(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580309
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】マイクロ波フィルタにおいて結合損失によって生じる歪を等化する方法及びこの方法によって製造されるフィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/20 20060101AFI20190912BHJP
H03H 7/01 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
H01P1/20 Z
H03H7/01 A
H03H7/01 G
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-143868(P2014-143868)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2015-29265(P2015-29265A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】13290170.3
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503430577
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ハビエル・ログラ・マドリッド
(72)【発明者】
【氏名】マリア・テレサ・サンチョ・ルイス・デ・カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】フアン・セバスティアン・ガラス・ビジャサンテ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロニロ・マルティン・イグレシアス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・パブロ・デル・ピノ・フアレス
【審査官】
久々宇 篤志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0108920(US,A1)
【文献】
Deslandes et al.,General Formulation for Modeling Bandpass Filters with Finite Quality Factors and Resistive Couplings,Proceedings of the 38th European Microwave Conference,2008年10月,pp.1042-1045,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=4751635
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20−1/219
H01P 7/00−7/10
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合共振器を備えたマイクロ波帯域通過フィルタにおける隣接する共振器間の結合損失によって生じる歪を等化する方法であって、
・フィルタの初期伝達関数を設計するステップ(401)と、
・前記設計された伝達関数の極piを算出するステップ(402)と、
・複素平面の実軸に沿って前記極の非対称な変位を生成するように、既定の量aiによって前記極piの値を変更するステップ(403)であって、前記既定の量aiは、マイクロ波フィルタの隣接する共振器間の結合損失の影響を補償するように、マイクロ波フィルタの隣接する共振器の間の結合のQ係数Qkの関数として算出される、ステップと、
・前記初期伝達関数及び前記変更された極pi−aiから、変更済みの伝達関数を算出するステップ(404)と、
を有する方法。
【請求項2】
前記既定の量aiは、それぞれ、前記極piの虚部の個々の増大又は減少に伴って増大又は減少する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既定の量aiは、前記変更された極pi−aiを虚軸から離れるようにシフトさせるように、算出される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記既定の量aiは、ai=C(1−i)/Qkに等しく、ここで、iは、前記複素平面の虚軸に沿った極piのインデックスであり、且つ、Cは、定数である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合のQ係数Qkは、前記マイクロ波フィルタの共振器の間の結合における最大保存エネルギーと単位時間当たりのエネルギー損失の間の比率として算出される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ波フィルタは、衛星通信用のIMUXチャネルフィルタである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサ上において実行された際に請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマイクロ波帯域通過フィルタにおいて結合損失によって生じる歪を等化する方法を実行するコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の変更済みの伝達関数から製造されたマイクロ波帯域通過フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合共振器の使用に基づいたマイクロ波フィルタの分野に関し、且つ、更に詳しくは、マイクロ波フィルタにおいて結合損失によって生じる歪を等化する方法及びこの方法によって製造されたフィルタに関する。
【0002】
特に、本発明は、衛星通信用の入力マルチプレクサ(Input Multiplexer:IMUX)チャネルフィルタにおいて、或いは、帯域通過伝達関数の正確な等化を有するフィルタを必要としている任意のRF通信システムにおいて、使用されるフィルタに適用される。
【背景技術】
【0003】
結合共振器型マイクロ波帯域通過フィルタの挿入損失の平坦性は、望ましくないスロープの影響を受ける。この望ましくないスロープは、隣接する共振器間の結合において発生する散逸損失の存在に起因している。この結果、特に低周波数において、目標とするフィルタ仕様に準拠しなくなる可能性がある。
【0004】
従って、その帯域通過におけるフィルタのスロープを極小化するべく、この現象に起因した歪を等化する方法に対するニーズが存在している。
【0005】
従来技術においては、具体的には、参考文献[1]、[2]、及び[3]から、フィルタ空洞内における散逸に起因してフィルタ通過帯域の両方のエッジにおいて生じる丸めを補償するように意図されたフィルタ伝達関数を予め歪ませる方法が知られている。
【0006】
但し、これらの技法は、無負荷状態の共振器のQ係数しか考慮しておらず、換言すれば、隔離された共振器のQ係数しか考慮しておらず、且つ、純粋な反応性要素の有限なQ係数の影響を考慮しておらず、即ち、これらの要素内の損失に起因した隣接する共振器間の誘導性又は容量性結合を考慮していない。
【0007】
又、参考文献[5]には、共振器フィルタの正規化されたインピーダンスを算出するための共振器間における結合のQ係数の使用法が開示されている。但し、参考文献[5]は、フィルタの挿入損失の変動を等化及び補正するべく、結合のQ係数を使用してフィルタの伝達関数を予め歪ませることができることを教示してはいない。
【0008】
従って、フィルタ伝達関数において挿入損失の変動を等化すると共にフィルタを実装するために使用されている隣接する共振器の間の結合損失の影響を補償する方法に対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6882251号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Fubini “Minimum Insertion Loss Filters” Proceedings of the IRE January 1959
【非特許文献2】Ming Yu “Predistortion Technique for Cross−Coupled Filters and Its Application to Satellite Communication Systems” IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 51, NO. 12, DECEMBER 2003
【非特許文献3】R. J. Cameron, C. M. Kudsia, and R. R. Mansour, “Microwave filters for communication systems: fundamentals, design, and applications,” Wiley−Interscience, 2007
【非特許文献4】Deslandes D et al, “General Formulation for modeling bandpass filters with finite quality factors and resistive couplings”, microwave conference, 2008. EUMC 2008. 38th European, IEEE, Piscataway, NJ, USA, 27 octobre 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、フィルタ伝達関数における挿入損失の変動を等化する決定論的方法を提供することにある。フィルタの電気パラメータは、選択性及び群遅延特性を維持しつつ、散逸結合に起因した挿入損失スロープを等化するべく、変更される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、マイクロ波フィルタにおいて結合損失によって生じる歪を等化する方法が提案され、この方法は、
・フィルタの初期伝達関数を設計するステップと、
・前記設計された伝達関数の極p
iを算出するステップと、
・複素平面の実軸に沿って極の非対称な変位を生成するように、既定の量a
iによって前記極p
iの値を変更するステップであって、前記既定の量a
iは、前記マイクロ波フィルタを構成している共振器の間の結合のQ係数Q
kの関数として算出される、ステップと、
・前記初期伝達関数及び前記変更済みの極p
i−a
iから、変更済みの伝達関数を算出するステップと、
を有する。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記既定の量a
iは、それぞれ、極p
iの虚部の個々の増加又は減少に伴って増大又は減少する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、前記既定の量a
iは、変更された極p
i−a
iを虚軸から離れるようにシフトさせるべく算出されている。
【0015】
本発明の別の態様によれば、前記既定の量a
iは、a
i=(C1−i)/Q
kに等しく、ここで、iは、複素平面の虚軸に沿った極p
iのインデックスであり、且つ、Cは、定数である。
【0016】
本発明の別の態様によれば、結合の前記Q係数Q
kは、前記マイクロ波フィルタの共振器の間の結合における最大保存エネルギーと単位時間当たりのエネルギー損失の間の比率として算出される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、前記マイクロ波フィルタは、衛星通信用のIMUXチャネルフィルタである。
【0018】
又、本発明の別の態様によれば、プロセッサ上において実行された際に本発明によるマイクロ波フィルタにおいて結合損失によって生じる歪を等化する方法を実行するコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータプログラムプロダクトと、前記方法の実行によって得られるマイクロ波フィルタと、も提案されている。
【0019】
本発明については、非限定的な例として説明されると共に以下の添付図面に示されているいくつかの実施形態を検討することにより、更に十分に理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】望ましい挿入損失仕様との比較において、その伝達関数が通常の方法に従って設計されたフィルタの挿入損失を振幅/周波数の図上に示す。
【
図2】共振器の間の理想的な結合のフィルタの伝達関数の極と共振器の間の多損失結合の場合のフィルタの伝達関数の極を2つの図上に示す。
【
図3】等化されたフィルタの結果的に得られる伝達関数の極に対する本発明による等化方法の効果を
図2と同一の図上に示す。
【
図4】本発明による等化方法のステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の図は、本発明の動作について更に詳細に説明している。
【0022】
本発明は、その伝達関数が標準的な合成法を使用して得られる任意の帯域通過フィルタに対して適用可能である。参考文献[4]には、一般化チェビシェフフィルタ応答の使用に基づいたフィルタ合成法の一例が付与されている。
【0023】
フィルタ合成プロセスの第1ステップは、フィルタ伝達関数の算出である。
【0024】
フィルタ伝達関数は、3つの密接に関係付けられた有理関数S
21(s)、S
11(s)、及びS
22(s)の組として表現することが可能であり、
【数1】
ここで、E(s)、P(s)、F1(s)、及びF2(s)は、複素変数sの多項式であり、sは、一般に、s=σ+jωという形態を有し、ここで、σ及びωは、それぞれ、実部及び虚部である。
【0025】
多項式E、F1、及びF2の次数Nは、フィルタの次数であり、これは、マイクロ波フィルタの空洞の数にも等しい。多項式Pの次数は、0〜Nの任意の値であってもよい。伝達関数の「極」p
1、p
2、...p
nは、分母多項式Eの根である。極は、複素値である。
E(s)=c(s−p
1)(s−p
2)...(s−p
n)
【0026】
「透過ゼロ」と呼ばれる分子多項式Pの根は、フィルタの非常に重要な透過特性を決定し、主には、挿入損失変動(Insertion Loss Variation:ILV)、選択性、及び群遅延(Group Delay:GD)を決定する。一般化チェビシェフ応答においては、「反射ゼロ」とも呼ばれる多項式F1及びF2の根は、反射係数S
11及びS
22の最大値が、同一の定数値RLを有するフィルタ有用帯域幅BW内の(N−1)個の周波数点に発生するように、複素周波数平面の虚軸内に位置するべく制限されている。
【0027】
フィルタ設計者は、合成プロセスの開始時点において、なんらの制限を伴うことなしに、N(フィルタ次数)、Fc(フィルタ中心周波数)、BW(フィルタ帯域幅)、及びRL(最小一定リップル帰還損失)と共に、透過ゼロの値―Pの根―を選択することができる。
【0028】
この後に、参考文献[4]に記述されている確立された数学的手順により、伝達関数S
21、S
11、及びS
22が得られ、且つ、最も重要なことには、算出された理論的応答が、必要とされている仕様を充足していることをフィルタ設計者がチェックできるようにするそのグラフィカルな表現が得られる。
【0029】
フィルタ技術及び空洞サイズによって主に左右される無負荷状態のQ係数Q
uによって表されるそれぞれのフィルタ空洞におけるほぼ均一な散逸損失の値は、通常、判明しており、且つ、この段階において考慮される。
【0030】
合成プロセスの最後のステップは、通常は、結合行列(即ち、空洞間結合係数、外部結合係数、及び空洞共振周波数の値を含む行列)の形態において、フィルタパラメータの値を得るというものである。この結合行列は、有理関数S
21、S
11、及びS
22から直接的に得られる。
【0031】
図1は、共振器損失Q
uしか考慮していない理想的結合の場合101の、且つ、フィルタ内の空洞間の散逸結合の影響Q
kが考慮されている現実的な場合102の、フィルタ帯域幅内の挿入損失の変動を振幅/周波数の図上に示している。望ましい仕様103も示されており、これにより、挿入損失の望ましくないスロープ102が、特に低周波数において、フィルタ仕様103に準拠しないという結果をもたらしうることを示している。
【0032】
結合損失の影響は、等化された群遅延及び誘電共振器技術を有するフィルタにおいて非常に顕著である。
【0033】
図2も、散逸結合に起因した、但し、この場合には、フィルタ伝達関数の極に対する、同一の効果を示している。例示を目的として、10個の極のチャネルフィルタ応答の特定の例が付与されている。
【0034】
図201は、それぞれ、理想的結合を有するフィルタ210及び散逸結合を有するフィルタ211における複素平面内の極の複素値を示している。
図2の例においては、理論的な望ましい応答210は、伝達関数の極との関係において対称であるのに対して、実際の応答211は、多損失結合に起因した極の非対称な変位を示している。この非対称な変位が、
図1に示されている挿入損失応答の歪の原因であり、この挿入損失応答も、フィルタ中心周波数との関係において非対称である。
図2に示されている極の非対称の変位と
図1に示されている挿入損失の非対称な変形の間には、密接な関係が存在している。
図2の
図202には、理想的なフィルタ応答との比較において、それぞれの極の変位値の例示用の図が示されている。変位値は、周波数の減少に伴って、或いは、等価的に、極の虚部の減少に伴って、増大することがわかる。
【0035】
図1及び
図2に示されている挿入損失歪を補償するために、本発明は、フィルタ伝達関数の極の変位の補償を通じて挿入損失の歪を補償することを目的とした決定論的な等化方法を提案する。
【0036】
合成されたフィルタ伝達関数のそれぞれの極は、その非対称の変位を補償するように構成された量だけ、変位させなければならない。
【0037】
この原理が
図3に示されており、
図3は、理想的な伝達関数に可能な限り近接した伝達関数を得るために、且つ、フィルタ伝達関数に対称性を再度導入するために、等化された伝達関数の極310(
図301)と、オリジナルの極に対して施された対応する変位(
図302)と、を、
図2と同一の図上に示している。
【0038】
以下、
図4に示されているフローチャートに従って、本発明による等化方法のステップについて詳細に説明する。
【0039】
第1ステップ401において、必要とされる仕様に従って、望ましいフィルタの伝達関数が設計されている。例えば、フィルタ伝達関数の設計は、参考文献[4]を参照して上述した技法によって実装することが可能であり、且つ、この設計が、有理関数S
21(s)、S
11(s)、及びS
22(s)の設計をもたらすことができる。
【0040】
第2ステップ402において、フィルタ伝達関数の極p
iが算出されている。
【0041】
第3ステップ403において、極の変位を複素平面において実軸に沿って非対称な方式で操作するように、フィルタの極p
iの値が既定の値によって変更されている。
【0042】
本発明の特定の実施形態においては、それぞれの極の実部に追加される既定の量が極の虚部の増大又は減少に伴って増大又は減少するように、極の非対称な変位が操作されている。従って、極は、虚軸から離れるようにシフトするか、又は虚軸に近接するようにシフトする。
【0043】
極を虚軸から離れるようにシフトさせることに伴う利点は、システムが相対的に安定した状態になるという点にある。
【0044】
本発明の別の特定の実施形態においては、最大の虚部を有する極が、最小の虚部を有する極よりも、大きな変位を伴って変更されるように、極の変位が操作されている。最小の虚部は、最低周波数に対応しており、最大の虚部は、最高周波数に対応しており、換言すれば、最大周波数に対応する極が、最低周波数に対応する極よりも、大きな変位を伴って変更されるように、極の変位が操作されている。
【0045】
本発明のすべての実施形態において、極を変位させるために使用される既定の量は、フィルタの共振器の間の結合のQ係数Q
kによって左右される。このQ係数は、フィルタ技術及び空洞サイズによってのみ左右される無負荷状態のQ係数Q
uとは異なっている。無負荷状態のQ係数Q
uは、共振器の損失と関係付けられている一方で、結合のQ係数Q
kは、結合に使用されている反応性非共振要素の損失と関係付けられている。
【0046】
特定の実施形態においては、極p
iは、量a
i=f(Q
k)=C.(1−i)/Q
kによって変位され、ここで、iは、0〜N−1の整数であり、Nは、極の数であり、且つ、Cは、比例定数である。
【0047】
結合のQ係数Q
kは、材料推定、シミュレーション、計測、又は任意のその他の等価な手段から得ることができる。
【0048】
フィルタのQ係数は、保存されているエネルギー対単位時間当たりの消失エネルギーの比率として定義されてもよい。結合において散逸されるエネルギーは、一般に、小さいことから、誘導性又は容量性結合のQ係数Q
kの影響は、通常、無視され、且つ、共振器の無負荷状態のQ係数Q
u(隔離された共振器のQ係数)が考慮される。従って、結合などの反応性要素のQ係数Q
kは、結合における最大保存エネルギーと単位時間当たりのエネルギー損失の間の比率として表現することができる。
【数2】
ここで、ωは、保存されているエネルギー及びエネルギー損失が計測される角周波数である。実際には、結合のQ係数Q
kは、共振器のQ係数Q
uと類似した方法により、即ち、結合に使用されている要素の材料及び形状に基づいたフィルタの計測及び近似から、判定される。
【0049】
ステップ403において操作される極の変位は、一度だけ、実行されるものであり、且つ、反復を必要としてはいない。
【0050】
最後に、最終ステップ404において、第1ステップ401において設計された初期伝達関数と同一値の透過ゼロを維持することにより、但し、ステップ403において得られた変更済みの極を使用することにより、変更済みの伝達関数が算出されている。
【0051】
この場合にも、参考文献[4]に記述されている技法を使用することにより、変更済みの伝達関数は、以下の式によって算出することができる。
【数3】
ここで、P(s)は、初期伝達関数H(s)に使用されているものと同一の多項式であり、且つ、E’’(s)は、その極が変更済みの極である多項式である。
E’’(s)=c[s−(p
1−a
1)]・[s−(p
2−a
2)]... [s−(p
n−a
n)]
次いで、多項式S21’’、S11’’、及びS22’’をH’’(s)から算出することが可能であり、且つ、これらの多項式は、H(s)から得られたオリジナルのS21、S11、及びS22とは異なることになる。最後に、フィルタ結合行列も、オリジナルの伝達関数と同一の方法によって算出することができる。
【0052】
本発明の利点は、オリジナルのフィルタが有していた群遅延及び選択性応答を保持しているという点にある。この特徴は、特に、その群遅延及び選択性要件が、通常は、非常に厳格である入力マルチプレクサチャネルフィルタの場合に、常に重要である。
【0053】
本発明による方法は、完全にハードウェアの実施形態の、完全にソフトウェアの実施形態の、或いは、ハードウェア及びソフトウェア要素の両方を含む実施形態の形態で実装できることを理解されたい。好適な実施形態においては、本発明による方法は、ソフトウェアにおいて実装されている。
【0054】
更には、本発明による方法は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによる又はこれらとの関係における使用のためにプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能であるコンピュータプログラムプロダクトの形態をとることができる。この説明においては、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、機器、又は装置による又はこれらのとの関係における使用のためのプログラムを収容、保存、通信、伝播、又は搬送できる任意の装置であってもよい。
【0055】
参考文献
[1] Fubini “Minimum Insertion Loss Filters” Proceedings of the IRE January 1959
[2] Ming Yu “Predistortion Technique for Cross−Coupled Filters and Its Application to Satellite Communication Systems” IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 51, NO. 12, DECEMBER 2003
[3] US 6882251B2
[4] R. J. Cameron, C. M. Kudsia, and R. R. Mansour, “Microwave filters for communication systems: fundamentals, design, and applications,” Wiley−Interscience, 2007.
[5] Deslandes D et al, “General Formulation for modeling bandpass filters with finite quality factors and resistive couplings”, microwave conference, 2008. EUMC 2008. 38th European, IEEE, Piscataway, NJ, USA, 27 octobre 2008
【符号の説明】
【0056】
102 スロープ
103 フィルタ仕様
210 フィルタ
211 フィルタ
310 極
401 第1ステップ
402 第2ステップ
403 第3ステップ
404 最終ステップ