(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
肌当接面を形成する液透過性の表面シート、非肌当接面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備し、長手方向及び幅方向を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、前記長手方向に延びる凸条部及び凹条部が前記幅方向に交互に形成された凹凸構造の上層不織布と、該凹条部の底部に形成された接合部において該上層不織布と接合された下層シートとを具備し、前記凸条部は中空構造を有しており、
前記吸収体は、液保持性の吸収性コアを含み、該吸収性コアに、肌当接面側が開口した前記長手方向に延びる縦溝が複数本形成されており、
前記表面シートは、前記接合部の前記幅方向の長さが、前記縦溝の前記幅方向の長さより短く、複数本の前記凹条部の前記接合部が、前記縦溝の前記幅方向における一部と重なっており、前記縦溝と重なる前記接合部と前記縦溝の底部との間に空間を有している、吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の一実施形態である失禁パッド10(以下、単に「失禁パッド10」ともいう。)の斜視図が示されている。
図2(a)は、
図1のII−II線拡大断面図である。
失禁パッド10は、
図1及び
図2に示すように、肌当接面を形成する液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。液不透過性は、液難透過性を含む。失禁パッド10は、縦長の形状を有し、長手方向X及び幅方向Yを有している。長手方向Xは、失禁パッド10を着用したときの着用者の前後方向と一致し、幅方向Yは、失禁パッド10の平面視において、長手方向Xと直交する方向である。
【0010】
表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の周縁から延出している。失禁パッド10の裏面シート3側の面(非肌当接面)には、該失禁パッド10をショーツ等の下着に固定するための粘着部(図示略)が設けられている。肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(通常、下着側)に向けられる面である。また、失禁パッド10(吸収性物品)は、その長手方向に、着用者の液排泄部が対向配置される排泄部対向部B、排泄部対向部より前方(着用者の腹側)に配される前方部A、及び排泄部対向部より後方(着用者の背側)に配される後方部Cを有している。
【0011】
失禁パッド10の吸収体4は、吸収性コア40と、その表面の概ね全域を被覆するコアラップシート45とから構成されている。吸収性コア40は、例えばパルプ等の吸液性繊維の積繊体や、該吸液性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸収性コア40を構成する吸液性繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロール系の親水性繊維が挙げられる。セルロール系の親水性繊維に加えて、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル及びポリアミド等の縮合系繊維等を含んでいてもよい。吸収性ポリマーとしては例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。繊維及び吸収性ポリマーは、それぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。吸収性コア40を被覆するコアラップシート45としては、例えばティッシュペーパーや不織布などの液透過性の繊維シートが好適に用いられる。またコアラップシート45は、一枚のシートで吸収性コア40の全体を被覆していてもよいし、2枚以上のコアラップシートで吸収性コア40の全体を被覆していてもよい。例えば、吸収性コア40の肌当接面側と非肌当接面側とを別々のシートで被覆していてもよい。
【0012】
裏面シート3の形成材料としては、吸収性物品の裏面シートに従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等を用いることができる。
【0013】
失禁パッド10の肌当接面側における幅方向Yの両側部の位置には、長手方向に延びる防漏カフ8がそれぞれ設けられている。防漏カフ8は、長手方向にそれぞれ延びる自由端8a及び固定域8bを有している。固定域8bは表面シート2上に位置している。そして防漏カフ8は、固定域8bにおいて表面シート2と固定されている。また防漏カフ8の固定域8bは幅方向Yの外方へ延出しており、その延出部位と、裏面シート3の幅方向延出部位とが接合されてサイドフラップ7を形成している。防漏カフ8においては、自由端8a又はその近傍の位置に、長手方向Xに沿って延びる弾性部材8cが伸長状態で取り付けられている。弾性部材8cは、互いに概ね平行に複数本配されている。それら複数本の弾性部材8cが取り付けられた部位は、面状弾性領域8dを形成している。面状弾性領域8dは、幅方向Yに沿って所定の長さを有し、少なくと
も排泄部対向部Bの位置に長手方向Xに沿って延びている。そして面状弾性領域8dは、長手方向Xに沿って伸縮可能になっている。弾性部材8cが収縮することで、防漏カフ8は、その自由端8aと固定域8bとの間の位置が、着用者の身体側に向けて略L字状に起立して、面状弾性領域8dが着用者の肌に当接し、液の横漏れを阻止するようになっている。
【0014】
本実施形態の失禁パッド10における表面シート2は、
図2(a)及び
図3に示すように、失禁パッド10の長手方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が失禁パッド10の幅方向Yに交互に形成された凹凸構造の不織布1(上層不織布)と、凹条部14の底部に形成された接合部14sにおいて該不織布1と接合されている下層シート6とから形成されており、凸条部13は中空構造を有している。
表面シート2を構成する凹凸構造の不織布1においては、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」は、失禁パッド10の長手方向Xと同方向であり、不織布1において、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」をX方向とも表記する。
【0015】
不織布1は、
図2及び
図3に示すように、表裏両面a,bの断面形状がともに厚み方向(Z方向)の上方に向かって凸状をなす複数の凸条部13と、隣り合う凸条部13,13どうしの間に位置する凹条部14とを有している。凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに不織布の厚み方向(Z方向)の上方に向かって凹状をなしている。言い換えれば、凹条部14は、表裏両面a,bの断面形状がともに不織布の厚み方向(Z方向)の下方に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部13は、それぞれ、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びており、複数の凹条部14も、不織布1の一方向Xに連続して延びる溝状をなしている。凸条部13及び凹条部14は、互いに平行であり、前記一方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に交互に配されている。
【0016】
不織布1は、後述するように、繊維シート1aに、互いに噛み合う一対の凹凸ロール401,402を用いて凹凸加工を施して製造されたものである。上述した不織布1の一方向(X方向)とは、繊維シート1aに凹凸加工を施して不織布1を製造する際の機械方向(MD,流れ方向)と同じ方向であり、上述した不織布1の一方向(X方向)に直交する方向(Y方向)とは、前記機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)と同じ方向である。
【0017】
表面シート2を構成する不織布1(上層不織布)は、前述したとおり、凹条部14の底部に形成された接合部14sにおいて下層シート6と接合されている。
不織布1と下層シート6との接合部14sは、失禁パッド10の長手方向Xに連続して形成されていても良いが、
図2(a)に示すように、長手方向Xに間欠的に形成されていることが好ましい。表面シート2と下層シート6とを間欠的に接合することで、接合部14sの面積が小さくなり、接合部14sが肌に一層接触しにくくなるため、肌に一層刺激を与えにくくなる。
【0018】
また、不織布1の凹条部14の底部を下層シート6に接合する方法としては、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合する方法であっても良いが、不織布1の構成繊維が溶融する接合方法であることが好ましい。不織布1の構成繊維が溶融する接合方法としては、ヒートシール、超音波シール、レーザーを用いた熱融着等が挙げられる。不織布1の構成繊維が溶融する接合方法により接合部14sを形成すると、接合部14sが周囲から窪んだ状態に形成されやすいため、接合部14sが肌に接触しにくくなり、肌に一層刺激を与えにくくなる。
【0019】
下層シート6は、不織布であることが好ましい。下層シート6を構成する不織布としては、各種製法による不織布を用いることができ、例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアスルー法で繊維同士の熱融着点を形成したエアスルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維同士の熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0020】
吸収体4が、吸収性コア40とコアラップシート45とから構成されていることは上述のとおりであるところ、
図2(a)及び
図3に示すように、吸収性コア40は、相対的に坪量が高く非肌当接面側に向けて突出した凸の形状を有する高坪量部41と、高坪量部41に隣接し、かつ相対的に坪量が低く肌当接面側に向けて凹んだ低坪量部42とを有している。高坪量部41と低坪量部42とは一体成形されている。吸収性コア40は、その肌当接面側が凹凸構造となっており、かつ非肌当接面側が平坦となっている。「一体成形されている」とは、これらの部位が、接着剤や熱融着等の接合手段を介さずに互いに分離不可能に一体化されており、同一の材料から一体的に形成されていることを意味する。これらの部位が一体成形されていると、体液がスムーズに移動し得る連続性を有するようになる。なお簡便のため、
図3においてはコアラップシート45の図示は省略されている。
【0021】
また、
図2(b)及び
図3に示すように、低坪量部42は、その複数本が吸収性コア40の長手方向Xと平行に延びている。それにより、吸収性コア40は、その肌当接面側に、長手方向Xに延び、かつ非肌当接面側に向けて凹んだ縦溝43を複数有している。また、低坪量部42は、その複数本が吸収性コア40の幅方向Yにも延びている。それにより、吸収性コア40は、その肌当接面側に、幅方向Yに延び、かつ非肌当接面側に向けて凹んだ横溝44を複数有している。縦溝43及び横溝44は、
図2(b)に示すように、互いに交差して、長手方向及び幅方向に延びる直交した格子状の溝部をしている。
低坪量部42も、長手方向及び幅方向に延びる直交した格子状の形状をしている。そして、低坪量部42によって形成される格子内に高坪量部41が位置している。したがって個々の高坪量部41は低坪量部42によって区画されており、個々に独立している。別の見方をすると、高坪量部41は、長手方向Xに沿って断続的に延びている。各高坪量部41の形状はほぼ同じであり、平面視して矩形をしており、長手方向の長さが、幅方向の長さよりも大きくなっている。一方、低坪量部42に関しては、該低坪量部42が吸収性コア40の長手方向及び幅方向に延びて互いに連結しており連続体となっている。縦溝43の幅(物品幅方向Yの長さL3)と、横溝44の幅(物品長手方向Xの長さL4)とは、同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。縦溝43の深さと横溝44の深さも、同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0022】
高坪量部41の坪量に対する低坪量部42の坪量の割合は、好ましくは20%であり、更に好ましくは30%であり、また好ましくは80%であり、更に好ましくは70%である。高坪量部41の坪量は、好ましくは300g/m
2であり、更に好ましくは350g/m
2であり、また好ましくは900g/m
2であり、更に好ましくは800g/m
2である。低坪量部42の坪量は、好ましくは100g/m
2であり、更に好ましくは150g/m
2であり、好ましくは500g/m2であり、更に好ましくは400g/m2である。
【0023】
高坪量部41は、低坪量部42よりも坪量が大きいだけでなく、密度も大きくなっている。換言すれば、低坪量部42は高坪量部41よりも低密度になっている。このような構成は、例えば、吸収性コア40を製造する工程において、厚みの大きな領域である高坪量部41を、厚みの小さな領域である低坪量部42よりも強くプレスすることで得ることができる。プレスによる圧力は厚みの大きい高坪量部41に集中し、厚みの小さい低坪量部42はプレスにより圧力を受けず圧縮されない。このように、高坪量部41のみが圧縮されることで高坪量部41は低坪量部42に対して密度が高まる。
【0024】
以上の構成を有する吸収性コア40を製造するために好適な方法は、例えば特開2013−255566号公報等に記載されている。
【0025】
本実施形態における表面シート2は、
図4に示すように、接合部14sの物品幅方向Yの長さLsが、吸収性コア40の縦溝43の物品幅方向Yの長さL3より短い。物品幅方向Yは、失禁パッド等の吸収性物品の幅方向Yのことであり、接合部14s及び縦溝43等に関し、物品幅方向Yの長さとは、吸収性物品の幅方向Yに沿って測定した長さである。
また、複数本の凹条部14Aの接合部14sは、縦溝43の物品幅方向Yにおける一部と重なっている。また、その複数本の凹条部14Aにおける、縦溝43と重なる接合部14sは、縦溝43の底部との間に空間cを有している。
接合部14sは、
図4に示すように、縦溝43の両側縁43s、43sのいずれからも離間した縦溝43の中央域と重なっていることが好ましい。
【0026】
また本実施形態においては、表面シート2の凹条部14は、物品幅方向Yに一定の間隔で配されており、縦溝43も、物品幅方向Yに、凹条部14とは異なる一定の間隔で配されている。
また、物品幅方向Yにおいて、表面シート2の凹条部14は、2本おきに1本の割合で縦溝43と重なっており、縦溝43の配置間隔である縦溝43のピッチP3は、凹条部14の配置間隔である凹条部14のピッチP4の3倍となっている。ピッチP4は、隣り合う凹条部14の同一部位(底部の幅方向中央位置)間の距離であり、縦溝43のピッチP3も、隣り合う縦溝43の同一部位(幅方向中央位置)間の距離である。
【0027】
本実施形態の失禁パッド10によれば、着用中に、着用者の動作、例えば立ち座りの動作や横になる動作、歩行動作等に起因して失禁パッド10が幅方向Yに沿って移動した場合、表面シート2の凸条部13が、下層シート6に凹条部14の底部に形成された接合部14sにより接合されているため、失禁パッド10の移動に追従して、凸条部13が、凹条部14の底部を基点として容易に傾倒し、着用者の肌と凸条部13との擦れを緩和する。
しかも、複数本の凹条部14Aにおいて、接合部14sが縦溝43と重なっており、その接合部14sが、縦溝43よりも幅狭で、縦溝43の底部との間に空間cを有しているため、着用中に、失禁パッド10の厚み方向に加わる力に対して、縦溝43と重なる接合部14sが、縦溝43に陥入するか、陥入する方向に移動して、その接合部14sが肌に接触することが防止され、また、接合部14s下に空間cを有することによって、接合部14sを有する凹条部14の底部が、失禁パッド10の幅方向に対して、わずかではあるが追従して移動するため、失禁パッド10が幅方向Yに沿って移動したときの、着用者の肌と凸条部13との擦れが一層緩和される。
このように、本実施形態の失禁パッド10によれば、着用中に着用者の肌が、物品の幅方向に沿って移動しても、表面シート2の凹条部底部の接合部14sと肌との擦れ、及び凸条部13と肌との擦れの何れもが生じ難いため、肌を刺激しにくい。
【0028】
斯かる効果が一層確実に奏されるようにする観点から、接合部14sの物品幅方向Yの長さLsは、縦溝43の物品幅方向Yの長さL3の、20%以上が好ましく、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下であり、また20%以上60%以下が好ましく、より好ましくは30%以上50%以下である。
また、接合部14sは、物品幅方向Yの長さLsのうち90%以上の部分が、縦溝43と重なっていることが好ましく、95%以上の部分が、縦溝43と重なっていることがより好ましく、
図4に示すように、接合部14sの全体が、縦溝43と重なっていることが更に好ましい。
また、縦溝43の物品幅方向Yの長さL3は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下であり、また好ましくは1mm以上30mm以下、より好ましくは2mm以上20mm以下である。また、縦溝43の深さは、縦溝43の物品幅方向Yの長さL3に対して、好ましくは10%以上300%以下、より好ましくは15%以上150%以下である。縦溝43の深さは、好ましくは0.5mm以上6mm以下、より好ましくは1.5mm以上5mm以下である。
【0029】
接合部14sの長さLs、縦溝43の長さL3及び深さ、並びに横溝44の長さL4及び深さは、下記方法により測定される。
接合部14sの長さLsは、所定のサイズにサンプルをカットし、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−1000)を用いて20〜100倍の倍率で観察し、測定を行う。測定箇所は、1枚あたり、表面シート2の、排泄部対向部Bに位置する任意の1箇所を含む3箇所以上とし、サンプル2枚(測定箇所6箇所以上)の平均で長さLsを求める。例えば失禁パッド10を、鋭利な剃刀で、失禁パッド10の幅方向Yに沿って切断し、この切断されたサンプルの切断端面を観察して測定する。
縦溝43の長さL3及び深さは、所定のサイズにサンプルをカットし、5kPaで測定部位を10分間加圧し、除重後すぐに測定を行う。測定箇所は、1枚あたり、排泄部対向部Bにおける任意の1箇所を含む3箇所以上とし、サンプル2枚(測定箇所6箇所以上)の平均で求める。例えば失禁パッド10を、鋭利な剃刀で、失禁パッド10の幅方向Yに沿って切断し、この切断されたサンプルの切断端面を観察して測定する。
肉眼にて測定し難い場合には、前記切断されたサンプルの断面を、例えば、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−1000)を用いて20〜100倍の倍率で観察し、測定してもよい。
横溝44の長さL4及び深さも同様にして測定する。ただし、鋭利な剃刀により失禁パッド10を切断する際には長手方向Xに沿って切断する。
【0030】
吸収体4の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下であり、また好ましくは1mm以上15mm以下、更に好ましくは2mm以上10mm以下である。
吸収体4の厚みは、下記方法により測定される。
厚みTの測定には、2つの平行な加圧面(固定加圧面と可動加圧面)を持つマイクロメーターであるピーコック式精密測定器(型式R1−C)を用い、測定子可動加圧面の直径は5mm、圧力は100kPa以下で測定し、測定用試験片の大きさは、下記プレートの大きさ以上とする。試験片上に20mm×20mmのプレート(重量5.4g)を置き、測定子可動加圧面を2mm/sの速度で操作し、該プレートに当て、安定直後の値を読み取る。加圧面間(試験片に加わる圧力)の圧力は1.3kPa以下になる。
【0031】
また、本実施形態においては、前述したとおり、表面シート2の凹条部14は、1本以上おきに1本の割合で縦溝43と重なっており、縦溝43のピッチP3が凹条部14のピッチP4の3倍となっている。
そのため、失禁パッド10の厚み方向に加わる力に対して、表面シート2の凸条部13が変形したときに、
図5に示すように、縦溝43と重なる接合部14sを備えた凹条部14の両側の凸条部13とそれ以外の凸条部13との間に、頂部の高さ位置の差が生じ易い。頂部の高さが異なる凸条部13が形成されることは、加圧することで、表面シート2に存在する畝が潰れて、表面シート2と肌との接触面積が増加することを抑制することができるという利点がある。
斯かる効果は、縦溝43のピッチP3が凹条部14のピッチP4の3倍の場合に限られず、表面シート2の凹条部14が、物品幅方向Yに3本おきに1本の割合で縦溝43と重なっている部分を有し、縦溝43のピッチP3が凹条部14のピッチP4の4倍の場合、表面シート2の凹条部14が、物品幅方向Yに4本おきに1本の割合で縦溝43と重なっている部分を有し、縦溝43のピッチP3が凹条部14のピッチP4の5倍の場合にも同様に奏される。
斯かる効果が一層確実に奏されるようにする観点から、縦溝43のピッチP3は、凹条部14のピッチP4のn倍(ただし、nは3〜5の整数)であることが好ましい。
なお、コアラップシートが縦溝43内に陥入していても良いし、嵌入していなくても良い。嵌入していなくても、厚み方向に力が加われば、コアラップシートも表面シートと一共に陥入するため、上述したような効果が奏される。失禁パッド10の未使用状態及び使用状態共に、コアラップシートは表面シートと接触し、縦溝43の肌面側に存在しているコアラップシートのみ吸収性コアとは接触せず存在している。
【0032】
また、縦溝43と重なる接合部14sは、吸収性物品を、着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部B、排泄部対向部より前方(着用者の腹側)に配される前方部A、及び排泄部対向部より後方(着用者の背側)に配される後方部Cに区分したときの、少なくとも排泄部対向部に存在することが好ましい。それにより、着用者の敏感な部分に対して、擦れによる刺激が加わることを防止することができる。
また、長手方向Xにおける、縦溝43と重なる接合部14sが分布する範囲の長さRs〔
図2(b)参照〕は、50mm以上が好ましく、より好ましくは80mm以上である。上限は、物品長手方向Xにおける吸収性コア40の全長である。
【0033】
また、失禁パッド10の長手方向Xにおいて、縦溝43と重なる接合部14sが分布する範囲の長さRs〔
図2(b)参照〕は、該縦溝43の同方向の長さ、即ち長手方向Xの長さ)よりも短いことが好ましい。これにより、接合部14sが縦溝43に重なっていない部分が少なくなり、接合部14sが肌と接触する面積が低減し、より擦れによる刺激を防止することができる。
【0034】
なお、上述した吸収性コア40は、坪量が相対的に高い複数の高坪量部41と、坪量が相対的に低い低坪量部42とを有し、各高坪量部41の周囲はその全域にわたって低坪量部42によって囲まれて個々に独立しているブロック領域を備えている。このようなブロック領域を有することで、吸収性コア40は、その長手方向X及び幅方向Yの双方に柔軟なものとなり、そのことに起因して吸収性コア40は着用者の身体の形状に沿いやすくなる。
【0035】
表面シート2を構成する不織布1の好ましい構成について、
図6及び
図7を参照して説明する。
不織布1の構成繊維11は、高伸度繊維が含まれている。ここで、構成繊維11が含む高伸度繊維とは、原料の繊維の段階で高伸度である繊維のみならず、製造された不織布1の段階でも高伸度である繊維を意味する。「高伸度繊維」としては、弾性(エラストマー)を有して伸縮する伸縮性繊維を除き、例えば特開2010−168715号公報の段落〔0033〕に記載のように低速で溶融紡糸して複合繊維を得た後に、延伸処理を行わずに加熱処理及び/又は捲縮処理を行うことにより得られる加熱により樹脂の結晶状態が変化して長さの延びる熱伸長性繊維、或いは、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂を用いて比較的紡糸速度を低い条件にして製造した繊維、又は、結晶化度の低い、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、若しくはポリプロピレンに、ポリエチレンをドライブレンドし紡糸して製造した繊維等が挙げられる。それらの繊維の内でも高伸度繊維は、熱融着性のある芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異形型でもよいが、特に同心の芯鞘型であることが好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい不織布等を製造する観点からは、高伸度繊維の繊度は、原料の段階で、1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることがより好ましい。
【0036】
不織布1の構成繊維11は、高伸度繊維に加えて、他の繊維を含んで構成されていてもよいが、高伸度繊維のみから構成されていることが好ましい。他の繊維としては、例えば融点の異なる2成分を含み且つ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維、或いは、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)等が挙げられる。不織布1が高伸度繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、該不織布1における高伸度繊維の割合は、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0037】
高伸度繊維である熱伸長性繊維は、原料の段階で、未延伸処理又は弱延伸処理の施された複合繊維であり、例えば、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
【0038】
鞘部を構成する第2樹脂成分としては、上述の通りポリエチレン樹脂を含んでいる。該ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935g/cm
3以上0.965g/cm
3以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。鞘部を構成する第2樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する第2樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下が、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、該ポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
【0039】
芯部を構成する第1樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や樹脂成分が2種以上の共重合体等も使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。不織布の製造が容易となることから、芯部を構成する第1樹脂成分の融点と、鞘部を構成する第2樹脂成分の融点との差(前者−後者)が、20℃以上であることが好ましく、また150℃以下であることが好ましい。
【0040】
高伸度繊維である熱伸長性繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えば第1樹脂成分がポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。
【0041】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
【0042】
また、高伸度繊維の伸度は、原料の段階で、100%以上800%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以上500%以下、更に好ましくは250%以上400%以下である。この範囲の伸度を有する高伸度繊維を用いることで、該繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる。
【0043】
高伸度繊維の伸度はJISL−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±2%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
【0044】
高伸度繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は、原料の段階で、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。高伸度繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
【0045】
高伸度繊維の繊維径は、原料の段階で、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。前記の繊維径は、次の方法で測定される。
【0046】
〔繊維の繊維径の測定〕
繊維の繊維径として、繊維の直径(μm)を、走査電子顕微鏡(日本電子(株)社製JCM−5100)を用いて、繊維の断面を200倍〜800倍に拡大観察して測定する。繊維の断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、繊維を切断して得る。抽出した繊維1本について円形に近似したときの繊維径を5箇所測定し、それぞれ測定した値5点の平均値を繊維の直径とする。
【0047】
原料の段階で、高伸度繊維である熱伸長性繊維としては、上述の熱伸長性繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
【0048】
不織布1は、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、該構成繊維11が、隣り合う融着部12,12どうしの間に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を有している。具体的には、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、他の構成繊維11との交点を熱融着して形成された融着部12から、繊維径の小さい小径部16が略同じ繊維径で延出して形成されている。そして、該1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12それぞれから延出する小径部16,16どうしの間に、小径部16よりも繊維径の大きい大径部17が略同じ繊維径で延出して形成されている。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12の内の一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。
【0049】
上述したように不織布1の剛性が高まる融着部12に隣り合うように低剛性の小径部16が存在することにより、不織布1の柔軟性が向上し、肌触りが良好になる。また、大径部17を複数備える、言い換えると構成繊維11に低剛性の小径部16が多く存在するほど、不織布1の柔軟性が更に向上し、肌触りが更に良好になる。
不織布1は、斯かる構成を有することで、着用者の肌の幅方向Yへの移動時に、凸条部13(凸部)が幅方向Yに一層容易に曲がるようになり、肌への追従変形性が向上し、着用中における違和感の発生等が一層防止される。
【0050】
不織布1は、
図7に示すように、不織布1の構成繊維11の内の1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を複数(不織布1においては2個)備える構成繊維11を有している。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12の内の一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個目の大径部17、小径部16、2個目の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を、肌触り向上の観点と不織布強度低下の観点から、好ましくは1個以上5個以下備え、更に好ましくは1個以上3個以下備えている。
【0051】
大径部17の繊維径(直径L
17)に対する小径部16の繊維径(直径L
16)の比率(L
16/L
17)は、好ましくは0.5以上0.8以下、更に好ましくは0.55以上0.7以下である。具体的に、小径部16の繊維径(直径L
16)は、肌触り向上の観点から、好ましくは5μm以上28μm以下、更に好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。大径部17の繊維径(直径L
17)は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上35μm以下、更に好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
小径部16及び大径部17の繊維径(直径L
16,L
17)は、上述した繊維の繊維径の測定と同様にして測定する。
【0052】
また、不織布1は、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、融着部12に隣接する小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されていることが好ましい。ここで、不織布の変化点18とは、小さい繊維径で延出する小径部16から、小径部16よりも繊維径の大きい繊維径で延出する大径部17へ、連続的に漸次変化する部位或いは連続的に複数段階に亘って変化する部位を含まず、極端に一段で繊維径が変化する部位を意味する。また、前記1本の構成繊維11が熱伸長性複合繊維の場合には、本発明の不織布の変化点18とは、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分との間で剥離することによって繊維径が変化する状態を含まず、あくまで、延伸により繊維径が変化している部位を意味する。
【0053】
また、変化点18が、融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されているとは、不織布1の構成繊維11をランダムに抽出し、該構成繊維11を、
図7に示すように、走査電子顕微鏡として日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いて構成繊維11の隣り合う融着部12、12間が観察できるように(100倍〜300倍)に拡大する。次いで、隣り合う融着部12,12の中心どうしの間隔Tを3等分して、一方の融着部12側の領域AT、他方の融着部12側の領域BT、中央の領域CTに区分する。そして、変化点18が、前記領域AT又は前記領域BTに配されていることを意味する。また、変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されている不織布1とは、不織布1の構成繊維11を20本ランダムに抽出した際に、変化点18を前記領域AT又は前記領域BTに配している構成繊維11が、20本の構成繊維11の内に少なくとも1本以上ある不織布を意味する。具体的に、肌触り向上の観点から、好ましくは1本以上、更に好ましくは5本以上、特に好ましくは10本以上である。
【0054】
不織布1は、
図6に示すように不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、頂部域13a、底部域13b、及びこれらの間に位置する側部域13cとから構成される。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、不織布1のZ方向の厚みを3等分して、厚み方向Zの上方の部位を頂部域13a、中央の部位を側部域13c、下方の部位を底部域13bとして区別する。
【0055】
図6に示すとおり、不織布1をその厚み方向Zに沿って観察したとき、側部域13cの繊維密度は、頂部域13aの繊維密度及び底部域13bの繊維密度よりも低くなっている。繊維密度とは、不織布1の断面における単位面積当たりの繊維の本数のことである。したがって、側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bに比べて繊維の本数が少ない(繊維間距離の大きい)、疎な領域になっており、不織布1全体として、通気性が向上すると共に通液性も向上する。更に、側部域13cの繊維密度が最も小さく形成されることにより、凸条部13が着用者の肌の動きに追従しやすくなり、良好な肌当たりを実現することができる。このような繊維密度を側部域13cに付与するには、後述する製造方法に従い不織布1を製造すればよい。
【0056】
頂部域13aでの繊維密度(D
13a)、又は底部域13bでの繊維密度(D
13b)に対する側部域13cの繊維密度(D
13c)の比率(D
13c/D
13a,D
13c/D
13b)は、好ましくは0.15以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.8以下である。具体的に、不織布1の繊維密度の具体的な値は、頂部域13aでの繊維密度(D
13a)は、好ましくは90本/mm
2以上200本/mm
2以下、更に好ましくは100本/mm
2以上180本/mm
2以下である。また、底部域13bでの繊維密度(D
13b)は、好ましくは80本/mm
2以上200本/mm
2以下、更に好ましくは90本/mm
2以上180本/mm
2以下である。また、側部域13cの繊維密度(D
13c)は、好ましくは30本/mm
2以上80本/mm
2以下、更に好ましくは40本/mm
2以上70本/mm
2以下である。繊維密度の測定方法は以下のとおりである。
【0057】
〔頂部域13a、底部域13b及び側部域13cでの繊維密度の測定方法〕
フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて不織布を厚み方向Zに沿って切断する。頂部域13aでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に3等分した際の上方の部位である頂部域13aを、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm
2程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に1mm
2当たりの繊維の断面数に換算し、これを頂部域13aでの繊維密度とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。同様に、底部域13bでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に3等分した際の下方の部位を測定して求める。同様に、側部域13cの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に3等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
【0058】
表面シート2においては、凸条部13の頂部が、不織布1の頂部域13aから形成され、凹条部14の底部が、不織布1の底部域13bから形成されており、凸条部13の側壁部が、不織布1の側部域13cから形成されている。凸条部13の側壁部が、不織布1の側部域13cの繊維密度が、頂部域13a及び底部域13bの繊維密度より低いことで、着用者の肌の幅方向Yへの移動時に、凸条部13(凸部)が幅方向Yに一層容易に曲がるようになり、肌への追従変形性が向上し、着用中における違和感の発生等が一層防止される。
【0059】
また、本実施形態の不織布1は、側部域13cを構成する構成繊維における、変化点を有する繊維の本数が、頂部域13aを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数、及び底部域13bを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数よりも多く形成されている。頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13a)、又は底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13b)に対する側部域13cを構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数(N
13c)の比率(N
13c/N
13a,N
13c/N
13b)は、好ましくは2以上20以下、更に好ましくは5以上20以下である。具体的に、不織布1の変化点18を有する繊維の本数の具体的な値に関し、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13a)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13b)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N
13c)は、好ましくは5本以上20本以下、更に好ましくは10本以上20本以下である。変化点18を有する繊維の本数の測定方法は以下のとおりである。
【0060】
〔頂部域13a、底部域13b又は側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数の測定方法〕
頂部域13aを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みTをZ方向に3等分した際の上方の部位である頂部域13aの頂点付近を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;50〜500倍)し、頂部域13aを構成する構成繊維11を20本ランダムに抽出し、20本の構成繊維11の内に変化点18を有する繊維数を数える。これを頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。同様に、底部域13bを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の下方の部位である底部域13bの底点付近を測定して求める。同様に、側部域13cを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
【0061】
不織布1の厚さについては、不織布1の側面視したときの全体の厚さをシート厚みT
Sとし、その凹凸に湾曲した不織布1の局部的な厚さを層厚みT
Lとする。シート厚みT
Sは、0.5mm以上7mm以下が好ましく、1.0mm以上5mm以下がより好ましい。この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。
【0062】
層厚みT
Lは、不織布1内の各部位において異なっていてもよく、頂部域13aの層厚みT
L1は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。底部域13bの層厚みT
L2は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。側部域13cの層厚みT
L3は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。各層厚みT
L1、T
L2、T
L3の関係は、この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。
【0063】
シート厚みT
S及び層厚みT
Lは以下の方法で測定される。
シート厚みT
Sの測定方法は、不織布1に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いる。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
層厚みT
Lの測定法は、シートの断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度で拡大することで、各層の厚みを測定する。
【0064】
不織布1を平面視したときに、Y方向に隣り合う凸条部13の頂部どうしのピッチは、1mm以上15mm以下が好ましく、1.5mm以上10mm以下がより好ましい。凸条部13の高さH〔
図2(a)参照〕は、0.5mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上3mm以下がより好ましい。高さHは、不織布1の厚み方向Zの断面を顕微鏡観察し、無荷重下に測定する。
【0065】
また不織布1の坪量は、シート全体の平均値で15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、20g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい。
【0066】
また、不織布1の構成繊維11の表面には、原料の段階で、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤等の繊維処理剤が、少量付着されていてもよい。
【0067】
繊維処理剤を構成繊維11の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、繊維処理剤への浸漬等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行ってもよいし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよい。ただし、後述する熱風吹き付け処理よりも前に処理を行う必要がある。繊維処理剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、ポリエチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
【0068】
表面シート2と吸収体4との間、吸収体4と裏面シート3との間は、それぞれ、接着剤で接合されていることが好ましい。各部材間を、接着剤で接合する場合、スロットコーター等によるべた塗りでも良いが、パターン塗工が好ましい。パターン塗工の塗工パターンの好ましい例としては、スパイラルパターン、ドットパターン、ストライプパターン(縞状パターン)、格子パターン、市松模様状のパターン等が挙げられる。
【0069】
上述した不織布1及び下層シート6を備えた表面シート2は、高伸度繊維を含む繊維ウエブの構成繊維同士の交点を融着部にて熱融着して繊維シートを形成する融着工程と、前記繊維シートを一方向に延伸する延伸工程と、前記不織布に下層シート6を接合させる複合化工程とによって製造される。
表面シート2の製造工程について、
図8を参照しながら説明する。
図8には、表面シート2の製造方法に用いられる好ましい製造装置100が模式的に示されている。製造装置100は、エア−スルー不織布の製造及びそれを用いた表面シートの製造に好適に用いられるものである。製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部200、熱風処理部300、延伸部400、及び下層シート接合部500をこの順で備えている。
【0070】
ウエブ形成部200には、
図8に示すように、ウエブ形成装置201が備えられている。ウエブ形成装置201としては、カード機が用いられている。カード機としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。不織布1の具体的な用途に応じ、カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。
【0071】
熱風処理部300は、
図8に示すように、フード301を備えている。フード301内では、エアスルー方式で熱風を吹き付けることができるようになっている。また、熱風処理部300は、通気性ネットからなる無端状のコンベアベルト302を備えている。コンベアベルト302は、フード301内を周回している。コンベアベルト302は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、或いは金属から形成されている。
【0072】
フード301内にて吹き付けられる熱風の温度及び熱処理時間は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の含む高伸度繊維の交点が熱融着するように調整することが好ましい。より具体的には、熱風の温度は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の内の最も融点が低い樹脂の融点に対して、0℃〜30℃高い温度に調整することが好ましい。熱処理時間は、熱風の温度に応じて、1秒〜5秒に調整することが好ましい。また、構成繊維11同士の更なる交絡を促す観点から、熱風の風速は0.3m/秒〜1.5m/秒程度であることが好ましい。また、搬送速度は、5m/min〜100m/min程度であることが好ましい。
【0073】
延伸部400は、
図8,
図9に示すように、互いに噛み合いが可能になっている一対の凹凸ロール401,402を備えている。一対の凹凸ロール401,402は、加熱可能に形成されており、それぞれ、大径凸部403,404と小径凹部(図示せず)とがロール軸方向に交互に配されて形成されている。凹凸ロール401,402は加熱してもしなくても良いが、凹凸ロール401,402を加熱する場合の加熱温度は、後述する繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維を延伸し易くする観点から、高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点以上、高伸度繊維内の最も融点が低い樹脂の融点以下にすることが好ましい。より好ましくは繊維のガラス転移点より10℃高い温度以上、融点よりも10℃低い温度以下であり、更に好ましくは繊維のガラス転移点より20℃高い温度以上、融点よりも20℃低い温度以下である。例えば、繊維に芯/鞘構造の繊維として、ガラス転移点67℃、融点258℃のPET(芯)/ガラス転移点−20℃、融点135℃のPE(鞘)を用いた際に加熱する場合には、67℃以上、135℃以下が好ましく、より好ましくは77℃以上、125℃以下、更に好ましくは87℃以上、115℃以下に加温する。
【0074】
また、製造装置100においては、
図9に示すように、凹凸ロール401のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし403,403の間隔(ピッチ)、及び凹凸ロール402のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし404,404の間隔(ピッチ)が同じ間隔(ピッチ)wであり、間隔(ピッチ)wは、繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる観点から、好ましくは1mm以上10mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上8mm以下である。同様の観点から、
図9に示すように、一対の凹凸ロール401,402の押し込み量t(ロール軸方向に隣り合う大径凸部403の頂点と大径凸部404の頂点との間隔)は、好ましくは1mm以上3mm以下であり、特に好ましくは1.2mm以上2.5mm以下である。そして機械延伸倍率は、同様の観点から、好ましくは1.5倍以上3.0倍以下であり、特に好ましくは1.7倍以上2.8倍以下である。
【0075】
下層シート接合部500は、凹凸ロール402と表面平滑なフラットロール501とを備えており、凹凸ロール402の大径凸部404とフラットロール501の周面との間で、凹凸形状とされた不織布1と下層シート6とを、加熱及び加圧することにより接合する。
【0076】
以上の構成を有する製造装置100を用いた表面シート2の製造方法について説明する。
先ず、
図8に示すように、ウエブ形成部200にて、高伸度繊維である熱伸長性複合繊維を有する短繊維状の構成繊維11を原料として用い、カード機であるウエブ形成装置201によって繊維ウエブ1bを形成する(ウエブ形成工程)。ウエブ形成装置201によって製造された繊維ウエブ1bは、その構成繊維11どうしが緩く絡合した状態にあり、シートとしての保形性を獲得するには至っていない。
【0077】
次いで、
図8に示すように、高伸度繊維を含む繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしの交点を融着部12にて熱融着して繊維シート1aを形成する(融着工程)。具体的には、繊維ウエブ1bは、コンベアベルト302上に搬送され、熱風処理部300にて、フード301内を通過する間に、熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。このようにエアスルー方式で熱風が吹き付けられると、繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしが更に交絡すると同時に、絡合した繊維の交点が熱融着して(
図10(a)参照)、シート状の保形性を有する繊維シート1aが製造される。
【0078】
次いで、
図9に示すように、融着された繊維シート1aを一方向に延伸する(延伸工程)。具体的には、シートとしての保形性を有する融着された繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、
図10(a)〜
図10(c)に示すように、繊維シート1aを延伸して、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を形成するとともに、該小径部16から該大径部17への変化点18を、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成する。詳述すると、
図10(a)に示すような、構成繊維11どうしの交点が融着部12にて熱融着している繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、繊維シート1aを、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸する。繊維シート1aが直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸される際には、
図10(a)に示す、構成繊維11どうしを固定している隣り合う該融着部12,12どうしの間の領域が、直交方向(CD,ロール軸方向)に積極的に引き伸ばされる。特に、
図10(b)に示すように、構成繊維11どうしを固定している各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こり易く、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、両端に2個の小径部16,16が形成され、該2個の小径部16,16に挟まれた部分が大径部17となり、2個の小径部16,16に挟まれた大径部17が形成される。このように、各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こり易いので、小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成される。
【0079】
そして、一部の隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、
図10(c)に示すように、伸長できる余地(伸びしろ)を残した状態で、更に直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸され、該隣り合う融着部12,12どうしの間の大径部17が延伸され、大径部17の中に小径部16が複数形成されるようになる。
【0080】
延伸工程においては、高伸度繊維から小径部16及び大径部17が形成されるのと同時に、繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分が、他の部分よりも引き延ばされる。この場合、繊維シート1aの構成繊維は高伸度繊維なので、引き伸ばしを受けても切断せず、首尾よく引き伸ばしが行われる。繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分は、目的とする不織布1における凸条部13の側部域13cであるから、前記の引き伸ばしによって側部域13cでは繊維が切断されることなく繊維間距離が延伸前に比べて増加する。その結果、側部域13cの繊維密度が他の部位よりも低下して、通気性が向上する。しかも、側部域13cを構成する繊維に切断は生じていないので、凸条部13の強度が高いレベルに維持される。その結果、凸条部13に荷重が加わっても、該凸条部13が潰れにくくなる。
【0081】
以上のように、製造装置100を用いた表面シート2の製造方法によれば、
図7に示す構成繊維11を備える不織布1を連続的に効率よく製造することができる。また、製造された不織布1は、凹凸ロール402によって、凹凸形状に変形された状態のまま、下層シート接合部500のシート合流部に搬送される。シート合流部には、ロール状巻回物6’から巻き出された下層シートとして使用される帯状の不織布6が供給されており、凹凸形状の不織布1は、帯状の不織布6と重ねた状態とされて、凹凸ロール402とフラットロール501との間に導入される。凹凸ロール402とフラットロール501との間においては、凹凸形状の不織布1における凹条部部分と帯状の不織布6とが、凹凸ロール402の大径凸部404とフラットロール501の周面との間で加熱及び加圧されて接合する。このようにして、幅方向の中央部に凹凸構造を有する不織布1が、凹条部14において下層シート6に接合された構成の帯状の表面シート2が得られる。帯状の表面シート2は、巻き取った後に、失禁パッド10の製造ラインに導入されるか、巻き取ることなく、失禁パッド10の製造ラインに導入される。
【0082】
本発明の吸収性物品は、上述した本実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、吸収性コア40に形成する縦溝43の本数は、5本に限られず、2本以上の任意の本数とすることができ、好ましくは2本以上20本以下、より好ましくは5本以上15本以下である。
接合部14sの平面視形状は、長辺が長手方向Xに沿う縦長矩形状に限られず、正方形や、円形、三角形、四角形、楕円形等の任意の形状することができる。また、接合部14sの配置は、
図2(b)に示すように、複数の接合部14sが長手方向Xに直列に間欠配置された接合部列が、幅方向に多列に形成された配置であることが好ましいが、隣り合う接合部列中の個々の接合部14sの位置は、
図2(b)に示すように同じ位置に限られず、長手方向Xにずれていても良い。例えば、全体として千鳥配置となるように半ピッチ分ずれていても良い。
【0083】
また、本発明の吸収性物品は、失禁パッドに代えて、生理用ナプキンやパンティライナーであっても良い。また、それらの吸収性物品は、防漏カフ8を備えていないものであっても良い。また、液排泄部対向部の両側にウイング部を備えたものであっても良い。また不織布からなる下層シート6は、吸収性物品の長手方向X及び幅方向Yの一方又は双方における長さが不織布1と同一であっても短くても良い。
【0084】
また、本発明における吸収体は、吸収性コアのみからなり、コアラップシートを有しないものであっても良い。例えば、吸収体は、
図11に示す、吸収性シート46から構成された吸収性コアのみからなるものであっても良い。
図11に示す吸収体は、吸収性シート46が2層以上に積層された積層体からなる。2層以上の積層体は、一枚の吸収性シートを折り畳むと共にそれらの層間を接着して積層体としたものであっても良いし、枚葉の吸収性シートを複数枚貼り合わせて積層したものでも良い。また、2層以上の積層体の層間や片面上に追加の吸収性シートを配して一部が肉厚とされた吸収体としても良い。吸収性シートとしては、繊維材料及び吸水性ポリマーを含む吸収性シートが好ましく用いられる。また吸収性シートとしては、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとして、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸水性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸水性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることもできる。これらの吸収性シートは、2層以上に積層せずに単層構造の吸収体として用いることもできる。また積層する場合の層間は接着しなくても良い。
【0085】
また、吸収性コアの縦溝43は、厚みが均一な積繊体の一部を加圧圧縮して形成したものであっても良い。