
【審査官】
下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−526984(JP,A)
【文献】
特表2013−517014(JP,A)
【文献】
特表2012−505980(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0043087(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0077710(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動に支持された家具部分(3)を家具本体(2)に対して相対的に、閉鎖された終端位置に引き込む引込み装置(13)であって、
前記可動の家具部分(3)と離脱可能に連結可能な連行体(14)と、
前記連行体(14)の引出し方向(31)とは逆向きに前記連行体(14)に力を加える少なくとも1つのばね装置(16)であって、前記連行体(14)とは別体のばね保持体(17)を介して前記連行体(14)の前記引出し方向(31)において緊張可能であるばね装置(16)と、
前記連行体(14)と前記ばね保持体(17)との間において運動を連結する連結装置(30)であって、前記連行体(14)に対して相対的な、前記ばね保持体(17)における前記ばね装置(16)の固定箇所(18)の間隔(D)を、前記引出し方向(31)における前記連行体(14)の引出し時に変化させる連結装置(30)と、
を備える引込み装置(13)において、
前記連結装置(30)は、前記引出し方向(31)に延びる長手方向軸線(23)を有する少なくとも1つの制御エレメント(22)を有しており、該制御エレメント(22)は、前記引出し方向(31)における前記連行体(14)の引出し時に、前記固定箇所(18)と前記連行体(14)との間に存在する前記間隔(D)を変化させるために、少なくとも部分的に前記長手方向軸線(23)を中心にして回転する
ことを特徴とする、引込み装置。
【請求項2】
前記制御エレメント(22)は、少なくとも1つの第1のガイドエレメント(22a)を有しており、該第1のガイドエレメント(22a)は、前記引出し方向(31)における前記連行体(14)の引出し時に、少なくとも部分的に第1のガイド軌道(21)に沿って案内される、請求項1記載の引込み装置。
【請求項3】
前記第1のガイド軌道(21)は、前記連行体(14)の前記引出し方向(31)に延びる第1の部分(21a)と、該第1の部分(21a)に接続していて螺旋形に形成された第2の部分(21b)とを有している、請求項2記載の引込み装置。
【請求項4】
前記制御エレメント(22)は、少なくとも1つの第2のガイドエレメント(22b)を有しており、該第2のガイドエレメント(22b)は、前記引出し方向(31)における前記連行体(14)の引出し時に、少なくとも部分的に第2のガイド軌道(25)に沿って案内される、請求項2または3記載の引込み装置。
【請求項5】
前記第2のガイド軌道(25)は、少なくとも部分的に螺旋形に形成されている、請求項4記載の引込み装置。
【請求項6】
前記第1のガイドエレメント(22a)と前記第2のガイドエレメント(22b)とは、前記制御エレメント(22)の前記長手方向軸線(23)に沿って互いに間隔をあけて位置している、請求項4または5記載の引込み装置。
【請求項7】
前記第1のガイド軌道(21)は、第1のスリーブ(20)に配置されているかまたは形成されており、前記第2のガイド軌道(25)は、第2のスリーブ(24)に配置されているかまたは形成されている、請求項4から6までのいずれか1項記載の引込み装置。
【請求項8】
前記第1のスリーブ(20)と前記第2のスリーブ(24)とは、互いに回動不能に結合されている、請求項7記載の引込み装置。
【請求項9】
前記第1のスリーブ(20)と前記第2のスリーブ(24)とは、少なくとも1つのウェブ(26)を介して互いに回動不能に結合されている、請求項8記載の引込み装置。
【請求項10】
前記制御エレメント(22)および/または前記ばね装置(16)は、前記引出し方向(31)における前記連行体(14)の引出し時に、少なくとも部分的に前記第1のスリーブ(20)または前記第2のスリーブ(24)の内部において案内される、請求項7から9までのいずれか1項記載の引込み装置。
【請求項11】
前記第1のガイド軌道(21)と前記第2のガイド軌道(25)とは、少なくとも部分的に、逆向きの螺旋方向を有している、請求項5から10までのいずれか1項記載の引込み装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の引込み装置(13)を備えた引出し用引出しガイド(10)。
【請求項13】
当該引出し用引出しガイド(10)は、家具本体(2)に固定することができる本体レール(11)と、該本体レール(11)に対して相対的に走行可能に支持された少なくとも1つの引出しレール(12)とを有しており、該引出しレール(12)は、閉鎖運動の終了近くにおいて、前記引込み装置(13)によって、完全に閉鎖された終端位置に引込み可能である、請求項12記載の引出し用引出しガイド。
【請求項14】
特にフラップ、扉または引出しである可動の家具部分(3)と、該可動の家具部分(3)を家具本体(2)に対して相対的に、閉鎖された終端位置に引き込む、請求項1から11までのいずれか1項記載の引込み装置(13)と、を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動に支持された家具部分を家具本体に対して相対的に、閉鎖された終端位置に引き込む引込み装置であって、
可動の家具部分と離脱可能に連結可能な連行体と、
連行体の引出し方向とは逆向きに連行体に力を加える少なくとも1つのばね装置であって、連行体とは別体のばね保持体を介して連行体の引出し方向において緊張可能であるばね装置と、
連行体とばね保持体との間において運動を連結する連結装置であって、連行体に対して相対的な、ばね保持体におけるばね装置の固定箇所の間隔を、引出し方向における連行体の引出し時に変化させる連結装置と、
を備える引込み装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、記載される形式の引込み装置を備えた引出し用引出しガイド、ならびに、特にフラップ、扉または引出しである可動に支持された家具部分と、可動の家具部分を家具本体に対して相対的に、閉鎖された終端位置に引き込むこのような引込み装置と、を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0003】
引込み装置は、特に引出しまたはスライド扉と共に使用される。この引出しまたはスライド扉は、その引出し範囲の大部分にわたって自由に走行可能であり、かつ閉鎖運動の終了近くで引込み装置の連行体によって捕捉され、ばね力によって閉鎖された終端位置に引き込まれ、かつそこで予め設定された閉鎖力で保持される。可動の家具部分の開放時には、使用者がまず、引張り動作によって、引込み装置のばね抵抗に抗して力を加えることが必要である。この動作は、連行体が予め設定された距離の後で可動の家具部分から連結遮断され、予荷重を加えられた休止位置に移動されるまで続けられる。この休止位置において、ばねは緊張した準備位置において静止し、その結果、次の閉鎖過程時に、可動の家具部分を新たに引き込むことができる。使用者は、引出しの開放運動時における連行体の連結解除を、しばしば急激な運動およびクリックノイズによって気付くことができる。なぜなら、急なばね切離し力(Federabrisskraft)に基づいて引出しは自由に可動になり、かつ予め加えられた引張り力に基づいて開放方向に加速されるからである。
【0004】
本出願人の国際公開第2011/150432号は、この問題を、連行体とは別体のばね保持体によって解決しており、このばね保持体は、制御カムに沿って移動可能に案内されている。連行体およびばね保持体は、互いに係合し合う歯列として形成された連結装置を介して、互いに運動連結されて結合されている。ばね装置の緊張時(つまり可動の家具部分の開放時)に、ばね保持体におけるばね装置の固定箇所が、引出し方向に走行する連行体の位置に対して後退し、その結果、ばね装置の固定箇所の移動が連行体の移動よりも遅くなる。これによって、ばね装置のチャージが、減少したエネルギ消費と共に行われ、これにより、連行体の連結遮断時における望ましくないばね切離しと、連行体の連結遮断時における可動の家具部分の、これに関連した過度の加速とを、阻止することができる。この構造の欠点としては、互いに係合し合う歯列のために、引込み装置の構造高さを比較的大きく寸法設定しなければならないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の引込み装置を改良して、コンパクトな構造形式を備えた引込み装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。本発明の別の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0007】
すなわち、本発明によれば、連結装置は、引出し方向に延びる長手方向軸線を有する少なくとも1つの制御エレメントを有しており、制御エレメントは、引出し方向における連行体の引出し時に、固定箇所と連行体との間に存在する間隔を変化させるために、少なくとも部分的に長手方向軸線を中心にして回転することが提案される。
【0008】
このように構成されていると、連行体とばね保持体におけるばね装置の固定箇所との間の運動連結のために、力低減機構として形成された、制御エレメントを備えた連結装置が設けられており、この制御エレメントは、連行体の引出し時に固有の長手方向軸線を中心にして回転する。これによって、制御エレメントは、連行体の引出し時に、連行体の引出し方向に対して横方向の運動成分をもって強制的に移動され、その結果、連行体と固定箇所との間の間隔が増大し、かつ連行体の引出し時における固定箇所の移動が、引出し方向に走行する連行体に対して相対的に遅くなる。
【0009】
つまり、固有の軸線を中心にした制御エレメントの回転運動によって、制御エレメントは、連行体の引出し方向に対して横方向の運動成分をもって案内され、その結果、制御エレメントは、引出し方向に関して、引出し方向に走行する連行体よりも僅かな距離しか進まない。制御エレメントの螺旋形の運動、およびこれに関連した、空間における制御エレメントの等しいままの長さによって、引込み装置の極めてコンパクトな構造形態が得られる。
【0010】
制御エレメントは、少なくとも1つの第1のガイドエレメントを有していてよく、第1のガイドエレメントは、引出し方向における連行体の引出し時に、少なくとも部分的に第1のガイド軌道に沿って案内される。第1のガイド軌道は、連行体の引出し方向に延びる第1の部分と、第1の部分に接続しており螺旋形に形成された第2の部分とを有していてよい。
【0011】
引出し方向に延びる第1の部分によって、ばね装置の固定箇所は、連行体の引き込まれた終端位置を起点として、最初は連行体と同じ速度で引出し方向に移動することができる。螺旋形に形成された第2の部分(これは、連行体の引出し方向に対して横方向の成分を有している)によって、ばね保持体におけるばね装置の固定箇所は、走行する連行体の位置に対して後退し、その結果、つまり連行体の引出し路の終端近くで、ばね保持体におけるばね装置の固定箇所は、連行体の移動に比べて遅れる。第1のガイド軌道の第2の部分のピッチは、連行体に対して相対的な固定箇所の遅延の程度を確定する。
【0012】
つまり、ばね装置の固定箇所を、螺旋形に形成された第2の部分に沿って案内することによって、引出し方向に移動する連行体に対して相対的に、固定箇所の連続的な遅らされた移動が生じ、その結果、ばね装置は、最大ばね変位に到るまでは緊張させられない。従って、ばね装置の緊張は、比較的僅かなエネルギ消費しか必要とせず、このとき連行体の連結された位置と連結されていない位置との間の移行領域または負荷交番が調和される。すなわち、これによって、連行体の連結遮断時における望ましくないばね切離しと、これに関連した、連行体の連結遮断時における可動の家具部分の望ましくない加速とを、回避することができる。
【0013】
本発明のさらなる詳細および利点について、以下において図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】家具本体と、この家具本体に対して相対的に可動に支持された引出しとを備えた、家具を示す斜視図である。
【
図2】可動に支持された家具部分を家具本体に対して相対的に、閉鎖された終端位置に引き込むための引込み装置を示す分解図である。
【
図3】
図3a〜
図3cは、引込み装置を、引出し方向における連行体の異なった位置において示す斜視図である。
【
図4】
図4a〜
図4cは、引込み装置を、引出し方向における連行体の異なった位置において示す側面図である。
【
図5】
図5a〜
図5dは、異なった引込み位置における、回転可能に支持された連行体を備えた、引込み装置の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、キャビネット形状の家具本体2と、この家具本体2に対して可動に支持された、引出し4として形成された家具部分3とを備えた家具1が示されている。引出し4はそれぞれ、前板5、引出し底板6、側壁7および背壁8を有している。側壁7の上方にはステー9が設けられており、これらのステー9は、前板5と背壁8との間において延びていて、引出し4の収容容積を増大させるために設けられている。家具本体2に対して相対的に引出し4を走行可能に支持するために、引出し用引出しガイド10が設けられており、この引出し用引出しガイド10はそれぞれ、家具本体2に固定することができる本体レール11と、引出し4に結合することができる少なくとも1つの引出しレール12とを有しており、この引出しレール12は、定置の本体レール11に対して相対的に移動可能に支持されている。本体レール11と引出しレール12との間には、さらに追加的な移動可能な中間レールが配置されていてよく、この中間レールによって引出し4の完全引出しを可能にすることができる。このような完全引出しは、引出し4の完全に引き出された状態において背壁8が家具本体2の端面に対してほぼ面一に延びている場合に生じる。
【0016】
図2には、可動に支持された家具部分3を、閉鎖された終端位置へと家具本体2に対して相対的に引き込むことができる、引込み装置13が分解図で示されている。引込み装置13は、自体公知のように、軸15を中心にして旋回可能に支持された連行体14を含んでおり、この連行体14は、可動の家具部分3と離脱可能に連結可能である。そのために、連行体14は切欠き29を有しており、この切欠き29は、可動に支持された家具部分3に配置された、例えばピンとして形成された連結エレメント36(
図5a〜
図5c)と離脱可能に連結可能である。引出し方向31(
図3a〜
図3c)とは逆向きに連行体14に対して力を加えるために、ばね装置16が設けられており、このばね装置16は、好ましくは、コイルばねとして形成された少なくとも1つの引張りばねを含んでいる。ばね力を高めるために、ばね装置16は、互いに平行に配置された2つ以上の引張りばねを有してもよい。ばね装置16は、連行体14とは別体のばね保持体17との結合のために固定箇所18を有しており、ばね装置16の他方の端部19は、取付け位置において位置固定に配置されている(例えば引出し用引出しガイド10の本体レール11に不動に固定されている)。このような構成の代わりに可能な別の構成では、引込み装置13は走行可能な引出しレール12に支持されており、ひいては本体レール11に対して相対的に移動可能に配置されており、連行体14は、本体レール11に支持された連結エレメント36と離脱可能に連結可能である。
【0017】
連行体14とばね保持体17におけるばね装置16の固定箇所18との間の運動連結のために、連結装置30が設けられており、この連結装置30は、長手方向軸線23を有する少なくとも1つの制御エレメント22を有している。制御エレメント22は、連行体14の引出し時に、長手方向軸線23を中心にして回転し、引出し方向31における連行体14の移動時に、長手方向軸線23を中心にした回転運動と長手方向軸線23に沿った並進運動とを実施する。制御エレメント22は、少なくとも1つの第1のガイドエレメント22aを含んでおり、この第1のガイドエレメント22aは、引出し方向31における連行体14の引出し時に、少なくとも部分的に、第1のガイド軌道21に沿って案内される。このガイド軌道21は、示された図面では、第1のスリーブ20に配置されているかまたは形成されており、かつ連行体14の引出し方向31に延びる第1の部分21aと、第1の部分21aに接続しており螺旋形に形成された第2の部分21bとを有している。可動の家具部分3の閉鎖された終端位置を起点とした連行体14の引出し時に、制御エレメント22の第1のガイドエレメント22aは、第1の部分21aに沿って案内され、このとき等しい運動状態が、連行体14とばね装置16の固定箇所18との間に存在している。連行体14の引出し運動の終了近くにおいて、第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の、螺旋形に形成された第2の部分21bに沿って案内され、これによって制御エレメント22は、引出し方向31に対して横方向の運動成分をもって案内される。これによって、ばね装置16の固定箇所18の位置が、引出し方向31において走行する連行体14の位置に対して相対的に後退し、その結果、固定箇所18の移動が、連行体14の移動に対して相対的に遅くなる。このようにして、ばね装置16は、最大変位にまでは緊張させられないので、可動の家具部分3からの連行体14の連結遮断時に、急に切り離されるばね力の作用が阻止される。
【0018】
制御エレメント22の、反対側に位置している端部領域には、第2のガイドエレメント22bが配置されており、この第2のガイドエレメント22bは、長手方向軸線23の方向において第1のガイドエレメント22aから間隔をあけて位置している。この第2のガイドエレメント22bは、第2のガイド軌道25に沿って移動可能に支持されており、第1のガイド軌道21の第2の部分21bと第2のガイド軌道25とは、少なくとも部分的に、逆向きの螺旋方向を有している。螺旋形の第2のガイド軌道25は、第2のスリーブ24に形成されており、第1のスリーブ20と第2のスリーブ24とは、互いに回動不能に結合されている。このことは、第2のスリーブ24に配置されたウェブ26によって達成することができ、このウェブ26は、第1のスリーブ20の、対応する縦長の切欠き27内に係合している。これによって、第1のスリーブ20は、位置固定に配置されており、第2のスリーブ24は、第1のスリーブ20に対して相対的に単に摺動可能ではあるが、回動不能である。制御エレメント22は、両方のガイドエレメント22a,22bを介して、スリーブ20,24の両方のガイド軌道21,25に沿って案内され、このとき制御エレメント22は、スリーブ20の螺旋形の部分21bとの第1のガイドエレメント22aの共働時に、長手方向軸線23を中心にして回転し、これによって、走行する連行体14に対して相対的に遅れた固定箇所18の運動が生じる。
【0019】
図3a〜
図3cには、引込み装置13が、引出し方向31における連行体14の異なった位置で示されている。
図3aには、連行体14の引き込まれた終端位置が示されており、このときばね装置16は、十分に弛緩している。ばね装置16は、固定箇所18を介してばね保持体17に結合されており、このばね保持体17は他方において、連結部材28を介して制御エレメント22に結合されている。第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の第1の部分21aの第1の端部に位置しており、これに対して第2のガイドエレメント22bは、第2のスリーブ24の螺旋形の第2のガイド軌道25と共働する。連行体14の引き込まれた終端位置では、両方のスリーブ20,24の端面は互いに接触しており、このとき制御エレメント22は、両方のスリーブ20,24の内部に収容されている。このようにして、特にコンパクトな構造形式が得られる。
【0020】
図3bには、連行体14の僅かに引き出された位置が示されており、連行体14は、引出し方向31における可動の家具部分3に対する手動による引張り運動によって、ばね装置16の力に抗して移動可能である。制御エレメント22は、最初に、第1のガイド軌道21の、引出し方向31に延びる真っ直ぐな第1の部分21aに沿って案内され、このとき固定箇所18は、連行体14と同じ速度で移動する。従って、連行体14に対して相対的な固定箇所18の間隔D(
図4a,
図4b)は、一時的に一定のままである。
図3bに示した位置に続いて、第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の、螺旋形に形成された第2の部分21bと共働する。これによって、制御エレメント22は、引出し方向31に対して横方向の運動成分をもって案内され、これによって固定箇所18と連行体14との間の間隔D1(
図4c)が増大し、その結果、固定箇所18の速度は、連行体14の速度に対して相対的に遅くなる。
図3cには、連行体14の完全に引き出された位置が示されており、このとき第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の第2の部分21bの端部に位置している。
【0021】
図4a〜
図4cには、引込み装置13が、引出し方向31における連行体14の異なった位置において側面図で示されている。引込み装置13はハウジング32を有しており、このハウジング32には、連行体14を案内するために、引出し方向31に延びる直線的な走行路34が配置されているかまたは形成されている。直線的な走行路34には、連行体14を離脱可能にロックするために、好ましくは円弧形または折り曲げられた屈曲部35が接続している。連行体14はガイド部分33を備えており、このガイド部分33によって、連行体14は、直線的な走行路34に沿って案内可能であり、かつ屈曲部35と離脱可能にロック可能である。
図4aに示した連行体14の引き込まれた終端位置を起点として、連行体14は、可動の家具部分3に対する手動による引張り運動によって作動されて、引出し方向31に移動する。このとき制御エレメント22の第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の、引出し方向31に延びる真っ直ぐな第1の部分21aに沿って移動する。連行体14の軸15と第1のガイドエレメント22aとの間の間隔Dは、最初は一定のままである。連行体14の、
図4bに示した引出し位置を起点として、第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の、螺旋形に形成された第2の部分21bに沿って移動し、これによってばね保持体17におけるばね装置16の固定箇所18が、引出し方向31に走行する連行体14の位置に対して後退し、これによって、間隔D1は、
図4aおよび
図4bに示した間隔Dに比べて増大する。連行体14のガイド部分33は、屈曲部35内に走入し、これによって連行体14は、軸15を中心にして旋回し、連行体14の切欠き29は、可動の家具部分3の連結エレメント36(
図5a〜
図5d)を解放する。連結されていない可動の家具部分3は、次いでさらに引出し方向31に移動可能である。
図4cにおいて、連行体14は、引出し方向31とは逆向きの可動の家具部分3の引込み過程のための、セルフロック式にロックされた準備位置にある。可動の家具部分3の閉鎖時にこの可動の家具部分3は、再び連行体14の切欠き29と連結されるので、ガイド部分33は屈曲部35から外に移動し、かつ連行体14は、弛緩するばね装置16の力によって再び、
図4aに示した引き込まれた終端位置に引き込まれる。
【0022】
図5a〜
図5dには、回転可能に支持された連行体14を備えた引込み装置13の別の実施形態が、異なった引込み位置において示されている。図面において、可動の家具部分3に固定することができる連結エレメント36が認識可能であり、この連結エレメント36は、連行体14と離脱可能に連結可能である。連行体14は、制御エレメント22の長手方向軸線23に対して同軸的に回転可能に支持されており、かつ引出し方向31に対して横方向に延びる傾斜面37を有している。この傾斜面37は、連結エレメント36との共働時に連行体14を、長手方向軸線23を中心にして回転させ、これによって制御エレメント22もまた同様に回転軸線23を中心にして一緒に回転し、かつ制御エレメント22の第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の第2の部分21bとのロック位置から離脱する。好ましくは、連行体14は制御エレメント22と一緒に一体に形成され、スライダ40に支持されており、このスライダ40は、スライダ40に配置されたピン39によって、ハウジング32のリニアガイド38に沿って移動可能に支持されている。直線的に走行可能なスライダ40には、第2のガイド軌道25が形成されており、この第2のガイド軌道25は、制御エレメント22の第2のガイドエレメント22bと共働する。
【0023】
いまや可動の家具部分3が閉鎖されると(
図3b)、連結エレメント36は、連行体14の傾斜面37と共働する。これによって連行体14は、長手方向軸線23を中心にして回転し、連結エレメント36と連結さる。このとき制御エレメント22の第1のガイドエレメント22aは、回転軸線23を中心にした制御エレメント22の回転によって、第1のガイド軌道21の第2の部分21bとのロックから離脱し、連結エレメント36と連結された連行体14は、制御エレメント22と一緒に、弛緩するばね装置16の力によって、閉鎖された終端位置の方向に引き込まれる(
図5c)。いまや第1のガイドエレメント22aは、第1のガイド軌道21の、引出し方向31に延びる第1の部分21aと共働し、これによって連行体14は、制御エレメント22と一緒に、回転運動の実施なしに、長手方向軸線23に沿って閉鎖位置の方向に移動される。
図5cにおいては、第1のガイド軌道21の第2の部分21bの端部も認識可能であり、この端部は、第1のガイドエレメント22aとの離脱可能なロックのために、回転軸線23に対して直角に延びる部分を有している。
図5cに示した連行体14の位置を起点として、連行体14は、制御ピン22と一緒に、完全な終端位置に引込み可能である。いまや可動の家具部分3が再び開放されると、連行体14は、
図5dを起点として、連結エレメント14によって再び引出し方向31において引っ張られる。このとき制御エレメント22は、この引出し運動の終了近くで、ガイド軌道21,25と共働するガイドエレメント22a,22bによって再び回転軸線23を中心にして回転し、これによって連行体14も同様に回転軸線23を中心にして回転し、かつ連結エレメント36は、さらなる引出し運動のために連行体14から解放される。