(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、予測システム100のシステム構成の一例を概略的に示す。予測システム100は、センサ102と、ユーザ端末104と、情報提供サーバ110とを備える。本実施形態において、情報提供サーバ110は、取得部122と、情報格納部124と、補完部126と、モデル格納部132と、モデル決定部134と、予測部142とを備える。情報提供サーバ110の各要素は、互いに情報を送受してよい。
【0017】
予測システム100及び情報提供サーバ110は、情報処理装置の一例であってよい。センサ102、ユーザ端末104及び取得部122の少なくとも1つは、因子情報取得部、現象情報取得部、位置情報取得部、時間情報取得部、及び、予定情報取得部の少なくとも1つの一例であってよい。情報格納部124は、サンプル格納部の一例であってよい。センサ102に測定結果は、特定の現象の実績情報に対応する、当該特定の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つに関する実績情報の一例であってよい。
【0018】
本実施形態において、センサ102及びユーザ端末104と、情報提供サーバ110とは通信回線10を介して情報を送受する。通信回線10は、有線通信の伝送路であってもよく、無線通信の伝送路であってもよく、無線通信の伝送路及び有線通信の伝送路の組み合わせであってもよい。通信回線10は、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、インターネッ及び専用回線又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
本実施形態において、予測システム100は、特定の現象の過去の実績情報と、当該現象に寄与する因子の過去の実績情報と、当該現象のモデルとを用いて、当該現象の予測値を算出する。現象のモデルとしては、数式モデル、数理モデルなどを例示することができる。予測システム100は、特定の現象の過去の実績情報と、当該現象に寄与する因子の過去の実績情報と、当該因子の将来の予定情報と、当該現象のモデルとを用いて、当該現象の予測値を算出してもよい。実績情報に含まれる1以上の情報、予定情報に含まれる1以上の情報、及び、現象の予測値の少なくとも1つは、数値などの定量的データであってもよく、何らかのイベントの発生の有無などの非数値データであってもよく、「多い」又は「少ない」などの定性値データであってもよい。
【0020】
例えば、ユーザが、ウイルス、微生物又は動植物を育成する場合において、予測システム100は、ウイルス、微生物又は動植物の生育状況を予測する。ウイルス、微生物又は動植物の育成としては、(a)微生物又は植物の栽培、(b)動物の飼育又は養殖、(c)ウイルス、微生物、細胞などの培養、(d)ウイルス、微生物、細胞などの培養による各種物質の生産などを例示することができる。上記の生育状況としては、(a)動植物の生育状況、(b)ウイルス、微生物、細胞などの増殖状況、(c)ウイルス、微生物、細胞などの培養による各種物質の生産状況などを例示することができる。予測システム100は、生育ステージの各段階への到達時期を予測してもよく、収量又は生産量、品質、必要な労働力又は経費、売上、及び、これらの経時変化の少なくとも1つを予測してよい。
【0021】
センサ102は、予測システム100による予測の対象となる現象、及び、現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つを測定する。一実施形態において、センサ102は、測定結果を情報提供サーバ110に送信してよい。測定結果は、特定の期間における各因子の測定値の平均値、最小値及び最大値の少なくとも1つを含んでもよい。例えば、1日の平均気温、最高気温及び最低気温を含んでよい。センサ102は、測定結果を、測定場所の位置情報と対応付けて、情報提供サーバ110に送信してもよい。センサ102は、測定結果を、測定を実施した時刻又はタイミングを示す情報と対応付けて、情報提供サーバ110に送信してもよい。
【0022】
センサ102の測定結果は、現象の実績情報、及び、当該現象に寄与する1種類以上の因子の実績情報の少なくとも1つの一例であってよい。実績情報は、時系列データであってよい。測定場所は、現象が起きている位置の一例であってよい。測定を実施した時刻又はタイミングを示す情報は、時間情報の一例であってよい。
【0023】
測定場所の位置情報は、測定場所の位置座標を示す情報であってもよく、当該測定場所を含む特定のエリアの地理的範囲を示す情報であってもよく、当該エリアに含まれる1以上の位置のそれぞれの位置座標を示す情報であってもよい。位置情報としては、住所情報、GPS情報などを例示することができる。1以上のセンサ102のそれぞれについて、各センサを一意に識別するセンサ識別情報と、各センサの位置又は測定位置を特定する情報とが対応付けられている場合、位置情報は、1以上のセンサ102のそれぞれを一意に識別する識別情報であってもよい。
【0024】
例えば、予測システム100による予測の対象が、ウイルス、微生物又は動植物の生育状況である場合、センサ102は、育成場所の温度、水分、pH、電気伝導度、全炭素、全窒素、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、全リンなどの少なくとも1つを測定するためのセンサであってよい。育成場所としては、土壌、培地、栽培容器、養殖場、水槽などを例示することができる。
【0025】
センサ102は、育成場所の気温、湿度、日射量、日照時間、風速、降雨量、気圧などの気象情報を測定するためのセンサであってよい。センサ102は、育成場所の室温、水温、湿度、照度、照明の光量、照明の照射時間などの環境情報を測定するためのセンサであってよい。センサ102は、肥料若しくは飼料の供給量、及び、農薬、抗生物質、ホルモン剤などの薬品の散布量の少なくとも一方を測定するためのセンサであってもよい。
【0026】
センサ102は、育成場所を撮影する撮像素子などの光学センサであってもよい。これにより、例えば、ウイルス、微生物又は動植物の生育状況に関する情報を取得することができる。
【0027】
ウイルス、微生物又は動植物の生育状況に関連する現象の情報は、現象の実績情報の一例であってよい。ウイルス、微生物又は動植物の生育状況に関連する現象としては、ウイルス若しくはウイルス株、微生物若しくはその細胞株、又は、動植物若しくはその細胞株の色、形、大きさ及び品質の少なくとも1つの変化、並びに、生育イベントを例示することができる。生育イベントとしては、生育ステージの特定の段階への到達、物理的な損傷の発生、病害虫の発生などを例示することができる。生育ステージの特定の段階としては、出芽、分けつ、幼穂形成、出穂、開花、落花、着果、摘果、傾穂、結球、成熟、完熟などの段階を例示することができる。
【0028】
本明細書において、「時刻」は、日時に限定されず、日付であってもよい。また、タイミングとしては、生育イベントのような各種イベントが起きたタイミング、特定の作業が実施されたタイミング、育成期間のような特定の期間が経過したタイミングなどを例示することができる。特定の作業としては、播種、移植、水やり、施肥、給餌、薬品散布、収穫、種菌の接種又は種付け、芽出し栽培、ならし栽培、抑制栽培、種卵又は稚魚若しくは家畜の導入などを例示することができる。例えば、情報の入力を簡略化する目的で、現象が起きた時刻又はタイミングは、当該現象に寄与する1種類以上の因子の実績情報が取得された時刻又はタイミングと同一であると見做してもよい。
【0029】
ユーザ端末104は、情報提供サーバ110と情報を送受することができる装置であればよく、パーソナルコンピュータ、携帯端末などであってよい。携帯端末としては、ノートブック・コンピュータ又はラップトップ・コンピュータ、PDA、タブレット、携帯電話、スマートホン、ウェアラブル端末、無線端末などを例示することができる。ユーザ端末104は、例えば、予測システム100又は情報提供サーバ110により提供されるサービスのユーザにより利用される。
【0030】
本実施形態において、ユーザ端末104は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を有する。ユーザ端末104は、入力部が受け付けた情報を情報提供サーバ110に送信する。また、ユーザ端末104は、情報提供サーバ110が提供する情報を受信して、当該情報をユーザが知覚できるように、出力部から出力する。ユーザ端末104の出力部としては、ディスプレイなどの表示装置音声出力、スピーカなどの音声出力装置などを例示することができる。
【0031】
ユーザ端末104は、ユーザから、現象の実績情報に関する入力を受け付けてもよく、当該現象が起きている位置を示す位置情報、及び、当該現象が起きた時刻又はタイミングを示す時間情報の少なくとも一方に関する入力を受け付けてもよい。ユーザ端末104は、ユーザから、上記の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報に関する入力を受け付けてもよく、当該因子の将来の予定に関する予定情報に関する入力を受け付けてもよい。
【0032】
例えば、ユーザは、過去又は当日のセンサ102の測定結果、過去又は当日の気象情報、過去又は当日の作業内容に関する情報などを、実績情報として入力する。また、ユーザは、例えば、収穫適期が到達するまでの凡その育成期間における各日の作業スケジュールに関する情報、気象予報情報、病害虫の発生予察情報などを、予定情報として入力する。
【0033】
現象に寄与する1種類以上の因子としては、育成日数のような特定の生育イベントが発生してからの時間、周辺環境の温度、周辺環境の湿度、周辺環境の圧力、光の照度、光の照射量、光の照射時間、風速、水分供給量、土壌特性、培地特性、作業内容、作業を実施するタイミングなどを例示することができる。周辺環境の温度としては、気温、水温、土壌又は培地の温度などを例示することができる。周辺環境の湿度としては、大気中の湿度、土壌又は培地の湿度などを例示することができる。周辺環境の圧力としては、気圧、水圧などを例示することができる。土壌特性としては、土壌の物理的特性、土壌の化学的特性、及び、土壌の生物学的特性を例示することができる、培地特性は、土壌特性と同様の特性であってよい。
【0034】
土壌の物理的特性としては、土壌の構造、有効土層の深さ、水分、立地条件などを例示することができる。土壌の構造としては、土壌を構成する石又は砂の組成分布及び粒度分布、土壌の透水性、通気性、保水力などを例示することができる。立地条件としては、当該土壌が含まれる土地の傾斜、当該土地の地理的な区分(例えば、山間部、都市部などである。)などを例示することができる。土壌の化学的特性としては、養分の保持力、養分の供給力及び供給量、pHのような土壌反応、土壌に含まれる成分などを例示することができる。土壌の生物学的特性としては、有機物の分解速度、緩衝・解毒作用、生物活性などを例示することができる。
【0035】
予定情報としては、将来の育成期間に関する情報、将来の作業スケジュールに関する情報、天気予報などの気象予報情報、病害虫の発生予察情報などを例示することができる。将来の育成期間に関する情報としては、将来の日付、日時又はタイミングなどを例示することができる。作業スケジュールは、特定の作業の内容と、当該特定の作業の実施予定日又は実施を予定するタイミングとが対応づけられた情報であってよい。「将来」とは、情報提供サーバ110による予測処理の実行又はユーザによる当該予測処理の要求時を基準とした未来を意味してよい。
【0036】
本実施形態において、情報提供サーバ110は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から各種の情報を受信する。情報提供サーバ110は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から受信した情報を利用して、現象を予測する。情報提供サーバ110は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方からの情報の収集具合に応じて、現象の予測に利用するモデルを決定又は更新してよい。
【0037】
一実施形態において、情報提供サーバ110は、予測の対象となる現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報を取得する因子情報取得段階を実行する。また、情報提供サーバ110は、上記の因子情報取得段階において取得された実績情報に含まれる前記因子の種類に基づいて、現象の予測に用いられるモデルを決定するモデル決定段階を実行する。
【0038】
情報提供サーバ110は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方との間で情報を送受することができる装置であればよく、サーバ、パーソナルコンピュータなどの一般的な構成の情報処理装置であってよい。情報提供サーバ110は、仮想サーバ又はクラウドシステムであってもよい。情報提供サーバ110は、単一のサーバによって実現されてもよく、複数のサーバによって実現されてもよい。
【0039】
情報提供サーバ110の各部は、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよく、ハードウェア及びソフトウエアにより実現されてもよい。情報提供サーバ110の各部は、一般的な構成の情報処理装置において、情報提供サーバ110の各部の動作を規定したソフトウエア又はプログラムを起動することにより実現されてよい。
【0040】
情報提供サーバ110として用いられる情報処理装置は、CPU等のプロセッサ、ROM、RAM、通信インターフェースなどを有するデータ処理装置と、キーボード、タッチパネル、マイクなどの入力装置と、表示装置、スピーカなどの出力装置と、メモリ、HDDなどの記憶装置とを備えてよい。データ処理装置又は記憶装置は、上記のソフトウエア又はプログラムを記憶してよい。上記のソフトウエア又はプログラムは、プロセッサによって実行されることにより、上記の情報処理装置に、当該ソフトウエア又はプログラムによって規定された動作を実行させる。
【0041】
取得部122は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から各種の情報を取得する。例えば、取得部122は、センサ102から、センサ102の測定結果を取得する。また、取得部122は、ユーザ端末104から、ユーザが入力した情報を取得する。取得部122は、現象が起きている位置を示す位置情報を取得してもよく、現象が起きた時刻又はタイミングを示す時間情報を取得してもよい。
【0042】
取得部122は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から取得した情報を、情報格納部124に格納してよい。取得部122は、例えばユーザ端末104から取得した予定情報を予測部142に送信してもよい。
【0043】
一実施形態において、取得部122は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から、ウイルス、微生物又は動植物の生育状況に関連する特定の現象の実績情報を取得する。取得部122は、上記の特定の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つに関する実績情報を取得する。取得部122は、上記の特定の現象に寄与する少なくとも2つの因子に関する実績情報を取得してもよい。取得部122は、特定の現象の実績情報と、当該特定の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つに関する実績情報とを対応付けて、情報格納部124に格納する。例えば、特定の現象を測定対象とするセンサ102の測定結果と、当該特定の現象に寄与する因子の少なくとも1つに対応する現象を測定対象とする1以上のセンサ102の測定結果とを対応付けて格納する。
【0044】
他の実施形態において、取得部122は、センサ102及びユーザ端末104の少なくとも一方から、ウイルス、微生物又は動植物の生育状況に関連する複数の現象のそれぞれの実績情報を取得してもよい。また、複数の現象のそれぞれについて、当該現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つに関する実績情報を取得してもよい。取得部122は、複数の現象のそれぞれについて、当該現象の実績情報と、当該現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つに関する実績情報とを対応付けて、情報格納部124に格納してよい。
【0045】
情報格納部124は、取得部122が取得した情報を格納する。情報格納部124は、例えば、取得部122が取得した、特定の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報と、当該現象に関する位置情報及び時間情報との少なくとも一方とを対応付けて格納する。一実施形態において、情報格納部124は、特定の現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報と、当該現象に関する位置情報及び時間情報との少なくとも一方とが対応付けられたサンプル情報を格納する。サンプル情報は、少なくとも、取得部122が取得した現象の実績情報と、当該現象に寄与する1種類以上の因子のうちの少なくとも1つの因子の実績情報とが対応付けられた情報であってもよい。
【0046】
補完部126は、取得部122が取得した現象の実績情報、当該現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報、及び、予定情報からなる群から選択される少なくとも1つの情報に関する補完処理を実施する。補完処理の具体的な方法は特に制限されるものではないが、一実施形態において、補完部126は、情報格納部124に格納された情報を利用して、補間処理を実施する。他の実施形態において、補完部126は、他の情報処理装置に格納された、気象予報情報、病害虫の発生予察情報、特定の地域の土壌特性に関する情報などを利用して、補間処理を実施する。
【0047】
一実施形態において、取得部122が取得した情報の中に、特定の現象の実績情報が含まれているにもかかわらず、当該特定の現象の実績情報に対応する、当該特定の現象に寄与する特定の因子に関する実績情報が含まれていない場合がある。例えば、圃場Aで栽培されているレタスに関して、2015年1月22日における直径の情報が含まれているにもかかわらず、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量の情報が含まれていない場合がある。なお、2015年1月22日における圃場Aのレタスの直径の情報は、特定の現象の実績情報の一例であり、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量の情報は、特定の現象に寄与する特定の因子に関する実績情報の一例である。
【0048】
この場合において、補完部126は、他の現象に寄与する特定の因子に関する実績情報に基づいて、特定の現象の実績情報に対応する、特定の因子に関する実績情報を補完してよい。例えば、補完部126は、圃場Aの近隣に位置する圃場Bで栽培されているキャベツの直径の情報に対応付けられた、圃場Bにおける2015年1月22日の降雨量の情報に基づいて、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量の情報を補完する。より具体的には、例えば、補完部126は、圃場Bにおける2015年1月22日の降雨量を、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量と見做す。なお、圃場Bで栽培されているキャベツの直径の情報は、他の現象の実績情報の一例であり、圃場Bにおける2015年1月22日の降雨量の情報は、他の現象に寄与する特定の因子に関する実績情報の一例であってよい。
【0049】
補完部126は、他の現象に寄与する特定の因子に関する複数の実績情報に基づいて、特定の現象の実績情報に対応する特定の因子に関する実績情報を補完してもよい。例えば、補完部126は、圃場Aの近隣に位置する圃場B、圃場C及び圃場Dにおける2015年1月22日の降雨量の平均値を、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量と見做す。それぞれの圃場における2015年1月22日の降雨量に、それぞれの圃場と圃場Aと距離に応じた重みを乗じた値を、圃場Aにおける2015年1月22日の降雨量と見做してもよい。
【0050】
一実施形態において、特定の現象に関するサンプル情報に特定の因子の実績情報が含まれていない場合、補完部126は、まず、情報格納部124を参照して、特定の現象のサンプル情報及び他の現象のサンプル情報の位置情報及び時間情報の少なくとも一方に基づいて、1以上の他の現象のサンプル情報の中から、適切なサンプル情報を抽出し、抽出されたサンプル情報に含まれる特定の因子の実績情報を、補完用のデータとして抽出する。
【0051】
次に、補完部126は、抽出された実績情報に基づいて、特定の現象に関するサンプル情報の特定の因子の実績情報を補完する。補完部126は、抽出された複数の実績情報を統計処理又は補間処理することにより、特定の因子の特定の実績情報を補完してもよい。特定の現象に関するサンプル情報に特定の因子の実績情報が含まれていない場合は、取得部122が取得した情報の中に、特定の現象に寄与する特定の因子の実績情報が含まれていない場合の一例であってよい。
【0052】
一実施形態において、補完部126は、特定の現象のサンプル情報及び他の現象のサンプル情報の位置情報に基づいて、近隣の位置で起きた他の現象のサンプル情報に含まれる特定の因子の実績情報を抽出する。他の実施形態において、補完部126は、特定の現象のサンプル情報及び他の現象のサンプル情報の時間情報に基づいて、同一の又は類似する時刻又はタイミングに起きた他の現象のサンプル情報に含まれる特定の因子の実績情報を抽出する。
【0053】
例えば、予測システム100を用いて、畑Aにおけるレタスの生育状況(例えば、収穫時期及び収穫量である。)を予測する場合を例として、補完部126における補完処理の具体例について説明する。この具体例において、情報格納部124は、複数の畑のそれぞれについて、各畑を一意に識別するID、日付、気温及び作業内容に関する情報が対応付けられた複数のレコードを含むデータテーブルXと、各畑のID、位置情報、栽培品種に関する情報及び土壌特性に関する情報とが対応付けられた複数のレコードを含むデータテーブルYとを格納する。データテーブルX及びデータテーブルYは、サンプル情報の一例であってよい。栽培品種に関する情報は、現在及び過去の栽培品種の履歴に関する情報を含んでもよい。
【0054】
一実施形態によれば、例えば、データテーブルYの畑Aのレコードにおいて、畑Aの土壌特性に関する情報が欠落している場合、補完部126は、まず、データテーブルYに含まれる他の畑のレコードの中から、各レコードに含まれる位置情報に基づいて、畑Aの近隣の畑のレコードであって、土壌特性に関する情報が含まれるレコードを抽出する。複数のレコードが抽出された場合、補完部126は、抽出された畑のレコードの中から、各レコードに含まれる栽培品種に関する情報に基づいて、レタスを栽培している畑のレコードをさらに抽出してもよい。
【0055】
次に、補完部126は、抽出されたレコードに含まれる土壌特性に関する情報に基づいて、畑Aの土壌特性に関する情報を決定する。例えば、補完部126は、抽出された土壌特性に関する情報の平均値を、畑Aの土壌特性に関する情報として決定する。補完部126は、抽出された土壌特性に関する情報と、各情報の重み係数とに基づいて、畑Aの土壌特性に関する情報として決定してもよい。例えば、位置が近い畑に関する情報ほど重み係数を大きくしたり、同一の又は類似する品種を栽培している畑に関する情報ほど重み係数を大きくしたりする。
【0056】
他の実施形態において、例えば、データテーブルXの畑Aのレコードにおいて、畑Aの作業内容に関する情報が欠落している場合、補完部126は、まず、データテーブルX及びデータテーブルYを参照して、各レコードに含まれる日付、栽培品種に関する情報及び位置情報に基づいて、他の畑のレコードの中から、畑Aの近隣の畑であって、レタスを栽培している他の畑のレコードであって、同一の又は類似する日付における作業内容に関する情報が含まれるレコードを抽出する。補完部126は、抽出された作業内容を、畑Aの作業内容として決定する。
【0057】
他の実施形態において、例えば、データテーブルXの畑Aのレコードにおいて、特定の年月日における気温の情報が欠落している場合、補完部126は、例えば、気象庁のWebサイトを参照して、当該年月日における気温の情報を取得する。補完部126は、取得した気温の情報を、畑Aの気温に関する情報として決定する。
【0058】
さらに他の実施形態において、補完部126は、1種類以上の因子の種類ごとに予め定められた基準に基づいて定められる基準データを利用して、欠落する情報を補完してよい。予め定められた基準データは、予め定められた値、育成期間に応じて予め定められた値であってよい。予め定められた基準データは、数式モデルであってもよい。例えば、予め定められた基準データは、育成期間を独立変数とする関数に基づいて定められる。
【0059】
予め定められた基準データは、補完対象となっている因子の他の複数のデータを統計処理又は補間処理することにより定められてもよい。統計処理及び補間処理は、周知の方法又は将来的に開発された任意の方法であってよい。統計処理は、他の複数のデータに関する平均値、中央値、最頻値などの基本統計量を算出する処理であってもよく、他の複数のデータから確率モデルを構築し、当該確率モデルにより目的とする基準データを算出する処理であってもよい。補間処理は、1次補間、2次補間、3次補間、ラグランジュ補間、スプライン補間などであってよい。
【0060】
例えば、特定の1日の気温のデータが欠落している場合、当該特定の日の気温のデータとして、他の複数の日の気温のデータの平均値、中央値、最頻値などの統計値を算出する。他の複数の日は、当該特定の日よりも前の複数の日であってもよく、当該特定の日の前後の複数の日であってもよく、当該特定の日よりも後の複数の日であってもよい。
【0061】
本実施形態においては、取得部122が取得した情報の中に、特定の因子の実績情報が含まれていない場合について説明した。しかし、補完部126による処理は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、取得部122が取得した情報の中に、現象の実績情報、又は、予定情報が含まれていない場合であっても、補完部126は、同様の方法により、欠落したデータを補完することができる。
【0062】
モデル格納部132は、予測部142において利用される1以上のモデルを格納する。1以上のモデルのそれぞれは、現象を目的変数とし、1種類以上の因子のそれぞれに対応する1以上の説明変数と、1以上の説明変数のそれぞれに対応するパラメータとを用いて目的変数を表した数式モデルであってよい。モデル格納部132は、モデルを利用することができる条件を示す制約条件を、当該モデルと対応づけて格納してもよい。
【0063】
数式モデルとしては、単変量解析モデル、多変量解析モデル、カーネル多変量解析モデル、一般化線形モデル、ニューラルネットワークモデル、ベイジアンネットワークモデル、深層学習モデルなどを例示することができる。数式モデルは、連続な関数であってもよく、不連続な関数であってもよい。不連続な関数は、例えば、開花、結球などの生育イベントの発生を目的変数とする場合に利用される。
【0064】
モデル決定部134は、取得部122が実績情報を取得した因子の種類に基づいて、現象の予測に用いられるモデルを決定する。モデル決定部134は、予測に利用することを決定したモデルを識別するためのモデル識別情報を、予測部142に送信してよい。
【0065】
一実施形態において、モデル決定部134は、モデル格納部132に格納された各モデルの説明変数と、取得部122により実績情報を取得された因子とを比較して、取得部122により取得された情報を用いて利用できる1以上のモデルを抽出する。上記の抽出方法に代えて、又は、上記の抽出方法に加えて、モデル決定部134は、モデル格納部132に格納された各モデルの制約条件と、取得部122により取得された情報とを比較して、取得部122により取得された情報を用いて利用できる1以上のモデルを抽出してもよい。
【0066】
モデル決定部134は、抽出された1以上のモデルの中から、予測部142において利用されるモデルを決定する。一実施形態において、モデル決定部134は、取得部122により取得された情報を用いて、抽出された1以上のモデルのそれぞれについて、予測精度及び計算時間の少なくとも一方を算出する。モデル決定部134は、予測精度及び計算時間の少なくとも一方が最も優れたモデルを、予測部142において利用されるモデルとして決定する。
【0067】
例えば、取得部122が取得した情報の中に、畑Aのレタスの生育に寄与する因子として、日付及び気温の2種類の因子に関する実績情報が含まれる場合、モデル決定部134は、予測部142において、有効積算気温法に基づいて収穫時期を予測する単変量解析モデルを利用することを決定する。一方、取得部122が取得した情報の中に、畑Aのレタスの生育に寄与する因子として、日付、気温、降水量、日照時間、作業内容、土壌特性、栽培品種の履歴などの2以上の因子に関する実績情報が含まれる場合、モデル決定部134は、予測部142において、これらの情報に基づいて収穫時期及び収穫量を予測する多変量解析モデル、又は、カーネル多変量解析モデルを利用することを決定する。
【0068】
他の実施形態において、モデル決定部134は、取得部122が実績情報を取得した因子の種類と、当該実績情報の個数とに基づいて、現象の予測に用いられるモデルを決定してもよい。例えば、モデル決定部134は、まず、取得部122が実績情報を取得した因子の種類に基づいて、利用可能な1以上のモデルを抽出する。次に、モデル決定部134は、抽出された1以上のモデルの中から、実績情報の個数に基づいて、予測部142において利用するモデルを決定する。
【0069】
例えば、モデル決定部134は、取得部122が取得した情報に過去1ヵ月分のサンプル情報が含まれる場合と、過去3ヵ月分のサンプル情報が含まれる場合とで、モデル予測部142において利用されるモデルとして、異なるモデルを決定する。モデル決定部134は、数式の異なるモデルを利用することを決定してもよく、数式は同一で、パラメータの異なるモデルを利用することを決定してもよい。
【0070】
現象によっては、第1のイベントから第2のイベントまでの一連の過程が周期的に繰り返される場合がある。例えば、圃場Aにおいて、レタスの作付けからレタスの成熟又は収穫までの一連の過程が毎年繰り返される。多期作の場合には、当該過程が1年の間に複数回繰り返される。多毛作の場合には、例えば、レタスの作付けからレタスの成熟又は収穫までの一連の過程と、白菜の作付けから白菜の成熟又は収穫までの一連の過程とが交互に繰り返される。なお、この場合、レタスの生育状況と、白菜の生育状況とは、異なる現象であってよい。
【0071】
一実施形態において、モデル決定部134は、周期的に繰り返される第1のイベントから第2のイベントまでの一連の過程の途中において、モデルの決定処理を実行してよい。これにより、1回の周期における一連の過程の途中で、予測部142において利用されるモデルを変更することができる。その結果、予測精度を向上させることができる。モデル決定部134においてモデルの決定処理を実行するタイミングとしては、予め定められた期間又は時刻が経過したタイミング、予め定められた数の実績情報を取得したタイミング、ユーザによる指示を受信したタイミングなどを例示することができる。
【0072】
例えば、1回の周期における一連の過程に含まれる第1の期間について、過去の他の周期における第1の期間の現象及び因子に関する複数の実績情報を含む複数のサンプル情報を学習データとして、予測部142において利用されるモデルを決定する。複数のサンプル情報は、過去の他の周期における他の期間の現象及び因子に関する複数の実績情報を含んでもよい。現象及び因子に関する実績情報は、圃場Aにおけるレタスの生育情報に関する実績情報であってもよく、圃場Aを含む複数の圃場におけるレタスの生育情報に関する実績情報であってもよい。また、圃場Aにおける因子に関する実績情報の少なくとも一部は、圃場Aにおけるレタス以外の作物の生育情報に関する実績情報であってもよい。
【0073】
第1の期間が経過した後、モデル決定部134は、当該周期における第1の期間における現象及び因子に関する複数の実績情報を含む複数のサンプル情報を学習データとして、予測部142において利用されるモデルを決定する。複数のサンプル情報は、当該周期における第1の期間における現象及び因子に関する複数の実績情報と、過去の他の周期における第1の期間の現象及び因子に関する複数の実績情報及び過去の他の周期における第2の期間の現象及び因子に関する複数の実績情報の少なくとも一方とを含んでよい。
【0074】
第2の期間は、第1の期間よりも時期的に後の期間であってよい。当該周期における第1の期間における現象に関する複数の実績情報、及び、当該周期における第1の期間における因子に関する複数の実績情報の少なくとも一方は、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部の一例であってよい。
【0075】
予測部142は、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部と、モデル決定部134が決定したモデルとに基づいて、現象の予測値を算出する。予測部142は、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部と、補完部126が補完した実績情報の少なくとも一部及び取得部122が取得した予定情報の少なくとも一部の少なくとも一方と、モデル決定部134が決定したモデルとに基づいて、現象の予測値を算出してもよい。
【0076】
取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部、及び、補完部126が補完した実績情報の少なくとも一部は、ウイルス、微生物又は動植物の育成を開始した日後の実績情報であってよい。取得部122が取得した予定情報の少なくとも一部は、将来の任意の期間における予定情報であってよい。
【0077】
予測部142が、取得部122が取得した実績情報及び補完部126が補完した実績情報の両方を用いて現象の予測値を算出する場合、実績情報のそれぞれに重み係数を乗じた値をモデルに入力してよい。この場合において、取得部122が取得した実績情報の重み係数と、補完部126が補完した実績情報の重み係数とが異なってもよい。他の実施形態において、取得部122が取得した実績情報の一部において、予測部142で利用するモデルの1以上の説明変数に対応する1以上の因子の少なくとも1つに関する情報が欠落している場合、予測部142は、当該実績情報を除いた他の実績情報に基づいて、予測値を算出してもよい。
【0078】
図2は、モデル決定部134のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、モデル決定部134は、モデル評価部232と、モデル選択部234と、パラメータ決定部236とを備える。モデル決定部134の各要素は、互いに情報を送受してよい。
【0079】
モデル評価部232は、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれを評価する。モデル評価部232は、各モデルのパラメータを調整した後で、各モデルを評価してもよく、各モデルのパラメータを調整する前に、各モデルを評価してもよい。
【0080】
モデル評価部232は、例えば、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれについて、当該モデルの予測精度及び計算時間の少なくとも一方を評価する。一実施形態において、モデル評価部232は、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部を用いて当該モデルにより算出された現象の予測値、及び、取得部122が取得した現象の実績値の少なくとも一部に基づいて、当該モデルの予測精度及び計算時間の少なくとも一方を評価してよい。
【0081】
例えば、モデル評価部232は、まず、情報格納部124に格納された1以上の実績情報の中から、各モデルの評価に利用するサンプル情報を抽出する。例えば、モデル評価部232は、実績情報の取得時期、実績情報の位置情報などに基づいて、複数のサンプル情報を抽出する。なお、抽出条件は、予測対象となる現象に応じて、適切に決定してよい。次に、モデル評価部232は、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれについて、取得部122が実績情報を取得した因子の種類に基づいて、現象の予測に利用可能であるか否かを判断する。
【0082】
モデル評価部232は、例えば、下記の手順に従って、1以上のモデルのそれぞれが現象の予測に利用可能であるか否かを判断する。まず、モデル評価部232は、評価対象となるモデルに含まれる1以上の説明変数の種類に関する情報を取得する。一実施形態において、モデル評価部232は、モデル格納部132に格納された各モデルの数式に関する情報を参照して、各モデルに含まれる説明変数の種類に関する取得する。この場合、モデル評価部232が各モデル及び各サンプル情報を自動的に解析するので、ユーザによる設定の手間を大幅に軽減することができる。他の実施形態において、モデル評価部232は、モデル格納部132に格納された各モデルの制約条件に関する情報を参照して、各モデルに含まれる説明変数の種類に関する情報を取得する。
【0083】
次に、モデル評価部232は、抽出された複数のサンプル情報のそれぞれに含まれる実績情報を解析して、各実績情報に対応する1以上の因子の種類に関する情報を取得する。1以上の因子の種類に関する情報は、センサ102の種類及び測定項目に関する情報であってもよく、入力装置104に表示される各種の実績情報の入力フォームに含まれる1以上の入力項目に関する情報であってもよい。次に、モデル評価部232は、各実績情報に対応する1以上の因子の種類に関する情報と、評価対象となるモデルの説明変数の種類に関する情報とに基づいて、抽出された複数のサンプル情報のそれぞれが、評価対象となるモデルの説明変数に対応する因子に関する実績情報を含んでいるか否かを判断する。モデル評価部232は、センサ102の種類及び測定項目の少なくとも一方と説明変数との対応関係、及び、入力装置104に表示される各種の実績情報の入力フォームに含まれる各入力項目と説明変数との対応関係の少なくとも一方に基づいて、上記の事項を判断してよい。
【0084】
モデル評価部232は、例えば、抽出された複数のサンプル情報の個数に対する、評価対象となるモデルの説明変数に対応する因子に関する実績情報が欠落しているサンプル情報の個数の割合(データ欠損度と称する場合がある。)が、予め定められた第1の値よりも大きい場合に、評価対象のモデルが現象の予測に利用可能でないと判断する。他の実施形態において、モデル評価部232は、データ欠損度が予め定められた第1の値よりも大きい場合に、欠落した実績情報の代わりに、補完部126が補完した実績情報を用いることを決定してもよい。モデル評価部232は、補完部126が補完した実績情報を用いた場合のデータ欠損度を算出して、当該データ欠損度が予め定められた第1の値よりも大きい場合に、評価対象のモデルが現象の予測に利用可能でないと判断してよい。
【0085】
さらに他の実施形態において、モデル評価部232は、データ欠損度が予め定められた第1の値よりも大きい場合には、評価対象のモデルが現象の予測に利用可能でないと判断する。モデル評価部232は、データ欠損度が予め定められた第2の値よりも大きい場合には、欠落した実績情報の代わりに、補完部126が補完した実績情報を用いることを決定する。第2の値は、第1の値よりも小さくてよい。これらの実施形態において、モデル評価部232は、補完部126が補完した実績情報を用いることを決定した場合に、補完部126に補間処理を要求して、補完処理後のデータを取得してもよく、情報格納部124を参照して、情報格納部124に格納された補完処理後のデータを取得してもよい。
【0086】
モデル評価部232は、評価対象のモデルが現象の予測に利用可能でないと判断した場合、当該モデルの予測精度及び計算時間を具体的に算出することなく、当該モデルは利用不可であると評価する、又は、当該モデルに対して非常に低い評価を付与する。一方、評価対象のモデルが現象の予測に利用可能である場合、モデル評価部232は、当該モデルの予測精度及び計算時間の少なくとも一方を具体的に算出して、当該モデルの予測精度及び計算時間の少なくとも一方を評価する。
【0087】
例えば、モデル評価部232は、抽出された複数のサンプル情報のそれぞれに含まれる1種類以上の因子に関する実績情報の中から、評価対象となるモデルの説明変数に対応する因子に関する実績情報を抽出して、当該モデルに入力する。これにより、モデル評価部232は、予測対象となる現象に対する当該モデルによる予測値を算出する。なお、モデル評価部232は、補完部126が補完した実績情報を用いることを決定した場合には、補完処理後のデータも併せて利用することにより、当該モデルによる予測値を算出してよい。モデル評価部232は、予測値の算出に要した計算時間を算出してもよい。
【0088】
次に、モデル評価部232は、情報格納部124を参照して、モデルに入力された因子に関する実績情報に対応する、現象に関する実績情報を抽出する。モデル評価部232は、モデルによる予測値と、抽出された現象に関する実績情報とを比較して、予測精度を算出する。モデル評価部232は、予測精度及び計算時間の少なくとも一方の数値に基づいて、評価対象となるモデルを複数の評価区分のいずれかに分類することで、当該モデルを評価してもよく、予測精度及び計算時間の少なくとも一方の数値自体に基づいて、当該モデルを評価してもよい。
【0089】
本実施形態においては、モデル評価部232が、抽出されたサンプル情報に基づいて、利用可能なモデルを選択した後、選択された各モデルによる予測値を算出した。しかしながら、モデル評価部232における処理は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、モデル評価部232は、まず、情報格納部124に格納された1以上の実績情報の中から、各モデルの評価に利用するサンプル情報を抽出する。
【0090】
次に、モデル評価部232は、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれについて、抽出された複数のサンプル情報のそれぞれに含まれる1種類以上の因子に関する実績情報の中から、評価対象となるモデルの説明変数に対応する因子に関する実績情報を抽出して、当該モデルに入力することにより、当該モデルによる予測値を算出する。この場合において、サンプル情報の中に、上記モデルの説明変数に対応する因子に関する実績情報が含まれていないときには、当該データをモデルに入力することなく、破棄してもよい。又は、当該データの代わりに、補完部126が補完した実績情報を用いることを決定してよい。
【0091】
次に、モデル評価部232は、情報格納部124を参照して、モデルに入力された因子に関する実績情報に対応する、現象に関する実績情報を抽出する。モデル評価部232は、モデルによる予測値と、抽出された現象に関する実績情報とを比較して、予測精度を算出する。モデル評価部232は、データの欠損度と、予測精度及び計算時間の少なくとも一方とに基づいて、当該モデルを評価してよい。本実施形態における各処理の具体的な事項は、上記の実施形態における各処理と同様であってもよい。
【0092】
上述のとおり、情報格納部124に、補完部126により補完された実績情報が格納されている場合がある。この場合、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれについて、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部及び補完部126が補完した実績情報の少なくとも一部を用いて当該モデルにより算出された現象の予測値、並びに、取得部122が取得した現象の実績値に基づいて、当該モデルの予測精度及び計算時間の少なくとも一方を評価してよい。例えば、モデル評価部232は、1以上のモデルの少なくとも1つのモデルの評価に利用する実績情報が不足する場合、1種類以上の因子ごとに予め定められた基準データを利用して、少なくとも1つのモデルの予測精度を評価してもよい。
【0093】
モデル評価部232は、予測精度が大きいほど、高い評価を与えてよい。また、計算時間が短いほど、高い評価を与えてよい。モデル評価部232は、予測精度及び計算時間のそれぞれに重み係数を設定して、予め定められた計算式に基づいて、各モデルを評価してもよい。
【0094】
モデル評価部232は、各モデルの予測精度を評価する場合において、評価期間を複数の期間に区分して、区分ごとに重み係数を設定してよい。この場合において、モデルの評価日に近い期間における予測精度ほど、重み係数を大きくしてよいこれにより、例えば、育成期間の初期における予測精度が低くても、モデルの評価日近傍において予測精度の高いモデルに高い評価を与えることができる。
【0095】
一実施形態において、モデル評価部232は、周期的に繰り返される第1のイベントから第2のイベントまでの一連の過程の途中において、モデルの評価処理を実行してよい。これにより、1回の周期における一連の過程の途中で、予測部142において利用されるモデルを変更することができる。その結果、予測精度を向上させることができる。モデル決定部134においてモデルの決定処理を実行するタイミングとしては、予め定められた期間又は時刻が経過したタイミング、予め定められた数の実績情報を取得したタイミング、ユーザによる指示を受信したタイミングなどを例示することができる。
【0096】
本実施形態において、モデル選択部234は、モデル評価部232による評価に基づいて、予測部142において現象の予測に用いられるモデルを選択する。モデル選択部234は、予測部142に割り当てられた情報処理装置のリソースに基づいて、モデルを選択してもよい。例えば、予測部142に割り当てられたリソース量が予め定められた値より大きい場合には、予測精度に関する評価の高いモデルを優先的に選択する。一方、予測部142に割り当てられたリソース量が予め定められた値より小さい場合には、計算時間に関する評価の高いモデルを優先的に選択する。
【0097】
本実施形態において、パラメータ決定部236は、モデル格納部132に格納された1以上のモデルのそれぞれについて、取得部122が取得した実績情報の少なくとも一部、及び、取得部122が取得した現象の実績値の少なくとも一部に基づいて、当該モデルのパラメータを決定する。例えば、パラメータ決定部236は、取得部122が取得した現象の実績情報、及び、当該現象に寄与する因子の実績情報のうち、一部の期間における情報を学習データとして、各モデルのパラメータを決定する。
【0098】
パラメータ決定部236は、モデル評価部232が各モデルを評価する前に、各モデルのパラメータを決定してよい。パラメータ決定部236は、モデル評価部232において利用可能と判断されたモデルについてのみ、パラメータを決定してもよい。パラメータ決定部236は、モデル選択部234により選択されたモデルについてのみ、パラメータを決定してもよい。
【0099】
図3は、データテーブル300の一例を概略的に示す。本実施形態において、データテーブル300は、農地ID310と、日付320と、位置情報330と、現象情報340と、因子情報350とを対応付けて格納する。本実施形態において、現象情報340は、生育具合342に関する情報と、生育イベント344に関する情報とを含む。また、因子情報350は、気象情報352と、土壌情報354と、栽培品種356に関する情報と、作業内容358に関する情報とを含む。
【0100】
データテーブル300は、取得部122により取得され、情報格納部124に格納された情報の一例であってよい。データテーブル300は、サンプル情報の一例であってよい。生育具合342に関する情報、及び、生育イベント344に関する情報は、予測システム100による予測の対象となる現象の実績情報の一例であってよい。気象情報352、土壌情報354、栽培品種356に関する情報、及び、作業内容358に関する情報のそれぞれは、予測システム100による予測の対象となる現象に寄与する1種類以上の因子の少なくとも1つの実績情報の一例であってよい。日付320に関する情報、及び、生育イベント344に関する情報は、時間情報の一例であってよい。生育イベント344は、現象が起きたタイミングの一例であってよい。
【0101】
図4は、データテーブル400の一例を概略的に示す。本実施形態において、データテーブル400は、モデルID410と、数式モデル420と、制約条件430とを対応付けて格納する。本実施形態において、数式モデル420は、数式422に関する情報と、パラメータ値424に関する情報とを含む。
【0102】
数式モデル420は、例えば、現象を目的変数とし、1種類以上の因子のそれぞれに対応する1以上の説明変数と、1以上の説明変数のそれぞれに対応するパラメータとを用いて目的変数を表す。制約条件430は、モデルを利用することができる条件を表す。モデルを利用することができる条件は、当該モデルを利用した場合に、予め定められた値よりも高い予測精度で予測値を算出することができる条件であってよい。モデルを利用することができる条件は、当該モデルを利用した場合に、予め定められたリソースを用いて予め定められた時間よりも短時間で予測値を算出することができる条件であってもよい。
【0103】
データテーブル400は、モデル格納部132に格納されたモデルに関する情報の一例であってよい。なお、データテーブル400において、fは目的変数であり、X、Y及びZのそれぞれは説明変数である。また、a、b、c及びKのそれぞれは、パラメータであり、iは、例えば、1からjまでの正の整数であり、jは予測日における育成日数であってよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、技術的に矛盾しない範囲において、特定の実施形態について説明した事項を、他の実施形態に適用することができる。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。