特許第6580462号(P6580462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6580462ネットワークシステム、ノード、フレーム通信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580462
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ネットワークシステム、ノード、フレーム通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20190912BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20190912BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20190912BHJP
【FI】
   H04W74/08
   H04W52/02 110
   H04W84/18
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-216046(P2015-216046)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-92537(P2017-92537A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】509266251
【氏名又は名称】PicoCELA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】古川 浩
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−183470(JP,A)
【文献】 丸田一輝、古川浩,無線バックホールにおけるラウンドロビン型周期的間欠送信を用いた効率的マルチチャネル中継法の検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115 No.206,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2015年 9月 1日,第115巻,Pages 161-166
【文献】 東坂悠司、丸田一輝、比嘉征規、古川浩,無線マルチホップネットワークにおける経路予約型周期的間欠送信,電子情報通信学会論文誌 B Vol.J91-B No.10,日本,社団法人電子情報通信学会,2008年10月 1日,Vol.J91-B,Pages 1287-1298
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードを含むネットワークシステムであって、
前記複数のノードは、1つの根ノードと、複数の内部ノードと、複数の葉ノードとの木構造を有する経路を用いて上下回線トラフィックを伝送し、
前記根ノードは、
前記内部ノード及び前記葉ノードに下りフレームを送信するCN通信部と、
下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部を備え、
前記送信待機時間決定部は、前記下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノード毎に異なる付加待機時間以上の時間を決定するものであり、
前記根ノードが前記下りフレームを送信する場合に、
前記送信待機時間決定部は、送信待機時間を決定し、
前記CN通信部は、直前の前記下りフレームを送信してから前記送信待機時間を経過して前記下りフレームを送信する、ネットワークシステム。
【請求項2】
前記送信待機時間決定部は、
前記各下りフレームの送信時に次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための品質確保時間を決定する品質確保時間決定部と、
最終宛先ノード毎に異なる前記付加待機時間を決定する付加待機時間決定部を備え、
前記CN通信部は、直前の前記下りフレームを送信してから前記品質確保時間及び前記付加待機時間を経過して次の前記下りフレームを送信する、請求項1記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記根ノードは、複数のレイヤーにより実現されるものであり、
前記品質確保時間決定部は、前記品質確保時間として、第1レイヤーにおいて次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための時間を決定し、
前記付加待機時間決定部は、前記付加待機時間として、前記第1レイヤーとは異なる第2レイヤーにおいて最終中継先ノードまでの通信品質を確保するために付加される時間を決定する、請求項2記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記内部ノード及び前記葉ノードは、
フレームの送信時に次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための品質確保時間を決定するSN品質確保時間決定部と、
直前のフレームの送信から前記品質確保時間を経過して次のフレームを送信するSN通信部を備える、請求項1から3のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記根ノードは、前記経路に沿って前記内部ノード及び前記葉ノードに指示フレームを送信するものであり、
前記指示フレームは、上り回線を指示する上り方向指示フレームと、下り回線を指示する下り方向指示フレームを含み、
前記内部ノード及び前記葉ノードは、他のノードと通信を行うSN通信部を備え、
前記SN通信部は、
前記上り方向指示フレームを受信した場合、
前記内部ノードならば、下り方向に前記上り方向指示フレームを転送し、
前記上り方向指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、上りデータフレームを送信して下りデータフレームをバッファして送信せず、
前記下り方向指示フレームを受信した場合、
前記内部ノードならば、下り方向に前記下り方向指示フレームを転送し、
前記下り方向指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、下りデータフレームを送信して上りデータフレームをバッファして送信しない、請求項1から4のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項6】
前記根ノードは、トラフィック量及び/又はバッファ量に応じて、前記上り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間と前記下り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間の時間配分を変更する、請求項5に記載のネットワークシステム。
【請求項7】
前記指示フレームは、さらに、アクセス回線指示フレームを含み、
前記SN通信部は、
前記アクセス回線指示フレームを受信した場合、前記アクセス回線指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、
前記内部ノードならば、下り方向に前記アクセス回線指示フレームを転送し、
上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、前記複数のノード以外の通信装置と通信を行って、下りデータフレーム及び上りデータフレームをバッファして送信しない、請求項5又は6に記載のネットワークシステム。
【請求項8】
前記内部ノードは、他のノードにポーリングフレームを送信するSN通信部を備え、
当該SN通信部は上りバッファと下りバッファを備え、
前記ポーリングフレームは、上りデータフレーム又は下りデータフレーム、及び、上りか下りかを示すフラグを含み、
前記根ノードが備えるCN通信部は、下りノードに対してポーリングフレームを送信し、
前記SN通信部は、
上りノードからポーリングフレームを受信すると、
受信したポーリングフレームが下りデータフレームを含む場合は当該下りフレームを下りバッファへバッファリングし、
受信したポーリングフレームに含まれるフラグが上りを示すフラグであれば、上りバッファから上りデータフレームを取り出して送信準備を行い、
受信したポーリングフレームに含まれるフラグが下りを示すフラグであれば、下りバッファから下りデータフレームを取り出して送信準備を行い、
送信準備状態にある上りデータフレーム又は下りデータフレーム、及び、フラグを含む新たなポーリングフレームを生成し、当該ポーリングフレームを上下方向に接続する複数のノードが受信できるようにして送信し、
前記SN通信部もしくは前記CN通信部は、
下りノードからポーリングフレームを受信し、当該ポーリングフレームが上りデータフレームを含む場合、
前記SN通信部は当該上りデータフレームを上りバッファへバッファリングし、
前記CN通信部は当該上りデータフレームをインターネット回線へ向けて転送することを特徴とする
請求項1から4のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項9】
前記複数のノードは、1つの通信インターフェースを利用して又は複数の通信インターフェースを束ねて利用して通信を行うものであり、
同一のチャネルを割り当てて上下回線トラフィックを通信するものである、請求項1から8のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項10】
他のノードに下りフレームを送信するノードであって、
前記下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部と、
前記他のノードに対して、直前の前記下りフレームの送信から前記送信待機時間を経過して次の前記下りフレームを送信するCN通信部を備え、
前記送信待機時間決定部は、前記下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノードに応じた付加待機時間以上の時間を決定する、ノード。
【請求項11】
複数のノードを含むネットワークシステムにおけるフレーム伝送方法であって、
前記複数のノードは、1つの根ノードと、複数の内部ノードと、複数の葉ノードとの木構造を有する経路を用いて上下回線トラフィックを伝送し、
前記根ノードは、
下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部と、
前記内部ノード及び前記葉ノードに下りフレームを送信するCN通信部を備え、
前記送信待機時間決定部は、下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノードに応じた付加待機時間以上の時間を決定するものであり、
前記根ノードが下りフレームを送信する場合に、前記送信待機時間決定部が、前記送信待機時間を決定する決定ステップと、
前記CN通信部が、直前の前記下りフレームの送信から前記送信待機時間を経過して前記下りフレームを送信する送信ステップを含むフレーム伝送方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項10記載のノードとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステム、ノード、フレーム通信方法及びプログラムに関し、特に、複数のノードを含むネットワークシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCSMA/CAプロトコル等では、複数の通信装置が一斉に送信することを防止するために、自動的に待機し、その後、送信可能な状態になって送信している。一般に、この待機する時間は、ランダムに与えられる。
【0003】
また、発明者は、1つのコアノード(バックボーン回線と接続されたゲートウェイノード)と複数のスレーブノードを含む無線マルチホップネットワークシステムにおいて、ネットワーク全体の通信効率を上げるために、コアノードが周期的に間欠送信を行うことにより、ネットワーク全体の通信効率を上げることを提案した(周期的間欠送信法(IPT))。さらに、電波干渉を抑制しつつ上下回線トラフィックを効率的に伝送する方法を提案してきた(特許文献1など参照)。例えば、特許文献1には、マルチチャネルを利用して上下回線を棲み分けることで上下回線間の電波干渉やパケット衝突を回避する手法が記載されている。
【0004】
また、非特許文献1には、AWiMA Netと定義された無線マルチホップネットワークシステムにおいて、上下回線トラフィックの電波干渉を抑制するため、他の全ノードに対して電波を到達させることが可能な高出力APを定め、当該高出力APが調停役となり、他の全ノードへ上りデータ処理期間と下りデータ処理期間を指示して、上下回線間の電波干渉を抑制する無線マルチホップ方式が記載されている。さらに、複数の高出力APで実現する場合には、これらのAPの間で協調処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5515072号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】明石、外3名著,“時分割AWiMA Netにおけるデータ通信方式について”,「マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2008)シンポジウム」,2008年7月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コアノードの無線IFにCSMA/CA等が採用されていると、自動的に待機する時間が付与される。しかしながら、これは、コアノードから直接通信を行う場合のものであり、ランダムバックオフであるために、効率が悪く、ネットワーク全体における通信効率を上げるものではない。
【0008】
また、例えば特許文献1記載の手法によれば、2つ以上の無線モジュールを使うことで上下回線を棲み分けることはできる。しかしながら、複数モジュールを必要とするため、装置のコストが高くなってしまう問題があった。また、このように複数無線モジュールを利用し、上下回線それぞれに排他的に無線モジュールを割り当てた場合、チャネル分割損が発生する。特許文献1(明細書0067段落など参照)では、このような損失を抑制するべく、複数チャネルのうちの一つのチャネル(上下回線混在チャネル)では上下回線トラフィックを混在させることが記載されている。しかしながら、その具体的な手法は明記されていない。1車線しかない車道に双方向の車が同時に通行しようとすれば、著しい渋滞が発生することは想像に難しくない。上下回線混在チャネルでは、まさにこれと同じ現象が発生する。以下では、本現象をbi-directional collisionと呼ぶことにする。
【0009】
さらに、特許文献1記載の手法によるIPTをCSMA/CA等のデータリンクレイヤでの品質保証機能が装備された無線モジュールの上に実装した場合、当該品質保証機能によって自動的に付与される確率的な送信待機時間がIPTの動作のために必要とする送信待機時間を狂わせてしまう課題もあった。
【0010】
また、非特許文献1記載の背景技術は、AWiMA Netが上下回線で異なる通信方式を採用し、下りデータをシングルホップ通信で送信することを利用して、APが全端末の通信をコントロールするものである。そのため、非特許文献1記載のAPと端末の間の通信制御は、AP間の通信に応用することができない。複数のAPの間では、重複エリアにおけるデータの衝突・干渉を防ぐために、複雑な協調処理を行うこととなる。
【0011】
そこで、本願発明は、CSMA/CA等が採用された場合でも、ネットワーク全体の通信効率を向上させることに適したネットワークシステム等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の第1の観点は、複数のノードを含むネットワークシステムであって、前記複数のノードは、1つの根ノードと、複数の内部ノードと、複数の葉ノードとの木構造を有する経路を用いて上下回線トラフィックを伝送し、前記根ノードは、前記内部ノード及び前記葉ノードに下りフレームを送信するCN通信部と、下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部を備え、前記送信待機時間決定部は、前記下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノード毎に異なる付加待機時間以上の時間を決定するものであり、前記根ノードが前記下りフレームを送信する場合に、前記送信待機時間決定部は、送信待機時間を決定し、前記CN通信部は、直前の前記下りフレームを送信してから前記送信待機時間を経過して前記下りフレームを送信するものである。
【0013】
本願発明の第2の観点は、第1の観点のネットワークシステムであって、前記送信待機時間決定部は、前記各下りフレームの送信時に次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための品質確保時間を決定する品質確保時間決定部と、最終宛先ノード毎に異なる前記付加待機時間を決定する付加待機時間決定部を備え、前記CN通信部は、直前の前記下りフレームを送信してから前記品質確保時間及び前記付加待機時間を経過して次の前記下りフレームを送信するものである。
【0014】
本願発明の第3の観点は、第2の観点のネットワークシステムであって、前記根ノードは、複数のレイヤーにより実現されるものであり、前記品質確保時間決定部は、前記品質確保時間として、第1レイヤーにおいて次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための時間を決定し、前記付加待機時間決定部は、前記付加待機時間として、前記第1レイヤーとは異なる第2レイヤーにおいて最終中継先ノードまでの通信品質を確保するために付加される時間を決定するものである。
【0015】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点のネットワークシステムであって、前記内部ノード及び前記葉ノードは、フレームの送信時に次中継先ノードとの間の通信品質を確保するための品質確保時間を決定するSN品質確保時間決定部と、直前のフレームの送信から前記品質確保時間を経過して次のフレームを送信するSN通信部を備えるものである。
【0016】
本願発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点のネットワークシステムであって、前記根ノードは、前記経路に沿って前記内部ノード及び前記葉ノードに指示フレームを送信するものであり、前記指示フレームは、上り回線を指示する上り方向指示フレームと、下り回線を指示する下り方向指示フレームを含み、前記内部ノード及び前記葉ノードは、他のノードと通信を行うSN通信部を備え、前記SN通信部は、前記上り方向指示フレームを受信した場合、前記内部ノードならば、下り方向に前記上り方向指示フレームを転送し、前記上り方向指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、上りデータフレームを送信して下りデータフレームをバッファして送信せず、前記下り方向指示フレームを受信した場合、前記内部ノードならば、下り方向に前記下り方向指示フレームを転送し、前記下り方向指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、下りデータフレームを送信して上りデータフレームをバッファして送信しないものである。
【0017】
本願発明の第6の観点は、第5の観点のネットワークシステムであって、前記根ノードは、トラフィック量及び/又はバッファ量に応じて、前記上り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間と前記下り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間の時間配分を変更するものである。
【0018】
本願発明の第7の観点は、第5又は第6の観点のネットワークシステムであって、前記指示フレームは、さらに、アクセス回線指示フレームを含み、前記SN通信部は、前記アクセス回線指示フレームを受信した場合、前記アクセス回線指示フレーム以外の新たな指示フレームを受信するまでの通信では、前記内部ノードならば、下り方向に前記アクセス回線指示フレームを転送し、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、前記複数のノード以外の通信装置と通信を行って、下りデータフレーム及び上りデータフレームをバッファして送信しないものである。
【0019】
本願発明の第8の観点は、第1から第4のいずれかの観点のネットワークシステムであって、前記内部ノードは、他のノードにポーリングフレームを送信するSN通信部を備え、当該SN通信部は上りバッファと下りバッファを備え、前記ポーリングフレームは、上りデータフレーム又は下りデータフレーム、及び、上りか下りかを示すフラグを含み、前記根ノードが備えるCN通信部は、下りノードに対してポーリングフレームを送信し、前記SN通信部は、上りノードからポーリングフレームを受信すると、受信したポーリングフレームが下りデータフレームを含む場合は当該下りフレームを下りバッファへバッファリングし、受信したポーリングフレームに含まれるフラグが上りを示すフラグであれば、上りバッファから上りデータフレームを取り出して送信準備を行い、受信したポーリングフレームに含まれるフラグが下りを示すフラグであれば、下りバッファから下りデータフレームを取り出して送信準備を行い、送信準備状態にある上りデータフレーム又は下りデータフレーム、及び、フラグを含む新たなポーリングフレームを生成し、当該ポーリングフレームを上下方向に接続する複数のノードが受信できるようにして送信し、前記SN通信部もしくは前記CN通信部は、下りノードからポーリングフレームを受信し、当該ポーリングフレームが上りデータフレームを含む場合、前記SN通信部は当該上りデータフレームを上りバッファへバッファリングし、前記CN通信部は当該上りデータフレームをインターネット回線へ向けて転送することを特徴とするものである。
【0020】
本願発明の第9の観点は、第1から第8のいずれかの観点のネットワークシステムであって、前記複数のノードは、1つの通信インターフェースを利用して又は複数の通信インターフェースを束ねて利用して通信を行うものであり、同一のチャネルを割り当てて上下回線トラフィックを通信するものである。
【0021】
本願発明の第10の観点は、他のノードに下りフレームを送信するノードであって、前記下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部と、前記他のノードに対して、直前の前記下りフレームの送信から前記送信待機時間を経過して次の前記下りフレームを送信するCN通信部を備え、前記送信待機時間決定部は、前記下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノードに応じた付加待機時間以上の時間を決定するものである。
【0022】
本願発明の第11の観点は、複数のノードを含むネットワークシステムにおけるフレーム伝送方法であって、前記複数のノードは、1つの根ノードと、複数の内部ノードと、複数の葉ノードとの木構造を有する経路を用いて上下回線トラフィックを伝送し、前記根ノードは、下りフレームを送信するときに送信待機時間を決定する送信待機時間決定部と、前記内部ノード及び前記葉ノードに下りフレームを送信するCN通信部を備え、前記送信待機時間決定部は、下りフレームを送信するときに、前記送信待機時間として、宛先ノードに応じた付加待機時間以上の時間を決定するものであり、前記根ノードが下りフレームを送信する場合に、前記送信待機時間決定部が、前記送信待機時間を決定する決定ステップと、前記CN通信部が、直前の前記下りフレームの送信から前記送信待機時間を経過して前記下りフレームを送信する送信ステップを含むものである。
【0023】
本願発明の第12の観点は、コンピュータを、第10の観点のノードとして機能させるためのプログラムである。
【0024】
なお、本願発明を、第12の観点のプログラムを(定常的に)記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、各観点の根ノードとして捉えてもよい。
【0025】
また、本願発明を、コアノードと複数のスレーブノードを含むネットワークシステムであって、前記コアノードは、スレーブノードに指示フレーム及び下りデータフレームを送信するCN通信部を備え、前記指示フレームは、上り回線を指示する上り方向指示フレームと、下り回線を指示する下り方向指示フレームを含み、前記スレーブノードは、他のノードと通信を行うSN通信部を備え、前記SN通信部は、前記上り方向指示フレームを受信した場合、新たな下り方向指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、上りデータフレームを送信して下りデータフレームをバッファして送信せず、前記下り方向指示フレームを受信した場合、新たな下り方向指示フレームを受信するまでの通信では、上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに前記指示フレームを受信し、かつ、下りデータフレームを送信して上りデータフレームをバッファして送信しないものとしてとらえてもよい。
【0026】
さらに、根ノードは、トラフィック量及び/又はバッファ量に応じて、上り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間と下り方向指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間に加えて、アクセス回線指示フレームを送信してから次の指示フレームを送信するまでの時間の時間配分を変更するものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本願発明の各観点によれば、根ノードにおいて、下りフレーム送信時に、宛先ノード毎に異なる付加待機時間以上の送信待機時間を意図的に設定することにより、ランダムバックオフの影響を受けにくく、十分な周期で周期的間欠送信(IPT)を実現してネットワーク全体として効率のよい通信を実現することが可能になる。根ノードの一例は、コアノード(バックボーン回線と接続されたゲートウェイノード)であり、内部ノード及び葉ノードの一例は、スレーブノードである。なお、発明者は、これまで提案したIPTは、ソースノードで絶対送信周期を与えるものであり、本願発明とは異なるものである。
【0028】
本願発明の第2、第3の観点によれば、付加待機時間決定部を付加することにより、宛先ノード毎に異なる送信待機時間を確保しつつ、CSMA/CA等のデータリンクレイヤ(レイヤー2)での品質保証機能が装備された無線モジュールの上にIPTを実装した場合であってもIPTの動作のために必要な適切な送信待機時間を設定できる。
【0029】
さらに、本願発明の第4の観点によれば、内部ノードや葉ノードは、CSMA/CA等を採用した一般的な通信装置で実現することができる。
【0030】
さらに、本願発明の第5の観点によれば、根ノードが指示フレームを利用することにより、内部ノード及び葉ノードは、隣接ノードとの間で、上り回線又は下り回線のいずれかにデータフレームを送受信する。内部ノード及び葉ノードは、上り回線が指定されているときには、上りデータフレームのみを送信し、下りデータフレームを送信しない。また、内部ノードは、下り回線が指定されているときには、下りデータフレームのみを送信し、上りデータフレームを送信しない。根ノードは、内部ノード及び葉ノードに対して、指示フレームにより上り回線と下り回線を指定する。葉ノードに指示フレームが到達すれば、その間が上り回線又は下り回線となる。
【0031】
データフレームの受信については、上りデータフレームも下りデータフレームも受信する。そのため、隣接ノード(経路上で直接通信できるノード)に、上り回線が指定されているものと下り回線が指定されているものが混在しても、これらから送信されたデータフレームを受信する。よって、ネットワーク全体として上り回線と下り回線を同期して切り替える必要はなく、ノード間の経路を単位として、上り回線と下り回線を指定すればよい。これにより、ノード間のbi-directional collisionの発生を容易に抑制しつつ、同一中継路上で上下回線トラフィックを実現することが可能になる。
【0032】
なお、ノード間の通信は、無線通信であっても有線通信であってもよい。例えば無線モジュールが1つであっても、安定した上下回線フレーム転送を実現することができる。また、無線モジュールが複数であっても、それぞれで並列動作させることで、負荷を分散させることができる。
【0033】
さらに、本願発明の第6の観点によれば、上下回線の時間配分を変更することにより、通信資源を有効に活用することができる。なお、さらに、アクセス回線の時間を割り当てる場合には、その時間配分も変更できるようにしてもよい。
【0034】
さらに、本願発明の第7の観点によれば、上り回線及び下り回線に加えてアクセス回線(端末と当該端末が直接接続するノード間の回線)をも切り替えることにより、アクセス回線と中継回線を混在させることができる。そのため、例えば1つの通信モジュールで、ノード間に加えて他の通信装置とも通信できることとなり、無線モジュール等の通信資源を有効に活用することができる。
【0035】
さらに、本願発明の第8の観点によれば、ポーリングフレームを利用して、同一中継路上で上下回線トラフィックを実現することが可能になる。なお、上りDFフラグが立っている/立っていない状態は、下りDFフラグが立っていない/立っている状態と同じ意味である。
【0036】
さらに、本願発明の第9の観点によれば、例えば無線通信を含んでいても、同一の無線チャネルを割り当て、相互に通信できる状態とすることができる。マルチチャネルメッシュとは異なるネットワークで実現されるものである。
【0037】
なお、非特許文献1記載の背景技術は、APがデータを送信するときには端末は送信せず、APがデータを送信しないときに端末がデータを送信するものである。そのため、APのデータの送信に同期させて、ネットワーク全体の通信を制御する必要がある。端末は、下りデータフレームを送信しないため、上りデータフレームと下りデータフレームを区別して送信制御するものではない。本願発明によれば、データフレームの送信と受信を別に制御し、受信は、上りデータフレームと下りデータフレームを区別せずに受信制御し、送信は、上りデータフレームと下りデータフレームを区別して送信制御する。あるスレーブノードに上りデータフレームと下りデータフレームが同時に到達しても、このスレーブノードはいずれも受信することができる。そのため、複数のスレーブノードに、上り回線が指定されたものと下り回線が指定されたものが混在してもよい。本願発明は、個々のスレーブノードを独立に制御できるものであり、非特許文献1記載のようにネットワーク全体を時分割して制御するものとは本質的に異なる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本願発明の実施の形態に係るネットワークシステムの一例を示す。
図2図1の(a)コアノード3及び(b)スレーブノード5の構成の一例を示すブロック図である。
図3】黙示的IPTを利用した場合の図2のコアノード3及びスレーブノード5の動作の一例を示すフロー図である。
図4】IPTを使用しない場合のリレー処理の一例を示す。
図5】従来のIPTを単純に使用する場合の一例を示す。
図6】黙示的IPTを使用する場合の一例を示す。
図7】指示フレームを用いた時分割法について、図2のコアノード3及びスレーブノード5の動作の一例を示すフロー図である。
図8図1のネットワークシステム1における図7の処理による動作の一例を示す図である。
図9】隣接ノードの一例において、下り回線が指定されている状態から上り回線が指定されている状態へと変更する場合を示す図である。
図10】隣接ノードの一例において、上り回線が指定されている状態から下り回線が指定されている状態へと変更する場合を示す図である。
図11】隣接ノードの一例において、下り回線が指定されている状態からアクセス回線が指定されている状態へと変更する場合を示す図である。
図12】ポーリングフレームを用いた場合について、図2のスレーブノード5の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
図1は、本願発明の実施の形態に係るネットワークシステムの一例を示す図である。ネットワークシステム1には、1つのコアノード3と、6個のスレーブノード51,…,56がある。なお、符号の添え字は、省略する場合がある。以下では、各ノードが1つの無線モジュールにより無線通信を行い、すべてのノードが同一の無線チャネルを割り当て、相互に通信できる状態である場合を例として説明する。なお、本願発明は、複数の無線モジュールを使用したり、有線通信であったり、有線通信と無線通信を組み合わせたものであってもよい。複数の無線モジュールを使用する場合には、例えば、各無線モジュールで並列動作させて負荷分散させることができる。
【0041】
ネットワークシステム1は、木構造の経路が構築されている。コアノード3(本願請求項の「根ノード」の一例)は、木構造の根である。スレーブノード51及び52(本願請求項の「内部ノード」の一例)は、木構造の内部である。スレーブノード53、54、55及び56(本願請求項の「葉ノード」の一例)は、木構造の葉である。コアノード3の子は、スレーブノード51及び52である。スレーブノード51の子は、スレーブノード53、54及び55である。スレーブノード52の子は、スレーブノード56である。
【0042】
隣接ノードは、ネットワークに構築された経路において、直接通信可能なノードである。例えばスレーブノード52の隣接ノードは、コアノード3とスレーブノード56である。
【0043】
上り回線は、ネットワークに構築された木構造の経路に沿って、スレーブノードからコアノードに向かう回線である。例えばスレーブノード53の上り回線は、親スレーブノード51に向かう回線である。上りノードは、隣接ノードのうち、コアノードに向かう方向に位置するノードである。これは、木構造の経路の親ノードである。例えばスレーブノード56の上りノードは、スレーブノード52である。
【0044】
下り回線は、ネットワークに構築された経路に沿って、コアノードからスレーブノードに向かう回線である。上りフレームは、上り回線のフレームである。下りフレームは、下り回線のフレームである。下りノードは、隣接ノードのうち、コアノードから遠ざかる方向に位置するノードである。これは、木構造の経路の子ノードである。例えばスレーブノード52の下りノードは、スレーブノード56である。
【0045】
データフレームは、データを送信するためのフレームである。上りデータフレームは、データを送信するための上りフレームである。下りデータフレームは、データを送信するための下りフレームである。指示フレームは、コアノードがスレーブノードに対して、上り回線と下り回線とアクセス回線を指示するためのものである。ここで、上り回線と下り回線は、基幹回線(バックボーン回線)であって、ノード間で通信するものである。アクセス回線は、ノードと移動端末等との間で通信するものである。本実施例では、各ノードに対してアクセス回線として機能することを指示することができるため、例えばバックボーン回線のための無線通信機器を、アクセス回線のためにも使用することができる。
【0046】
経路を構築するための経路制御は、例えば、特許文献1や特許第4496336号公報などに記載されていることと同様に、最小伝搬損ルーティングなどにより構築することができる。本願発明は、経路を構築した後のフレーム転送に関するものである。
【0047】
図2は、図1の(a)コアノード3及び(b)スレーブノード5の構成の一例を示すブロック図である。図2を参照して、コアノード3及びスレーブノード5の構成の一例を説明する。
【0048】
図2(a)を参照して、コアノード3は、コアノード3の動作の制御を行うCN制御部11と、フレームを記憶するCN通信バッファ13と、他のノードと通信をするCN通信部15を備える。CN通信部15は、品質確保時間を決定するCN品質確保時間決定部17と、付加待機時間を決定する付加待機時間決定部19と、他のノードにフレームを送信するCN送信部21と、他のノードからフレームを受信するCN受信部23を備える。
【0049】
コアノード3は、複数のレイヤーにより実現されている。CN品質確保時間決定部17は、例えばMAC(レイヤー2のCSMA/CA)の動作で品質確保時間を付与する。CN付加待機時間決定部19は、例えばIPTプロトコルによって2.5レイヤーで付加待機時間を付与する。コアノード3の設計者にとって、品質確保時間はいわば「勝手に」付与されるのに対し、付加待機時間は「意図的に」付与することともいえるものである。
【0050】
図2(b)を参照して、スレーブノード5は、スレーブノード5の動作の制御を行うSN制御部25と、フレームを記憶するSN通信バッファ27と、他のノードと通信をするSN通信部29を備える。SN通信バッファ27は、SN上りバッファ37と、SN下りバッファ39を備える。SN通信部29は、品質確保時間を決定するSN品質確保時間決定部31と、他のノードにフレームを送信するSN送信部33と、他のノードからフレームを受信するSN受信部35を備える。
【0051】
スレーブノード5は、コアノード3と同様に複数のレイヤーで実現されている。SN品質確保時間決定部31は、CN品質確保時間決定部17と同様に、例えばMACの動作で品質確保時間を付与する。
【0052】
図3は、黙示的IPTを利用した場合の図2のコアノード3及びスレーブノード5の動作の一例を示すフロー図である。
【0053】
図3(a)及び(b)を参照して、図2のコアノード3の動作の一例を説明する。図3(a)を参照して、フレーム送信時の動作の一例を説明する。CN付加待機時間決定部19は、宛先ノードに応じて付加待機時間を計算する(ステップSTCS1)。付加待機時間は、一般的には、ホップ数が増加すれば大きくなる傾向になる。ただし、本願発明では、このような大小関係に限定されない。CN送信部15は、下りフレームを送信するか否かを判断する(ステップSTCS2)。送信するフレームは、CN通信バッファに格納される。送信しないならば、送信するまで待機する。送信するならば、CN品質確保時間決定部17は、品質確保時間を計算する(ステップSTCS3)。品質確保時間は、例えばCSMA/CAで与えられるもののように、複数の通信装置が一斉に送信することを防止するために付与される時間などである。これは、一般に、ランダムな待機時間となる。CN制御部11は、品質確保時間と付加待機時間を併せた送信待機時間が経過したか否かを判断する(ステップSTCS4)。経過していないならば、経過するまで待機する。経過したならば、フレームを送信し(ステップSTCS5)、ステップSTCS2に戻る。
【0054】
なお、送信待機時間を付加待機時間以上とするには、例えば、得られた品質確保時間が付加待機時間未満であれば再度決定し直し、付加待機時間以上とすることなど、他の処理によって実現してもよい。これにより、少なくとも付加待機時間以上の間隔で、IPTを実現することができる。
【0055】
一般に、ソースノード(図1のコアノード3など)を具体的に実現する場合に、無線IFにCSMAが入る場合には、自動的に最低限のIPT周期が設定される。しかしながら、これは、隣接ノードの同時通信等を避けるためで、ソースノードから遠方に位置する経路上での干渉を防ぐことはできない。黙示的IPTは、宛先ノードに応じて付加待機時間を付与することにより、ソースノードがCSMAを付与する場合でも、遠方に位置する経路上での干渉を防ぐことができるものである。
【0056】
図3(b)を参照して、フレーム受信時の動作の一例を説明する。CN受信部23は、他のノードから送信されたフレームを受信する動作を繰り返す(ステップSTCR1)。CN受信部23は、受信処理を常に行う。
【0057】
図3(c)及び(d)を参照して、図2のスレーブノード5の動作の一例を説明する。図3(b)を参照して、フレーム送信時の動作の一例を説明する。SN送信部29は、下りフレームを送信するか否かを判断する(ステップSTSS1)。送信するフレームは、SN通信バッファに格納される。送信しないならば、送信するまで待機する。送信するならば、SN品質確保時間決定部31は、品質確保時間を計算する(ステップSTSS2)。SN品質確保時間決定部31の動作は、CN品質確保時間決定部17と同様である。SN制御部25は、品質確保時間が経過したか否かを判断する(ステップSTSS3)。経過していないならば、経過するまで待機する。経過したならば、フレームを送信し(ステップSTSS4)、ステップSTSS1に戻る。
【0058】
なお、スレーブノード5では、品質確保時間決定部17による品質確保時間の決定処理をオフにしてもよい。この場合、図3(c)において、品質確保時間がない場合と同じ処理により実現することができる。
【0059】
図3(d)を参照して、フレーム受信時の動作の一例を説明する。SN受信部35は、他のノードから送信されたフレームを受信する動作を繰り返す(ステップSTSR1)。SN受信部35は、受信処理を常に行う。
【0060】
図4図5及び図6を参照して、黙示的IPTの技術的意義を具体的に説明する。上から下に時間は経過する。リレーノードは、コアノードに対応する。リレーノードは、スレーブノードに対応する。また、リレーノード3とリレーノード1は、干渉到達範囲内にあるとする。そのため、リレーノード3がリレーノード4に送信するタイミングでは、ソースノードからリレーノード1への送信が、電波干渉により失敗するとする。ソースノードから送信された下りデータフレームは、リレーノード1、2及び3を順に経由してリレーノード4に至る。図4は、IPTを使用しない場合の一例を示す。図5は、従来のIPTを単純に使用する場合を示す。図6は、黙示的IPTを使用する場合を示す。
【0061】
図4を参照して、IPTを適用しない場合の問題を説明する。ソースノードは、リレーノード1にデータフレーム51を送信する。リレーノード1は、データフレーム53を受信する。リレーノード1は、ソースノードにACK55を送信する。ソースノードは、ACK57を受信する。ソースノードは、CSMAプロトコルによりランダムな品質確保時間59で待機する。ソースノードは、品質確保時間経過後に、次のデータフレーム61を送信する。リレーノード1は、CSMAプロトコルによりランダムな品質確保時間65を待機して、リレーノード2にデータフレーム67を転送する。リレーノード2は、品質確保時間を待ってリレーノード3に転送する。リレーノード3がリレーノード4に送信するタイミングでは、ソースノードからリレーノード1への送信は電波干渉により失敗する。品質確保時間は、同時送信を避けるためにランダムに付与されるため、リレーする場合に、電波干渉により送信に失敗する場合がある。
【0062】
図5を参照して、IPTを適用する場合について説明する。ソースノードでは、固定の送信周期(IPT周期)を与える。ソースノードは、リレーノード1に対してデータフレーム71を送信する。そして、IPT周期の経過後に、次のデータフレーム75を送信する。リレーノード1は、ランダムな品質確保時間77経過後に、リレーノード2に、データフレーム79を転送する。同様に、リレーノード2、3及び4の順に、ランダムな時間経過後にデータフレームを転送する。単純にIPTを適用した場合、リレーノードにおけるCSMA/CAのランダムバックオフのために、長いIPT周期が必要となる。
【0063】
図6を参照して、黙示的IPTを適用した場合について説明する。ソースノードは、データフレーム81を送信した後、品質確保時間83に加えて、付加待機時間85を経過した後に、次のデータフレーム87を送信する。そして、品質確保時間89と付加待機時間91を経過した後に、次のデータフレーム93を送信する。品質確保時間はランダムに自動的に付与される。それに対し、付加待機時間は、宛先(リレーノード4)ノードに応じて定められるものである。そのため、ランダムバックオフの影響を受けにくく、より効率的なIPTを実現することができる。
【0064】
このように、黙示的IPTでは、CSMAプロトコルを用いているシステムでも、その機能が存在した状態でIPTを実現することができる。そのため、一般的なCSMA/CA等を採用している無線機器のソフトウエア等を変更するだけで、IPTを実現することが可能になる。
【0065】
続いて、図7〜11を参照して、指示フレームを用いた時分割法について説明する。図7は、図2のコアノード3及びスレーブノード5の動作の一例を示すフロー図である。図7を参照して、コアノード3及びスレーブノード5の動作の一例を説明する。
【0066】
図7(a)及び(b)を参照して、コアノード3の動作の一例を説明する。図7(a)は、コアノード3の受信時の動作である。CN受信部23は、下りスレーブノードから上りデータフレームを受信する(ステップSTTCR1)。CN受信部23は、常にデータフレームを受信する。
【0067】
図7(b)は、コアノード3の送信時の動作である。CN制御部11は、下り回線を指定しているか否かを判断する(ステップSTTCS1)。指定していないならば、下りデータフレームを送信せずにステップSTTCS3に進む。下り回線を指定しているならば、下りデータフレームを送信し(ステップSTTCS2)、ステップSTTCS3に進む。ステップSTTCS3において、指示フレームを送信するか否かを判断する。指示フレームを送信するならば、スレーブノード5に対して指示フレームを送信し(ステップSTTCS4)、ステップSTTCS1に戻る。指示フレームを送信しないならば、ステップSTTCS1に戻る。
【0068】
指示フレームは、下り回線を指定する下り方向指示フレームと、上り回線を指定する上り方向指示フレームと、アクセス回線を指定するアクセス回線指示フレームがある。コアノード3は、適応的に上り回線と下り回線とアクセス回線の時間配分を調整する。例えば、上下回線の調整は、以下のように行う。初期状態では、例えば、上下回線の配分を1:1とする。そして、トラフィック量及び/又はバッファ量に応じて、上下回線の比率配分を変更する。トラフィック量は、例えば上下回線の回線占有利率で測る。バッファ量は、例えば上下回線のデータフレームのバッファ量で測る。また、アクセス回線と上下回線の時間配分は、上下回線でのトラフィック量及び/又はバッファ量によりデータ量を把握して、時間配分を調整する。
【0069】
図7(c)及び(d)を参照して、スレーブノード5の動作の一例を説明する。図7(a)は、スレーブノード5の受信時の動作である。SN受信部35は、隣接ノードから上りデータフレーム及び下りデータフレーム並びに指示フレームを受信する(ステップSTTSR1)。受信したフレームを転送する場合には、SN通信バッファ27に格納する。SN受信部35は、常にデータフレーム及び指示フレームを受信する。
【0070】
図7(d)は、スレーブノード5の送信時の動作である。SN制御部25は、指示フレームを受信したか否かを判断する(ステップSTTSS1)。指示フレームを受信していないならば、ステップSTTSS5に進む。指示フレームを受信した場合、指示フレームにより指定された動作を行うように設定し(ステップSTTSS2)、ステップSTTSS3に進む。下り方向指示フレームを受信したならば、下りデータフレームを送信して上りデータフレームはSN通信バッファ27に格納して送信しない。上り方向指示フレームを受信したならば、上りデータフレームを送信して下りデータフレームはSN通信バッファ27に格納して送信しない。アクセス回線指示フレームを受信したならば、ノード間の通信を行わずに、図示を省略する通信機器(例えば、スマートフォンなど)と通信を行う。これにより、スレーブノード5は、アクセスポイントとして機能することができる。これにより、3つに時分割し、それぞれ、上り回線、下り回線、アクセス回線を切り替え、仮に1つの無線モジュールであっても、アクセス回線と中継回線を混在させて無線モジュールの有効活用を行うことができる。
【0071】
ステップSTTSS3において、SN制御部25は、当該スレーブノード5が内部か否かを判断する。内部でない(すなわち葉である)ならば、ステップSTTSS6に進む。内部であるならば、指示フレームを転送し(ステップSTTSS4)、ステップSTTSS5に進む。
【0072】
ステップSTTSS5において、下り回線が指示されているか否かを判断する。下り回線が指示されているならば、SN送信部33は、下りデータフレームを送信し、上りデータフレームをSN通信バッファ23にバッファして送信せずに(ステップSTTSS6)、ステップSTTSS1に戻る。下り回線が指示されていないならば、上り回線が指示されているか否かを判断する(ステップSTTSS7)。上り回線が指示されているならば、送信部33は、上りデータフレームを送信し、下りデータフレームをSN通信バッファ23にバッファして送信せずに(ステップSTTSS8)、ステップSTSS1に戻る。上り回線が指示されていないならば、アクセス回線が指示されているか否かを判断する(ステップSTTSS9)。アクセス回線が指示されていないならば、ステップSTTSS1に戻る。アクセス回線が指示されているならば、SN通信部29は、スマートフォンなどの通信装置と通信を行い(ステップSTTSS10)、ステップSTTSS1に戻る。
【0073】
図8は、図1のネットワークシステム1における動作の一例を示す図である。(a)ネットワーク全体として下り回線が指定されている。(b)コアノード3は、上り回線を指定するために、スレーブノード51及び52に上り方向指示フレームを送信する。(c)上り方向指示フレームを受信したスレーブノード51及び52は、上り回線が指示された状態となる。スレーブノード51及び52は、上り方向指示フレームを転送する。(d)ネットワーク全体として、上り回線が指定された状態となる。
【0074】
図9〜11を参照して、隣接ノードでの動作について具体的に説明する。スレーブノード33の親ノードとしてスレーブノード31があり、子ノードとしてスレーブノード351及び352がある。図9は、下り回線が指定されている状態から上り回線が指定されている状態へと変更する場合を示す。図10は、上り回線が指定されている状態から下り回線が指定されている状態へと変更する場合を示す。図11は、下り回線が指定されている状態からアクセス回線が指定されている状態へと変更する場合を示す。
【0075】
図9を参照して、(a)全体として下り回線が指定されている。(b)スレーブノード31は、上り方向指示フレームを受信して上り回線が指定された状態となり、スレーブノード33に上り方向指示フレームを転送する。(c)スレーブノード33は、上り回線が指定された状態となり、スレーブノード351及び352に上り方向指示フレームを転送する。(d)全体として上り回線が指定された状態となる。
【0076】
図10を参照して、(a)全体として上り回線が指定されている。(b)スレーブノード31は、下り方向指示フレームを受信して下り回線が指定された状態となる。(c)指示フレームを転送する。(d)スレーブノード33は、下り回線が指定された状態となり、指示フレームをスレーブノード351及び352に送信する。(e)スレーブノード352は、指示フレームを受信し、下り回線が指定された状態となる。(f)スレーブノード351も指示フレームを受信し、下り回線が指定された状態となる。これにより、全体として下り回線が指定されている。
【0077】
図11を参照して、(a)全体として下り回線が指定されている。(b)スレーブノード31は、アクセス回線指示フレームを受信してアクセス回線が指定された状態となり、スレーブノード33にアクセス回線指示フレームを転送する。(c)スレーブノード33は、アクセス回線が指定された状態となり、スレーブノード351及び352にアクセス回線指示フレームを転送する。(d)全体としてアクセス回線が指定された状態となる。
【0078】
なお、この実施例では、指示フレームにアクセス回線指示フレームを含めた例を説明したが、上下回線の指定のみでもよい。
【0079】
続いて、図12を参照して、ポーリングフレームを利用した実施例について説明する。図12(a)は、ポーリングフレームの一例を示す。ポーリングフレームは、データフレームと上りDFフラグを含む。上りDFフラグは、立った状態が上りデータフレーム、立っていない状態が下りデータフレームである。上りポーリングフレームは、上りデータフレームを含むポーリングフレームである。下りポーリングフレームは、下りデータフレームを含むポーリングフレームである。ポーリングフレームは、マルチキャストフレームで、あるノードが送信したフレームは、上り方向のノードも下り方向のノードも、いずれもが同時に受信できる。
【0080】
図12(b)は、コアノード3がポーリングフレームを送信する動作の一例を示すフロー図である。CN通信部15は、下りノードに対して、ポーリングフレームを送信する(ステップSTPCS1)。このとき、図3(a)と同様に品質確保時間を確保しても、例えば従来のIPTのように間欠送信周期によって送信してもよい。図12(c)は、コアノード3がポーリングフレームを受信する動作の一例を示すフロー図である。CN通信部15は、下りノードからポーリングフレームを受信したかを判断する(ステップSTPCR1)。受信していないなら、受信するまで待つ。受信したならば、上りデータフレームを含んでいれば、インターネット回線へ向けて転送し(ステップSTPCR2)、ステップSTPCR1に戻る。
【0081】
図12(d)は、ポーリング制御時のスレーブノード5におけるポーリングフレームの送受信処理を示すフロー図である。各スレーブノード5は、上りデータフレームを上りバッファ37に格納し、下りデータフレームを下りバッファ39に格納する。これらのデータフレームは、例えば、スレーブノード5がアクセスポイントとして機能しているときに、スマートフォン等の機器から受信したものや、他のノードから受信したものである。スレーブノード5は、上りノードからポーリングフレームを受信したか否かを判断する(ステップSTPS1)。受信していないならば、ステップSTPS5に進む。受信したならば、ポーリングフレームに含まれる上りデータフレーム又は下りデータフレームを、それぞれ、上りバッファ37又は下りバッファ39に格納する(ステップSTPS2)。そして、受信したポーリングフレームに含まれるフラグの状態により、上りバッファ37又は下りバッファ39にそれぞれ格納されている上りデータフレーム又は下りデータフレームを送信準備状態にする(ステップSTPS3)。例えば上りDFフラグが立った状態ならば上りデータフレームを送信準備状態とし、上りDFフラグが立っていない状態であれば下りデータフレームを送信準備状態とする。そして、送信状態にあるデータフレームとフラグを含む新たなポーリングフレームを生成し、当該ポーリングフレームを上下方向に接続する複数のノードが受信できるようにして送信する(ステップSTPS4)。新たなポーリングフレームに含まれるフラグは、例えば受信した上りDFフラグのままとしてもよく、変更してもよい。そして、ステップSTPS1に戻る。ステップSTPS1において受信していない場合、ステップSTPS5において、下りノードからポーリングフレームを受信したか否かを判断する。下りノードから受信していない場合、ステップSTPS1に戻る。下りノードから受信している場合、データフレームをバッファリングする(ステップSTPS6)。例えば上りデータフレームが含まれているならば、上りバッファへ格納する。そしてステップSTPS1に戻る。
【符号の説明】
【0082】
1 ネットワークシステム,3 コアノード,5 スレーブノード,11 CN制御部,13 CN通信バッファ,15 CN通信部,17 CN品質確保時間決定部,19 CN付加待機時間決定部,21 CN送信部,23 CN受信部,25 SN制御部,27 SN通信バッファ,29 SN通信部,31 SN品質確保時間決定部,33 SN送信部,35 SN受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12