(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御部は、前記2以上の部分3次元データに対応する前記被検眼の2以上の部位に基づいて前記2以上の解析マップの順位を決定し、前記順位に応じて前記2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させる
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科撮影装置。
前記解析部は、少なくとも、前記2以上の部分3次元データの一部に対して第1解析処理を実行し、且つ、他の一部に対して前記第1解析処理と異なる第2解析処理を実行し、
前記表示制御部は、前記解析部により実行される解析処理の種別に基づいて前記2以上の解析マップの順位を決定し、前記順位に応じて前記2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させる
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の幾つかの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係る眼科撮影装置は、少なくとも光干渉断層計として機能するものであり、被検眼の正面画像を取得する機能を更に備えていてよい。正面画像を取得する機能としては、眼底カメラや走査型レーザ検眼鏡(SLO)がある。また、光干渉断層計により取得された3次元データに基づいて正面画像を生成する機能がある。これらについては後述する。
【0012】
正面画像を取得する機能を有しない場合、眼科撮影装置は、他の装置(眼底カメラ、SLO、光干渉断層計等)により取得された被検眼の正面画像を入力するための機能を備えてよい。また、他の光干渉断層計により取得された3次元データが入力される場合、眼科撮影装置は、この3次元データから正面画像を作成する機能を備えてよい。実施形態に係る眼科情報処理装置や、OCT機能を有しない眼科撮影装置(眼底カメラ、SLO等)においても同様である。なお、正面画像や3次元データの入力は、例えば、LAN等のネットワークを通じて、又は、記録媒体を介して行われる。
【0013】
以下の実施形態では眼底のOCTを行っているが、眼底以外の部位が対象であってもよい。例えば、前眼部のOCTを行う実施形態を適用することができる。
【0014】
以下の実施形態では、フーリエドメインOCTを実行可能な眼科撮影装置について説明する。特に、実施形態に係る眼科撮影装置は、スウェプトソースOCTの手法を適用可能である。なお、スウェプトソース以外のタイプ、例えばスペクトラルドメインOCTやフルフィールドOCT(インファスOCT)を用いることも可能である。また、以下の実施形態では眼底カメラと光干渉断層計とを組み合わせた装置について説明するが、前述のように、これに限定されるものではない。
【0015】
本明細書において引用された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として援用することが可能である。
【0016】
〈構成〉
図1に示すように、眼科撮影装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構が設けられている。演算制御ユニット200はプロセッサを含む。被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが、眼底カメラユニット2に対向する位置に設けられている。
【0017】
なお、本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0018】
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。眼底Efを撮影して得られる画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)には、観察画像や撮影画像がある。観察画像は、例えば、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、例えば、可視フラッシュ光を用いて得られるカラー画像若しくはモノクロ画像、又は近赤外フラッシュ光を用いて得られるモノクロ画像である。眼底カメラユニット2は、更に、フルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能でもよい。
【0019】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0020】
照明光学系10の観察光源11は、例えばハロゲンランプ又はLED(Light Emitting Diode)である。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(特に眼底Ef)を照明する。
【0021】
被検眼Eからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のピントが眼底Efに合っている場合には眼底Efの観察画像が得られ、ピントが前眼部に合っている場合には前眼部の観察画像が得られる。
【0022】
撮影光源15は、例えば、キセノンランプ又はLEDを含む可視光源である。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0023】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、被検眼Eを固視させるための固視標や、視力測定用指標を表示する。LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。
【0024】
眼底カメラユニット2にはアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。
【0025】
アライメント光学系50のLED51から出力されたアライメント光は、絞り52及び53並びにリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eに投射される。
【0026】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
【0027】
フォーカス光学系60は、撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱可能である。
【0028】
フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に斜設される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
【0029】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同じ経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
【0030】
撮影光学系30は、視度補正レンズ70及び71を含む。視度補正レンズ70及び71は、孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に選択的に挿入可能である。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラス(+)レンズであり、例えば+20D(ディオプター)の凸レンズである。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナス(−)レンズであり、例えば−20Dの凹レンズである。視度補正レンズ70及び71は、例えばターレット板に装着されている。ターレット板には、視度補正レンズ70及び71のいずれも適用しない場合のための孔部が形成されている。
【0031】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路とOCT用の光路とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0032】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
【0033】
光スキャナ42は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、OCT用の光路を通過する測定光LSの進行方向を変更する。それにより、被検眼Eが測定光LSでスキャンされる。光スキャナ42は、xy平面の任意方向に測定光LSを偏向可能であり、例えば、測定光LSをx方向に偏向するガルバノミラーと、y方向に偏向するガルバノミラーとを含む。
【0034】
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、被検眼EのOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系の構成は、従来のスウェプトソースタイプの光干渉断層計と同様である。すなわち、この光学系は、波長掃引型(波長走査型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系を含む。干渉光学系により得られる検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0035】
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースタイプの光干渉断層計と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含む。波長掃引型光源は、例えば、共振器を含むレーザ光源である。光源ユニット101は、例えば、近赤外の波長帯において出力波長を時間的に変化させる。
【0036】
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0037】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。
【0038】
コーナーキューブ114は、入射した参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に対する参照光LRの入射方向と出射方向は互いに平行である。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
【0039】
図1及び
図2に示す構成では、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更するための光路長変更部41と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114の双方が設けられているが、光路長変更部41とコーナーキューブ114のいずれか一方のみが設けられもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0040】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
【0041】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0042】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0043】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力する。検出器125は、その検出結果(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
【0044】
DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を演算制御ユニット200に送る。
【0045】
〈演算制御ユニット200〉
演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。また、演算制御ユニット200は、各種の演算処理を実行する。例えば、演算制御ユニット200は、一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等の信号処理を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算制御ユニット200は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースOCTと同様である。
【0046】
演算制御ユニット200は、例えば、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には各種コンピュータプログラムが格納されている。演算制御ユニット200は、操作デバイス、入力デバイス、表示デバイスなどを含んでよい。
【0047】
〈制御系〉
眼科撮影装置1の制御系の構成例を
図3及び
図4に示す。
【0048】
〈制御部210〉
制御部210は、眼科撮影装置1の各部を制御する。制御部210はプロセッサを含む。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
【0049】
〈主制御部211〉
主制御部211は各種の制御を行う。例えば、主制御部211は、撮影合焦駆動部31A、CCD(イメージセンサ)35及び38、LCD39、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦駆動部43A、フォーカス光学系駆動部60A、反射棒駆動部67Aなどを制御する。また、主制御部211は、光源ユニット101、参照駆動部114A、検出器125、DAQ130などを制御する。
【0050】
撮影合焦駆動部31Aは、撮影光路の光軸に沿って撮影合焦レンズ31を移動する。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。OCT合焦駆動部43Aは、測定光路の光軸に沿ってOCT合焦レンズ43を移動する。それにより、測定光LSの合焦位置が変更される。測定光LSの合焦位置は、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。フォーカス光学系駆動部60Aは、照明光路の光軸に沿ってフォーカス光学系60を移動する。主制御部211は、撮影合焦駆動部31Aとフォーカス光学系駆動部60Aとを連動制御する。反射棒駆動部67Aは、照明光路に対して反射棒67を挿脱する。参照駆動部114Aは、参照光路に設けられたコーナーキューブ114を移動させる。それにより、参照光路の長さが変更される。
【0051】
眼科撮影装置1は、眼底カメラユニット2(又は、それに格納された光学系)を3次元的に移動する光学系駆動部を備えてよい。アライメントやトラッキングのために、主制御部211は光学系駆動部を制御する。なお、トラッキングは、アライメント及びフォーカス調整の後に、被検眼Eの動きを追うように光学系を移動させる動作である。
【0052】
〈表示制御部211a〉
主制御部211は、表示制御部211aを含む。表示制御部211aは、表示部241に表示される情報に関する各種制御や、表示部241に情報を表示させるための各種制御を実行する。表示制御部211aが実行する処理については後述する。
【0053】
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
【0054】
更に、記憶部212には正常眼データ212aが予め記憶される。正常眼データ212aは、眼の構造、機能、特性等に関する所定のパラメータの正常範囲を表す。このパラメータは、例えば、正常眼の網膜における所定の層組織の厚さ分布を表す(正常層厚分布)。正常層厚分布は、眼底の所定範囲内の複数の位置における層厚値を含む。正常層厚分布は、眼底の2以上の範囲について設けられてもよいし、2以上の層組織について設けられてもよい。
【0055】
1つの具体例において、正常眼データ212aは、視神経乳頭の周辺の所定範囲におけるRNFLの厚さ分布を表す正常乳頭周囲RNFL厚分布と、中心窩を含む所定範囲におけるGCL++の厚さ分布を表す正常黄斑GCL++厚分布とを含む。
【0056】
正常眼データ212aの他の例として、視神経乳頭に関するパラメータ(カップ/ディスク比、リム/ディスク比、傾斜状態など)、篩状板に関するパラメータ(厚さ、傾斜状態、孔の分布など)、血流に関するパラメータ(血流速度、血流量など)、血管に関するパラメータ(血管径など)、前眼部に関するパラメータ(角膜厚、隅角など)がある。正常眼データ212aはこれらに限定されるものではない。
【0057】
正常眼データ212aは、疾患を有しないと診断された複数の正常眼(健常眼)をOCTで計測して得られた所定パラメータの値を統計的に処理することによって作成される。例えば、複数の正常眼から得られた計測値の平均値及び標準偏差を求めることにより、当該パラメータの正常範囲が決定される。
【0058】
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、DAQ130から入力された検出信号のサンプリング結果に基づいて、眼底Efの断面像の画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの信号処理が含まれる。画像形成部220により形成される画像データは、スキャンラインに沿って配列された複数のAライン(z方向のライン)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データ(一群のAスキャン像データ)を含むデータセットである。
【0059】
本実施形態では、OCTを用いて眼底Efの3次元スキャンが実行される。それにより取得されたデータに基づき、画像形成部220は、xy方向に配列された複数のAスキャン像データを含むデータセットを形成する。3次元スキャンは、被検眼E(眼底Ef)の3次元領域に対するOCTスキャンを意味する。典型的な3次元スキャンとしてラスタースキャンがある。ラスタースキャンは、xy面に配列された平行な複数のラインに沿ったスキャンである。ラスタースキャンによれば、xy面におけるスキャンラインの配列範囲とz方向の所定範囲とにより定義される3次元領域のデータが取得される。すなわち、x方向及びy方向に配列された(換言すると、格子点位置に配列された)複数のAスキャン像データを含むデータセットが得られる。
【0060】
画質を向上させるために、同じパターンのスキャンを複数回繰り返し、それにより収集された複数のデータセットを合成する(加算平均する)ことができる。
【0061】
画像形成部220は、例えば、プロセッサ及び専用回路基板の少なくともいずれかを含む。なお、本明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。また、被検眼Eの部位とそれを表す画像とを同一視することがある。
【0062】
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して画像処理や解析処理を施す。例えば、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して画像処理や解析処理を施す。データ処理部230は、例えば、プロセッサ及び専用回路基板の少なくともいずれかを含む。データ処理部230には、3次元データ作成部(3Dデータ作成部)231と、解析部232と、正面画像生成部233とが設けられている。
【0063】
〈3次元データ作成部231〉
前述したように、眼底Efの3次元スキャンが実行された場合、xy方向に配列された複数のAスキャン像データを含む3次元データセットが得られる。3次元データ作成部231は、3次元データセットに基づいて、眼底Efの3次元データを作成する。3次元データは、3次元データセット自体でもよいし、3次元データセットを処理して得られるデータでもよい。
【0064】
3次元データセットを処理して得られるデータの例としてボリュームデータがある。ボリュームデータは、ボクセルデータとも呼ばれ、3次元空間における正規格子単位の値を表す。データ処理部230は、例えば、3次元データセットに含まれる複数のAスキャン像データのピクセルの補間を含む公知の画像処理を実行することによってボリュームデータを作成する。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、ボリュームデータに対して公知のレンダリングを施す。
【0065】
〈解析部232〉
解析部232は、3次元データ作成部231により作成された3次元データにおける複数の部分3次元データを解析することにより複数の解析マップを生成する。3次元データにおける部分3次元データの位置(範囲)は、予め設定されてもよいし、その都度設定されてもよい。前者の場合、解析部232は、例えば、3次元データ中の所定範囲に属するピクセル又はボクセルのセットを部分3次元データとして特定する。また、解析マップは、3次元データの解析結果を分布として表現した情報である。
【0066】
後者の場合、解析部232は、例えば、3次元データを解析して眼底Efの所定部位に相当するデータ領域を特定し、このデータ領域を基準として部分3次元データを設定する。データ領域を特定する処理は、例えば、画素値(輝度値)のレベルに関する閾値処理や、データ領域の形状認識などを含む。
【0067】
具体例を説明する。眼底Efの視神経乳頭及び中心窩を含む3次元領域に対して3次元スキャンが実行される場合、解析部232は、3次元データにおいて視神経乳頭に相当する乳頭領域を特定し、この乳頭領域を含む(又は乳頭領域の周囲に位置する)所定サイズの3次元データ領域(乳頭周囲3次元データ)を設定する。ここで、乳頭領域の特定は、例えば、網膜表面(内境界膜)に相当する画像領域を特定する処理と、この画像領域においてz方向への深く且つ急峻な凹部を探索する処理を含む。更に、解析部232は、3次元データにおいて中心窩に相当する中心窩領域を特定し、この中心窩領域を含む所定サイズの3次元データ領域(黄斑3次元データ)を設定する。中心窩領域の特定は、例えば、網膜表面に相当する画像領域を特定する処理と、この画像領域においてz方向への浅く且つなだらかな凹部の中心(最深部)を探索する処理を含む。なお、上記処理において、眼底における視神経乳頭及び中心窩(黄斑)の標準的な位置やこれらの位置関係を参照することができる。
【0068】
複数の部分3次元データのサイズは同じでもよいし異なってもよい。例えば、黄斑3次元データは乳頭周囲3次元データよりも大きく設定される。また、一の部分3次元データの一部と他の部分3次元データの一部とが重複していてもよい。例えば、乳頭周囲3次元データと黄斑3次元データとが部分的に重なるように、これらを設定することができる。
【0069】
解析部232は、層領域特定部232aと、層厚算出部232bと、データ比較部232cと、マップ生成部232dとを含む。
【0070】
〈層領域特定部232a〉
層領域特定部232aは、上記のようにして特定された部分3次元データを解析することにより、眼底Efの所定の層組織に相当する層領域を特定する。所定の層組織は、例えば、RNFL、GCL+、GCL++などである。層領域を特定する処理はセグメンテーションと呼ばれる。セグメンテーションは、一般に、OCT画像(2次元断層像、3次元画像など)の輝度値に基づき行われる。眼底Efの層組織はそれぞれ特徴的な反射率を有し、その層組織の画像領域も特徴的な輝度値を有する。セグメンテーションにおいては、そのような特徴的な輝度値に基づいて目的の画像領域が特定される。
【0071】
〈層厚算出部232b〉
層厚算出部232bは、層領域特定部232aにより特定された層領域の厚さを複数の位置において算出する。層領域の厚さは、例えば、層領域の上面(眼底表面側の面)と下面(眼底深部側の面)との間の距離として計測される。この距離は、例えばz方向に沿って計測される。厚さが計測される複数の位置は、例えば、部分3次元データを構成する複数のAスキャン像データの少なくとも一部の位置(x座標値及びy座標値)に設定される。このような層厚算出部232bにより、部分3次元データの範囲における層厚の分布が得られる。
【0072】
〈データ比較部232c〉
データ比較部232cは、層厚算出部232bにより算出された複数の位置における層領域の厚さと、記憶部212に格納されている正常眼データ212aとを比較する。データ比較部232cは、必要に応じ、部分3次元データと正常眼データ212aとの間のスケール調整や位置合わせを行う。つまり、データ比較部232cは、層領域の厚さが算出された複数の位置と、正常眼データ212a(正常層厚分布)が定義された複数の位置とを対応付けることができる。
【0073】
更に、データ比較部232cは、対応付けられた位置ごとに、層領域の厚さの値と正常層厚とを比較する。例えば、データ比較部232cは、対応付けられた位置ごとに、層領域の厚さ値が正常範囲に含まれるか否か判定する。
【0074】
また、データ比較部232cは、層領域の厚さ値の正常度(異常度)を求めることができる。例えば、厚さ値が正常範囲に含まれる場合、データ比較部232cは、正常範囲における厚さ値の位置に基づき正常度を求めることができる。また、厚さ値が正常範囲に含まれない場合、正常範囲に対する厚さ値のずれ量に基づき異常度を求めることができる。
【0075】
〈マップ生成部232d〉
マップ生成部232dは解析マップを生成する。解析マップには様々な種別がある。例えば、層厚算出部232bにより得られた層領域の厚さを疑似カラーで表現した層厚マップがある。他の例として、データ比較部232cにより得られた層領域の厚さ分布と正常眼データ212aとの比較結果を疑似カラーで表現した層厚評価マップがある。
【0076】
マップ生成部232dは、解析部232により設定された複数の部分3次元データのそれぞれに対応する解析マップを生成する。それにより、複数の部分3次元データに対応する複数の解析マップが得られる。複数の解析マップの少なくとも一部が同じ種別でもよいし、全てが異なってもよい。また、1つの部分3次元データから2以上の解析マップを生成することもできる。例えば、単一の部分3次元データから層厚マップと層厚評価マップとを生成することができる。
【0077】
〈正面画像生成部233〉
正面画像生成部233は、OCTを用いて取得された眼底Efの3次元データに基づいて正面画像(OCT正面画像)を生成する。OCT正面画像(OCT en−faceimage)の例として、Cモード画像(xy断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどがある。Cモード画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データをz方向に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データの一部(例えば特定層に相当する部分データ)をz方向に投影することによって形成される。また、セグメンテーションにより特定層が選択された場合、選択された特定層が平坦になるようにOCT正面画像(平坦化画像)を再構築することが可能である。
【0078】
このように、正面画像生成部233は、3次元データの少なくとも一部に基づいてOCT正面画像を生成する。OCT正面画像の生成に利用される3次元データは、解析部232により解析される3次元データと同じでもよいし、これとは別にOCTを実行して取得された3次元データでもよい。
【0079】
後述のように、本実施形態は解析マップと正面画像とを重ねて表示するが、この正面画像はOCT正面画像又は他種別の正面画像である。他種別の正面画像としては、眼底写真や眼底走査画像がある。眼底写真は、眼底カメラ(眼底カメラユニット2又は他の眼底カメラ)により眼底Efを撮影して得られるデジタル画像である。眼底走査画像は、SLOにより眼底Efをスキャンして形成されるデジタル画像である。なお、これら以外の種別の眼底イメージング装置によって取得された正面画像を用いることも可能である。OCT正面画像が利用されない実施形態においては、正面画像生成部233が設けられる必要はない。
【0080】
データ処理部230は、眼底Efの正面画像と3次元データとの位置合わせ(レジストレーション)を行うことができる。このレジストレーションは、例えば、3次元データからOCT正面画像を生成する処理と、このOCT正面画像と眼底Efの正面画像とを位置合わせする処理と、この位置合わせ結果を3次元データに反映させる処理とを含む。
【0081】
〈ユーザインターフェイス240〉
ユーザインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイス(表示手段)は、眼科撮影装置に接続された外部装置であってよい。
【0082】
〈動作〉
眼科撮影装置1の動作について説明する。動作の一例を
図5に示す。
【0083】
(S1:眼底の3次元スキャンを行う)
アライメント、フォーカス調整等の準備動作が行われた後、眼科撮影装置1は、OCTを用いて眼底Efの3次元スキャンを実行する。本例では、視神経乳頭と中心窩とを含む眼底Efの3次元領域のスキャンが行われる。
【0084】
(S2:3次元データを作成する)
ステップS1の3次元スキャンにより収集されたデータに基づいて、画像形成部220は、xy方向に配列された複数のAスキャン像データを形成する。これらAスキャン像データに基づいて、3次元データ作成部231が、ステップS1でスキャンされた3次元領域に相当する3次元データを作成する。
【0085】
本例で作成される3次元データの概略を
図6に示す。
図6に示す3次元データVには、視神経乳頭に相当する乳頭領域Dと、中心窩に相当する中心窩領域Cとが含まれている。
【0086】
(S3:複数の部分3次元データを設定する)
解析部232は、ステップS2で作成された3次元データにおける複数の部分3次元データを設定する。本例では、
図7に示すように、乳頭領域Dを含む乳頭周囲3次元データVdと、中心窩領域Cを含む黄斑3次元データVmとが設定される。乳頭周囲3次元データVdと黄斑3次元データVmとは部分的に重複している。
【0087】
(S4:層領域を特定する)
層領域特定部232aは、ステップS3で設定された各部分3次元データを解析することにより、眼底Efの所定の層組織に相当する層領域を特定する。本例では、乳頭周囲3次元データVdにおけるRNFL領域が特定され、且つ、黄斑3次元データVmにおけるGCL++領域が特定される。
【0088】
(S5:層厚を算出する)
層厚算出部232bは、ステップS4で特定された層領域の厚さを複数の位置において算出する。本例では、乳頭周囲3次元データVdにおけるRNFL厚分布と、黄斑3次元データVmにおけるGCL++厚分布とが算出される。
【0089】
(S6:正常眼データと比較する)
データ比較部232cは、ステップS5で算出された層厚分布と正常眼データ212aとを比較する。本例では、ステップS5で得られた乳頭周囲3次元データVdにおけるRNFL厚分布と、正常眼データ212aに含まれる正常乳頭周囲RNFL厚分布との比較が行われ、且つ、ステップS5で得られた黄斑3次元データVmにおけるGCL++厚分布と、正常眼データ212aに含まれる正常黄斑GCL++厚分布との比較が行われる。
【0090】
(S7:解析マップを生成する)
マップ生成部232dは、ステップS6で取得された比較結果に基づいて解析マップを生成する。本例では、乳頭周囲3次元データVdにおけるRNFL厚分布と正常乳頭周囲RNFL厚分布との比較結果を疑似カラーで表現した乳頭周囲層厚評価マップが生成され、且つ、黄斑3次元データVmにおけるGCL++厚分布と正常黄斑GCL++厚分布との比較結果を疑似カラーで表現した黄斑層厚評価マップが生成される。
【0091】
(S8:正面画像を生成する)
眼科撮影装置1は、眼底カメラユニット2を用いて眼底Efを撮影することにより、又は、OCTを用いて眼底Efの3次元スキャンを行うことにより、眼底Efの正面画像を生成する。或いは、眼科撮影装置1は、過去に取得された眼底Efの正面画像を外部から取得する。
【0092】
(S9:正面画像と解析マップを重ねて表示する)
ステップS2で取得された3次元データに基づき正面画像が生成された場合、つまり、同じ3次元データに基づき解析マップと正面画像の双方が生成された場合、解析マップと正面画像とのレジストレーションを行う必要はない。これ以外の正面画像が用いられる場合、データ処理部230は、例えば、ステップS2で取得された3次元データと正面画像とのレジストレーションを行い、この結果に用いて解析マップと正面画像とのレジストレーションを行う。表示制御部211aは、ステップS7で生成された複数の解析マップと、ステップS8で生成された正面画像とを重ねて表示させる。
【0093】
〈表示態様〉
正面画像及び複数の解析マップの表示態様について説明する。上記動作例における表示態様の一例を
図8Aに示す。
図8Aに示す表示例では、乳頭周囲層厚評価マップMdと黄斑層厚評価マップMmとが正面画像Fの上に重ねて表示される。本例では、乳頭周囲3次元データVdと黄斑3次元データVmとが部分的に重複している。
図8Aに示す表示例では、この重複領域において黄斑層厚評価マップMmが乳頭周囲層厚評価マップMd上に配置されている。なお、これとは逆に、乳頭周囲層厚評価マップMdを黄斑層厚評価マップMm上に配置させてもよい。また、乳頭周囲層厚評価マップMdと黄斑層厚評価マップMmとを別々のレイヤに表示させ、上側のレイヤの不透明度(アルファ値)を任意に設定して双方を視認できるようにしてもよい。
【0094】
表示態様の他の例を
図8Bに示す。
図8Bに示す表示例では、
図8Aに示す表示例に加え、グリッド画像Gd及びGmが表示される。グリッド画像Gdは乳頭周囲層厚評価マップMdに重ねて表示され、グリッド画像Gmは黄斑層厚評価マップMmに重ねて表示される。各グリッド画像Gd及びGmは、解析部232により実行された解析処理の単位領域に基づき生成される。前述したように、解析処理は、例えば、x方向及びy方向に配列された複数のAラインのそれぞれに対して実行される。この場合、解析処理の単位領域を、例えば、複数のAラインの位置を格子点とするグリッド(格子)の各区画として定義することができる。或いは、各区画の中心がAラインの位置に配置されたグリッドにより単位領域を定義することもできる。各グリッド画像Gd及びGmは、例えば、このようにして定義されたグリッドの区画を横方向(x方向)及び縦方向(y方向)にそれぞれ整数N倍することで生成される(N≧1)。なお、正面画像とともに表示される複数の解析マップの一部のみにグリッド画像を表示してもよいし、全てにグリッド画像を表示してもよい。
【0095】
前述のように、複数の部分3次元データのうちの2以上が部分的に重複している場合において、表示制御部211aは、この2以上の部分3次元データに基づく2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させることができる。このような場合、解析マップを重ねる順序(つまり、上下の配置)を所定の条件に応じて設定するように構成できる。
【0096】
例えば、解析マップの重ね順を眼の部位に応じて設定することが可能である。より具体的には、表示制御部211aは、部分的に重複している2以上の部分3次元データに対応する被検眼Eの2以上の部位に基づいて、これら部分3次元データから生成された2以上の解析マップの順位を決定し、この順位に応じて2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させることができる。眼の部位と順位とを対応付ける情報は、記憶部212に予め記憶される。ユーザがこの情報を任意に編集できるようにしてもよい。上記の例においては、例えば黄斑の順位が視神経乳頭よりも高く設定される。表示制御部211aは、この情報を参照することで、黄斑層厚評価マップMmを乳頭周囲層厚評価マップMd上に配置させ、これらを正面画像Fに重ねて表示させる。
【0097】
他の例として、解析マップの重ね順を解析種別に応じて設定することができる。解析種別としては、解析ソフトウェアの種別、対象となる層領域の種別などがある。解析部232は、少なくとも、部分的に重複している2以上の部分3次元データの一部に対して第1解析処理を実行し、且つ、他の一部に対して第1解析処理と異なる第2解析処理を実行する。そして、表示制御部211aは、解析部232により実行された解析処理の種別に基づいて、これら部分3次元データから生成された2以上の解析マップの順位を決定し、この順位に応じて2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させる。解析種別と順位とを対応付ける情報は、記憶部212に予め記憶される。ユーザがこの情報を任意に編集できるようにしてもよい。上記の例においては、例えばGCL++厚解析の順位がRNFL厚解析よりも高く設定される。表示制御部211aは、この情報を参照することで、黄斑層厚評価マップMmを乳頭周囲層厚評価マップMd上に配置させ、これらを正面画像Fに重ねて表示させる。
【0098】
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科撮影装置の作用及び効果について説明する。
【0099】
実施形態の眼科撮影装置は、3次元データ生成部と、解析部と、表示制御部とを備える。3次元データ生成部は、OCTを用いて被検眼の3次元領域を走査することにより3次元データを生成する。解析部は、3次元データにおける複数の部分3次元データを解析することにより複数の解析マップを生成する。表示制御部は、複数の解析マップと被検眼の正面画像とを重ねて表示手段に表示させる。
【0100】
この構成によれば、単一の3次元データに基づいて被検眼の複数の部分の解析を行うことができ、これら解析結果を表すマップを被検眼の正面画像とともに表示することができる。
【0101】
なお、上記の典型的な実施形態において、3次元データ生成部は、OCTユニット100と眼底カメラユニット2内の測定光路と画像形成部220と3次元データ作成部231とを含み、解析部は解析部232を含み、表示制御部は表示制御部211aを含む。また、表示手段は、眼科撮影装置に含まれてもよいし、眼科撮影装置に接続された外部装置であってもよい。
【0102】
実施形態において、3次元データ生成部は、被検眼の眼底の3次元領域を走査して3次元データを生成するよう構成されてよい。この場合、正面画像は、眼底カメラにより取得された眼底写真、走査型レーザ検眼鏡により取得された眼底走査画像、又は、OCTを用いて取得された眼底の3次元データの少なくとも一部から生成されたOCT正面画像であってよい。
【0103】
OCT正面画像は、複数の解析マップを得るための3次元データと同じ3次元データから生成されてもよいし、他の3次元データから生成されてもよい。また、正面画像はこれらに限定されない。また、被検眼の他の部位の解析が行われる場合には当該部位の正面画像が得られる。例えば、前眼部の解析が行われる場合、観察画像のフレーム、撮影画像、OCT正面画像などを用いることができる。
【0104】
上記の典型的な実施形態では、眼底カメラユニット2を用いて眼底写真を取得でき、また、正面画像生成部233を用いてOCT正面画像を生成することができる。また、眼底写真、眼底走査画像、OCT正面画像等の任意の正面画像を、外部装置(PACS等の画像アーカイビングシステム、眼科撮影装置など)から取得したり、記録媒体から読み出したりすることも可能である。
【0105】
更に、解析部は、層領域特定部と層厚算出部とを含んでいてよい。層領域特定部は、3次元データにおける複数の部分3次元データの少なくとも1つを解析することにより、眼底の所定の層組織に相当する層領域を特定する。なお、複数の部分3次元データの少なくとも1つについて、例えば乳頭形状解析やドルーゼン解析など、眼底の層の解析以外の解析を行ってもよいし、複数の部分3次元データの全てについて層の解析を行ってもよい。層厚算出部は、層領域特定部により特定された層領域の厚さを複数の位置において算出する。解析部は、複数の位置において算出された層領域の厚さに基づいて解析マップを生成することができる。
【0106】
この構成によれば、当該部分3次元データの範囲における所定の層組織の厚さ分布を表す解析マップが得られる。
【0107】
上記の典型的な実施形態では、層領域特定部は層領域特定部232aを含み、層厚算出部は層厚算出部232bを含み、解析マップの生成はマップ生成部232dにより行われる。
【0108】
更に、実施形態の眼科撮影装置は記憶部を備えてよく、解析部は比較部を備えてよい。記憶部には、正常眼における所定の層組織の厚さの許容範囲の分布を表す正常眼データが予め記憶される。解析部内の比較部は、層厚算出部により算出された複数の位置における層領域の厚さと正常眼データとを比較する。解析部は、比較部により得られた比較結果に基づいて層厚評価マップを生成することができる。生成された層厚評価マップは、解析マップとして用いられ、正面画像とともに表示される。
【0109】
この構成によれば、所定の層組織の厚さに異常があるか否か、異常がどの程度であるか、といった情報を取得して視覚的に提示することが可能である。
【0110】
上記の典型的な実施形態では、記憶部は記憶部212を含み、正常眼データは正常眼データ212aを含み、比較部はデータ比較部232cを含み、層厚評価マップの生成はマップ生成部232dにより行われる。
【0111】
更に、3次元データ生成部は、眼底の視神経乳頭及び中心窩を含む3次元領域を走査して3次元データを生成するよう構成されてよい。加えて、解析部は、少なくとも、視神経乳頭を含む部分3次元領域(乳頭領域)に相当する第1部分3次元データ(乳頭周囲3次元データ)を解析して第1層厚評価マップ(乳頭周囲層厚評価マップ)を形成し、且つ、中心窩を含む部分3次元領域(中心窩領域)に相当する第2部分3次元データ(黄斑3次元データ)を解析して第2層厚評価マップ(黄斑層厚評価マップ)を形成するよう構成されてよい。表示制御部は、少なくとも第1層厚評価マップ及び第2層厚評価マップを正面画像に重ねて表示させることができる。
【0112】
この構成によれば、乳頭周囲における層厚の状態と黄斑における層厚の状態とを統合的に把握することができるので、緑内障診断などにおいて有効である。
【0113】
第1部分3次元データ(乳頭周囲3次元データ)と第2部分3次元データ(黄斑3次元データ)とが部分的に重複している場合、表示制御部は、第1層厚評価マップ(乳頭周囲層厚評価マップ)の一部と第2層厚評価マップ(黄斑層厚評価マップ)の一部とを重ねて表示させることができる。例えば、表示制御部は、第1層厚評価マップ(乳頭周囲3次元データ)の上に第2層厚評価マップ(黄斑3次元データ)を部分的に重ねて表示させることができる。
【0114】
より一般に、3次元データにおける複数の部分3次元データのうちの2以上が部分的に重複している場合、表示制御部は、当該2以上の部分3次元データに基づく2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させることが可能である。
【0115】
このとき、表示制御部は、2以上の部分3次元データに対応する被検眼の2以上の部位に基づいて2以上の解析マップの順位を決定し、この順位に応じて2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させることができる。つまり、2以上の解析マップを重ねる順序を解析対象部位に応じて決定することが可能である。
【0116】
或いは、解析部が、少なくとも、2以上の部分3次元データの一部に対して第1解析処理を実行し、且つ、他の一部に対して第1解析処理と異なる第2解析処理を実行する場合、つまり、解析部が異なる種別の解析処理を実行する場合、適用された解析処理の種別に応じて、2以上の解析マップを重ねる順序を決定することができる。すなわち、表示制御部は、解析部により実行される解析処理の種別に基づいて2以上の解析マップの順位を決定し、この順位に応じて2以上の解析マップを部分的に重ねて表示させるように構成されてよい。
【0117】
実施形態において、表示制御部は、解析部により実行された解析処理の単位領域に基づく格子状画像(グリッド画像)を複数の解析マップの少なくとも1つに重ねて表示させることができる。また、解析マップの種別に応じてグリッド画像の表示の有無を自動で決定することができる。また、グリッド画像の表示の有無をユーザが任意に指定することも可能である。
【0118】
以上のような本実施形態によれば、被検眼の複数の部位に関するデータを個別に収集及び解析する従来の技術と異なり、OCTを利用して取得された単一の3次元データから複数の解析マップを生成することができる。したがって、これら解析マップの間の誤差や位置合わせの誤差が生じるおそれが小さく、高い確度で解析結果を得ることが可能である。更に、本実施形態によれば、複数の解析マップと被検眼の正面画像とを重ねて表示させることができるので、ユーザは、被検眼の広域にわたる状態を容易に把握することが可能である。このように、本実施形態によれば、被検眼の広域にわたる高確度の解析結果を容易に把握可能な態様で提示することができる。
【0119】
〈眼科情報処理装置〉
実施形態に係る眼科情報処理装置は、1以上の情報処理装置を含み、表示手段を備えていてもよい。また、眼科情報処理装置は、例えば眼底カメラやSLOなどの眼科撮影装置としての機能を備えてもよい。
【0120】
実施形態に係る眼科情報処理装置の構成の一例を
図9に示す。眼科情報処理装置300は、制御部310と、3次元データ受付部(3Dデータ受付部)320と、解析部330とを備える。
【0121】
制御部310は眼科情報処理装置300の各部(及びこれに接続された外部装置)の制御を行う。制御部310は表示制御部311を含む。表示制御部310は、前述した眼科撮影装置1の表示制御部211aと同様の構成を備えてよく、同様の処理を実行可能であってよい。
【0122】
3次元データ受付部320は、OCTを用いて被検眼の3次元領域を走査することにより生成された3次元データを受け付ける。本実施形態では、眼科情報処理装置300と異なる眼科撮影装置(光干渉断層計)により被検眼の3次元OCTスキャンが実行される。眼科撮影装置により取得された3次元データは、直接的又は間接的に眼科情報処理装置300に送られる。直接的な送信の例として、医療機関内のLANを通じた送信、インターネットを通じた送信、広域専用線を通じた送信などがある。間接的な送信としては、アーカイビングシステム(画像アーカイビングシステム、電子カルテシステム等)への保管を介した送信、情報処理端末(医師端末等)を介した送信、記録媒体(半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気記憶媒体等)への記録を介した送信などがある。
【0123】
3次元データ受付部320は、外部からの3次元データの入力態様に応じた構成を備える。例えば、3次元データ受付部320は、外部装置と通信を行うための通信インターフェイスや、記録媒体に記録された情報を読みだすドライブ装置を含む。通信インターフェイスは、眼科情報処理装置300が接続可能なネットワークに準拠したものであり、例えば、LAN用、インターネット用、広域専用線用のネットワークインターフェイスがある。
【0124】
また、3次元データ受付部320は、被検眼の正面画像を受け付けることが可能である。なお、眼科情報処理装置300が眼底カメラやSLOとしての機能を備える場合、眼科情報処理装置300自体により取得された正面画像を後述の処理において用いることが可能である。
【0125】
3次元データ受付部320は、受け付けた3次元データ(更に、被検者ID、正面画像等)を制御部310に送る。制御部310は、これを解析部330に送る。解析部330は、例えば、前述した眼科撮影装置1の解析部232と同様の構成を備えてよく、同様の処理を実行可能であってよい(
図4等を参照)。解析部330は、入力された3次元データにおける複数の部分3次元データを解析することにより複数の解析マップを生成する。解析処理の内容や解析マップの形態は前述した眼科撮影装置1と同様であってよい。生成された複数の解析マップは制御部310に送られる。
【0126】
表示制御部311は、解析部330により生成された複数の解析マップと被検眼の正面画像とを重ねて表示装置400に表示させる。このときの表示態様は、前述した眼科撮影装置1におけるそれと同様であってよい(
図8A、
図8B等を参照)。
【0127】
このような本実施形態によれば、被検眼の複数の部位に関するデータを個別に収集及び解析する従来の技術と異なり、OCTを利用して取得された単一の3次元データから複数の解析マップを生成することができる。したがって、これら解析マップの間の誤差や位置合わせの誤差が生じるおそれが小さく、高い確度で解析結果を得ることが可能である。更に、本実施形態によれば、複数の解析マップと被検眼の正面画像とを重ねて表示させることができるので、ユーザは、被検眼の広域にわたる状態を容易に把握することが可能である。このように、本実施形態によれば、被検眼の広域にわたる高確度の解析結果を容易に把握可能な態様で提示することができる。
【0128】
眼科情報処理装置をクライアントサーバモデルのサーバとして構築することができる。例えば、実施形態に係る眼科情報処理装置としての機能を備えたクラウドサーバを設け、複数のクライアントに対して表示情報を提供するサービスを行うことができる。
【0129】
〈変形例〉
以上に説明した構成は、本発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。適用される構成は、例えば目的に応じて選択される。また、適用される構成に応じ、当業者にとって自明の作用効果や、本明細書において説明された作用効果が得られる。