(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面シートは、前記凹凸領域を挟む両側それぞれに、前記凸部及び前記凹部を有しない非凹凸領域を有しており、前記サイドシートは、該非凹凸領域を覆っており且つ該非凹凸領域の一部又は全域において前記表面シートと接合されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
前記表面シートの前記凹凸領域における肌当接面側の面が、吸収性物品の長手方向に延びる凸条部及び凹条部が吸収性物品の幅方向に交互に形成されている凹凸構造の不織布から形成されている、請求項7に記載の吸収性物品。
前記凹凸構造の不織布は、凸条部の側壁部を形成する側部域の繊維密度が、凹条部の頂部を形成する頂部域の繊維密度及び凹条部の底部を形成する底部域の繊維密度よりも低くなっている、請求項8又は9に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の一実施形態である失禁パッド10(以下、単に「失禁パッド10」ともいう。)の斜視図が示されている。
図2は、
図1のII−II線拡大断面図である。
【0010】
失禁パッド10は、
図1及び
図2に示すように、失禁パッド10の肌当接面Pを形成する液透過性の表面シート2、失禁パッド10の非肌当接面Qを形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。失禁パッド10における裏面シート3は液不透過性であるが、裏面シート3は、液透過性のシートの非肌当接面側に液透過性のシートが積層されている積層シートであっても良い。液不透過性は、液難透過性も含む。
失禁パッド10は、縦長の形状を有し、長手方向X及び幅方向Yを有している。長手方向Xは、失禁パッド10を着用したときの着用者の前後方向と一致し、幅方向Yは、失禁パッド10の平面視において、長手方向Xと直交する方向である。
【0011】
また、失禁パッド10は、長手方向Xに沿って延びる両側部の肌当接面側に、それぞれ液不透過性の一対のサイドシート8を備えている。サイドシート8の液不透過性も液難透過性を含む。一対のサイドシート8は、失禁パッド10の幅方向中央側に位置する、長手方向Xに沿う一方の側部が、表面シート2の側部と接合されている。表面シート2及び一対のサイドシート8は、吸収体4の周縁部より外方において、裏面シート3と接合されており、それによって周縁シール部7が形成されている。
【0012】
失禁パッド10の裏面シート3側の面(非肌当接面)には、ショーツ等の下着に固定するための粘着部(図示略)が設けられている。肌当接面は、吸収性物品における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(通常、下着側)に向けられる面である。
【0013】
表面シート2は、
図2及び
図3に示すように、失禁パッド10の幅方向Yの中央域Mに、肌側に向かって突出する複数の凸部13と、複数の凸部13の間に位置する凹部14とを有する凹凸領域2Mを有している。本実施形態における凸部13は、失禁パッド10の長手方向Xに沿って延びる筋状の凸条部13であり、幅方向Yに複数本形成されており、幅方向Yにおける凸条部13どうし間に、失禁パッド10の長手方向Xに沿って延びる凹部14としての筋状の凹条部14が形成されている。
また、失禁パッド10は、
図1及び
図2に示すように、その幅方向Yにおける中央域Mの両側にそれぞれに、表面シート2の肌当接面側が、液不透過性のサイドシート8に覆われた側部域S,Sを有している。
【0014】
本実施形態におけるサイドシート8は、一枚のシートを、失禁パッド10の幅方向中央側に位置する内側縁部8aにおいて折り返して2層構造とした積層シートである。多層(2層も含む)構造の積層シートの層間は、接合されていなくても良いが、パターン塗工された接着剤や部分的な熱融着等により部分的に接合されていることが好ましい。また、サイドシート8は、多層構造とする前の単層構造の段階で、液不透過性であるものであっても良いし、2層以上の多層構造とされたときに液不透過性と言えるものであっても良い。
【0015】
本実施形態における表面シート2は、
図2及び
図3に示すように、失禁パッド10の幅方向の中央域Mに配される幅方向中央部に凹凸領域2Mを有し、凹凸領域2Mを挟む両側それぞれに、凸部13及び凹部14を有しない非凹凸領域2S,2Sを有している。
そして、失禁パッド10の側部域S,Sのそれぞれにおいては、2層構造のサイドシート8が、表面シート2の非凹凸領域2Sの肌当接面側を覆っており、その2層構造のサイドシート8は、表面シート2の非凹凸領域2Sに一部又は全域が接合されている。
【0016】
このサイドシート8と表面シート2との接合部は、サイドシート8と表面シート2とが重なっている範囲のどこに設けても良い。
例えば、本実施形態の失禁パッド10は、
図2に示すように、失禁パッド10の幅方向Yに沿う断面を視たとき、サイドシート8は、表面シート2の肌当接面側を覆う部分の一部が、吸収体4上に位置し、表面シート2の肌当接面側を覆う部分の残りの部分が、吸収体4の側縁4sより外方に位置している。この場合、サイドシート8は、吸収体4上に位置する部分が、表面シート2と接合されていても良いし、吸収体4の側縁4sより外方に位置する部分が、表面シート2と接合されていても良いし、両方の部分が、表面シート2と接合されていても良い。また、失禁パッド10を、その長手方向の全長を3等分するように区分して、前方から順に前方部、液排泄部対向部及び後方部に区分したときの、液排泄部対向部においては、サイドシート8と裏面シート3とを表面シート2を挟んだ状態で周縁シール部7を形成して、その周縁シール部7を、サイドシート8と表面シート2との接合部とする一方、前方部及び後方部においては、吸収体4上において、サイドシート8と表面シート2とを、長手方向Xに延びる直線状の接合部で接合するといった組み合わせも可能である。サイドシート8と表面シート2との接合部は、サイドシート8と表面シート2との間に接着剤を配して形成しても良いし、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等のシール加工により形成しても良い。
【0017】
本実施形態の失禁パッド10においては、
図2に示すように、サイドシート8の吸収体4上に位置する部分が、表面シート2の非凹凸領域2Sと重なる一方、凹凸領域2Mとは重なっていない。そして、表面シート2の凹凸領域2Mにより形成された前記中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと、サイドシート8により形成された前記側部域Sの肌当接面Psの高さtsとが同じとなっている。
【0018】
中央域Mの肌当接面Pmの高さtm及び側部域Sの肌当接面Psの高さtsは、いずれも非肌当接面Qからの高さであり、以下の方法により測定される。
0.05kPaの荷重下の高さをレーザー変位計(株式会社キーエンス製、CCDレーザー変位センサーLK−0080)を用いて測定する。具体的には、測定台に質量2.5g、半径12.5mmの円形プレートを載置し、その円形プレートの上面の位置を、測定の基準点Aとする。次に、円形プレートを取り除き、測定台に失禁パッド10を平らに広げた状態で固定した後、その失禁パッド10の中央域Mの肌当接面Pm上に、前記の円形プレートを再び載置する。この状態での円形プレートの上面の位置をBとする。そして、AとBとの差から、失禁パッド10の中央域Mの肌当接面Pmにおける0.05kPaの荷重下の高さ(厚み)tmを求める。より詳細には、失禁パッド10の幅方向Yの中央部に円形プレートを配置し、失禁パッド10の長手方向Xに沿って何箇所かで高さ(厚み)tmを測定し、その値が最も大きな値を示した箇所を、高さが最も高い部位2tとする。そして、その部位2tにおける高さtmを、中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmとする。高さ(厚み)tmの測定は、好ましくは、失禁パッド10の長手方向Xに30mmづつ位置をずらして3か所以上で測定する。
また、中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmが最も高い部位2tと、失禁パッド10の長手方向Xにおける位置が同じ部位において、側部域Sの肌当接面Psにおける0.05kPaの荷重下の高さ(厚み)tsを、高さ(厚み)tmの測定方法と同様して求める。例えば、円形プレートの中心を
図1のII−II線上に位置させたときに、前記高さ(厚み)tmが最大値を示した場合には、側部域Sの肌当接面Psの高さ(厚み)tsも、円形プレートの中心を
図1のII−II線上に位置させて測定する。
なお、側部域Sにおける肌当接面Psの高さtsは、左右の側部域Sのそれぞれについて1箇所のみで測定し、各側部域Sについての測定値を、各側部域Sにおける肌当接面Psの高さtsとして、それぞれ、中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmと対比する。本発明の吸収性物品における左右の側部域Sは、それぞれ、肌当接面Psの高さtsが、中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmと同じである。
【0019】
このようにして測定した中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmと側部域Sにおける肌当接面Psの高さtsとの差(tm−ts)の絶対値が0.5mm以下である場合に、中央域Mにおける肌当接面Pmの高さtmと側部域Sにおける肌当接面Psの高さtsとが同じであるとする。差(tm−ts)の絶対値は、0.3mm以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態の失禁パッド10によれば、表面シート2の凹凸領域2Mが露出している中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと、サイドシート8によって形成される側部域Sの肌当接面Psの高さtsとが同じであるため、両者間に実質的に段差が生じず、着用者に、違和感を与えることを防止することができるのみならず、サイドシート8が肌に当る感覚も与えにくい。
しかも、サイドシート8が、吸収体4に吸収された液の側方への浸み出しを防止する上に、中央域Mの肌当接面Pmが、表面シート2の凹凸領域2Mに形成された凸条部13(凸部)の頂部域の集合からなるため、中央域Mの肌当接面Pmが平坦である場合に比して、肌当接面Pmに沿う液の移動も抑制される。
そのため、本実施形態の失禁パッド10は、横漏れ防止性にも優れている。
【0021】
また、本実施形態の失禁パッド10においては、側部域Sの肌当接面Psが、サイドシート8の吸収体4上に配された部分から形成されているため、吸液により吸収体4の厚みが変化した後においても、中央域Mにおける肌当接面Pmとの間に段差が生じ難い。そのため、装着中においても、違和感が生じることが効果的に防止される。
同様の観点から、サイドシート8は、少なくとも吸収体4上に位置する部分が、表面シート2と接合されていることが好ましい。
【0022】
吸収体4に吸収された液の側方への浸み出しを防止する観点から、サイドシート8は、長手方向Xに沿う吸収体4の側縁4sより外方の部位Fに、裏面シート3と一体化された部分を有することが好ましい。本実施形態におけるサイドシート8は、吸収体4上に位置する部分と、長手方向Xに沿う吸収体4の側縁4sより外方に延出した延出部分とを有しており、その延出部分において裏面シート3と一体化されている。より具体的には、サイドシート8の延出部分は、周縁シール部7において、ヒートシール等のシール加工により裏面シート3と一体化されている。なお、サイドシート8と裏面シート3との一体化は、表面シート2を構成するシートが介在した状態での一体化であっても良い。
また、本発明におけるサイドシートには、長手方向Xに沿って延びる弾性部材が伸長状態で配されていないことが好ましく、伸長状態で固定されているか否かを問わず、長手方向Xに沿って延びる弾性部材が配されていないことが好ましい。弾性部材は、サイドシートを起立させたり、サイドシートの厚みを増大させることによって、着用者が、違和感やサイドシートに触れた感触を感じやすくなる。
【0023】
表面シート2は、
図3に示すように、複数の凸部13と凹部14とを有する凹凸領域2Mの両側それぞれに、前記凸部13及び前記凹部14を有しない非凹凸領域2S,2Sを有している。非凹凸領域2S,2Sは、
図3(b)に示すように、その表面a及び裏面bのいずれもが平坦であることが好ましいが、「前記凸部を有しない非凹凸領域」には、高さが、凹凸領域2Mの凸部13の高さH〔
図3(b)参照〕に比して顕著に低い凸部、例えば高さが、凹凸領域2Mの凸部13の高さHの1/3以下の凸部が形成されていても良い。ここでいう高さは、前述した中央域Mの肌当接面Pmの高さtm及び側部域Sの肌当接面Psの高さtsの測定方法と同様にして測定し、単独状態の表面シート2を測定対象とする。即ち、表面シート2の全域に同じ高さの凸部があるが、サイドシート8を重ねて凸部を潰した結果、凹凸領域2Mの凸部13の高さHの1/3以下の高さとなっている凸部がある場合、その潰れた凸部がある領域は、非凹凸領域に該当しない。
【0024】
中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと側部域Sの肌当接面Psの高さtsとを同じにすることを容易とする観点から、凹凸領域2Mにおける凸部13の高さH〔
図3(b)参照〕は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下であり、また好ましくは0.5mm以上3.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。また、凸部として凸条部13を並行させて複数形成する場合の配置ピッチP〔
図3(b)参照〕は、凸条部13の高さHの、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また好ましくは400%以下、より好ましくは200%以下であり、また好ましくは30%以上400%以下、より好ましくは50%以上200%以下である。
【0025】
以下、本実施形態の失禁パッド10に用いた表面シート2について、より具体的に説明すると、
図3に示すように、本実施形態の失禁パッド10においては、その中央域Mの肌当接面Pmを形成する表面シート2の凹凸領域2Mに、それぞれ失禁パッド10の長手方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が、失禁パッド10の幅方向Yに交互に形成されている。
本実施形態における表面シート2は、
図2〜
図4に示すように、失禁パッド10の長手方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が失禁パッド10の幅方向Yに交互に形成されている凹凸構造の不織布1と、不織布1の凹条部14における接合部14sにおいて該不織布1と接合されている下側シート6とから形成されており、凸条部13が中空構造を有している。
表面シート2を構成する凹凸構造の不織布1においては、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」は、失禁パッド10の長手方向Xと同方向であり、不織布1において、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」をX方向とも表記する。
【0026】
本実施形態の失禁パッド10によれば、中央域Mに、凸部として失禁パッド10の長手方向Xに延びる凸条部13が凹条部14と交互に配されていることで、幅方向Yに沿う着用者の肌の動きに対して、凸条部13が連動して追従することができるため、擦れによる肌への刺激を低減することができる。また、不織布1が、凹条部14において下側シート6と接合されているため、幅方向Yに沿う着用者の肌の動きに対して、凸条部13が、その接合部14sを基点にして幅方向Yに移動し、これにより、擦れによる肌への刺激を一層低減させることが可能である。
【0027】
不織布1は、
図2〜
図5に示すように、表面シート2の凹凸領域2Mを形成する部分に、表裏両面a,bの断面形状がともに厚み方向(Z方向)の上方に向かって凸状をなす複数の凸条部13と、隣り合う凸条部13,13どうしの間に位置する凹条部14とを有している。凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに不織布の厚み方向(Z方向)の上方に向かって凹状をなしている。言い換えれば、凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに不織布の厚み方向(Z方向)の下方に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部13は、それぞれ、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びており、複数の凹条部14も、不織布1の一方向Xに連続して延びる溝状をなしている。凸条部13及び凹条部14は、互いに平行であり、前記一方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に交互に配されている。
【0028】
不織布1は、後述するように、繊維シート1aに、互いに噛み合う一対の凹凸ロール401,402を用いて凹凸加工を施して製造されたものである。上述した不織布1の一方向(X方向)とは、繊維シート1aに凹凸加工を施して不織布1を製造する際の機械方向(MD,流れ方向)と同じ方向であり、上述した不織布1の一方向(X方向)に直交する方向(Y方向)とは、前記機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)と同じ方向である。
【0029】
不織布1の構成繊維11は、高伸度繊維が含まれている。ここで、構成繊維11が含む高伸度繊維とは、原料の繊維の段階で高伸度である繊維のみならず、製造された不織布1の段階でも高伸度である繊維を意味する。「高伸度繊維」としては、弾性(エラストマー)を有して伸縮する伸縮性繊維を除き、例えば特開2010−168715号公報の段落[0033]に記載のように低速で溶融紡糸して複合繊維を得た後に、延伸処理を行わずに加熱処理及び/又は捲縮処理を行うことにより得られる加熱により樹脂の結晶状態が変化して長さの延びる熱伸長性繊維、或いは、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂を用いて比較的紡糸速度を低い条件にして製造した繊維、又は、結晶化度の低い、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、若しくはポリプロピレンに、ポリエチレンをドライブレンドし紡糸して製造した繊維等が挙げられる。それらの繊維の内でも高伸度繊維は、熱融着性のある芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異形型でもよいが、特に同心の芯鞘型であることが好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい不織布等を製造する観点からは、高伸度繊維の繊度は、原料の段階で、1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることがより好ましい。
【0030】
不織布1の構成繊維11は、高伸度繊維に加えて、他の繊維を含んで構成されていてもよいが、高伸度繊維のみから構成されていることが好ましい。他の繊維としては、例えば融点の異なる2成分を含み且つ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維、或いは、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)等が挙げられる。不織布1が高伸度繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、該不織布1における高伸度繊維の割合は、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0031】
高伸度繊維である熱伸長性繊維は、原料の段階で、未延伸処理又は弱延伸処理の施された複合繊維であり、例えば、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
【0032】
鞘部を構成する第2樹脂成分としては、上述の通りポリエチレン樹脂を含んでいる。該ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935g/cm
3以上0.965g/cm
3以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。鞘部を構成する第2樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する第2樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下が、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、該ポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
【0033】
芯部を構成する第1樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や樹脂成分が2種以上の共重合体等も使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。不織布の製造が容易となることから、芯部を構成する第1樹脂成分の融点と、鞘部を構成する第2樹脂成分の融点との差(前者−後者)が、20℃以上であることが好ましく、また150℃以下であることが好ましい。
【0034】
高伸度繊維である熱伸長性繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えば第1樹脂成分がポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。
【0035】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
【0036】
また、高伸度繊維の伸度は、原料の段階で、100%以上800%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以上500%以下、更に好ましくは250%以上400%以下である。この範囲の伸度を有する高伸度繊維を用いることで、該繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる。
【0037】
高伸度繊維の伸度はJISL−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±2%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/min の条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
【0038】
高伸度繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は、原料の段階で、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。高伸度繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
【0039】
高伸度繊維の繊維径は、原料の段階で、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。前記の繊維径は、次の方法で測定される。
【0040】
〔繊維の繊維径の測定〕
繊維の繊維径として、繊維の直径(μm)を、走査電子顕微鏡(日本電子(株)社製JCM−5100)を用いて、繊維の断面を200倍〜800倍に拡大観察して測定する。繊維の断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、繊維を切断して得る。抽出した繊維1本について円形に近似したときの繊維径を5箇所測定し、それぞれ測定した値5点の平均値を繊維の直径とする。
【0041】
原料の段階で、高伸度繊維である熱伸長性繊維としては、上述の熱伸長性繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
【0042】
不織布1は、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、該構成繊維11が、隣り合う融着部12,12どうしの間に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を有している。具体的には、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、他の構成繊維11との交点を熱融着して形成された融着部12から、繊維径の小さい小径部16が略同じ繊維径で延出して形成されている。そして、該1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12それぞれから延出する小径部16,16どうしの間に、小径部16よりも繊維径の大きい大径部17が略同じ繊維径で延出して形成されている。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12の内の一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。
【0043】
上述したように不織布1の剛性が高まる融着部12に隣り合うように低剛性の小径部16が存在することにより、不織布1の柔軟性が向上し、肌触りが良好になる。また、大径部17を複数備える、言い換えると構成繊維11に低剛性の小径部16が多く存在するほど、不織布1の柔軟性が更に向上し、肌触りが更に良好になる。
不織布1は、表面シート2の凹凸領域2Mを形成する部分に、斯かる構成を有することで、着用者の肌の幅方向Yへの移動時に、凸条部13(凸部)が幅方向Yに一層容易に曲がるようになり、肌への追従変形性が向上し、着用中における違和感の発生等が一層防止される。
【0044】
不織布1は、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を複数(不織布1においては2個)備える構成繊維11を有している。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12の内の一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個目の大径部17、小径部16、2個目の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を、肌触り向上の観点と不織布強度低下の観点から、好ましくは1個以上5個以下備え、更に好ましくは1個以上3個以下備えている。
【0045】
大径部17の繊維径(直径L
17)に対する小径部16の繊維径(直径L
16)の比率(L
16/L
17)は、好ましくは0.5以上0.8以下、更に好ましくは0.55以上0.7以下である。具体的に、小径部16の繊維径(直径L
16)は、肌触り向上の観点から、好ましくは5μm以上28μm以下、更に好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。大径部17の繊維径(直径L
17)は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上35μm以下、更に好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
小径部16及び大径部17の繊維径(直径L
16,L
17)は、上述した繊維の繊維径の測定と同様にして測定する。
【0046】
また、不織布1は、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、融着部12に隣接する小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されていることが好ましい。ここで、不織布の変化点18とは、小さい繊維径で延出する小径部16から、小径部16よりも繊維径の大きい繊維径で延出する大径部17へ、連続的に漸次変化する部位或いは連続的に複数段階に亘って変化する部位を含まず、極端に一段で繊維径が変化する部位を意味する。また、前記1本の構成繊維11が熱伸長性複合繊維の場合には、本発明の不織布の変化点18とは、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分との間で剥離することによって繊維径が変化する状態を含まず、あくまで、延伸により繊維径が変化している部位を意味する。
【0047】
また、変化点18が、融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されているとは、不織布1の構成繊維11をランダムに抽出し、該構成繊維11を、
図7に示すように、走査電子顕微鏡として日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いて構成繊維11の隣り合う融着部12、12間が観察できるように(100倍〜300倍)に拡大する。次いで、隣り合う融着部12,12の中心どうしの間隔Tを3等分して、一方の融着部12側の領域AT、他方の融着部12側の領域BT、中央の領域CTに区分する。そして、変化点18が、前記領域AT又は前記領域BTに配されていることを意味する。また、変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されている不織布1とは、不織布1の構成繊維11を20本ランダムに抽出した際に、変化点18を前記領域AT又は前記領域BTに配している構成繊維11が、20本の構成繊維11の内に少なくとも1本以上ある不織布を意味する。具体的に、肌触り向上の観点から、好ましくは1本以上、更に好ましくは5本以上、特に好ましくは10本以上である。
【0048】
不織布1は、
図6に示すように不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、頂部域13a、底部域13b、及びこれらの間に位置する側部域13cとから構成される。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、不織布1のZ方向の厚みを三等分して、厚み方向Zの上方の部位を頂部域13a、中央の部位を側部域13c、下方の部位を底部域13bとして区別する。
【0049】
図6に示すとおり、不織布1をその厚み方向Zに沿って観察したとき、側部域13cの繊維密度は、頂部域13aの繊維密度及び底部域13bの繊維密度よりも低くなっている。繊維密度とは、不織布1の断面における単位面積当たりの繊維の本数のことである。したがって、側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bに比べて繊維の本数が少ない(繊維間距離の大きい)、疎な領域になっており、不織布1全体として、通気性が向上すると共に通液性も向上する。更に、側部域13cの繊維密度が最も小さく形成されることにより、凸条部13が着用者の肌の動きに追従しやすくなり、良好な肌当たりを実現することができる。このような繊維密度を側部域13cに付与するには、後述する製造方法に従い不織布1を製造すればよい。
【0050】
頂部域13aでの繊維密度(D
13a)、又は底部域13bでの繊維密度(D
13b)に対する側部域13cの繊維密度(D
13c)の比率(D
13c/D
13a,D
13c/D
13b)は、好ましくは0.15以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.8以下である。具体的に、不織布1の繊維密度の具体的な値は、頂部域13aでの繊維密度(D
13a)は、好ましくは90本/mm
2以上200本/mm
2以下、更に好ましくは100本/mm
2以上180本/mm
2以下である。また、底部域13bでの繊維密度(D
13b)は、好ましくは80本/mm
2以上200本/mm
2以下、更に好ましくは90本/mm
2以上180本/mm
2以下である。また、側部域13cの繊維密度(D
13c)は、好ましくは30本/mm
2以上80本/mm
2以下、更に好ましくは40本/mm
2以上70本/mm
2以下である。繊維密度の測定方法は以下のとおりである。
【0051】
〔頂部域13a、底部域13b及び側部域13cでの繊維密度の測定方法〕
フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて不織布を厚み方向Zに沿って切断する。頂部域13aでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の上方の部位である頂部域13aを、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm
2程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に1mm
2当たりの繊維の断面数に換算し、これを頂部域13aでの繊維密度とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。同様に、底部域13bでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の下方の部位を測定して求める。同様に、側部域13cの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
【0052】
表面シート2の凹凸領域2Mにおいては、凸条部13の頂部が、不織布1の頂部域13aから形成され、凹条部14の底部が、不織布1の底部域13bから形成されており、凸条部13の側壁部が、不織布1の側部域13cから形成されている。凸条部13の側壁部が、不織布1の側部域13cの繊維密度が、頂部域13a及び底部域13bの繊維密度より低いことで、着用者の肌の幅方向Yへの移動時に、凸条部13(凸部)が幅方向Yに一層容易に曲がるようになり、肌への追従変形性が向上し、着用中における違和感の発生等が一層防止される。
【0053】
また、本実施形態の不織布1は、側部域13cを構成する構成繊維における、変化点を有する繊維の本数が、頂部域13aを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数、及び底部域13bを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数よりも多く形成されている。頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13a)、又は底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13b)に対する側部域13cを構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数(N
13c)の比率(N
13c/N
13a,N
13c/N
13b)は、好ましくは2以上20以下、更に好ましくは5以上20以下である。具体的に、不織布1の変化点18を有する繊維の本数の具体的な値に関し、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13a)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13b)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13c)は、好ましくは5本以上20本以下、更に好ましくは10本以上20本以下である。変化点18を有する繊維の本数の測定方法は以下のとおりである。
【0054】
〔頂部域13a、底部域13b又は側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数の測定方法〕
頂部域13aを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みTをZ方向に3等分した際の上方の部位である頂部域13aの頂点付近を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;50〜500倍)し、頂部域13aを構成する構成繊維11を20本ランダムに抽出し、20本の構成繊維11の内に変化点18を有する繊維数を数える。これを頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。同様に、底部域13bを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の下方の部位である底部域13bの底点付近を測定して求める。同様に、側部域13cを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の中央の部位を測定して求める。尚、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
【0055】
不織布1の厚さについては、不織布1の側面視したときの全体の厚さをシート厚みT
Sとし、その凹凸に湾曲した不織布1の局部的な厚さを層厚みT
Lとする。シート厚みT
Sは、0.5mm以上7mm以下が好ましく、1.0mm以上5mm以下がより好ましい。この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。
【0056】
層厚みT
Lは、不織布1内の各部位において異なっていてもよく、頂部域13aの層厚みT
L1は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。底部域13bの層厚みT
L2は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。側部域13cの層厚みT
L3は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。各層厚みT
L1、T
L2、T
L3の関係は、この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。
【0057】
シート厚みT
S及び層厚みT
Lは以下の方法で測定される。
シート厚みT
Sの測定方法は、不織布1に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いる。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
層厚みT
Lの測定法は、シートの断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度で拡大することで、各層の厚みを測定する。
【0058】
不織布1を平面視したときに、Y方向に隣り合う凸条部13の頂部どうしのピッチは、1mm以上15mm以下が好ましく、1.5mm以上10mm以下がより好ましい。凸条部13の高さH〔
図3(b)参照〕は、0.5mm以上3mm以下が好ましく、1mm以上2mm以下がより好ましい。高さHは、不織布1の厚み方向Zの断面を顕微鏡観察し、無荷重下に測定する。
また不織布1の坪量は、シート全体の平均値で15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい。
【0059】
また、不織布1の構成繊維11の表面には、原料の段階で、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤等の繊維処理剤が、少量付着されていてもよい。
【0060】
繊維処理剤を構成繊維11の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、繊維処理剤への浸漬等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行ってもよいし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよい。ただし、後述する熱風吹き付け処理よりも前に処理を行う必要がある。繊維処理剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、ポリエチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
【0061】
表面シート2の凹凸領域2Mにおいては、
図3(a)に示すように、表面シート2を構成する不織布1は、その凹条部14のそれぞれにおいて下側シート6と熱融着によって接合されている。不織布1と下側シート6との接合部14sは、
図3(a)に示すように、長手方向Xに間欠的に形成されていても良いが、失禁パッド10の長手方向Xに連続して形成されていても良い。不織布1を、熱融着により下側シート6に接合するのに代えて、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合する等、他の接合手段によって下側シート6に接合しても良い。
【0062】
下側シート6は、不織布であることが好ましい。下側シート6を構成する不織布としては、各種製法による不織布を用いることができ、例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアスルー法で繊維同士の熱融着点を形成したエアスルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維同士の熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0063】
本発明の吸収性物品における吸収体4には、
図8に示すように、吸収性物品の長手方向Xに延びる溝411又は幅方向Yに延びる溝412が形成されていることが好ましい。吸収体4にの長手方向Xに延びる溝又は幅方向Yに延びる溝412を形成することにより、液の拡散性が向上し、液吸収後の吸収体4の長手方向X又は幅方向Yにおける厚みの変化が小さくなる。そのため、吸液後においても、中央域Mにおける肌当接面Pmと側部域Sにおける肌当接面Psとの間に段差が生じ難く、装着中においても、違和感が生じることが効果的に防止される。
なお、長手方向Xに延びる溝411又は幅方向Yに延びる溝412は、それぞれ、相互間に間隔を設けて複数本設けることが好ましい。また、長手方向Xに延びる溝411又は幅方向Yに延びる溝412は、いずれか一方のみを設けても良いし、両方を設けても良い。
【0064】
吸収体4としては、吸収性物品の吸収体として従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、吸収性コアと、該吸収性コアを包むコアラップシートから構成されているものを用いることができる。吸収性コアは、例えばパルプ等の吸液性繊維の積繊体や、該吸液性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸収性コアを構成する吸液性繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロール系の親水性繊維が挙げられる。セルロール系の親水性繊維に加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系繊維等を含んでいても良い。吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。繊維及び吸水性ポリマーは、それぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。コアラップシートとしては、ティッシュペーパーや不織布等の透水性の繊維シートが好適に用いられる。また、コアラップシートは、一枚のシートで吸収性コアの全体を包んでいても良いし、2枚以上のコアラップシートで吸収性コアの全体を包んでいても良く、例えば、吸収性コアの肌当接面側と非肌当接面側とを別々のシートで被覆していても良い。
【0065】
吸収体4が、吸収性コアと、吸収性コアを包むコアラップシートから構成されているものである場合、前述した溝411又は溝412は、吸収性コアのみに設けても良いし、コアラップシートと吸収性コアとに一体に設けても良い。また、吸収性物品の長手方向Xに延びる溝411又は幅方向Yに延びる溝412を用いることができる。
【0066】
吸収体4の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下であり、また好ましくは1mm以上15mm以下、更に好ましくは2mm以上10mm以下である。
吸収体4の厚みは、下記方法により測定される。
厚みTの測定には、2つの平行な加圧面(固定加圧面と可動加圧面)を持つマイクロメーターであるピーコック式精密測定器(型式R1−C)を用い、測定子可動加圧面の直径は5mm、圧力は100kPa以下で測定し、測定用試験片の大きさは、下記プレートの大きさ以上とする。試験片上に20mm×20mmのプレート(重量5.4g)を置き、測定子可動加圧面を2mm/sの速度で操作し、該プレートに当て、安定直後の値を読み取る。加圧面間(試験片に加わる圧力)の圧力は1.3kPa以下になる。
【0067】
裏面シート3の形成材料としては、吸収性物品の裏面シートに従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等を用いることができる。
【0068】
多層構造のサイドシート8の層間、表面シート2と吸収体4との間、吸収体4と裏面シート3との間は、それぞれ、接着剤で接合されていることが好ましい。各部材間を、接着剤で接合する場合、スロットコーター等によるべた塗りでも良いが、パターン塗工が好ましい。パターン塗工の塗工パターンの好ましい例としては、スパイラルパターン、ドットパターン、ストライプパターン(縞状パターン)、格子パターン、市松模様状のパターン等が挙げられる。
【0069】
本発明の吸収性物品には、一対のサイドシート8間の距離Lm(
図2参照)が比較的小さい場合に、一層効果が顕著である。一対のサイドシート8間の距離Lmが小さい場合とは、例えば、一対のサイドシート8間の距離Lmが、30mm以上60mm以下である場合である。
【0070】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図9に示す失禁パッド10Aにおいても、表面シート2は、失禁パッド10Aの幅方向Yの中央域Mに、肌側に向かって突出する複数の凸部13と凹部14とを有する凹凸領域2Mを有しており、凹凸領域2Mを挟む両側それぞれに、凸部13及び凹部14を有しない非凹凸領域2S,2Sを有している。凹凸領域2Mの構成は、上述した失禁パッド10と同様であるが、非凹凸領域2Sは、上述した失禁パッド10とは異なり、下側シート6が存在していない。
また、サイドシート8は、吸収体4上のみに、表面シート2の肌当接面側を覆う部分を有しており、サイドシート8は、吸収体4上に位置する部分が、表面シート2と接合されている。
失禁パッド10Aにおいても、サイドシート8の吸収体4上に位置する部分は、表面シート2の非凹凸領域2Sと重なる一方、凹凸領域2Mとは重なっていない。サイドシート8の吸収体4上に配された部分が、表面シート2の非凹凸領域2Sと重なるように配されており、一方、凹凸領域2Mと重ならないように配されている。そして、表面シート2の凹凸領域2Mにより形成された中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと、サイドシート8により形成された側部域Sの肌当接面Psの高さtsとが同じとなっている。
失禁パッド10Aによっても、前述した失禁パッド10と同様の効果が奏される。失禁パッド10Aの構成に関し、特に説明しない点は、失禁パッド10と同様とすることができる。
【0071】
図10に示す失禁パッド10Bは、前述した失禁パッド10の表面シート2と同様の表面シート2を備えているが、表面シート2の肌当接面側がサイドシート8に覆われている側部域S,Sが、吸収体4の側縁4sより幅方向Y外方に形成されている。サイドシート8は、その全体が、吸収体4の側縁4sより幅方向Y外方に位置しており、また、サイドシート8は、一枚のシートを3つ折りして形成した3層構造部分を有し、その3層構造部分が、表面シート2の非凹凸領域2S上に積層されて、側部域Sの肌当接面Psを形成している。
失禁パッド10Bにおいても、表面シート2の凹凸領域2Mにより形成された中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと、サイドシート8により形成された側部域Sの肌当接面Psの高さtsとが同じとなっている。
失禁パッド10Bによっても、前述した失禁パッド10と同様の効果が奏される。失禁パッド10Bの構成に関し、特に説明しない点は、失禁パッド10と同様とすることができる。
【0072】
図11に示す失禁パッド10Cは、表面シート2Cが、中空構造を有しない凹凸領域2Mを有している。
図12は、その表面シート2Cの凹凸領域2Mの一部を抜粋して示す斜視図である。失禁パッド10Cに用いた表面シート2Cの凹凸領域2Mは、熱可塑性繊維を含んで構成されており、
図12に示すように、第1部25Aと第1部25Aに比して厚みが薄い第2部24Aとを、失禁パッド10Cの幅方向Yに交互に有し、第1面2aに、第1部25Aが凸部としての凸条部25’を形成し、第2部24Aが凹部としての凹条部24’を形成している。表面シート2Cの凹凸領域2Mは、凸条部25’及び凹条部24’が形成されて凹凸面となっているのに対し、第2面2bは、平坦であるか又は該凹凸面に比して凹凸の程度が明確に小さい。表面シート2Cは、凹凸領域2Mの両側それぞれに、厚みが一定の非凹凸領域2S,2Sを有している。非凹凸領域2Sは、第1面2a及び第2面2bが、何れも、平坦であるか又は凹凸領域2Mの第1面2aに比して凹凸の程度が明確に小さい。 失禁パッド10Cにおいても、表面シート2Cの凹凸領域2Mにより形成された中央域Mの肌当接面Pmの高さtmと、サイドシート8により形成された側部域Sの肌当接面Psの高さtsとが同じとなっており、前述した失禁パッド10と同様の効果が奏される。
【0073】
図13に示す失禁パッド10Dにおいては、吸収体4が、失禁パッドの幅方向Yの両端部に、幅方向中央部41よりも厚みが薄い肉薄部42,42を有している。そして、その吸収体4の肉薄部42,42上に、表面シート2の肌当接面側がサイドシート8によって覆われた部分を有している。失禁パッド10Dにおいても、表面シート2の凹凸領域2Mにより形成された中央域の肌当接面の高さと、サイドシート8により形成された側部域の肌当接面の高さとが同じとなっており、失禁パッド10と同様の効果が奏される。
【0074】
上述した失禁パッド10の表面シート2は、高伸度繊維を含む繊維ウエブの構成繊維同士の交点を融着部にて熱融着して繊維シートを形成する融着工程と、前記繊維シートを一方向に延伸する延伸工程と、前記不織布に下側シート6を接合させる複合化工程とによって製造される。
表面シート2の製造工程について、
図14を参照しながら説明する。
図14には、表面シート2の製造方法に用いられる好ましい製造装置100が模式的に示されている。製造装置100は、エア−スルー不織布の製造及びそれを用いた表面シートの製造に好適に用いられるものである。製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部200、熱風処理部300、延伸部400、及び下側シート接合部500をこの順で備えている。
【0075】
ウエブ形成部200には、
図14に示すように、ウエブ形成装置201が備えられている。ウエブ形成装置201としては、カード機が用いられている。カード機としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。不織布1の具体的な用途に応じ、カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。
【0076】
熱風処理部300は、
図14に示すように、フード301を備えている。フード301内では、エアスルー方式で熱風を吹き付けることができるようになっている。また、熱風処理部300は、通気性ネットからなる無端状のコンベアベルト302を備えている。コンベアベルト302は、フード301内を周回している。コンベアベルト302は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、或いは金属から形成されている。
【0077】
フード301内にて吹き付けられる熱風の温度及び熱処理時間は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の含む高伸度繊維の交点が熱融着するように調整することが好ましい。より具体的には、熱風の温度は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の内の最も融点が低い樹脂の融点に対して、0℃〜30℃高い温度に調整することが好ましい。熱処理時間は、熱風の温度に応じて、1秒〜5秒に調整することが好ましい。また、構成繊維11同士の更なる交絡を促す観点から、熱風の風速は0.3m/秒〜1.5m/秒程度であることが好ましい。また、搬送速度は、5m/min〜100m/min程度であることが好ましい。
【0078】
延伸部400は、
図14,
図15に示すように、互いに噛み合いが可能になっている一対の凹凸ロール401,402を備えている。一対の凹凸ロール401,402は、加熱可能に形成されており、それぞれの軸長方向の中央部に、大径凸部403,404と小径凹部(図示せず)とがロール軸方向に交互に配されて形成されている。凹凸ロール401,402は加熱してもしなくても良いが、凹凸ロール401,402を加熱する場合の加熱温度は、後述する繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維を延伸し易くする観点から、高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点以上、高伸度繊維内の最も融点が低い樹脂の融点以下にすることが好ましい。より好ましくは繊維のガラス転移点より10℃高い温度以上、融点よりも10℃低い温度以下であり、更に好ましくは繊維のガラス転移点より20℃高い温度以上、融点よりも20℃低い温度以下である。例えば、繊維に芯/鞘構造の繊維として、ガラス転移点67℃、融点258℃のPET(芯)/ガラス転移点−20℃、融点135℃のPE(鞘)を用いた際に加熱する場合には、67℃以上、135℃以下が好ましく、より好ましくは77℃以上、125℃以下、更に好ましくは87℃以上、115℃以下に加温する。
【0079】
また、製造装置100においては、
図15に示すように、凹凸ロール401のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし403,403の間隔(ピッチ)、及び凹凸ロール402のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし404,404の間隔(ピッチ)が同じ間隔(ピッチ)wであり、間隔(ピッチ)wは、繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる観点から、好ましくは1mm以上10mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上8mm以下である。同様の観点から、
図15に示すように、一対の凹凸ロール401,402の押し込み量t(ロール軸方向に隣り合う大径凸部403の頂点と大径凸部404の頂点との間隔)は、好ましくは1mm以上3mm以下であり、特に好ましくは1.2mm以上2.5mm以下である。そして機械延伸倍率は、同様の観点から、好ましくは1.5倍以上3.0倍以下であり、特に好ましくは1.7倍以上2.8倍以下である。
【0080】
下側シート接合部500は、凹凸ロール402と表面平滑なフラットロール501とを備えており、凹凸ロール402の大径凸部404とフラットロール501の周面との間で、凹凸形状とされた不織布1と下側シート6とを、加熱及び加圧することにより接合する。
【0081】
以上の構成を有する製造装置100を用いた表面シート2の製造方法について説明する。
先ず、
図14に示すように、ウエブ形成部200にて、高伸度繊維である熱伸長性複合繊維を有する短繊維状の構成繊維11を原料として用い、カード機であるウエブ形成装置201によって繊維ウエブ1bを形成する(ウエブ形成工程)。ウエブ形成装置201によって製造された繊維ウエブ1bは、その構成繊維11どうしが緩く絡合した状態にあり、シートとしての保形性を獲得するには至っていない。
【0082】
次いで、
図14に示すように、高伸度繊維を含む繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしの交点を融着部12にて熱融着して繊維シート1aを形成する(融着工程)。具体的には、繊維ウエブ1bは、コンベアベルト302上に搬送され、熱風処理部300にて、フード301内を通過する間に、熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。このようにエアスルー方式で熱風が吹き付けられると、繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしが更に交絡すると同時に、絡合した繊維の交点が熱融着して(
図16(a)参照)、シート状の保形性を有する繊維シート1aが製造される。
【0083】
次いで、
図15に示すように、融着された繊維シート1aを一方向に延伸する(延伸工程)。具体的には、シートとしての保形性を有する融着された繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、
図16(a)〜
図16(c)に示すように、繊維シート1aを延伸して、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を形成するとともに、該小径部16から該大径部17への変化点18を、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成する。詳述すると、
図16(a)に示すような、構成繊維11どうしの交点が融着部12にて熱融着している繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、繊維シート1aを、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸する。繊維シート1aが直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸される際には、
図16(a)に示す、構成繊維11どうしを固定している隣り合う該融着部12,12どうしの間の領域が、直交方向(CD,ロール軸方向)に積極的に引き伸ばされる。特に、
図16(b)に示すように、構成繊維11どうしを固定している各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こり易く、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、両端に2個の小径部16,16が形成され、該2個の小径部16,16に挟まれた部分が大径部17となり、2個の小径部16,16に挟まれた大径部17が形成される。このように、各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こり易いので、小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成される。
【0084】
そして、一部の隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、
図16(c)に示すように、伸長できる余地(伸びしろ)を残した状態で、更に直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸され、該隣り合う融着部12,12どうしの間の大径部17が延伸され、大径部17の中に小径部16が複数形成されるようになる。
【0085】
延伸工程においては、高伸度繊維から小径部16及び大径部17が形成されるのと同時に、繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分が、他の部分よりも引き延ばされる。この場合、繊維シート1aの構成繊維は高伸度繊維なので、引き伸ばしを受けても切断せず、首尾よく引き伸ばしが行われる。繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分は、目的とする不織布1における凸条部13の側部域13cであるから、前記の引き伸ばしによって側部域13cでは繊維が切断されることなく繊維間距離が延伸前に比べて増加する。その結果、側部域13cの繊維密度が他の部位よりも低下して、通気性が向上する。しかも、側部域13cを構成する繊維に切断は生じていないので、凸条部13の強度が高いレベルに維持される。その結果、凸条部13に荷重が加わっても、該凸条部13が潰れにくくなる。
【0086】
以上のように、製造装置100を用いた表面シート2の製造方法によれば、
図7に示す構成繊維11を備える不織布1を連続的に効率よく製造することができる。また、製造された不織布1は、凹凸ロール402によって、凹凸形状に変形された状態のまま、下側シート接合部500のシート合流部に搬送される。シート合流部には、ロール状巻回物6’から巻き出された下側シートとして使用される帯状の不織布6が供給されており、凹凸形状の不織布1は、帯状の不織布6と重ねた状態とされて、凹凸ロール402とフラットロール501との間に導入される。凹凸ロール402とフラットロール501との間においては、凹凸形状の不織布1における凹条部部分と帯状の不織布6とが、凹凸ロール402の大径凸部404とフラットロール501の周面との間で加熱及び加圧されて接合する。このようにして、幅方向の中央部に凹凸構造を有する不織布1が、凹条部14において下側シート6に接合された構成の帯状の表面シート2が得られる。帯状の表面シート2は、巻き取った後に、失禁パッド10の製造ラインに導入されるか、巻き取ることなく、失禁パッド10の製造ラインに導入される。
【0087】
本発明の吸収性物品は、上述した本実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、本発明の吸収性物品における表面シートは、一方向に延びる凸条部を凸部として有するものに代えて、一方向に連続しない独立した凸部が、平面視において多数散点状に形成されているものであっても良い。その場合の独立した凸部の個々の形状は、円形、三角形、四角形、楕円形等の任意の形状することができる。また、それらの凸部の配置は、複数の凸部からなる凸部列が吸収性物品の長手方向又は幅方向に沿って形成される配置であっても良いし、千鳥配置等であっても良い。
また、本発明の吸収性物品は、失禁パッドに代えて、生理用ナプキンやパンティライナーであっても良い。それらの吸収性物品は、
図1に示すように、長手方向の中央部が括れた平面視長円状のものに限られずに、括れ部を有しない長円形や矩形状であっても良く、液排泄部対向部の両側にウイング部を備えたものであっても良い。また不織布からなる下側シート6は、吸収性物品の長手方向X及び幅方向Yの一方又は双方における長さが不織布1と同一であっても短くても良い。吸収性物品の側部域Sにおいて、サイドシート8は、下側シート6における不織布1の側縁から延出した部分と接合されていても良い。
【0088】
また、本発明における吸収体は、
図17に示す吸収体4のように、吸収性シート43から構成されていても良い。
図17に示す吸収体4は、吸収性シート43が2層以上に積層された積層体からなる。2層以上の積層体は、一枚の吸収性シートを折り畳むと共にそれらの層間を接着して積層体としたものであっても良いし、枚葉の吸収性シートを複数枚貼り合わせて積層したものでも良い。また、2層以上の積層体の層間や片面上に追加の吸収性シートを配して一部が肉厚とされた吸収体としても良い。吸収性シートとしては、繊維材料及び吸水性ポリマーを含む吸収性シートが好ましく用いられる。また吸収性シートとしては、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとして、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸水性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸水性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることもできる。これらの吸収性シートは、2層以上に積層せずに単層構造の吸収体として用いることもできる。また積層する場合の層間は接着しなくても良い。
【0089】
上述した実施形態に関し、さらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
肌当接面を形成する液透過性の表面シート、非肌当接面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備する吸収性物品であって、
前記表面シートは、少なくとも吸収性物品の幅方向の中央域に、肌側に向かって突出する複数の凸部と、複数の該凸部の間に位置する凹部とを有する凹凸領域を有し、吸収性物品は、前記中央域の両側にそれぞれに、前記表面シートの肌当接面側が、液不透過性のサイドシートに覆われた側部域を有し、該サイドシートは、該側部域の一部又は全域において該表面シートと接合されており、
吸収性物品は、前記表面シートの前記凹凸領域により形成された前記中央域における肌当接面の高さと、前記サイドシートにより形成された前記側部域の肌当接面の高さとが同じである、吸収性物品。
【0090】
<2>
前記中央域における肌当接面の高さtmと前記側部域における肌当接面の高さtsとの差(tm−ts)の絶対値が0.5mm以下である場合に、前記中央域における肌当接面の高さtmと前記側部域における肌当接面の高さtsとが同じであるとする、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記中央域における肌当接面の高さtmと前記側部域における肌当接面の高さtsとの差(tm−ts)の絶対値が0.3mm以下である場合に、前記中央域における肌当接面の高さtmと前記側部域における肌当接面の高さtsとが同じであるとする、前記<1>に記載の吸収性物品。
<4>
前記表面シートは、前記凹凸領域を挟む両側それぞれに、前記凸部及び前記凹部を有しない非凹凸領域を有しており、前記サイドシートは、該非凹凸領域を覆っており且つ該非凹凸領域の一部又は全域において前記表面シートと接合されている、前記<1>〜<3>の何れか1に記載の吸収性物品。
<5>
前記側部域における前記サイドシートは、前記表面シートの肌当接面側を覆う部分の一部又は全域が、前記吸収体上に位置している、前記<1>〜<4>の何れか1に記載の吸収性物品。
<6>
前記側部域における前記サイドシートは、少なくとも前記吸収体上に位置する部分が、前記表面シートと接合されている、前記<5>に記載の吸収性物品。
【0091】
<7>
前記表面シートの前記凹凸領域には、吸収性物品の長手方向に延びる凸条部及び凹条部が吸収性物品の幅方向に交互に形成されている、前記<1>〜<6>の何れか1に記載の吸収性物品。
<8>
前記表面シートの前記凹凸領域における肌当接面側の面が、吸収性物品の長手方向に延びる凸条部及び凹条部が吸収性物品の幅方向に交互に形成されている凹凸構造の不織布から形成されている、前記<7>に記載の吸収性物品。
<9>
前記表面シートは、前記不織布の前記凹条部において前記不織布と接合されている下側シートを有し、前記凸条部が中空構造を有する、前記<8>に記載の吸収性物品。
<10>
前記下側シートは、不織布である、前記<9>に記載の吸収性物品。
<11>
前記凹凸構造の不織布と前記下側シートとの接合部は、吸収性物品の長手方向に間欠的に形成されている、前記<9>又は<10>に記載の吸収性物品。
<12>
前記表面シートは、前記凹凸領域を挟む両側それぞれに、前記凸部及び前記凹部を有しない非凹凸領域を有しており、
前記非凹凸領域は、前記下側シートが存在していない、前記<9>〜<11>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0092】
<13>
前記凹凸構造の不織布は、凸条部の側壁部を形成する側部域の繊維密度が、凹条部の頂部を形成する頂部域の繊維密度及び凹条部の底部を形成する底部域の繊維密度よりも低くなっている、前記<8>〜<12>の何れか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記凹凸構造の不織布は、該不織布を構成する構成繊維どうしが複数の融着部にて固定されており、
前記凹凸構造の不織布の構成繊維の内の1本の構成繊維に着目して、該構成繊維が、隣り合う前記融着部どうしの間に、繊維径の小さい2個の小径部に挟まれた繊維径の大きい大径部を有している、前記<8>〜<13>の何れか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記凹凸構造の不織布の構成繊維のうちの1本の構成繊維に着目して、前記融着部に隣接する前記小径部から前記大径部への変化点が、該融着部から隣り合う融着部どうしの間隔の1/3の範囲内に配されている、前記<14>に記載の吸収性物品。
<16>
前記凹凸構造の不織布は、凸条部の側壁部を形成する側部域を構成する構成繊維における、前記小径部から前記大径部への変化点を有する繊維の本数が、凹条部の頂部を形成する頂部域を構成する構成繊維における、前記小径部から前記大径部への変化点を有する繊維の本数、及び凹条部の底部を形成する底部域を構成する構成繊維における、前記小径部から前記大径部への変化点を有する繊維の本数よりも多く形成されている、前記<14>又は<15>に記載の吸収性物品。
<17>
前記大径部の繊維径(直径L
17)に対する前記小径部の繊維径(直径L
16)の比率(L
16/L
17)は、0.5以上0.8以下、好ましくは0.55以上0.7以下である、前記<14>〜<16>の何れか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記凸条部の配置ピッチは、該凸条部の高さの、30%以上、好ましくは50%以上であり、また400%以下、好ましくは200%以下であり、30%以上400%以下、好ましくは50%以上200%以下である、前記<7>〜<17>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0093】
<19>
前記吸収体に、吸収性物品の長手方向に延びる溝又は吸収性物品の幅方向に延びる溝が形成されている、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記サイドシートは、一枚のシートを、吸収性物品の幅方向中央側に位置する内側縁部において折り返して2層構造とした積層シートである、前記<1>〜<19>の何れか1に記載の吸収性物品。
<21>
前記積層シートの層間は、部分的に接合されている、前記<20>に記載の吸収性物品。
<22>
前記表面シート及び前記サイドシートは、前記吸収体の周縁部より外方において、前記裏面シートと接合されており、それによって周縁シール部が形成されている、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記サイドシートには、吸収性物品の長手方向に沿って延びる弾性部材が配されていない、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0094】
<24>
前記凹凸領域における前記凸部の高さは、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上であり、また3.0mm以下、好ましくは2.0mm以下であり、また0.5mm以上3.0mm以下、好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である、前記<1>〜<23>の何れか1に記載の吸収性物品。
<25>
前記吸収体の厚みは、1mm以上、好ましくは2mm以上であり、また15mm以下、好ましくは10mm以下であり、また1mm以上15mm以下、好ましくは2mm以上10mm以下である、前記<1>〜<24>の何れか1に記載の吸収性物品。
<26>
前記サイドシート間の距離が、30mm以上60mm以下である、前記<1>〜<25>の何れか1に記載の吸収性物品。
<27>
前記サイドシートは、その全体が、前記吸収体の側縁より吸収性物品の幅方向外方に位置している、前記<1>〜<26>の何れか1に記載の吸収性物品。
<28>
前記吸収体は、幅方向の両端部に、幅方向中央部よりも厚みが薄い肉薄部を有しており、
前記吸収体の肉薄部上に、前記表面シートの肌当接面側が前記サイドシートによって覆われた部分を有している、前記<1>〜<27>の何れか1に記載の吸収性物品。