(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580464
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
H01R13/64
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-218664(P2015-218664)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-91735(P2017-91735A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】池部 晃一
【審査官】
山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−128743(JP,A)
【文献】
特開2015−076136(JP,A)
【文献】
特開2007−080690(JP,A)
【文献】
特開2012−064461(JP,A)
【文献】
米国特許第06077101(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56 − 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続される一対の端子のうち一方の端子を収容して、他方の端子を収容する筒状の相手ハウジングと嵌合する筒状のインナーハウジングと、該インナーハウジングの外側に装着されて前記インナーハウジングを前記相手ハウジングと嵌合させる方向にスライド可能に支持する筒状のアウターハウジングと、該アウターハウジングに片持ち支持されて前記相手ハウジングの外周面から突出する係止突起に係止される第1のロックアームと、前記インナーハウジングに片持ち支持されて前記係止突起に係止された前記第1のロックアームに係止される第2のロックアームとを備え、
前記第1のロックアームの先端側の係止部は、前記係止突起に形成された第1傾斜面と、該第1傾斜面から前記相手ハウジングを前記インナーハウジングと嵌合させる方向と反対方向に延びる平坦面とを順次乗り越えて、該平坦面と連なる第1係止面に係止可能に形成され、
前記第2のロックアームの先端側の係止爪は、前記係止突起に係止された前記係止部の前記平坦面を覆って形成された第2傾斜面を乗り越えて、該第2傾斜面と連なる第2係止面に係止可能に形成されてなるコネクタ。
【請求項2】
前記アウターハウジングは、該アウターハウジングの後端から軸方向に延びる切り欠き部を有し、
前記インナーハウジングは、該インナーハウジングの外周面から突出して前記切り欠き部を移動する突起部と、前記突起部の先端部に形成され前記アウターハウジングの外周面の外側に位置する把持部とを有してなる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
互いに接続される一対の端子のうち一方の端子を収容する筒状のインナーハウジングと、他方の端子を収容して前記インナーハウジングと嵌合する相手ハウジングと、前記インナーハウジングの外側に装着されて前記インナーハウジングを前記相手ハウジングと嵌合させる方向にスライド可能に支持する筒状のアウターハウジングと、前記アウターハウジングに片持ち支持されて前記相手ハウジングの外周面から突出する係止突起に係止される第1のロックアームと、前記インナーハウジングに片持ち支持されて前記係止突起に係止された前記第1のロックアームに係止される第2のロックアームとを備え、
前記第1のロックアームの先端側の係止部は、前記係止突起に形成された第1傾斜面と、該第1傾斜面から前記相手ハウジングを前記インナーハウジングと嵌合させる方向と反対方向に延びる平坦面とを順次乗り越えて、該平坦面と連なる第1係止面に係止可能に形成され、
前記第2のロックアームの先端側の係止爪は、前記係止突起に係止された前記係止部の前記平坦面を覆って形成された第2傾斜面を乗り越えて、該第2傾斜面と連なる第2係止面に係止可能に形成されてなるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一対のコネクタハウジングを嵌合させて形成されるコネクタは、一方のコネクタハウジングが他方のコネクタハウジングの正規嵌合位置まで挿入され、各コネクタハウジングに収容された端子同士が電気的に接続された状態でコネクタハウジング同士が互いにロックされて抜け止めがなされる。しかし、この種のコネクタは、一般に嵌合作業が手作業で行われるため、一方のコネクタハウジングが正規嵌合位置まで挿入されていない所謂半嵌合状態であることに気が付かないことがある。また、コネクタハウジング同士がロックされていても、そのロック状態が不十分であるために、ロックが自然解除されてしまうおそれがある。
【0003】
そこで、このようなコネクタハウジングの半嵌合を防ぐため、CPA(嵌合位置保障ロック)を備えたコネクタが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、メス端子が収容された筒状のメスコネクタと、オス端子が収容されてメスコネクタと嵌合する筒状のオスコネクタと、メスコネクタの外側にスライド可能に装着された筒状のCPAと、メスコネクタに片持ちで支持されオスコネクタに向かって延在するメスロックと、CPAに片持ちで支持されオスコネクタに向かって延在するCPAロックと、オスコネクタの外周面から突出してメスロック及びCPAロックを係止するオスビークとを備えたコネクタが開示されている。オスビークには、メスロックの先端側の係止部とCPAロックの先端側の係止爪がそれぞれ乗り上げる傾斜面が形成されている。
【0005】
このような構成において、CPAが装着されたメスコネクタをオスコネクタに嵌合させると、まず、メスロックの係止部がオスビークの傾斜面に乗り上げる。そして、傾斜面を乗り越えた係止部は、オスビークに係止され、オスコネクタとメスコネクタとが正規嵌合状態でロックされる。一方、メスロックの係止部に続いてオスビークの傾斜面に乗り上げたCPAロックの係止爪は、傾斜面を乗り越えて、オスビークに係止されたメスロックの係止部に係止され、これにより、一対のハウジングの正規嵌合状態が保障される。
【0006】
特許文献1では、例えば、メスロックの係止部がオスビークの傾斜面を乗り越えようとしている最中(半嵌合状態)に操作の手を離すと、メスロックの反発力(弾性復元力)によってメスコネクタは嵌合前の元の位置へ戻ろうとする。また、CPAにおいても、CPAロックの係止爪がオスビークの傾斜面を乗り越えようとしている最中に操作の手を離すと、CPAロックの反発力によってCPAは嵌合前の元の位置へ戻ろうとする。このように、メスコネクタやCPAが元の位置へ戻る動作によって、半嵌合状態が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−64461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、オスビークには、メスロックやCPAが乗り越える傾斜面と連なって、オスコネクタがメスコネクタと嵌合する方向と反対方向に延びる平坦面を有していることがある。この場合、例えば、メスロックの係止部が平坦面に差し掛かっている最中(半嵌合状態)に操作の手を離しても、メスロックには反発力が生じないため、メスコネクタは、元の位置に戻ることなくメスロックの係止部が平坦面に接触したまま停止してしまい、結果としてメスロックの半嵌合状態を検知できなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、一対のハウジングの半嵌合状態を高い精度で検知することができるコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、互いに接続される一対の端子のうち一方の端子を収容して、他方の端子を収容する筒状の相手ハウジングと嵌合する筒状のインナーハウジングと、このインナーハウジングの外側に装着されてインナーハウジングを相手ハウジングと嵌合させる方向にスライド可能に支持する筒状のアウターハウジングと、このアウターハウジングに片持ち支持されて相手ハウジングの外周面から突出する係止突起に係止される第1のロックアームと、インナーハウジングに片持ち支持されて係止突起に係止された第1のロックアームに係止される第2のロックアームとを備え、第1のロックアームの先端側の係止部は、係止突起に形成された第1傾斜面と、この第1傾斜面から相手ハウジングをインナーハウジングと嵌合させる方向と反対方向に延びる平坦面とを順次乗り越えて、この平坦面と連なる第1係止面に係止可能に形成され、第2のロックアームの先端側の係止爪は、係止突起に係止された係止部の平坦面を覆って形成された第2傾斜面を乗り越えて、この第2傾斜面と連なる第2係止面に係止可能に形成されてなることを特徴とする。
【0011】
これによれば、第1のロックアームの先端側の係止部は、係止突起に係止された状態で係止突起の平坦面を覆って形成された第2傾斜面を有しているため、第2のロックアームの先端側の係止爪は、第2傾斜面を乗り越えた後、第2傾斜面と連なる第2係止面に係止される。すなわち、第2のロックアームの係止爪は、係止突起に平坦面が形成されていても、その平坦面を移動することなく、常に第2傾斜面に乗り上げるから、半嵌合状態で操作の手が離れたときには、第2のロックアームの反発力によってインナーハウジングが嵌合方向と反対方向へ押し戻される。これにより、一方の端子が収容されたインナーハウジングと他方の端子が収容された相手ハウジングとの半嵌合状態を高い精度で検知することができ、一対の端子同士の接続を確実なものとすることができる。
【0012】
この場合において、アウターハウジングは、このアウターハウジングの後端から軸方向に延びる切り欠き部を有し、インナーハウジングは、このインナーハウジングの外周面から突出して切り欠き部を移動する突起部と、この突起部の先端部に形成されアウターハウジングの外周面の外側に位置する把持部とを有してなることが好ましい。これによれば、アウターハウジングに収容されたインナーハウジングをアウターハウジングの外側から相手ハウジングとの嵌合方向へ向けて容易にスライド移動させることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明のコネクタは、上記のコネクタに代えて、互いに接続される一対の端子のうち一方の端子を収容する筒状のインナーハウジングと、他方の端子を収容してインナーハウジングと嵌合する相手ハウジングと、インナーハウジングの外側に装着されてインナーハウジングを相手ハウジングと嵌合させる方向にスライド可能に支持する筒状のアウターハウジングと、このアウターハウジングに片持ち支持されて相手ハウジングの外周面から突出する係止突起に係止される第1のロックアームと、インナーハウジングに片持ち支持されて係止突起に係止された第1のロックアームに係止される第2のロックアームとを備え、第1のロックアームの先端側の係止部は、係止突起に形成された第1傾斜面と、この第1傾斜面から相手ハウジングをインナーハウジングと嵌合させる方向と反対方向に延びる平坦面とを順次乗り越えて、平坦面と連なる第1係止面に係止可能に形成され、第2のロックアームの先端側の係止爪は、係止突起に係止された係止部の平坦面を覆って形成された第2傾斜面を乗り越えて、この第2傾斜面と連なる第2係止面に係止可能に形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一対のハウジングの半嵌合状態を高い精度で検知することができるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のコネクタの嵌合前の縦断面図である。
【
図2】本実施形態のアウターハウジングの外観斜視図である。
【
図3】本実施形態のインナーハウジングの外観斜視図である。
【
図4】本実施形態の一方のコネクタの外観斜視図である。
【
図6】第1のロックアームと第2のロックアームとが係止突起に係止される動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用されるコネクタの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るコネクタの嵌合前の縦断面図である。本発明に係るコネクタ10は、一方のコネクタ12と、一方のコネクタ12と嵌合する他方のコネクタ14とを備えている。なお、本発明は、本実施形態のように一方のコネクタ12と他方のコネクタ14とを嵌合させたコネクタ10全体に適用することもできるし、他方のコネクタ14と嵌合する一方のコネクタ12にのみ適用することもできる。以下では、一方のコネクタ12と他方のコネクタ14について、それぞれ相手側のコネクタと嵌合する方向を前方、その反対側を後方として定義する。
【0017】
一方のコネクタ12は、オス型とメス型のどちらでも構わないが、本実施形態では、メス型のコネクタについて説明する。一方のコネクタ12は、互いに接続される一対の端子のうち一方の端子を収容する樹脂製のインナーハウジング16と、インナーハウジング16の外側に装着される樹脂製のアウターハウジング18とを備えている。
【0018】
図2は、アウターハウジング18の外観斜視図であり、
図3は、インナーハウジング16の外観斜視図である。インナーハウジング16とアウターハウジング18は、それぞれ軸方向と直交する横断面が略相似形の長円形に形成され、軸方向の両端が開口する円筒状に形成されている。インナーハウジング16は、アウターハウジング18の後方から挿入され、後述するように、アウターハウジング18によって前方(嵌合方向)へスライド可能に支持される。インナーハウジング16は、他方のコネクタ14の相手ハウジング20に挿入されて嵌合するようになっている。アウターハウジング18は、相手ハウジング20の前方を包囲するように形成されている。
【0019】
アウターハウジング18は、アウターハウジング18の筒壁22に片持ち支持されて、相手ハウジング20に向かって筒壁22の内側に傾斜して延在する第1のロックアーム24を有している。第1のロックアーム24は、相手ハウジング20の外周面から突出する係止突起26に係止される。第1のロックアーム24は、筒壁22に開口する開口部28を介して外側から臨む位置に設けられ、一対のアーム片30,30と、各アーム片30,30の先端部同士を連ねる係止部32とを有して門型に形成されている。
【0020】
係止部32は、インナーハウジング16と相手ハウジング20との嵌合時において、相手ハウジング20の係止突起26に形成された第1傾斜面34と、第1傾斜面34から相手ハウジング20の後方(相手ハウジング20をインナーハウジング16と嵌合させる方向と反対方向)に延びる平坦面36とを順次乗り越えて平坦面36と連なる第1係止面38に係止可能に形成されている。係止部32は、係止突起26に係止された状態で係止突起26の第1係止面38に沿って延びる凸部40と、係止突起26の平坦面36を覆って形成される第2傾斜面42とを有している。
【0021】
インナーハウジング16は、アウターハウジング18の設定位置まで挿入された状態で、アウターハウジング18に完全に収容される。すなわち、インナーハウジング16の後端面は、アウターハウジング18の後端面よりも前方に位置している。インナーハウジング16は、内部にメス端子44(一方の端子)が収容され、メス端子44の後端部に接続された電線が後端の開口から引き出される。このメス端子44は、インナーハウジング16の内周面から突出する係止壁46や周知のランス(不図示)などに係止されて、インナーハウジング16の所定位置に保持されている。
【0022】
インナーハウジング16は、インナーハウジング16の筒壁48に片持ち支持されて相手ハウジング20に向かって軸方向に延在する第2のロックアーム50を有している。第2のロックアーム50の先端部には、対向する筒壁48に向かって突出する係止爪52が形成されている。係止爪52は、
図4及び
図5に示すように、インナーハウジング16にアウターハウジング18が装着された状態で第1のロックアーム24の一対のアーム片30,30の内側に配置され、一方のコネクタ12と他方のコネクタ14との嵌合時には、係止突起24に係止された係止部32の第2傾斜面42を乗り越えて、第2傾斜面42と連なる凸部40の第2係止面40aに係止可能に形成されている。
【0023】
ここで、アウターハウジング18がインナーハウジング16を支持する構造について説明する。アウターハウジング18は、
図2に示すように、筒壁22の幅方向の両側にそれぞれ後端から軸方向に延びる一対の切り欠き部54,54を有している。インナ−ハウジング16は、
図3に示すように、筒壁48の幅方向の両側の外周面から突出する一対の突起部56,56と、各突起部56,56の先端部にそれぞれ形成された把持部58,58とを有している。
【0024】
アウターハウジング18が装着されたインナーハウジング16は、
図4に示すように、切り欠き部54,54にそれぞれ突起部56,56がスライド可能に配置され、把持部58,58がそれぞれアウターハウジング18の外周面の外側に位置している。また、インナーハウジング16の外周面は、アウターハウジング18の内周面の所定部位(不図示)にスライド可能に支持されている。
【0025】
インナーハウジング16は、把持部58,58を前方へ押し込むことにより、突起部56,56が切り欠き部54,54をスライド移動し、アウターハウジング18に対して相対的に前方へ移動する。なお、把持部58は、コネクタ10の大型化を避けるため、アウターハウジング18の筒壁22の外周面に沿って断面円弧状に形成されているが、この形状に限定されるものではない。
【0026】
他方のコネクタ14は、図示しないオス端子を収容する樹脂製の相手ハウジング20を備え、車両などに搭載された図示しない電機機器の器壁などに直結して形成される。相手ハウジング20は、インナーハウジング16と略相似形の長円形の横断面を有しており、インナーハウジング16が正規位置まで挿入されて完全嵌合することで、オス端子がインナーハウジング16のメス端子44に挿入されて端子同士が接続されるようになっている。
【0027】
相手ハウジング20の筒壁60の内周面には、軸方向に延びる溝部(不図示)が形成され、相手ハウジング20にインナーハウジング16が挿入される際には、インナーハウジング16の筒壁48の外周面から突出する突条部62が溝部に沿って案内されるようになっている。
【0028】
相手ハウジング20は、アウターハウジング18が装着されたインナーハウジング16が正規嵌合位置まで挿入されると、筒壁60の外周面から突出する係止突起26にアウターハウジング18の第1のロックアーム24の係止部32が係止され、さらに、インナーハウジング16の第2のロックアーム50の係止爪52が、その係止部32を乗り越えて係止部32の第2係止面40aに係止される。すなわち、係止突起26は、係止部32を係止するとともに、係止部32を介して係止爪52を係止するようになっている。
【0029】
次に、一方のコネクタ12と他方のコネクタ14とが嵌合する際に、第1のロックアーム24の係止部32と、第2のロックアーム50の係止爪52とが、それぞれ係止突起26に係止される動作の一例について図面を参照して説明する。
図6は、一方のコネクタ12と他方のコネクタ14が、嵌合開始から嵌合完了に至るまでの動作を説明する図であり、係止突起26、係止部32、係止爪52のみを表している。
【0030】
一方のコネクタ12と他方のコネクタ14との嵌合が開始されると、
図1の矢印の方向へ他方のコネクタ14が相対移動する。一方のコネクタ12は、インナーハウジング16の把持部58を前方へ押し付けることにより、第2のロックアーム50の係止爪52が、第1のロックアーム24の係止部32を前方へ押し付け、その結果、インナーハウジング16がアウターハウジング18を前方へ押し付ける格好で移動する。なお、アウターハウジング18は、把持部58に代えて筒壁22の外周面を前方へ押し付けることで、インナーハウジング16と別個に移動させることもできる。
【0031】
さらに嵌合を続けると、
図6(a)に示すように、係止爪52に押し付けられた係止部32は、係止突起26の第1傾斜面34と接触し、第1のロックアーム24を弾性変形させながら、第1傾斜面34に乗り上げて前方へ移動する。
【0032】
続いて、係止部32は、
図6(b)に示すように、係止突起26の第1傾斜面34を乗り越えて、第1傾斜面34と連なる平坦面36に凸部40が乗り上げる。
【0033】
さらに嵌合を続けると、係止部32は、
図6(c)に示すように、係止突起26の平坦面36を乗り越えて、平坦面36と連なる第1係止面38に凸部40が1次係止され、アウターハウジング18と相手ハウジング20とがロックされる。これにより、係止突起26の平坦面36は、係止部32の第2傾斜面42に覆われた状態、つまり、第2傾斜面42が被さる状態となり、その結果、係止部32に続いて移動する係止爪52は、平坦面36と接触することなく、第2のロックアーム50を弾性変形させながら、第2傾斜面42に乗り上げて前方へ移動することになる。そのため、係止爪52が第2傾斜面42を移動する際中に操作の手が離れた場合、インナーハウジング16は、第2のロックアーム50の反発力(復元力)によって、嵌合方向と反対方向(後方)へ押し戻されることになる。
【0034】
ここで、インナーハウジング16が嵌合途中で後方へ押し戻された場合、例えば、把持部58を介して指先に反動が伝わり、インナーハウジング16の後方への移動がすぐに検知されるから、半嵌合状態をその場で検知することができる。また、係止爪52と係止部32との係止状態が不十分であるために係止爪52のロックが自然解除された場合、インナーハウジング16が後方へ押し戻されてアウターハウジング18に対する位置が変化、つまり、本実施形態では把持部58,58の位置が後方へ移動することから、視覚的に半嵌合状態を検知することができる。
【0035】
さらに嵌合を続けると、係止爪52は、第2傾斜面42を乗り越えて、
図6(d)に示すように、第2傾斜面42と連なる第2係止面40aに係止され、インナーハウジング16と相手ハウジング20とがロックされる。これにより、係止爪52は、係止部32を介して係止突起26に係止され、インナーハウジング16は、相手ハウジング20に対して正規位置まで挿入された状態が保持される。その結果、一方のコネクタ12と他方のコネクタ14は完全嵌合となり、両端子の接続が確実なものとなる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態によれば、第1のロックアーム24の係止部32は、係止突起26に係止された状態で係止突起26の平坦面を覆って形成された第2傾斜面42を有しているため、第2のロックアーム50の係止爪52は、第2傾斜面42を乗り越えた後、第2傾斜面42と連なる第2係止面40aに係止される。すなわち、第2のロックアーム50の係止爪52は、係止部32が係止突起26に係止された時点で常に第2傾斜面42上に位置しているため、係止突起26に平坦面36が形成されていても、その平坦面36を移動することなく、第2傾斜面42を乗り上げる。したがって、半嵌合状態で操作の手が離れたときには、第2のロックアーム50の反発力によって、インナーハウジング16が嵌合方向と反対方向へ押し戻される。したがって、係止突起26の形状にかかわらず、オス端子が収容されたインナーハウジング16とメス端子44が収容された相手ハウジング20との半嵌合状態を高い精度で検知することができるから、一対の端子同士の接続が確実なものとなり、端子同士の不十分な接触状態や非接触状態を防ぐことができる。
【0037】
なお、本実施形態では、係止爪52が係止突起26に係止された状態を維持するための機構を特に備えていないが、周知の構造を適用することで、このような機能を追加して設けることは可能である。
【0038】
以上、本発明の各実施形態を図面により詳述してきたが、上記の実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0039】
例えば、本実施形態では、アウターハウジング18の外側に位置する把持部58,58を用いてインナーハウジング16をスライド移動させているが、この把持部58,58に代えて、例えば、アウターハウジング18の後端部からインナーハウジング16の後端部を後方へ突出させ、その突出する後端部を押し付けてスライド移動させることもできる。
【0040】
また、本実施形態では、他方のコネクタ14として、車両などに搭載された電機機器の器壁などに直結して形成されたコネクタを例に説明したが、他方のコネクタ14は、ハウジングの外周面に係止突起26を有していれば、この例に限られるものではなく、一方のコネクタ12と同様に電線の端末に接続されたコネクタとすることもできる。
【符号の説明】
【0041】
10 コネクタ
12 一方のコネクタ
14 他方のコネクタ
16 インナーハウジング
18 アウターハウジング
20 相手ハウジング
24 第1のロックアーム
26 係止突起
32 係止部
34 第1傾斜面
36 平坦面
38 第1係止面
40a 第2係止面
42 第2傾斜面
44 メス端子
50 第2のロックアーム
52 係止爪
54 切り欠き部
56 突起部
58 把持部