特許第6580324号(P6580324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580324
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】加飾成形品及び加飾成形品ユニット
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   B32B33/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-254990(P2014-254990)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112833(P2016-112833A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博紀
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−035127(JP,A)
【文献】 特開2006−281740(JP,A)
【文献】 特開平10−242340(JP,A)
【文献】 特開平03−021485(JP,A)
【文献】 特開2010−58112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 59/00−59/18
C08J 7/04− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑面を有する基体と、
前記基体の表面が粗面化されることで形成された加飾部と、
前記加飾部を含む前記基体の表面を被覆する塗装層と、を有し、
前記塗装層は光沢を有する有色の材料であって、
前記加飾部を艶消し面とする
ことを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾成形品を複数有する
ことを特徴とする加飾成形品ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成形品、加飾成形品ユニット及び加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金型等で量産される成形品の表面にそれぞれ異なる多様な模様を形成するためには、模様の数に応じて複数の金型を製作する必要があり、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、模様付きフィルムを金型内に配置してインモールド成形することで、多様な模様を有する成形品を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法によれば、単一の金型設備で多様な模様を有する成形品を量産することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に係る方法では、模様付きフィルムを作成する工程、模様付きフィルムを金型内に配置する工程及びインモールド成形後に模様付きフィルムを成形品から剥離する工程等が必要であり、製造工程が煩雑化して製造コストを低減できない可能性がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、簡便な方法で表面に模様が形成された加飾成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の加飾成形品によれば、平滑面を有する基体と、前記基体の表面が粗面化されることで形成された加飾部と、前記加飾部を含む前記基体の表面を被覆する塗装層と、を有し、前記塗装層は光沢を有する有色の材料であって、前記加飾部を艶消し面とする。



【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、簡便な方法で表面に模様が形成された加飾成形品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る加飾成形品を例示する斜視図である。
図2図1のA−A断面概略図である。
図3】実施形態に係るキーボードを例示する図である。
図4】実施形態に係る加飾成形品の製造方法のフローチャートを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
(加飾成形品)
図1は、実施形態に係る加飾成形品100を例示する斜視図である。また、図2は、図1のA−A断面概略図である。
【0012】
図1及び図2に示されるように、加飾成形品100は、基体10、基体10の表面に形成されている加飾部20、加飾部20を含む基体10の表面を被覆する塗装層30(図1には不図示)を有する。
【0013】
基体10は、矩形平板状の樹脂成形品であり、例えば金型等を用いて形成される。基体10の表面は、本実施形態では凹凸が無い平滑面となっており、例えばその表面が研磨されていてもよい。
【0014】
なお、基体10は、樹脂に限らず例えば金属等の材料を用いて形成されてもよい。また、基体10の形状は図示のものには限られず、例えば矩形箱型状、円筒状、球状等の任意の形状を有してもよい。
【0015】
加飾部20は、レーザ加工により基体10の表面が粗面化された部分であり、例えばYAGレーザ、CO2レーザ等を基体10の表面に照射することで、基体10の表面を粗面化することで形成される。加飾部20は、図2に示されるように、表面に微小な凹凸を有する。加飾部20の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、基体10の加飾部20が形成されていない平滑面の表面粗さよりも大きくなるように形成される。加飾部20は、本実施形態では基体10の表面を縁取る枠型状に形成されているが、異なる形状であってもよく、例えば文字や図形、模様等を形作るように形成される。
【0016】
また、加飾部20は、図2に示されるように、基体10の表面から盛り上がるように形成されている。このように、加飾部20が基体10の表面から盛り上がるように形成されることで、加飾部20によって形成される文字や図形、模様等の視認性が向上する。なお、加飾部20は、レーザ加工により基体10を研削することで、基体10の表面から窪む溝状に形成されてもよい。
【0017】
加飾部20を含む基体10の表面には、図2に示されるように、塗料が塗布されて塗装層30が形成されている。基体10の表面を塗装することで、基体10の加飾部20以外の平滑表面は光沢塗装面となり、粗面状の加飾部20は艶消し塗装面となる。このように、基体10の平滑表面と加飾部20との粗さを異ならせることによって、各部の光の反射度合に差異が生じて加飾部20が視認容易になる。
【0018】
塗装層30は、図2に示されるように、加飾部20を含む基体10の表面を被覆するように塗料が塗布されることで形成される。塗装層30は、基体10の表面と加飾部20とで光沢差が生じ易く、加飾部20の視認性が向上するように形成されることが好ましい。塗装層30は、例えば銀色等の光沢を有する色の塗料で形成されるが、異なる色の塗料で形成されてもよい。
【0019】
また、塗装層30は、例えばアクリル樹脂系やウレタン樹脂系の塗料を用いて形成されるが、これらとは異なる材料系の塗料が用いられてもよい。また、塗装層30は、例えば着色フィルム等が基体10の表面に貼合されることで形成されてもよい。
【0020】
なお、塗装層30が厚すぎると、加飾部20表面の凹凸が埋められて平滑化されてしまい、基体10の表面との粗さの差異が低減して加飾部20の視認性が低下する可能性があるため、塗装層30は可能な範囲で薄く形成されることが好ましい。
【0021】
上記したように、加飾成形品100は、例えば単一の金型を用いて量産される基体10の表面に、レーザ加工によって例えば文字や図形等の任意形状の加飾部20を設けることで、表面に文字や図形等が形成される。したがって、模様に応じた複数の金型等を製作することなく、簡便な方法で且つコストを低減して多様な模様を有する加飾成形品100を形成することができる。
【0022】
(加飾成形品ユニット)
図3は、複数の加飾成形品を有する加飾成形品ユニットとしてのキーボード200を例示する図である。
【0023】
キーボード200は、加飾成形品ユニットの一例であり、それぞれ異なる模様が形成されたキートップ110を複数有する。キートップ110は、加飾成形品の一例であり、それぞれ樹脂で形成されている基体11の表面に、異なる模様の加飾部21が形成されている。なお、キートップ110には、図3には不図示の文字や図形等も加飾部21として形成することができる。
【0024】
キーボード200は、図3に示されるように、所定形状の加飾部21を有するキートップ110が所定位置に配置されることで、複数の加飾部21が組み合わされて模様210が形成されている。
【0025】
図3に示される例では、円形の図柄が左右に並ぶ模様210が形成されているが、図3とは異なる形状の加飾部21を有するキートップ110を配列して任意の形状の模様を形成することができる。
【0026】
なお、複数の加飾成形品の加飾部が組み合わされて模様が形成される加飾成形品ユニットとして、加飾成形品としてのキートップ110を複数有するキーボード200を例示したが、加飾成形品ユニットはこれに限られるものではない。
【0027】
このような加飾成形品ユニットとしては、例えば加飾成形品として複数のボタン等を有する電卓、携帯電話、各種操作パネル等であってもよい。加飾成形品としての複数のボタン等に所定形状の加飾部を形成し、各ボタンを所定位置に配置して加飾部が組み合わされた模様を形成することで、加飾成形品ユニットとしての製品の意匠性を高めることが可能になる。
【0028】
(加飾成形品の製造方法)
図4は、実施形態に係る加飾成形品100の製造方法のフローチャートを例示する図である。
【0029】
本実施形態に係る加飾成形品100の製造方法では、図4に示されるように、まずステップS101にて、基体10が成形される。基体10が樹脂の場合には、例えば金型等を用いて成形される。また、基体10が金属等の場合には、例えば切削等により形成される。なお、基体10は、例えば成形された後に研磨等の表面処理が実行されてもよい。
【0030】
次にステップS102にて、レーザ加工により基体10の表面に加飾部20が形成される。続いてステップS103では、加飾部20を含む基体10の表面が塗装されて塗装層30が形成される。
【0031】
上記した加飾成形品100の製造方法によって、例えば単一の金型を用いて量産される基体10の表面に異なる形状の加飾部20を形成し、多様な模様を有する加飾成形品100を容易且つコストを低減して生産することが可能になる。
【0032】
以上で説明したように、本実施形態によれば、レーザ加工により任意形状の加飾部を形成できるため、多様な模様を有する加飾成形品を容易且つコストを低減して製造することが可能になる。また、異なる形状の加飾部を有する複数の加飾成形品がそれぞれ所定位置に配置された加飾成形品ユニットでは、複数の加飾部の組み合わせにより多様な模様を形成することが可能になり意匠性が向上する。
【0033】
以上、実施形態に係る加飾成形品、加飾成形品ユニット及び加飾成形品の製造方法について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10,11 基体
20,21 加飾部
30 塗装層
100 加飾成形品
110 キートップ(加飾成形品)
200 キーボード(加飾成形品ユニット)
210 模様
図1
図2
図3
図4