特許第6580319号(P6580319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580319
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】加温販売用果汁入り容器詰め飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20190912BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20190912BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20190912BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20190912BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   A23L2/02 B
   A23L2/00 C
   A23L2/00 B
   A23L2/00 E
   A23L2/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-227251(P2014-227251)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-86771(P2016-86771A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
(72)【発明者】
【氏名】石川 良子
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−035753(JP,A)
【文献】 特開2011−072293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/SCISEARCH/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と、
ショ糖と、
麦芽糖と、
オリゴ糖と、
糖アルコールと、
を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料であって、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の前記果汁の含有率が0.5%以上10%以下であり、
前記果汁が、柑橘類果実の果汁を含み、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下であり、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、かつ
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下であることを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
【請求項2】
高甘味度甘味料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
【請求項3】
果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、オリゴ糖と、糖アルコールと、を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法であって、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の前記果汁の含有率が0.5%以上10%以下であり、
前記果汁が、柑橘類果実の果汁を含み、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となり、かつ前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製し、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製することを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
【請求項4】
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料が、高甘味度甘味料を含むことを特徴とする、請求項に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温販売用果汁入り容器詰め飲料、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法および加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加温販売用果汁入り容器詰め飲料においては、当該飲料に対して甘味を付与するために、ショ糖(グラニュー糖や砂糖等)を主な甘味成分として配合することが通常であった(特許文献1等)。
しかし、ショ糖を主な甘味成分として配合した加温販売用果汁入り容器詰め飲料は、甘味がべたついてしまい、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を十分に味わうことができないものとなりがちであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−132898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいの加温販売用果汁入り容器詰め飲料、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法および色調劣化抑制方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、果汁と、
ショ糖と、
麦芽糖と、
オリゴ糖と、
糖アルコールと、
を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料であって、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の前記果汁の含有率が0.5%以上10%以下であり、
前記果汁が、柑橘類果実の果汁を含み、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下であり、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、かつ
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下であることを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料が提供される。
【0006】
さらに、本発明によれば、果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、オリゴ糖と、糖アルコールと、を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法であって、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の前記果汁の含有率が0.5%以上10%以下であり、
前記果汁が、柑橘類果実の果汁を含み、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となり、かつ前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製し、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製することを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法が提供される。
【0007】
さらに、本発明によれば、果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法であって、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となり、かつ前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製し、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製することを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいの加温販売用果汁入り容器詰め飲料、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法および色調劣化抑制方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<加温販売用果汁入り容器詰め飲料>>
本発明における加温販売用果汁入り容器詰め飲料は、果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む。そして、本発明に係る加温販売用果汁入り容器詰め飲料において、当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対するショ糖の含有量をXとし、当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値は、質量比で、0.3以上3以下である。さらに、本発明に係る加温販売用果汁入り容器詰め飲料は、クエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、かつ甘味度がショ糖換算で12以上21以下である。こうすることで、果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいの加温販売用果汁入り容器詰め飲料を実現することができる。なお、本発明において、「加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量」は、容器に詰められた加温販売用果汁入り飲料の全量を意味し、容器の重量を含まない。
【0010】
本発明において「加温販売用果汁入り容器詰め飲料」とは、市場に流通させる際に、たとえば、50℃以上70℃以下の温度に加温して保存、販売されることを前提とする容器詰め飲料を指す。以下、本発明について、「加温販売用果汁入り容器詰め飲料」を、「加温販売用果汁入り飲料」または「飲料」と称して説明する。
【0011】
本発明において「甘味度」とは、甘味料が含まれる飲料の甘味の強さを意味し、飲料の甘味の度合いを示す数値である。
具体的には、ショ糖1質量%の甘味度を1とし、この甘味度と等しい甘さを導き出す濃度をその甘味料の甘味度(ショ糖換算値)1とした。飲料に配合した各甘味成分について、それぞれ下記式(1)によりショ糖換算の甘味度を算出し、その合計値を飲料の甘味度(ショ糖換算値)とした。
式(1):(飲料に含まれる甘味成分の配合量(質量%))×(上記甘味成分に関する単位配合量当たりのショ糖換算の甘味度の値)
【0012】
本発明において「酸度」とは、飲料に含まれる酸の質量パーセント濃度であり、酸味の度合いを示す数値である。この「酸度」は、飲料中に含まれるすべての酸の量から算出される数値である。
本発明において飲料の「酸度」は、飲料に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(質量%)として表した数値を指し、フェノールフタレイン指示薬と水酸化ナトリウムとを用いて以下の方法で滴定することにより算出したものとする。具体的には、200mL三角フラスコに対して5〜15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて適宜希釈した後、上記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌する。次いで、三角フラスコ内の飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mLビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを上記飲料溶液に添加しながら滴定試験を実施する。この滴定試験は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点を終点とする。そして、クエン酸酸度(質量%)の値は、上記方法で行った滴定試験結果に基づき、次式によって算出する。なお、上記滴定試験は、フェノールフタレイン指示薬に代えて、水素イオン濃度計を用いて実施してもよい。この場合、滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液のpHが8.1になった時とする。
クエン酸酸度(質量%)=A×f×100/W×0.0064 (2)
[上記式(2)において、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を示し、fは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価を示し、Wは、飲料試料の質量(g)を示す。また、上記式(2)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
【0013】
本発明における加温販売用果汁入り飲料は、飲料に配合するショ糖と麦芽糖の配合量を質量比で特定の割合に制御するとともに、酸度と甘味度をそれぞれ特定の値に制御したことで得られる相乗効果により、当該飲料の呈味を改善できるものである。本発明のように果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいの加温販売用果汁入り飲料を実現するためには、飲料に配合するショ糖と麦芽糖の配合量を質量比とともに、飲料自体の酸度と甘味度のバランスを制御することが特に重要である。
【0014】
具体的に、本発明に係る加温販売用果汁入り飲料において、当該飲料全量に対するショ糖の含有量をXとし、当該飲料全量に対する麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値は、質量比で0.3以上3以下であるが、好ましくは、0.5以上2.5以下である。こうすることで、甘味のべたつきを高度に抑え、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を存分に味わうことのできる加温販売用果汁入り飲料を実現することができる。特に、本発明における飲料においては、ショ糖と麦芽糖の含有量を上記X/Yの値に制御することで、後述するハンターLab表色系より算出される色差ΔE、および色度の差Δbの値を低く抑えることができる。
【0015】
本発明における加温販売用果汁入り飲料は、上述したように、クエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、かつ甘味度が12以上21以下である。本発明においては、上述した飲料の酸度と甘味度のバランスを制御することにより、爽やかであり、かつ果実本来のみずみずしい旨味を味わうことのできる、酸味と甘味をバランスよく両立した飲みごたえのある濃厚な味わいの果汁入り飲料を実現することができる。
ここで、従来の加温販売用果汁入り飲料は、クエン酸酸度が0.3質量%以下であり、かつ甘味度がショ糖換算で7〜15程度であるものが一般的であった。
【0016】
本発明における加温販売用果汁入り飲料のクエン酸酸度と甘味度の値は、クエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、甘味度が12以上21以下であるが、上記飲料のクエン酸酸度と甘味度の値は、クエン酸酸度が0.5質量%以上0.7質量%以下であり、かつ甘味度が16以上21以下であるのが好ましい。また、本発明における飲料においては、飲料のクエン酸酸度と甘味度の値のバランスを上述した数値範囲となるように制御することで、より一層呈味に優れた酸味と甘味をバランスよく両立した飲みごたえのある濃厚な味わいの果汁入り飲料を実現することができる。
【0017】
本発明における加温販売用果汁入り飲料のpHは、好ましくは、2以上4.6未満であり、より好ましくは、2.5以上4.0未満である。こうすることで、甘味のべたつきを抑え、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)をより一層引き立たせた呈味の加温販売用果汁入り飲料を実現することができる。
本発明における加温販売用果汁入り飲料は、上述したように従来の飲料と比べて酸度が高いものである。そのため、本発明における飲料は、当該飲料中に含まれているナトリウム量が、好ましくは、30mg/100mL以上90mg/100mL未満、より好ましくは35mg/100mL以上80mg/100mL以下である。また、従来の加温販売用果汁入り飲料は、飲料中に含まれているナトリウム量が25mg/100mL程度であるものが一般的であった。
【0018】
本発明における加温販売用果汁入り飲料を、60℃で14日間恒温静置保管した場合の、保管する前後での当該飲料の液色の変化について、分光測色計を用いてハンターLab表色系より算出される色差ΔEおよび色度の差Δbによって評価することができる。甘味のべたつきを抑え、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を存分に味わうことができるとともに、色差ΔEおよび色度の差Δbの値が小さい保存安定性の観点においても優れた飲料を実現することができる。なお、色差ΔEの値は、以下の式により算出することができる。なお、下記式において、ΔLは、保管前後での飲料の明度の差を表す。ΔaおよびΔbは、色度の差を表す。そのため、分光測色計を用いれば、ΔEの値にくわえて、ΔaとΔbの値についても同時に測定することができる。
式:ΔE={(ΔL)+(Δa)+(Δb)}0.5
【0019】
本発明における飲料の製造に使用する水は、公知の加温販売用飲料の製造に用いられている水であれば、適宜、選択して使用することができる。その具体例としては、市水、井水、蒸留水、ミネラルウォーター、イオン交換水、脱気水等が挙げられる。中でも、イオン交換水または脱気水を用いることが好ましい。こうすることで、飲料を市場に流通させて消費者が喫飲するまでの間に行われる加温によって、当該飲料中の糖の一部が褐変してしまうことを抑制することができる。
【0020】
本発明における加温販売用果汁入り飲料を封入する容器は、飲料業界で公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、缶容器、ボトル容器、カップ容器、パウチ容器、袋容器等が挙げられる。さらに、容器の容量は、一般的には、100mL以上1L以下程度である。容器の形状や色彩も特に限定されず、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定することができる。
【0021】
以下、加温販売用果汁入り飲料の各配合成分について、詳細に説明する。
【0022】
<果汁>
本発明における果汁は、飲料業界で公知の果汁成分であれば、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、果実の搾汁液(ストレート果汁)、上記搾汁液を濃縮した濃縮果汁、上記濃縮果汁を希釈した還元果汁等が挙げられる。また、本発明における果汁は、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法等の手法により清澄処理した透明果汁であっても、不溶性固形分を含む果汁であってもよいが、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を存分に味わう観点から、不溶性固形分を含む果汁であることが好ましい。上記不溶性固形分を含む果汁は、一般に、混濁果汁、コミニュテッド果汁、又はピューレと呼ばれる果汁を指す。上記混濁果汁は、従来の加温販売用果汁入り飲料に配合されている透明果汁を得るために実施されるペクチン分解酵素処理を行うことなく得られた、果実由来のペクチンやパルプ分などがコロイド状をなして混濁している果汁を指す。上記コミニュテッド果汁は、混濁果汁の中でも、粉砕された果実の果皮やオイル分も含む果汁である。そのため、コミニュテッド果汁を飲料中に配合した場合には、果実本来のみずみずしい味わいを存分に引き出すことができる。また、ピューレは、果実や野菜の搾汁液を裏ごししたものを指す。
【0023】
上述した果汁に含まれる不溶性固形分としては、たとえば、果皮、果実パルプ分、果実の種等の水に対して不溶性の固形成分等の成分が挙げられる。ここで、果実パルプ分とは、たとえば、果実を破砕し、果汁等の液状成分を篩別及び/又は遠心分離により分離して得られる果汁中に含まれる不溶性固形分や、果実から果汁を搾汁した後に得られる果汁残渣を細砕して得られる不溶性固形分等のことを指す。なお、柑橘類果実に含まれるじょうのう膜などの薄皮部分は、上述した果実パルプ分に含まれる。
【0024】
果汁の具体例としては、オレンジ果汁、みかん果汁、温州ミカン果汁、ネーブル果汁、ポンカン果汁、夏ミカン果汁、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、ライム果汁、ハッサク果汁、伊予柑果汁、ユズ果汁、スダチ果汁、カムカム果汁、シークヮーサー果汁、カボス果汁、マンダリン果汁、タンジェリン果汁、テンプルオレンジ果汁、タンジェロ果汁、カラマンシー果汁等の柑橘類果実の果汁、いちご果汁、ラズベリー果汁、ブルーベリー果汁、ブラックベリー果汁、クランベリー果汁等のベリー類に属する果実由来の果汁、りんご果汁、和梨果汁、洋なし果汁、モモ果汁、スモモ果汁、ウメ果汁、ビワ果汁、ブドウ果汁、マスカット果汁、メロン果汁、キウイ果汁、スイカ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、パパイヤ果汁等が挙げられる。中でも、柑橘類果実の果汁であることが好ましく、レモン果汁、ユズ果汁、グレープフルーツ果汁、ミカン果汁、伊予柑果汁、スダチ果汁、及びカボス果汁からなる群より選択される1種以上の果汁であるとさらに好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明における加温販売用果汁入り容器詰め飲料中の果汁含有率は、好ましくは、当該飲料全量に対して0.5%以上10%以下であり、より好ましくは、当該飲料全量に対して0.5%以上7%以下であり、最も好ましくは、当該飲料全量に対して1%以上5%以下である。こうすることで、甘味のべたつきを抑え、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を存分に味わうことができ、かつ酸味と甘味をバランスよく両立した飲みごたえのある濃厚な味わいの果汁入り飲料を実現することができる。
【0026】
ここで、「果汁含有率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)、もしくは酸度(質量%)の基準に基づいて換算できる。例えば、ぶどう果汁はJAS規格が11°Bxであるから、55°Bxの濃縮ぶどう果汁を飲料中に0.2質量%配合した場合、果汁含有率は1%となる。なお、果汁の果汁含有率をJAS規格の糖用屈折計示度に基づいて換算する際には、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。また、通常果汁量は質量%(すなわち飲料100gあたりの果汁量(g))で表される。また、果汁の種類がレモン果汁である場合には、JAS規格に示される酸度がクエン酸酸度で4.5(質量%)であるため、クエン酸酸度が30(質量%)の濃縮レモン果汁を飲料中に0.15質量%配合した場合、果汁含有率は1%となる。
【0027】
<甘味成分>
本発明における飲料には、ショ糖および麦芽糖が甘味成分として配合されている。本発明における飲料には、以上に説明した2成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲であれば、公知の加温販売用飲料の製造に用いられている甘味成分を、適宜、選択して使用することができる。その具体例としては、果糖ぶどう糖液糖、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。なお、以上に述べた甘味成分は、飲料の甘味度をショ糖換算で12以上21以下に制御できれば、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明における飲料には、ショ糖および麦芽糖にくわえて、高甘味度甘味料を配合してもよい。こうすることで、従来から加温販売用果汁入り飲料の分野において公知の課題として挙げられていた、ショ糖を加温することによって引き起こされる品質劣化や液色の褐変等の問題が生じることを抑制することができる。また、甘味成分として、高甘味度甘味料を使用することにより、飲料のカロリー量を低減させることも可能である。高甘味度甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア抽出物等が挙げられる。なお、以上に述べた甘味成分は、飲料の甘味度をショ糖換算で12以上21以下に制御できれば、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、本発明における飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製できるのであれば、たとえば、甘味度がショ糖換算で200のアセスルファムカリウムを、単独で使用してもよいし、甘味度がショ糖換算で600のスクラロースと上記アセスルファムカリウムとを併用してもよい。
【0029】
本発明における飲料には、ショ糖および麦芽糖にくわえて、オリゴ糖を配合してもよい。こうすることで、甘味のべたつきをより一層効果的に抑制することができる。この理由としては、オリゴ糖という甘味成分の甘味度が、ショ糖と比べて低いことが挙げられる。なお、本発明においてオリゴ糖とは、ブドウ糖や果糖などの単糖が数個結合した糖類を意味する。本発明の飲料に配合できるオリゴ糖は、一般に飲食に供されるものであれば、適宜、選択して使用することができる。その具体例としては、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー又はパラチノースなどが挙げられる。市販品のオリゴ糖としては、たとえば、日食フジオリゴG67(日本食品化工社製)を使用することができる。
【0030】
本発明における飲料には、ショ糖および麦芽糖にくわえて、糖アルコールを配合してもよい。こうすることで、甘味のべたつきをより一層効果的に抑制することができる。この理由としては、糖アルコールの甘味度が、ショ糖と比べて低いことが挙げられる。本発明の飲料に配合できる糖アルコールは、一般に飲食に供されるものであれば、適宜、選択して使用することができる。その具体例としては、エリスリトール、ソルビトール,キシリトール,マンニトール等の単糖アルコール類、マルチトール,イソマルチトール,ラクチトール等の2糖アルコール類、マルトトリイトール,イソマルトトリイトール,パニトール等の3糖アルコール類、オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコール類などが挙げられる。また、風味面の観点から、本発明における飲料に配合する糖アルコールは、還元水飴であることが好ましい。市販品の糖アルコールとしては、たとえば、エスィー20(物産フードサイエンス社製)やスイートNT(物産フードサイエンス社製)を使用することができる。
【0031】
<その他の配合成分>
本発明における飲料には、飲料に許容される各種添加剤、たとえば乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等)、酸化防止剤(トコフェロール、塩酸システイン等)、大豆多糖類、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、グアーガム、キサンタンガム、発酵セルロース等の増粘剤、色素(マリーゴールド色素、カロチノイド色素、アントシアニン色素、カラメル色素、各種合成着色料等)、香料、酸味料(無水クエン酸、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類等)、保存料、防腐剤、防かび剤などを含有してもよい。また、健康機能の増強を期待して、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE等)やミネラル類(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等)、食物繊維等の各種機能成分を添加してもよい。
【0032】
従来の加温販売用果汁入り飲料においては、ショ糖を主な甘味成分として配合することが一般的であった。このような加温販売用果汁入り飲料は、甘味がべたついてしまい、果汁本来のみずみずしい風味感(果実感)を十分に味わうことができないものとなりがちであった。
【0033】
これに対し、本発明における加温販売用果汁入り飲料は、当該飲料に配合するショ糖と麦芽糖の配合量を質量比で特定の割合に制御するとともに、クエン酸酸度と甘味度をそれぞれ特定の値に制御しているため、果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいの加温販売用果汁入り飲料を実現することができる。
【0034】
<<加温販売用果汁入り容器詰め飲料の製造方法>>
本発明における飲料の製造方法は、たとえば、以下の方法を採用することができる。具体的には、果汁またはその希釈液に対して各種添加物を添加・混合した後、甘味度と酸度を所定の水準を満たすよう調製し、必要に応じて、溶液のpHを調整する。その後、容器に充填する前もしくは後に、殺菌処理を行なう。殺菌処理は、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌などの方法を採用することができる。
【0035】
<<加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法>>
本発明に係る加温販売用果汁入り容器詰め飲料は、果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む。そして、本発明に係る呈味改善方法は、上述した各種成分を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料において、クエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となるように調製し、かつ甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製するとともに、加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対するショ糖の含有量をXとし、加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製するものである。こうすることで、飲みごたえのある濃厚な味わいの果汁飲料の呈味を、従来の飲料と比べて、良好なものとすることができる。
【0036】
<<加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法>>
本発明に係る加温販売用果汁入り容器詰め飲料は、果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む。そして、本発明に係る色調劣化抑制方法は、上述した各種成分を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料において、クエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となるように調製し、かつ甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製するとともに、加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対するショ糖の含有量をXとし、加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製するものである。こうすることで、加温販売用果汁入り容器詰め飲料を保管している際に、当該飲料の色調が変化することを効果的に抑制することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
果汁と、
ショ糖と、
麦芽糖と、
を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料であって、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下であり、
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下であり、かつ
当該加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下であることを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
<2>
高甘味度甘味料を含むことを特徴とする、<1>に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
<3>
オリゴ糖を含むことを特徴とする、<1>または<2>に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
<4>
糖アルコールを含むことを特徴とする、<1>乃至<3>のいずれか一に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
<5>
前記果汁が、柑橘類果実の果汁を含むことを特徴とする、<1>乃至<4>のいずれか一に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料。
<6>
果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法であって、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となり、かつ前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製し、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製することを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
<7>
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料が、高甘味度甘味料を含むことを特徴とする、<6>に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
<8>
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料が、オリゴ糖を含むことを特徴とする、<6>または<7>に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
<9>
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料が、糖アルコールを含むことを特徴とする、<6>乃至<8>のいずれか一に記載の加温販売用果汁入り容器詰め飲料の呈味改善方法。
<10>
果汁と、ショ糖と、麦芽糖と、を含む加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法であって、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料におけるクエン酸酸度が0.4質量%以上0.7質量%以下となり、かつ前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料の甘味度がショ糖換算で12以上21以下となるように調製し、
前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記ショ糖の含有量をXとし、前記加温販売用果汁入り容器詰め飲料全量に対する前記麦芽糖の含有量をYとした時、X/Yの値が、質量比で、0.3以上3以下となるように調製することを特徴とする、加温販売用果汁入り容器詰め飲料の色調劣化抑制方法。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
表1に示す配合に従って飲料原料を混合して得られたレモン果汁入り飲料を加熱殺菌した後、280mlペットボトルにホットパック充填することで、実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を作製した。
【0040】
具体的には、実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料は、表1に示す配合となるように、それぞれ以下の方法で作製した。
市販のレモン透明果汁(Brix:40以上、クエン酸酸度:30質量%)を水で希釈して果汁溶液を調製した後、得られた上記果汁溶液に対して、ショ糖としてグラニュー糖、ハイマルトース70(日本コーンスターチ社製)、日食フジオリゴG67(日本食品加工社製)、エスイー20(物産フードサイエンス社製)、スクラロース、およびアセスルファムカリウムを添加混合した。次いで、得られた混合溶液に対して無水クエン酸、マリーゴールド色素および香料を添加して、クエン酸三ナトリウムによってpHが3.4となるように調整した。このようにして得られたレモン果汁入り飲料は、65℃で10分相当以上で加熱殺菌した後、280mlペットボトルにホットパック充填してから、室温まで冷却し、後述する評価に用いた。なお、レモン果汁の果汁含有率は、3%となるように調整した。
【0041】
得られたレモン果汁入り容器詰め飲料中の各配合成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0042】
得られた各レモン果汁入り容器詰め飲料について、下記に示す評価を行った。なお、評価に用いたレモン果汁入り容器詰め飲料は、評価前に60℃に加温してから使用した。
【0043】
各レモン果汁入り容器詰め飲料に対し、行った評価について以下に詳説する。
【0044】
(評価項目)
官能評価試験1(爽やかさ):実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲することにより、以下の評価基準に従って評価を実施し、その平均点を求めた。
0点:爽やかさが、ない
2点:爽やかさが、わずかにある
4点:爽やかさが、ややある
6点:爽やかさが、ある
8点:爽やかさが、かなりある
【0045】
官能評価試験2(果汁感の強さ):実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲することにより、以下の評価基準に従って評価を実施し、その平均点を求めた。
0点:果汁感が、ない
2点:果汁感が、わずかにある
4点:果汁感が、ややある
6点:果汁感が、ある
8点:果汁感が、かなりある
【0046】
官能評価試験3(全体の風味):実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲することにより、以下の評価基準に従って評価を実施し、その平均点を求めた。
0点:悪い
2点:やや悪い
4点:どちらとも言えない
6点:やや良い
8点:良い
【0047】
官能評価試験4(濃さ):実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲することにより、以下の評価基準に従って評価を実施し、その平均点を求めた。
0点:濃さが、ない
2点:濃さが、わずかにある
4点:濃さが、ややある
6点:濃さが、ある
8点:濃さが、かなりある
【0048】
官能評価試験5(レモン風味の強さ):実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲することにより、以下の評価基準に従って評価を実施し、その平均点を求めた。
0点:レモン風味の強さが、ない
2点:レモン風味の強さが、わずかにある
4点:レモン風味の強さが、ややある
6点:レモン風味の強さが、ある
8点:レモン風味の強さが、かなりある
【0049】
pH:実施例1〜4および比較例1〜3のレモン果汁入り容器詰め飲料を製造した直後に、ガラス電極pHメーター(東亜ディーケーケー社製)を用いて、それぞれ20℃でのpHを測定した。
【0050】
クエン酸酸度:200mL三角フラスコに対して5〜15gの飲料を正確に秤量し、水を用いて適宜希釈した後、上記飲料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌した。次いで、三角フラスコ内の飲料溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、25mLビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを上記飲料溶液に添加しながら滴定試験を実施した。なお滴定試験の終点は、三角フラスコ内の飲料溶液の色が、30秒間赤色を持続した点とした。上記方法で行った滴定試験結果に基づき、各レモン果汁容器詰め飲料のクエン酸酸度を、次式によって算出した。
クエン酸酸度(質量%)=A×f×100/W×0.0064 (2)
[上記式(2)において、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を示し、fは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価を示し、Wは、飲料試料の質量(g)を示す。また、上記式(2)において乗算している「0.0064」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する無水クエン酸の質量(g)を指す。]
【0051】
甘味度(ショ糖換算値):ショ糖1質量%の甘味度を1とし、この甘味度と等しい甘さを導き出す濃度をその甘味料の甘味度(ショ糖換算値)1として、以下の方法で算出した。具体的には、飲料に配合した各甘味成分について、それぞれ下記式(1)によりショ糖換算の甘味度を算出し、その合計値を飲料の甘味度(ショ糖換算値)とした。
式(1):(飲料に含まれる甘味成分の配合量(質量%))×(上記甘味成分に関する単位配合量当たりのショ糖換算の甘味度の値)
【0052】
色差ΔE:実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料それぞれについて、60℃で14日間恒温静置保管する前と、上記恒温静置保管した後に、光源がD65である分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−3500d)を用いて、測定視野10°という条件下、ハンターLab表色系より算出される色差Eの値を測定した。得られた測定結果に基づき、各加温販売用レモン果汁入り飲料について上記特定の条件で恒温静置保管する前後での色差ΔEの値を算出した。
【0053】
色度の差Δb:実施例1〜4および比較例1〜3の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料それぞれについて、60℃で14日間恒温静置保管する前と、上記恒温静置保管した後に、光源がD65である分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−3500d)を用いて、測定視野10°という条件下、ハンターLab表色系より算出される色度bの値を測定した。得られた測定結果に基づき、各加温販売用レモン果汁入り飲料について上記特定の条件で恒温静置保管する前後での色度の差Δbの値を算出した。
【0054】
糖度(R.Brix):実施例1〜4および比較例1〜3のレモン果汁入り容器詰め飲料について、それぞれデジタル屈折計Rx−5000α(アタゴ社製)を使用して、20℃における糖用屈折計の示度を20℃で測定した。なお、測定値は、飲料における可溶性固形分量を示す指標となる。
【0055】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料は、いずれも果汁本来の風味に優れ、かつ飲みごたえのある濃厚な味わいを実現していたのに対し、比較例の加温販売用レモン果汁入り容器詰め飲料は、要求水準を満たすものではなかった。