(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されている画像表示装置を製造する方法であって、
請求項1〜5いずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層上に貼着された第一保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一貼合工程;および
前記第二粘着剤層上に貼着された第二保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程、
を有する、画像表示装置の製造方法。
画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されている画像表示装置を製造する方法であって、
請求項5に記載の両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層上に貼着された第一保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一貼合工程;および
前記第二粘着剤層上に貼着された第二保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程、を有し、
前記第二貼合工程後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線が照射され、前記第二粘着剤層が硬化される、画像表示装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る両面粘着剤付き光学フィルムの積層構成を表す模式的断面図である。両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10の一方の面に第一粘着剤層21を備え、他方の面に第二粘着剤層22を備える。第一粘着剤層21上には、第一保護シート31が剥離可能に貼着されており、第二粘着剤層22上には、第二保護シート32が剥離可能に貼着されている。
【0021】
図
2は、本発明の一実施形態にかかる画像表示装置100を模式的に表す断面図である。図
2に示す画像表示装置100では、光学フィルム10の一方の面が、第一粘着剤層21を介して画像表示セル61と貼り合せられており、光学フィルム10の他方の面が第二粘着剤層22を介して前面透明部材70と貼り合せられている。
【0022】
[光学フィルム]
光学フィルム10は偏光板を含む。偏光板としては、偏光子の片面または両面に、必要に応じて適宜の透明保護フィルムが貼り合せられたものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0023】
偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。また、液晶セルの光学補償や視野角拡大等を目的として、位相差板(延伸フィルム)等の光学異方性フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることもできる。
【0024】
光学フィルム10は、偏光板のみからなるものでもよく、偏光板の一方または両方の面に、必要に応じて適宜の接着剤層や粘着剤層を介して、他のフィルムが積層されていてもよい。このようなフィルムとしては、位相差板、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、液晶表示装置では、液晶セルから視認側に射出される光の偏光状態を適宜に変換して、視野角特性を向上させる等の目的で、画像表示セル(液晶セル)と偏光板との間に光学補償フィルムが用いられる場合がある。有機EL表示装置では、外光が金属電極層で反射して鏡面のように視認されることを抑制するために、セルと偏光板との間に1/4波長板が配置される場合がある。また、偏光板の視認側に1/4波長板を配置して、出射光を円偏光とすることにより、偏光サングラスを装着した視認者に対しても、適切な画像表示を視認させることができる。
【0025】
光学フィルム10の表面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。また、光学フィルム10の表面には、粘着剤層21,22を付設する前に、接着性向上等を目的として表面改質処理が行われてもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。また適宜に帯電防止層を形成することもできる。
【0026】
[第一粘着剤層]
光学フィルム10の一方の面には、画像表示セル61との貼り合せに用いるための第一粘着剤層21が設けられる。第一粘着剤層は、画像表示装置に用いられる粘着剤であるため、光学的透明性に優れるものが好ましく用いられる。具体的には、第一粘着剤層21は、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。後述する第二粘着剤層22もヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0027】
第一粘着剤層21の厚みは、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。第一粘着剤層21の温度23℃における貯蔵弾性率は、0.02MPa〜2MPaが好ましく、0.05
MPa〜1.5MPaがより好ましく、0.07MPa〜1MPaがさらに好ましい。
【0028】
第一粘着剤層が上記の厚みと貯蔵弾性率を有することにより、粘着剤層が耐久性に優れるとともに、画像表示セルとの貼り合わせ時の気泡混入等の不具合を抑制することができる。また、第一粘着剤層の厚みおよび弾性率が上記範囲であれば、第一保護シート31と粘着剤層21との界面の応力を、粘着剤層21の弾性ひずみ応力として、粘着剤層21と光学フィルム10との界面に伝播させることができる。そのため、吸湿膨張等に起因する光学フィルム10の寸法変化が生じた場合でも、第一保護シートの支持力により、カールの発生を抑制できる。
【0029】
第一粘着剤層21は、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力(以下、単に「残留応力」と称する場合がある)が、1N/cm
2〜50N/cm
2であることが好ましい。第一粘着剤層21の残留応力S
1(N/cm
2)は、6〜45がより好ましく、10〜40がさらに好ましい。粘着剤の残留応力は、引張試験機により、引張速度200mm/分で歪み300%(元長の4倍)となるまで変形させた後、180秒間経過後の応力(引張応力)である。残留応力は貯蔵弾性率と相関を有しており、貯蔵弾性率が大きいほど、残留応力が大きくなる傾向がある。また、貯蔵弾性率が同等である場合、ベースポリマーの分子量が大きいほど、ベースポリマーの構成モノマーにおける分枝構造モノマーの比率が小さい(直鎖状モノマーの比率が大きい)ほど、またゲル分率(架橋度)が大きいほど、粘着剤の粘性が小さくなり、残留応力が大きくなる傾向がある。
【0030】
[第二粘着剤層]
光学フィルム10の他方の面には、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材70との貼り合せに用いるための第二粘着剤層22が設けられる。このように、画像表示セルとの貼り合せに用いられる第一粘着剤層21の反対面に、前面透明部材との貼り合せのための第二粘着剤層22が設けられた両面粘着剤付き光学フィルムを用いれば、層間充填のために、光学フィルム10上に、液状接着剤や別途のシート状粘着剤層を付設する工程を設ける必要がない。そのため、画像表示装置の製造工程を簡略化できるとともに、接着剤(粘着剤)のはみ出しによる汚染が防止される。
【0031】
第二粘着剤層22の厚みは、50μm以上である。第二粘着剤層の厚みを50μm以上とすることにより、前面透明部材70の印刷部76付近での気泡や、画面周縁部の表示ムラの発生を抑制できる。第二粘着剤層22の厚みは、70μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。第二粘着剤層22の厚みの上限は特に限定されないが、画像表示装置の軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0032】
第二粘着剤層22は、温度23℃、歪み300%の条件の引張応力緩和試験により測定される180秒後の残留応力S
2(N/cm
2)が、0.5〜
2.1である。第二粘着剤層22の残留応力S
2(N/cm
2)は、0.7
以上が好ましく、0.9
以上がより好ましく、1
以上がさらに好ましい。第二粘着剤層22の残留応力S
2(N/cm
2)が0.5以上であれば、粘着剤付き光学フィルムを所定サイズにカットする際や、貼り合せの際の加圧等によるフィルムの端面から粘着剤のはみ出しが抑制される。前述のように、第二粘着剤層22の厚みが50μm以上であり、残留応力S
2(N/cm
2)が6以下であれば、粘着剤に段差吸収性を持たせ、印刷段差付近での気泡の発生や表示ムラを抑制できる。
【0033】
第二粘着剤層22は、23℃における貯蔵弾性率が、0.04MPa〜0.4MPaであることが好ましく、0.06MPa〜0.2MPaであることがより好ましい。第二粘着剤層の貯蔵弾性率が上記範囲であれば、光学フィルムや前面透明部材との適度の接着性を示すとともに、残留応力S
2を前述の範囲とすることができる。
【0034】
[保護シート]
第一粘着剤層21および第二粘着剤層22のそれぞれには、保護シート31,32が剥離可能に貼着される。保護シート31,32は、光学フィルムが実用に供され、画像表示セル61や前面透明部材70と貼り合せられるまでの間、粘着剤層21,22の露出面を保護する目的で用いられる。さらに、本発明においては、保護シートの厚みを所定範囲とすることにより、光学フィルムのカールを抑制できる。
【0035】
保護シート31,32としては、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。保護シートは、23℃における引張弾性率が1GPa〜6GPa程度であることが好ましい。引張弾性率が上記範囲であれば、粘着剤の表面を保護するための十分な機械的強度と、適度の柔軟性を兼ね備える。また、本発明においては、両面粘着剤付き光学フィルムのカールを抑制するためにも、保護シートの引張弾性率が上記範囲であることが好ましい。
【0036】
保護シート31,32の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類が用いられる。中でも、二軸延伸により機械的強度が高められたポリエステルフィルムが好ましく、機械的強度やハンドリング性に優れかつ安価であることから、保護シート31,32としては二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。粘着剤付き光学フィルムを実用に供する際に、粘着剤層かららの剥離性を高めるために、保護シート31,32は、粘着剤層21,22との接着面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されたものが好ましく用いられる。
【0037】
第一粘着剤層21上に仮着される第一保護シート31の厚みYは、20μm以上である。第一保護シート31の厚みが20μm以上であれば、粘着剤層に対する高い保護力を有するとともに、保護シートの支持力により両面粘着剤付きフィルムのカールを抑制できる。両面粘着剤付き光学フィルムのカールを抑制する観点からは、第一保護シート31の厚みは大きいほど好ましい。一方、第一保護シート31の厚みが大きくなると、光学フィルムと画像表示セルとの貼り合わせの際に、第一粘着剤層21上の保護シート31を選択的に剥離することが困難となる場合がある。そのため、画像表示セルとの貼り合わせ作業の容易性を考慮すると、第一保護シート31の厚みは80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、42μm以下がさらに好ましい。
【0038】
画像表示装置の形成工程において、光学フィルムと画像表示セルとの貼り合わせが先に行われ、前面透明部材との貼り合わせが後に行われる場合、第二保護シート32が第二粘着剤層22上に仮着された状態を保持したままで、第一粘着剤層21上の第一保護シート31を剥離する必要がある。このような場合でも、第一保護シート31の厚みを小さくすることにより、第一保護シートのみを選択的に剥離できる。同様の観点から、第一保護シート31の厚みYは、第二保護シート32の厚みZよりも小さいことが好ましい。
【0039】
第二粘着剤層22上に仮着される第二保護シート32の厚みZは、45μm以上である。第二粘着剤層22は、第一粘着剤層21に比べて柔らかく流動性が高いため、粘着剤層表面の変形を防止するために、保護シートの厚みを大きくすることが好ましい。第二粘着剤層に対する保護性や、両面粘着剤付き光学フィルムのカールを抑制する観点からは、第二保護
シートの厚みは大きいほど好ましい。一方、厚みが過度に大きくなると、ハンドリング性の低下やコスト増大の要因となる。そのため、第二保護シート32の厚みZは、130μm以下が好ましい。
【0040】
前述のように、両面粘着剤付きフィルムは、粘着剤層上に保護シートが仮着された状態で高湿度環境に曝されると、図
3B
2に模式的に示すように、前面透明部材を貼り合わせる側(粘着剤層
322側)の面を凸とするカールが発生しやすい。これに対して、本発明においては、第一保護シートの厚みYおよび第二保護シートの厚みZを所定範囲とすることにより、カールの発生を抑制できる。
【0041】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルム50は、第二粘着剤層22の残留応力S
2(N/cm
2)、第一保護シート31の厚みY(μm)、および第二保護シート32の厚みZ(μm)が、Y+0.17Z+10.6S
2≧63を満たすことが好ましい。Y+0.17Z+10.6S
2の値が63以上であれば、両面粘着剤付き光学フィルムが高湿度環境に曝され吸湿した場合でも、カールの発生を抑制できる。カール量をさらに小さくする目的において、Y+0.17Z+10.6S
2の値は70以上が好ましく、75以上がより好ましい。Y+0.17Z+10.6S
2の値が大きいほど、カール量が小さくなる傾向がある。一方、前述のようにS
2、YおよびZには上限があるため、Y+0.17Z+10.6S
2の上限値も自ずと定められる。
【0042】
上記のように、本発明においては、第二粘着剤層22の残留応力S
2および保護シート31,32の厚みY,Zを大きくすることにより、両面粘着剤付き光学フィルムのカールを抑制できる。第二粘着剤層22に段差吸収性を持たせ、端面からの粘着剤のはみ出しを抑制するために、第二粘着剤層の残留応力S
2が所定範囲内に設定される。また、粘着剤の特性は、画像表示装置への要求特性や仕様等によって定められているため、変更が困難である。一方、保護シートは最終製品には含まれない工程部材であり、厚みの異なるフィルムを容易に入手できる。そのため、上記の式に基づいて、保護シート31,32の厚みY,Zを調整することにより、カールを抑制することが好ましい。
【0043】
<カール抑制の推定メカニズム>
後に実施例(両面粘着剤付き光学フィルムの作製例)を用いて説明するように、カールを抑制するためのS
2、Y、Zの関係式は、実験的に導出されたものである。S
2、Y、Zを所定範囲とすることによりカールが抑制できるメカニズムは定かではないが、以下のように推定される。
【0044】
両面粘着剤付きフィルムにおけるカールの発生原因は、光学フィルムが吸湿膨張等によって寸法変化した際の表裏の応力の不均衡に起因すると考えられる。
図3Aに示す片面粘着剤付き光学フィルム250では、光学フィルム210の一方の面に、画像表示セルとの貼り合わせに用いられる粘着剤層221が付設されており、その上に保護シート231が設けられている。光学フィルム210の他方の面には、表面に弱粘着剤層229が付設されたセパレータ232が設けられている。
【0045】
上述のように、偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムやセルロース系フィルム等の吸水性の高い材料を含んでいるため、高湿度環境に曝されると吸湿により膨張する。そのため、偏光板を含む光学フィルムは、ポリエチレンテレフタレート等からなる保護シートに比べて、高湿度環境下での寸法変化が大きい。フィルム210が膨張すると、フィルム210と粘着剤層221との界面およびフィルム210と粘着剤層229との界面で引張応力が生じる。粘着剤の流動性が小さく貯蔵弾性率が大きい場合は、粘着剤層221,229と光学フィルム210との界面における引張応力が、保護シート231,232との界面に伝播する。粘着剤層221,229との界面での引張応力を受けた保護シート231,232は、その反力として、粘着剤層221,229に対して圧縮応力を及ぼす。この圧縮応力が粘着剤層221,22
9を介してフィルム210との界面に伝播する。
【0046】
粘着剤層221および
弱粘着剤層229はいずれも厚みが小さく、流動性が低いため、応力緩和が生じ難い。そのため、光学フィルム210の表裏いずれにおいても、粘着剤層との界面では、光学フィルム210の膨張による引張応力と保護シート231,232からの反力(圧縮応力)とが釣り合っており、カールが発生し難い。
【0047】
図3B1に示す両面粘着剤付き光学フィルム350では、光学フィルム310の一方の面には、画像表示セルとの貼り合わせのための硬い粘着剤層321が付設されている。そのため、粘着剤層321側の面では、
図3Aの片面粘着剤付き光学フィルムの場合と同様に、光学フィルム310の膨張による引張応力と、保護シート331からの圧縮応力とが釣り合っている。
【0048】
一方、光学フィルム310の他方の面(画像表示装置形成時の視認側の面)には、前面透明部材との貼り合わせ(層間充填)のために、厚みが大きく残留応力が小さい(すなわち、柔らかく応力緩和し易い)粘着剤層322が付設されている。この粘着剤層322は、段差吸収性を持たせるために応力緩和し易く設計されているため、光学フィルム310と粘着剤層3
22との界面での引張応力は、保護シート332に伝播する際に緩和(減衰)している。また、これに対する反力(圧縮応力)も粘着剤層232で緩和されて、粘着剤層322と光学フィルム310との界面に伝わるため、光学フィルム310の膨張による引張応力が、保護シート3
22からの圧縮応力よりも大きくなる。
【0049】
このように、光学フィルム310の表裏で応力の不均衡が生じると、両面粘着剤付き光学フィルム350は、
図3B2に示すように、粘着剤層322側の面を凸としてカールを生じる。粘着剤層322の残留応力Sが小さいほど応力が緩和されやすいため、カールが大きくなる傾向がある。また、保護シートの厚みが小さいほど、光学フィルムの吸湿膨張による引張応力に対する保護シートからの反力(保護シートによる支持力)が小さく、かつ曲げモーメントが小さいために、カールが生じ易くなると考えられる。
【0050】
これに対して、本発明の両面粘着剤付き光学フィルムでは、第二粘着剤層の残留応力S
2に応じて、第二保護シートの厚みZを大きくすることにより、光学フィルム10の寸法変化に伴う引張応力に対抗できる反力を及ぼし、カールを抑制できると考えられる。また、第一保護シート31は、第一の粘着剤層に比べて薄くて硬い第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と一体化されており、第一保護シート31の厚みYが大きいと、両面粘着剤付き光学フィルム全体としての曲げ剛性が高められるため、Yを増加させることによるカール抑制効果が、Zを増加させる場合よりも大きいと考えられる。
【0051】
[粘着剤の組成]
第一粘着剤層21および第二粘着剤層22は、前述の各特性を有していれば、粘着剤の組成は特に限定されない。第一粘着剤層としては、光学フィルムと画像表示セルとの貼り合わせに用いられる各種の粘着剤を用いることができる。第一粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0052】
第二粘着剤層22を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。
【0053】
光学的透明性および接着性に優れた粘着剤としては、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。アクリル系粘着剤は、粘着剤組成物の固形分全量に対するアクリル系ベースポリマーの含有量が50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。アクリル系ベースポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることにより、粘着剤に柔軟性を持たせ、残留応力を小さくすることができる。分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。なお、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を併用することもできる。また、これらの分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルと併用して用いられてもよい。
【0057】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマー単位を含有することが好ましい。ベースポリマーが架橋可能な官能基を有する場合、ベースポリマーの熱架橋や光硬化等による粘着剤のゲル分率の上昇を容易に行い得る。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。中でも、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーが、モノマーユニットとしてヒドロキシ基含有モノマーを有する場合、ベースポリマーの架橋性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、透明性の高い粘着剤が得られる。
【0058】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリルや(4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル)‐メチルアクリレート等が挙げられる。
【0059】
ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量は、ベースポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、0.01重量%〜30重量%が好ましく、0.1重量%〜25重量%がより好ましく、0.5重量%〜20重量%がさらに好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットの含有量が上記範囲を超えると、粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、残留応力S
2が前述の範囲を上回り、応力緩和性が低下する場合がある。
【0060】
アクリル系ベースポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマーユニット以外に、窒素含有モノマー等の極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーユニットに加えて、窒素含有モノマーユニット等の高極性モノマーユニットを含有することにより、粘着剤が高い接着性と保持力を有するとともに、高温高湿環境下での白濁が抑制される。
【0061】
窒素含有モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。中でも、N−ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。粘着剤中に窒素含有モノマーユニットを含有することで、粘着剤の凝集力を向上させて粘着シートの被着体に対する接着性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁を抑制できる。窒素含有モノマーユニットの含有量は、ベースポリマーの構成モノマーユニット全量に対して、3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜30重量%がさらに好ましい。
【0062】
アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、多官能モノマー成分が含まれていてもよい。共重合モノマー成分として多官能モノマーを有することで、残留応力が高められる傾向がある。そのため、多官能モノマー成分の種類や含有量を変化させることで、第二粘着剤層22の残留応力S
2を所望の範囲に調整できる。多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーである。多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、3重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。多官能性モノマーの使用量が3重量%を超えると、粘着剤の残留応力が過度に大きくなり、段差部付近での気泡が発生しやすくなる。
【0063】
上記の(メタ)アクリル系ベースポリマーは、上記の各モノマー成分を、溶液重合、UV重合、塊状重合、乳化重合等の公知の重合方法により調製できる。粘着剤の透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、または活性エネルギー線重合法(例えばUV重合)が好ましい。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。
【0064】
上記のアクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤としては、光重合を開始するものであれば特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等)を用いることができる。
【0065】
ベースポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、レジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させることができる。そのため、連鎖移動剤が用いられることにより、反応系中のラジカル濃度を低下させることなく、ベースポリマーの分子量の増大が抑止され、残留応力の小さい粘着シートを得ることができる。連鎖移動剤としては、例えば、α−チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。
【0066】
アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、単官能モノマーに加えて多官能モノマーを用いる場合、先に単官能モノマーを重合して、低重合度のプレポリマー組成物を形成し(予備重合)、プレポリマー組成物のシロップ中に多官能モノマーを添加して、プレポリマーと多官能モノマーとを重合(後重合)してもよい。このように、プレポリマーの予備重合を行うことによって、多官能モノマー成分に起因する分枝点を、ベースポリマー中に均一に導入できる。また、プレポリマー組成物と未重合のモノマー成分との混合物(粘着剤組成物)を基材上に塗布した後、基材上で後重合を行って、粘着シートを形成してもよい。プレポリマー組成物は低粘度で塗布性に優れるため、プレポリマー組成物と未重合モノマーとの混合物である粘着剤組成物を塗布後に基材上で後重合を行う方法によれば、粘着シートの生産性が高められると共に、粘着シートの厚みを均一とすることができる。
【0067】
プレポリマー組成物は、例えば、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分A」と称する)と重合開始剤とを混合した組成物(「プレポリマー形成用組成物」と称する)を、部分重合(予備重合)させることにより調製できる。なお、プレポリマー形成用組成物中の上記モノマー成分Aは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや極性基含有モノマー等の単官能モノマー成分であることが好ましい。モノマー成分Aは、単官能モノマーのみならず、多官能モノマーを含有していてもよい。例えば、ベースポリマーの原料となる多官能モノマー成分の一部をプレポリマー形成用組成物に含有させ、プレポリマーを重合後に多官能モノマー成分の残部を添加して後重合に供してもよい。
【0068】
プレポリマー形成用組成物は、モノマー成分Aおよび重合開始剤以外に、必要に応じて連鎖移動剤等が含まれていてもよい。プレポリマー形成用組成物の重合方法は特に限定されないが、反応時間を調整して、プレポリマーの分子量(重合率)を所望の範囲とする観点から、UV光等の活性光線照射による重合が好ましい。予備重合に用いられる重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。
【0069】
プレポリマーの重合率は特に限定されないが、基材上への塗布に適した粘度とする観点から、3〜50重量%が好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。プレポリマーの重合率は、光重合開始剤の種類や使用量、UV光等の活性光線の照射強度・照射時間等を調整することによって、所望の範囲に調整できる。なお、プレポリマーの重合率は、プレポリマー組成物を130℃で3時間加熱した際の加熱(乾燥)前後の重量から、下記式により算出される。なお、予備重合が溶液重合により行われる場合、プレポリマー組成物の全重量から溶媒の量を差し引いたものを、下記式における乾燥前重量として、重合率が算出される。
プレポリマー組成物の重合率(%)=乾燥後の重量/乾燥前の重量 ×100
【0070】
上記プレポリマー組成物に、アクリル系ベースポリマーを構成するモノマー成分(「モノマー成分B」と称する)、および必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、シランカップリング剤、架橋剤等を混合して、粘着剤組成物を形成する。モノマー成分Bは、多官能モノマーを含有することが好ましい。モノマー成分Bは、多官能モノマーに加えて、単官能モノマーを含有していてもよい。
【0071】
後重合に用いられる光重合開始剤や連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の光重合開始剤や連鎖移動剤を用いることができる。予備重合の際の重合開始剤がプレポリマー組成物中で失活せずに残存している場合は、後重合のための重合開始剤の添加を省略できる。
【0072】
上記ベースポリマーは、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、予備重合後や、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。
【0073】
架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常、0〜5重量部の範囲であり、好ましくは0〜3重量部である。架橋剤の含有量が多すぎると、貯蔵弾性率G’の増大に伴って、tanδが低下し、気泡の混入や表示ムラを生じる場合がある。そのため、架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
【0074】
粘着剤組成物中に架橋剤を含有する場合、被着体との貼り合わせ前に、加熱による架橋処理が行われ、架橋構造が形成されることが好ましい。架橋処理における加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0075】
接着力の調整を目的として、粘着剤組成物中に、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤は、1種を単独で、あるいはは2種以上を併用して用いることができる。粘着剤組成物にシランカップリング剤が添加される場合、その添加量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対し通常0.01〜5.0重量部程度であり、0.03〜2.0重量部程度であることが好ましい。
【0076】
粘着剤組成物には、必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。
【0077】
上記例示の各成分の他、粘着剤組成物は、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、粘着剤の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0078】
第二粘着剤層22は、光硬化型または熱硬化型の粘着剤でもよい。第二粘着剤層22として、光硬化型または熱硬化性の粘着剤が用いられることで、光学フィルム10と前面透明部材70とを第二粘着剤層22を介して貼り合せた後に、第二粘着剤層22を硬化させて、粘着剤層の貯蔵弾性率および残留応力を大きくすることができる。そのため、画像表示装置が高温環境に晒された場合も、粘着剤の流動が抑制され、気泡の発生や剥離が生じ難い長期信頼性のある接着性を実現することができる。特に、前面透明部材との貼り合わせ後の硬化が容易であることから、光硬化型の粘着剤が好ましい。
【0079】
光硬化性の粘着剤は、ベースポリマーに加えて、光硬化性成分を含有する。光硬化性成分としては、炭素‐炭素二重結合(C=C結合)を有するラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく用いられる。ラジカル重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、ベースポリマーのヒドロキシ基等の官能基と結合していてもよい。硬化性の粘着剤は、重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤)を含むものが好ましい。
【0080】
粘着剤組成物中にラジカル重合性化合物がモノマーまたはオリゴマーとして存在する場合、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物が好ましく用いられる。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のC=C結合を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、多官能アクリレートのように、1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物が好ましい。
【0081】
ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基とラジカル重合性官能基とを有するラジカル重合性化合物を、ベースポリマーと混合することにより、ベースポリマーにラジカル重合性官能基を導入し、粘着剤組成物を硬化型粘着剤とすることができる。ベースポリマーの官能基と結合可能な官能基としては、イソシアネート基が好ましい。イソシアネート基は、ベースポリマーのヒドロキシ基とウレタン結合を形成するため、ベースポリマーへのラジカル重合性官能基の導入を容易に行い得る。
【0082】
光硬化の方法としては、光硬化性化合物と光重合開始剤を含有する系に紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。特に、光感度の高さや、選択できる材料が豊富であることから、エチレン性不飽和化合物と光ラジカル発生剤を用いたシステムが好ましい。第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、光硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、2〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。光硬化性化合物の含有量を前記範囲とすることで、硬化前の残留応力を低く保ちつつ、硬化後の接着信頼性を高めることができる。
【0083】
[光学フィルム上への粘着剤層の形成]
光学フィルム10に第一粘着剤層21および第二粘着剤層22を形成する方法としては、例えば、剥離処理したセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、必要に応じて架橋処理を行って粘着剤層を形成した後に、光学フィルム10上に粘着剤層を転写する方法、または光学フィルム10に粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、粘着剤層を光学フィルム上に形成する方法等が挙げられる。光学フィルム上に粘着剤層を転写する方法では、粘着剤層の形成に用いたセパレータを、そのまま保護シートとして用いてもよい。光学フィルム10上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成する場合は、溶媒を乾燥除去後の粘着剤層上に、保護シートが設けられる。
【0084】
粘着剤層の形成方法としては、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。 塗布後の粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。
【0085】
[カッティング]
粘着剤付き光学フィルムは、必要に応じて所望サイズにカットされて実用に供される。一般には、長尺状に形成された粘着剤付き光学フィルムが、画像表示装置のサイズ(画面サイズ)と合致する製品サイズにカットされる。カット方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃および皿刃等のカッターや、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。
【0086】
粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤層21,22の表面に保護シート31,32が貼着されているため、粘着剤層の表面は保護されている。一方で、粘着剤層の側面は外部に露出した状態となっている。そのため、カッティング時に第二粘着剤層22がカット刃に付着したり、糊欠けや糊汚れを生じ易くなる傾向がある。糊欠けや糊汚れを防止するために、粘着剤層の側面を、光学フィルムの側面や保護シートの側面よりも内側に設けてもよい。例えば、光学フィルム上への粘着剤層の付設面積を制御する方法、粘着剤層を付設後に粘着剤層部分だけを取り除く方法等により、粘着剤層の側面を、光学フィルムの側面や保護シートの側面よりも内側に存在させることができる。また、両面粘着剤付き光学フィルムを保護シート付設面から加圧して、粘着剤層の端部を光学フィルム端部からはみ出させた状態でカットした後に、圧力を開放することにより、粘着剤層の側面を、光学フィルムの側面や保護シートの側面よりも内側に存在させることができる。
【0087】
[画像表示装置]
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、
図2に模式的に示すように、偏光板を含む光学フィルム10の一方の面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル61を備え、他方の面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。当該画像表示装置において、画像表示セル61は、第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と貼り合せられ、前面透明部材70は、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10と貼り合せられる。
【0088】
前面透明部材70としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0089】
画像表示装置の形成において、両面粘着剤付き光学フィルム50は、画像表示のサイズに合わせた製品サイズに事前にカットされたものが好適に用いられる。画像表示セル61と両面粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法、および前面透明部材70と両面粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法は特に限定されず、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22のそれぞれの表面に貼着された保護シート31,32を剥離した後、各種公知の方法により貼り合せることができる。 本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、第一粘着剤層と第二の粘着剤層を備えるため、画像表示装置形成のための貼り合せ工程において、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、製造プロセスが簡略化される。
【0090】
貼り合せの順序は特に限定されず、画像表示セル61と両面粘着剤付き光学フィルム55の第一粘着剤層21との貼り合せが先に行われてもよく、前面透明部材70と両面粘着剤付き光学フィルム55の第二粘着剤層22との貼り合せが先に行われてもよい。また、両者の貼り合せを同時に行うこともできる。貼り合せの作業性や、光学フィルムの軸精度を高める観点からは、第一粘着剤層21の表面から保護シート31を剥離後、光学フィルム10と画像表示セル61とが第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一貼合工程が行われ、その後に、第二粘着剤層22の表面から保護シート32を剥離し、光学フィルム10と前面透明部材70とが第二粘着剤層22を介して貼り合せられる第二貼合工程が行われることが好ましい。
【0091】
画像表示セル61との貼り合わせが先に行われる場合、視認側(第二粘着剤層22側)を凸とするカールが生じていると、光学フィルムと画像表示セルの位置合わせや軸合わせが困難となり、貼り合わせの作業性が低下する傾向がある。本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、カールの発生が抑制されているため、画像表示セルとの貼り合わせの作業性に優れている。
【0092】
光学フィルムと前面透明部材とが貼り合せられた後には、第二粘着剤層22と前面透明部材70の平板71部分との界面や、印刷部76等の非平坦部近辺の気泡を除去するための脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。本発明においては、第二粘着剤層の残留応力が所定範囲であるため、第二粘着剤層が段差等の非平坦部の形状に追従しやすく、前面透明部材が非平坦部を有する場合でも、空隙の発生が抑制される。
【0093】
加熱により脱泡が行われる場合、加熱温度は、一般的に25℃〜150℃程度、好ましくは30℃〜130℃、より好ましくは35℃〜120℃、さらに好ましくは40℃〜100℃の範囲である。また、加圧が行われる場合、圧力は一般に0.05MPa〜2MPa程度、好ましくは0.1MPa〜1.5MPa,より好ましくは0.2MPa〜1MPaの範囲内である。
【0094】
第二粘着剤層を構成する粘着剤が、硬化性の粘着剤である場合、光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せが行われた後、第二粘着剤層の硬化が行われることが好ましい。第二粘着剤層が硬化されることによって、画像表示装置における光学フィルム10と前面透明部材70との接着の信頼性を高めることができる。光学フィルムと前面透明部材との貼り合せ後に、気泡除去等の目的で加熱や加圧が行われる場合、第二粘着剤層の硬化は、気泡除去の後に行われることが好ましい。気泡除去後に第二粘着剤層の硬化が行われることによって、ディレイバブルの発生が抑制される。
【0095】
第二粘着剤層の硬化方法は特に限定されない。光硬化が行われる場合は、前面透明部材70を通して紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。前面透明部材70が印刷部76のような不透明部を有している場合、印刷部の直下には活性光線が照射されないが、光が照射された部分で発生したラジカルの移動等によって、非照射部分においても粘着剤の硬化はある程度進行する。
【0096】
以上説明したように、両面粘着剤付き光学フィルムを用いることで、層間充填構造を採用する画像表示装置の製造において、貼り合せ工程を簡略化できる。本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、カールの発生が抑制され、かつ端面からの粘着剤のはみ出しが抑制されているため、貼り合わせの作業性に優れる。さらに、第二粘着剤層の残留応力S
2が所定範囲内であるため、光学フィルムと前面透明板やタッチパネルとの間の気泡の混入を抑制し、高品質の画像表示装置を提供できる。
【実施例】
【0097】
以下に両面粘着剤付き光学フィルムの作製例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0098】
<偏光板>
ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板(偏光度99.995%)を用いた。偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。
【0099】
<セル側貼合用粘着剤組成物の調製>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート97部、アクリル酸3部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル233部
を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー溶液(固形分を100重量部とする)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製):0.8重量部、およびシランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学社製):0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。
【0100】
<視認側貼合用粘着剤組成物A〜Kの調製>
モノマー成分として、イソステアリルアクリレート(ISA):40重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):40重量部、N−ビニルピロリドン(NVP):19重量部、および4‐ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):1重量部、ならびに光重合開始剤として1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.1重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線を照射して、重合率10%のプレポリマー組成物を得た。このプレポリマーに、多官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、連鎖移動剤としてα‐チオグリセロール(TGR)、およびシランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学社製)を、表1に示す配合量で添加した後、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0101】
[両面粘着剤付き光学フィルムの作製例]
(セル側粘
着シートの形成)
セパレータ(表面が離型処理された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム;厚みY=25μm、38μmまたは50μm)の剥離処理面に、上記のセル側貼合用粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾
燥させて溶媒を除去した。乾燥後の粘着剤層の表面に軽剥離セパレータの剥離処理面側を貼り合わせ、50℃で48時間加熱して架橋処理を行い、セル側粘着シートを作製した。
【0102】
この粘着シートの貯蔵弾性率は、1.4×10
5Paであった。貯蔵弾性率は、セパレータを剥離した粘着シートを複数積層して厚み約1.5mmとしたものを測定用サンプルとして、Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」を用い、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、23℃における貯蔵弾性率を読み取ることにより求めた。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:−50〜150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0103】
(視認側粘着シートの形成)
セパレータ(厚みZ=50μm、75μmまたは125μm)の剥離処理面に、上記の粘着剤A〜Kを厚み150μmになるように塗布して塗布層を形成し、この塗布層上に、軽剥離セパレータの剥離処理面側を貼り合わせた。その後、軽剥離セパレータ側の面上から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm
2になるように位置調節したブラックライトにより、積算光量が3000mJ/cm
2となるまでUV照射を行って、重合を進行させ、厚み150μmのアクリル系粘着シートを作製した。
【0104】
(両面粘着剤付き光学フィルムの作製)
上記セル側粘着シートおよび視認側粘着シートの表面から軽剥離セパレータを剥離し、上記偏光板の一方の面に上記セル側粘着シート、他方の面に視認側粘着シートを貼り合わせた。視認側粘着シートの粘着剤の種類(A〜K)、セル側粘着シート上のセパレータの厚み(Y=25μm、38μm、50μm)、および視認側粘着シート上のセパレータの厚み(Z=50μm,75μm,125μm)の組み合わせを表2に示すように変更して、試料No.1〜88の両面粘着剤付き光学フィルムを作製した。
【0105】
(評価用疑似パネルの作製)
各作製例の両面粘着剤付き光学フィルムを、44mm×84mmにカットし、セル側粘着剤層上のセパレータを剥離した後、ガラス板(0.7mm×50mm×100mm)の中央部に貼り合わせた。その後、ガラス板に貼り合わせられた両面粘着剤付き光学フィルムの視認側粘着剤層表面のセパレータを剥離し、黒色インクが周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm×50mm×100mm、インク印刷幅:端部から10mm、インク印刷厚み:15μm)を、真空貼り合せ装置で貼り合せた後(温度25℃、圧力0.3MPa、圧力保持時間5秒)、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)を行い、評価用疑似パネルを作製した。
【0106】
[評価]
(カール測定)
各作製例の両面粘着剤付き光学フィルムを、70mm×100mmに切り出し、温度25℃、湿度98%の環境試験室に48時間投入後に取り出した。セル側粘着シート側の面を上にして、温度25℃、湿度50%の環境下で水平面上に2時間静置した後、フィルムの4隅それぞれの水平面からの高さを測定し、4点の平均値を、吸湿後のフィルムのカールとした。表2では、カールが2mm未満のものを◎、2mm以上3mm未満のものを〇、3mm以上5mm未満のものを△、5mm以上のものを×で示している。
【0107】
(気泡)
各作製例の評価用疑似
パネルの黒色インク印刷部の内側近傍を倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、粘着剤中の気泡の有無を確認した。また、85℃のオーブンに48時間投入後、同様の方法で気泡の有無を確認した。表2では、加熱前後のいずれにおいても気泡が確認されなかったものを○、いずれかで気泡が確認されたものを×で示している。
【0108】
(糊はみだし
)
85℃のオーブン
に投入前の評価用疑似
パネルの両面粘着剤付きフィルムの端部からの糊はみだし長さを倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察した。表2では、最大はみだし長さが0.3mm以内のものを○、0.3mmを超えるものを×で示している。
【0109】
[評価結果]
粘着剤A〜Kの組成および粘着シートの残留応力を表1に示す。残留応力の測定には、粘着シートから、40mm×40mmのシート片を切り出し、円柱状に丸めたものを測定試料として用いた。引張試験機にてチャック間距離を20mmに合わせて、上記測定試料をセットし、引張速度200mm/分、温度23℃で、歪み300%(チャック間距離は80mm)まで引っ張り、チャック位置を固定し、180秒間経過後の応力(引張応力)を残留応力とした。
【0110】
【表1】
【0111】
各作製例に用いた視認側粘着剤の種類および残留応力、セル側および視認側の保護シートの厚み、段差吸収性、糊はみ出し、ならびにカールの評価結果を表2に示す。
【表2】
【0112】
表2の結果から、視認側粘着剤層の残留応力S
2が0.3N/cm
2である粘着剤Aを用いた場合はフィルム端面からの粘着剤のはみ出しが生じており、S
2が8.0N/cm
2である粘着剤Kを用いた場合は、段差吸収性が小さく印刷段差付近で気泡が発生することが分かる。また、S
2が大きいほど吸湿後のカールが小さく、S
2が同じ場合は、セル側セパレータの厚みY、および視認側セパレータの厚みZのいずれか一方または両方を大きくすることにより、吸湿後のカールが小さくなることが分かる。
【0113】
表2における視認側粘着剤層の残留応力S
2、セル側セパレータの厚みY、および視認側セパレータの厚みZと、吸湿後のカールとの関係を抜粋したものを表3Aおよび表3Bに示す。表3Aでは、セル側セパレータの厚みYを固定して視認側セパレータの厚みZを変化させた場合に、カール評価が△(3mm以上)から○(3mm未満)となる境界を太枠で囲っている。表3Bでは、視認側セパレータの厚みZを固定してセル側セパレータの厚みYを変化させた場合に、カール評価が△から○となる境界を太枠で囲っている。これらの太枠に対応する視認側粘着剤層の残留応力S
2とセパレータの厚み(YまたはZ)との関係をプロットしたものを、それぞれ
図4Aおよび
図4Bに示す。
【0114】
【表3A】
【0115】
【表3B】
【0116】
カール抑制効果に関して、
図4AではS
2とZが線型的な関係を有しており、
図4Bでは、S
2とYが線型的な関係を有していることがわかる。また、
図4Aの2本の直線の傾きはほぼ同じであり、
図4Bの3本の直線の傾きはほぼ同じであり、S
2:Y:Z=10.6:1:0.17の相間比を有している。これらの結果を基に、前面透明部材と光学フィルムとの貼り合わせに用いられる粘着剤の特性(残留応力)に応じて、セパレータの厚みを調整することにより、両面粘着剤付き光学フィルムの吸湿時のカールを抑制できることが分かる。